(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168086
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】シートバックカバー
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20241128BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20241128BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B60N2/58
A47C31/02 A
B68G7/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084492
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥原 義勝
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 徹
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】天板カバー部と背裏カバー部との端末同士の掛止部を比較的簡素な構成で見栄え良く被覆すること。
【解決手段】シートバックカバー1は、シートバックSBの天板部を覆う天板カバー部2と、シートバックSBの背裏部を覆う背裏カバー部3と、背裏カバー部3と天板カバー部2の背裏側に引き込まれる下側の端末とをシートバックSBの背裏下部において掛止させる掛止部5と、を有する。掛止部5は、天板カバー部2の上記端末に縫着される第1掛部5Aと、背裏カバー部3のカバー内面に縫着されて第1掛部5Aに掛止される第2掛部5Bと、を有する。背裏カバー部3は、背裏カバー部3から第2掛部5Bとの縫着部3Aを越えてシート下方にシームレスに延びて掛止部5を背裏側から覆う延長被覆部3Bを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの天板部を覆う天板カバー部と、前記シートバックの背裏部を覆う背裏カバー部と、該背裏カバー部と前記天板カバー部の背裏側に引き込まれる下側の端末とを前記シートバックの背裏下部において掛止させる掛止部と、を有するシートバックカバーであって、
前記掛止部が、前記天板カバー部の前記端末に縫着される第1掛部と、前記背裏カバー部のカバー内面に縫着されて前記第1掛部に掛止される第2掛部と、を有し、
前記背裏カバー部が、該背裏カバー部から前記第2掛部との縫着部を越えてシート下方にシームレスに延びて前記掛止部を背裏側から覆う延長被覆部を有するシートバックカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のシートバックカバーであって、
前記第2掛部が、前記背裏カバー部の前記カバー内面に沿ってシート幅方向に直線状に縫着される綿布と、該綿布に縫着されて前記第1掛部に引掛けられる引掛具と、を有するシートバックカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックカバーに関する。詳しくは、シートバックの天板部を覆う天板カバー部と、シートバックの背裏部を覆う背裏カバー部と、背裏カバー部と天板カバー部の背裏側に引き込まれる下側の端末とをシートバックの背裏下部において掛止させる掛止部と、を有するシートバックカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートバックを覆うシートバックカバーが開示されている。このシートバックカバーは、シートバックの天板部を覆う天板カバー部と、背裏部を覆う背裏カバー部とを、有する。天板カバー部と背裏カバー部とは、シートバックの背裏下部において、互いの端末同士が樹脂製の掛止部材により掛止されている。シートバックカバーは、更に、上記天板カバー部と背裏カバー部との掛止部分を外部に対して見栄え良く覆い隠すための被覆カバー部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、被覆カバー部が背裏カバー部とは別のカバーピースから成る。そのため、被覆カバー部と背裏カバー部とを適切に位置合わせして縫着しなければならず、係る縫製作業が煩雑となる。特に、被覆カバー部と背裏カバー部とに絵柄が付いている場合には、これらを適切に位置合わせして縫着しなければ、意匠性が崩れやすくなるという問題がある。