IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

特開2024-168132運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム
<>
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム 図1
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム 図2
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム 図3
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム 図4
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム 図5
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168132
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20241128BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20241128BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W40/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084565
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 結
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA03Z
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA49Z
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB12Z
3D241DC31Z
3D241DC39Z
3D241DC50Z
3D241DC59Z
3D241DD02Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両の運転支援機能に対するドライバの依存度を過信状態に陥らせないように制御設定された運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両の運転を支援する運転支援装置は、運転支援機能に対する車両のドライバの信頼度を判定する信頼度判定処理と、運転支援機能の制御条件を信頼度に応じて可変設定する制御条件設定処理と、を実行し、制御条件設定処理では、信頼度が過信状態側から不信状態側に変化するに伴って車両の走行状態の安全度が高くなるように制御条件が設定され、信頼度の不信状態側から過信状態側への変化に伴う制御条件の可変設定による車両の走行状態の安全度の変化度合いが、信頼度の範囲に応じて異なる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を支援する運転支援装置において、
1つ又は複数のプロセッサと、前記1つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された1つ又は複数のメモリと、を備え、
前記1つ又は複数のプロセッサは、
運転支援機能に対する前記車両のドライバの信頼度を判定する信頼度判定処理と、
前記運転支援機能の制御条件を前記信頼度に応じて可変設定する制御条件設定処理と、を実行し、
前記制御条件設定処理では、
前記信頼度が過信状態側から不信状態側に変化するに伴って前記車両の走行状態の安全度が高くなるように前記制御条件が設定され、
前記信頼度の前記不信状態側から前記過信状態側への変化に伴う前記制御条件の可変設定による前記車両の走行状態の安全度の変化度合いが、前記信頼度の範囲に応じて異なる、運転支援装置。
【請求項2】
前記信頼度は、
前記車両の走行状態の安全度が所定の安全度となるように前記制御条件が設定される第1範囲と、
前記第1範囲よりも前記不信状態側に隣接し、前記信頼度の前記不信状態側への変化に伴って前記車両の走行状態の安全度が高くなるように前記制御条件が可変設定される第2範囲と、
前記第2範囲よりも前記不信状態側に隣接し、前記信頼度の前記不信状態側への変化に伴って前記車両の走行状態の安全度が高くなるように前記制御条件が可変設定される第3範囲と、に区分され、
前記1つ又は複数のプロセッサは、
前記第2範囲における前記制御条件の可変設定による前記車両の走行状態の安全度の変化度合いが、前記第3範囲における前記制御条件の可変設定による前記車両の走行状態の安全度の変化度合いよりも大きくなるように、前記制御条件を設定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記1つ又は複数のプロセッサは、
前記信頼度の前記第1範囲よりもさらに前記過信状態側では、前記過信状態が大きくなることに伴って前記車両の走行状態の安全度が高くなるように前記制御条件を設定する、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
1つ又は複数のプロセッサが、
運転支援機能に対する車両のドライバの信頼度を判定するステップと、
前記運転支援機能の制御条件を前記信頼度に応じて可変設定するステップと、を含み、
前記制御条件を前記信頼度に応じて可変設定するステップでは、
前記信頼度が過信状態側から不信状態側に変化するに伴って前記車両の走行状態の安全度が高くなるように前記制御条件が設定され、
前記信頼度の前記不信状態側から前記過信状態側への変化に伴う前記制御条件の可変設定による前記車両の走行状態の安全度の変化度合いが、前記信頼度の範囲に応じて異なる、運転支援方法。
【請求項5】
運転支援機能に対する車両のドライバの信頼度を判定することと、
前記運転支援機能の制御条件を前記信頼度に応じて可変設定することと、を含む処理をプロセッサに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記制御条件を前記信頼度に応じて可変設定する処理では、
前記信頼度が過信状態側から不信状態側に変化するに伴って前記車両の走行状態の安全度が高くなるように前記制御条件が設定され、
