(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168113
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】滑り検出装置および方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084539
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】横原 慎吾
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB37
2C056EC07
2C056EC37
2C056EC77
2C056HA29
(57)【要約】
【課題】搬送ベルトなど搬送路によって搬送される印刷媒体に印刷される印刷画像の縮みを防止することができる滑り検出装置および方法を提供する。
【解決手段】搬送ベルト13の移動によって搬送される印刷媒体Pの移動距離を検出する測距センサ40と、印刷媒体Pの移動距離と搬送ベルト13の移動距離とに基づいて、搬送ベルト13上における印刷媒体Pの滑りの情報を取得する滑り検出部71とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路の移動によって搬送される印刷媒体の移動距離を検出する印刷媒体移動距離検出部と、
前記印刷媒体の移動距離と前記搬送路の移動距離とに基づいて、前記搬送路上における前記印刷媒体の滑りを検出する滑り検出部とを備えた滑り検出装置。
【請求項2】
前記搬送路の移動距離を検出する搬送路移動距離検出部を備える請求項1記載の滑り検出装置。
【請求項3】
前記印刷媒体の滑りの情報に基づいて、前記印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷処理部を制御する制御部を備えた請求項1記載の滑り検出装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記印刷媒体の滑りの情報が、予め設定された閾値以上である場合には、警告を出力する請求項3記載の滑り検出装置。
【請求項5】
前記印刷媒体移動距離検出部が、前記印刷媒体の移動距離を検出する測距センサを有し、
前記測距センサが、前記印刷媒体が搬送される範囲外に設置されている請求項1記載の滑り検出装置。
【請求項6】
搬送路の移動によって搬送される印刷媒体の移動距離を検出し、
前記印刷媒体の移動距離と前記搬送路の移動距離とに基づいて、前記搬送路上における前記印刷媒体の滑りを検出する滑り検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路の移動によって搬送される印刷媒体の搬送路上における滑りを検出する滑り検出装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用のインクジェット印刷装置は、単色やスポットカラーによる多色印刷が主流となっている。その理由は、速度変動の大きいベルトコンベアで印刷媒体を搬送することにある。ベルトコンベアで印刷媒体を搬送した場合、プロセスカラーによる重色印刷では、速度変動によって位置ずれを生じる場合があるため不向きである。
【0003】
ただし、ある程度の速度変動であれば、たとえばベルト速度を測定し、その測定されたベルト速度に合わせてインクを吐出することで、速度変動による印刷画像への悪影響を最小限にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、印刷画像への悪影響は速度変動だけでなく、印刷媒体と搬送ベルトとの間で起こる突発的な滑りでも発生する。たとえば搬送ベルトにより搬送される印刷媒体が、段ボールのような梱包材である場合、搬送ベルトと印刷媒体との間で滑りが発生しやすい。
【0006】
印刷媒体とベルトとの間で滑りが発生した場合、印刷媒体が想定よりも遅く移動しているため、印刷画像は、原稿画像よりも縮むことになる。また、滑りによる印刷画像への影響は印刷区間内で起きたものは累計されるため、起こる頻度によっては影響度が計り知れない。
【0007】
