(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168135
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】高周波バラン、および、高周波フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 5/10 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H01P5/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084568
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 辰彦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インピーダンス比1:1で狭帯域を持たせつつ不平衡側の中心導体を直流的に平衡側から絶縁する高周波バランを容易な構造で実現する。
【解決手段】高周波バラン1において、第1同軸ケーブル10は、第2端102から第1端101の方向へ所定長さの位置において、外導体分断部SEC0を備え、外導体分断部SEC0の一方端は、第2端102から第1端101の方向へ所定長さの位置にあり、所定の長さは高周波バラン1で伝送する高周波信号の波長λの約0.4倍に基づいて設定される。外導体分断部SEC0側の端部103、104には、第1外導体に対して導電性接合材70を用いて引き出し導体191、192が接続され、引き出し導体191、192からなる対の導体が高周波バラン1の平衡端子となり、高周波バラン1は不平衡平衡変換機能を実現できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端と第2端とを有する線状導体からなる中心導体と、
前記中心導体の周部を覆う所定厚みの誘電体層と、
前記誘電体層の外周面を覆う外導体と、
を備え、
前記外導体は、前記外導体が形成されていない外導体分断部を備え、
前記外導体分断部の前記第2端側の端部は、前記第2端を基準とした前記第1端側における高周波バランが伝送する高周波信号の波長の1/2より短い位置にあり、
前記第2端は、前記中心導体が前記外導体に接続されていない開放端であり、
前記中心導体、前記誘電体層、および、前記外導体からなる構造体は、環状であり、前記第2端は、前記外導体分断部よりも前記第1端側の前記外導体に電気的に接続されており、
前記第1端が不平衡端子であり、
前記外導体における前記外導体分断部の前記第1端側の端部と前記第2端側の端部とが平衡端子である、
高周波バラン。
【請求項2】
第1中心導体、第1誘電体層、および、第1外導体を備え、第1端と第2端を有する第1同軸ケーブルと、
第2中心導体、第2誘電体層、および、第2外導体を備え、第3端と第4端とを有する第2同軸ケーブルと、
第3中心導体、第3誘電体層、および、第3外導体を備え、第5端と第6端とを有する第3同軸ケーブルと、
を備え、
前記第1同軸ケーブルは、前記第2端から前記第1端へ所定長さの位置において、前記第1外導体が形成されていない外導体分断部を備え、
前記第2同軸ケーブルの長さおよび前記第3同軸ケーブルの長さは、前記第1同軸ケーブルの前記第2端と前記外導体分断部との間の長さと略同じであり、
前記第2同軸ケーブルは、前記第3端と前記第1同軸ケーブルの前記第2端とが揃えて配置された状態で、前記第1同軸ケーブルに平行に配置され、
前記第3同軸ケーブルは、第6端が前記第2同軸ケーブルの前記第4端に近接し、かつ、離間した状態で、前記第1同軸ケーブルに平行に配置され、
前記第1外導体、前記第2外導体、および、前記第3外導体は、導電性接合材で電気的に接続され、
前記第1同軸ケーブルの前記第2端は開放端であり、
前記第2同軸ケーブルの前記第3端では、前記第2中心導体が前記第2外導体に接続され、
前記第3同軸ケーブルの前記第5端では、前記第3中心導体が前記第3外導体に接続され、
前記第2同軸ケーブルの前記第3端と前記第3同軸ケーブルの前記第5端とは、グランド電位と略同電位であり、
前記第1同軸ケーブルの前記第1端は、不平衡端子であり、
前記第2同軸ケーブルの前記第2中心導体の前記第4端側の端部と、前記第3同軸ケーブルの前記第3中心導体の前記第6端側の端部とは、平衡端子である、
高周波バラン。
【請求項3】
請求項2に記載の高周波バランであって、
前記第2端と前記外導体分断部との間の長さは、高周波バランが伝送する高周波信号の波長の約0.4倍である、
高周波バラン。
【請求項4】
請求項3に記載の高周波バランであって、
前記第2端と前記外導体分断部との間の長さは、前記高周波信号の波長の0.395倍である、
高周波バラン。
【請求項5】
請求項2に記載の高周波バランであって、
前記第1同軸ケーブル、前記第2同軸ケーブル、および、前記第3同軸ケーブルからなる構造体は、環状であり、
前記第3端と前記第5端とが近接して電気的に接続されている、
高周波バラン。
【請求項6】
請求項2に記載の高周波バランであって、
グランド用導電体を備え、
前記第3端と前記第5端とは、前記グランド用導電体を通じて電気的に接続されている、
高周波バラン。
【請求項7】
請求項2に記載の高周波バランであって、
第4中心導体、第4誘電体層、および、第4外導体を備え、第7端と第8端とを有する第4同軸ケーブルと、
第5中心導体、第5誘電体層、および、第5外導体を備え、第9端と第10端とを有する第5同軸ケーブルと、
を備え、
前記第4同軸ケーブルの長さは、前記第2同軸ケーブルの長さと略同じであり、
前記第5同軸ケーブルの長さは、前記第3同軸ケーブルの長さと略同じであり、
前記第4同軸ケーブルの前記第7端は、前記第4中心導体と前記第4外導体が接続される短絡端であって、前記第2同軸ケーブルの前記第3端に電気的に接続されており、
前記第4同軸ケーブルの前記第8端は、前記第4中心導体と前記第4外導体が接続されておらず、前記第4外導体に前記第2中心導体が接続されており、
前記第5同軸ケーブルの前記第9端は、前記第5中心導体と前記第5外導体が接続される短絡端であって、前記第3同軸ケーブルの前記第5端に電気的に接続されており、
前記第5同軸ケーブルの前記第10端は、前記第5中心導体と前記第5外導体が接続されておらず、前記第5外導体に前記第3中心導体が接続されており、
前記第1同軸ケーブルの前記第1端は、不平衡端子であり、
前記第4同軸ケーブルの前記第4中心導体の前記第8端側の端部と、前記第5同軸ケーブルの前記第5中心導体の前記第10端側の端部とは、平衡端子である、
高周波バラン。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の高周波バランを備えた第1高周波バランと、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の高周波バランを備えた第2高周波バランと、
を備え、
前記第1高周波バランの平衡端子と前記第2高周波バランの平衡端子とは、それぞれ接続されている、
高周波フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号の不平衡平衡変換を行う高周波バラン、および、高周波バランを用いた高周波フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の高周波バランが提案されている。
【0003】
非特許文献1には、コリンズバラン(コリンズバルン)が記載されている。コリンズバランは、同軸ケーブルと外被導体と同じ太さの導体を備える。この導体の一方端と同軸ケーブルの中心導体の一方端とは接続されている。この導体の他方端は同軸ケーブルの一方端から導体と同じ長さの個所で同軸ケーブルの外導体に接続されている。
