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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168109
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】窒化物半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/337 20060101AFI20241128BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L29/80 V
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L29/80 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084535
(22)【出願日】2023-05-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、環境省、革新的な省CO2実現のための部材(GaN)や素材(CNF)の社会実装・普及展開加速化事業(超低抵抗GaNウエハを用いた高効率インバータの開発・検証)委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 直大
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡之
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GB05
5F102GC01
5F102GD04
5F102GD10
5F102GJ01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GM04
5F102GM07
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR04
5F102GR11
5F102HC01
5F102HC07
5F102HC10
5F102HC15
(57)【要約】
【課題】高速動作が可能な窒化物半導体デバイスを提供する。
【解決手段】窒化物半導体デバイス1は、基板10と、ドリフト層12と、p型のブロック層14と、下地層16と、ゲート開口部20と、電子走行層22および電子供給層24と、電子供給層24の上方で、基板10の平面視においてゲート開口部20の底面20aに重なる位置に設けられたp型半導体層26と、電子供給層24の上方で、基板10の平面視において下地層16に重なる位置に設けられたゲート電極32と、基板10の平面視においてゲート電極32から離れた位置に設けられたソース開口部30と、ソース開口部30を覆うように設けられ、ブロック層14と電気的に接続された第1のソース電極36と、基板10の下方に設けられたドレイン電極38と、p型半導体層26の上方に設けられ、第1のソース電極36と電気的に接続された第2のソース電極34と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に設けられた第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層の上方に設けられた第1のp型窒化物半導体層と、
前記第1のp型窒化物半導体層の上方に設けられた第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層および前記第1のp型窒化物半導体層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第1の開口部と、
前記第2の窒化物半導体層の上面ならびに前記第1の開口部の側面および底面を覆うように下から順に設けられた電子走行層および電子供給層と、
前記電子供給層の上方で、前記基板の平面視において前記第1の開口部の底面に重なる位置に設けられた第2のp型窒化物半導体層または絶縁層と、
前記電子供給層の上方で、前記基板の平面視において前記第2の窒化物半導体層または前記絶縁層に重なる位置に設けられたゲート電極と、
前記基板の平面視において前記ゲート電極から離れた位置で、前記電子供給層および前記電子走行層を貫通し、前記第1のp型窒化物半導体層にまで達する第2の開口部と、
前記第2の開口部を覆うように設けられ、前記第1のp型窒化物半導体層と電気的に接続された第1のソース電極と、
前記基板の下方に設けられたドレイン電極と、
前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層の上方に設けられ、前記第1のソース電極と電気的に接続された第2のソース電極と、を備える、
窒化物半導体デバイス。
【請求項2】
前記第1の開口部の側面は、前記第1の開口部の底面に対して傾斜しており、
前記電子供給層の上面は、前記第1の開口部の底面に沿った平坦部と、前記第1の開口部の側面に沿った傾斜部と、を含み、
前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層は、前記平坦部と前記傾斜部の一部とを連続的に覆っている、
請求項1に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項3】
前記ゲート電極と前記電子供給層との間で、前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層とは離間して設けられた第3のp型窒化物半導体層を備える、
請求項1または2に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項4】
前記基板の平面視において、前記第1のp型窒化物半導体層と前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層との距離は、前記第3のp型窒化物半導体層と前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層との距離よりも短い、
請求項3に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項5】
前記基板の平面視において、前記第3のp型窒化物半導体層と前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層との距離は、前記第1のp型窒化物半導体層と前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層との距離よりも短い、
請求項3に記載の窒化物半導体デバイス。
【請求項6】
前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層と前記ドレイン電極との距離は、前記第1のp型窒化物半導体層と前記ドレイン電極との距離より短い、
請求項1または2に記載の窒化物半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
GaNに代表される窒化物半導体は、バンドギャップが大きいワイドギャップ半導体であり、絶縁破壊電界が大きく、電子の飽和ドリフト速度がGaAsなどの化合物半導体またはSi半導体などに比べて大きいという特長を有している。例えば、GaNおよびAlNのバンドギャップはそれぞれ、室温で3.4eV、6.2eVである。このため、高出力化および/または高耐圧化に有利な窒化物半導体を用いたパワートランジスタの研究開発が現在活発に行われている。
【0003】
また、AlGaN/GaNヘテロ構造において、(0001)面上にて自発分極およびピエゾ分極によりヘテロ界面に高濃度の2次元電子ガス(2DEG:2 Dimensional Electron Gas)が生じ、アンドープ時においても1×1013cm-2以上のシートキャリア濃度が得られる特徴がある。