特許文献1では、印刷媒体を搬送するローラに設けられたロータリーエンコーダによって検出される送り量と、予め設定された標準送り量を5ラインごとに比較し、この送り誤差によって印画周期を調節することが提案されている。特許文献1では、ロータリーエンコーダによって検出される送り量のずれについては補正をおこなっているが、印刷媒体の滑りについては何も触れられていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、搬送ベルトなどによって搬送される印刷媒体に印刷される印刷画像の縮みを防止することができる滑り検出装置および方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の滑り検出装置は、搬送路の移動によって搬送される印刷媒体の移動距離を検出する印刷媒体移動距離検出部と、印刷媒体の移動距離と搬送路の移動距離とに基づいて、搬送路上における印刷媒体の滑りを検出する滑り検出部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の滑り検出装置によれば、搬送路の移動によって搬送される印刷媒体の移動距離を検出し、印刷媒体の移動距離と搬送路の移動距離とに基づいて、搬送路上における印刷媒体の滑りを検出するようにしたので、たとえばその滑りの情報に基づいて、インクの吐出タイミングを制御したり、警告を行うことによって、印刷画像の縮みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の滑り検出装置の一実施形態を用いた印刷装置の外観斜視図
【
図3】ローラエンコーダユニットの概略構成を示す図
【
図4】
図1に示す印刷装置の制御系を示すブロック図
【
図5】滑り情報に基づいてインクの吐出タイミングの制御および警告を行う方法を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の滑り検出装置の一実施形態を用いた印刷装置1について詳細に説明する。本実施形態の印刷装置1は、搬送ベルト上における印刷媒体の滑り検出に特徴を有するものであるが、まずは、印刷装置1全体の構成について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置1の概略構成を示す外観斜視図である。
図1に示す上下左右前後が、本実施形態の印刷装置1の上下左右前後方向であり、
図2は、
図1に示す印刷装置1を上方から見た図である。
【0013】
本実施形態の印刷装置1は、段ボールなどの立体的な印刷媒体Pの側面Psに印刷処理を施すものである。印刷装置1は、搬送ユニット10と、ヘッドユニット20と、ローラエンコーダユニット30と、測距センサ40と、給紙センサ50と、排紙センサ60とを備えている。
【0014】
搬送ユニット10は、印刷媒体Pを
図1および
図2に示す搬送方向(矢印方向)に搬送する。搬送ユニット10は、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設された2本のプラテンローラ11,12と搬送ベルト13などを備える。
【0015】
2本のプラテンローラ11,12は、印刷媒体Pの搬送方向について離間して平行に配置される。そして、平行に配列された2本のプラテンローラ11,12間に環状の搬送ベルト13が掛け渡され、プラテンローラ11,12が回転することによって、環状の搬送ベルト13が移動し、これにより印刷媒体Pが搬送される。
【0016】
ヘッドユニット20は、搬送ユニット10によって搬送された印刷媒体Pの側面Psに対してインクを吐出することによって印刷処理を施す。
【0017】
ヘッドユニット20は、
図1に示すように、4本のラインヘッド21,22,23,24を有する。4本のラインヘッド21~24は、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)およびK(ブラック)のインクを吐出するものである。
【0018】
各ラインヘッド21~24は、複数のインクジェットヘッド25が鉛直方向に配列されたものであり、印刷媒体Pの搬送方向について平行に配列される。
【0019】
各ラインヘッド21~24は、それぞれ6個のインクジェットヘッド25を備える。各ラインヘッド21~24において、6個のインクジェットヘッド25は、鉛直方向について千鳥配置されている。そして、印刷媒体Pの搬送に伴って、千鳥配置された6個のインクジェットヘッド25から予め設定された吐出タイミングにてインクが吐出されることによって、印刷媒体Pの側面Psに対して印刷処理が施される。
【0020】
なお、本実施形態では、インクジェット方式によって印刷処理を施すようにしたが、感熱方式によって印刷処理を施すようにしてもよい。
【0021】
ローラエンコーダユニット30は、搬送ユニット10の搬送ベルト13の移動距離を検出するものである。
図3は、ローラエンコーダユニット30の概略構成を示す図である。本実施形態においては、ローラエンコーダユニット30が、本発明の搬送路移動距離検出部に相当する。
【0022】
図3に示すように、ローラエンコーダユニット30は、ローラ31と、ロータリーエンコーダ32とを備える。ローラ31は、搬送ベルト13に接するように設置され、ローラ31と搬送ベルト13との接地面で発生する摩擦力によって、搬送ベルト13の移動に伴ってローラ31が回転するように構成されている。すなわち、ローラ31は、プラテンローラ11,12の回転に伴う搬送ベルト13の移動によって回転する。
【0023】
