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特開2024-168088異常検知装置、異常検知方法、有機物含有水の処理装置、及び有機物含有水の処理方法
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  • 特開-異常検知装置、異常検知方法、有機物含有水の処理装置、及び有機物含有水の処理方法 図1
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  • 特開-異常検知装置、異常検知方法、有機物含有水の処理装置、及び有機物含有水の処理方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168088
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】異常検知装置、異常検知方法、有機物含有水の処理装置、及び有機物含有水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20241128BHJP
【FI】
C02F3/12 P
C02F3/12 M
C02F3/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084494
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 太一
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】油井 啓徳
(72)【発明者】
【氏名】石井 拳人
【テーマコード(参考)】
4D028
【Fターム(参考)】
4D028AC03
4D028BB02
4D028BB06
4D028CA01
4D028CA04
4D028CA09
4D028CC00
4D028CC04
4D028CC14
4D028CD00
4D028CE04
(57)【要約】
【課題】オンラインTOC濃度計を使用した従来法に代わる新たな生物処理の異常を検知する装置を提供する。
【解決手段】異常検知装置は、有機物含有水を好気条件で生物処理する反応槽12内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサ32aと、反応槽12から排出される処理水の一部をサンプル液として導入し、好気条件で生物処理する測定槽14内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサ32bと、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定された二酸化炭素濃度、及び二酸化炭素濃度センサ32bにより測定された二酸化炭素濃度に基づいて、反応槽12における生物処理の異常を検知する異常判定部34と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有水を好気条件で生物処理する反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第1測定手段と、
前記反応槽から排出される処理水の一部をサンプル液として導入し、好気条件で生物処理する測定槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第2測定手段と、
前記第1測定手段により測定された二酸化炭素濃度、及び前記第2測定手段により測定された二酸化炭素濃度に基づいて、前記反応槽における生物処理の異常を検知する異常判定部と、を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記第1測定手段により測定された二酸化炭素濃度、前記第2測定手段により測定された二酸化炭素濃度、前記反応槽に供給される空気量、前記測定槽に供給される空気量、前記反応槽内の液相部のpH、及び前記測定槽内の液相部のpHに基づいて、前記反応槽における生物処理の異常を検知することを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
有機物含有水を好気条件で生物処理する直列2段以上の反応槽から構成される反応槽群において、前段の反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第1測定手段と、
前記反応槽群において、後段の反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第2測定手段と、
前記第1測定手段により測定された二酸化炭素濃度、及び前記第2測定手段により測定された二酸化炭素濃度に基づいて、前記反応群における生物処理の異常を検知する異常判定部と、を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項4】
前記異常判定部は、前記第1測定手段により測定された二酸化炭素濃度、前記第2測定手段により測定された二酸化炭素濃度、前記前段の反応槽に供給される空気量、前記後段の反応槽に供給される空気量、前記前段の反応槽内の液相部のpH、及び前記後段の反応槽内の液相部のpHに基づいて、前記反応槽群における生物処理の異常を検知することを特徴とする請求項3に記載の異常検知装置。
【請求項5】
有機物含有水を好気条件で生物処理する反応槽と、
前記反応槽から排出される処理水の一部をサンプル液として導入し、好気条件で生物処理する測定槽と、
前記請求項1又は2に記載の異常検知装置と、
前記異常判定部により前記反応槽における生物処理の異常が検知された際に、前記反応槽の運転条件を変更する制御部と、を備えることを特徴とする有機物含有水の処理装置。
【請求項6】
