(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168130
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】吸着材、二酸化炭素回収装置、および燃料製造装置
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20241128BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241128BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20241128BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20241128BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241128BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/28 Z
B01J20/34 F
B01D53/04 230
C01B32/50
C01B33/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084563
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】藤田 彰利
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】今川 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 翔
(72)【発明者】
【氏名】堀部 伸光
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 征一郎
(72)【発明者】
【氏名】北中 直輝
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G072
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA03
4D012CB12
4D012CD02
4D012CD07
4D012CE01
4D012CF02
4D012CG01
4D012CG03
4D012CG05
4G066AA22C
4G066AB13B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA25
4G066CA35
4G066DA02
4G066GA01
4G066GA06
4G072AA25
4G072BB05
4G072DD01
4G072GG02
4G072HH14
4G072QQ06
4G072TT01
4G072TT08
4G072TT09
4G072UU11
4G146JA02
4G146JC28
4G146JC37
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素含有ガスからの二酸化炭素回収率を向上させる技術を提供する
【解決手段】二酸化炭素を吸着可能な多孔質の吸着材は、シリカを主成分とする多孔質体である多孔質シリカ担体と、多孔質シリカ担体に担持されたアミン系化合物と、を有し、多孔質シリカ担体は、平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であり、吸着材は、平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を吸着可能な多孔質の吸着材であって、
シリカを主成分とする多孔質体である多孔質シリカ担体と、
前記多孔質シリカ担体に担持されたアミン系化合物と、
を有し、
前記多孔質シリカ担体は、平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であり、
前記吸着材は、平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上である、
吸着材。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着材であって、
平均粒子径は、2mm以下である、
吸着材。
【請求項3】
二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置であって、
二酸化炭素を吸着可能な多孔質の吸着材が収容され、前記二酸化炭素含有ガスが供給される分離器と、
パージガスを前記分離器に供給するパージガス供給部と、
を備え、
前記吸着材は、
シリカを主成分とする多孔質体である多孔質シリカ担体と、
前記多孔質シリカ担体に担持されたアミン系化合物と、
を有し、
前記多孔質シリカ担体は、平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であり、
前記吸着材は、平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上である、
二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
請求項3に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記二酸化炭素含有ガス、および前記パージガスは、水蒸気を含み、
前記二酸化炭素回収装置は、
前記パージガスの水蒸気圧を、前記二酸化炭素含有ガスの水蒸気圧より高くする水蒸気圧制御部を、さらに備える、
二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
炭素と水素とを含む燃料を製造する燃料製造装置において、
請求項3または請求項4に記載の二酸化炭素回収装置であって、前記パージガスが水素を含む二酸化炭素回収装置と、
前記二酸化炭素回収装置から排出される二酸化炭素と水素とを含む混合ガスを反応させて、前記燃料を製造する反応器と、
を備える、
燃料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の回収に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の燃焼装置から排出される排出ガスから、二酸化炭素(CO2)を分離して再資源化することが知られている。従来、分離器に収容された吸着材に排出ガス中の二酸化炭素を吸着させる工程と、吸着材から二酸化炭素を脱離させる工程と、を繰り返し行うことにより二酸化炭素を回収するシステムが提案されている。
【0003】
特許文献1には、吸着材として、アルミナ担体にアミン系化合物が担持されたものが提案されている。特許文献1において、アルミナ担体は、アルミナを主成分とする粒径が10μm以上200μm以下である粉体の凝集体と、粉体間に存在するマクロポアとを含み、粉体が複数のメソポアを有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の吸着材によれば、二酸化炭素などの温室効果ガスの吸収・吸着効率をより向上させた担体を提供することができると記載されている。しかしながら、ガスの吸着と脱離を繰り返すことにより二酸化炭素を連続的に回収する二酸化炭素回収システムにおいて、特許文献1に記載の吸着材を用いた場合には、二酸化炭素回収率(回収二酸化炭素量/供給二酸化炭素量)が低いという課題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、二酸化炭素含有ガスからの二酸化炭素回収率を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、二酸化炭素を吸着可能な多孔質の吸着材が提供される。この吸着材は、シリカを主成分とする多孔質体である多孔質シリカ担体と、前記多孔質シリカ担体に担持されたアミン系化合物と、を有し、前記多孔質シリカ担体は、平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であり、前記吸着材は、平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上である。
