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  • 特開-塗装装置および塗装方法 図1
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  • 特開-塗装装置および塗装方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168139
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】塗装装置および塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/04 20060101AFI20241128BHJP
   E04F 21/02 20060101ALI20241128BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20241128BHJP
   B05B 15/60 20180101ALI20241128BHJP
【FI】
B05B13/04
E04F21/02 Z
B05B17/00
B05B15/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084573
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】523192060
【氏名又は名称】株式会社アクトクリエイティブトラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100109597
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 章
(72)【発明者】
【氏名】田中 基之
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠介
【テーマコード(参考)】
4D073
4D074
4F035
【Fターム(参考)】
4D073CB03
4D073CB15
4D073CB20
4D074AA01
4D074BB02
4D074CC04
4D074CC22
4D074CC55
4F035AA03
4F035CA01
4F035CA05
4F035CD03
4F035CD05
(57)【要約】
【課題】屋根、床面、道路などの塗装装置と塗装方法を提供する。特に、波形の凹凸のある屋根の塗装を従来よりも効率よく確実に行う塗装装置と塗装方法を提供する。
【解決手段】塗装装置1は、四本のタイヤによって走行する本体部10と、スプレーガン30を移動させて塗装を行う塗装部20とを備えている。塗装部20は、スプレーガン30と、一対の滑車21a,21bと、チェーンベルト22と、スライドプレート24と、スライドプレート24に取り付けられたアーム部材26と、ブラケット29を備えている。塗装装置1は、アーム部材26とブラケット29とスプレーガン30が一体で、往復動作を行うことによって、本体部10の側面よりも外側の領域の塗装を行うことを特徴とする。本発明はまた、塗装装置1を用いた塗装方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四本のタイヤによって走行する本体部と、塗装用のスプレーガンを移動させて塗装を行う塗装部と、を備えている塗装装置であって、
前記塗装部が、
塗料を噴出するスプレーガンと、
前記本体部の上面に配置された一対の滑車と、
前記一対の滑車の間に架け渡されたチェーンベルトと、
前記チェーンベルトに取り付けられて、前記チェーンベルトの動作と同調して動くスライドプレートと、
前記本体部の側面に対して略直角方向に突き出すように、前記スライドプレートに取り付けられたアーム部材と、
前記スプレーガンを前記アーム部材に取り付けるブラケットと、
を、備えており、
前記アーム部材と、前記ブラケットと、前記スプレーガンが一体で、前記本体部の前記側面から外側に突出する動作と前記側面に近づく往復動作を行うことによって、前記本体部の側面よりも外側の領域の塗装を行うことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記アーム部材の側面を外側から支持する一対の支持部材を備えており、
前記支持部材が、前記本体部の側面に配置されており、
さらに、前記支持部材が、前記アーム部材の側面の溝と嵌合する樹脂製のガイドレールを備えていることを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
前記本体部の四本のタイヤは、
前輪基準側タイヤと、前輪自由側タイヤと、後輪基準側タイヤと、後輪自由側タイヤと、で構成されており、
前記前輪基準側タイヤが、前輪車軸に固定されており、
前記前輪自由側タイヤが、前記前輪基準側タイヤとの距離を変更可能な状態で前輪車軸に取り付けられており、
前記後輪基準側タイヤが、後輪車軸に固定されており、