前記反応槽の運転条件は、前記反応槽へ供給する栄養剤の供給量、前記反応槽の曝気量、前記反応槽へ流入する有機物含有水の流量のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項5に記載の有機物含有水の処理装置。
【請求項7】
有機物含有水を好気条件で生物処理する直列2段以上の反応槽から構成される反応槽群と、
請求項3又は4に記載の異常検知装置と、
前記異常判定部により前記反応槽群における生物処理の異常が検知された際に、前記反応槽群の運転条件を変更する制御部と、を備えることを特徴とする有機物含有水の処理装置。
【請求項8】
前記反応槽群の運転条件は、前記反応増群を構成する直列2段以上の反応槽のうちの少なくとも1つの反応槽において、前記反応槽へ供給する栄養剤の供給量、前記反応槽の曝気量、前記反応槽へ流入する有機物含有水の流量、前記反応槽へ流入する有機物含有水の一部を迂回させるバイパス経路を流れる有機物含有水の流量のうちの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の有機物含有水の処理装置。
【請求項9】
有機物含有水を好気条件で生物処理する反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第1測定工程と、
前記反応槽から排出される処理水の一部をサンプル液として導入し、好気条件で生物処理する測定槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第2測定工程と、
前記第1測定工程により測定された二酸化炭素濃度、及び前記第2測定工程により測定された二酸化炭素濃度に基づいて、前記反応槽における生物処理の異常を検知する異常判定工程と、を備えることを特徴とする異常検知方法。
【請求項10】
有機物含有水を好気条件で生物処理する直列2段以上の反応槽から構成される反応槽群において、前段の反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第1測定工程と、
前記反応槽群において、後段の反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第2測定工程と、
前記第1測定工程により測定された二酸化炭素濃度、及び前記第2測定工程により測定された二酸化炭素濃度に基づいて、前記反応槽群における生物処理の異常を検知する異常判定工程と、を備えることを特徴とする異常検知方法。
【請求項11】
反応槽により、有機物含有水を好気条件で生物処理する生物処理工程と、
測定槽により、前記反応槽から排出される処理水の一部をサンプル液として導入し、好気条件で生物処理する測定用生物処理工程と、
前記請求項9に記載の異常検知方法を実施する異常検知工程と、
前記異常判定工程により前記反応槽における生物処理の異常が検知された際に、前記反応槽の運転条件を変更する制御工程と、を備えることを特徴とする有機物含有水の処理方法。
【請求項12】
直列2段以上の反応槽から構成される反応槽群により、有機物含有水を好気条件で生物処理する生物処理工程と、
請求項10に記載の異常検知方法を実施する異常検知工程と、
前記異常判定部により前記反応槽群における生物処理の異常が検知された際に、前記反応槽群の運転条件を変更する制御工程と、を備えることを特徴とする有機物含有水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常検知装置、異常検知方法、有機物含有水の処理装置、及び有機物含有水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物含有水の処理としては、好気条件下で生物処理を行う方法が一般的に用いられている。そして、生物処理の異常を検知する方法としては、例えば、オンラインTOC濃度計等により反応槽内の有機物濃度をモニタリングする方法がある。オンラインTOC濃度計は、少量の試料水を引き込むための細い配管を備えているが、この配管の内部において、懸濁物質(SS)や油分の蓄積、バイオフィルムの形成等によって目詰まりが生じるため、測定値が不安定になり、生物処理の異常を検知することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-175196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本開示の目的は、オンラインTOC濃度計を使用した従来法に代わる新たな生物処理の異常を検知する装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における異常検知装置は、有機物含有水を好気条件で生物処理する反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第1測定手段と、前記反応槽から排出される処理水の一部をサンプル液として導入し、好気条件で生物処理する測定槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第2測定手段と、前記第1測定手段により測定された二酸化炭素濃度、及び前記第2測定手段により測定された二酸化炭素濃度に基づいて、前記反応槽における生物処理の異常を検知する異常判定部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、前記異常検知装置において、前記異常判定部は、前記第1測定手段により測定された二酸化炭素濃度、前記第2測定手段により測定された二酸化炭素濃度、前記反応槽に供給される空気量、前記測定槽に供給される空気量、前記反応槽内の液相部のpH、及び前記測定槽内の液相部のpHに基づいて、前記反応槽における生物処理の異常を検知することが好ましい。
【0007】