【0009】
この構成によれば、多孔質シリカ担体の平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であり、細孔径および細孔容積が比較的大きいため、細孔内のアミン系化合物の担持量を多くすることができる。また、アミン系化合物が担持された状態である吸着材の細孔の平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上であり、比較的大きい。供給された二酸化炭素は吸着材の細孔内の気相部分を分子拡散しながら、細孔内表面に付着したアミン系化合物に吸着される。この時、細孔径が大きいほど細孔内における二酸化炭素の分子拡散性は向上し、早期に吸着材粒子の内部まで二酸化炭素が到達する。したがって、個々の吸着材粒子での二酸化炭素吸着、脱離速度を向上(利用率が向上)させることができる。すなわち、この構成によれば、吸着材のアミン担持量を多くすることができ、さらに吸着材の細孔内における二酸化炭素の分子拡散性を向上させることができるため、二酸化炭素の吸着、脱離速度を向上させることができ、この構成の吸着材を用いることにより、排ガスからの二酸化炭素回収率(回収二酸化炭素量/供給二酸化炭素量)を向上させることができる。
【0010】
(2)上記形態の吸着材であって、平均粒子径は、2mm以下であってもよい。このようにすると、二酸化炭素が吸着材の内部に到達する時間を短縮することができ、二酸化炭素の吸着速度をさらに向上させることができる。その結果、排ガスからの二酸化炭素回収率をさらに向上させることができる。
【0011】
(3)本発明の他の形態によれば、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置が提供される。この二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を吸着可能な多孔質の吸着材が収容され、前記二酸化炭素含有ガスが供給される分離器と、パージガスを前記分離器に供給するパージガス供給部と、を備え、前記吸着材は、シリカを主成分とする多孔質体である多孔質シリカ担体と、前記多孔質シリカ担体に担持されたアミン系化合物と、を有し、前記多孔質シリカ担体は、平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であり、前記吸着材は、平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上である。
【0012】
この構成によれば、二酸化炭素回収装置が、二酸化炭素の吸着、脱離速度が向上された吸着材を収容された分離器を有するため、排ガスからの二酸化炭素回収率を向上させることができる。
【0013】
(4)上記形態の二酸化炭素回収装置であって、前記二酸化炭素含有ガス、およびパージガスは、水蒸気を含み、前記二酸化炭素回収装置は、前記パージガスの水蒸気圧を、前記二酸化炭素含有ガスの水蒸気圧より高くする水蒸気圧制御部を、さらに備えてもよい。この形態の二酸化炭素回収装置が有する吸着材は、アミン系固体吸着材であり、パージガスの水蒸気圧が高いほど、1の脱離工程における二酸化炭素の脱離量が多くなる。この形態の二酸化炭素回収装置は水蒸気圧制御部を備えるため、二酸化炭素回収量を増大させることができる。
【0014】
(5)本発明の他の形態によれば、炭素と水素とを含む燃料を製造する燃料製造装置が提供される。この燃料製造装置は、上記形態の二酸化炭素回収装置であって、前記パージガスが水素を含む二酸化炭素回収装置と、前記二酸化炭素回収装置から排出される二酸化炭素と水素とを含む混合ガスを反応させて、前記燃料を製造する反応器と、を備える。
【0015】
この構成によれば、二酸化炭素回収装置においてパージガスが水素を含むため、二酸化炭素回収装置から排出される混合ガスに二酸化炭素と水素が含まれる。例えば、パージガスとして希ガスや窒素等の不活性ガスを用いる場合には、燃料を製造するために、別途水素を用意する必要があるのに対し、この構成によれば、混合ガスを反応させることにより燃料を製造することができるため、パージガスの無駄を抑制することができる。また、パージガスとして水素を用いると、高純度の炭化水素を生成することができる。また、この構成では、上記形態の二酸化炭素回収装置を用いているため、二酸化炭素回収率がよく、二酸化炭素回収エネルギーを低減することができ、燃料製造装置における燃料製造のエネルギーを低減することができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、吸着材および吸着材の製造方法、二酸化炭素回収装置および二酸化炭素回収方法、燃料製造装置および燃料製造方法、二酸化炭素回収システム、燃料製造システム、二酸化炭素循環システム、これら装置やシステムの制御のためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、およびコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態としての吸着材の断面構成を概念的に示す説明図である。
【
図2】アミン系化合物を担持する前後における多孔質シリカ担体の諸元を示す図である。
【
図3】アミン担持前後における多孔質シリカ担体の細孔径分布を示す図である。
【
図4】二酸化炭素破過特性の測定結果を示す図である。
【
図5】吸着材を用いた二酸化炭素回収率の実験結果を示す。
【
図6】吸着材における細孔径が20nm以上の細孔容積を示す。
【
図7】第2実施形態の燃料製造装置を備える炭素循環システムの概略構成を示す図である。
【
図8】再資源化処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】第3実施形態の燃料製造装置を備える炭素循環システムの概略構成を示す説明図である。
【
図10】再資源化処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】第4実施形態の燃料製造装置を備える炭素循環システムの概略構成を示す説明図である。
【
図12】第5実施形態の二酸化炭素回収装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態としての吸着材1の断面構成を概念的に示す説明図である。吸着材1は、二酸化炭素(CO
2)を吸着可能な粒状多孔質体であり、シリカを主成分とする多孔質体である多孔質シリカ担体1aと、多孔質シリカ担体1aに担持されたアミン系化合物1bと、を有する。ここで、主成分とは、最も多い成分であることを意味する。多孔質シリカ担体1aには、例えば、バインダー等が含まれてもよい。
【0019】