【0004】
特許文献1および2ならびに非特許文献1には、GaN系半導体材料を用いて形成された縦型FET(Field Effect Transistor)が開示されている。特許文献1および2に開示された縦型FETでは、AlGaN/GaNヘテロ界面に発生した2次元電子ガスからなるチャネルをゲート電圧によって開閉することで、トランジスタ動作を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6511645号公報
【特許文献2】特許第6755892号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Zhu et al., “Vertical GaN Power Transistor With Intrinsic Reverse Conduction and Low Gate Charge for High-Performance Power Conversion”, IEEE Journal of Emerging and Selected Topics in Power Electronics, Vol. 7, No. 3, September 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の窒化物半導体デバイスに対しては、動作の高速化に改善の余地がある。
【0008】
そこで、本開示は、高速動作が可能な窒化物半導体デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る窒化物半導体デバイスは、基板と、前記基板の上方に設けられた第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層の上方に設けられた第1のp型窒化物半導体層と、前記第1のp型窒化物半導体層の上方に設けられた第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層および前記第1のp型窒化物半導体層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第1の開口部と、前記第2の窒化物半導体層の上面ならびに前記第1の開口部の側面および底面を覆うように下から順に設けられた電子走行層および電子供給層と、前記電子供給層の上方で、前記基板の平面視において前記第1の開口部の底面に重なる位置に設けられた第2のp型窒化物半導体層または絶縁層と、前記電子供給層の上方で、前記基板の平面視において前記第2の窒化物半導体層に重なる位置に設けられたゲート電極と、前記基板の平面視において前記ゲート電極から離れた位置で、前記電子供給層および前記電子走行層を貫通し、前記第1のp型窒化物半導体層にまで達する第2の開口部と、前記第2の開口部を覆うように設けられ、前記第1のp型窒化物半導体層と電気的に接続された第1のソース電極と、前記基板の下方に設けられたドレイン電極と、前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層の上方に設けられ、前記第1のソース電極と電気的に接続された第2のソース電極と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、高速動作が可能な窒化物半導体デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態1に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図2A図2Aは、比較例に係る窒化物半導体デバイスのゲート-ドレイン間の寄生容量を説明するための断面図である。
図2B図2Bは、実施の形態1に係る窒化物半導体デバイスのゲート-ドレイン間の寄生容量を説明するための断面図である。
図3図3は、実施の形態2に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図4図4は、実施の形態3に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図5図5は、実施の形態3の変形例に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図6図6は、実施の形態4に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
図7図7は、実施の形態4の変形例に係る窒化物半導体デバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らは、「背景技術」の欄において記載した従来の窒化物半導体デバイスに関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0013】
縦型トランジスタは、横型トランジスタと比べて、高電圧化および大電流動作に有利である。その一方で、縦型トランジスタは、以下に示すように、横型トランジスタに比べて高速動作に不利である。
【0014】
なお、縦型トランジスタは、ソースとドレインとの間に基板が配置された構成を有する。このため、縦型トランジスタでは、ソース-ドレイン間を流れるドレイン電流は、基板の主面に直交する方向に主として流れる。これに対して、横型トランジスタは、ソースおよびドレインが基板の主面に平行な方向に並んで配置された構成を有する。このため、横型トランジスタでは、ドレイン電流は、基板の主面に平行な方向に主として流れる。
【0015】
【表1】
【0016】
表1には、横型トランジスタと縦型トランジスタとのゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdの比較を示している。同じオン抵抗Ronのデバイスサイズで比較した際に、縦型トランジスタは、横型トランジスタに比べて、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdが約2桁大きい。この要因は、縦型トランジスタの構造上、ゲート-ドレイン間の平行平板容量が大きいことに加えて、ドレインからゲートに向かう電気力線をソースに終端するためのフィールドプレートを設けることが困難であることが挙げられる。寄生容量Cgdが大きいと、ドレイン電流の立ち上がり特性が悪くなるため、トランジスタの高速動作が難しくなる。
【0017】
特許文献2には、ゲート開口部の内側ではなく、ゲート開口部の外縁部分の上方にゲート電極が配置された構造が開示されている。特許文献2では、当該構成によって、ゲート駆動電圧を下げることができ、ドライブ損失を低減する効果が示されている。ただし、この構造では、ドレインからゲートに向かう電気力線は全てゲートに向かうため、寄生容量Cgdの低減にはつながらない。
【0018】
また、非特許文献1には、縦型トランジスタにおいて再成長AlGaN層上にソース電極に接続されたショットキー電極を設けることで、ゲート容量を下げた計算結果が記載されている。ただし、この再成長AlGaN層上に設けられたショットキー電極をフィールドプレートとして使用した場合、ショットキー特性の逆方向特性はpnダイオードの逆方向特性と比べてリーク電流が大きく、耐圧が小さいことから、トランジスタの信頼性の低下につながるといった課題がある。
【0019】
そこで、本開示は、上記の課題に鑑み、信頼性の低下を抑制しながら寄生容量Cgdの低減を図ることにより、高速動作が可能な窒化物半導体デバイスを提供することを目的とする。
【0020】
上記目的を実現するために、本開示の窒化物半導体デバイスの各態様は、以下に述べる構成となっている。
【0021】