そこで、本発明は、天板カバー部と背裏カバー部との端末同士の掛止部を比較的簡素な構成で見栄え良く被覆することが可能なシートバックカバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段として、本発明のシートバックカバーは、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、シートバックの天板部を覆う天板カバー部と、前記シートバックの背裏部を覆う背裏カバー部と、該背裏カバー部と前記天板カバー部の背裏側に引き込まれる下側の端末とを前記シートバックの背裏下部において掛止させる掛止部と、を有するシートバックカバーであって、前記掛止部が、前記天板カバー部の前記端末に縫着される第1掛部と、前記背裏カバー部のカバー内面に縫着されて前記第1掛部に掛止される第2掛部と、を有し、前記背裏カバー部が、該背裏カバー部から前記第2掛部との縫着部を越えてシート下方にシームレスに延びて前記掛止部を背裏側から覆う延長被覆部を有するシートバックカバーである。
【0007】
第1の発明によれば、背裏カバー部からシームレスに延びる延長被覆部によって掛止部を背裏側から覆う構成とすることで、掛止部を比較的簡素な構成で見栄え良く被覆することができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記第2掛部が、前記背裏カバー部の前記カバー内面に沿ってシート幅方向に直線状に縫着される綿布と、該綿布に縫着されて前記第1掛部に引掛けられる引掛具と、を有するシートバックカバーである。
【0009】
第2の発明によれば、第2掛部の引掛具と背裏カバー部との間に、背裏カバー部に対してシート幅方向に直線状に縫着される綿布が介在する構成となる。それにより、第2掛部の引掛具に掛けられる力が、綿布を介して、背裏カバー部に対してシート幅方向に広く分散して掛けられるようになる。そのため、背裏カバー部に皺が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係るシートバックカバーの概略構成を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
《第1の実施形態》
(シートバックカバー1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートバックカバー1の構成について、
図1~
図3を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図3のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るシートバックカバー1は、自動車用シートの背凭れ部を成すシートバックSBのカバーとして構成されている。シートバックSBは、その骨格を成す不図示のシートバックフレームと、シートバックフレームを前側から覆う不図示のシートバックパッドと、シートバックパッドを覆うシートバックカバー1と、を有する。
【0014】
シートバックフレーム(不図示)は、シートバックSBの外周部に沿った正面視枠状のフレーム形状を備える。シートバックパッド(不図示)は、ポリウレタン発泡成形体から成るパッド材により構成されている。
【0015】
シートバックパッドは、シートバックフレームに対して、前側と上下左右の各外周側とからそれぞれ覆う形にセットされる。そして、シートバックパッドは、その表面全体を覆うようにシートバックカバー1が上側から被せられることにより、シートバックフレームに押し付けられて、位置固定された状態に保持される。
【0016】
図2に示すように、シートバックカバー1は、シートバックSBの外形に沿う形に縫製されたファブリック製の面状部材から成る。具体的には、シートバックカバー1は、シートバックSBの天板部(前面部)を覆う天板カバー部2と、シートバックSBの背裏部を覆う背裏カバー部3と、を有する袋形状に縫製されている。
【0017】
図2~
図3に示すように、天板カバー部2は、シートバックSBの天板部と上面部と下面部と左右の各側面部とを覆う面形状とされている。背裏カバー部3は、シートバックSBの背裏部を覆う略矩形の面形状とされている。背裏カバー部3は、その上側の端末が、天板カバー部2のシートバックSBの上面部を覆う上面部分の後側の端末に沿って縫着されている。
【0018】
シートバックカバー1は、更に、天板カバー部2の左右の各端末と背裏カバー部3の左右の各端末とを互いに開閉可能に結合するための各スライドファスナ4を有する。また、シートバックカバー1は、天板カバー部2のシートバックSBの下面部を覆う下面部分の背裏側に引き込まれる端末と背裏カバー部3とを互いに着脱可能に掛止するための掛止部5を更に有する。