前記信頼度の前記不信状態側から前記過信状態側への変化に伴う前記制御条件の可変設定による前記車両の走行状態の安全度の変化度合いが、前記信頼度の範囲に応じて異なる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援装置、運転支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドライバの運転を支援する様々な運転支援装置が従来から提供されている。近年では、車両の運転支援機能に対するドライバの依存度に応じて、運転支援機能の制御を行う技術が知られている。例えば特許文献1には、車両の運転支援機能に対するドライバの依存度が過信状態である場合、運転支援の開始のタイミングが遅くなるように、アクチュエータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-117140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、ドライバの依存度が過信状態になった後の対策について検討されているものの、車両の運転支援機能に対するドライバの依存度を過信状態に陥らせない工夫が考慮されていない。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、車両の運転支援機能に対するドライバの依存度を過信状態に陥らせないように制御設定された運転支援装置、運転支援方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、車両の運転を支援する運転支援装置であって、1つ又は複数のプロセッサと、前記1つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された1つ又は複数のメモリと、を備え、前記1つ又は複数のプロセッサは、運転支援機能に対する前記車両のドライバの信頼度を判定する信頼度判定処理と、前記運転支援機能の制御条件を前記信頼度に応じて可変設定する制御条件設定処理と、を実行し、前記制御条件設定処理では、前記信頼度が過信状態側から不信状態側に変化するに伴って前記車両の走行状態の安全度が高くなるように前記制御条件が設定され、前記信頼度の前記不信状態側から前記過信状態側への変化に伴う前記制御条件の可変設定による前記車両の走行状態の安全度の変化度合いが、前記信頼度の範囲に応じて異なる。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、1つ又は複数のプロセッサが、運転支援機能に対する車両のドライバの信頼度を判定するステップと、前記運転支援機能の制御条件を前記信頼度に応じて可変設定するステップと、を含み、前記制御条件を前記信頼度に応じて可変設定するステップでは、前記信頼度が過信状態側から不信状態側に変化するに伴って前記車両の走行状態の安全度が高くなるように前記制御条件が設定され、前記信頼度の前記不信状態側から前記過信状態側への変化に伴う前記制御条件の可変設定による前記車両の走行状態の安全度の変化度合いが、前記信頼度の範囲に応じて異なる、運転支援方法が提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、運転支援機能に対する車両のドライバの信頼度を判定することと、前記運転支援機能の制御条件を前記信頼度に応じて可変設定することと、を含む処理をプロセッサに実行させるコンピュータプログラムであって、前記制御条件を前記信頼度に応じて可変設定する処理では、前記信頼度が過信状態側から不信状態側に変化するに伴って前記車両の走行状態の安全度が高くなるように前記制御条件が設定され、前記信頼度の前記不信状態側から前記過信状態側への変化に伴う前記制御条件の可変設定による前記車両の走行状態の安全度の変化度合いが、前記信頼度の範囲に応じて異なる、コンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本開示によれば、車両の運転支援機能に対するドライバの依存度を過信状態に陥らせないように制御設定された運転支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る車両の構成例を示す模式図である。
図2】上記車両の運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
図3】上記車両の走行状態の安全度と、上記ドライバの自車両の運転支援機能に対する信頼度との対応関係を示すグラフである。
図4】本開示の運転支援方法の一例を示すフローチャートである。
図5】上記運転支援方法における制御条件設定処理を説明するための説明図である。
図6】上記対応関係と安全マージンとの対応関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な一実施形態について説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は、実際と相違する。また、図面は、理解を容易にするために模式的に示すことがある。さらに、本開示の範囲は、本開示を特に限定する旨の記載がない限り、以下に例示する形態に限られない。
【0012】
[車両の構成]
図1は、本実施形態に係る運転支援装置11を備えた車両10の構成例を示す模式図である。図1に示される車両10は、車両10の駆動トルクを生成する駆動力源17から出力される駆動トルクを車輪に伝達する四輪駆動車として構成されている。駆動力源17は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であってもよく、駆動用モータであってもよく、内燃機関及び駆動用モータをともに備えていてもよい。
【0013】
なお、車両10は、例えば前輪駆動用モータ及び後輪駆動用モータの2つの駆動用モータを備えた電気自動車であってもよく、それぞれの車輪に対応する駆動用モータを備えた電気自動車であってもよい。また、車両10が電気自動車やハイブリッド電気自動車の場合、車両10には、駆動用モータへ供給される電力を蓄積する二次電池や、バッテリに充電される電力を発電するモータや燃料電池等の発電機が搭載される。
【0014】
車両10は、車両10の運転制御に用いられる機器として、駆動力源17、電動ステアリング装置15及びブレーキ液圧制御ユニット24を備えている。駆動力源17は、変速機(図示略)や前輪差動機構7F及び後輪差動機構7Rを介して前輪駆動軸F1及び後輪駆動軸F2に伝達される駆動トルクを出力する。駆動力源17や変速機の駆動は、1つ又は複数の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を含んで構成された車両制御部23により制御される。
【0015】