本開示の第1の態様に係る窒化物半導体デバイスは、基板と、前記基板の上方に設けられた第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層の上方に設けられた第1のp型窒化物半導体層と、前記第1のp型窒化物半導体層の上方に設けられた第2の窒化物半導体層と、前記第2の窒化物半導体層および前記第1のp型窒化物半導体層を貫通し、前記第1の窒化物半導体層にまで達する第1の開口部と、前記第2の窒化物半導体層の上面ならびに前記第1の開口部の側面および底面を覆うように下から順に設けられた電子走行層および電子供給層と、前記電子供給層の上方で、前記基板の平面視において前記第1の開口部の底面に重なる位置に設けられた第2のp型窒化物半導体層または絶縁層と、前記電子供給層の上方で、前記基板の平面視において前記第2の窒化物半導体層に重なる位置に設けられたゲート電極と、前記基板の平面視において前記ゲート電極から離れた位置で、前記電子供給層および前記電子走行層を貫通し、前記第1のp型窒化物半導体層にまで達する第2の開口部と、前記第2の開口部を覆うように設けられ、前記第1のp型窒化物半導体層と電気的に接続された第1のソース電極と、前記基板の下方に設けられたドレイン電極と、前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層の上方に設けられ、前記第1のソース電極と電気的に接続された第2のソース電極と、を備える。
【0022】
これにより、ドレイン電極から延びる電気力線を、第2のp型窒化物半導体層、または、絶縁層の上方に設けられた第2のソース電極と、第1のp型窒化物半導体層とに終端させることができるので、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを低減することができる。よって、本態様によれば、高速動作が可能な窒化物半導体デバイスを実現することができる。
【0023】
また、本態様に係る窒化物半導体デバイスでは、第2のp型窒化物半導体層(p)と電子供給層および電子走行層の界面に生じる2次元電子ガス(n)とによるpnダイオードの逆方向特性を利用することができるので、リーク電流の増大、および、耐圧の低下を抑制することができる。また、第2のp型窒化物半導体層の代わりに絶縁層が設けられた場合も同様に、リーク電流の増大、および、耐圧の低下を抑制することができる。よって、窒化物半導体デバイスの信頼性の低下を抑制することができる。
【0024】
本開示の第2の態様に係る窒化物半導体デバイスでは、第1の態様に係る窒化物半導体デバイスにおいて、前記第1の開口部の側面は、前記第1の開口部の底面に対して傾斜しており、前記電子供給層の上面は、前記第1の開口部の底面に沿った平坦部と、前記第1の開口部の側面に沿った傾斜部と、を含み、前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層は、前記平坦部と前記傾斜部の一部とを連続的に覆っている。
【0025】
これにより、オフ時に第2の窒化物半導体層に集中する電界を分散させることができるので、オフ時のリーク電流を低減することができる。本態様によれば、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを低減することができるという効果に加えて、オフ時の電界緩和が促進され良好なオフ特性が得られる。
【0026】
本開示の第3の態様に係る窒化物半導体デバイスでは、第1の態様または第2の態様に係る窒化物半導体デバイスにおいて、前記ゲート電極と前記電子供給層との間で、前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層とは離間して設けられた第3のp型窒化物半導体層を備える。
【0027】
これにより、ゲート電極の直下のキャリア濃度を低減することができ、トランジスタの閾値電圧を正側にシフトさせることができる。このため、本態様に係る窒化物半導体デバイスをノーマリオフ型のFETとして容易に実現することができる。
【0028】
本開示の第4の態様に係る窒化物半導体デバイスでは、第3の態様に係る窒化物半導体デバイスにおいて、前記基板の平面視において、前記第1のp型窒化物半導体層と前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層との距離は、前記第3のp型窒化物半導体層と前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層との距離よりも短い。
【0029】
これにより、ドレイン電極から延びる電気力線を、より多く第1のp型窒化物半導体層で終端させることができるので、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdをより低減することができる。よって、本態様によれば、高速動作に優れた窒化物半導体デバイスを実現することができる。
【0030】
本開示の第5の態様に係る窒化物半導体デバイスでは、第3の態様に係る窒化物半導体デバイスにおいて、前記基板の平面視において、前記第3のp型窒化物半導体層と前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層との距離は、前記第1のp型窒化物半導体層と前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層との距離よりも短い。
【0031】
これにより、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdが微増するものの、ゲート長が長くなることにより、オフ時の耐圧を向上させることができる。本態様によれば、オフ特性に優れ、高速動作が可能な窒化物半導体デバイスを実現することができる。
【0032】
本開示の第6の態様に係る窒化物半導体デバイスでは、第1の態様から第5の態様のいずれか1つに係る窒化物半導体デバイスにおいて、前記第2のp型窒化物半導体層または前記絶縁層と前記ドレイン電極との距離は、前記第1のp型窒化物半導体層と前記ドレイン電極との距離より短い。
【0033】
これにより、オフ時の電界集中を緩和させることができ、オフ時のリーク電流を低減することができる。本態様によれば、良好なオフ特性を有し、高速動作が可能な窒化物半導体デバイスを実現することができる。
【0034】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0036】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0037】
また、本明細書において、平行または直交などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形または台形などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0038】
また、本明細書において、基板の「厚み方向」とは、基板の主面に垂直な方向のことをいう。厚み方向は、半導体層の積層方向と同じであり、「縦方向」とも記載される。また、基板の主面に平行な方向を「横方向」と記載する場合がある。
【0039】
また、基板に対してゲート電極およびソース電極が設けられた側を「上方」または「上側」とみなし、基板に対してドレイン電極が設けられた側を「下方」または「下側」とみなす。
【0040】
なお、本明細書において、「上方」および「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0041】
また、本明細書において、「平面視」とは、特に断りのない限り、窒化物半導体デバイスの基板の主面に対して垂直な方向から見たとき、すなわち、基板の主面を正面から見たときのことをいう。
【0042】
