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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168089
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】切替止水弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 35/04 20060101AFI20241128BHJP
   F16K 35/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F16K35/04
F16K35/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084496
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健介
【テーマコード(参考)】
3H064
【Fターム(参考)】
3H064AA04
3H064AA05
3H064BA01
3H064CA05
3H064DA02
3H064DB05
(57)【要約】
【課題】クリック機構の動作の安定性を高めることが可能な切替止水弁を提供すること。
【解決手段】切替ハンドルが正逆に回される操作により吐水先を止水位置から第1の吐水先と第2の吐水先とに選択的に切り替えられる切替止水弁は、切替操作軸2が止水位置に戻される動作にクリック感を付与するクリック機構5を有する。クリック機構5は、切替操作軸2から軸径方向に突出するピン5Jと、弁ケースに取り付くキャップ4に対して筒軸方向のスライドのみが可能となるように筒径方向と筒周方向とに移動規制された状態に組み付けられるスライダ5Kと、スライダ5Kをキャップ4に対してピン5Jに筒軸方向に押し付ける付勢力を作用させるばね5Lと、を有する。スライダ5Kが、切替操作軸2が止水位置に戻される動作により、ばね5Lの弾発力によってピン5Jにクリック感を付与するように筒軸方向に嵌合される嵌合溝K3を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切替ハンドルが止水位置から正逆に回される操作により吐水先を第1の吐水先と第2の吐水先とに選択的に切り替える切替止水弁であって、
前記切替ハンドルが取り付けられる切替操作軸と、
該切替操作軸が筒内の通水路に筒軸方向に通される筒状の弁ケースと、
該弁ケースのケース外部において、前記切替操作軸が前記止水位置に戻される動作にクリック感を付与するクリック機構と、を有し、
前記クリック機構が、前記切替操作軸から軸径方向に突出するピンと、前記弁ケース又はこれに取り付く取付部材に対して筒軸方向のスライドのみが可能となるように筒径方向と筒周方向とに移動規制された状態に組み付けられるスライダと、該スライダを前記弁ケース又は前記取付部材に対して前記ピンに筒軸方向に押し付ける付勢力を作用させるばねと、を有し、前記スライダが、前記切替操作軸が前記止水位置に戻される動作により、前記ばねの弾発力によって前記ピンに前記クリック感を付与するように筒軸方向に嵌合される嵌合溝を有する切替止水弁。
【請求項2】
請求項1に記載の切替止水弁であって、
前記取付部材が、前記切替操作軸を筒軸方向に通すように前記弁ケースのケース外部に装着されるキャップとされ、
前記ばねが、前記弁ケース又は前記取付部材と前記スライダとの間に筒軸方向に挟まれて配置される圧縮コイルばねとされる切替止水弁。
【請求項3】
請求項2に記載の切替止水弁であって、
前記ばねが、そのコイル内に前記切替操作軸を筒軸方向に通すように配置される単数の構成とされる切替止水弁。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の切替止水弁であって、
前記ピンと前記スライダと前記ばねとが、前記弁ケースからこの順に筒軸方向に並ぶように配置され、
前記取付部材が、前記切替操作軸の前記切替ハンドルが取り付く筒軸方向の先端に向かって小径となるように大径部と小径部とが並ぶ段付き円筒形状とされ、
前記ばねが、前記スライダよりも小径とされ、前記スライダが、前記取付部材の前記大径部に組み込まれ、前記ばねが、前記取付部材の前記小径部に組み込まれる切替止水弁。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の切替止水弁であって、
前記ピンが、前記切替操作軸から2回対称に突出するように前記切替操作軸の中心軸線を通って軸径方向に貫通され、
前記嵌合溝が、前記切替操作軸から2回対称に突出する前記ピンの各突出部分に嵌合される切替止水弁。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の切替止水弁であって、
前記ピンが、金属部材から成り、前記スライダが、樹脂部材から成る切替止水弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切替止水弁に関する。詳しくは、切替ハンドルが止水位置から正逆に回される操作により吐水先を第1の吐水先と第2の吐水先とに選択的に切り替える切替止水弁である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、切替ハンドルが止水位置から正逆に回される操作により吐水先をカランとシャワとに選択的に切り替えると同時に、吐水状態を止水から吐水へと切り替える切替止水弁が開示されている。この切替止水弁には、切替ハンドルが止水位置に戻される動作にクリック感を付与するクリック機構が設けられている。