ローラ31の中心には回転軸33の一端が接続され、回転軸33の他端にはロータリーエンコーダ32が接続されている。ローラ31の回転によってロータリーエンコーダ32が回転し、これにより、ロータリーエンコーダ32から後述する制御部70に向けてパルス信号が出力される。制御部70は、ロータリーエンコーダ32から出力されたパルス信号をカウントすることによって、搬送ベルト13の移動距離を算出する。
【0024】
ただし、ローラエンコーダユニット30のパルス信号に基づいて算出される搬送ベルト13の移動距離は、搬送ベルト13上においてローラ31の滑りが無い場合には、実際の搬送ベルト13の移動距離と一致するが、ローラ31の滑りが有る場合には、パルス信号のカウント数が少なくなるので、実際の搬送ベルト13の移動距離よりも短い距離となる。
【0025】
測距センサ40は、レーザ変位計であって、搬送ベルト13によって搬送される印刷媒体Pに対してレーザ光を照射し、その反射光を検出することによって、測距センサ40と印刷媒体Pとの間の距離を検出する。本実施形態においては、測距センサ40が、印刷媒体移動距離検出部に相当する。
【0026】
測距センサ40は、
図2に示すように、搬送方向に直交する方向について、搬送ベルト13を挟んでヘッドユニット20とは反対側に設置される。また、測距センサ40は、印刷媒体Pが搬送される範囲の外側に設置され、これにより搬送ベルト13によって搬送される印刷媒体Pに衝突しない位置に配置される。
【0027】
そして、測距センサ40は、
図2に示すように、レーザ光Lsの光軸と搬送方向とが、角度θをなすような方向に向けてレーザ光Lsを出射する。角度θは、給紙センサ50と排紙センサ60との間を搬送される印刷媒体Pに対してレーザ光Lsが照射されるように設定されている。
【0028】
給紙センサ50および排紙センサ60は、光学センサであり、給紙センサ50は、ヘッドユニット20に対して搬送方向上流側の近傍に設けられ、排紙センサ60は、ヘッドユニット20に対して搬送方向下流側の近傍に設けられる。
【0029】
給紙センサ50および排紙センサ60は、印刷媒体Pが通過したことを検出するセンサである。給紙センサ50によって印刷媒体Pの通過が検出されることによって、ヘッドユニット20への印刷媒体Pの供給タイミングが検出される。また、排紙センサ60によって印刷媒体Pの通過が検出されることによって、ヘッドユニット20からの印刷媒体Pの排出タイミングが検出される。後述する制御部70は、上述した供給タイミングに基づいて、ヘッドユニット20からのインク吐出の開始タイミングを制御し、上述した排出タイミングに基づいて、印刷媒体Pに対する印刷処理の終了を検出する。
【0030】
図4は、本実施形態の印刷装置1の制御系を示すブロック図である。印刷装置1は、装置全体を制御する制御部70を備えている。
【0031】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えている。制御部70は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたプログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって
図4に示す各部を制御するものである。
【0032】
特に、本実施形態の制御部70は、滑り検出部71を備える。滑り検出部71は、測距センサ40によって検出された印刷媒体Pとの距離に基づいて、印刷媒体Pの移動距離を算出するとともに、ローラエンコーダユニット30から出力されたパルス信号に基づいて、搬送ベルト13の移動距離を算出する。なお、上述したように、ローラエンコーダユニット30のローラ31に滑りが生じた場合、実際の搬送ベルト13の移動距離とローラエンコーダユニット30のパルス信号に基づく搬送ベルト13の移動距離とが異なるので、以下、ローラエンコーダユニット30のパルス信号に基づく搬送ベルト13の移動距離のことを、エンコーダ移動距離という。
【0033】
そして、滑り検出部71は、単位時間当たりの印刷媒体Pの移動距離とエンコーダ移動距離とに基づいて、搬送ベルト13上における印刷媒体Pの滑り量および搬送ベルト13上におけるローラエンコーダユニット30のローラ31の滑り量の両方を含む滑り情報を取得する。
【0034】
具体的には、滑り検出部71は、下式(1)に基づいて、時間t1から時間t2までの搬送エンコーダ移動距離Lencを算出する。ただし、Dは、ローラ31の直径[mm]であり、Pは、ロータリーエンコーダ32の1回転当たりのパルス数[pulse]であり、Pt2-t1は、時間t1から時間t2までに検出されたパルス数[pulse]である。
D/P×Pt2-t1=Lenc ・・・(1)
【0035】