また、本明細書において、平面視におけるAとBとの距離とは、平面視におけるAとBとの最短距離を表している。具体的には、平面視におけるAの外形を表す輪郭線上の任意の点とBの外形を表す輪郭線上の任意の点とを結ぶ無数の線分のうち最短の線分の長さが距離である。
【0043】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りのない限り、構成要素の数または順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0044】
また、本明細書において、AlGaNとは、3元混晶AlGa1-xN(0<x<1)のことを表す。以下、多元混晶はそれぞれの構成元素記号の配列、例えばAlInN、GaInN等でもって略記される。例えば、窒化物半導体の一例であるAlGa1-x-yInN(0<x<1、0<y<1、かつ、0<x+y<1)は、AlGaInNと略記される。
【0045】
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る窒化物半導体デバイスの構成について、図1を用いて説明する。
【0046】
図1は、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1の断面図である。図1では、半導体層および電極等の各構成要素に対して、断面を表す斜線の網掛けを付している。
【0047】
図1に示すように、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1は、いわゆる縦型の電界効果トランジスタ(FET)である。具体的には、窒化物半導体デバイス1では、ドレイン電極38と第1のソース電極36との間で、電流が基板10の主面に垂直な方向に流れる。
【0048】
窒化物半導体デバイス1は、GaNおよびAlGaNなどの窒化物半導体を主成分として含む窒化物半導体層の積層構造を有するデバイスである。なお、「AがBを主成分として含む」とは、AにおけるBの含有率が50%以上であることを意味する。
【0049】
本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1は、ノーマリオフ型のFETである。窒化物半導体デバイス1では、例えば、第1のソース電極36が接地され(すなわち、電位が0V)、ドレイン電極38に正の電位が与えられている。ドレイン電極38に与えられる電位は、例えば100V以上1200V以下であるが、これに限らない。窒化物半導体デバイス1がオフ状態である場合には、ゲート電極32には0Vまたは負の電位(例えば-5V)が印加されている。窒化物半導体デバイス1がオン状態である場合には、ゲート電極32には正の電位(例えば+5V)が印加されている。なお、窒化物半導体デバイス1は、ノーマリオン型のFETであってもよい。
【0050】
図1に示すように、窒化物半導体デバイス1は、基板10と、ドリフト層12と、ブロック層14と、下地層16と、ゲート開口部20と、電子走行層22と、電子供給層24と、p型半導体層26と、閾値調整層28と、ソース開口部30と、ゲート電極32と、第2のソース電極34と、第1のソース電極36と、ドレイン電極38と、を備える。電子走行層22と電子供給層24との界面には、チャネルとして機能する2次元電子ガス(2DEG)25が発生する。
【0051】
以下では、窒化物半導体デバイス1が備える各構成要素の詳細について説明する。
【0052】
基板10は、窒化物半導体からなる基板である。基板10の平面視形状は、例えば、矩形であるが、これに限定されない。
【0053】
基板10は、例えば、厚さが300μmであり、キャリア濃度が1×1018cm-3であるn型のGaNからなる基板である。なお、n型およびp型は、半導体の導電型を示している。n型は、半導体にn型のドーパントが高濃度に添加された状態、いわゆるヘビードープを表している。また、n型とは、半導体にn型のドーパントが低濃度に添加された状態、いわゆるライトドープを表している。n型およびn型はいずれも、n型の一例であり、それぞれを区別せずにn型と記載する場合がある。また、p型およびp型についても同様である。
【0054】
なお、基板10は、窒化物半導体基板でなくてもよい。例えば、基板10は、シリコン(Si)基板、炭化シリコン(SiC)基板、または、酸化亜鉛(ZnO)基板などであってもよい。
【0055】
ドリフト層12は、基板10の上方に設けられた第1の窒化物半導体層の一例である。ドリフト層12は、例えば、厚さが8μmのn型のGaNからなる膜である。ドリフト層12のドナー濃度は、例えば1×1015cm-3以上1×1017cm-3以下であり、一例として、1×1016cm-3である。また、ドリフト層12の炭素濃度(C濃度)は、例えば、1×1015cm-3以上2×1017cm-3以下である。
【0056】
ドリフト層12は、例えば、基板10の上面(主面)に接触して設けられている。ドリフト層12は、例えば、有機金属気相エピタキシャル成長(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法、ハイドライド気相成長(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)法などの結晶成長により、基板10の主面上に形成される。
【0057】
ブロック層14は、ドリフト層12の上方に設けられた第1のp型窒化物半導体層の一例である。ブロック層14は、例えば、厚さが400nmであり、キャリア濃度が1×1017cm-3であるp型のGaNからなる膜である。ブロック層14は、ドリフト層12の上面に接触して設けられている。ブロック層14は、例えば、MOVPE法、HVPE法などの結晶成長により、ドリフト層12上に形成される。
【0058】
なお、ブロック層14は、結晶成長で形成しているが、例えば、成膜したi-GaNへマグネシウム(Mg)注入することで形成してもよい。さらに言えば、ブロック層14は、p型の窒化物半導体層ではなく、鉄(Fe)またはホウ素(B)を注入するなどを行うことで得られる絶縁層であってもよい。
【0059】
ブロック層14は、第1のソース電極36とドレイン電極38との間のリーク電流を抑制する。例えば、ブロック層14とドリフト層12とで形成されるpn接合に対して逆方向電圧が印加された場合、具体的には、第1のソース電極36よりもドレイン電極38が高電位となった場合に、ドリフト層12に空乏層が延びる。これにより、窒化物半導体デバイス1の高耐圧化が可能である。本実施の形態では、オフ状態およびオン状態のいずれにおいても逆導通動作の場合を除いて、第1のソース電極36よりドレイン電極38が高電位となっている。このため、窒化物半導体デバイス1の高耐圧化が実現される。
【0060】
また、本実施の形態では、図1に示されるように、ブロック層14は、第1のソース電極36と接触している。このため、ブロック層14は、第1のソース電極36に加えられるソース電位に固定されている。これにより、詳細については後述するが、ブロック層14がドレイン電極38から延びる電気力線を遮蔽することができ、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdの低減に寄与することができる。
【0061】
下地層16は、ブロック層14の上方に設けられた第2の窒化物半導体層の一例である。下地層16は、ブロック層14よりも抵抗が高い高抵抗層である。下地層16は、例えば、厚さが200nmのアンドープGaN(i-GaN)からなる膜である。下地層16は、ブロック層14に接触して設けられている。下地層16は、例えば、MOVPE法、HVPE法などの結晶成長により、ブロック層14上に形成される。
【0062】
