(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168143
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ポンプ点検報告書生成方法及びポンプ点検報告書生成支援システム
(51)【国際特許分類】
F04B 51/00 20060101AFI20241128BHJP
F04D 13/00 20060101ALI20241128BHJP
F04D 13/08 20060101ALI20241128BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20241128BHJP
【FI】
F04B51/00
F04D13/00 A
F04D13/08 U
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084577
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】日比野 章
(72)【発明者】
【氏名】室町 雅宏
【テーマコード(参考)】
2G024
3H130
3H145
【Fターム(参考)】
2G024AD03
2G024BA11
2G024FA06
2G024FA15
3H130AA03
3H130AB02
3H130AB13
3H130AB22
3H130AB50
3H130AC10
3H130BA90H
3H130BA92H
3H130CA01
3H130CB00
3H130DA02Z
3H130DB11Z
3H130DF03X
3H130DF06X
3H145AA06
3H145AA23
3H145BA39
3H145FA16
3H145FA22
3H145FA23
(57)【要約】
【課題】
ユーザに好適な点検報告書を自動又は半自動で作成し得るポンプ点検報告書生成方法及びポンプ点検報告書生成支援システムを提供する。
【解決手段】
ポンプ点検報告書生成方法は、ポンプ内部のファイバースコープ画像を取得するステップと、画像処理に適した第1撮像画像を抽出ステップと、目視用の第2撮像画像を抽出するステップと、第1撮像画像から生成した劣化状況の報告書に対して、第2撮像画像を貼付するステップを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ内部のファイバースコープ画像を取得するステップと、
画像処理に適した第1撮像画像を抽出ステップと、
目視用の第2撮像画像を抽出するステップと、
前記第1撮像画像から生成した劣化状況の報告書に対して、前記第2撮像画像を貼付するステップを備えることを特徴とするポンプ点検報告書生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ点検報告書生成方法であって、
前記目視用の第2撮像画像の抽出は、過去の撮像画像又は参考用画像との類似度で行うことを特徴とするポンプ点検報告書生成方法。
【請求項3】
請求項1に記載のポンプ点検報告書生成方法であって、
前記目視用の第2撮像画像の抽出は、少なくとも撮像位置、画角、及び鮮明度のいずれか一つにより行うことを特徴とするポンプ点検報告書生成方法。
【請求項4】
取得されるポンプ内部のファイバースコープ画像のうち、画像処理に適した第1撮像画像を抽出する撮像画像・診断画像データ管理部と、
取得されるポンプ内部のファイバースコープ画像のうち、目視用の第2撮像画像を抽出する経年劣化比較画像検索部と、を備え、
前記第1撮像画像から生成した劣化状況の報告書に対して、前記第2撮像画像を貼付することを特徴とするポンプ点検報告書生成支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載のポンプ点検報告書生成支援システムであって、
前記経年劣化比較画像検索部は、過去の撮像画像又は参考用画像との類似度により前記目視用の第2撮像画像を抽出することを特徴とするポンプ点検報告書生成支援システム。
【請求項6】
請求項4に記載のポンプ点検報告書生成支援システムであって、
前記経年劣化比較画像検索部は、少なくとも撮像位置、画角、及び鮮明度のいずれか一つにより前記目視用の第2撮像画像を抽出することを特徴とするポンプ点検報告書生成支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ点検報告書生成方法及びポンプ点検報告書生成支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国土交通省による河川ポンプ設備の点検・整備・更新マニュアル(案)でも指摘されているように、排水機場のポンプ設備は、大雨等の自然現象に対応して必要なときに確実に始動でき、かつ必要な時間中故障なく十分な排水機能が発揮できなければならない。日常はほとんど運転されないため稼働時間は少ないが、一旦出水となると連続運転が要求され、また、運転時は高温多湿、気圧低下があり、非出水期は低温下での長期休止となるなど、通常の常用系設備とは異なった環境下にある。
【0003】
一方、揚水機場のポンプ設備は、一旦稼働期に入ると確実に連続運転できることが要求され、設備を機能させながらの点検・整備の実施が求められるなどの特性を持っている。さらに、河川ポンプ設備共通のものとして、設備が多くの装置・機器等で構成されていて、一つが故障しても排水機能に何らかの影響を及ぼし、場合によっては機能停止という事態を招くことになるため、システム全体として確実に機能することが求められる。
【0004】