【0003】
クリック機構は、切替ハンドルの操作により相対回転する2部材のうちの一方に設けられた板ばねが、他方の部材に対して、弾発力により嵌合される構成とされる。板ばねは、常時、他方の部材に対して弾発力により押し付けられた状態とされる。板ばねは、切替ハンドルの操作に伴い他方の部材に沿って摺動し、切替ハンドルが止水位置に合わされることで、他方の部材に形成された凹部に弾発力により嵌合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6057845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、クリック機構が、板ばね自体の撓みを利用してクリック動作する構成となっている。そのため、板ばねが長期使用に伴い摩耗劣化やへたれを生じると、クリック動作を適切に行えなくなる。また、板ばねが硬すぎると切替ハンドルの操作が重くなり、板ばねが軟らかすぎると良好なクリック感を得られないことから、板ばねの硬さ調整が難しい。そこで、本発明は、クリック機構の動作の安定性を高めることが可能な切替止水弁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の切替止水弁は、次の手段をとる。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明は、切替ハンドルが止水位置から正逆に回される操作により吐水先を第1の吐水先と第2の吐水先とに選択的に切り替える切替止水弁であって、前記切替ハンドルが取り付けられる切替操作軸と、該切替操作軸が筒内の通水路に筒軸方向に通される筒状の弁ケースと、該弁ケースのケース外部において、前記切替操作軸が前記止水位置に戻される動作にクリック感を付与するクリック機構と、を有し、前記クリック機構が、前記切替操作軸から軸径方向に突出するピンと、前記弁ケース又はこれに取り付く取付部材に対して筒軸方向のスライドのみが可能となるように筒径方向と筒周方向とに移動規制された状態に組み付けられるスライダと、該スライダを前記弁ケース又は前記取付部材に対して前記ピンに筒軸方向に押し付ける付勢力を作用させるばねと、を有し、前記スライダが、前記切替操作軸が前記止水位置に戻される動作により、前記ばねの弾発力によって前記ピンに前記クリック感を付与するように筒軸方向に嵌合される嵌合溝を有する切替止水弁である。
【0008】
第1の発明によれば、スライダを付勢するばねの硬さ調整により、スライダをピンに対して弾性的に嵌脱させるクリック感の強さの調整を行うことが可能となる。したがって、互いに摺動を伴って嵌脱されるスライダとピンとを摩耗劣化の生じにくい構成にしても、ばねの硬さ調整によって良好なクリック感を得ることができる。そのようなことから、クリック機構の動作の安定性を高めることができる。
【0009】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記取付部材が、前記切替操作軸を筒軸方向に通すように前記弁ケースのケース外部に装着されるキャップとされ、前記ばねが、前記弁ケース又は前記取付部材と前記スライダとの間に筒軸方向に挟まれて配置される圧縮コイルばねとされる切替止水弁である。
【0010】
第2の発明によれば、弁ケースのケース外部において、クリック機構をキャップにより外部に対して適切に被覆した状態に配置することができる。
【0011】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、前記ばねが、そのコイル内に前記切替操作軸を筒軸方向に通すように配置される単数の構成とされる切替止水弁である。
【0012】
第3の発明によれば、1つのばねで、スライダをばね力の偏りが生じないように筒軸方向に適切に付勢することができる。それにより、クリック機構の動作の安定性をより高めることができる。また、ばねのコイル内に切替操作軸を通す配置とすることで、ばねを合理的に配置することができる。
【0013】
本発明の第4の発明は、上記第2又は第3の発明において、前記ピンと前記スライダと前記ばねとが、前記弁ケースからこの順に筒軸方向に並ぶように配置され、前記取付部材が、前記切替操作軸の前記切替ハンドルが取り付く筒軸方向の先端に向かって小径となるように大径部と小径部とが並ぶ段付き円筒形状とされ、前記ばねが、前記スライダよりも小径とされ、前記スライダが、前記取付部材の前記大径部に組み込まれ、前記ばねが、前記取付部材の前記小径部に組み込まれる切替止水弁である。
【0014】
第4の発明によれば、クリック機構を弁ケースのケース外部において筒軸方向の先端に向かって先細りとなるようにコンパクトに設けることができる。
【0015】
本発明の第5の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記ピンが、前記切替操作軸から2回対称に突出するように前記切替操作軸の中心軸線を通って軸径方向に貫通され、前記嵌合溝が、前記切替操作軸から2回対称に突出する前記ピンの各突出部分に嵌合される切替止水弁である。
【0016】