【0004】
そして、これら同軸ケーブルの一方端の外導体と同軸ケーブルの一方端の中心導体を接続した導体の一方端とが、バランの平衡端子となる。同軸ケーブルの他方端が、バランの不平衡端子となる。平衡:不平衡間のインピーダンス比は1:1で、使用周波数上端fHは使用周波数下端fLの略2倍という広帯域の特性を持ち、平衡端子側の一方は不平衡側の中心導体と直流的に接続されている。
【0005】
例えば、非特許文献2には、ロバーツバラン(ロバーツバルン)が記載されている。ロバーツバランは、第1同軸ケーブルと第2同軸ケーブルとを備える。第2同軸ケーブルの全体と、第1同軸ケーブルの長さ方向の一部とは、互いに容量結合するように平行に配置されている。
【0006】
第1同軸ケーブルの一方端と第2同軸ケーブルの一方端とは、揃えて配置されており、それぞれの中心導体は互いに接続されている。そして、これら第1同軸ケーブルの一方端の外導体と第2同軸ケーブルの一方端の外導体とが、バランの平衡端子となる。第1同軸ケーブルの他方端端部が、バランの不平衡端子となる。平衡端子のインピーダンスは、互いに容量結合した第1同軸ケーブルの外導体および第2同軸ケーブルの外導体を平衡フィーダとみなした場合の平衡フィーダのインピーダンスに等しくなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ham-Radio-MagazineMARCH1980 _3 Page:19-20
【非特許文献2】Published in: Proceedings of the IRE(Volume: 45, Issue: 12, December1957) Page:1628-1631
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来の高周波バランでは、インピーダンス比1:1で狭帯域を実現させながら、ロバーツバルンのような不平衡側の中心導体を直流的に平衡側と絶縁する高周波バランを容易な構造で実現することは、難しかった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、インピーダンス比1:1で狭帯域を持たせつつ不平衡側の中心導体を直流的に平衡側から絶縁する高周波バランを容易な構造で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の高周波バランは、第1端と第2端とを有する線状導体からなる中心導体と、中心導体の周部を覆う所定厚みの誘電体層と、誘電体層の外周面を覆う外導体と、を備える。
【0011】
外導体は、外導体が形成されていない外導体分断部を備える。外導体分断部の第2端側の端部は、第2端を基準とした第1端側における高周波バランが伝送する高周波信号の波長の1/2より短い位置にある。第2端は、中心導体が外導体に接続されていない開放端である。中心導体、誘電体層、および、外導体からなる構造体は、環状である。第2端は、外導体分断部よりも第1端側の外導体に電気的に接続されている。
【0012】
第1端が不平衡端子であり、外導体における外導体分断部の第1端側の端部と第2端側の端部とが平衡端子である。
【0013】
この構成では、平衡線路と不平衡線路のインピーダンスが一致する。また、不平衡側の中心導体を直流的に平衡側から絶縁できる。開放端と外導体分断部との間の長さが、高周波バランで伝送する高周波信号の波長の1/2よりも短いことで、不平衡平衡変換を実現可能な周波数帯域の狭帯域化が可能になる。これにより、高周波バランは、インピーダンス比1:1で狭帯域を持たせつつ不平衡側の中心導体を直流的に平衡側から絶縁する高周波バランを容易な構造で実現できる。
【0014】
この発明の高周波バランは、第1同軸ケーブル、第2同軸ケーブル、第3同軸ケーブルを備える。第1同軸ケーブルは、第1中心導体、第1誘電体層、および、第1外導体を備え、第1端と第2端を有する。第2同軸ケーブルは、第2中心導体、第2誘電体層、および、第2外導体を備え、第3端と第4端とを有する。第3同軸ケーブルは、第3中心導体、第3誘電体層、および、第3外導体を備え、第5端と第6端とを有する。
【0015】
第1同軸ケーブルは、第2端から第1端へ所定長さの位置において、第1外導体を備えない外導体分断部を備える。
【0016】
第2同軸ケーブルの長さおよび第3同軸ケーブルの長さは、第1同軸ケーブルの第2端と外導体分断部との間の長さと略同じである。第2同軸ケーブルは、第3端と第1同軸ケーブルの第2端とが揃えて配置された状態で、前記第1同軸ケーブルに平行に配置される。第3同軸ケーブルは、第6端が第2同軸ケーブルの第4端に近接し、かつ、離間した状態で、第1同軸ケーブルに平行に配置される。第1外導体、第2外導体、および、第3外導体は、導電性接合材で電気的に接続される。
【0017】
第1同軸ケーブルの第2端は開放端である。第2同軸ケーブルの第3端では、第2中心導体が第2外導体に接続される。第3同軸ケーブルの第5端では、第3中心導体が第3外導体に接続される。第2同軸ケーブルの第3端と第3同軸ケーブルの第5端とは、グランド電位と略同電位である。
【0018】
第1同軸ケーブルの第1端は、不平衡端子である。第2同軸ケーブルの第2中心導体の第4端側の端部と、第3同軸ケーブルの第3中心導体の第6端側の端部とは、平衡端子である。
【0019】
この構成では、例えば、第1同軸ケーブルの第1端から入力された不平衡信号の高周波信号は、第1同軸ケーブルを伝送する。第1同軸ケーブルを伝送する信号は、第2同軸ケーブルと第3同軸ケーブルに結合し、第2同時ケーブルの第4端と第3同軸ケーブルの第5端から平衡信号の高周波信号として出力される。この際、第1同軸ケーブルの外導体分断部の形成位置を適切に設定するだけで、高精度な特性の高周波バランを実現できる。ここでの高精度な特性とは、インピーダンス比1:1で狭帯域を持たせつつ不平衡側の中心導体を直流的に平衡側から絶縁し、伝送する高周波信号を低損失で平衡不平衡変換する特性である。
【0020】
この発明の高周波バランでは、第2端と外導体分断部との間の長さは、高周波バランが伝送する高周波信号の波長の約0.4倍である。この構成では、優れた伝送特性(通過特性、反射特性)を実現できる。
【0021】
この発明の高周波バランでは、第2端と外導体分断部との間の長さは、高周波信号の波長の0.395倍である。この構成では、さらに優れた伝送特性(通過特性、反射特性)を実現できる。
【0022】
この発明の高周波バランでは、第1同軸ケーブル、第2同軸ケーブル、および、第3同軸ケーブルからなる構造体は、環状である。第3端と第5端とが近接して電気的に接続されている。この構成では、第2同軸ケーブルと第3同軸ケーブルのグランド電位の差が小さくなる。これにより、さらに優れた伝送特性を実現できる。
【0023】
この発明の高周波バランは、グランド用導電体を備える。第3端と第5端とは、グランド用導電体を通じて電気的に接続されている。この構成では、第2同軸ケーブルと第3同軸ケーブルのグランド電位の差が小さくなる。これにより、さらに優れた伝送特性を実現できる。
【0024】
この発明の高周波バランは、第4同軸ケーブルと第5同軸ケーブルとを備える。第4同軸ケーブルは、第4中心導体、第4誘電体層、および、第4外導体を備え、第7端と第8端とを有する。第5同軸ケーブルは、第5中心導体、第5誘電体層、および、第5外導体を備え、第9端と第10端とを有する。第4同軸ケーブルの長さは、第2同軸ケーブルの長さと略同じである。第5同軸ケーブルの長さは、第3同軸ケーブルの長さと略同じである。
【0025】