例えば、ポンプ装置の一例である立軸ポンプ装置は、回転軸と、回転軸に取り付けられた羽根車と、回転軸を回転自在に支持する水中軸受と、羽根車と水中軸受を収容するポンプケーシングとを備えて構成されている。立軸ポンプ装置は、ケーシング、羽根車及び水中軸受が水中に没水した状態で運転され、運転時間の経過とともにこれらの部材が徐々に腐食、摩耗していく。
【0005】
そのため、立軸ポンプ装置の点検作業を定期的に行って羽根車や水中軸受の摩耗具合やケーシングの腐食具合を確認し、必要に応じて補修または交換を行うことが必要となるが、部品の摩耗具合を確認するために、立軸ポンプ装置を解体し、クレーンなどにより立軸ポンプを引き上げて点検を行なうと、点検作業に要する設備費及び人件費が嵩むばかりか、長い点検時間を要するという問題がある。
【0006】
このような問題に対して、特許文献1のように、ファイバースコープをポンプケーシング外部からポンプケーシング内部の所定の消耗部材まで操作して内視鏡画像を撮影することが行われている。さらに、特許文献1には、ファイバースコープによる撮影画像に対して画像処理で評価値を生成することで劣化程度を診断することやニューラルネットワークによる学習機構が記載されている。
【0007】
また、撮像箇所ごとに撮像画像を管理しておき、撮影画像を貼付した点検報告書を生成するポンプ保守点検システムも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは上記従来技術を参照し、撮像画像を画像処理し劣化診断モデルを用いて劣化診断を行い、劣化診断結果と共に画像処理に使用した画像を貼付した点検報告書を生成した。
しかしながら、全ての場合で好適な点検報告書にはならなかった。特に、各種保守・点検ガイドラインでは健全度や劣化箇所の経過観察が必要とされるが、目視にとって好適な画像と画像処理にとって好適な画像とは異なる上、劣化箇所の経過監視を行う上では同じ画角の方が適切な場合もあった。すなわち、これまでのポンプ保守点検システムではかかる観点が考慮されてこなかったために、ユーザにとって必ずしも好適な点検報告書になるとは限らなかった。
【0010】
そこで、本発明は、ユーザに好適な点検報告書を自動又は半自動で作成し得るポンプ点検報告書生成方法及びポンプ点検報告書生成支援システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るポンプ点検報告書生成方法は、ポンプ内部のファイバースコープ画像を取得するステップと、画像処理に適した第1撮像画像を抽出ステップと、目視用の第2撮像画像を抽出するステップと、前記第1撮像画像から生成した劣化状況の報告書に対して、前記第2撮像画像を貼付するステップを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るポンプ点検報告書生成支援システムは、取得されるポンプ内部のファイバースコープ画像のうち、画像処理に適した第1撮像画像を抽出する撮像画像・診断画像データ管理部と、取得されるポンプ内部のファイバースコープ画像のうち、目視用の第2撮像画像を抽出する経年劣化比較画像検索部と、を備え、前記第1撮像画像から生成した劣化状況の報告書に対して、前記第2撮像画像を貼付することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザに好適な点検報告書を自動又は半自動で作成し得るポンプ点検報告書生成方法及びポンプ点検報告書生成支援システムを提供することができる。
【0014】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ポンプ装置の概略構造と診断業務の方法を説明する図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るポンプ点検報告書生成支援システムの概略構成図である。
【
図3】
図2に示すデータベースのデータ構造を示す図である。
【
図4】本発明の実施例1に係るポンプ点検報告書生成支援システムの動作を示すフローチャートである。
【
図5】画像診断及び報告書作成モデルの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
【実施例0017】
以下、立軸ポンプを例に、本実施例の点検報告書生成システムについて説明する。なお、ポンプとしては立軸ポンプに限られるものではない。
【0018】
[ポンプ設備とポンプ内部観察]
本実施例に係るポンプは、国土交通省や地方公共団体などが管理する河川ポンプ設備である。これらの河川ポンプ設備は、数メートル、数トンといった大型の立軸ポンプが設置されるため、簡単に分解点検できない。そのため、ファイバースコープでポンプ内部の劣化状況を確認する必要がある。
【0019】
図1は、ポンプ装置の概略構造と診断業務の方法を説明する図であり、立軸ポンプの構造とファイバースコープを使った内部観察の状況を示す図である。
【0020】
まず、立軸ポンプの構造について説明する。
図1に示すように、立軸ポンプは、下端側に位置する吸込ベルマウス21と、この吸込ベルマウス21の上端に連結したインペラケーシング22と、このインペラケーシング2の上端に連結されインペラケーシング22を水槽23内に吊り下げる吊下管24と、この吊下管24の上端に接続される吐出曲管25とを備えている。インペラケーシング22、吊下管24、及び吐出曲管25は、揚水管路としての「ポンプケーシング」を構成する。
【0021】
インペラケーシング22内には、複数の羽根26を有する羽根車27が配置されている。この羽根車27には回転軸28が連結されている。この羽根車27の回転軸28は、吐出曲管25、吊下管24、及びインペラケーシング22内を通って鉛直方向に延びており、インペラケーシング22内の下側水中軸受29と吊下管24内の上側水中軸受30とによって回転可能に支持されている。回転軸28の上端は吐出曲管25から上方に突出し、駆動源(図示せず)に連結されている。