また、本開示における異常検知装置は、有機物含有水を好気条件で生物処理する直列2段以上の反応槽から構成される反応槽群において、前段の反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第1測定手段と、前記反応槽群において、後段の反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第2測定手段と、前記第1測定手段により測定された二酸化炭素濃度、及び前記第2測定手段により測定された二酸化炭素濃度に基づいて、前記反応槽群における生物処理の異常を検知する異常判定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記異常検知装置において、前記異常判定部は、前記第1測定手段により測定された二酸化炭素濃度、前記第2測定手段により測定された二酸化炭素濃度、前記前段の反応槽に供給される空気量、前記後段の反応槽に供給される空気量、前記前段の反応槽内の液相部のpH、及び前記後段の反応槽内の液相部のpHに基づいて、前記反応槽群における生物処理の異常を検知することが好ましい。
【0009】
また、本開示の有機物含有水の処理装置は、有機物含有水を好気条件で生物処理する反応槽と、前記反応槽から排出される処理水の一部をサンプル液として導入し、好気条件で生物処理する測定槽と、前記異常検知装置と、前記異常判定部により前記反応槽における生物処理の異常が検知された際に、前記反応槽の運転条件を変更する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記有機物含有水の処理装置において、前記反応槽の運転条件は、前記反応槽へ供給する栄養剤の供給量、前記反応槽の曝気量、前記反応槽へ流入する有機物含有水の流量のうちの少なくともいずれか1つを含むことが好ましい。
【0011】
また、本開示の有機物含有水の処理装置は、有機物含有水を好気条件で生物処理する直列2段以上の反応槽から構成される反応槽群と、前記異常検知装置と、前記異常判定部により前記反応槽群における生物処理の異常が検知された際に、前記反応槽群の運転条件を変更する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記有機物含有水の処理装置において、前記反応槽群の運転条件は、前記反応増群を構成する直列2段以上の反応槽のうちの少なくとも1つの反応槽において、前記反応槽へ供給する栄養剤の供給量、前記反応槽の曝気量、前記反応槽へ流入する有機物含有水の流量、前記反応槽へ流入する有機物含有水の一部を迂回させるバイパス経路を流れる有機物含有水の流量のうちの少なくともいずれか1つを含むことが好ましい。
【0013】
また、本開示の異常検知方法は、有機物含有水を好気条件で生物処理する反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第1測定工程と、前記反応槽から排出される処理水の一部をサンプル液として導入し、好気条件で生物処理する測定槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第2測定工程と、前記第1測定工程により測定された二酸化炭素濃度、及び前記第2測定工程により測定された二酸化炭素濃度に基づいて、前記反応槽における生物処理の異常を検知する異常判定工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本開示の異常検知方法は、有機物含有水を好気条件で生物処理する直列2段以上の反応槽から構成される反応槽群において、前段の反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第1測定工程と、前記反応槽群において、後段の反応槽内の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を測定する第2測定工程と、前記第1測定工程により測定された二酸化炭素濃度、及び前記第2測定工程により測定された二酸化炭素濃度に基づいて、前記反応槽群における生物処理の異常を検知する異常判定工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本開示の有機物含有水の処理方法は、反応槽により、有機物含有水を好気条件で生物処理する生物処理工程と、測定槽により、前記反応槽から排出される処理水の一部をサンプル液として導入し、好気条件で生物処理する測定用生物処理工程と、前記異常検知方法を実施する異常検知工程と、前記異常判定工程により前記反応槽における生物処理の異常が検知された際に、前記反応槽の運転条件を変更する制御工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本開示の有機物含有水の処理方法は、直列2段以上の反応槽から構成される反応槽群により、有機物含有水を好気条件で生物処理する生物処理工程と、前記異常検知方法を実施する異常検知工程と、前記異常判定部により前記反応槽群における生物処理の異常が検知された際に、前記反応槽群の運転条件を変更する制御工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、生物処理の異常を検知することができる。また、生物処理の異常を検知する技術を利用して、生物処理を行う反応槽の運転条件を最適化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る有機物含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る有機物含有水の処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。