【0019】
各スライドファスナ4は、天板カバー部2の左右の各端末と背裏カバー部3の左右の各端末とに沿って縫着された各エレメント同士を、これらの間に組み付けられた各スライダの上下動によって順次結合したり開放したりする公知の構成となっている。具体的には、各スライドファスナ4は、スライダを各エレメントの上端から下方へとスライドさせることにより、各エレメント同士を上から順に結合させてこれらの間を閉じ、スライダを上方にスライドさせることで、これらの間を開くようになっている。
【0020】
掛止部5は、天板カバー部2の背裏側に引き込まれる下側の端末に縫着される第1掛部5Aと、背裏カバー部3のカバー内面(前面)に縫着されて第1掛部5Aに掛止される第2掛部5Bと、を有する。第1掛部5Aは、天板カバー部2の下側の端末に沿ってシート幅方向に長尺状に延びる樹脂製のフック部材から成る。
【0021】
第1掛部5Aは、天板カバー部2の下側の端末におけるシート幅方向の両端を残す略全域に亘って縫着されている。第1掛部5Aは、その先端に鉤状に曲げ返された引掛部を有する横断面形状とされる。第1掛部5Aは、シート幅方向に一様な横断面で延びる形状とされる。
【0022】
第2掛部5Bは、背裏カバー部3のカバー内面に沿ってシート幅方向に直線状に縫い線(縫着部3A)が延びるように縫着される綿布B1と、綿布B1の下縁に縫着されて第1掛部5Aに引掛けられる引掛具B2と、を有する。綿布B1は、その上側の端末が、背裏カバー部3の上側の端末と下側の端末との間の中間部に対し、シート幅方向に直線状に縫い線が延びる縫着部3Aによって縫着されている。綿布B1は、背裏カバー部3のシート幅方向の略全域に亘って縫着されている。
【0023】
引掛具B2は、綿布B1の下側の端末に沿って縫着されている。詳しくは、綿布B1の引掛具B2が縫着される下側の端末は、そのシート幅方向の両角が切り取られた形状とされている。引掛具B2は、上記綿布B1の両角が切り取られた下側の端末に対し、シート幅方向の略全域に亘って縫着されている。
【0024】
引掛具B2は、綿布B1の下側の端末に沿ってシート幅方向に長尺状に延びる樹脂製の平板部材から成る。引掛具B2は、シート幅方向に一様な横断面で延びる形状とされる。
【0025】
背裏カバー部3は、その高さ方向の中間部に綿布B1が縫着された構成により、綿布B1との縫着部3Aを越えてシート下方にシームレスに延びる延長被覆部3Bを有する構成とされている。延長被覆部3Bは、綿布B1の下側の端末よりも下方に長く延びる形状とされている。
【0026】
図3に示すように、延長被覆部3Bの下方に延びた先の端末は、不図示の面ファスナにより、天板カバー部2のシートバックSBの下面部を覆う下面部分に着脱可能に結合される。なお、延長被覆部3Bの下方に延びた先の端末は、天板カバー部2のシートバックSBの下面部を覆う下面部分には結合されず、単に垂れ下がるように設けられる構成であっても良い。
【0027】
上記延長被覆部3Bにより、背裏カバー部3を天板カバー部2の下側の端末に掛止させる掛止部5が背裏側から面状に覆われる。掛止部5は、次の手順により、第2掛部5Bの引掛具B2が第1掛部5Aに引掛けられる。先ず、シートバックカバー1を不図示のシートバックパッドに上から被せた後、天板カバー部2の下側の端末を背裏側へと引き込む。
【0028】
次に、背裏カバー部3のカバー内面に縫着された第2掛部5Bの引掛具B2を、天板カバー部2の下側の端末に縫着された第1掛部5Aの先端の引掛部に引掛ける。この引掛けにより、第1掛部5Aと第2掛部5Bとが互いに掛止され、天板カバー部2と背裏カバー部3とが不図示のシートバックパッドを包むように張設される。
【0029】
詳しくは、第2掛部5Bの引掛具B2は、第1掛部5Aに対して、シートバックカバー1のテンションに抗して引掛けられる。それにより、第2掛部5Bの引掛具B2には、シートバックカバー1のテンションに伴う引張り力が第1掛部5Aとの間で掛けられる。
【0030】
そして、第2掛部5Bの引掛具B2に掛けられる引張り力は、綿布B1を介して背裏カバー部3に掛けられる。その際、背裏カバー部3に掛けられる力は、背裏カバー部3にシート幅方向の全域に亘って縫着された綿布B1を介することにより、シート幅方向の一部に集中することなく全域に亘って広く分散されて掛けられるようになっている。その結果、背裏カバー部3に皺が生じにくくなっている。
【0031】