下地層16については、アンドープの半導体層を想定しているが、絶縁層または半絶縁層でもよい。ここで“アンドープ”とは、GaNの極性をn型またはp型に変化させるSiまたはMgなどのドーパントがドープされていないことを意味する。本実施の形態では、下地層16には、炭素(C)がドープされていてもよい。例えば、下地層16の炭素濃度は、ブロック層14の炭素濃度より高い。
【0063】
例えば、下地層16の炭素濃度は、3×1017cm-3以上であるが、1×1018cm-3以上であってもよい。このとき、n型不純物となるケイ素(Si)または酸素(O)の各濃度は、炭素濃度より低い。例えば、下地層16のケイ素濃度または酸素濃度は、5×1016cm-3以下であるが、2×1016cm-3以下であってもよい。下地層16およびブロック層14に注入されるイオンの種類としては、半導体層を高抵抗化できるイオン種であれば、上記以外のイオン種でも同様の効果が得られる。
【0064】
また、下地層16の上面には、ブロック層14からMgなどのp型不純物が拡散するのを抑制するための層が設けられていてもよい。例えば、ブロック層14上には、厚さが20nmのAlGaN層が設けられていてもよい。
【0065】
ゲート開口部20は、下地層16およびブロック層14を貫通して、ドリフト層12にまで達する第1の開口部の一例である。ゲート開口部20の底面20aは、ドリフト層12の上面の一部である。図1に示すように、底面20aは、ブロック層14の下面より下側に位置している。なお、ブロック層14の下面は、ブロック層14とドリフト層12との界面に相当する。底面20aは、例えば、基板10の主面に平行である。窒化物半導体デバイス1のオン時のドレイン電流は、ドレイン電極38と第1のソース電極36との間を、このゲート開口部20の底面20aを通じて流れる。
【0066】
本実施の形態では、ゲート開口部20は、基板10から遠ざかる程、開口面積が大きくなるように形成されている。具体的には、ゲート開口部20の側面20bは、斜めに傾斜している。図1に示すように、ゲート開口部20の断面視形状は、逆台形、より具体的には、逆等脚台形である。
【0067】
底面20aに対する側面20bの傾斜角は、例えば、20°以上80°以下であるが、30°以上45°以下であってもよい。傾斜角が小さい程、側面20bがc面に近づくので、結晶再成長により側面20bに沿って形成される電子走行層22などの膜質を高めることができる。一方で、傾斜角が大きい程、ゲート開口部20が大きくなりすぎることが抑制され、窒化物半導体デバイス1の小型化が実現される。
【0068】
ゲート開口部20は、基板10の主面上に、ドリフト層12、ブロック層14および下地層16をこの順で連続的な成膜により形成した後、部分的にドリフト層12を露出させるように、下地層16およびブロック層14の各々の一部を除去することで形成される。このとき、ドリフト層12の表層部分を所定の厚さ分(例えば300nm)を除去することで、ゲート開口部20の底面20aは、ブロック層14の下面よりも下方に形成される。
【0069】
下地層16およびブロック層14を除去する方法として、誘導結合プラズマエッチング(ICP)などのドライエッチングなどを用い、プロセスガスとして塩素系のガスを用いることが多い。
【0070】
電子走行層22は、下地層16の上面ならびにゲート開口部20の側面20bおよび底面20aを覆うように設けられた第1の再成長層の一例である。具体的には、電子走行層22の一部は、ゲート開口部20の底面20aおよび側面20bに沿って設けられ、電子走行層22の他の部分は、下地層16の上面上に設けられている。電子走行層22は、例えば、厚さが150nmのアンドープGaNからなる膜である。なお、電子走行層22は、アンドープを想定しているが、一部Siドープなどでn型化されてもよい。
【0071】
電子走行層22は、ゲート開口部20の底面20aおよび側面20bにおいてドリフト層12に接触している。電子走行層22は、ゲート開口部20の側面20bにおいて、ブロック層14および下地層16の各々に接触している。さらに、電子走行層22は、下地層16の上面に接触している。
【0072】
電子走行層22は、チャネル領域を有する。具体的には、電子走行層22と電子供給層24との界面の近傍には、チャネルとなる2次元電子ガス25が発生する。図1では、2次元電子ガス25が模式的に破線で図示されている。2次元電子ガス25は、電子走行層22と電子供給層24との界面に沿って、すなわち、ゲート開口部20の内面に沿って屈曲している。
【0073】
また、図1には示していないが、電子走行層22と電子供給層24との間に、厚さが1nm程度のAlN層が第2の再成長層として設けられている。これにより、合金散乱が抑制されてチャネル移動度が向上し、オン抵抗を低減することが可能になる。なお、AlN層は、必ずしも必要ではない。
【0074】
電子供給層24は、下地層16の上面ならびにゲート開口部20の側面20bおよび底面20aを覆うように設けられた第3の再成長層の一例である。電子走行層22と電子供給層24とは、基板10側からこの順で設けられている。電子供給層24は、例えば、厚さが20nmのアンドープAlGaNからなる膜である。
【0075】
電子供給層24は、電子走行層22の上面に沿った形状でほぼ均一な厚さで形成されている。図1に示すように、電子供給層24の上面は、平坦部24aと、傾斜部24bと、外縁部24cと、を含む。
【0076】
平坦部24aは、ゲート開口部20の底面20aに沿った部分である。平坦部24aは、例えば底面20aに平行な平面である。平坦部24aは、電子供給層24の上面のうち、最も下方に位置する部分である。
【0077】
傾斜部24bは、ゲート開口部20の側面20bに沿った部分である。傾斜部24bは、例えば、ゲート開口部20の側面20bに平行な傾斜面である。傾斜部24bは、平坦部24aを挟んで、その両側に設けられている。
【0078】
外縁部24cは、傾斜部24bの上端から外側に向かって延びる部分である。ここで“外側”とは、ゲート開口部20の底面20aを中心として第1のソース電極36に向かう方向である。外縁部24cは、基板10の主面に平行な平面である。外縁部24cは、電子供給層24の上面のうち、最も上方に位置する部分である。
【0079】
なお、平坦部24a、傾斜部24bおよび外縁部24cはそれぞれ、湾曲した湾曲面であってもよい。また、平坦部24aと傾斜部24bとは、滑らかに湾曲して接続されていてもよい。外縁部24cと傾斜部24bとは、滑らかに湾曲して接続されてもよい。
【0080】
電子供給層24は、電子走行層22よりもバンドギャップが大きい。このため、電子供給層24と電子走行層22との間にはAlGaN/GaNのヘテロ界面が形成されている。電子供給層24は、電子走行層22に形成されるチャネル領域(2次元電子ガス25)への電子の供給を行う。
【0081】
p型半導体層26は、電子供給層24の上方で、基板10の平面視においてゲート開口部20の底面20aに重なる位置に設けられた第2のp型窒化物半導体層の一例である。具体的には、p型半導体層26は、電子供給層24の上面の平坦部24aに接触して設けられている。本実施の形態では、p型半導体層26は、傾斜部24bには接触していない。p型半導体層26は、例えば、厚さが100nmであり、キャリア濃度が1×1017cm-3であるp型のAlGa1-xN(0≦x≦1)からなる膜である。
【0082】
p型半導体層26は、閾値調整層28とは離れた位置に設けられている。具体的には、p型半導体層26は、閾値調整層28とは電気的に分離されている。また、p型半導体層26の下面は、少なくとも電子供給層24の上面の外縁部24cよりも下方に位置している。例えば、p型半導体層26の少なくとも一部は、ブロック層14と同じ高さに位置している。
【0083】