第4同軸ケーブルの第7端は、第4中心導体と第4外導体が接続される短絡端であって、第2同軸ケーブルの第3端に電気的に接続されている。第4同軸ケーブルの第8端は、第4中心導体と第4外導体が接続されておらず、第4外導体に第2中心導体が接続されている。第5同軸ケーブルの第9端は、第5中心導体と第5外導体が接続される短絡端であって、第3同軸ケーブルの第5端に電気的に接続されている。第5同軸ケーブルの第10端は、第5中心導体と第5外導体が接続されておらず、第5外導体に第3中心導体が接続されている。
【0026】
第1同軸ケーブルの第1端は、不平衡端子であり、第4同軸ケーブルの第4中心導体の第8端側の端部と、第5同軸ケーブルの第5中心導体の第10端側の端部とは、平衡端子である。
【0027】
この構成では、平衡端子を構成する同軸ケーブルの対が複数段化されるため、更なる狭帯域化が可能になる。
【0028】
この発明の高周波フィルタは、上述のいずれかの構成の高周波バランを備えた第1高周波バランと、上述のいずれかの構成の高周波バランを備えた第2高周波バランと、を備える。第1高周波バランの平衡端子と第2高周波バランの平衡端子とは、それぞれ接続されている。
【0029】
上述の高周波バランは、伝送対象の高周波信号の周波数を含む所定周波数幅の周波数帯域で低損失な伝送を実現する。したがって、この二つの高周波バランの平衡端子をつなぐことで、両端が不平衡出力端子の高周波フィルタが実現できる。そして、上述の高周波バランを備えることで、高周波フィルタは、通貨帯域で低損失であり、減衰帯域を大きな減衰を得られるフィルタ特性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。
【
図4】
図4(A)は、第2の実施形態に係る高周波バランの第1側面図であり、
図4(B)は、第2の実施形態に係る高周波バランの第2側面図であり、
図4(C)は、第2の実施形態に係る高周波バランの上面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、第2の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面図であり、
図6(B)は、その側面断面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第3の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面図である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【
図10】
図10は、第5の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【
図11】
図11は、第6の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【
図12】
図12は、第7の実施形態に係る高周波フィルタの外観斜視図である。
【
図13】
図13は、第7の実施形態に係る高周波フィルタの通過特性を示すグラフである。
【
図14】
図14は、第8の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面断面図である。
【
図15】
図15は、第8の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。
【
図16】
図16は、絶縁性シール膜を備える高周波バランを作成するための直線状の構造体を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図2は、第1の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面断面図である。
【0032】
図1、
図2に示すように、高周波バラン1は、第1同軸ケーブル10、引き出し導体191、引き出し導体192、導電性接合材70、および、同軸コネクタ80を備える。
【0033】
第1同軸ケーブル10は、第1中心導体11、第1誘電体層12、および、第1外導体13を備える。第1中心導体11は、例えば銅等の金属からなり、線状導体である。第1誘電体層12は、所定の誘電率を有する。第1誘電体層12は、第1中心導体11の周部を所定厚みで覆う。第1外導体13は、例えば銅等の金属であり、所定厚みの筒状である。第1外導体13は、第1誘電体層12の外周面を覆っている。
【0034】
第1同軸ケーブル10は、所定の特性インピーダンスに設定されている。例えば、第1同軸ケーブル10の特性インピーダンスは、50Ωに設定されている。
【0035】
第1同軸ケーブル10は、延びる方向の一方端に第1端101を有し、他方端に第2端102を有する。第1同軸ケーブル10の第1端101は、同軸コネクタ80に接続される。第1同軸ケーブル10の第2端102は、開放端であり、第1中心導体11と第1外導体13とが離間している。
【0036】
第1同軸ケーブル10は、第2端102から第1端101の方向へ所定長さLAの位置において、外導体分断部SEC0を備える。外導体分断部SEC0は、第1外導体13が全周にわたって形成されていない部分であり、第1誘電体層12が露出している。外導体分断部SEC0の一方端は、第2端102から第1端101の方向へ所定長さLAの位置にある。長さLAは、高周波バラン1で伝送する高周波信号の波長λに基づいて設定される。具体的には、長さLAは、波長λの約0.4倍であり、より好ましくは、波長λの0.395倍である。
【0037】
なお、外導体分断部SEC0の幅(一方端(第2端102側の端)と他方端(第1端101側の端)との距離)は、できる限り短いことが好ましく、少なくとも、引き出し導体191と引き出し導体192とが接触しない距離である。
【0038】
これにより、第1同軸ケーブル10は、通常の同軸ケーブルの構成である第1部分SEC1と、通常の同軸ケーブルの構成である第2部分SEC2と、第1部分SEC1と第2部分SEC2との間の外導体分断部SEC0によって構成される。第1部分SEC1は、第1同軸ケーブル10における外導体分断部SEC0よりも第1端101側の部分である。第2部分SEC2は、第1同軸ケーブル10における外導体分断部SEC0よりも第2端102側の部分である。第1部分SEC1の長さは、第2部分SEC2の長さLAよりも長ければ、適宜選択できる。
【0039】
第1部分SEC1における外導体分断部SEC0側の端部103には、第1外導体13に対して導電性接合材70を用いて、引き出し導体191が接続されている。
【0040】
第2部分SEC2における外導体分断部SEC0側の端部104には、第1外導体13に対して導電性接合材70を用いて、引き出し導体192が接続されている。
【0041】
そして、
図1に示すように、第1同軸ケーブル10は、環状に構成されている。第2端102における第1外導体13は、第1部分SEC1の第1外導体13の所定位置に、導電性接合材70を用いて、電気的物理的に接続されている。さらに、第1部分SEC1の第1外導体13は、グランド電位に接続されている。
【0042】
このような構成によって、同軸コネクタ80が接続する第1同軸ケーブル10の第1端101が、高周波バラン1の不平衡端子となる。そして、引き出し導体191と引き出し導体192とからなる対の導体が、高周波バラン1の平衡端子となる。これにより、高周波バラン1は、不平衡平衡変換機能を実現できる。
【0043】
(高周波バラン1の特性)
高周波バラン1が上述の構成を備えることで、
図3に示すような反射特性(S11特性)が得られる。
図3は、第1の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。
図3における周波数ftは、高周波バラン1で伝送する高周波信号の周波数である。