前記後輪自由側タイヤが、前記後輪基準側タイヤとの距離を変更可能な状態で後輪車軸に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記アーム部材が前記本体部の側面から外側に突出する長さの最大長は、
前記前輪基準側タイヤと前記前輪自由側タイヤの距離の最大長よりも長く、且つ前記後輪基準側タイヤと前記後輪自由側タイヤの距離の最大長よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項5】
請求項1に記載の塗装装置を使用して凹凸のある屋根の塗装を行う塗装方法であって、
前記タイヤの間隔を、屋根の凹部の間隔に合わせる工程と、
前記屋根上の走行可能部分を走行しつつ、前記本体部の側面よりも外側の領域を補強材で塗装する塗装工程と、
前記補強材で補強されて走行可能となった部分に、前記塗装装置を移動させる移動工程と、
を備えており、
前記塗装工程と前記移動工程を繰り返すことにより、屋根全体の塗装を行うことを特徴とする屋根の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根や道路を塗装するために用いる塗装装置と、塗装方法に関する。特に、波型の凹凸を有する屋根を自走しながら塗装する塗装装置と塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、建物の屋根には、スレートや鋼板が多く用いられている。これらの屋根を長期間使用していると表面が劣化してくるため、補修のために再度塗装を行う必要がある。また道路や床面でも、塗装による補修が必要となる場合がある。屋根に補修のための塗装を行う場合、最初に作業員によって塗装面の劣化の程度を確認し、次に、作業員による下地処理作業を行って強度を確保し、最後に塗装装置を用いた塗装作業を行うという、複数回の工程が必要となっていた。また、道路や床面の補修作業でも、同様に、複数回の作業工程が必要となる場合が多かった。このため、より効率よく塗装を行うことのできる塗装装置および塗装方法が求められている。
【0003】
特許文献1には、凹凸がある屋根を塗装するための塗装装置が開示されている。特許文献1の塗装装置は、吹付姿勢を調整可能な複数の吹付ノズル付き吹付装置を備えた、走行台車が開示されている。しかしながら、特許文献1の塗装装置は、屋根の凹凸の溝を一列ずつ塗装することに適した装置であり、塗装を一層効率よく確実に行う塗装装置と塗装方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3384735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、屋根、床面、道路などの塗装を、従来よりも効率よく確実に行う塗装装置と塗装方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、塗装装置に関する。本発明の塗装装置は、四本のタイヤによって走行する本体部と、塗装用のスプレーガンを移動させて塗装を行う塗装部と、を備えている塗装装置である。本発明の塗装部は、塗料を噴出するスプレーガンと、本体部の上面に配置された一対の滑車と、一対の滑車の間に架け渡されたチェーンベルトと、チェーンベルトに取り付けられて、チェーンベルトの動作と同調して動くスライドプレートと、本体部の側面に対して略直角方向に突き出すように、スライドプレートに取り付けられたアーム部材と、スプレーガンをアーム部材に取り付けるブラケットと、を備えている。本発明の塗装装置は、アーム部材と、ブラケットと、スプレーガンが一体で、本体部の側面から外側に突出する動作と側面に近づく往復動作を行うことによって、本体部の側面よりも外側の領域の塗装を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明の一形態として、塗装装置は、アーム部材の側面を外側から支持する一対の支持部材を備えている。支持部材は、本体部の側面に配置されている。また支持部材は、アーム部材の側面の溝と嵌合する樹脂製のガイドレールを備えている。
【0008】
本発明の一形態として、塗装装置の本体部の四本のタイヤは、前輪基準側タイヤと、前輪自由側タイヤと、後輪基準側タイヤと、後輪自由側タイヤとで構成されていることが好
ましい。そして、前輪基準側タイヤが、前輪車軸に固定されており、前輪自由側タイヤが、前輪基準側タイヤとの距離を変更可能な状態で前輪車軸に取り付けられており、且つ後輪基準側タイヤが、後輪車軸に固定されており、後輪自由側タイヤが、後輪基準側タイヤとの距離を変更可能な状態で後輪車軸に取り付けられていることが好ましい。
【0009】
本発明の一形態として、塗装装置のアーム部材が本体部の側面から外側に突出する長さの最大長は、前輪基準側タイヤと前輪自由側タイヤの距離の最大長よりも長く、且つ後輪基準側タイヤと後輪自由側タイヤの距離の最大長よりも長いことが好ましい。
【0010】