なお、p型半導体層26の代わりに、絶縁層が設けられてもよい。絶縁層は、SiN、SiO、AlNまたはAlの絶縁性を有する窒化膜または酸化膜の単層又は多層構造であってもよい。
【0084】
閾値調整層28は、ゲート電極32と電子供給層24との間で、p型半導体層26とは離間して設けられた第3のp型窒化物半導体層の一例である。閾値調整層28は、電子供給層24の上面の外縁部24c上に設けられ、電子供給層24とゲート電極32とに接触している。
【0085】
閾値調整層28が設けられていることにより、チャネル部分のポテンシャルが持ち上がる。このため、トランジスタの閾値を増大させることができ、ノーマリオフ化が実現できる。
【0086】
閾値調整層28の厚さ、組成比およびキャリア濃度はそれぞれ、例えば、p型半導体層26の厚さ、組成比およびキャリア濃度と同じである。閾値調整層28は、p型半導体層26と同じ成膜工程で成膜された窒化物半導体膜をパターニングすることによって形成される。
【0087】
なお、閾値調整層28は設けられていなくてもよい。例えば、閾値調整層28の代わりに、SiNまたはSiOのような絶縁層がゲート電極32と電子供給層24との間に設けられてもよい。これにより、ゲート電流を抑制し、かつ、閾値を正方向にシフトさせノーマリオフ動作を実現することが可能になる。
【0088】
電子走行層22、電子供給層24、p型半導体層26および閾値調整層28は、ゲート開口部20を形成した後に、結晶の再成長工程によって窒化物半導体膜を連続的に成膜し、所定形状にパターニングすることによって形成される。具体的には、電子走行層22の基になるアンドープGaN膜、電子供給層24の基になるアンドープAlGaN膜、ならびに、p型半導体層26および閾値調整層28の基になるp型AlGaN膜を、MOVPE法またはHVPE法などによって連続的に成膜する。成膜後、p型AlGaN膜の一部を、アンドープAlGaN膜が露出するまでエッチングで除去することによって、p型半導体層26および閾値調整層28が形成される。p型半導体層26と閾値調整層28とは、電気的に分離されている。さらに、アンドープAlGaN膜およびアンドープGaN膜の各々の一部と下地層16の一部とを、ブロック層14が露出するまで連続的にエッチングで除去する。これにより、ブロック層14にまで達するソース開口部30が形成され、所定形状にパターニングされた電子供給層24および電子走行層22が形成される。
【0089】
ソース開口部30は、基板10の平面視においてゲート電極32から離れた位置で、電子供給層24および電子走行層22を貫通し、ブロック層14にまで達する第2の開口部の一例である。本実施の形態では、ソース開口部30は、基板10の平面視において、ゲート開口部20および閾値調整層28のいずれからも離れた位置に設けられている。
【0090】
ソース開口部30の底面30aは、ブロック層14の上面の一部である。図1に示す例では、底面30aは、下地層16の下面と面一であるが、これに限定されない。底面30aは、下地層16の下面よりも下側に位置していてもよい。なお、下地層16の下面は、下地層16とブロック層14との界面に相当する。底面30aは、例えば基板10の主面に平行である。
【0091】
また、図1に示すように、ソース開口部30は、基板10からの距離によらず開口面積が一定になるように形成されている。具体的には、ソース開口部30の側面30bは、底面30aに対して垂直である。つまり、ソース開口部30の断面視形状は、矩形である。
【0092】
あるいは、ソース開口部30は、基板10から遠ざかる程、開口面積が大きくなるように形成されていてもよい。具体的には、ソース開口部30の側面30bは、斜めに傾斜していてもよい。例えば、ソース開口部30の断面形状は、逆台形、より具体的には、逆等脚台形であってもよい。このとき、底面30aに対する側面30bの傾斜角は、例えば、30°以上60°以下の範囲であってもよい。側面30bが斜めに傾斜していることで、第1のソース電極36と電子走行層22(2次元電子ガス25)との接触面積が増えるので、オーミック接続が行われやすくなる。なお、2次元電子ガス25は、ソース開口部30の側面30bに露出し、露出部分で第1のソース電極36に接続されている。
【0093】
ソース開口部30が設けられていることにより、チャネルとして機能する2次元電子ガス25と第1のソース電極36とのオーミックコンタクト抵抗を低減することができる。また、ブロック層14と第1のソース電極36とを電気的に接続することができるので、ブロック層14の電位を安定させて耐圧の向上等の効果を得ることができる。
【0094】
ゲート電極32は、電子供給層24の上方で、基板10の平面視において下地層16に重なる位置に設けられている。具体的には、ゲート電極32は、閾値調整層28の上面に接触して設けられている。
【0095】
ゲート電極32は、例えば、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。例えば、ゲート電極32は、p型のGaN層に対してオーミック接触される材料を用いることができる。例えば、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)系材料、タングステンシリサイド(WSi)、金(Au)などを用いることができる。ゲート電極32は、閾値調整層28の形成後、ソース開口部30の形成後、または、第1のソース電極36および第2のソース電極34の形成後に、スパッタまたは蒸着などによって導電膜を成膜し、成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。
【0096】
第2のソース電極34は、p型半導体層26の上方に設けられている。具体的には、第2のソース電極34は、p型半導体層26の上面に接触して設けられている。第2のソース電極34は、電子供給層24には接触していない。
【0097】
第2のソース電極34は、第1のソース電極36と電気的に接続されている。すなわち、第2のソース電極34は、第1のソース電極36と同じソース電位が供給された電極である。第2のソース電極34は、2次元電子ガス25には直接接続されていない。ドレイン電極38からのドレイン電流は、2次元電子ガス25を介して第1のソース電極36に流れる。
【0098】
第2のソース電極34は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。第2のソース電極34の材料としては、第1のソース電極36と同じ材料を用いて形成することができる。第2のソース電極34は、例えば、スパッタまたは蒸着などによって導電膜を成膜し、成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。
【0099】
第1のソース電極36は、ソース開口部30を覆うように設けられている。具体的には、第1のソース電極36は、ソース開口部30を埋めるように、ソース開口部30の底面30aおよび側面30bに接触して設けられている。第1のソース電極36は、ソース開口部30の底面30aに露出したブロック層14に電気的に接続されている。
【0100】
なお、第1のソース電極36は、ソース開口部30の縁に相当する電子供給層24の上面の外縁部24cにも接触していてもよい。第1のソース電極36は、ソース開口部30の側面30bで2次元電子ガス25と直接接触している。これにより、第1のソース電極36と2次元電子ガス25とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0101】