本実施形態の吸着材1は、平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上である。そのため、吸着材1を用いると、二酸化炭素の吸着速度、および脱離速度を向上させることができる。吸着材1の平均粒子径は、特に限定されないが、2mm以下が好ましい。吸着材1の平均粒子径を2mm以下にすると、吸着材1の各粒子内部への二酸化炭素分子の到達が早くなり、短時間で粒子内部までを利用できるため、同時間で見た場合の個々の粒子の利用率(実際の吸着量/飽和吸着量)が大きくなる。換言すると、単位時間当たりの二酸化炭素吸着量を増大することができる。すなわち、吸着材1の平均粒子径を2mm以下にすると、二酸化炭素の吸着速度をさらに向上させることができる。ここで、平均細孔径は、水銀圧入式ポロシメータにより測定された細孔径分布、細孔容積Vt、比表面積Stから、4Vt/Stで算出した値である。また、平均粒子径は、粒子径分布曲線から得られるメディアン径を用いる。なお、吸着材1の平均細孔径および細孔容積の上限値は特に限定されない。例えば、多孔質体として構成可能な上限値となる。また、吸着材1の粒径の下限は限定されず、例えば、0.1mmであってもよい。
【0020】
多孔質シリカ担体1aは複数の細孔haを有する。多孔質シリカ担体1aは、平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上である。このようにすると、アミン系化合物の担持量を増大させることができる。アミン系化合物1bは、多孔質シリカ担体1aの外表面sf1と、細孔hの内表面sf2とに付着されている。なお、
図1は、吸着材1を概念的に示しており、多孔質シリカ担体1aの形状、細孔の形状、細孔の数等は、種々であってもよい。多孔質シリカ担体1aの形状は、例えば、破砕状であってもよい。多孔質シリカ担体1aの細孔hは、例えば、網目状であってもよいし、複数の細孔が連通していてもよいし、貫通していてもよい。また、アミン系化合物1bは、多孔質シリカ担体1aの表面sf(外表面sf1と内表面sf2)の全部に付着されていなくてもよく、一部に付着されていてもよい。アミン系化合物1bは、少なくとも内表面sf2の一部には付着されていることが好ましい。なお、多孔質シリカ担体1aの平均細孔径および細孔容積の上限値は、特に限定されない。例えば、多孔質体として構成可能な上限値となる。
【0021】
吸着材1は多孔質シリカ担体1aに担持されたアミン系化合物1bを有するため、アミン系化合物が二酸化炭素と反応を起こすことにより、二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を吸着することができる。
【0022】
多孔質シリカ担体1aに担持されるアミン系化合物の種類は特に限定されない。例えば、ペンタエチレンヘキサミンの他に、ポリエチレンイミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなど、種々のアミン系化合物を用いることができる。また、これらのアミン系化合物の機能性を高めるために、分子の一部を他の分子に置換したものでもよい。ここで機能性とは、吸着エネルギーの低減、揮発性低減、酸化耐性、NOx耐性、SOx耐性などが挙げられる。
【0023】
吸着材1は、アミン系化合物1bを含む溶液を多孔質シリカ担体1aの細孔ha内に含浸させ、その後乾燥することで製造することができる。
【0024】
[二酸化炭素回収性能]
粒子径、細孔径、細孔容積等が異なる5種類の多孔質シリカ担体に同じアミン系化合物を担持したアミン系固体吸着材を用いて、二酸化炭素回収性能の比較評価を行った。サンプルNo.3~5が、本実施形態の吸着材1の実施例である。
【0025】
図2は、アミン系化合物を担持する前後における多孔質シリカ担体の諸元を示す。多孔質シリカ担体のサンプルとして、富士シリシア化学株式会社製のCARiACTシリーズ(CARiACTは登録商標)を用いた。グレード名は、サンプルNo.1から順に、Q-10、Q-15、Q-30、Q-50、G-10である。
図3は、アミン担持前後における多孔質シリカ担体の細孔径分布を示す。細孔径分布、細孔容積、比表面積は水銀圧入式ポロシメータによる測定値である。ここで示す細孔径は細孔の断面形状が円形と仮定した際の値であり、細孔形状は円形に限定されない。平均細孔径は細孔容積Vtと比表面積Stの測定値から4Vt/Stで算出した値である。また、
図2における粒子径の範囲は、アミン系化合物担持後の値であり、JIS標準ふるいにて分級したものであるが、その他に光回折法にて測定が可能である。メディアン径は、粒子径分布曲線から得られる。なお、
図2における「担持後」、および
図3における「アミン系化合物担持後」は、本実施形態の吸着材を示す。
【0026】
評価で用いた吸着材は、上述の通り、アミン系化合物を含む溶液を多孔質シリカ担体の細孔内に含浸させ、その後乾燥することで製造した。具体的には、以下の手順で多孔質シリカ担体を得た。ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を室温下で撹拌しながらホルムアルデヒドを添加し、乾燥させることでペンタエチレンヘキサイミン(PEHI)を得る。エタノールにPEHIを加えた溶液(PEHI濃度20~30wt%)をシリカ担体に滴下し、室温下で2時間程度含浸させる。その後、80℃での減圧乾燥を行い、絶対乾燥状態に近づける。これらの含浸、乾燥工程をアミン担持率が35wt%になるように2~3回繰り返すことでアミン系固体吸着材である吸着材を得た。
【0027】
アミン系化合物は多孔質シリカ担体の細孔内に担持されるため、
図1、
図2で示すようにアミン系化合物の担持後である吸着材の細孔の細孔容積が減少する。なお、ここで示す測定値は、それぞれの多孔質シリカ担体にアミン系化合物を約35wt%担持した吸着材の測定値である。担持率は、担持したアミン系化合物の重量Maと多孔質シリカ担体の重量MsからMa/(Ma+Ms)で定義される。
【0028】
図4は、
図2、
図3に示す吸着材による二酸化炭素破過特性の測定結果を示す図である。
図4では、吸着材(アミン系固体吸着材)を充填した分離器に、窒素(N
2)と二酸化炭素(CO
2)の混合ガス(二酸化炭素濃度:10vol%)を、空間速度SV=400の一定流量で供給し続け、分離器の下流側から漏出する二酸化炭素濃度の時間履歴を示している。空間速度SVは供給ガス流量G[L/h]と吸着材の充填体積Vs[L]の比G/Vs[1/h]で定義される。
図4では、分離器の下流側から二酸化炭素が破過した時刻を時間0としており、破過後の二酸化炭素漏出履歴を示している。縦軸の二酸化炭素濃度は赤外線ガス分析計を用いた測定値である。サンプルNo.1~No.5のいずれの吸着材においても、時間2000s付近で、分離器から排出されるガス中の二酸化炭素濃度が供給ガス中の二酸化炭素濃度(10vol%)と同程度となっていることから、飽和二酸化炭素吸着の状態になっていると言える。
【0029】
吸着速度が速い吸着材では、単位時間あたりの二酸化炭素吸着量が多いため、二酸化炭素が分離器から破過するまでにより多くの二酸化炭素を吸着している。したがって、二酸化炭素破過後は早期に飽和二酸化炭素吸着状態となる。つまり、二酸化炭素破過後の曲線の傾きが大きいほど、吸着速度が速いことを意味する。すなわち、サンプルNo.5の吸着材が最も吸着速度が速く、サンプルNo.の降順に吸着速度が遅くなる。
【0030】
図5は、吸着材を用いて二酸化炭素の吸着と脱離を交互に繰り返し行った連続サイクル運用での二酸化炭素回収率の実験結果を示す。吸着工程では窒素(N
2)と二酸化炭素(CO