【0044】
図3に示すように、上述の構成を備えることによって、高周波バラン1は、伝送する高周波信号の周波数ftにおいて、反射損失を大幅に低減できる。この際、
図3に示すように、反射損失の減衰極は、非特許文献1のコリンズバランより急峻な特性になる。これにより、高周波バラン1は、周波数ftを中心周波数として、狭帯域で不平衡平衡変換を実現しながら、低損失に伝送できる。
【0045】
また、高周波バラン1が上述の構成を備えることで、不平衡線路の特性インピーダンスと平衡線路の特性インピーダンスとは、略同じになる。例えば、不平衡線路の特性インピーダンスが50Ωであれば、平衡線路の特性インピーダンスも50Ωになる。これにより、高周波バラン1は、これまで容易な構造では実現が難しかった低特性インピーダンスの平衡線路を含む不平衡平衡変換器を実現できる。
【0046】
さらに、高周波バラン1は、不平衡線路の中心導体を直流的に平衡線路を構成する導体から絶縁できる。
【0047】
以上のように、高周波バラン1は、平衡線路と不平衡線路のインピーダンス比1:1で狭帯域を持たせつつ不平衡側の中心導体を直流的に平衡側から絶縁する高周波バランを容易な構造で実現できる。
【0048】
なお、高周波バラン1が形作る環状は、真円に近いことが好ましいが、ある程度扁平した円であってもよい。
【0049】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。
図4(A)は、第2の実施形態に係る高周波バランの第1側面図であり、
図4(B)は、第2の実施形態に係る高周波バランの第2側面図であり、
図4(C)は、第2の実施形態に係る高周波バランの上面図である。なお、ここでの第1側面図、第2側面、上面図の名称は、使用時の方向を規定する名称ではなく、高周波バランの構成を説明するために便宜的に付けた名称である。すなわち、例えば、上面図で見える面を上側として使用しなければならないものではない。
図5は、第2の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
図6(A)は、第2の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面図であり、
図6(B)は、その側面断面図である。
【0050】
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)、
図5、
図6(A)、
図6(B)に示すように、高周波バラン1Aは、第1同軸ケーブル10、第2同軸ケーブル20、第3同軸ケーブル30、および、同軸コネクタ80を備える。
【0051】
(第1同軸ケーブル10)
第1同軸ケーブル10は、第1中心導体11、第1誘電体層12、および、第1外導体13を備える。第1中心導体11は、例えば銅等の金属からなり、線状導体である。第1誘電体層12は、所定の誘電率を有する。第1誘電体層12は、第1中心導体11の周部を所定厚みで覆う。第1外導体13は、例えば銅等の金属であり、所定厚みの筒状である。第1外導体13は、第1誘電体層12の外周面を覆っている。
【0052】
第1同軸ケーブル10は、所定の特性インピーダンスに設定されている。例えば、第1同軸ケーブル10の特性インピーダンスは、50Ωに設定されている。
【0053】
第1同軸ケーブル10は、延びる方向の一方端に第1端101を有し、他方端に第2端102を有する。第1同軸ケーブル10の第1端101は、同軸コネクタ80に接続される。第1同軸ケーブル10の第2端102は、開放端であり、第1中心導体11と第1外導体13とが離間している。
【0054】
第1同軸ケーブル10は、第2端102から第1端101の方向へ所定長さLAの位置において、外導体分断部SEC0を備える。外導体分断部SEC0は、第1外導体13が全周にわたって形成されていない部分であり、第1誘電体層12が露出している。外導体分断部SEC0の一方端は、第2端102から第1端101の方向へ所定長さLAの位置にある。長さLAは、高周波バラン1で伝送する高周波信号の波長λに基づいて設定される。具体的には、長さLAは、波長λの約0.4倍であり、より好ましくは、波長λの0.395倍である。
【0055】
外導体分断部SEC0の幅(一方端(第2端102側の端)と他方端(第1端101側の端)との距離)は、できる限り短いことが好ましく、少なくとも、後述する第2中心導体21の端部E212と第3中心導体31の端部E312とが接触しない距離である。
【0056】
これにより、第1同軸ケーブル10は、通常の同軸ケーブルの構成である第1部分SEC1と、通常の同軸ケーブルの構成である第2部分SEC2と、第1部分SEC1と第2部分SEC2との間の外導体分断部SEC0によって構成される。第1部分SEC1は、第1同軸ケーブル10における外導体分断部SEC0よりも第1端101側の部分である。第2部分SEC2は、第1同軸ケーブル10における外導体分断部SEC0よりも第2端102側の部分である。第1部分SEC1の長さは、第2部分SEC2の長さLAよりも長ければ、適宜選択できる。
【0057】
(第2同軸ケーブル20)
第2同軸ケーブル20は、第2中心導体21、第2誘電体層22、および、第2外導体23を備える。第2中心導体21は、例えば銅等の金属からなり、線状導体である。第2誘電体層22は、所定の誘電率を有する。第2誘電体層22は、第2中心導体21の周部を所定厚みで覆う。第2外導体23は、例えば銅等の金属であり、所定厚みの筒状である。第2外導体23は、第2誘電体層22の外周面を覆っている。
【0058】
第2同軸ケーブル20は、所定の特性インピーダンスに設定されている。例えば、第2同軸ケーブル20の特性インピーダンスは、50Ωに設定されている。
【0059】
第2同軸ケーブル20は、延びる方向の一方端に第3端201を有し、他方端に第4端202を有する。第2同軸ケーブル20の長さLBは、第1同軸ケーブル10の第2端102から外導体分断部SEC0までの長さLAと略同じである。
【0060】
第2同軸ケーブル20の第3端201は、短絡端である。具体的には、第2中心導体21の第3端201側の端部E211は、第2外導体23に電気的物理的に接続されている。
【0061】
第2同軸ケーブル20の第4端202は、開放端である。具体的には、第2中心導体21の第4端202側の端部E212は、第4端202から外部に所定長で突出している。
【0062】
(第3同軸ケーブル30)
第3同軸ケーブル30は、第3中心導体31、第3誘電体層32、および、第3外導体33を備える。第3中心導体31は、例えば銅等の金属からなり、線状導体である。第3誘電体層32は、所定の誘電率を有する。第3誘電体層32は、第3中心導体31の周部を所定厚みで覆う。第3外導体33は、例えば銅等の金属であり、所定厚みの筒状である。第3外導体33は、第3誘電体層32の外周面を覆っている。
【0063】
第3同軸ケーブル30は、所定の特性インピーダンスに設定されている。例えば、第3同軸ケーブル30の特性インピーダンスは、50Ωに設定されている。
【0064】
第3同軸ケーブル30は、延びる方向の一方端に第5端301を有し、他方端に第6端302を有する。第3同軸ケーブル30の長さLBは、第1同軸ケーブル10の第2端102から外導体分断部SEC0までの長さLAと略同じである。
【0065】
第3同軸ケーブル30の第5端301は、短絡端である。具体的には、第3中心導体31の第5端301側の端部E311は、第3外導体33に電気的物理的に接続されている。
【0066】
第3同軸ケーブル30の第6端302は、開放端である。具体的には、第3中心導体31の第6端302側の端部E312は、第6端302から外部に所定長で突出している。