本発明はまた、凹凸のある屋根の塗装方法を提供する。本発明の塗装方法は、請求項1に記載の塗装装置を使用して凹凸のある屋根の塗装を行う塗装方法であって、タイヤの間隔を、屋根の凹部の間隔に合わせる工程と、屋根上の走行可能部分を走行しつつ、本体部の側面よりも外側の領域を補強材で塗装する塗装工程と、補強材で補強されて走行可能となった部分に、走行部を移動させる移動工程と、を備えている。本発明の塗装方法は、塗装工程と移動工程を繰り返すことにより、屋根全体の塗装を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗装装置と塗装方法は、本体部のタイヤ以外に塗装面と接する部分がなく、本体部の側面に対して略直角方向に突き出したアーム部材の運動によって、塗装を行う。このような構造によって、塗装装置が走行する前の塗装面に塗装を行うことができる。塗装装置が走行する前の塗装面に補強材を塗装することも可能であり、劣化の程度や強度が確認されていない大型の屋根や床面であっても、全体を塗装装置によって塗装することができ、従来よりも効率よく塗装を行うことができる。
【0012】
本発明の塗装装置と塗装方法は、凹凸のある屋根に対して、凹凸の間隔にかかわらず容易に塗装を行うことができる。
【0013】
本発明の塗装装置と塗装方法によって、一度の直進走行でより広い面積の塗装が可能となり、従来よりも迅速に塗装作業を行うことができる。
【0014】
本発明の塗装装置は、前進と後退の両方を特段の制限なく行うことができるため、進行方向に対して、進行方向の右側の塗装と左側の塗装の両方を、どちらも容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、塗装装置の斜視図である。
図2図2は、塗装装置の正面図である。
図3図3は、塗装装置の塗装部の上面図である。
図4図4は、アーム部材と支持部材の配置を示す塗装装置の部分拡大図である。
図5図5は、後輪自由側タイヤの取付状態を示す塗装装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、「上」という記載は、基準物に対して鉛直方向でより高い位置にあることを指し、「下」という記載は、基準物に対して鉛直方向でより低い位置にあることを指す。「前」という記載は、塗装装置がその時点で進行を予定している向きを指す。「右」、「左」という記載は、塗装装置の進行方向と同じ方向を向いたときに認識される右側と左側を指す。
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の塗装装置の好適な実施形態を説明する。図1に、塗装装置1の斜視図を示し、図2に塗装装置1の正面図を示す。本発明の塗装装置1は、四
本のタイヤによって走行する本体部10と、塗装用のスプレーガン30を移動させて塗装を行う塗装部20とを備えている。
【0018】
本体部10は、車体11に取り付けられた、前輪基準側タイヤ13、前輪自由側タイヤ14、後輪基準側タイヤ15、後輪自由側タイヤ16の合計4本のタイヤによって走行する。前輪の2本のタイヤは、前輪車軸17を介して車体11に取り付けられており、後輪の2本のタイヤは後輪車軸18を介して車体11に取り付けられている。駆動手段12が、前輪車軸17と後輪車軸18の両方を駆動している。塗装装置1は、四輪駆動車として自走し、前進と後退を自由に行うことができる。
【0019】
図3に、塗装部20の上面図を示す。塗装部20は、本体部10の側面から略直角方向で外側に突出する動作と本体部10の内側に戻る往復動作を行うアーム部材26を備えている。塗装部20は、さらに、一対の滑車21a,21bと、チェーンベルト22と、スライドプレート24と、スプレーガン30と、スプレーガン30をアーム部材26に取り付けるブラケット(取付具)29とを備えている。アーム部材26に取り付けられたブラケット29とスプレーガン30が、アーム部材26と一体化した往復運動を行うことで、本体部10の側面よりも外側の領域の塗装を行うことができる。
【0020】
アーム部材26が往復運動を行うための、塗装部20の構造について説明する。本体部10の車体11の左右両端部に、滑車21a,21bを固定するための軸部材が配置されており、滑車21a,21bは、車体11の上部に略水平に取り付けられる。図示しない駆動手段によって軸部材を回転させることによって、滑車21a,21bが回転する。チェーンベルト22が、滑車21a,21bの間に架け渡されて、回転運動を行う。チェーンベルト22には1本の固定ピン23が、滑車21a,21bよりも上方に突出するように固定されている。
【0021】
塗装部20のスライドプレート24は、アーム部材26が固定される台座の機能を有する。スライドプレート24は、滑車21a,21bの直径とほぼ同一の長さの長穴24aを有しており、この長穴24aに固定ピン23が挿入される。スライドプレート24は、固定ピン23を介してチェーンベルト22に取り付けられる。さらに、スライドプレート24の往復運動の軌道を規定するために、本体部10の車体11に、チェーンベルト22の直線状の配置部分と平行な向きで、一対の案内部材25a,25bが配置されている。スライドプレート24は、長穴24aに固定ピン23が挿入された状態で案内部材25a,25bと嵌め合わされる。