第5の発明によれば、ピンが切替操作軸から1方向にのみ突出する構成と比べて、スライダの嵌合溝を偏りが生じないようにピンに嵌合させることができる。それにより、クリック機構の動作の安定性をより高めることができる。
【0017】
本発明の第6の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記ピンが、金属部材から成り、前記スライダが、樹脂部材から成る切替止水弁である。
【0018】
第6の発明によれば、ピンとスライダとの当たりが金属同士の当たりとならないため、クリック動作時に異音が生じにくくなる。また、ばねの硬さ調整によりクリック感の強さの調整を行えることから、スライダが樹脂部材であってもスライダを摩耗劣化させにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る切替止水弁の概略構成を表す斜視図である。
図2】切替ハンドルを切替止水弁から取り外した分解斜視図である。
図3】切替止水弁の斜視図である。
図4】切替止水弁をピンの中心軸線を通る垂直面で切断した縦断面図である。
図5】切替止水弁の分解斜視図である。
図6】切替止水弁の主要部を組み立てた斜視図である。
図7図6のVII矢視図である。
図8】クリック機構の主要部を組み立てた斜視図である。
図9】スライダがピンに嵌合した状態を表す斜視図である。
図10】切替操作軸が止水位置から回された状態を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
《第1の実施形態》
(切替止水弁1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る切替止水弁1の構成について、図1図10を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。
【0022】
各図中に示す方向は、それぞれ、切替止水弁1が設けられる支柱Bの正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図10のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る切替止水弁1は、シャワ室に設置されるシャワユニットの支柱Bに組み込まれている。切替止水弁1は、上記支柱Bの手前側面に設けられた切替ハンドルHの操作により吐水状態を切り替える手動式の操作弁として構成されている。図2に示すように、切替止水弁1は、支柱Bの手前側面にあけられた正面視正円状の通し孔A内に図示奥側から通されるように組み込まれている。切替止水弁1は、支柱Bの内部に一体的に固定されている。
【0024】
切替ハンドルHは、上記通し孔Aに通された切替止水弁1の先端の切替操作軸2に図示手前側から嵌合されて一体的に組み付けられている。具体的には、切替ハンドルHは、切替操作軸2の先端部に対し、図示手前側から差し込まれることで、回転方向に一体的となるようにセレーション嵌合されている。そして、切替ハンドルHは、その中心部に図示手前側から不図示のねじが差し込まれて締結されることにより、切替操作軸2と一体的に固定されている。
【0025】
上記連結により、切替ハンドルHは、使用者により初期の止水位置(中立位置)から左右に回されることにより、切替操作軸2をその操作された方向に一体的に回転させる。それにより、切替止水弁1が、初期の止水状態から、切替操作軸2の操作によって選択される吐水先に向けて吐水を行う通水状態へと切り替えられる。
【0026】
具体的には、切替止水弁1は、切替ハンドルHが初期の止水位置にある時には、不図示の支柱B内を通る給水路から供給される湯水を弁内部の通水路で堰き止める止水状態とされる。切替止水弁1は、切替ハンドルHが初期の止水位置から右に回されることで、弁内部の通水路が不図示のハンドシャワへと繋がる第1の吐水先と連通する状態へと切り替えられる。それにより、切替止水弁1の弁内部を通る湯水が、第1の吐水先へと吐水される。
【0027】
また、切替止水弁1は、切替ハンドルHが初期の止水位置から左に回されることで、弁内部の通水路が不図示のオーバーヘッドシャワへと繋がる第2の吐水先と連通する状態へと切り替えられる。それにより、切替止水弁1の弁内部を通る湯水が、第2の吐水先へと吐水される。
【0028】
このように、切替止水弁1は、切替ハンドルHが初期の止水位置から正逆(左右)に回される操作により、吐水先を第1の吐水先と第2の吐水先とに選択的に切り替える構成とされる。なお、切替止水弁1の吐水先は、第1の吐水先が不図示のオーバヘッドシャワへと繋がり、第2の吐水先が不図示のハンドシャワへと繋がる構成であっても良い。これらの吐水先は、オーバヘッドシャワやハンドシャワの他、カランやボディシャワ等の吐水先であっても良い。
【0029】
上記切替止水弁1には、更に、切替ハンドルHが左右に回された位置から初期の止水位置へと戻される動作に対してクリック感を付与することが可能なクリック機構5が設けられている。このクリック機構5により、切替ハンドルHが初期の止水位置に戻されたことを、使用者がスイッチを押したような音や手応えで感じることができるようになっている。
【0030】
(切替止水弁1の各部構成)
以下、上述したクリック機構5の具体的な構成について、切替止水弁1の基本構成と合わせて詳しく説明する。先ず、クリック機構5を含む切替止水弁1の基本構成について、各構成部品の概略と共に説明する。その後に、各構成部品の細部の構成について説明する。