2)の混合ガス(二酸化炭素濃度:10vol%)を空間速度SV=400の一定流量で分離器に供給する。吸着工程における混合ガスの水蒸気圧は約4kPaである。一方で、脱離工程では窒素(N
2)をパージガス(水蒸気圧:約16kPa)として減圧前のSV=60で分離器に供給するとともに、真空ポンプで減圧している。吸着工程において分離器の下流側からの漏出二酸化炭素濃度が1vol%に達した時点で工程を終了し、脱離工程へと移行する。この時、脱離工程の工程時間は前吸着工程と同時間とする。このサイクル運転を連続的に行い、1サイクルでの二酸化炭素回収量が一定となった定常状態での二酸化炭素回収率の結果を示している。二酸化炭素回収率は回収二酸化炭素量R[L]と供給二酸化炭素量S[L]の比R/Sであり、回収率が高いほど同運用条件下で多くの二酸化炭素を回収していることを意味する。
【0031】
図4と
図5の結果から、吸着速度が速い吸着材ほど二酸化炭素回収率が増大することがわかる。これらの試験で用いた吸着材では全て同じアミン系化合物を用いていることから、吸着材の細孔径分布特性の違いが二酸化炭素回収性能に影響を与えるといえる。
図3に示すように、細孔径分布がシングルピークの同特性を有するサンプルNo.1~4で比較すると、平均細孔径が大きいほど(
図2:担持後特性)、二酸化炭素回収性能が向上することがわかる。この理由は次の通りである。供給された二酸化炭素は吸着材の細孔内の気相部分を分子拡散しながら、多孔質シリカ担体の細孔の内表面に付着したアミン系化合物に吸着される。この時、細孔径が大きいほど細孔の内における二酸化炭素の分子拡散性は向上し、早期に吸着材粒子の内部まで二酸化炭素が到達できるため、結果として単位時間あたりの二酸化炭素吸着量が多くなる。これが、吸着速度が速いことを意味する。また、これらの試験では同じアミン系化合物を用いているため、吸着速度は主に二酸化炭素の細孔内拡散性が支配的となる。したがって、吸着速度が速い吸着材では二酸化炭素脱離速度も速くなる。このように、個々の吸着材粒子での吸着、脱離速度が向上(利用率が向上)することで、吸着、脱離を繰り返す連続サイクル運転にて、排ガスからの二酸化炭素回収率が増大する。
【0032】
サンプルNo.3,4の吸着材と比較して平均細孔径が小さいNo.5の吸着材の方が吸着速度、回収率が高い理由は次のとおりである。
図6は、吸着材における細孔径が20nm以上の細孔容積を示す。さらにその内訳として、細孔径が20nm以上100nm以下、および100nm以上の細孔容積を、括弧内にそれぞれ示す。
図6に示す細孔容積は、
図3(B)に示す細孔径分布曲線から求められている。上述の通り、サンプルNo.5の吸着材は、サンプルNo.3,4の吸着材と比較して平均細孔径は小さいものの(
図2)、
図6に示すように、細孔径が100nm以上の細孔容積は、サンプルNo.3,4の吸着材より大きい。
図3(B)に示すように、サンプルNo.5の吸着材の細孔径分布の特性は他のサンプルとは異なりダブルピークを示し、幅広い細孔径分布を有している。このことからも大きい細孔径を有することが、二酸化炭素回収性能の向上できることが示されているといえる。二酸化炭素回収性能は平均細孔径だけで判断できるのもではなく、細孔径分布および細孔容積も考慮する必要がある。また、サンプルNo.3~5の吸着材は、サンプルNo.1、2の吸着材と比較して、細孔径20nm以上の細孔容積が大きい。
【0033】
図5に示す実験における投入エネルギーは、各サンプルに対して全て同じであることから、二酸化炭素回収率が大きいほど回収二酸化炭素量あたりのエネルギーが小さいことを意味する。このように、二酸化炭素の吸着、脱離速度を速めることで二酸化炭素回収エネルギーを低減することができる。
【0034】
以上の結果から、二酸化炭素の吸着において、吸着材(アミン系化合物担持後)の細孔が残存していることが重要であることがわかる。サンプルNo.3、4、5の吸着材の二酸化炭素回収性能が高く、細孔内のガス拡散性向上の観点から、吸着材(アミン系固体吸着材)は、平均細孔径が20nm以上、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上であることが望ましい。さらに、多孔質シリカ担体にアミン系化合物を担持できる量は多孔質シリカ担体の細孔容積の大きさに依存するため、上記の例のように担持率35wt%以上のアミン担持率を得るためには、アミン系化合物担持前の多孔質シリカ担体は、平均細孔径が10nm以上、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であることが望ましい。
【0035】
吸着材の個々の粒子が大きいほど、吸着材の内部まで二酸化炭素が到達する時間が長くなることで吸着速度が遅くなる。吸着速度の観点から、吸着材の平均粒子径(メディアン径)は2mm以下であることが望ましい。
【0036】
吸着材は、大きい細孔容積を有することで、単位質量、単位体積あたりにより多くのアミン系化合物を担持できる。つまり、単位質量、単位体積あたりにより多くの二酸化炭素を吸着できる。アミン系化合物を多く担持した吸着材を用いることで、上述したような吸着と脱離を繰り返す連続サイクル試験においては、各工程時間を長くすることができ、1サイクルでの二酸化炭素回収量を増大できる。1サイクルでの二酸化炭素回収量を増大することで、回収ガス中の二酸化炭素濃度を向上できる。理由は次のとおりである。吸着工程終了時に分離器内の空隙(吸着材の個々の粒子の隙間)に残留排ガスが残っており、脱離工程時の回収ガス中にこの残留排ガスが混入する。この残留排ガスの混入が回収ガスの二酸化炭素濃度を低下させる原因となる。対策のひとつとして、1サイクルでの二酸化炭素回収量の増大が挙げられる。なお、残留排ガスの大部分は不活性ガスの窒素(N2)である。二酸化炭素濃度が高いガスは製品二酸化炭素ガスとして活用先が広い。例えば、溶接用シールドガス、ドライアイス、農業などの直接利用、化学品や燃料の原料として用いる間接利用がある。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の吸着材1によれば、多孔質シリカ担体1aは、平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であるため、アミン系化合物を十分に担持することができる(担持率35wt%以上)。さらに、吸着材1は、平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上であるため、吸着材1の細孔hの内における二酸化炭素の分子拡散性を向上させることができる。その結果、吸着材1の二酸化炭素の吸着速度、および脱離速度を向上させることができ、二酸化炭素含有ガスからの二酸化炭素回収率を向上させることができる。
【0038】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態の燃料製造装置200を備える炭素循環システム100の概略構成を示す図である。炭素循環システム100は、工場Pから排出された排出ガスから、二酸化炭素(CO
2)を分離して再資源化するシステムである。工場Pは、燃料製造装置200から供給された燃料を燃焼させて動力を得る燃焼装置Dを備え、燃焼装置Dの駆動により生じた排出ガスを燃料製造装置200へと排出する。工場Pからの排出ガスには、二酸化炭素のほか、酸素(O
2)、窒素(N
2)、及び水蒸気(H
2O)等が含まれている。燃焼装置Dは燃焼炉を含む概念である。本実施形態における排出ガスを「二酸化炭素含有ガス」とも呼ぶ。