【0022】
滑車21a,21bの回転に従って、固定ピン23がチェーンベルト22と共に滑車21a,21bの間を移動するとき、スライドプレート24は、固定ピン23の移動に追従して、固定ピン23と同じ速度の直線運動を行う。ピン23が滑車21aと滑車21bのいずれかの外周に沿って円運動を行うとき、ピン23はスライドプレート24の長穴24aの中を移動するので、スライドプレート24は、引き続き案内部材25a,25bに沿った直線運動を行う。このように、チェーンベルト22の回転運動は、固定ピン23とスライドプレート24によって直線状の往復運動に変換される。スライドプレート24に固定されたアーム部材26はスライドプレート24と同一の運動を行い、アーム部材26と、ブラケット29と、スプレーガン30とは一体となって、本体部11の側面から外側に突出する動作と本体部11の内側方向に戻る往復動作を、再現性高く行う。
【0023】
滑車21a,21bを本体部10の上部に略水平に取り付けたことにより、スライドプレート24は本体部10上を略水平に移動することになり、他の平面を基準とする往復動作と比較すると、重心の移動が少なく動作が非常に安定する。
【0024】
本体部10と塗装部20の大部分の部材は、アルミニウムで形成されている。そのため、従来の塗装装置よりも軽量化されている。
【0025】
本実施形態の塗装装置は、長期の耐久性と往復運動の精度を高めることを目的として、本体部10の側面に、アーム部材26を支持する一対の支持部材27が固定されている。支持部材27は、本体部10の車体11の側面から斜め上方に突出するように固定された平板状の部材であって、内側に、樹脂製のガイドレール28が固定されている。
【0026】
図4に、アーム部材26と支持部材27の接触部分の部分拡大図を示す。本実施形態のアーム部材26は、アルミニウム製の中実の角材であって、両側面に、断面四角形の溝が形成されている。樹脂製のガイドレール28は、アーム部材26の溝の形状と略一致する断面四角形の突起を備えており、ガイドレール28の突起の上面がアーム部材26の溝の上面と接し、ガイドレール28の突起の上側の側面がアーム部材26の側面上部と接することで、アーム部材26の側面を外側から支持する。
【0027】
ガイドレール28は、耐摩耗性の高い樹脂で形成することが好ましい。好適な材料は、ポリアセタール、またはモノマーキャストナイロンである。アーム部材26を樹脂で支持することで、なめらかでより振動の少ない往復運動を行うことができる。
【0028】
次に、本体部のタイヤの構成について説明する。本実施形態の塗装装置1は、タイヤの間隔を調整することが可能であり、進行方向に沿った溝や波形の凹凸のあるスレート屋根、折板屋根、もしくは道路の塗装に、特に適している。
【0029】
本体部10の四本のタイヤのうち、前輪基準側タイヤ13は前輪車軸17に固定されており、後輪基準側タイヤ15は後輪車軸18に固定されている。前輪自由側タイヤ14は、前輪基準側タイヤ13との距離を変更可能な状態で前輪車軸17に取り付けられている。同様に、後輪自由側タイヤ16は、後輪基準側タイヤ15との距離を変更可能な状態で後輪車軸18に取り付けられている。
【0030】
図5に、後輪自由側タイヤ16が後輪車軸18に取り付けられている状態を示し、本発明の塗装装置1がタイヤの間隔を調整可能となっている構成を示す。後輪車軸18には、半径方向外側に向かって突出するように、線状突起部18aが形成されている。後輪自由側タイヤ16のホイールは線状突起部18aに嵌め合わされている。後輪自由側タイヤ16は、車軸18の軸方向に対する拘束手段を有しておらず、線状突起部18aによって係止された状態となっているため、後輪自由側タイヤ16を線状突起部18aに沿って移動させて、後輪基準側タイヤ15との距離を調整することが可能である。同様に、前輪自由側タイヤ14もまた、前輪車軸17に形成された線状突起部17aに係止されており、前輪自由側タイヤ14を線状突起部17aに沿って移動させて、前輪基準側タイヤ13との距離を調整することが可能である。
【0031】
屋根、床面、および道路等の塗装を行うための、本発明の塗装装置1の好適な形態を更に説明する。
【0032】
本発明の塗装装置1は、床面、道路、屋根など、塗装装置1の下側に位置する面を塗装することができる。塗装装置1のスプレーガン30は、スプロケット29に対して着脱可能に取り付けられており、取付角度を調節可能であるので、一度に塗装する範囲を調節することができる。スプレーガン30によって塗装可能な液体は、防水剤、シーリング材、補修剤、塗料など特に限定されない。またスプレーガン30に供給装置を接続することで、長時間連続的に塗装作業を行うことができる。
【0033】