【0031】
図3に示すように、切替止水弁1は、図示前後方向に軸方向を向ける略円筒状のユニット部品として構成されている。具体的には、図4図6に示すように、切替止水弁1は、切替操作軸2と、弁ケース3と、キャップ4と、クリック機構5と、を有する。
【0032】
図4に示すように、切替操作軸2は、その先端を残す奥側部分(通水管部2B)が弁ケース3に挿通されている。切替操作軸2は、その中心軸線まわりの回転により、切替止水弁1の弁内部の通水路と弁外部の図示しない通水路との通水状態を切り替えるように機能する。弁ケース3は、略円筒形状の通水路を成す内外二重の筒構造から成る。
【0033】
弁ケース3は、その図示奥端の開口である給水口Sからケース内部の通水路に湯水が供給されるようになっている。図5図6に示すように、弁ケース3は、切替操作軸2が左右に回されることにより、その筒壁に形成された第1吐出口C1,D1及び第2吐出口C2,D2が選択的に開かれて、ケース内部の湯水を外部へと吐水するようになっている。
【0034】
図4に示すように、キャップ4は、弁ケース3に図示手前側から被せられるように装着されている。キャップ4は、弁ケース3の図示手前側に外付けされるクリック機構5を外部に対して覆う覆い部として機能する。図6に示すように、キャップ4は、弁ケース3から図示手前側に突出する切替操作軸2のハンドル取付部2Aを図示手前側から筒軸方向に通すように弁ケース3に一体的に装着されている。なお、キャップ4の筒軸方向と切替操作軸2の軸方向とは、互いに同一方向である。ここで、キャップ4が、本発明の「取付部材」に相当する。
【0035】
図6図8に示すように、クリック機構5は、金属製のピン5Jと、樹脂製のスライダ5Kと、ばね5Lと、を有する。ピン5Jは、切替操作軸2のハンドル取付部2Aに対して、軸径方向に貫通するように通されて、軸径方向に2回対称、すなわち180°の間隔をあけて突出するように装着されている。
【0036】
図7図8に示すように、スライダ5Kは、キャップ4に対して、筒軸方向のスライドのみが可能となるように筒径方向と筒周方向とに移動規制された状態に組み付けられている。ばね5Lは、スライダ5Kよりも小径な圧縮コイルばねから成る。ばね5Lは、スライダ5Kとキャップ4との間に軸方向に挟まれるように配置されている。ばね5Lは、キャップ4を支点に、スライダ5Kに対して、常時、ピン5Jに押し付ける方向(図示奥方向)の付勢力を作用させる。
【0037】
図8に示すように、スライダ5Kは、上記ばね5Lの付勢力による筒軸方向のスライドにより、常時、ピン5Jに押し付けられる状態に保持される。スライダ5Kは、切替操作軸2が止水位置にある時には、そのピン5Jと対向する側の面(図示奥面)に形成された嵌合溝K3が、ピン5Jと嵌合するようになっている(図9参照)。図10に示すように、スライダ5Kは、切替操作軸2が止水位置から左右に回されることで、ピン5Jがばね5Lの付勢力に抗して嵌合溝K3から回転方向に外される移動を伴って、ピン5Jにより図示手前方向へと押し返される。
【0038】
このような構成により、図9に示すように、スライダ5Kは、切替操作軸2が止水位置へと戻される動作により、嵌合溝K3がばね5Lの付勢力により弾みの付いた勢いでピン5Jに嵌合するように動かされる。その結果、嵌合溝K3がピン5Jに勢い良く嵌る動作音や嵌る挙動によって、切替操作軸2にクリック感が付与される。
【0039】
その際、ピン5Jが金属製であるのに対して、スライダ5Kが樹脂製であることから、これらの当たりが金属同士の当たりとならない。そのため、クリック動作時に異音が生じにくい。また、スライダ5Kがピン5Jに押し付けられながら回転方向に摺動する際にも、異音が生じにくい。
【0040】
上記のクリック動作は、ピン5Jやスライダ5Kの撓みではなく、ばね5Lの撓みを利用して行われる。そのため、スライダ5Kを摩耗劣化しにくい硬質な樹脂部材で構成しても、ばね5Lの硬さ調整によりクリック感を強くなり過ぎないように適切に調整することができる。したがって、それにより、クリック動作の安定性と、クリック感の硬さ調整のしやすさと、の両立を図ることができる。
【0041】
図10に示すように、スライダ5Kは、切替操作軸2が初期の止水位置から左右どちらの方向に回される際にも、嵌合溝K3がばね5Lの付勢力に抗してピン5Jから外される挙動に伴って、切替操作軸2にクリック感(抵抗感)を付与する。それにより、切替操作軸2が初期の止水位置から回されたことを、使用者に対して音や手応えで知らせることができる。
【0042】
以上が、切替止水弁1の基本構成となっている。続いて、切替止水弁1の各部の構成について詳しく説明する。図4図5に示すように、切替操作軸2は、軸方向に丸棒状に延びるハンドル取付部2Aと、ハンドル取付部2Aの図示奥端から軸方向に同心円筒状に延びる通水管部2Bと、を一体に有する構成とされる。通水管部2Bは、ハンドル取付部2Aよりも大径の円筒形状を成す。
【0043】
ハンドル取付部2Aの図示手前端の外周面には、図2で前述した切替ハンドルHがセレーション嵌合される鋸歯状の歯面A1が形成されている。また、ハンドル取付部2Aの図示奥端の外周面には、円柱状の規制ピンA2が軸径方向の外側から嵌合されている。
【0044】