【0039】
炭素循環システム100は、工場Pと、燃料製造装置200とを備えている。燃料製造装置200は、二酸化炭素回収装置300を備えている。二酸化炭素回収装置300は、工場Pから供給された排出ガスから二酸化炭素を分離し、二酸化炭素と水素(H2)とを含む混合ガスを生成する。混合ガスは、燃料製造装置200による反応の原料となる。燃料製造装置200は、二酸化炭素回収装置300から供給された混合ガスを反応させて、炭素(C)と水素(H)とを含む燃料を製造する。燃料は、工場Pに供給され、燃焼装置Dにおいて用いられる。本実施形態において、燃料製造装置200はメタン(CH4)を製造する。
【0040】
燃料製造装置200は、二酸化炭素回収装置300と、反応器2と、を備えている。二酸化炭素回収装置300は、分離器3と、パージガス供給部5と、真空ポンプ7とを備えている。
【0041】
分離器3は、第1実施形態の吸着材1を収容している。上述の通り、吸着材1は、アミン系固体吸着材である。分離器3は、排出ガス流路11を介して燃焼装置Dと接続されており、排出ガス流路11を介して供給される排出ガス中の二酸化炭素および水蒸気を吸着する。例えば、二酸化炭素吸着材としてよく用いられるゼオライトは、水蒸気が共存する場合には水蒸気が優先的にゼオライトに吸着される。二酸化炭素吸着材がゼオライトの場合、水蒸気が吸着されると、二酸化炭素吸着性能が低下する。上述の通り、工場Pからの排出ガスには水蒸気が含まれるため、二酸化炭素吸着材としてゼオライトを用いる場合には、排出ガスを除湿する必要がある。一方、本実施形態で用いられる吸着材1(アミン系固体吸着材)は、水蒸気を吸着した後にも二酸化炭素を吸着する反応機構を有するため、排出ガスに水蒸気が共存する場合にも二酸化炭素の吸着が阻害されない特性を有する。そのため、排出ガスを除湿する除湿器を備えなくてもよく、除湿エネルギーが不要であるため、二酸化炭素回収装置300への投入エネルギーを抑制することができる。また、分離器3に収容される吸着材として、第1実施形態の吸着材1を用いると、除湿器を備えなくてもよいため、二酸化炭素回収装置300の小型化に資することができる。
【0042】
また、分離器3は、パージガス供給部5と接続されている。パージガス供給部5は、水素発生部5aとパージガス流路21とを備える。分離器3にパージガス供給部5からパージガスが供給されると、分離器3に吸着されている二酸化炭素が脱離される(後に詳述する)。
【0043】
また、分離器3は、流路12を介して外部と接続されている。分離器3において排出ガスから二酸化炭素が分離された後の残ガスは、流路12を介して外部に排出される。さらに、分離器3は、混合ガス流路22を介して、燃料製造装置200の反応器2と接続されている。分離器3から脱離された二酸化炭素とパージガスとを含む混合ガスは、混合ガス流路22を介して反応器2に供給される。
【0044】
パージガス供給部5は、上述の通り、水素発生部5aとパージガス流路21とを備え、水素発生部5aにおいて発生させた水素を、パージガスとしてパージガス流路21を介して分離器3に供給する。水素発生部5aは、水電解装置であり、水の電気分解を行うことによって水素を生成する。水の電気分解の際水蒸気が生じるため、水素発生部5aから送出されるパージガスは、水素と水蒸気を含む。パージガス供給部5からパージガスが分離器3に供給されることにより、吸着材1に吸着された二酸化炭素の脱離が促進される。本実施形態では、パージガスとして水素を用いており、二酸化炭素回収装置300から排出される混合ガスに二酸化炭素と水素が含まれるため、後段の反応器2において、混合ガスを反応させることによりメタンガス(燃料)を生成することができる。
【0045】
パージガス流路21には、図示しない流路開閉機構(例えば、バルブや、マスフローコントローラ)が設けられている。パージガス流路21の流路開閉機構によって、パージガスの流通有無、及び、パージガスの流量が制御される。なお、本実施形態の水素発生部5aで生じる水蒸気量は、電気分解される水の温度による。水素発生部5aにより電気分解される水は、所定温度(例えば、摂氏70度(℃)前後)に冷却されていてもよく、常温でもよく、加熱されていてもよい。
【0046】
真空ポンプ7は、混合ガス流路22に配置されている。真空ポンプ7が動作することによって分離器3内が減圧され、吸着材1からの二酸化炭素の脱離が促進される。また、真空ポンプ7が動作することによって、分離器3内における水素の割合が小さくなる。水素の割合が小さくなることにより、相対的に、分離器3内における二酸化炭素の割合を大きくできる。このようにして、二酸化炭素と水素との割合を1:4に近づけることにより、混合ガス中の二酸化炭素と水素の分圧の比率を後処理(すなわち、反応器2でのメタン化反応)に適した割合に調整できる。混合ガス流路22において、真空ポンプ7の上流側及び下流側には、それぞれ、図示しない流路開閉機構(例えば、バルブや、マスフローコントローラ)が設けられている。なお、他の実施形態では、真空ポンプ7を備えない構成にしてもよい。
【0047】
反応器2は、二酸化炭素回収装置300により生成された混合ガス(二酸化炭素と水素とを含むガス)を反応させて、炭素と水素とを含む燃料を製造する。具体的には、反応器2では、混合ガスを原料として、下記の式(1)で表されるメタン化反応が生じることにより、二酸化炭素及び水素から、炭素と水素とを含む燃料(具体的にはメタンCH4)が製造される。なお、式(1)のメタン化反応は、発熱反応である。
CO2+4H2→CH4+2H2O ・・・(1)
【0048】
図8は、再資源化処理の流れの一例を示すフローチャートである。再資源化処理は、任意の契機(例えば、燃料製造装置200の始動)により開始され得る。ステップS10では、工場Pより排出ガスが発生する。排出ガスは、排出ガス流路11を介して分離器3へと供給される。
【0049】
ステップS20では、排出ガス中の二酸化炭素が、分離器3内の吸着材1に吸着される。排出ガスに含まれる気体のうち、吸着材1に吸着されなかった酸素、窒素等と、水蒸気とは、流路12を介して、分離器3の外部へと排出される。なお、ステップS20を「吸着工程」とも呼ぶ。本実施形態では、燃料製造装置200が1つの分離器3を備える場合を例示したが、燃料製造装置200は、複数の分離器3を備えていてもよい。例えば、燃料製造装置200が2つの分離器3を備える場合、一方の分離器3では吸着工程が実行され、他方の分離器3では脱離工程が実行されるというように、実行する工程をシフトさせる。ステップS20では、分離器3が1つの場合、及び、分離器3が複数の場合共に、吸着工程中の分離器へは、パージガス供給部5からのパージガスの供給は停止されている。
【0050】
ステップS30では、パージガス供給部5において、水の電気分解がなされ、水素及び水蒸気を含むパージガスが生成される。生成されたパージガスは、パージガス流路21を介して分離器3へと供給される。
【0051】
ステップS34では、分離器3の吸着材1から二酸化炭素の脱離が行われる。パージガス中の水蒸気が吸着材1に吸着される際、熱が発生し、吸着材1の温度が上昇し、既に吸着材1に吸着されている二酸化炭素の脱離が促進される。この結果、分離器3からは、吸着材1から脱離した二酸化炭素と、パージガス中の水素とを含む混合ガス(原料)が排出される。なお、ステップS30、S34を総称して「脱離工程」とも呼ぶ。ステップS30、S34では、分離器3が1つの場合、及び、分離器3が複数の場合共に、脱離工程中の分離器へは、工場Pからの排出ガスの供給は停止されている。