図3】第1反応槽におけるBOD除去率、及び第1反応槽の気相部の二酸化炭素濃度に対する第2反応槽の気相部の二酸化炭素濃度の比率それぞれの経日変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本開示を実施する一例であって、本開示は本実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る有機物含有水の処理装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示す処理装置1は、原水槽10、反応槽12、測定槽14、制御装置16、原水ポンプ18、流入ライン22、処理水ライン24,27、サンプル液ライン25を備える。
【0021】
また、図1に示す処理装置1は、栄養剤添加装置を備える。図1に示す栄養剤添加装置は、栄養剤を収容する栄養剤タンク26、栄養剤添加ライン28、及び栄養剤添加ライン28に設置される栄養剤添加ポンプ30を備える。
【0022】
原水槽10の原水出口には流入ライン22の一端が接続され、反応槽12の入口には流入ライン22の他端が接続されている。流入ライン22には原水ポンプ18が設置されている。また、流入ライン22には栄養剤添加ライン28の一端が接続され、栄養剤タンク26には栄養剤添加ライン28の他端が接続されている。反応槽12の出口には処理水ライン24の一端が接続されている。処理水ライン24には、サンプル液ライン25の一端が接続され、測定槽14の入口には、サンプル液ライン25の他端が接続されている。測定槽14の出口には、処理水ライン27が接続されている。
【0023】
また、図1に示す処理装置1は、異常検知装置を備える。図1に示す異常検知装置は、二酸化炭素濃度センサ32a,32b、異常判定部34を備える。
【0024】
二酸化炭素濃度センサ32aは、反応槽12内の気相部に設置され、二酸化炭素濃度センサ32bは、測定槽14内の気相部に設置されている。二酸化炭素濃度センサ32a,32bは、各槽の気相部に接続した配管内に設置されてもよい。二酸化炭素濃度センサ32a,32bを配管内に設置する場合には、結露を避けるために、配管の保温などを図るとともに、二酸化炭素濃度センサ32a,32bの直前の位置に、ミストセパレータを設置してもよい。また、腐食性ガスを除去する脱硫装置などを配置してもよい。脱硫装置としては、酸化鉄を充填したカートリッジ等が用いられる。各槽が開放系である場合には、測定結果における外気による影響を軽減するために、各槽の上部の開放部を極力小さくした上で、筒状の配管などを水面下まで挿入し、その配管において水面上となる位置に二酸化炭素濃度センサ32a,32bを配置してもよい。二酸化炭素濃度センサ32a,32bとしては、例えば、光学式、電気化学式あるいは半導体式のものを用いることができるが、特に、非分散型赤外線吸収法(NDIR)によるセンサを用いることが好ましい。二酸化炭素濃度の測定は、マニュアル(手動)で行ってもオンラインで行ってもよい。
【0025】
異常判定部34は、例えば、二酸化炭素濃度センサ32a,32bと有線又は無線で電気的に接続されている。また、異常判定部34は、例えば、制御装置16と有線又は無線で電気的に接続されている。異常判定部34は、例えば、プログラムを演算するCPU、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAMから構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、ROM等に記憶された所定のプログラムを読み出し、当該プログラムを実行する。例えば、異常判定部34は、二酸化炭素濃度センサ32a,32bにより測定された各二酸化炭素濃度に基づいて、反応槽12における生物処理の異常を検知する。
【0026】
反応槽12内及び測定槽14内には、微生物を保持した担体44が充填されている。担体44は、特に限定されるものではないが、例えば、プラスチック製担体、スポンジ状担体、ゲル状担体等が挙げられる。
【0027】
反応槽12内の底部及び測定槽14内の底部には、曝気装置46が設置されている。曝気装置46には気体供給ライン47が接続され、気体供給ライン47には、送気用のブロア49が設置されている。ブロア49から供給される空気は、気体供給ライン47を通り、曝気装置46から反応槽12内に供給されたり、測定槽14内に供給されたりする。
【0028】
制御装置16は、例えば、各ポンプ、ブロア及び異常判定部34と有線又は無線で電気的に接続されている。制御装置16は、例えば、プログラムを演算するCPU、プログラムや演算結果を記憶するROMおよびRAMから構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、ROM等に記憶された所定のプログラムを読み出し、当該プログラムを実行して、処理装置1の動作を制御する。例えば、制御装置16は、原水ポンプ18、栄養剤添加ポンプ30、ブロア49の稼働・停止を制御する。
【0029】
次に、図1に示す処理装置1の動作について説明する。
【0030】
制御装置16により、原水ポンプ18が稼働されると、原水槽10内の有機物含有水が流入ライン22を通り、反応槽12に供給される。また、制御装置16により、ブロア49が稼働されて、ブロア49から供給された空気が、気体供給ライン47を通り、曝気装置46から反応槽12に供給される。反応槽12内では、好気条件で、有機物含有水が、担体44に付着した微生物等により生物処理される(生物処理工程)。反応槽12で処理された処理水は、処理水ライン24へ排出され、処理水の一部は、サンプル液としてサンプル液ライン25から測定槽14に供給される。そして、制御装置16により、ブロア49が稼働されて、ブロア49から供給された空気が、気体供給ライン47を通り、曝気装置46から測定槽14に供給される。測定槽14内では、好気条件で、サンプル液が、担体44に付着した微生物等により生物処理される(測定用生物処理工程)。測定槽14で処理された処理水は、処理水ライン27へ排出される。