前輪駆動軸F1には電動ステアリング装置15が設けられている。電動ステアリング装置15は電動モータ(図示略)やギヤ機構を含み、車両制御部23により制御されることによって左前輪及び右前輪の操舵角を調節する。車両制御部23は、手動運転中には、ドライバによるステアリングホイール16の操舵角に基づいて電動ステアリング装置15を制御する。また、車両制御部23は、自動運転中には、運転支援装置11により設定される目標操舵角及び目標加減速度に基づいて電動ステアリング装置15を制御する。
【0016】
車両10のブレーキシステムは、油圧式のブレーキシステムとして構成されている。ブレーキ液圧制御ユニット24は、それぞれ前後左右の駆動輪に設けられたブレーキキャリパ13A~13D(以下、特に区別を要しない場合には「ブレーキキャリパ13」と総称する)に供給する油圧を調節し、制動力を発生させる。ブレーキ液圧制御ユニット24の駆動は、車両制御部23により制御される。車両10が電気自動車あるいはハイブリッド電気自動車の場合、ブレーキ液圧制御ユニット24は、駆動用モータによる回生ブレーキと併用される。
【0017】
車両制御部23は、車両10の駆動トルクを出力する駆動力源17、ステアリングホイール16又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリング装置15、車両10の制動力を制御するブレーキ液圧制御ユニット24の駆動を制御する1つ又は複数の電子制御装置を含む。車両制御部23は、駆動力源17から出力された出力を変速して車輪へ伝達する変速機の駆動を制御する機能を備えていてもよい。車両制御部23は、運転支援装置11から送信される情報を取得可能に構成され、車両10の自動運転制御を実行可能に構成されている。また、車両制御部23は、車両10の手動運転時においては、ドライバの運転による操作量の情報を取得し、車両10の駆動トルクを出力する駆動力源17、ステアリングホイール16又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリング装置15、車両10の制動力を制御するブレーキ液圧制御ユニット24の駆動を制御する。
【0018】
また、車両10は、周囲環境センサ12、車両位置検出センサ33、車両状態センサ34及びHMI(Human Machine Interface)35を備えている。周囲環境センサ12は、前方撮影カメラ12A,12B及び後方撮影カメラ12Cの他に、例えば、サイドミラーに設けられ、車両10の左後方又は右後方を撮影するカメラ(図示略)を有してもよい。この他、周囲環境センサ12は、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダ等のレーダセンサ及び超音波センサのうちの何れか1つ又は複数を有してもよい。
【0019】
周囲環境センサ12は、車両10の周囲環境の情報を取得する、前方撮影カメラ12A,12B、後方撮影カメラ12Cを含む。前方撮影カメラ12A,12B及び後方撮影カメラ12Cは、車両10の前方あるいは後方を撮影し、画像データを生成する。前方撮影カメラ12A,12B及び後方撮影カメラ12Cは、CCD(Charged-Coupled Devices)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の撮像素子を備え、生成した画像データを運転支援装置11に送信する。
【0020】
図1に示される車両10では、前方撮影カメラ12A,12Bは、左右一対のカメラを含むステレオカメラとして構成され、後方撮影カメラ12Cは、いわゆる単眼カメラとして構成されているが、それぞれステレオカメラあるいは単眼カメラのいずれであってもよい。車両10は、前方撮影カメラ12A,12B及び後方撮影カメラ12C以外に、例えばサイドミラーに設けられて左後方又は右後方を撮影するカメラを備えてもよい。
【0021】
車両位置検出センサ33は、GPS(Global Positioning System)衛星に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)の測位衛星からの衛星信号を受信する。車両位置検出センサ33は、受信した衛星信号に基づいて、車両10の現在位置を所定の演算周期で検出し、検出した現在位置を示す情報を運転支援装置11に送信する。車両10の現在位置を示す情報は、例えば緯度及び経度で示される。なお、車両位置検出センサ33は、GPSセンサの他に、車両10の位置を特定する他の衛星システムから衛星信号を受信するアンテナを有してもよい。
【0022】
車両状態センサ34は、車両10の操作状態及び挙動を検出する1つ又は複数のセンサからなる。車両状態センサ34は、例えば舵角センサ、アクセルポジションセンサ、ブレーキストロークセンサ、ブレーキ圧センサ又はエンジン回転数センサのうちの少なくとも1つを含み、ステアリングホイール16あるいは操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の車両10の操作状態を検出する。また、車両状態センサ34は、例えば車速センサ、加速度センサ、角速度センサのうちの少なくとも1つを含み、車速、前後加速度、横加速度、及びヨーレート等の車両10の挙動を検出する。車両状態センサ34は、検出した種々の情報を含むセンサ信号を運転支援装置11に送信する。
【0023】
HMI35は、運転支援装置11により駆動され、画像表示や音声出力等の手段により、ドライバに対して種々の情報を提示する。HMI35は、例えばインストルメントパネル内に設けられた表示装置及び車両10に設けられたスピーカを含む。表示装置は、ナビゲーションシステムの表示装置の機能を有していてもよい。また、HMI35は、車両10のフロントウィンドウ上に画像を表示するヘッドアップディスプレイを含んでもよい。
【0024】
運転支援装置11は、1つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで、車両10のドライバの運転を支援する装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、本開示の運転支援方法等をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、運転支援装置11に備えられた記憶装置112(メモリ)として機能する記録媒体に記録されていてもよく、運転支援装置11に内蔵された記録媒体又は運転支援装置11に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。記憶装置112は、1つでもよく、複数でもよい。