【0052】
ステップS40では、上記のようにして得られた原料ガスが、分離器3から反応器2へと供給される。ステップS42では、反応器2において、上記の式(1)で示すメタン化反応が起こり、炭素と水素とを含む燃料(メタン)が製造される。ステップS44では、反応器2において製造されたメタンが工場Pへと供給される。再資源化処理の終了条件が成立するまで、ステップS10~ステップS44が繰り返し行われる(ステップS46においてNO)。処理の終了条件には任意の契機(例えば、燃料製造装置200の電源停止)が採用できる。これにより、工場Pから排出された排出ガスから燃料を得て工場Pへと供給する再資源化処理を継続して実行できる。処理の終了条件が成立すると(ステップS46:YES)、再資源化処理は終了する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の二酸化炭素回収装置300は、分離器3に収容される二酸化炭素吸着材が、第1実施形態の吸着材1である。上述の通り、吸着材1は二酸化炭素の吸着・脱離速度が速いため、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【0054】
また、吸着材1は、単位質量、単位体積あたりにより多くの二酸化炭素を吸着できる。そのため、二酸化炭素回収装置300において、1サイクルでの二酸化炭素回収量を増大させることができる。二酸化炭素回収装置300において、1サイクルでの二酸化炭素回収量を増大することで、混合ガス(回収ガス)中の二酸化炭素濃度を向上させることができる。
【0055】
本実施形態の燃料製造装置200では、二酸化炭素回収装置300で回収された二酸化炭素を用いて燃料(メタン)を製造している。本実施形態の二酸化炭素回収装置300では、パージガスとして水素を用いているため、二酸化炭素回収装置300から反応器2に供給される混合ガスには、メタンの原料となる二酸化炭素と水素が含まれる。例えば、二酸化炭素回収装置においてパージガスとして窒素等の不活性ガスを用いた場合には、反応器2に別途水素を供給する必要があるのに対し、本実施形態の燃料製造装置200によれば、二酸化炭素回収装置300から反応器2に供給される混合ガスに二酸化炭素と水素とが含まれるため、反応器2において、混合ガスを反応させることによりメタンガス(燃料)を生成することができる。そのため、装置の大型化、複雑化を抑制することができ、コスト低減に資することができる。
【0056】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態の燃料製造装置200Aを備える炭素循環システム100Aの概略構成を示す説明図である。炭素循環システム100Aは、第2実施形態の炭素循環システム100における燃料製造装置200に替えて燃料製造装置200Aを備える。燃料製造装置200Aは、第2実施形態の燃料製造装置200における二酸化炭素回収装置300に替えて二酸化炭素回収装置300Aを備え、さらに、第1熱供給部41と、第2熱供給部42と、第1熱量制御器41cと、第2熱量制御器42cと、制御部10とを備える。本実施形態の二酸化炭素回収装置300Aは、第2実施形態の二酸化炭素回収装置300の構成に加え、水蒸気圧制御部6を備える。以下に説明する実施形態において、炭素循環システム100と同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。
【0057】
上述の通り、本実施形態の二酸化炭素回収装置300Aは水蒸気圧制御部6を備える。
吸着材1は、
図9の点線吹き出し内のグラフに示すように、パージガスの水蒸気圧の増大に伴って、吸着材1からの二酸化炭素の脱離量(回収量)が増大する。なお、吹き出し内のグラフは、吸着工程及び脱離工程のそれぞれで用いるガスの流量、及び吸着工程での水蒸気圧、及び二酸化炭素濃度を同一条件とし、脱離工程でのパージガスの水蒸気圧のみを変化させて得た実験結果である。吹き出し内のグラフは、同条件の分離器内温度で実施した実験結果であり、横軸は分離器内の温度で規定される相対湿度と換言できる。ここで、相対湿度H
rは、分離器内の温度T
sにおける飽和水蒸気圧P
sと、パージガス水蒸気圧P
pとを用いて「H
r=P
p/P
s」と表すことができる。吹き出し内のグラフでは、温度T
sを一定としているため飽和水蒸気圧P
sは変化しない。この結果、相対湿度H
rを表す式において、パージガス水蒸気圧P
pが増大すれば相対湿度H
rが増大する、という関係が成立する。本実施形態において、分離器3の内部には、分離器3の内部の温度T
sを取得する温度センサ3sが設けられている。温度センサ3sは「温度取得部」として機能する。
【0058】
水蒸気圧制御部6は、パージガス流路21の途中に配置されている。水蒸気圧制御部6は、パージガス供給部5から分離器3へと供給されるパージガスの水蒸気圧を調整する。具体的には、水蒸気圧制御部6は、バブラー式や加熱気化式などの方法を用いて水から水蒸気を発生させ、発生させた水蒸気をパージガスに加えることによって、パージガスの水蒸気圧を調整(換言すれば、パージガスを加湿)する。水蒸気圧制御部6には、後述する第1熱供給部41を介して、反応器2での反応によって生じた熱が供給される。このため水蒸気圧制御部6は、第1熱供給部41を介して供給された熱を利用して水の気化を行うことができる。なお、水蒸気圧制御部6よりも下流側におけるパージガス流路21の内部には、水蒸気圧制御部6による調整後のパージガスの湿度Tdを取得する湿度センサ21sが設けられている。
【0059】
パージガスの水蒸気圧の増大に伴って吸着材1からの二酸化炭素の回収量が増大するため、水蒸気圧制御部6によりパージガスの水蒸気圧を増大させることにより、二酸化炭素の回収量を増大させることができる。
【0060】
上述の通り、燃料製造装置200Aは、第1熱供給部41と、第2熱供給部42と、第1熱量制御器41cと、第2熱量制御器42cと、制御部10とを備える。第1熱供給部41及び第2熱供給部42は、それぞれ、熱を輸送する熱媒体と、熱媒体を流通させる熱媒体流路によって構成されている。
【0061】
第1熱供給部41は、反応器2と水蒸気圧制御部6とを環状に接続しており、反応器2と水蒸気圧制御部6との間を熱媒体が循環することにより、反応器2におけるメタン化反応で生じた熱を、水蒸気圧制御部6へと供給する。
【0062】
第2熱供給部42は、反応器2と分離器3とを環状に接続しており、反応器2と分離器3との間を熱媒体が循環することにより、反応器2におけるメタン化反応で生じた熱を、分離器3へと供給する。
【0063】
第1熱量制御器41cは、第1熱供給部41の途中であって、熱媒体流路上において水蒸気圧制御部6よりも上流側に設けられている。第1熱量制御器41cは、第1熱供給部41を介して水蒸気圧制御部6に供給される熱量を調整する。第2熱量制御器42cは、第2熱供給部42の途中であって、熱媒体流路上において分離器3よりも上流側に設けられている。第2熱量制御器42cは、第2熱供給部42を介して分離器3に供給される熱量を調整する。第1熱量制御器41c及び第2熱量制御器42cは、熱交換器を用いて、熱媒体の温度を上昇または下降させることにより熱量を調整できる。第1熱量制御器41c及び第2熱量制御器42cは、マスフローコントローラを用いて、熱媒体の流量を増加または減少させることにより、熱量を調整してもよい。
【0064】