【0067】
(第1同軸ケーブル10、第2同軸ケーブル20、および、第3同軸ケーブル30の固定構造)
まずは、固定構造を分かり易くするため、
図6に示す直線状の構造体1ASを参照して説明する。
【0068】
第2同軸ケーブル20と第3同軸ケーブル30とは、第1同軸ケーブル10に平行に配置される。この際、第1同軸ケーブル10の第2端102から第1端101に向かう方向において、第2同軸ケーブル20、第3同軸ケーブル30の順に配置される。さらに、第2同軸ケーブル20と第3同軸ケーブル30とは離間して配置される。より具体的には、第2同軸ケーブル20と第3同軸ケーブル30とは、次のように、第1同軸ケーブル10に対して配置される。
【0069】
第2同軸ケーブル20は、第3端201が第1同軸ケーブル10の第2端102と揃う位置、より具体的には、第3端201と第2端102とが面一となる位置に配置される。なお、ここでの面一とは、高周波バラン1としての特性に影響を与えない程度の取り付け誤差を含む。
【0070】
第2同軸ケーブル20は、第4端202が第3端201よりも第1同軸ケーブル10の第1端101側になるように配置される。これにより、第2同軸ケーブル20の第4端202は、第1同軸ケーブル10の第2部分SEC2における外導体分断部SEC0側の端部104(外導体分断部SEC0の一方端)と略同じ位置になる。
【0071】
第3同軸ケーブル30は、第6端302が第1同軸ケーブル10の第1部分SEC1における外導体分断部SEC0側の端部103(外導体分断部SEC0の他方端)と揃う位置、より具体的には、第6端302と端部103とが面一となる位置に配置される。なお、ここでの面一とは、高周波バラン1としての特性に影響を与えない程度の取り付け誤差を含む。
【0072】
第3同軸ケーブル30は、第5端301が第6端302よりも第1同軸ケーブル10の第1端101側になるように配置される。
【0073】
このような構成において、第2同軸ケーブル20の第2外導体23は、第1同軸ケーブル10の第1外導体13に対して、はんだ等の導電性接合材70を用いて固定され、電気的に接続される。この際、第2外導体23は、少なくとも第3端201の位置およびその近傍領域、第4端202の位置およびその近傍領域において、第1外導体13に対して導電性接合材70を用いて固定される。
【0074】
第3同軸ケーブル30の第3外導体33は、第1同軸ケーブル10の第1外導体13に対して、導電性接合材70を用いて固定され、電気的に接続される。この際、第3外導体33は、少なくとも第5端301の位置およびその近傍領域、第6端302の位置およびその近傍領域において、第1外導体13に対して導電性接合材70を用いて固定される。
【0075】
このような構造体1ASを湾曲させて、
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)、
図5に示すように、環状体とすることで、高周波バラン1Aの形状が実現される。
【0076】
この際、第1同軸ケーブル10の第2端102、および、第2同軸ケーブル20の第3端201は、第3同軸ケーブル30の第5端301に近接する位置に配置される。そして、第2端102、第3端201、および、第5端301が近接する位置を含む第1外導体13、第2外導体23、および、第3外導体33は、導電性接合材70を用いて固定され、電気的に接続される。
【0077】
(高周波バラン1Aの特性)
このような構成において、第1外導体13、第2外導体23、第3外導体33は、グランド電位に接続される。同軸コネクタ80を通じて入力された不平衡信号である高周波信号は、第1同軸ケーブル10を伝送する。上述の構成によって、第2同軸ケーブル20と第3同軸ケーブル30とは、それぞれに第1同軸ケーブル10に電磁気的(高周波的)に結合している。これにより、第1同軸ケーブル10を伝送する高周波信号の発生する電磁界に結合して、第2同軸ケーブル20と第3同軸ケーブル30とに所定の位相差の高周波信号が伝送する。第2同軸ケーブル20と第3同軸ケーブル30の高周波信号は、第2同軸ケーブル20の第2中心導体21の端部E212と第3同軸ケーブル30の第3中心導体31の端部E312から外部に取り出し可能である。すなわち、第2同軸ケーブル20と第3同軸ケーブル30の高周波信号による平衡信号からなる高周波信号は、第2同軸ケーブル20の第2中心導体21の端部E212と第3同軸ケーブル30の第3中心導体31の端部E312から出力される。
【0078】
このように、同軸コネクタ80が接続する第1同軸ケーブル10の第1端101が、高周波バラン1Aの不平衡端子となる。また、第2同軸ケーブル20の第2中心導体21の端部E212と第3同軸ケーブル30の第3中心導体31の端部E312とからなる対の導体が、高周波バラン1Aの平衡端子となる。これにより、高周波バラン1Aは、不平衡平衡変換機能を実現できる。
【0079】
そして、高周波バラン1Aが上述の構成を備えることで、
図7に示すような反射特性(S11特性)が得られる。
図7は、第2の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。
図7における周波数ftは、高周波バラン1Aで伝送する高周波信号の周波数である。
【0080】
図7に示すように、上述の構成を備えることによって、高周波バラン1Aは、伝送する高周波信号の周波数ftにおいて、反射損失を大幅に低減でき、反射特性の減衰も急峻である。これにより、高周波バラン1は、周波数ftを中心周波数とする狭帯域において高周波信号の不平衡平衡変換を実現しながら、低損失に伝送できる。
【0081】
このように、高周波バラン1Aは、第1同軸ケーブル10の外導体分断部SEC0の形成位置を適切に設定し、これに合わせて、第2同軸ケーブル20および第3同軸ケーブル30を第1同軸ケーブル10に電気的に接続して固定するだけで、高精度な特性(伝送する高周波信号を低損失で、平衡不平衡変換する特性)を実現できる。したがって、高周波バラン1Aは、高精度な特性を容易な構造で実現できる。
【0082】
さらに、高周波バラン1Aは、上述の構成を備えることで、不平衡線路(第1同軸ケーブル10)の特性インピーダンスと、平衡線路(第2同軸ケーブル20と第3同軸ケーブル30の対)の特性インピーダンスとは、略同じになる。例えば、不平衡線路の特性インピーダンスが50Ωであれば、平衡線路の特性インピーダンスも50Ωになる。これにより、高周波バラン1Aは、これまで容易な構造では実現が難しかった低特性インピーダンスの平衡線路を含む不平衡平衡変換器を実現できる。
【0083】
なお、高周波バラン1Aが形作る環状は、真円に近いことが好ましいが、ある程度扁平した円であってもよい。例えば、高周波バラン1は、円形(楕円形)の縦横比が1:2から2:1(縦の直径が横の直径の1/2倍以上2倍以下)であれば、真円(1:1)と同様の特性を得られる。
【0084】
また、高周波バラン1Aは、不平衡線路の中心導体を直流的に平衡線路を構成する導体から絶縁できる。
【0085】
[第3実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。
図8は、第3の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面図である。
【0086】
図8に示すように、第3の実施形態に係る高周波バラン1Bは、第2の実施形態に係る高周波バラン1Aに対して、第2同軸ケーブル20Bの長さにおいて異なる。高周波バラン1Bの他の構成は、高周波バラン1Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0087】
第3の実施形態に係る高周波バラン1Bは、第2の実施形態に係る高周波バラン1Aと同様に、