また、滑り検出部71は、下式(2)に基づいて、時間t1から時間t2までの印刷媒体Pの移動距離Lsnrを算出する。ただし、Xt1は、時間t1において測距センサ40によって検出された測定距離[mm]であり、Xt2は、時間t2において測距センサ40によって検出された測定距離[mm]であり、θは、測距センサ40から出射されたレーザ光Lsの光軸と搬送方向とが成す角度(
図2に示すθ)である。
(Xt1-Xt2)×cosθ=Lsnr ・・・(2)
【0036】
そして、滑り検出部71は、上式(1)で求められたLencと上式(2)で求められたLsnrに基づいて、下式(3)により滑り情報Lを算出する。
L=Lenc-Lsnr ・・・(3)
【0037】
なお、滑り情報Lは、時間t1から時間t2までの時間毎に取得されるが、時間t1から時間t2までの時間が短すぎると、たとえば測距センサ40がセンシティブになり過ぎて発振する可能性があり、また、高性能なセンサを用意する必要がある。
【0038】
そこで、本実施形態においては、汎用的な性能の測距センサ40を用いて、時間t1から時間t2までの時間をたとえば0.50msとする。すなわち、滑り検出部71は、給紙センサ50によって印刷媒体Pが検出された時点から排紙センサ60によって印刷媒体Pが検出されなくなる時点までの間において、0.50ms毎に滑り情報Lを取得する。
【0039】
さらに、制御部70は、上述したようにして取得された滑り情報Lに基づいて、下式(4)により補正値T[s]を求める。Sは、搬送ベルト13の搬送速度[mm/s]で、予め設定された値であり、補正値Tは、印刷媒体Pの移動距離とエンコーダ移動距離の差分だけ進むための時間[s]である。
T=L/S ・・・(4)
【0040】
そして、制御部70は、ローラエンコーダユニット30のパルス信号のカウント数が予め設定された数に到達する毎に、ヘッドユニット20の各インクジェットヘッド25からのインクの吐出タイミングを制御するが、この際、滑り情報Lの大きさに応じて、補正値Tを用いてインクの吐出タイミングを補正する。また、制御部70は、滑り情報Lの絶対値が、予め設定された閾値を超える場合には、操作パネル80にメッセージを表示させるなどして警告を行う。
【0041】
図5は、上述したように滑り情報Lおよび補正値Tに基づいて、インクの吐出タイミングの制御および警告を行う方法を説明するためのフローチャートである。
【0042】
図5に示すように、制御部70は、まず、滑り情報Lが正の値か否かを判定する(S10)。なお、滑り情報Lが正である場合には、Lenc>Lsnrであるので、エンコーダ移動距離よりも印刷媒体Pの移動距離の方が小さいので、搬送ベルト13上において印刷媒体Pの滑りが生じていることになる。
【0043】
そして、制御部70は、滑り情報Lが正の値である場合には(S10,YES)、滑り情報Lが、0.10以上かつ0.50以下であるか否かを判定する(S12)。そして、制御部70は、滑り情報Lが、0.10以上かつ0.50以下である場合には(S12,YES)、印刷媒体Pの滑りを検出し(S14)、予め設定されたインクの吐出タイミングに対して補正値Tを加算する(S18)。この場合、補正値Tは正の値であるので、補正値Tを加算することによって、予め設定されたインクの吐出タイミングを遅らせることができ、印刷画像の縮みを防止することができる。
【0044】
一方、制御部70は、滑り情報Lが負の値である場合には(S10,NO)、滑り情報Lが、-0.10以下かつ-0.50以上であるか否かを判定する(S20)。なお、滑り情報Lが負である場合には、Lenc<Lsnrであるので、印刷媒体Pの移動距離よりもエンコーダ移動距離の方が小さいので、搬送ベルト13上においてローラ31の滑りが生じていることになる。
【0045】
したがって、制御部70は、滑り情報Lが、-0.10以下かつ-0.50以上である場合には(S20,YES)、ローラ31の滑りを検出し(S22)、予め設定されたインクの吐出タイミングに対して補正値Tを加算する(S18)。この場合、補正値Tは負の値であるので、補正値Tを加算することによって、予め設定されたインクの吐出タイミングを早めることができ、印刷画像の伸びを防止することができる。
【0046】
また、制御部70は、S12において、滑り情報Lが0.10以上かつ0.50以下の範囲ではないと判定され(S12,NO)、かつ滑り情報Lが0.50を超える場合には(S24,YES)、補正の許容範囲を超えるものとして、インクの吐出タイミングの補正を行うことなく、警告を行う(S28)。
【0047】
また、制御部70は、S20において、滑り情報Lが0.-10以下かつ-0.50以上の範囲ではないと判定され(S12,NO)、かつ滑り情報Lが-0.50よりも小さい場合にも(S26,YES)、補正の許容範囲を超えるものとして、インクの吐出タイミングの補正を行うことなく、警告を行う(S28)。
【0048】