【0025】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM、DVD及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の記憶素子、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びSSD(Solid State Drive)等のフラッシュメモリ、並びに、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0026】
<運転支援装置の機能構成>
図2は、運転支援装置11の構成例を示すブロック図である。運転支援装置11には、専用線若しくはCAN(Controller Area Network)、又はLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、周囲環境センサ12、車両制御部23、車両状態センサ34及びHMI35が接続される。なお、運転支援装置11は、車両10に搭載された電子制御装置に限られるものではなく、タッチパッド又はウェアラブル機器等の端末装置でもよい。
【0027】
運転支援装置11は、処理装置111及び記憶装置112を有する。処理装置111は、CPU等の1つ又は複数のプロセッサ及び種々の周辺部品を有する。処理装置111の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等でもよい。
【0028】
処理装置111は、車両情報取得部111A、信頼度判定部111B、及び設定部111Cを有する。これらの各部の機能は、プロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される。なお、車両情報取得部111A、信頼度判定部111B、及び設定部111Cのうちの一部が、アナログ回路等のハードウェアにより構成されていてもよい。
【0029】
車両情報取得部111Aは、車両10に関する種々の情報を取得する処理を実行する。具体的には、車両情報取得部111Aは、車両10の走行状態の情報、及び車両10の周囲環境の情報を所定の演算周期ごとに取得し、これらの情報を記憶装置112に記録する。車両10の走行状態の情報は、車両状態センサ34により検出されるステアリングホイール16又は操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の車両10の操作状態、及び、車速、前後加速度、横加速度、ヨーレート等の車両10の挙動の情報を含む。
【0030】
車両10の周囲環境の情報は、周囲環境センサ12により検出される。車両10の周囲環境の情報は、車両10の周囲に存在する障害物の種類、サイズ(幅、高さ及び奥行き)、位置、車両10から障害物までの距離、及び車両10と障害物との相対速度の情報を含む。当該障害物は、例えば、走行中の他車両及び駐車車両、歩行者、自転車、側壁、縁石、ガードレール、建造物、電柱、交通標識、交通信号機、自然物、並びに、その他の車両10の周囲に存在し、車両10との衝突リスクが発生し得るあらゆる物体を含む。また、車両10の周囲環境の情報は、道路上の境界線の情報を含んでもよい。
【0031】
信頼度判定部111Bは、車両10の運転支援機能に対する車両10のドライバの信頼度を判定する。運転支援機能は、車両10のドライバの運転を支援する種々の機能である。本実施形態に係る運転支援機能としては、例えば、車両10の自動運転制御機能が挙げられる。
【0032】
信頼度判定部111Bによる信頼度の判定方法は特に限定されるものではなく、種々の方法が採用されてよい。例えば信頼度判定部111Bは、運転支援装置11が車両10のドライバに対して何等かの要求をしたことに対してドライバが応答するまでに要した所要時間に基づき信頼度を判定してもよい。当該応答としては、車両10のドライバがブレーキを踏んだり、ステアリングホイール16を操舵したりする行動等が含まれる。
【0033】
または、信頼度判定部111Bは、車両10のドライバが進行方向前方を注視する頻度に基づき信頼度を判定してもよい。あるいは、信頼度判定部111Bは、車両10の運転支援機能を個々のドライバが使用する頻度に基づいて信頼度を判定してもよく、運転支援機能の実行中に操作指令に反した運転操作を個々のドライバが行った頻度に基づいて判定してもよい。あるいは、信頼度判定部111Bは、個々のドライバが運転支援機能に対する信頼度をアンケート形式で入力した情報に基づいて判定してもよい。なお、以降の説明における“信頼度”とは、車両10のドライバの自車両の運転支援機能に対する信頼度を意味する。
【0034】
本実施形態では、信頼度判定部111Bにより判定された信頼度に応じて、車両10のドライバの信頼状態が“標準信頼状態”、“不信状態”又は“過信状態”に分類される。
【0035】
標準信頼状態とは、信頼度が、不信閾値Th1以上過信閾値Th2以下(Th1≦信頼度≦Th2)である場合のドライバの信頼状態であり、車両10のドライバの信頼状態が適切な状態を意味する。“信頼状態が適切な状態”とは、車両10のドライバが自車両の運転支援機能を信頼しすぎた状態(過信状態)ではなく、安心して運転支援機能を使用していると見なせる状態をいう。
【0036】
不信閾値Th1は、車両10のドライバが自車両の運転支援機能に対して不信状態にあるか否かを判定するための所定の閾値である。過信閾値Th2は、車両10のドライバが運転支援機能に対して過信状態にあるか否かを判定するための所定の閾値である。
【0037】
不信状態とは、信頼度が、不信閾値Th1よりも小さい(信頼度<Th1)場合のドライバの信頼状態であり、車両10のドライバが自車両の運転支援機能に対して不信を示す状態である。ドライバが運転支援機能に対して不信状態である場合、例えばドライバが運転支援機能を使用しなくなったり、不安感を持った状態で運転したりすることとなる。
【0038】
過信状態とは、信頼度が、過信閾値Th2より大きい(Th2<信頼度)場合のドライバの信頼状態であり、車両10のドライバが自車両の運転支援機能に対して過信を示す状態である。ドライバが運転支援機能に対して過信状態である場合、ドライバが運転支援機能に過度に依存し、運転支援機能では対応できない状況が回避されない場合がある。
【0039】
設定部111Cは、車両10の運転支援機能の制御条件を、当該運転支援機能に対するドライバの信頼度に応じて可変設定する制御条件設定処理を実行する。また、設定部111Cは、可変設定された制御条件に応じて車両10の目標軌道を可変設定する目標軌道設定処理を実行する。制御条件設定処理及び目標軌道設定処理については後述する。
【0040】