車体11から前方に突出した位置と後方に突出した位置の少なくとも2箇所に、停止センサが配置されていることが好ましい。停止センサとしては、走行面との距離を認識する赤外線センサ等を適用することができる。特に屋根を自動走行で塗装する場合に、停止センサによって走行面との距離を測定しつつ前進を行い、走行面が確認されなくなった時点で停止することで、転落や脱輪等の事故を防止することができる。
【0034】
塗装に用いる物質の飛散を防止するために、塗装部20に飛散防止カバーを取り付けることができる。図2の符号32で示した枠体を車体11に取りつけ、枠体32をシート材で覆うことで、塗装の対象となる面以外への物質の飛散を防止することができる。また、必要に応じて、本体部10と塗装部20にカバー部材31を取り付けることができる。
【0035】
塗装装置1を稼働させる場合、使用者がコントローラを用いることによって駆動手段12を操作し、本体部10の前進、後退、停止を制御することができる。アーム部材26の往復運動の開始と停止や、スプレーガン30のノズルへの供給開始と停止もまた、コントローラで制御することができる。
【0036】
アーム部材26が本体部10の側面から外側に突出する長さは、前輪基準側タイヤ13と前輪自由側タイヤ14の距離の最大長よりも長く、同時に後輪基準側タイヤ15と後輪自由側タイヤ16の距離の最大長よりも長く設定されている。これにより、以下に説明する塗装工程において、一度の連続的な前進による塗装作業で、次に本体部10が走行する領域全体を補強することが可能となり、非常に効率よく屋根の塗装が可能となる。
【0037】
次に、本発明の塗装装置1を用いた塗装方法を説明する。本発明の塗装方法は、タイヤ間隔調整工程と、塗装工程と、移動工程を備えている。
【0038】
タイヤ間隔調整工程では、前輪自由側タイヤ14の位置を調整して、前輪基準側タイヤ13と前輪自由側タイヤ14間の距離を決定する。同様に、後輪自由側タイヤ15の位置を調整して、後輪基準側タイヤ15と後輪自由側タイヤ16間の距離を決定する。特に、スレート屋根や折板屋根等の、進行方向に沿って波形の凹凸を有する屋根に対しては、前輪と後輪のタイヤの間隔を凹部の位置にあわせることで、安定した走行が可能となる。
【0039】
塗装工程では、屋根上の走行可能部分を走行しつつ、本体部10の側面よりも外側の領域を補強材で塗装する。ここで、走行可能部分とは、通常は屋根の最も端の部分であって、必要に応じて補強処理等が予め行われて強度の確保が完了している部分のことである。塗装工程に用いる補強材としては、たとえば、主剤と硬化剤をスプレーガン30の先端で混合して吹き付けると、数十秒で硬化するウレタン樹脂材を適用可能である。
【0040】
移動工程では、補強材で補強されて走行可能となった部分に、塗装装置1を移動させる。ここで、屋根の凹凸が変化している場合は、適宜タイヤ間隔調整工程を行うことが可能である。
【0041】
さらに、塗装工程と移動工程を繰り返すことにより、塗装装置1によって屋根全体の塗装を行うことができる。
【実施例0042】
本発明を具現化した塗装装置の実施例について、説明する。
【0043】
本実施例の塗装装置1の本体部10の外形は、幅約1200mm、高さ約680mmとなっている。アーム部材26が行う往復運動の振幅の最大値は1000mmに設定している。振幅の最大値は、本体部10の滑車21a,21bの外周部同士の間隔に対応してい
る。一方で、前輪基準側タイヤ13と前輪自由側タイヤ14間の間隔、および後輪基準側タイヤ15と後輪自由側タイヤ16間の間隔は、600mmから910mmの間の任意の間隔に設定することができる。
【0044】
塗装装置1の駆動手段12はモーターであり、塗装装置1は電力で走行する。また、スプレーガン30のノズルの駆動も図示しないモーターで行われる。アーム部材26の動作速度は、駆動手段12にインバーター回路を組み込むことによって可変制御が可能となっており、最大で216mm/sの往復運動が可能である。塗装装置1の走行速度も可変であるが、安全性の確保のために、1km/hr程度に制限することが好ましい。
【0045】
アーム部材26が往復運動によって本体部10の側面から外側に突出する長さが、前輪基準側タイヤ13と前輪自由側タイヤ14の距離の最大長以上となっていることによって、本実施例の塗装装置1は、一回の直進による塗装工程によって、塗装装置1のタイヤ13,14,15,16が走行する前に、補強等の塗装作業の必要な本体部10の側面外側の塗装を完了することができる。たとえば、十秒程度で硬化する超速硬化ウレタンを塗布した場合には、本体部10を直進させて塗装工程を行った後、速やかに塗装済の領域に本体部10を横移動させ、新たに本体部10の側面外側塗装工程を行うことにより、効率よく塗装作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の塗装装置および塗装方法は、屋根、床面、道路の塗装に利用可能である。特に、一定の間隔で凹凸が設けられているスレート屋根や折板屋根の塗装に、好適に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5