第1のソース電極36は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。第1のソース電極36の材料としては、例えば、Ti/Al(Ti層とAl層との積層構造)など、熱処理することでn型のGaN層に対してオーミック接続される材料を用いることができる。第1のソース電極36は、例えば、スパッタまたは蒸着などによって成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。第1のソース電極36は、例えば、第2のソース電極34と同じ製造工程で形成される。
【0102】
ドレイン電極38は、基板10の下方に設けられている。具体的には、ドレイン電極38は、基板10の下面に接触して設けられる。
【0103】
ドレイン電極38は、金属などの導電性の材料を用いて形成されている。ドレイン電極38の材料としては、第1のソース電極36の材料と同様に、例えば、Ti/Alなどのn型のGaNに対してオーミック接触される材料を用いることができる。ドレイン電極38は、例えば、スパッタまたは蒸着などによって導電膜を成膜し、成膜した導電膜をパターニングすることにより形成される。
【0104】
[特徴的な構成]
続いて、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1の主な特徴的な構成について説明する。
【0105】
上述したように、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス1では、ゲート電極32および閾値調整層28がゲート開口部20の外側に位置し、ゲート開口部20の底面20aの近傍には第2のソース電極34およびp型半導体層26が設けられている。つまり、第2のソース電極34およびp型半導体層26は、ゲート電極32および閾値調整層28よりも下方に位置している。少なくともp型半導体層26の下面が、閾値調整層28の下面よりも下方に位置していればよい。第2のソース電極34およびp型半導体層26の一部が、ゲート電極32および閾値調整層28の一方よりも上方に位置していてもよい。
【0106】
以下では、図2Aおよび図2Bを用いて比較例と比較しながら具体的に説明する。図2Aおよび図2Bはそれぞれ、比較例および本実施の形態に係る窒化物半導体デバイスのゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを説明するための図である。
【0107】
図2Aには、比較例に係る窒化物半導体デバイス1xの断面構成のうち、ゲート開口部20の近傍を表している。比較例に係る窒化物半導体デバイス1xは、窒化物半導体デバイス1と比較して、p型半導体層26、閾値調整層28、ゲート電極32および第2のソース電極34の代わりに、ゲート電極32xおよび閾値調整層28xを備える点が相違する。具体的には、ゲート電極32xおよび閾値調整層28xは、ゲート開口部20の底面20aおよび側面20bに沿って設けられている。より具体的には、閾値調整層28xは、電子供給層24の上面の平坦部24a、傾斜部24bおよび外縁部24cの各々を覆うように設けられている。また、ゲート電極32xは、閾値調整層28xの上面に接触して設けられている。具体的には、ゲート電極32xは、平面視において、ゲート開口部20の底面20aに重なる位置に設けられている。
【0108】
このような構成により、ゲート電極32xおよび閾値調整層28xとドレイン電極38とが向かい合う面積が大きくなる。このため、ゲート-ドレイン間の平行平板容量が大きくなるので、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdに寄与するドレインからゲートに向かう電気力線は、そのほぼ全てがゲートに終端されている。このため、寄生容量Cgdを低減することが難しい。
【0109】
一方、本実施の形態に係る構成では、図2Bに示すように、ゲート開口部20の底面20aの近傍には第2のソース電極34およびp型半導体層26が設けられている。このため、ドレインからゲートに向かう電気力線の一部を第2のソース電極34およびp型半導体層26に終端させることができる。その結果、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを低減することが可能である。
【0110】
また、図1に示すように、ブロック層14が閾値調整層28よりも、p型半導体層26に近い位置に位置している。具体的には、基板10の平面視において、ブロック層14とp型半導体層26との距離D1は、閾値調整層28とp型半導体層26との距離D2よりも短い。つまり、第1のソース電極36に接続されたブロック層14の、p型半導体層26側の端部が、閾値調整層28の、p型半導体層26側の端部よりも、p型半導体層26側に位置している。これにより、ブロック層14もゲート電極32に向かう電気力線を遮蔽することができる。このため、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdをより一層低減することができ、トランジスタの高速動作を実現することができる。
【0111】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。
【0112】
実施の形態2では、ゲート電極の直下に設けられた閾値調整層の端部の位置が実施の形態1とは主として異なる。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0113】
図3は、実施の形態2に係る窒化物半導体デバイス101の断面図である。図3に示すように、窒化物半導体デバイス101は、図1に示した窒化物半導体デバイス1と比較して、閾値調整層28の代わりに閾値調整層128を備える点が相違する。閾値調整層128は、第3のp型窒化物半導体層の一例であり、その端部の位置が、閾値調整層28とは相違している。
【0114】
具体的には、基板10の平面視において、閾値調整層128とp型半導体層26との距離D2は、ブロック層14とp型半導体層26との距離D1よりも短い。つまり、閾値調整層128の、p型半導体層26側の端部が、ブロック層14の、p型半導体層26側の端部よりも、p型半導体層26側に位置している。
【0115】
本構成によれば、ドレイン電極38から閾値調整層128に向かう電気力線の一部は、第1のソース電極36に接続されたブロック層14で終端しきれない。このため、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdは、実施の形態1に係る窒化物半導体デバイス1と比較して微増する。その一方で、ゲート長を長くすることができるので、窒化物半導体デバイス101のオフ耐圧を向上させることができる。
【0116】
なお、ゲート長は、ゲート電極32および閾値調整層28によってチャネルの開閉が制御可能な長さに対応しており、具体的には、第1のソース電極36とゲート電極32とが並ぶ方向における閾値調整層128の長さである。図3に示す断面図における閾値調整層28の幅(横方向の長さ)がゲート長に相当する。閾値調整層128の、p型半導体層26側の端部をp型半導体層26に近づけて配置することにより、ゲート長を長くすることができる。例えば、閾値調整層128の一部は、平面視において、ゲート開口部20の底面20aに重なっていてもよい。
【0117】
以上のように、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス101によれば、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを低減しながら、オフ耐圧を向上させることができる。よって、高速動作と高い信頼性とを両立させた窒化物半導体デバイス101を実現することができる。
【0118】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。
【0119】