上記の“制御条件”とは、車両10の運転支援機能が実行される上で処理装置111により制御される種々の制御パラメータであり、以降の説明においても同様である。制御パラメータとしては、例えば、車両10の速度、加速度、減速度、操舵速度、他車両との車間距離、又は車両10の周囲に存在する物体(壁又は障害物等)に対する安全マージン等があげられる。
【0041】
記憶装置112は、処理装置111と通信可能に接続された、1つ若しくは複数のRAM、ROM、HDD(Hard Disk Drive)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SSD、USBフラッシュ又はストレージ装置等の記録媒体である。ただし、記憶装置112の種類及び数は特に限定されない。記憶装置112は、処理装置111により実行されるコンピュータプログラム、演算処理に用いられる種々のパラメータ、検出データ、及び演算結果等に関するデータ等を記録する。記憶装置112の一部は、処理装置111のワーク領域として使用される。
【0042】
本実施形態に係る記憶装置112は、車両10の走行状態の安全度と、車両10のドライバの信頼度との対応関係CP(以下、単に“対応関係CP”という。)の情報を記憶する。なお、以降の説明における“安全度”とは、車両10の走行上の安全性の度合いを意味する。
【0043】
図3は、対応関係CPの一例を示すグラフである。対応関係CPは、図3に示されるように、車両10のドライバの信頼度が過信状態側から不信状態側に変化するに伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように設定される。
【0044】
また、対応関係CPにおいては、車両10のドライバの信頼度の不信状態側から過信状態側への変化に伴って車両10の走行状態の安全度の変化度合いが、信頼度の範囲に応じて異なっている。換言すると、対応関係CPでは、図3に示されるように、信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合(傾き)が信頼度の範囲毎に異なっている。
【0045】
対応関係CPにおける信頼度の範囲は、図3に示されるように、第1範囲E1~第7範囲E7に区分される。第1範囲E1は、車両10の走行状態の安全度が所定の安全度となるように制御条件が設定部111Cにより設定される区間である。信頼度の第1範囲E1で設定される制御条件の所定の安全度は、車両10の走行状態の安全度が最低限確保される安全度である。
【0046】
第2範囲E2は、図3に示されるように、第1範囲E1よりも不信状態側に隣接し、信頼度の不信状態側への変化に伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように制御条件が設定部111Cにより可変設定される区間である。
【0047】
第3範囲E3は、図3に示されるように、第2範囲E2よりも不信状態側に隣接し、信頼度の不信状態側への変化に伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように制御条件が設定部111Cにより可変設定される区間である。
【0048】
第4範囲E4は、図3に示されるように、第3範囲E3よりも不信状態側に隣接し、信頼度の不信状態側への変化に伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように制御条件が設定部111Cにより可変設定される区間である。
【0049】
第5範囲E5は、図3に示されるように、第4範囲E4よりも不信状態側に隣接し、信頼度の不信状態側への変化に伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように制御条件が設定部111Cにより可変設定される区間である。
【0050】
第6範囲E6は、図3に示されるように、第5範囲E5よりも不信状態側に隣接し、信頼度の不信状態側への変化に伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように制御条件が設定部111Cにより可変設定される区間である。
【0051】
対応関係CPにおける安全度の範囲は、図3に示されるように、範囲L1と、その他の範囲とに区分される。範囲L1は、運転支援機能により車両10が快適に走行可能な安全度の範囲として設定されている。
【0052】
第2範囲E2における車両10の走行状態の安全度の変化の度合いは、図3に示されるように、第3範囲E3における車両10の走行状態の安全度の変化の度合いよりも大きい。換言すると、第2範囲E2における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合(傾き)が、同図に示されるように、第3範囲E3における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合(傾き)よりも大きい。第2範囲E2では、安全度を低下させる変化量の割合を大きくすることで、車両10のドライバに不信感を持たせることができ、ドライバが過信状態へ陥ることを防ぐことができる。
【0053】
第3範囲E3における車両10の走行状態の安全度の変化の度合いは、図3に示されるように、第4範囲E4における車両10の走行状態の安全度の変化の度合いよりも小さい。換言すると、第3範囲E3における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合(傾き)が、同図に示されるように、第4範囲E4における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合(傾き)よりも小さい。第3範囲E3では、車両10のドライバの信頼度が過信側の第2範囲E2へ遷移することを防ぐために、安全度を緩やかに低下させて、ドライバに信頼度が第2範囲E2に近づいていることの気付きを促す。
【0054】
第4範囲E4における車両10の走行状態の安全度の変化の度合いは、図3に示されるように、第5範囲E5における車両10の走行状態の安全度の変化の度合いよりも大きい。換言すると、第4範囲E4における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合(傾き)が、同図に示されるように、第5範囲E5における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合(傾き)よりも大きい。第4範囲E4は、図4に示されるように、運転支援機能により車両10が快適に走行可能な安全度の範囲L1内で信頼度も高いことから、信頼度に応じて運転支援機能をより効率的に利用できるように安全度が設定される。
【0055】