図8の構造体1BSを環状にすることで実現される。
【0088】
高周波バラン1Bは、第2同軸ケーブル20Bを備える。第2同軸ケーブル20Bは、第2中心導体21B、第2誘電体層22B、および、第2外導体23Bを備える。
【0089】
第2同軸ケーブル20Bの長さLBBは、第1同軸ケーブル10の第2端102から外導体分断部SEC0までの長さLBよりも短い。長さLBBは、長さLAの85%以上であることが好ましい。
【0090】
第2同軸ケーブル20Aの第4端202は、第1同軸ケーブル10の第2部分SEC2における外導体分断部SEC0側の端部104と略同じ位置になる。すなわち、第2同軸ケーブル20Aの第3端201は、第1同軸ケーブル10の第2端102よりも第1端101側に配置される。
【0091】
このように、第2同軸ケーブル20Aの長さは、上述の範囲内で適宜設定できる。そして、第2同軸ケーブル20Aの長さによって、反射損失が小さい周波数を調整できる。これにより、高周波バラン1Bは、高周波バラン1Aと同様の作用効果を実現できるとともに、伝送する高周波信号の周波数ftに応じて特性を調整でき、この周波数ftで低損失な不平衡平衡変換器を実現できる。
【0092】
[第4実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。
図9は、第4の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0093】
図9に示すように、第4の実施形態に係る高周波バラン1Cは、第2の実施形態に係る高周波バラン1Aに対して、グランド用導電体90を備える点、全体の形状において異なる。高周波バラン1Cの他の構成は、高周波バラン1Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0094】
高周波バラン1Cは、グランド用導電体90を備える。グランド用導電体90は、例えば金属の平板である。
【0095】
第1同軸ケーブル10、第2同軸ケーブル20、および、第3同軸ケーブル30は、環状を形成しておらず、延びる方向の途中位置で屈曲する形状である。
【0096】
第1同軸ケーブル10の第1外導体13における第2端102の部分およびその近傍部分、第2同軸ケーブル20の第2外導体23における第3端201の部分およびその近傍部分、第3同軸ケーブル30における第3外導体33における第5端301の部分およびその近傍部分は、導電性接合材70によってグランド用導電体90に固定され、電気的に接続される。
【0097】
第2同軸ケーブル20の第2中心導体21の端部E212と、第3同軸ケーブル30の第3中心導体31の端部E312とは、グランド用導電体90から所定距離(グランド用導電体90に対して電磁界的に略結合しない程度の距離)で離間している。
【0098】
この構成により、グランド用導電体90を通じて、第1外導体13の第2端102、第2外導体23の第3端201、および、第3外導体33の第5端301は、高周波バラン1Cで伝送する高周波信号の周波数において同電位とみなせる。
【0099】
これにより、高周波バラン1Cは、高周波バラン1Aと同様の作用効果を奏する。
【0100】
[第5実施形態]
本発明の第5の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。
図10は、第5の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0101】
図10に示すように、第5の実施形態に係る高周波バラン1Dは、第2の実施形態に係る高周波バラン1Aに対して、第2端102および第3端201の固定態様(接続態様)において異なる。高周波バラン1Dの他の構成は、高周波バラン1Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0102】
高周波バラン1Dでは、第2端102および第3端201が第1端101側を向くように配置され、導電性接合材70に固定されて、電気的に接続される。このような固定態様(接続態様)であっても、高周波バラン1Dは、高周波バラン1Aと同様の作用効果を奏する。
【0103】
[第6実施形態]
本発明の第6の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。
図11は、第6の実施形態に係る高周波バランの外観斜視図である。
【0104】
図11に示すように、第6の実施形態に係る高周波バラン1Eは、第2の実施形態に係る高周波バラン1Aに対して、第2端102および第3端201の固定態様(接続態様)において異なる。高周波バラン1Eの他の構成は、高周波バラン1Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0105】
高周波バラン1Eでは、第2端102および第3端201が第1外導体13および第3外導体33の表面に対向するように配置され、導電性接合材70に固定されて、電気的に接続される。このような固定態様(接続態様)であっても、高周波バラン1Eは、高周波バラン1Aと同様の作用効果を奏する。
【0106】
[第7実施形態]
本発明の第7の実施形態に係る高周波フィルタについて、図を参照して説明する。
図12は、第7の実施形態に係る高周波フィルタの外観斜視図である。
【0107】
図12に示すように、高周波フィルタ2は、高周波バラン1X1と高周波バラン1X2とを備える。高周波バラン1X1と高周波バラン1X2は、上述の第2の実施形態に係る高周波バラン1Aと同様の構成を備える。
【0108】
高周波バラン1X1は、第1同軸ケーブル10X1、第2同軸ケーブル20X1、第3同軸ケーブル30X1、および、同軸コネクタ80X1を備える。また、高周波バラン1X1は、高周波バラン1X1の単体としての平衡端子となる端部E212X1および端部E312X1を備える。
【0109】
高周波バラン1X2は、第1同軸ケーブル10X2、第2同軸ケーブル20X2、第3同軸ケーブル30X2、および、同軸コネクタ80X2を備える。また、高周波バラン1X2は、高周波バラン1X2の単体としての平衡端子となる端部E212X2および端部E312X2を備える。
【0110】
高周波バラン1X1の端部E212X1と高周波バラン1X2の端部E312X2とは互いに接続される。高周波バラン1X1の端部E312X1と高周波バラン1X2の端部E212X2とは互いに接続される。
【0111】
高周波バラン1X1と高周波バラン1X2は、上述の
図7に示すような反射特性を有する。
【0112】
したがって、高周波バラン1X1の平衡端子と高周波バラン1X2の平衡端子とが互いに接続された高周波フィルタ2は、同軸コネクタ80X1を一方の入出力端子とし、同軸コネクタ80X2を他方の入出力端子とするフィルタとして機能する。
【0113】
図13は、第7の実施形態に係る高周波フィルタの通過特性を示すグラフである。
図13に示すように、高周波フィルタ2は、伝送する高周波信号の周波数ftを含む所定の周波数帯域で低損失な通過帯域を形成できる。そして、高周波フィルタ2は、通貨帯域の高周波数側と低周波数側の両方に、減衰極および減衰域を形成できる。これにより、高周波フィルタ2は、優れた通過特性のフィルタを容易な構造で実現できる。
【0114】
[第8実施形態]
本発明の第8の実施形態に係る高周波バランについて、図を参照して説明する。
図14は、第8の実施形態に係る高周波バランを形作るための直線状の構造体を示す側面断面図である。
【0115】
図14に示すように、第8の実施形態に係る高周波バラン1Fは、第2の実施形態に係る高周波バラン1Aに対して、第4同軸ケーブル40および第5同軸ケーブル50をさらに備える点で異なる。言い換えれば、高周波バラン1Aが二段構成であるのに対して、高周波バラン1Fは三段構成である。