図5に示すように、ハンドル取付部2Aの規制ピンA2の嵌合位置より図示手前側の箇所には、規制ピンA2と平行に延びるように軸径方向に丸孔状に貫通するピン挿通孔A3が形成されている。ピン挿通孔A3は、切替操作軸2の中心軸線を通って軸径方向に貫通するように形成されている。ピン挿通孔A3には、前述したピン5Jが、軸径方向に貫通するように通される。
【0045】
通水管部2Bは、そのハンドル取付部2Aと繋がる図示手前端の筒内が塞がれ、図示奥端の筒内が奥側に開口する円筒形状とされる。通水管部2Bの外周面には、軸径方向に丸孔状に貫通する第1開口B1と第2開口B2の2つの開口が形成されている。第1開口B1と第2開口B2は、互いに筒周方向に180°の間隔をあけて形成されている。
【0046】
第1開口B1は、上述した規制ピンA2が突出する軸径方向とは反対方向に開口している。第2開口B2は、規制ピンA2が突出する軸径方向と同一方向に開口している。第1開口B1と第2開口B2とは、互いに軸方向に間隔をあけて形成されている。具体的には、第1開口B1が、第2開口B2よりも図示手前側に離間した位置に形成されている。
【0047】
図4に示すように、切替操作軸2は、弁ケース3に対して、通水管部2Bが弁ケース3のケース内部に嵌合され、ハンドル取付部2Aが弁ケース3から図示手前側に突出するように組み付けられる。通水管部2Bは、その図示手前端の外周部にOリングR1が装着されており、弁ケース3のケース内部に対してOリングR1を介してシールされた状態に嵌合される。
【0048】
上記組み付けにより、切替操作軸2は、その通水管部2Bの図示奥端の開口が、弁ケース3の図示奥端の開口である給水口Sと連通する状態にセットされる。また、図3に示すように、切替操作軸2は、弁ケース3に対して、その第1開口B1が弁ケース3の第1吐出口C1,D1と筒軸方向の配置が重なる状態にセットされ、第2開口B2が弁ケース3の第2吐出口C2,D2と筒軸方向の配置が重なる状態にセットされる。
【0049】
切替操作軸2は、初期の止水位置にある時には、その第1開口B1と第2開口B2とが共に、弁ケース3の第1吐出口C1,D1と第2吐出口C2,D2とから筒周方向に外れた位置に配置される。それにより、切替操作軸2が初期の止水位置にある時には、弁ケース3の第1吐出口C1,D1と第2吐出口C2,D2とが共に、切替操作軸2の通水管部2Bの管壁によって筒内側から塞がれるようになっている。その結果、通水管部2Bの管内の湯水が、弁ケース3の第1吐出口C1,D1と第2吐出口C2,D2とから吐出されないように堰き止められる。
【0050】
切替操作軸2は、上記止水位置から右回り(図示時計回り)に目一杯回されることにより、その第1開口B1が弁ケース3の第1吐出口C1,D1と筒周方向の配置が重ねられて、互いに通水可能に連通した状態に切り替えられる。また、切替操作軸2は、上記止水位置から左回り(図示反時計回り)に目一杯回されることにより、その第2開口B2が弁ケース3の第2吐出口C2,D2と筒周方向の配置が重ねられて、互いに通水可能に連通した状態に切り替えられる。
【0051】
図4に示すように、切替操作軸2は、上記右回り又は左回りに目一杯回されることにより、上述した規制ピンA2が弁ケース3の内周部に形成された規制突起C5と当接して、それぞれの方向の回転が規制されるようになっている。以上が、切替操作軸2の構成となっている。
【0052】
図5に示すように、弁ケース3は、円筒形状の内弁ケース3Cと、内弁ケース3Cよりもひとまわり大きな円筒形状の外弁ケース3Dと、を有する。内弁ケース3Cの外周面には、筒径方向に矩形孔状に貫通する第1吐出口C1と第2吐出口C2との2つの吐出口が形成されている。
【0053】
これら第1吐出口C1と第2吐出口C2とは、互いに筒軸方向に並ぶ配置、すなわち、互いの筒周方向の配置が重なる位置に形成されている。第1吐出口C1と第2吐出口C2とは、内弁ケース3Cの外周面にひとまとめに大きくあけられた孔に8の字状の異形リングR2が装着されると共に、異形リングR2の各孔にベゼルTが嵌合されることで、それぞれの孔に仕切られている。内弁ケース3Cの図示手前端には、同端の筒外周面に沿ってリング板状に張り出すフランジC3が形成されている。
【0054】
外弁ケース3Dも同様に、その外周面に筒径方向に矩形孔状に貫通する第1吐出口D1と第2吐出口D2との2つの吐出口が形成されている。第1吐出口D1は、外弁ケース3Dが内弁ケース3Cに組み付けられた際に、内弁ケース3Cに形成された第1吐出口C1に筒径方向の内側から重なる位置に形成されている。第2吐出口D2は、外弁ケース3Dが内弁ケース3Cに組み付けられた際に、内弁ケース3Cに形成された第2吐出口C2に筒径方向の内側から重なる位置に形成されている。
【0055】
外弁ケース3Dの外周部には、その筒軸方向の3箇所の位置に、それぞれOリングR4が装着されている。各OリングR4は、外弁ケース3Dとその弁外部の各通水路との間をシールする部材であり、第1吐出口D1と第2吐出口D2とを個別に弁外部の対応する各通水路に対して仕切るようにシールする。
【0056】
外弁ケース3Dの図示手前端には、同端の筒外周面に沿って断片的なリング板状を成す形に張り出す第1張出片D3が形成されている。第1張出片D3の外周面には、互いに同心円状の溝を描くように筒周方向に沿って延びる形に凹む環状溝D4が形成されている。第1張出片D3の各環状溝D4には、これらに跨ってCリング形状の装着リングR5が装着されている。
【0057】
上記弁ケース3と切替操作軸2とは、次の手順により組み付けられている。先ず、切替操作軸2を、内弁ケース3Cに対して、図示奥側の開口から手前側に向けて軸方向に挿通する。