第5範囲E5における車両10の走行状態の安全度の変化の度合いは、図3に示されるように、第6範囲E6における車両10の走行状態の安全度の変化の度合いよりも大きい。換言すると、第5範囲E5における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合が、同図に示されるように、第6範囲E6における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合(傾き)よりも大きい。このため、設定部111Cは、車両10のドライバの信頼状態が不信状態から標準信頼状態に変化する過程で、車両10を、運転支援機能により快適に走行する状態に効率的に変化させることができる。これにより、運転支援機能の利便性が向上する。
【0056】
第6範囲E6(第5範囲E5よりもさらに不信状態側の範囲)は、図3に示されるように、不信状態が大きくなることに伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように制御条件が設定部111Cにより設定される区間である。第6範囲E6は、車両10のドライバの運転支援機能に対する信頼度が不信状態に陥った状況である。第6範囲E6では、車両10のドライバの運転支援機能に対する不信状態が進行することを防ぐために、不信状態の程度に応じて車両10の走行状態の安全度が高くなるように、制御条件が設定される。
【0057】
第7範囲E7(第1範囲E1よりもさらに過信状態側の範囲)は、図3に示されるように、過信状態が大きくなることに伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように制御条件が設定部111Cにより設定される区間である。第7範囲E7は、車両10のドライバの運転支援機能に対する信頼度が過信状態に陥った状況である。第7範囲E7では、車両10の走行状態の安全度を保ちつつドライバに不信感を持たせるために、過信状態の大きさに応じて車両10の走行状態の安全度が極度に高くなるように制御条件が設定される。
【0058】
[運転支援方法]
図4は、本開示の運転支援方法の一例を示すフローチャートである。以下、本開示の運転支援方法の一例について、図4を参照しながら説明する。当該フローチャートにおける各種処理は、本開示の機能が起動された状態において、所定の演算周期で繰り返し実行される。なお、以降の説明では、制御条件が、後述する目標軌道を設定する際の障害物に対する車両10の安全マージンである場合を例として説明する。上記の“安全マージン”とは、障害物Oと通過点Pとの間の距離を意味し、以降の説明でも同様である。
【0059】
<ステップS11:走行状態情報取得処理>
運転支援装置11を含む車載システムが起動されると、車両情報取得部111Aは、ステップS11において、車両10の走行状態の情報を取得する。具体的には、車両情報取得部111Aは、車両状態センサ34から送信される検出信号に基づいて、ステアリングホイール16又は操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の車両10の操作状態、及び、車速、前後加速度、横加速度及びヨーレート等の車両10の挙動の情報を取得する。
【0060】
<ステップS12:周囲環境情報取得処理>
次いで、車両情報取得部111Aは、ステップS12において、車両10の周囲環境の情報を取得する。具体的には、車両情報取得部111Aは、周囲環境センサ12から送信される検出信号に基づいて、車両10の周囲に存在する障害物の種類、サイズ(幅、高さ及び奥行き)、位置、車両10から障害物までの距離、及び車両10と障害物との相対速度の情報を取得する。また、車両情報取得部111Aは、周囲環境センサ12から送信される検出信号に基づいて、道路上の境界線の情報を取得してもよい。なお、車両情報取得部111Aは、上記の周囲環境の情報のうちのいずれか1つ又は複数の情報を、車車間通信や路車間通信、あるいは、移動体通信を介して外部の機器から取得してもよい。
【0061】
<ステップS13:信頼度判定処理>
続いて、信頼度判定部111Bは、ステップS13において、車両10のドライバの運転支援機能に対する信頼度を判定する。信頼度の判定方法は特に制限されず、従来公知の判定方法が用いられてよい。信頼度を判定する方法は、例えば上述した方法(段落[0032]及び[0033])であってもよい。
【0062】
<ステップS14:制御条件設定処理>
図5は、制御条件設定処理を説明するための説明図である。設定部111Cは、先のステップS11において取得した車両10の周囲環境の情報に基づいて、車両10の走行路R1上に存在する障害物Oから所定距離にある通過点Pを設定する。この際、設定部111Cは、対応関係CP(図3)を参照することによって、先のステップS13において判定された信頼度に対応する安全度を特定し、安全マージンM(制御条件)を当該安全度に対応する距離に設定する。
【0063】
<ステップS15:目標軌道設定処理>
次いで、設定部111Cは、ステップS15において、先のステップS14において設定された通過点Pの情報と、先のステップS12において取得した車両10の走行状態の情報とに基づいて、通過点Pを頂点とし、障害物Oとの衝突が回避される走行軌道を車両10の目標軌道Sに設定する。設定部111Cは、車両10が目標軌道S上を走行するように、車両10の目標車速を設定する。設定部111Cは、設定した目標軌道S及び目標車速の情報に基づいて目標操舵角及び目標加減速度を設定し、これらの情報を車両制御部23に送信する。車両制御部23は、当該情報に基づいて、車両10が設定された目標軌道S上を走行するように、電動ステアリング装置15を制御する。
【0064】
<ステップS16:運転支援機能停止?>
次いで、処理装置111は、ステップS16において、車両10の運転支援機能が停止したか否かを判定する。処理装置111は、車両10の運転支援機能が停止したと判定した場合(ステップS16のYES)、処理を終了する。一方、運転支援機能が停止していない場合(ステップS16のNO)、ステップS11に戻って、これまで説明した各ステップの処理を繰り返し実行する。
【0065】
[制御条件の可変設定について]
上述の通り、本実施形態に係る処理装置111は、図4に示されるように、運転支援機能が停止するまで、各種処理のサイクル(ステップS11→ステップS12→ステップS13→ステップS14→ステップS15→ステップS16→ステップS11→ステップS12→・・・・)を所定の演算周期で実行する。設定部111Cは、上記サイクル処理が実行される過程において、制御条件を、車両10の運転支援機能に対するドライバの信頼度に応じて可変設定する制御条件設定処理を実行する。
【0066】