【0116】
(第4同軸ケーブル40)
第4同軸ケーブル40は、概略的には第2同軸ケーブル20と同様の構成を備える。したがって、以下では、第2同軸ケーブル20と異なる箇所のみを説明する。
【0117】
第4同軸ケーブル40は、第4中心導体41、第4誘電体層42、および、第4外導体43を備える。
【0118】
第4同軸ケーブル40は、所定の特性インピーダンスに設定されている。例えば、第4同軸ケーブル40の特性インピーダンスは、第2同軸ケーブル20と同様に50Ωに設定されている。
【0119】
第4同軸ケーブル40は、延びる方向の一方端に第7端401を有し、他方端に第8端402を有する。第4同軸ケーブル40の長さは、第2同軸ケーブル20と略同じである。
【0120】
第4同軸ケーブル40の第7端401は、短絡端である。具体的には、第4中心導体41の第7端401側の端部E411は、第4外導体43に電気的物理的に接続されている。
【0121】
第4同軸ケーブル40の第8端402は、開放端である。具体的には、第4中心導体41の第8端402側の端部E412は、第8端402から外部に所定長で突出している。
【0122】
(第5同軸ケーブル50)
第5同軸ケーブル50は、概略的には第3同軸ケーブル30と同様の構成を備える。したがって、以下では、第3同軸ケーブル30と異なる箇所のみを説明する。
【0123】
第5同軸ケーブル50は、第5中心導体51、第5誘電体層52、および、第5外導体53を備える。
【0124】
第5同軸ケーブル50は、所定の特性インピーダンスに設定されている。例えば、第5同軸ケーブル50の特性インピーダンスは、第3同軸ケーブル30と同様に50Ωに設定されている。
【0125】
第5同軸ケーブル50は、延びる方向の一方端に第9端501を有し、他方端に第10端502を有する。第5同軸ケーブル50の長さは、第3同軸ケーブル30と略同じである。
【0126】
第5同軸ケーブル50の第9端501は、短絡端である。具体的には、第5中心導体51の第9端501側の端部E511は、第5外導体53に電気的物理的に接続されている。
【0127】
第5同軸ケーブル50の第10端502は、開放端である。具体的には、第5中心導体51の第10端502側の端部E512は、第10端502から外部に所定長で突出している。
【0128】
(第1同軸ケーブル10、第2同軸ケーブル20、第3同軸ケーブル30、第4同軸ケーブル40、および、第5同軸ケーブル50の固定構造)
第2同軸ケーブル20および第3同軸ケーブル30の第1同軸ケーブル10に対する接続態様は、第2の実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0129】
第4同軸ケーブル40は、第2同軸ケーブル20に対して略平行に配置される。
【0130】
第4同軸ケーブル40の第7端401およびその近傍では、第2同軸ケーブル20の第2外導体23と第2中心導体21との短絡点と、第4同軸ケーブル40の第4外導体43と第4中心導体41との短絡点とが電気的に接続されている。
【0131】
第4同軸ケーブル40の第8端402では、第2同軸ケーブル20の第2中心導体21の端部E212は、第4同軸ケーブル40の第4外導体43に接続され、第2外導体23には接続されていない。
【0132】
第5同軸ケーブル50は、第3同軸ケーブル30に対して略平行に配置される。
【0133】
第5同軸ケーブル50の第9端501およびその近傍では、第3同軸ケーブル30の第3外導体33と第3中心導体31との短絡点と、第5同軸ケーブル50の第5外導体53と第5中心導体51との短絡点とが電気的に接続されている。
【0134】
第5同軸ケーブル50の第10端502では、第3同軸ケーブル30の第3中心導体31の端部E312は、第6同軸ケーブル60の第6外導体63に接続され、第3外導体33には接続されていない。
【0135】
このように、高周波バラン1Fは、高周波バラン1Aに示したような平衡線路を形成するための対の同軸ケーブルを二段接続した構成を備える。
【0136】
(高周波バラン1Fの特性)
高周波バラン1Fが上述の構成を備えることで、
図15に示すような反射特性(S11特性)が得られる。
図15は、第8の実施形態に係る高周波バランの反射特性を示すグラフである。
図15における周波数ftは、高周波バラン1Fで伝送する高周波信号の周波数である。
【0137】
図15に示すように、上述の構成を備えることによって、高周波バラン1Fは、高周波バラン1Aと同様に、伝送する高周波信号の周波数ftにおいて、反射損失を大幅に低減できる。
【0138】
この際、
図15に示すように、平衡線路を構成する同軸ケーブルの対を二段にすることで、平衡線路を構成する同軸ケーブルの対が一段の場合よりも、反射損失の減衰帯域の幅は狭くなる。これにより、高周波バラン1Fは、周波数ftを中心周波数として、さらに狭帯域の不平衡平衡変換を実現できる。 なお、本実施形態では、平衡線路を構成する同軸ケーブルの対が二段の場合を示したが、平衡線路を構成する同軸ケーブルの対が三段以上であってもよい。
【0139】
なお、上述の各実施形態では、同軸ケーブルの両端のみを電気的に接続する態様を採用している。しかしながら、本願の高周波バランは、セミリジッドケーブルやセミフレキケーブル等の同軸外被が露出している構造であり、両端のみの接続が可能であるのなら、同軸外被間に沿って複数のあるいは連続した電気的接続を行っても構わない。
【0140】
また、上述の各実施形態では、外導体(同軸外被)の外周面に絶縁性シールド膜を備えない同軸ケーブルを例に説明した。しかしながら、外導体の外周面に絶縁性シールド膜を備える同軸ケーブルでも、本発明の各実施形態の構成を実現できる。この場合、外導体を他の導体に接続する箇所では、絶縁性シールド膜を除去すればよい。
【0141】
具体的には、
図16に示すような構成であればよい。
図16は、絶縁性シール膜を備える高周波バランを作成するための直線状の構造体を示す側面断面図である。
【0142】
図16に示すように、高周波バランの構造体1GSは、第2の実施形態に係る高周波バラン1Aの構造体1ASに対して、絶縁性シールド膜を備える点で異なる。高周波バランの構造体1GSの他の構成は、高周波バラン1Aの構造体1ASと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0143】
構造体1GSは、第1同軸ケーブル10G、第2同軸ケーブル20G、および第3同軸ケーブル30Gを備える。
【0144】
第1同軸ケーブル10Gは、第2の実施形態に係る第1同軸ケーブル10に対して、絶縁性シールド膜19を備える点で異なる。第1同軸ケーブル10Gは、第1外導体13の外周面に対して、一部を除いて絶縁性シールド膜19で覆っている。絶縁性シールド膜19は、第1同軸ケーブル10Gの第1外導体13における第2同軸ケーブル20Gおよび第3同軸ケーブル30Gとの接続を必要としない箇所に配置される。
【0145】
第2同軸ケーブル20Gは、第2の実施形態に係る第2同軸ケーブル20に対して、絶縁性シールド膜29を備える点で異なる。第2同軸ケーブル20Gは、第2外導体23の外周面に対して、一部を除いて絶縁性シールド膜29で覆っている。絶縁性シールド膜29は、第2同軸ケーブル20Gの第2外導体23における第1同軸ケーブル10Gとの接続を必要としない箇所に配置される。
【0146】
第3同軸ケーブル30Gは、第2の実施形態に係る第3同軸ケーブル30に対して、絶縁性シールド膜39を備える点で異なる。第3同軸ケーブル30Gは、第3外導体33の外周面に対して、一部を除いて絶縁性シールド膜39で覆っている。絶縁性シールド膜39は、第3同軸ケーブル30Gの第3外導体33における第1同軸ケーブル10Gとの接続を必要としない箇所に配置される。