実施の形態3では、第2のソース電極の直下に設けられたp型半導体層の大きさが実施の形態1とは主として異なる。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0120】
図4は、実施の形態3に係る窒化物半導体デバイス201の断面図である。図4に示すように、窒化物半導体デバイス201は、図1に示した窒化物半導体デバイス1と比較して、p型半導体層26の代わりにp型半導体層226を備える点が相違する。p型半導体層226は、第2のp型窒化物半導体層の一例であり、電子供給層24の上面を覆う範囲がp型半導体層26とは相違している。
【0121】
具体的には、p型半導体層226は、電子供給層24の上面のうち、平坦部24aと傾斜部24bの一部とを連続的に覆っている。より具体的には、p型半導体層226は、平坦部24aの全体と傾斜部24bの一部とを連続的に覆っている。傾斜部24bを覆う範囲は特に限定されないが、例えば、傾斜部24bの下半分より少ない範囲である。
【0122】
本構成によれば、p型半導体層226が電子供給層24の上面の平坦部24aと傾斜部24bの一部とを覆うことにより、オフ時の電界が集中しやすい箇所を増やすことができる。具体的には、ブロック層14の、p型半導体層226側の端部と、p型半導体層226の底面と、p型半導体層226の端部とで電界を受けることができる。このように、電界集中を緩和することができるので、オフリークを低減することができる。また、実施の形態1と同様に、p型半導体層226が電気力線を遮蔽することができるので、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを低減することができ、トランジスタの高速動作を実現することができる。
【0123】
図5は、実施の形態3の変形例に係る窒化物半導体デバイス202の断面図である。図5に示すように、窒化物半導体デバイス202は、図4に示した窒化物半導体デバイス101と比較して、閾値調整層28の代わりに閾値調整層128を備える。閾値調整層128は、図3に示した閾値調整層128と同じである。
【0124】
具体的には、基板10の平面視において、閾値調整層128とp型半導体層226との距離D2は、ブロック層14とp型半導体層226との距離D1よりも短い。つまり、閾値調整層128の、p型半導体層226側の端部が、ブロック層14の、p型半導体層226側の端部よりも、p型半導体層226側に位置している。
【0125】
これにより、電界集中の緩和によるオフリークの低減と、ゲート長が長くなることによる高耐圧化とを両立することが可能となる。また、p型半導体層226が電気力線を遮蔽することができるので、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを低減することができ、トランジスタの高速動作を実現することができる。
【0126】
(実施の形態4)
続いて、実施の形態4について説明する。
【0127】
実施の形態4では、第2のソース電極の直下に設けられたp型半導体層の底部がブロック層の底部よりもドレイン電極に近い点が実施の形態1とは主として異なる。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0128】
図6は、本実施の形態に係る窒化物半導体デバイス301の断面図である。図6に示すように、窒化物半導体デバイス301は、図1に示した窒化物半導体デバイス1と比較して、ゲート開口部20の代わりにゲート開口部320を備える。ゲート開口部320は、その底面320aがドレイン電極38に近い点がゲート開口部20とは相違する。
【0129】
具体的には、ゲート開口部320の底面320aは、ドリフト層12の深い位置に位置している。具体的には、ゲート開口部320の底面320aは、ドリフト層12とブロック層14との界面までの、基板10の主面に直交する方向の距離が、電子走行層22および電子供給層24の厚みよりも長くなるように設けられている。
【0130】
このため、電子供給層24の上面の平坦部24aを覆うp型半導体層26の底面は、ドリフト層12とブロック層14との界面よりも下方に位置する。言い換えると、p型半導体層26とドレイン電極38との距離D3は、ブロック層14とドレイン電極38との距離D4よりも短くなる。
【0131】
これにより、p型半導体層26によってオフ時の電界集中をより緩和させることができるので、オフリークを低減することが可能となる。また、p型半導体層26が電気力線を遮蔽することができるので、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを低減することができ、トランジスタの高速動作を実現することができる。
【0132】
図7は、実施の形態4の変形例に係る窒化物半導体デバイス302の断面図である。図7に示すように、窒化物半導体デバイス302は、図6に示した窒化物半導体デバイス301と比較して、p型半導体層26の代わりにp型半導体層226を備える。p型半導体層226は、図4に示したp型半導体層226と同じである。
【0133】
具体的には、p型半導体層226は、電子供給層24の上面のうち、平坦部24aと傾斜部24bの一部とを連続的に覆っている。より具体的には、p型半導体層226は、平坦部24aの全体と傾斜部24bの一部とを連続的に覆っている。
【0134】
これにより、p型半導体層226によってオフ時の電界集中をより緩和させることができるので、オフリークを低減することが可能となる。また、p型半導体層226が電気力線を遮蔽することができるので、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを低減することができ、トランジスタの高速動作を実現することができる。
【0135】
なお、窒化物半導体デバイス301または302は、閾値調整層28の代わりに閾値調整層128を備えてもよい。これにより、ゲート-ドレイン間の寄生容量Cgdを低減しながら、オフ耐圧を向上させることができる。よって、高速動作と高い信頼性とを両立させた窒化物半導体デバイス301または302を実現することができる。
【0136】
(他の実施の形態)
以上、1つまたは複数の態様に係る窒化物半導体デバイスについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、および、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0137】
例えば、ドリフト層12は、基板10側からブロック層14側にかけて徐々に不純物濃度(ドナー濃度)を低減させていくグレーデッド構造にしてもよい。なお、ドナー濃度の制御は、ドナーとなるSiで制御してもよいし、Siを補償するようなアクセプタとなる炭素で制御してもよい。あるいは、ドリフト層12は、不純物濃度が異なる複数の窒化物半導体層の積層構造を有してもよい。
【0138】
また、上記の各実施の形態は、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本開示の窒化物半導体デバイスは、例えば、機器の電源回路、インバータ回路等で用いられるパワートランジスタなどとして有用である。
【符号の説明】
【0140】
1、101、201、202、301、302 窒化物半導体デバイス
10 基板
12 ドリフト層
14 ブロック層
16 下地層
20、320 ゲート開口部
20a、30a、320a 底面
20b、30b 側面
22 電子走行層
24 電子供給層
24a 平坦部
24b 傾斜部
24c 外縁部
25 2次元電子ガス
26、226 p型半導体層
28、128 閾値調整層
30 ソース開口部
32 ゲート電極
34 第2のソース電極
36 第1のソース電極
38 ドレイン電極
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7