具体的には、設定部111Cは、上記サイクル処理が実行される過程において、車両10のドライバの信頼度に応じて安全マージンを可変設定する。以下、上記サイクル処理が実行される過程で安全マージンが可変設定される態様について説明する。なお、以降の説明では、上記サイクルの処理が実行される過程で車両10のドライバの信頼度がT0からT9の順に変化する場合を一例として説明し、上記サイクル処理を単に“サイクル処理”と記述する。
【0067】
図6は、図3に示した対応関係CPと安全マージンとの対応関係を示す図であり、道路の端に停車している障害物Oの脇を、車両10が通過する場合に設定される目標軌道の通過点Pの位置を示している。本実施形態の理解を容易にするために、サイクル処理が実行される過程でドライバの運転支援機能に対する信頼度がT0からT9の順に変化し、設定される通過点PがP0からP9の順に遷移する場合を一例として説明する。なお、通過点Pは、例えば、車両10に設定される任意の位置(例えば車両10の重心の位置)が通過する目標位置である。
【0068】
車両10のドライバの信頼度が第6範囲E6に属するT0である場合、設定部111Cは、車両10の走行状態の安全度が高くなるように制御条件を設定する。具体的に、設定部111Cは、障害物Oと通過点P0との間の安全マージンが大きく確保される通過点P0を設定する。これにより、車両10が障害物Oの脇を通過する際のドライバの安心感が高められ、運転支援機能に対するドライバの信頼度を高めることができる。
【0069】
次に、車両10のドライバの信頼度が高くなる方向へ遷移し、信頼度が第5範囲E5に属するT1,T2である場合、設定部111Cは、信頼度がT0の場合の安全マージンよりも小さい安全マージンとなるように通過点P1,P2をそれぞれ設定する。ここで、第5範囲E5における対応関係CPの傾き(第5範囲E5における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合)は、第6範囲E6における対応関係CPの傾き(第6範囲E6における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合)よりも大きい。これにより、設定部111Cは、車両10のドライバの信頼状態が不信状態から標準信頼状態に変化する過程で、車両10が障害物Oの脇を通過する際に運転支援機能により車両10が快適に走行可能な状態に効率的に変化させることができる。
【0070】
次いで、車両10のドライバの信頼度がさらに高くなる方向へ遷移し、信頼度が第4範囲E4に属するT3,T4である場合、設定部111Cは、信頼度が第5範囲E5に属する場合の安全マージンよりも小さい安全マージンとなるように通過点P3,P4をそれぞれ設定する。ここで、設定部111Cは、第4範囲E4における制御条件の可変設定による車両10の走行状態の安全度の変化度合いが、第5範囲E5における制御条件の可変設定による車両10の走行状態の安全度の変化度合いよりも大きくなるように制御条件を設定する。
【0071】
具体的には、第4範囲E4における対応関係CPの傾き(第4範囲E4における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合)は、第5範囲E5における対応関係CPの傾き(第5範囲E5における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合)よりも大きい。これにより、第5範囲E5では信頼度が過信状態側へΔt変化することにより安全マージンがΔM1変化することに対して、第4範囲E4では信頼度が過信状態側へ同じΔt変化することにより安全マージンがΔM2(>ΔM1)変化する。即ち、第4範囲E4において、第5範囲E5と同じように信頼度がΔt変化したとしても、安全マージンの縮小幅がより大きくなる。
【0072】
第4範囲E4は、図3に示されるように運転支援機能により車両10が快適に走行可能な安全度の範囲L1内で信頼度も高い状態であることから、設定部111Cは、信頼度に応じて運転支援機能をより効率的に利用できるように安全度を設定する。具体的には、設定部111Cは、安全マージンが過度に大きくならないように通過点P3,P4を設定することにより、車両10の走行状態の安全度を確保しつつ、操舵角速度が大きくなって車両10の挙動の変化が大きくなることを防ぐことができる。
【0073】
続いて、車両10のドライバの信頼度がさらに高くなる方向へ遷移し、信頼度が第3範囲E3に属するT5,T6である場合、設定部111Cは、信頼度が第4範囲E4に属する場合の安全マージンよりも小さい安全マージンとなるように通過点P5,P6をそれぞれ設定する。ここで、設定部111Cは、第3範囲E3における制御条件の可変設定による車両10の走行状態の安全度の変化度合いが、第4範囲E4における制御条件の可変設定による車両10の走行状態の安全度の変化度合いよりも小さくなるように、制御条件を設定する。
【0074】
具体的には、第3範囲E3における対応関係CPの傾き(第3範囲E3における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合)は、第4範囲E4における対応関係CPの傾きよりも小さい。これにより、第4範囲E4では信頼度が過信状態側へΔt変化することにより安全マージンがΔM2変化することに対して、第3範囲E3では信頼度が過信状態側へ同じΔt変化することにより安全マージンがΔM3(<ΔM2)変化する。即ち、第3範囲E3において、第4範囲E4と同じように信頼度がΔt変化したとしても、安全マージンの変化が小さくなる。本実施形態に係る設定部111Cは、車両10のドライバの信頼度が第3範囲E3内である段階で安全マージンの変化を小さくすることによって、車両10のドライバの信頼度がより過信状態側に変化して、安全度が車両10が快適に走行可能な安全度の範囲L1よりも過度に低くなる前にドライバに自身の信頼状態を気づかせる猶予を与える。これにより、設定部111Cは、ドライバの信頼度がより過信状態側に変化することを抑制することができる。
【0075】
次に、車両10のドライバの信頼度がさらに高くなる方向へ遷移し、信頼度が第2範囲E2に属するT7,T8である場合、設定部111Cは、信頼度が第3範囲E3に属する場合の安全マージンよりも小さい安全マージンとなるように通過点P7,P8をそれぞれ設定する。ここで、設定部111Cは、第2範囲E2における制御条件の可変設定による車両10の走行状態の安全度の変化度合いが、第3範囲E3における制御条件の可変設定による車両10の走行状態の安全度の変化度合いよりも大きくなるように、制御条件を設定する。
【0076】