【0031】
ここで、反応槽12における生物処理の活性が低下すると、有機物含有水中の有機物の分解量が減少し、反応槽12内の液相部から放出される二酸化炭素の量は減少する。そして、有機物濃度の高いサンプル液が測定槽14に供給されるので、測定槽14内では、有機物の分解量が増加して、測定槽14内の液相部から放出される二酸化炭素の量は増加する。上記各槽内での二酸化炭素濃度の増減は一例であるが、いずれにしろ、反応槽12における生物処理に異常が生じれば、反応槽12及び測定槽14の少なくともいずれか一方における二酸化炭素濃度は変動する。そこで、図1に示す処理装置1では、反応槽12及び測定槽14において測定した二酸化炭素濃度から、反応槽12における生物処理の異常を検知する。具体的には、反応槽12内の液相部から放出された気体中の二酸化炭素濃度が、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定され(第1測定工程)、測定槽14内の液相部から放出された気体中の二酸化炭素濃度が、二酸化炭素濃度センサ32bにより測定される(第2測定工程)。そして、異常判定部34は、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定された二酸化炭素濃度及び二酸化炭素濃度センサ32bにより測定された二酸化炭素濃度に基づいて、反応槽12の異常を検知する(異常検知工程)。例えば、異常判定部34は、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定された二酸化炭素濃度と、二酸化炭素濃度センサ32bにより測定された二酸化炭素濃度との差を求め、その差が所定値以下となった場合、或いは二酸化炭素濃度センサ32aにより測定された二酸化炭素濃度に対する二酸化炭素濃度センサ32bにより測定された二酸化炭素濃度の比率を求め、その比率が所定値以上となった場合、反応槽12における生物処理が異常であると判定する。また、反応槽12内に導入される二酸化炭素濃度及び測定槽14内に導入される二酸化炭素濃度を測定し、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定された二酸化炭素濃度と反応槽12内に導入される二酸化炭素濃度との濃度差、及び二酸化炭素濃度センサ32bにより測定された二酸化炭素濃度と測定槽14内に導入される二酸化炭素濃度との濃度差を使用して、上記と同様に、反応槽12における生物処理の異常を検知してもよい。各槽に導入される二酸化炭素濃度は、各槽に空気を供給する装置(例えば曝気装置46等)と当該装置に空気を供給するブロアとを接続する配管に二酸化炭素濃度センサを設置し、当該センサにより測定された値を使用すればよい。
【0032】
各槽の液相部から放出される二酸化炭素は、有機物含有水(サンプル液を含む)の生物処理により生成する二酸化炭素の他に、曝気装置46等から各槽に供給される空気中の二酸化炭素、及び有機物含有水(サンプル液を含む)に溶解している無機炭酸の形態が、有機物含有水のpHにより二酸化炭素に変化して、有機物含有水から放出された二酸化炭素等も含まれる。したがって、生物処理の異常検知の精度を高めるには、これらを考慮することが望ましい。そこで、異常判定部34は、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定された二酸化炭素濃度及び二酸化炭素濃度センサ32bにより測定された二酸化炭素濃度に加え、反応槽12に供給される空気量、測定槽14に供給される空気量、反応槽12内の液相部のpH、測定槽14内の液相部のpHに基づいて、反応槽12における生物処理の異常を検知することが望ましい。例えば、異常判定部34は、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定された二酸化炭素濃度と、反応槽12に供給される空気量と、反応槽12内の液相部のpHに対応する補正係数とを積算した評価値Aを算出する。また、異常判定部34は、二酸化炭素濃度センサ32bにより測定された二酸化炭素濃度と、測定槽14に供給される空気量と、測定槽14内の液相部のpHに対応する補正係数とを積算した評価値Bを算出する。なお、有機物含有水やサンプル液に溶解している無機炭酸が二酸化炭素として放出され易いか否かはpHに依存するので、上記補正係数は、このpH依存性を考慮して、各pHに対して設定される。そして、異常判定部34は、評価値Aと評価値Bの差が所定値以下となった場合、或いは評価値Aに対する評価値Bの比率が所定値以上となった場合、反応槽12における生物処理が異常であると判定する。
【0033】
前述した反応槽12や測定槽14に供給される空気量は、例えば、曝気装置46から供給される空気量や、槽内に設置される担体分離用スクリーンを空気洗浄する洗浄装置が設置される場合には、その洗浄装置から供給される空気量等である。したがって、反応槽12や測定槽14に供給される空気量は、例えば、曝気装置46に空気を供給する気体供給ライン47や洗浄装置に空気を供給する気体供給ラインに風量計を設置し、当該風量計により測定された値を使用すればよい。また、反応槽12や測定槽14から排出される気体量を反応槽12や測定槽14に供給される空気量としてもよい。例えば、反応槽12や測定槽14が覆蓋されている場合は、反応槽12や測定槽14から気体が排出される配管などに風量計を設置し、当該風量計により測定された値を反応槽12や測定槽14に供給される空気量とする。また、例えば、反応槽12や測定槽14が覆蓋されていない開放系である場合には、反応槽12や測定槽14の上部の開放部を極力小さくした上で、筒状の配管などを水面下まで挿入し、その配管に風量計を設置し、当該風量計により測定された値を反応槽12や測定槽14に供給される空気量とする。また、反応槽12内の液相部のpH及び測定槽14内の液相部のpHは、例えば、反応槽12内の液相部に設置したpH計及び測定槽14内の液相部に設置したpH計により測定される。