制御部10は、図示しないCPU、ROM/RAM、記憶部、及び通信部を含んでおり、燃料製造装置200による再資源化処理の全体を制御する。本実施形態の制御部10は、再資源化処理において、分離器3内の温度Tsが、パージガスの露点温度よりも高い状態が維持されるように、第1熱量制御器41cを制御する。また、制御部10は、再資源化処理において、分離器3内の温度Tsが、吸着材1からの二酸化炭素の脱離に適した温度になるように、第2熱量制御器42cを制御する。
【0065】
図10は、再資源化処理の流れの一例を示すフローチャートである。本実施形態の再資源化処理において、第2実施形態と同様に、ステップS10~S30が行われ、分離器3に二酸化炭素が吸着され、パージガスが生成される。本実施形態では、再資源化処理は、さらに、ステップS32を備える。ステップS32では、水蒸気圧制御部6によってパージガスの調湿がなされる。調湿後のパージガスは、パージガス流路21を介して分離器3へと供給され、第2実施形態と同様に、ステップS34~S44が行われ、二酸化炭素が分離器3から脱離され、脱離された二酸化炭素を用いて燃料が製造され、燃料が工場Pへ供給される。
【0066】
ステップS46では、制御部10は処理の終了条件が成立したか否かを判定する。処理の終了条件には任意の契機(例えば、燃料製造装置200の電源停止)が採用できる。処理の終了条件が成立した場合(ステップS46:YES)、制御部10は再資源化処理を終了させる。処理の終了条件が成立しない場合(ステップS46:NO)、制御部10は処理をステップS10に遷移させ、上述のステップを繰り返す。これにより、工場Pから排出された排出ガスから燃料を得て工場Pへと供給する再資源化処理を継続して実行できる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の二酸化炭素回収装置300Aは、水蒸気圧制御部6を備え、パージガスの水蒸気圧を増加させる方向へと調整することができる。吸着材1は、パージガスの水蒸気圧の増大に伴って、吸着材1からの二酸化炭素の回収量が増大する吸着材であるため、水蒸気圧制御部6によって分離器3へと供給されるパージガスの水蒸気圧を増加させる方向へと調整することで、吸着材1からのガス回収量を増大させて、二酸化炭素回収装置300におけるガス回収量をより一層向上できる。
【0068】
さらに、本実施形態の燃料製造装置200Aは、反応器2と水蒸気圧制御部6とに接続されて、反応器2での反応によって生じた熱を水蒸気圧制御部6へと供給する第1熱供給部41を備える。このため、水蒸気圧制御部6では、第1熱供給部41を介して供給された熱(すなわち、反応器2によって生じた熱)を利用して、加湿のための水蒸気を生成することができる。従って、燃料製造装置200Aによれば、水蒸気圧制御部6が外部エネルギーを利用して水蒸気の生成を行う場合と比較して、燃料製造装置200Aのエネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0069】
さらに、燃料製造装置200Aは第1熱量制御器41cを備えるため、第1熱供給部41を介して水蒸気圧制御部6に供給される熱量を調整することができる。
【0070】
分離器3内の温度がパージガスの露点温度を下回った場合、分離器3の内部において水蒸気の凝縮が発生し、水が生成される。具体的には、分離器3の内壁や吸着材1の表面がパージガスの露点温度を下回った場合に、分離器3の内壁や吸着材1の表面において水蒸気の凝縮が発生する。このように分離器3内で凝縮水が生成された場合、次の吸着工程において、吸着材1への二酸化炭素の吸着が阻害されるという問題が生じる。また、アミン系固体吸着剤であり、水溶性の吸着材1では、分離器3内で生成された凝縮水にアミン系化合物が溶解することで、吸着材1が漏出し、減少するという問題が生じる。この点、第3実施形態の燃料製造装置200Aによれば、制御部10は、分離器3内の温度Tsが、パージガスの露点温度Tdよりも高い状態が維持されるように、第1熱量制御器41cを制御するため、これらの問題が生じることを回避できる。
【0071】
さらに、本実施形態の燃料製造装置200Aによれば、制御部10は、分離器3内の温度Tsが、吸着材1からの二酸化炭素の脱離に適した温度と等しくなるように、第2熱量制御器42cを制御する。このため、吸着材1からのガス回収量を増大させて、二酸化炭素回収装置300におけるガス回収量をより一層向上できる。
【0072】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態の燃料製造装置200Bを備える炭素循環システム100Bの概略構成を示す説明図である。第4実施形態の燃料製造装置200Bが第3実施形態の燃料製造装置200Aと異なる点は、二酸化炭素回収装置300Bが凝縮器4を備える点である。以下の説明において、第3実施形態の炭素循環システム100Aと同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。
【0073】
凝縮器4は、排出ガス流路11の途中に配置されている。凝縮器4は、排出ガス中の水蒸気を除去する。具体的には、排出ガス流路11を流通する排出ガスに含まれる水蒸気を液体の水に凝縮し、凝縮した水を二酸化炭素回収装置300の外部へと排出する。これにより、凝縮器4を通過して排出ガス流路11を流れる排出ガス中の水蒸気を低減して、排ガス中の水蒸気圧を低減することができる。なお、
図11では、凝縮器4を通過した排ガスが水蒸気を含んでいないが、実際には水蒸気が含まれていてもよい。本実施形態における凝縮器4と水蒸気圧制御部6とを併せて、「水蒸気圧制御部」とも呼ぶ。
【0074】
このようにすると、分離器3に供給される排出ガス中の水蒸気が低減されるため、吸着材1に吸着される二酸化炭素の量を増大させることができる。また、このようにすると、分離器3に供給される排出ガスの水蒸気圧(吸着工程の水蒸気圧)が、分離器3に供給されるパージガスの水蒸気圧(脱離工程の水蒸気圧)より低くなる。そのため、二酸化炭素脱離工程時に吸着材1に吸着された水蒸気は、次の二酸化炭素吸着工程時に脱離され、分離器3から排出される。つまり、第4実施形態の二酸化炭素回収装置300Bによれば、吸着工程と乾燥工程を同時に行うことができる。
【0075】
なお、他の実施形態では、本実施形態の二酸化炭素回収装置300Bにおける水蒸気圧制御部6を備えない構成にしてもよい。このようにしても、パージガス供給部5から分離器3に供給されるパージガスは水蒸気を含み、吸着工程の水蒸気圧が脱離工程の水蒸気圧より低くなるため、吸着工程と乾燥工程とを同時に行うことができる。なお、このような構成において、凝縮器4を「水蒸気圧制御部」とも呼ぶ。
【0076】
<第5実施形態>
図12は、第5実施形態の二酸化炭素回収装置300Cの概略構成を示す図である。第5実施形態の二酸化炭素回収装置300Cが第4実施形態の二酸化炭素回収装置300Bと異なる点は、パージガス供給部5に替えてパージガス供給部5Cを備える点と、真空ポンプ7を備えない点である。パージガス供給部5Cは、パージガス供給部5における水素発生部5aに替えて窒素タンク5bを備える。
【0077】
第5実施形態の二酸化炭素回収装置300Cでは、パージガスとして水蒸気を含む窒素ガスが用いられている。第2~4実施形態とはパージガスの種類が異なるものの、パージガスの水蒸気圧を、排出ガスの水蒸気圧より高くしているため、上記実施形態と同様に、二酸化炭素回収率を向上させることができる。
【0078】