【0058】
それにより、切替操作軸2のハンドル取付部2Aが、内弁ケース3Cの図示手前端の開口から手前側へと突出するように通される。この切替操作軸2の内弁ケース3Cへの差し込みは、通水管部2Bの外周面に形成された拡径状の段差が、内弁ケース3Cの内周面に形成された縮径状の段差に軸方向に突き当たる位置にて規制される。それにより、切替操作軸2を内弁ケース3Cに対して軸方向(差し込み方向)に位置決めした状態に組み付けることができる。
【0059】
次に、外弁ケース3Dを、内弁ケース3Cに対して、図示奥側から手前側に向かって筒内に収めるように軸方向に挿通する。それにより、外弁ケース3Dが内弁ケース3Cに対して外周側から囲うように嵌合される。この外弁ケース3Dの内弁ケース3Cへの差し込みは、外弁ケース3Dの第1張出片D3が内弁ケース3CのフランジC3に軸方向に突き当たる位置にて規制される。それにより、外弁ケース3Dを内弁ケース3Cに対して軸方向(差し込み方向)に位置決めした状態に組み付けることができる。
【0060】
詳しくは、外弁ケース3Dは、内弁ケース3Cに対して、フランジC3の図示奥側面から突出する嵌合凸部C4が第1張出片D3の肉抜きされた各部に軸方向に嵌合されるように組み付けられる。それにより、外弁ケース3Dが、内弁ケース3Cに対して、筒周方向にも位置決めされた状態に組み付けられる。
【0061】
その結果、外弁ケース3Dが、内弁ケース3Cに対して、各々の第1吐出口C1,D1同士と第2吐出口C2,D2同士とが位置合わせされた状態にセットされる。内弁ケース3Cは、その第1吐出口C1とフランジC3との間の外周部にOリングR3が装着されており、外弁ケース3Dに対してOリングR3を介してシールされた状態に嵌合される。
【0062】
図4に示すように、上記組み付けにより、外弁ケース3Dは、その図示奥端の筒内周面に沿って環状に張り出す環状規制部D5が、切替操作軸2の通水管部2Bの図示奥端に奥側から対向する状態にセットされる。それにより、切替操作軸2が、外弁ケース3Dによって図示奥側への抜けが規制された状態となる。
【0063】
図6に示すように、以上の組み付けにより、内弁ケース3Cと切替操作軸2と外弁ケース3Dとが1つに組み付けられる。次に、この組み付けられたユニットに対して、クリック機構5及びキャップ4が組み付けられる。具体的には、先ず、クリック機構5を構成するピン5Jが、切替操作軸2の弁ケース3から突出するハンドル取付部2Aのピン挿通孔A3に通されて装着される。
【0064】
次に、図7図8に示すように、クリック機構5を構成するスライダ5Kとばね5Lとをキャップ4にセットする。図7に示すように、スライダ5Kは、リング板状の本体部K1と、本体部K1の外周面の左右2箇所から軸径方向に左右対称状に張り出す矩形板状の張出摺動部K2と、を一体に有する形状とされる。
【0065】
各張出摺動部K2には、それらのピン5Jと対向する図示奥側の面に、各張出摺動部K2の張り出し方向に沿って軸径方向に真っ直ぐ延びる形に凹む筋状の嵌合溝K3が形成されている。各嵌合溝K3は、それぞれ、半円弧状に凹む横断面形状に形成されている。これら嵌合溝K3は、前述したように、切替操作軸2が初期の止水位置にある時に、切替操作軸2から軸径方向の双方に突出するピン5Jに図示手前側から嵌合される溝となるものである(図9参照)。
【0066】
図6に示すように、キャップ4は、大径部4Eと小径部4Fとを有する段付き円筒状の部材から成る。大径部4Eと小径部4Fとは、互いに軸方向に同心円筒状に延びる形状とされる。図7に示すように、大径部4Eは、スライダ5Kを筒内に収めることが可能な内径を有する円筒形状に形成されている。大径部4Eの内周部には、その小径部4Fと繋がる図示手前端の上下2箇所の位置に、内周部を部分的に縮径させる形に膨出する半円弧形状のガイド凸部E1が形成されている。
【0067】
これらガイド凸部E1は、互いに上下対称な同一円の円弧を描く形に膨出する半円弧形状とされている。それにより、各ガイド凸部E1は、それらの内周面の間にスライダ5Kの本体部K1を軸方向に摺動可能なように収めることが可能な構成とされている。また、各ガイド凸部E1の筒周方向の端部間には、スライダ5Kの本体部K1から張り出す各張出摺動部K2を軸方向に摺動可能なように収めることが可能な凹状のガイド凹部E2がそれぞれ形成されている。
【0068】
各ガイド凹部E2は、それらの内部にスライダ5Kの対応する各張出摺動部K2が軸方向に差し込まれることにより、各張出摺動部K2を筒周方向の両側から面状にあてがうように支持する。それにより、スライダ5Kが、キャップ4に対して筒軸方向のスライドのみが可能となるように筒径方向と筒周方向とに移動規制された状態に組み付けられる(図8参照)。
【0069】
図7に示すように、小径部4Fは、ばね5Lを筒内に収めることが可能な内径を有する円筒形状に形成されている。小径部4Fの図示手前端には、筒内周面に沿って環状に張り出す環状座部F1が形成されている。環状座部F1は、小径部4Fの筒内にセットされるばね5Lの図示手前端を支持する座となるものである(図4参照)。
【0070】
図6に示すように、キャップ4の大径部4Eの図示奥端には、同端の筒周方向の3箇所の位置から奥側に張り出す第2張出片E3が形成されている。これら第2張出片E3の外周面には、互いに同心円状の溝を描くように筒周方向に沿って延びる形に凹む環状溝E4が形成されている。