【0147】
第1同軸ケーブル10Gの第1外導体13と第2同軸ケーブル20Gの第2外導体23との接続を必要とする箇所、および、第1同軸ケーブル10Gの第1外導体13と第3同軸ケーブル30Gの第3外導体33との接続を必要とする箇所は、例えば、
図16に示すように、導電性ワイヤWRによって括られている。
【0148】
このような構成であっても、構造体1GSからなる高周波バランは、高周波バラン1と同様の作用効果を奏する。
【0149】
また、上述の各実施形態では、はんだ等の導電性接合材70を用いる態様を示した。しかしながら、所定強度での固定と低抵抗な電気的接続を実現できる態様であれば、はんだ等の導電性接合材70に限るものではない。例えば、スポット溶接、圧着等を採用でき、さらには、導電ワイヤ等で縛り付ける固定方法を採用してもよい。
【0150】
また、上述の各実施形態の構成は、適宜組み合わせが可能であり、それぞれの組み合わせに応じた作用効果を奏することができる。
【0151】
<1> 第1端と第2端とを有する線状導体からなる中心導体と、
前記中心導体の周部を覆う所定厚みの誘電体層と、
前記誘電体層の外周面を覆う外導体と、
を備え、
前記外導体は、前記外導体が形成されていない外導体分断部を備え、
前記外導体分断部の前記第2端側の端部は、前記第2端を基準とした前記第1端側における高周波バランが伝送する高周波信号の波長の1/2より短い位置にあり、
前記第2端は、前記中心導体が前記外導体に接続されていない開放端であり、
前記中心導体、前記誘電体層、および、前記外導体からなる構造体は、環状であり、前記第2端は、前記外導体分断部よりも前記第1端側の前記外導体に電気的に接続されており、
前記第1端が不平衡端子であり、
前記外導体における前記外導体分断部の前記第1端側の端部と前記第2端側の端部とが平衡端子である、高周波バラン。
【0152】
<2> 第1中心導体、第1誘電体層、および、第1外導体を備え、第1端と第2端を有する第1同軸ケーブルと、
第2中心導体、第2誘電体層、および、第2外導体を備え、第3端と第4端とを有する第2同軸ケーブルと、
第3中心導体、第3誘電体層、および、第3外導体を備え、第5端と第6端とを有する第3同軸ケーブルと、
を備え、
前記第1同軸ケーブルは、前記第2端から前記第1端へ所定長さの位置において、前記第1外導体が形成されていない外導体分断部を備え、
前記第2同軸ケーブルの長さおよび前記第3同軸ケーブルの長さは、前記第1同軸ケーブルの前記第2端と前記外導体分断部との間の長さと略同じであり、
前記第2同軸ケーブルは、前記第3端と前記第1同軸ケーブルの前記第2端とが揃えて配置された状態で、前記第1同軸ケーブルに平行に配置され、
前記第3同軸ケーブルは、第6端が前記第2同軸ケーブルの前記第4端に近接し、かつ、離間した状態で、前記第1同軸ケーブルに平行に配置され、
前記第1外導体、前記第2外導体、および、前記第3外導体は、導電性接合材で電気的に接続され、
前記第1同軸ケーブルの前記第2端は開放端であり、
前記第2同軸ケーブルの前記第3端では、前記第2中心導体が前記第2外導体に接続され、
前記第3同軸ケーブルの前記第5端では、前記第3中心導体が前記第3外導体に接続され、
前記第2同軸ケーブルの前記第3端と前記第3同軸ケーブルの前記第5端とは、グランド電位と略同電位であり、
前記第1同軸ケーブルの前記第1端は、不平衡端子であり、
前記第2同軸ケーブルの前記第2中心導体の前記第4端側の端部と、前記第3同軸ケーブルの前記第3中心導体の前記第6端側の端部とは、平衡端子である、高周波バラン。
【0153】
<3> <2>の高周波バランであって、
前記第2端と前記外導体分断部との間の長さは、高周波バランが伝送する高周波信号の波長の約0.4倍である、高周波バラン。
【0154】
<4> <3>の高周波バランであって、
前記第2端と前記外導体分断部との間の長さは、前記高周波信号の波長の0.395倍である、高周波バラン。
【0155】
<5> <2>または<3>の高周波バランであって、
前記第1同軸ケーブル、前記第2同軸ケーブル、および、前記第3同軸ケーブルからなる構造体は、環状であり、
前記第3端と前記第5端とが近接して電気的に接続されている、高周波バラン。
【0156】
<6> <2>または<3>の高周波バランであって、
グランド用導電体を備え、
前記第3端と前記第5端とは、前記グランド用導電体を通じて電気的に接続されている、高周波バラン。
【0157】
<7> <2>乃至<6>のいずれかの高周波バランであって、
第4中心導体、第4誘電体層、および、第4外導体を備え、第7端と第8端とを有する第4同軸ケーブルと、
第5中心導体、第5誘電体層、および、第5外導体を備え、第9端と第10端とを有する第5同軸ケーブルと、
を備え、
前記第4同軸ケーブルの長さは、前記第2同軸ケーブルの長さと略同じであり、
前記第5同軸ケーブルの長さは、前記第3同軸ケーブルの長さと略同じであり、
前記第4同軸ケーブルの前記第7端は、前記第4中心導体と前記第4外導体が接続される短絡端であって、前記第2同軸ケーブルの前記第3端に電気的に接続されており、
前記第4同軸ケーブルの前記第8端は、前記第4中心導体と前記第4外導体が接続されておらず、前記第4外導体に前記第2中心導体が接続されており、
前記第5同軸ケーブルの前記第9端は、前記第5中心導体と前記第5外導体が接続される短絡端であって、前記第3同軸ケーブルの前記第5端に電気的に接続されており、
前記第5同軸ケーブルの前記第10端は、前記第5中心導体と前記第5外導体が接続されておらず、前記第5外導体に前記第3中心導体が接続されており、
前記第1同軸ケーブルの前記第1端は、不平衡端子であり、
前記第4同軸ケーブルの前記第4中心導体の前記第8端側の端部と、前記第5同軸ケーブルの前記第5中心導体の前記第10端側の端部とは、平衡端子である、高周波バラン。
【0158】
<8> <1>乃至<7>のいずれかの高周波バランを備えた第1高周波バランと、
<1>乃至<7>のいずれかの高周波バランを備えた第2高周波バランと、
を備え、
前記第1高周波バランの平衡端子と前記第2高周波バランの平衡端子とは、それぞれ接続されている、高周波フィルタ。
【符号の説明】
【0159】
1、1A、1B、1C、1D、1X1、1X2:高周波バラン
1AS、1BS、1GS:構造体
2:高周波フィルタ
10、10G、10X1、10X2:第1同軸ケーブル
11:第1中心導体
12:第1誘電体層
13:第1外導体
19:絶縁性シールド膜
20、20B、20G、20X1、20X2:第2同軸ケーブル
21、21B:第2中心導体
22、22B:第2誘電体層
23、23B:第2外導体
29:絶縁性シールド膜
30、30G、30X1、30X2:第3同軸ケーブル
31:第3中心導体
32:第3誘電体層
33:第3外導体
39:絶縁性シールド膜
40:第4同軸ケーブル
41:第4中心導体
42:第4誘電体層
43:第4外導体
50:第5同軸ケーブル
51:第5中心導体
52:第5誘電体層
53:第5外導体
70:導電性接合材
80、80X1、80X2:同軸コネクタ
90:グランド用導電体
101:第1端
102:第2端
103:端部
104:端部
201:第3端
202:第4端
301:第5端
302:第6端
401:第7端
402:第8端
501:第9端
502:第10端
E211、E212、E212X1、E212X2、E311、E312、E312X1、E312X2、E411、E412、E511、E512:端部
ft:周波数
SEC0:外導体分断部
SEC1:第1部分
SEC2:第2部分