一方、制御部70は、S24において、滑り情報Lが0.10を超えていない、すなわち0.10よりも小さい場合には、許容範囲内である(滑りによる印刷画像への影響が特に問題のないレベルである)として、インクの吐出タイミングの補正および警告を行わない。また、制御部70は、S26において、滑り情報Lが-0.10よりも小さくない、すなわち-0.10よりも大きい場合には、許容範囲内であるとして、インクの吐出タイミングの補正および警告を行わない。
【0049】
そして、制御部70は、S10~S28までの処理を印刷処理が終了するまで繰り返して行い(S30,NO)、印刷処理が終了した時点で処理を終了する(S30,YES)。
【0050】
上記実施形態の印刷装置1によれば、印刷媒体Pの移動距離を検出し、印刷媒体Pの移動距離と搬送ベルト13の移動距離(エンコーダ移動距離)とに基づいて、搬送ベルト13上における印刷媒体Pの滑り情報Lを取得し、その滑り情報Lに基づいて、インクの吐出タイミングを補正値Tによって補正したり、警告を行うようにしたので、印刷画像の縮みを防止することができる。
【0051】
また、上記実施形態の印刷装置1においては、搬送ベルト13の移動距離を検出するローラエンコーダユニット30を設けるようにしたので、ローラエンコーダユニット30によって検出されたエンコーダ移動距離と印刷媒体Pとの移動距離とを比較することによって、ローラエンコーダユニット30のローラ31の搬送ベルト13上における滑りも検出することができる。
【0052】
また、上記実施形態の印刷装置1においては、印刷媒体Pの滑り情報Lに基づいて、ヘッドユニット20のインクジェットヘッド25からのインクの吐出タイミングを補正するようにしたので、簡易な制御によって印刷画像の伸縮を防止することができる。
【0053】
また、上記実施形態の印刷装置1においては、印刷媒体Pの滑り情報Lが、予め設定された閾値以上である場合には、警告を出力するようにしたので、滑り情報Lが印刷画像の補正の許容範囲を超える場合には、印刷処理を停止させることができる。
【0054】
また、上記実施形態の印刷装置1においては、印刷媒体Pの移動距離を検出する測距センサ40を有し、その測距センサ40を、印刷媒体Pが搬送される範囲外に設置するようにしたので、印刷媒体Pが測距センサ40に衝突することなく、印刷媒体Pの移動距離を適切に計測することができる。
【0055】
また、上記実施形態の印刷装置1においては、搬送ベルト13上における印刷媒体Pの滑りとローラエンコーダユニット30のローラ31の滑りとの両方を検出するようにしたが、これらのうち搬送ベルト13上における印刷媒体Pの滑りのみを検出するようにしてもよい。この場合、滑り情報Lを算出する際には、エンコーダ移動距離ではなく、たとえば予め設定された搬送速度と時間t1~時間t2までの時間を乗算することによって、搬送ベルト13の移動距離を算出するようにしてもよい。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。たとえば実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。
【0057】
本発明に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
本発明の滑り検出装置は、搬送路の移動によって搬送される印刷媒体の移動距離を検出する印刷媒体移動距離検出部と、印刷媒体の移動距離と搬送路の移動距離とに基づいて、搬送路上における印刷媒体の滑りを検出する滑り検出部とを備える。
【0058】
(付記2)
付記1記載の滑り検出装置においては、搬送路の移動距離を検出する搬送路移動距離検出部を備えることができる。
【0059】
(付記3)
付記1または付記2記載の滑り検出装置においては、印刷媒体の滑りの情報に基づいて、印刷媒体に対して印刷処理を施す印刷処理部を制御する制御部を備えることができる。
【0060】
(付記4)
付記3記載の滑り検出装置において、制御部は、印刷媒体の滑りの情報が、予め設定された閾値以上である場合には、警告を出力することができる。
【0061】
(付記5)
付記1から付記4記載の滑り検出装置においては、印刷媒体移動距離検出部が、印刷媒体の移動距離を検出する測距センサを有し、その測距センサを、印刷媒体が搬送される範囲外に設置することができる。
【0062】
(付記6)
本発明の滑り検出方法は、搬送路の移動によって搬送される印刷媒体の移動距離を検出し、印刷媒体の移動距離と搬送路の移動距離とに基づいて、搬送路上における印刷媒体の滑りを検出する。
【符号の説明】
【0063】
1 印刷装置
10 搬送ユニット
11,12 プラテンローラ
13 搬送ベルト
20 ヘッドユニット
21~24 ラインヘッド
25 インクジェットヘッド
30 ローラエンコーダユニット
31 ローラ
32 ロータリーエンコーダ
33 回転軸
40 測距センサ
50 給紙センサ
60 排紙センサ
70 制御部
71 滑り検出部
Ls レーザ光
P 印刷媒体
Ps 側面