二酸化炭素回収装置300Cから送出される混合ガスには、二酸化炭素と窒素とが含まれる。本実施形態の二酸化炭素回収装置300Cにおいても、二酸化炭素吸着材として第1実施形態の吸着材1が用いられているため、二酸化炭素回収装置300Cから送出される混合ガス中の二酸化炭素濃度を向上させることができる。二酸化炭素濃度が高いガスは製品二酸化炭素ガスとして活用先が広く、例えば、溶接用シールドガス、ドライアイス、農業利用等、直接利用したり、化学品や燃料の原料として間接的に用いることができる。
【0079】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されるとした構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されるとした構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0080】
・上記実施形態において、二酸化炭素含有ガスとして、工場Pの燃焼装置Dから排出された排出ガスを例示したが、二酸化炭素含有ガスは、上記実施形態に限定されない。例えば、車両に搭載された燃焼装置Dからの排出ガスであってもよいし、ガスタンクに貯留された排出ガスであってもよい。また、燃焼装置からの排出ガスに限定されず、二酸化炭素が含有されたガスであればよい。
【0081】
・上記実施形態において、燃料製造装置が工場Pの外に配置される例を示したが、燃料製造装置200が工場Pの内に配置されてもよい。
【0082】
・上記実施形態の炭素循環システム、燃料製造装置、二酸化炭素回収装置の構成は例示であり、一部の構成を備えていなくてもよいし、他の構成を備えていてもよい。例えば、二酸化炭素回収装置では、上述した構成の一部(例えば、凝縮器4や、真空ポンプ7)が省略されてもよい。例えば、二酸化炭素回収装置の水蒸気圧制御部6には、バブラー式や加熱気化式などの方法に代えて、外部エネルギーを利用して水蒸気を発生させる方式(例えば、超音波霧化)が採用されてもよい。例えば、燃料製造装置の第1熱供給部41と、第2熱供給部42とのうちの少なくとも一方は、熱を伝達する熱電導体によって構成されてもよい。この場合、第1熱量制御器41c及び/又は第2熱量制御器42cには、熱電導体の熱電性能を上昇または下降させる材質の部材(例えば、カーボン、樹脂、金属等)を用いることができる。
【0083】
・上記実施形態では、炭素循環システムにおいて実行される処理の一例を示した。しかし、この処理手順は種々の変更が可能であり、各ステップにおける処理内容の追加/省略/変更をしてもよく、ステップの実行順序を変更してもよい。
【0084】
・上記実施形態において、水素発生部5aとして水電解装置を例示したが、これに限定されず、水素を発生できればよい。例えば、水素が貯留された水素タンクを用いてもよい。
【0085】
・上記実施形態において、パージガスとして、水素を用いる例と窒素を用いる例を示したが、他のガスを用いてもよい。例えば、ヘリウム、ネオン等の希ガス、水蒸気、メタン、およびそれらの少なくとも一つを含む混合ガス等を用いることができる。第2~4実施形態の燃料製造装置においてパージガスとして水素以外のガスを用いる場合には、反応器2に水素を供給する水素供給部を備えればよい。但し、燃料製造装置においてパージガスとして水素を用いると、高純度の炭化水素を生成することができるため、好ましい。
【0086】
・上述の実施形態では、燃料製造装置は、燃料としてメタン(CH4)を製造する例を示した。しかしながら、燃料製造装置が製造する燃料は、メタン(CH4)に限定されず、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物や、メタノールなどの主に炭素と水素とから構成される化合物や、炭素と水素と他の原子から成り立っている化合物を含んでもよい。
【0087】
・上述の実施形態では、炭化水素合成反応として、サバティエ反応(CO2+4H2→CH4+2H2O)を例示したが、他の炭化水素合成反応により炭化水素を合成してもよい。例えば、CO2からの直接アルコール合成(メタノール:CO2+3H2→CH3OH+H2O、エタノール:2CO2+6H2→C2H5OH+3H2O)、逆水性ガスシフト反応(CO2+H2→CO+H2O)を介したフィッシャー・トロプシュ反応(nCO+2nH2→(CH2)n+nH2O)であってもよい。さらに、上記以外の炭化水素合成反応であってもよい。
【0088】
・吸着材が有する担体の主成分は、細孔径、細孔容積、および平均粒子径(メディアン径)が上記第1実施形態に記載の範囲に確保できていればシリカに限定されなくてもよい。例えば、アルミナ、シリカアルミナなどを用いてもよい。
【0089】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0090】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
二酸化炭素を吸着可能な吸着材であって、
シリカを主成分とする多孔質体である多孔質シリカ担体と、
前記多孔質シリカ担体に担持されたアミン系化合物と、
を有し、
前記多孔質シリカ担体は、平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であり、
前記吸着材は、平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上である、
吸着材。
[適用例2]
適用例1に記載の吸着材であって、
平均粒子径は、2mm以下である、
吸着材。
[適用例3]
二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置であって、
二酸化炭素を吸着可能な吸着材が収容され、前記二酸化炭素含有ガスが供給される分離器と、
パージガスを前記分離器に供給するパージガス供給部と、
を備え、
前記吸着材は、
シリカを主成分とする多孔質体である多孔質シリカ担体と、
前記多孔質シリカ担体に担持されたアミン系化合物と、
を有し、
前記多孔質シリカ担体は、平均細孔径が10nm以上であり、かつ細孔容積が1.0cc/g以上であり、
前記吸着材は、平均細孔径が20nm以上であり、かつ細孔径が20nm以上の細孔容積が0.08cc/g以上である、
二酸化炭素回収装置。
[適用例4]
適用例3に記載の二酸化炭素回収装置であって、
前記二酸化炭素含有ガス、および前記パージガスは、水蒸気を含み、
前記二酸化炭素回収装置は、
前記パージガスの水蒸気圧を、前記二酸化炭素含有ガスの水蒸気圧より高くする水蒸気圧制御部を、さらに備える、
二酸化炭素回収装置。
[適用例5]
炭素と水素とを含む燃料を製造する燃料製造装置において、
適用例3または適用例4に記載の二酸化炭素回収装置であって、前記パージガスが水素を含む二酸化炭素回収装置と、
前記二酸化炭素回収装置から排出される二酸化炭素と水素とを含む混合ガスを反応させて、前記燃料を製造する反応器と、
を備える、
燃料製造装置。
【符号の説明】
【0091】
h、ha…細孔
sf…表面
sf1…外表面
sf2…内表面
1…吸着材
1a…多孔質シリカ担体
1b…アミン系化合物
2…反応器
3…分離器
4…凝縮器
5、5C…パージガス供給部
5a…水素発生部
5b…窒素タンク
6…水蒸気圧制御部
7…真空ポンプ
10…制御部
11…排出ガス流路
12…流路
21…パージガス流路
22…混合ガス流路
41…第1熱供給部
41c…第1熱量制御器
42…第2熱供給部
42c…第2熱量制御器
100、100A、100B…炭素循環システム
200、200A、200B…燃料製造装置
300、300A、300B、300C…二酸化炭素回収装置
D…燃焼装置
P…工場