【0071】
上記キャップ4は、次の手順により弁ケース3に図示手前側から差し込まれて装着されている。先ず、図7図8に示すように、ばね5Lをキャップ4の小径部4Fの筒内に図示奥側からセットする。ばね5Lは、キャップ4の小径部4Fの内径よりも僅かに小径となる略同径のコイル形状とされている。したがって、ばね5Lは、キャップ4の小径部4F内に筒径方向にガタつきにくいようにセンタリングされた状態に組み付けられる。
【0072】
次に、スライダ5Kをキャップ4の大径部4Eの筒内に図示奥側からセットする。それにより、図4に示すように、ばね5Lが、スライダ5Kの本体部K1とキャップ4の環状座部F1との間に軸方向に挟まれた状態にセットされる。
【0073】
図6に示すように、スライダ5Kの各張出摺動部K2は、本体部K1よりも図示手前側に張り出すように軸方向に肉厚な形状とされている。そして、各張出摺動部K2の本体部K1から図示手前側に張り出す部分の内周面は、本体部K1の外周縁に沿って円弧状に湾曲する湾曲内周面K4として形成されている。
【0074】
ばね5Lは、スライダ5Kの本体部K1と略同径のコイル形状とされている。それにより、ばね5Lは、その本体部K1に当てられる図示奥端が、スライダ5Kの各張出摺動部K2の湾曲内周面K4によって外周側から囲われた状態にセットされる。その結果、ばね5Lは、スライダ5Kに対しても筒径方向にセンタリングされた状態に組み付けられるようになっている。
【0075】
上記組み付け後に、キャップ4を、切替操作軸2に対して、スライダ5Kの本体部K1とばね5Lと環状座部F1とを図示手前側から順に通すように差し込んで弁ケース3に装着する。具体的には、キャップ4を、その大径部4Eの図示奥端から張り出す各第2張出片E3を外弁ケース3Dから張り出す第1張出片D3の肉抜きされた各部に図示手前側から軸方向に嵌合させるように組み付ける。
【0076】
それにより、図3に示すように、各第2張出片E3の先端の矢尻状に形成された各爪部分が、第1張出片D3の環状溝D4に装着されている装着リングR5に内周側から潜り込んで、それらの環状溝E4内に装着リングR5がスナップフィット嵌合される。この嵌合により、キャップ4が、装着リングR5を介して外弁ケース3Dと筒軸方向に一体的に装着される。その結果、キャップ4が、外弁ケース3Dを介して内弁ケース3Cに対して筒軸方向と筒周方向とにそれぞれ位置決めされた状態に組み付けられる。
【0077】
このように、切替止水弁1は、キャップ4を外弁ケース3Dに装着する構成を介して、外弁ケース3Dの内弁ケース3Cに対する本固定と、キャップ4の外弁ケース3Dに対する本固定と、を行う合理的な構成とされている。また、切替止水弁1は、弁ケース3に外付けされるキャップ4が、図示手前側に向かって先細りとなる段付き円筒形状とされている。したがって、図2に示すように、切替止水弁1を支柱Bの通し孔Aに図示奥側から通す際に、キャップ4を通し孔Aに簡便に通すことができる。
【0078】
また、キャップ4が切替操作軸2の先端に向かって先細りとなることから、切替操作軸2の先端に取り付けられる切替ハンドルHをキャップ4と干渉させないように軸方向により深く差し込みやすくなる。したがって、切替ハンドルHの切替操作軸2への組み付けの自由度が阻害されにくい。
【0079】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る切替止水弁1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0080】
すなわち、切替止水弁(1)は、切替ハンドル(H)が止水位置から正逆に回される操作により吐水先を第1の吐水先と第2の吐水先とに選択的に切り替える弁である。切替止水弁(1)は、切替ハンドル(H)が取り付けられる切替操作軸(2)と、切替操作軸(2)が筒内の通水路に筒軸方向に通される筒状の弁ケース(3)と、弁ケース(3)のケース外部において、切替操作軸(2)が止水位置に戻される動作にクリック感を付与するクリック機構(5)と、を有する。
【0081】
クリック機構(5)が、切替操作軸(2)から軸径方向に突出するピン(5J)と、弁ケース(3)に取り付く取付部材(4)に対して筒軸方向のスライドのみが可能となるように筒径方向と筒周方向とに移動規制された状態に組み付けられるスライダ(5K)と、スライダ(5K)を取付部材(4)に対してピン(5J)に筒軸方向に押し付ける付勢力を作用させるばね(5L)と、を有する。スライダ(5K)が、切替操作軸(2)が止水位置に戻される動作により、ばね(5L)の弾発力によってピン(5J)にクリック感を付与するように筒軸方向に嵌合される嵌合溝(K3)を有する。
【0082】
上記構成によれば、スライダ(5K)を付勢するばね(5L)の硬さ調整により、スライダ(5K)をピン(5J)に対して弾性的に嵌脱させるクリック感の強さの調整を行うことが可能となる。したがって、互いに摺動を伴って嵌脱されるスライダ(5K)とピン(5J)とを摩耗劣化の生じにくい構成にしても、ばね(5L)の硬さ調整によって良好なクリック感を得ることができる。そのようなことから、クリック機構(5)の動作の安定性を高めることができる。
【0083】