上記組み付けにより、第2掛部5Bと第1掛部5Aとが掛止された掛止部5は、背裏カバー部3の延長被覆部3Bにより、背裏カバー部3と面一状に背裏側から被覆される。このように、掛止部5を背裏側から覆う背裏カバー部3の延長被覆部3Bが、背裏カバー部3からシームレスに延びる構成とされることで、背裏カバー部3の意匠性を崩すことなく掛止部5を背裏側から適切に覆うことができる。
【0032】
その理由は、次の通りである。すなわち、延長被覆部3Bが背裏カバー部3に縫着されるような背裏カバー部3とは別のカバーピースから成る場合、これらを適切に位置合わせして縫着しなければならず、係る縫製作業が煩雑となる。
【0033】
特に、背裏カバー部3と延長被覆部3Bとに互いに同一の又は繋がりのある絵柄が付いている場合には、これらを適切に位置合わせして縫着しなければ、意匠性が崩れやすくなる。しかし、延長被覆部3Bが、背裏カバー部3からシームレスに延びる構成とされることで、背裏カバー部3の意匠性を崩すことなく掛止部5を背裏側から適切に覆うことができる。
【0034】
以上をまとめると、本実施形態に係るシートバックカバー1は、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0035】
すなわち、シートバックカバー(1)は、シートバック(SB)の天板部を覆う天板カバー部(2)と、シートバック(SB)の背裏部を覆う背裏カバー部(3)と、背裏カバー部(3)と天板カバー部(2)の背裏側に引き込まれる下側の端末とをシートバック(SB)の背裏下部において掛止させる掛止部(5)と、を有する。掛止部(5)は、天板カバー部(2)の上記端末に縫着される第1掛部(5A)と、背裏カバー部(3)のカバー内面に縫着されて第1掛部(5A)に掛止される第2掛部(5B)と、を有する。
【0036】
背裏カバー部(3)は、背裏カバー部(3)から第2掛部(5B)との縫着部(3A)を越えてシート下方にシームレスに延びて掛止部(5)を背裏側から覆う延長被覆部(3B)を有する。このように、背裏カバー部(3)からシームレスに延びる延長被覆部(3B)によって掛止部(5)を背裏側から覆う構成とすることで、掛止部(5)を比較的簡素な構成で見栄え良く被覆することができる。
【0037】
また、第2掛部(5B)が、背裏カバー部(3)のカバー内面に沿ってシート幅方向に直線状に縫着される綿布(B1)と、綿布(B1)に縫着されて第1掛部(5A)に引掛けられる引掛具(B2)と、を有する。上記構成によれば、第2掛部(5B)の引掛具(B2)と背裏カバー部(3)との間に、背裏カバー部(3)に対してシート幅方向に直線状に縫着される綿布(B1)が介在する構成となる。
【0038】
それにより、第2掛部(5B)の引掛具(B2)に掛けられる力が、綿布(B1)を介して、背裏カバー部(3)に対してシート幅方向に広く分散して掛けられるようになる。そのため、背裏カバー部(3)に皺が生じにくくなる。
【0039】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態の他、各種の形態で実施することができるものである。
【0040】
1.本発明のシートバックカバーは、鉄道等の自動車以外の車両の他、航空機や船舶等の車両以外の乗物用に供されるシートに適用されるものであっても良い。また、シートバックカバーは、乗物の他、スポーツ施設や劇場、コンサート会場、イベント会場等の各種施設に設置されるシートやマッサージシート等の乗物以外のシートに適用されるものであっても良い。
【0041】
2.掛止部は、第1掛部と第2掛部とがホグリングにより掛止される構成であっても良い。また、第2掛部に鉤状に曲げ返されたフックが形成され、このフックに第1掛部が引掛けられる構成であっても良い。第2掛部は、引掛具が綿布を介さず背裏カバー部のカバー内面に直接縫着される構成であっても良い。第2掛部は、背裏カバー部のカバー内面の複数箇所に分かれて縫着される構成であっても良い。
【0042】
3.延長被覆部は、その下側の端末が、ゴムバンド等の引き込み部材を介してシートクッションの下部に弾性的に引き込まれるように設けられても良い。
【0043】
4.シートバックカバーは、ファブリックの他、合成皮革や天然皮革等の皮革材から成るものであっても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 シートバックカバー
2 天板カバー部
3 背裏カバー部
3A 縫着部
3B 延長被覆部
4 スライドファスナ
5 掛止部
5A 第1掛部
5B 第2掛部
B1 綿布
B2 引掛具
SB シートバック