【0034】
また、評価値Aは、上記項目と、反応槽12内の液相部の温度(水温)に対応する補正係数とを積算した値でもよい。また、評価値Bは、上記項目と、測定槽14内の液相部の温度(水温)に対応する補正係数とを積算した値でもよい。
【0035】
図1に示す処理装置1では、異常判定部34により、反応槽12における生物処理の異常が検知されると、異常判定部34から制御装置16に異常検知を通知する信号が送信される。そして、制御装置16は、反応槽12の運転条件を変更し(制御工程)、発生した異常に対処する。例えば、制御装置16は、異常検知の信号を受けると、反応槽12へ供給する栄養剤の添加量を変更したり、反応槽12への曝気量を変更したり、反応槽12へ流入する有機物含有水の流量を変更したりする。具体的には、制御装置16は、栄養剤添加ポンプ30を稼働させたり出力を上げたりして、栄養剤タンク26から栄養剤添加ライン28を通して反応槽12に栄養剤を供給したり、栄養剤の供給量を増やしたりして、反応槽12における生物処理能力を高める。また、制御装置16は、ブロア49の出力を上げて、曝気装置46から反応槽12へ供給される空気量(曝気量)を増やして、反応槽12における生物処理能力を高める。また、制御装置16は、原水ポンプ18の出力を下げて、流入ライン22から反応槽12へ供給される有機物含有水の流量を下げて、反応槽12の負荷を下げる。本実施形態では、上記の栄養剤の添加量、曝気量、有機物含有水の流量の変更の処理のうち少なくともいずれか1つを実施することが好ましい。
【0036】
図2は、本実施形態に係る有機物含有水の処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。図2の処理装置2において、図1の処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図2の処理装置2は、第1反応槽12a及び第2反応槽12bを有する反応槽群を備える。反応槽群は、第1反応槽12aを前段とし、第2反応槽12bを後段として、第1反応槽12a及び第2反応槽12bを直列配置した構成となっている。なお、反応槽群は、反応槽を3段以上に直列配置した構成でもよい。
【0037】
原水槽10の原水出口には流入ライン22aの一端が接続され、第1反応槽12aの入口には流入ライン22aの他端が接続されている。第1反応槽12aの出口には流入ライン22bの一端が接続され、第2反応槽12bの入口には流入ライン22bの他端が接続されている。第2反応槽12bの出口には処理水ライン24が接続されている。また、流入ライン22aには、栄養剤添加ライン28aの一端が接続され、栄養剤タンク26aには栄養剤添加ライン28aの他端が接続されている。また、流入ライン22bには、栄養剤添加ライン28bの一端が接続され、栄養剤タンク26bには栄養剤添加ライン28bの他端が接続されている。流入ライン22aには、バイパスライン31の一端が接続され、流入ライン22bには、バイパスライン31の他端が接続されている。バイパスラインにはバルブ33が設けられている。なお、反応槽群においてバイパスライン31は必須の構成ではない。
【0038】
図2に示す処理装置2では、二酸化炭素濃度センサ32aが、第1反応槽12a内の気相部に設置され、二酸化炭素濃度センサ32bが、第2反応槽12b内の気相部に設置されている。なお、反応槽群が3段以上の反応槽から構成されている場合、二酸化炭素濃度センサ32aは、最後段の反応槽以外であればいずれの反応槽に設置されていてもよいが、好ましくは最前段の反応槽に設置されることが好ましい。また、反応槽群が3段以上の反応槽から構成されている場合、二酸化炭素濃度センサ32bは、二酸化炭素濃度センサ32aが設置された反応槽より下流にある反応槽のいずれの反応槽に設置されていてもよいが、二酸化炭素濃度センサ32aが設置された反応槽の直後の反応槽に設置されることが好ましい。
【0039】
制御装置16は、例えば、バルブ33と有線又は無線で電気的に接続されており、バルブ33の開閉度を制御する。
【0040】
次に、図2に示す処理装置2の動作について説明する。
【0041】
制御装置16により、原水ポンプ18が稼働され、原水槽10内の有機物含有水が流入ライン22aを通り、第1反応槽12aに供給される。また、制御装置16により、ブロア49が稼働されて、曝気装置46から空気が第1反応槽12aに供給される。第1反応槽12a内では、好気条件で、有機物含有水が、担体44に付着した微生物等により生物処理される(生物処理工程)。第1反応槽12aで処理された中間処理水は、流入ライン22bを通り、第2反応槽12bに供給される。そして、制御装置16により、ブロア49が稼働されて、曝気装置46から空気が第2反応槽12bに供給される。第2反応槽12b内では、好気条件で、中間処理水が、担体44に付着した微生物等により生物処理される(生物処理工程)。第2反応槽12bで処理された処理水は、処理水ライン24へ排出される。
【0042】
反応槽群における生物処理に異常が生じれば、第1反応槽12a及び第2反応槽12bの少なくともいずれか一方における二酸化炭素濃度が変動する。そこで、図2に示す処理装置2では、第1反応槽12a及び第2反応槽12bにおいて測定した二酸化炭素濃度から、反応槽群における生物処理の異常を検知する。具体的には、第1反応槽12a内の液相部から放出された気体中の二酸化炭素濃度が、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定され(第1測定工程)、第2反応槽12b内の液相部から放出された気体中の二酸化炭素濃度が、二酸化炭素濃度センサ32bにより測定される(第2測定工程)。そして、異常判定部34は、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定された二酸化炭素濃度及び二酸化炭素濃度センサ32bにより測定された二酸化炭素濃度に基づいて、反応槽群における生物処理の異常を検知する(異常判定工程)。二酸化炭素濃度に基づく異常検知の例は前述の通りであるので省略する。