また、取付部材(4)が、切替操作軸(2)を筒軸方向に通すように弁ケース(3)のケース外部に装着されるキャップ(4)とされる。ばね(5L)が、取付部材(4)とスライダ(5K)との間に筒軸方向に挟まれて配置される圧縮コイルばねとされる。上記構成によれば、弁ケース(3)のケース外部において、クリック機構(5)をキャップ(4)により外部に対して適切に被覆した状態に配置することができる。
【0084】
また、ばね(5L)が、そのコイル内に切替操作軸(2)を筒軸方向に通すように配置される単数の構成とされる。上記構成によれば、1つのばね(5L)で、スライダ(5K)をばね力の偏りが生じないように筒軸方向に適切に付勢することができる。それにより、クリック機構(5)の動作の安定性をより高めることができる。また、ばね(5L)のコイル内に切替操作軸(2)を通す配置とすることで、ばね(5L)を合理的に配置することができる。
【0085】
また、ピン(5J)とスライダ(5K)とばね(5L)とが、弁ケース(3)からこの順に筒軸方向に並ぶように配置される。取付部材(4)が、切替操作軸(2)の切替ハンドル(H)が取り付く筒軸方向の先端に向かって小径となるように大径部(4E)と小径部(4F)とが並ぶ段付き円筒形状とされる。ばね(5L)が、スライダ(5K)よりも小径とされる。スライダ(5K)が、取付部材(4)の大径部(4E)に組み込まれる。ばね(5L)が、取付部材(4)の小径部(4F)に組み込まれる。上記構成によれば、クリック機構(5)を弁ケース(3)のケース外部において筒軸方向の先端に向かって先細りとなるようにコンパクトに設けることができる。
【0086】
また、ピン(5J)が、切替操作軸(2)から2回対称に突出するように切替操作軸(2)の中心軸線を通って軸径方向に貫通される。嵌合溝(K3)が、切替操作軸(2)から2回対称に突出するピン(5J)の各突出部分に嵌合される。上記構成によれば、ピン(5J)が切替操作軸(2)から1方向にのみ突出する構成と比べて、スライダ(5K)の嵌合溝(K3)を偏りが生じないようにピン(5J)に嵌合させることができる。それにより、クリック機構(5)の動作の安定性をより高めることができる。
【0087】
また、ピン(5J)が、金属部材から成り、スライダ(5K)が、樹脂部材から成る。上記構成によれば、ピン(5J)とスライダ(5K)との当たりが金属同士の当たりとならないため、クリック動作時に異音が生じにくくなる。また、ばね(5L)の硬さ調整によりクリック感の強さの調整を行えることから、スライダ(5K)が樹脂部材であってもスライダ(5K)を摩耗劣化させにくくすることができる。
【0088】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0089】
1.クリック機構を構成するピンは、切替操作軸から1方向にのみ突出する構成であっても良い。ピンは、樹脂製であっても良い。
【0090】
2.スライダは、弁ケースに対して直接、筒軸方向のスライドのみが可能となるように組み付けられる構成であっても良い。具体的には、弁ケースにスライダを筒軸方向のスライドのみが可能となるように組み付け可能な延長部を設けたり、スライダに弁ケースの外周部に対して筒軸方向のスライドのみが可能となるように組み付け可能な延長部を設けたりすることで、上記の組み付けを行うことができる。
【0091】
3.ばねは、スライダをピンに押し付ける方向に付勢力を作用させられる構成であれば良く、圧縮コイルばねの他、引張コイルばねから成るものであっても良い。また、ばねは、単数の他、切替操作軸のまわりに複数並ぶように配置されるものであっても良い。ばねは、スライダと取付部材とで弾発力を作用させるものの他、スライダと弁ケースとの間で弾発力を作用させるように設けられるものであっても良い。
【0092】
4.スライダをスライド可能に支持するように弁ケースに取り付けられる取付部材は、クリック機構を外部に対して被覆するキャップから成るものの他、クリック機構を外部に対して露出させるものであっても良い。また、キャップにスライダの支持機能を持たせず、単に、弁ケースにスライド可能に組み付けられたスライダやばねを外部に対して覆うための用途としてキャップを設けても良い。
【0093】
5.クリック機構を構成するピンとスライダとばねとの並びは特に限定されない。すなわち、ピンとスライダとばねとが、弁ケースからこの順に筒軸方向に並ぶように配置されるものの他、逆の順に並ぶように配置されるものであっても良い。
【0094】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
1…切替止水弁、2…切替操作軸、2A…ハンドル取付部、A1…歯面、A2…規制ピン、A3…ピン挿通孔、2B…通水管部、B1…第1開口、B2…第2開口、3…弁ケース、3C…内弁ケース、C1…第1吐出口、C2…第2吐出口、C3…フランジ、C4…嵌合凸部、C5…規制突起、3D…外弁ケース、D1…第1吐出口、D2…第2吐出口、D3…第1張出片、D4…環状溝、D5…環状規制部、4…キャップ(取付部材)、4E…大径部、E1…ガイド凸部、E2…ガイド凹部、E3…第2張出片、E4…環状溝、4F…小径部、F1…環状座部、5…クリック機構、5J…ピン、5K…スライダ、K1…本体部、K2…張出摺動部、K3…嵌合溝、K4…湾曲内周面、5L…ばね、H…切替ハンドル、B…支柱、A…通し孔、S…給水口、T…ベゼル、R1…Oリング、R2…異形リング、R3…Oリング、R4…Oリング、R5…装着リング
図1
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