具体的には、第2範囲E2における対応関係CPの傾き(第2範囲E2における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合)は、第3範囲E3における対応関係CPの傾き(第3範囲E3における信頼度の変化量に対する安全度の変化量の割合)よりも大きい。これにより、図6に示されるように、第3範囲E3では信頼度が過信状態側へΔt変化することにより安全マージンがΔM3変化することに対して、第2範囲E2では信頼度が過信状態側へ同じΔt変化することにより安全マージンがΔM4(>ΔM3)変化する。即ち、第2範囲E2において、第3範囲E3と同じように信頼度がΔt変化したとしても、安全マージンの縮小幅がより大きくなる。従って、設定部111Cは、判定された信頼度が第2範囲E2にあるドライバにより緊張感を促すことができ、当該ドライバが過信状態に陥ることを抑制することができる。
【0077】
次いで、車両10のドライバの信頼度がさらに高くなる方向へ遷移し、信頼度が過信状態を示す第7範囲E7に属する場合、設定部111Cは、過信状態が大きくなることに伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように制御条件を設定する。
【0078】
具体的には、設定部111Cは、信頼度がT8からT9に変化する場合、障害物Oと通過点P0との間の安全マージンが大きく確保されるように、通過点Pを通過点P8から通過点P9に変更する。これにより、車両10のドライバが過信状態に陥ったとしても、安全マージンが拡大されるため、車両10と障害物Oとが接触することがなくなり、車両10の安全性を確保することができる。また、車両10のドライバが運転支援機能を信頼している状態であるにもかかわらず、安全マージンが必要以上に大きく確保されることから、ドライバに運転支援機能に対する不信感を持たせることで、ドライバの信頼度を標準信頼状態へと誘導することができる。
【0079】
以上の説明の通り、本実施形態に係る運転支援装置11は、1つ又は複数のプロセッサと、上記1つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された1つ又は複数のメモリと、を備え、上記1つ又は複数のプロセッサは、運転支援機能に対する車両10のドライバの信頼度を判定する信頼度判定処理と、上記運転支援機能の制御条件を上記信頼度に応じて可変設定する制御条件設定処理と、を実行し、上記制御条件設定処理では、上記信頼度が過信状態側から不信状態側に変化するに伴って車両10の走行状態の安全度が高くなるように上記制御条件が設定され、上記信頼度の上記不信状態側から上記過信状態側への変化に伴う上記制御条件の可変設定による車両10の走行状態の安全度の変化度合いが、上記信頼度の範囲に応じて異なる。
【0080】
上記態様によれば、車両10のドライバの信頼度が不信状態側から過信状態側に変化することに伴って安全度が一律(リニア)に変化せずにバリアブルに変化することから、車両10のドライバに緊張感(不信感)を促すことができ、当該ドライバが過信状態に陥ることを抑制することができる。特に本実施形態では、図3に示されるように、ドライバが標準信頼状態である段階で、信頼度の過信状態側への変化に伴って車両10の安全度がバリアブルに変化する。これにより、車両10の安全度が一律に変化する場合と比較して、標準信頼状態にある車両10のドライバに対して緊張感(不信感)を促すことができ、当該ドライバが過信状態に陥ることを抑制することができる。なお、上記の“バリアブル”とは、信頼度の変化量に対する安全度の変化量が一定比率ではないことを意味する。
【0081】
2.変形例
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく種々の変更を加え得る。
【0082】
例えば実施形態では、制御条件として制御パラメータが、ドライバの信頼度に応じて可変設定されることによって車両10の安全度が変化する例を説明したがこれに限られない。例えば、処理装置111は、制御条件として例えば車両10のブレーキの開始のタイミング、加速開始タイミング、減速開始タイミング、操舵開始タイミング、又はHMI35を介した警報若しくは報知の頻度等をドライバの信頼度に応じて可変設定することによって、車両10の安全度を変化させてもよい。
【0083】
3.補足
上記実施形態で例示された運転支援装置及び運転支援方法は、乗用車に適用されるが、本開示の運転支援装置及び運転支援方法は、乗用車以外の移動体に適用されてもよく、本開示の用途は特に制限されない。
【0084】
さらに、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的又は例示的なものであって限定的ではない。つまり、本発明は、上記の効果とともに、又は上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術は上記実施形態に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0086】
例えば、上記実施形態で例示された運転支援装置が有する機能の一部が、他の装置に備えられてもよい。具体的には、例えば、本開示の運転支援方法における各ステップ(ステップS11~S15)の一部又は全部が、支援対象車両と車車間通信を介して相互に通信可能に接続された他車両により実行されてよく、支援対象車両と通信ネットワークを介して相互に通信可能に接続された情報処理装置(例えばクラウドサーバ)より実行されてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、運転支援装置は、車両に搭載された電子制御装置であるが、本開示の技術はこの例に限定されない。例えば、運転支援装置は、車両とは異なる装置と通信可能に構成され、任意の表示装置に対して駆動指令する携帯端末であってもよい。このような携帯端末としては、例えば、ラップトップコンピュータ、携帯電話、スマートフォン又はタブレット端末等が挙げられる。
【0088】
さらに、本開示の技術は、上記実施形態に記載された運転支援装置を搭載した車両、運転支援装置による運転支援方法、コンピュータを上記の運転支援装置として機能させるコンピュータプログラム、及び当該コンピュータプログラムを記録した非一時的な有形の記録媒体としても実現することができる。
【符号の説明】
【0089】
10…支援対象車両
11…運転支援装置
12…周囲環境センサ
23…車両制御部
34…車両状態センサ
35…HMI
111…処理装置
111A…車両情報取得部
111B…信頼度判定部
111C…制御条件設定部
112…記憶装置
CP…対応関係
O…障害物
図1
図2
図3
図4
図5
図6