【0043】
また、異常判定部34は、生物処理の異常検知の精度を高める点で、二酸化炭素濃度センサ32aにより測定された二酸化炭素濃度及び二酸化炭素濃度センサ32bにより測定された二酸化炭素濃度に加え、前段の反応槽である第1反応槽12aに供給される空気量、後段の反応槽である第2反応槽12bに供給される空気量、第1反応槽12a内の液相部のpH、第2反応槽12b内の液相部のpHに基づいて、反応槽群における生物処理の異常を検知することが望ましい。また、第1反応槽12a内の液相部の温度(水温)、第2反応槽12b内の液相部の温度(水温)を考慮してもよい。これらの項目に基づく異常検知の例は前述の通りであるので省略する。
【0044】
図2に示す処理装置2では、異常判定部34により、反応槽群における生物処理の異常が検知されると、異常判定部34から制御装置16に異常検知を通知する信号が送信される。そして、制御装置16は、反応槽群の運転条件を変更し(制御工程)、発生した異常に対処する。例えば、制御装置16は、異常検知の信号を受けると、第1反応槽12aや第2反応槽12bへ供給する栄養剤の添加量を変更したり、第1反応槽12aや第2反応槽12bへの曝気量を変更したり、第1反応槽12aや第2反応槽12bへ流入する有機物含有水(中間処理水も含む)の流量を変更したり、バイパスライン31を流れる有機物含有水の流量を変更したりする。具体的には、制御装置16は、栄養剤添加ポンプ30a,30bを稼働させたり出力を上げたりして、栄養剤タンク26a,26bから栄養剤添加ライン28a,28bを通して第1反応槽12a、第2反応槽12bに栄養剤を供給したり栄養剤の供給量を増やしたりして、反応槽における生物処理能力を高める。また、制御装置16は、ブロア49の出力を上げて、曝気装置46から第1反応槽12a,第2反応槽12bへ供給される空気量(曝気量)を増やして、反応槽12における生物処理能力を高める。また、制御装置16は、原水ポンプ18の出力を下げたり、バイパスライン31のバルブ33の開度を上げたりして、流入ライン22aから第1反応槽12へ供給される有機物含有水の流量を下げて、第1反応槽12aの負荷を下げる。また、制御装置16は、バイパスライン31のバルブ33の開度を下げて、バイパスライン31を流れる有機物含有水の流量を下げて、第2反応槽12bの負荷を下げる。本実施形態では、上記の栄養剤の添加量、曝気量、有機物含有水の流量の変更の処理のうち少なくともいずれか1つを実施することが好ましい。また、これらの処理については、反応槽群を構成する複数の反応槽のうちの少なくともいずれか1つの反応槽に対して行えばよいが、反応槽群の異常をより速やかに正常に戻すことができる等の点で、少なくとも最前段の反応槽(図2では、第1反応槽12a)に対して行うことが好ましい。
【0045】
以下、本実施形態の処理装置の運転条件等を説明する。
【0046】
反応槽内のpHは、微生物の育成等の点から、例えば、弱酸性~弱アルカリ性に調整されることが好ましく、pH6~8の範囲に調整されることがより好ましい。
【0047】
反応槽内の溶存酸素濃度は、例えば、0.5 mg/L以上であることが好ましく、1 mg/L以上であることがより好ましい。
【0048】
反応槽の後段には、固液分離装置を設置してもよい。特に、処理水を河川放流する場合には、反応槽の後段に固液分離装置を設置することが好ましい。固液分離装置は、従来公知の装置等であり、例えば、沈澱池、加圧浮上装置、除濁膜装置、MBR等が挙げられる。
【0049】
反応槽は、好気条件下で生物処理を行うように構成されていればよい。生物処理は、例えば、活性汚泥法、MBR、生物膜法、グラニュール法等が挙げられ、BOD除去性能を高めることができる点で、生物膜法が好ましい。生物膜法としては、反応槽内に充填された担体が流動しない固定床式でもよいし、担体が流動する流動床式でもよい。なお、流動床式は原水のショートパスがおきにくい、メンテナンス性に優れる、導入コストが低い等といったメリットがある。直列2段以上の反応槽から構成される反応槽群の場合には、例えば、前段を流動床式の生物膜法、後段を活性汚泥法とする組合せ、前段を流動床式の生物膜法、後段を流動床式の生物膜法とする組合せ、前段を流動床式の生物膜法、後段をMBRとする組合せ等が好ましい。
【0050】
担体は、例えば、プラスチック製担体、スポンジ状担体、ゲル状担体等が挙げられるが、これらの中では、コストや耐久性の点で、スポンジ状担体が好ましい。
【0051】
担体のセル数(細孔の数)は、生物処理の処理速度を向上させる点で、好ましくは30個/25mm以上であり、より好ましくは30個/25mm以上、100個/25mm以下であり、さらに好ましくは40個/25mm以上、100個/25mm以下であり、特に好ましくは46個/25mm以上、100個/25mm以下である。担体のセル数は、例えば、JIS K 65400-1(附属書1)に基づいて求められる。
【0052】
担体の表面積は、生物処理の処理速度を向上させる点で、好ましくは3000m/m以上であり、より好ましくは3500m/m以上であり、さらに好ましくは4000m/m以上であり、特に好ましくは4500m/m以上である。担体の表面積の上限は、セル数や担体の大きさ等を考慮して決めればよく、特に制限はない。
【0053】
担体の生物付着量は、生物処理の処理速度を向上させる点で、500mg/L以上であることが好ましく、1000mg/L以上であることがより好ましい。担体の生物付着量は多ければ多い方がよく、特に上限はないが、上限は、例えば、5000mg/Lである。
【0054】
担体の形状は、特に限定されず、立方体状等の四角体状、粒状、球状、ペレット状、円筒状、繊維状、フィルム状等が挙げられる。
【0055】
担体の大きさは、特に限定されず、反応槽の大きさや担体の形状等に応じて、適宜設定されればよく、例えば、立方体状であれば、一辺の長さが3~20mmの範囲が好ましく、球状であれば、径が0.5~20mm程度の範囲が好ましい。担体の大きさは、ノギスまたはマイクロスコープ等を用いて測定することができる。
【0056】
担体の比重は、反応槽内部で流動状態を形成するために、少なくとも1.0より大きく、真比重として、1.1以上、または見かけ比重として、1.01以上のものが好ましい。
【0057】
反応槽への担体の投入量は、反応槽の容積に対して10~70%の範囲が好ましい。担体の投入量が反応槽の容積に対して10%未満であると反応速度が小さくなる場合があり、70%を超えると担体が流動しにくくなり、長期運転において汚泥による閉塞等で原水がショートパスし処理水質が悪くなる場合がある。
【0058】
反応槽に添加する栄養剤としては、例えば、リン源、窒素源、微量元素等が挙げられる。窒素源としては、窒素化合物であれば特に制限はないが、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、尿素等が挙げられる。工場で発生した余剰の廃硫酸アンモニウム等も適用可能である。リン源としては、リン酸及びリン化合物であれば特に制限はないが、例えば、リン酸二カリウム,リン酸二ナトリウム,リン酸一カリウム,リン酸一ナトリウム,リン酸アンモニウム等が挙げられる。微量元素としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属類、鉄、マンガン、亜鉛等の金属類等が挙げられる。
【0059】
有機物含有水中のリン源、窒素源、微量元素は、反応槽内の微生物の栄養源として、微生物の細胞内に取り込まれる。したがって、反応槽における生物処理の異常を検知した際には、前述したように、栄養剤を反応槽に添加することが好ましい。ただし、反応槽内の溶解性リン濃度が高い状態であると、有機物の分解に伴う余剰汚泥の発生量が増加するため、反応槽における生物処理の異常が検知されず、正常の間は、反応槽へのリン源の添加量を抑えて、反応槽内の溶解性リン濃度を0.5mg/L以下に維持すること、好ましくは0.1mg/L以下に維持することが好ましい。また、反応槽内の溶解性窒素濃度が枯渇状態であると、BOD除去速度が低下する場合がある。したがって、反応槽における生物処理の異常が検知された場合には、反応槽へ窒素源を添加して、反応槽内の溶解性窒素濃度を3mg/L以上に維持すること、好ましくは5mg/L以上に維持することが好ましい。
【0060】
処理対象である有機物含有水は、生物処理が適用可能な水であれば特に限定されないが、例えば、下水処理、食品工場をはじめ、化学工場、半導体工場・液晶工場、紙パルプ工場、その他の分野から排出される有機性排水等が挙げられる。
【0061】
<実験例>
下記に示す試験条件で、直列2段の反応槽を有する反応槽群に、イソプロピルアルコール含有排水を通水し、生物処理を行った。
【0062】
<試験条件>
第1反応槽の容積:19L
第2反応槽の容積:10L
担体:疎水性ポリウレタン製のスポンジ状担体
担体充填率:嵩体積として30%充填
第1反応槽の滞留時間:11.5hrs
第2反応槽の滞留時間:6hrs
イソプロピルアルコール含有排水:BOD約940mg/L、Nは2mg/L以下、Pは0.1mg/L以下
第1反応槽のBOD容積負荷:約2.0kg/m/day
反応槽群全体のBOD容積負荷:約1.3kg/m/day
水温:約20℃
第1反応槽及び第2反応槽の槽内DO:2mg/L以上
第1反応槽及び第2反応槽の槽内pH:6.8~7.8
第1反応槽の曝気風量:10L/min
第2反応槽の曝気風量:5L/min
【0063】
イソプロピルアルコール含有排水に、尿素とリン酸を添加し、N濃度54mg/L、P濃度5.0mg/Lとして、当該排水を第1反応槽へ全量流入させて、反応槽群にて生物処理を行った。そして、試験期間中の第1反応槽におけるBOD除去率を算出した。また、試験期間中の第1反応槽の気相部の二酸化炭素濃度に対する第2反応槽の気相部の二酸化炭素濃度の比率を算出した。その結果を図3に示す。なお、図3の二酸化炭素濃度比率(%)は、第1反応槽の気相部の二酸化炭素濃度に対する第2反応槽の気相部の二酸化炭素濃度の比率のことを意味している。
【0064】
図3に示すように、第1反応槽におけるBOD除去率が低下した時に、第1反応槽の気相部の二酸化炭素濃度に対する第2反応槽の気相部の二酸化炭素濃度の比率が上昇している。このことから、反応槽群における生物処理の異常を検知するのに、第1反応槽の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度、第2反応槽の液相部から放出される気体中の二酸化炭素濃度を使用することは非常に有効であると言える。
【符号の説明】
【0065】
1,2 処理装置、10 原水槽、12 反応槽、12a 第1反応槽、12b 第2反応槽、14 測定槽、16 制御装置、18 原水ポンプ、22,22a,22b 流入ライン、24,27 処理水ライン、25 サンプル液ライン、26,26a,26b 栄養剤タンク、28,28a,28b 栄養剤添加ライン、30,30a,30b 栄養剤添加ポンプ、31 バイパスライン、32a,32b 二酸化炭素濃度センサ、33 バルブ、34 異常判定部、44 担体、46 曝気装置、47 気体供給ライン、49 ブロア。
図1
図2
図3