【0022】
羽根車27の上部には、前述した下側水中軸受29を保持する保持体31が設けられている。この保持体31の外周面とインペラケーシング22の内面との間には、複数の案内羽根32が設けられている
上述のように構成された立軸ポンプは、その吸込ベルマウス21及びインペラケーシング22が水槽23内の貯留水に水没するように、水槽23上部のポンプ据付床33に形成された挿通孔34を通して下方に延び、吊下管24の上端側に設けた据付用ベース35を介してポンプ据付床33に固定されている。吐出曲管25の吐出側には、ポンプケーシング内を気密にするための弁36が開閉可能に設けられている。
【0023】
吐出曲管25の上側部には、圧力空気供給管接続口43、圧力計接続口44が設けられている。この圧力空気供給管接続口43及び圧力計接続口44は、通常、蓋により閉じられている。ポンプケーシング内部の各部品の損傷、摩耗等を観察する場合に、圧力空気供給管接続口43に圧力空気供給管45が接続される。この圧力空気供給管45は、圧力空気を発生する圧縮機46に連結している。
【0024】
観察前の準備として、立軸ポンプを停止させた状態において、まず、吐出曲管25の吐出側における弁36を閉じる。次に、圧力空気供給管接続口43に、圧縮機46に連結している圧力空気供給管45を接続する。
【0025】
次に、圧縮機46を駆動して、圧縮機46からの圧力空気を、圧力空気供給管45を通してポンプケーシング内に供給し、ポンプケーシング内の水を押し下げて、ポンプケーシング内の水没部分を圧力空気に置換する。これにより、インペラケーシング22の内面、インペラケーシング22内の複数の羽根26、羽根車27、回転軸28、下側水中軸受29等の観察対象箇所は、ポンプ内に侵入している水は、混濁した状態を呈しており、ごみ等が混在している水中から除外されているので、ファイバースコープなどの画像取得手段による光路を確保することができる。その結果、ポンプケーシング内の各部品の認識が確実になり、観察性能を向上させることができる。
【0026】
また、インペラケーシング22の内面、インペラケーシング22内の複数の羽根26、羽根車27、回転軸28、下側水中軸受29等の観察対象箇所に付着した水滴、塵等は、圧力空気によって吹き飛ばされているので、観察対象箇所を綺麗な状態で観察することができる。なお、ポンプケーシング内の水没部分が圧力空気で置換されたか否かは、ポンプケーシングにおける吸込ベルマウス21の吸い込み口部分から流出した気泡が水面に発生したことにより、確認することができる。
【0027】
ポンプケーシング内の水没部分を押し下げた状態で、次に、地上部に設置した光源装置、走査装置、モニタ、画像収録装置等の電源を投入後、モニタで画像取得手段を構成するファイバースコープのファイバーケーブル37先端の光学系レンズからの撮像情報を観察しながら、ファイバーケーブル37の先端を圧力計接続口44からポンプケーシング内に挿入し、ファイバーケーブル37の先端を走査装置によって走査することにより、羽根(インペラ)26の表面をモニタによって観察することができる。このファイバーケーブル37で取得した観察データは、必要に応じて画像収録装置に記憶することができる。
【0028】
このように、立軸ポンプの停止時に、ケーシング内に残留している水を圧力空気によってケーシング外に押し出し、ケーシング内を空気の雰囲気状態にして、内部の部品をファイバースコープで観察することができるので、ポンプ内部の部品の摩耗、損傷状態を確認することができる。その結果、ポンプの分解整備の判定作業の精度が向上し、ポンプ設備の保守管理の信頼性を高めることができる。
【0029】
[ポンプ点検報告書生成支援システムの構成]
図2は、本実施例に係るポンプ点検報告書生成支援システムのシステム概略構成図である。
図2に示すように、本実施例に係るポンプ点検報告書生成支援システム1は、仮想上のクラウド或いは物理上のサーバに構築される。現場における診断者(点検者)が保持するスマートフォン、PC(Personal Computer)、或いはタブレット等の携帯型端末の点検データ取得アプリと、ポンプ点検報告書生成支援システム1(クラウド)とは、WAN(Wide Area Network)を介してデータを相互に送受信する。
【0030】
ポンプ点検報告書生成支援システム1は、撮像画像・診断画像データ管理部2、画像診断出力部3、報告書出力部4、経年劣化比較画像検索部5、AI出力の修正部6、ユーザ管理・アクセス管理部7、劣化診断モデル8、報告書作成モデル9、及びデータベース10を備え、これらは相互に内部バスを介して相互に通信(データ転送)可能となっている。ここで、撮像画像・診断画像データ管理部2、画像診断出力部3、報告書出力部4、経年劣化比較画像検索部5、AI出力の修正部6、及びユーザ管理・アクセス管理部7は、例えば、図示しないCPUなどのプロセッサ、各種プログラムを格納するROM、演算過程のデータを一時的に格納するRAM、外部記憶装置等の記憶装置にて実現されると共に、CPU等のプロセッサがROMに格納された各種プログラムを読み出し実行し、実行結果である演算結果をRAM又は外部記憶装置に格納する。
【0031】
ユーザ管理・アクセス管理部7は、クラウドにおけるポンプ点検報告書生成支援システム1へのログイン用ユーザ認証及びアクセス権限管理を行い、現場からのデータを取得可能にする。
撮像画像・診断画像データ管理部2は、現場からアップロードされた撮像画像データをデータベース10に格納する。なお、データ格納に際しては、点検対象ポンプ及び点検実施日または送信日付を、撮影画像データ及び点検記録に関連付けて(紐づけて)格納する。
【0032】
画像診断出力部3は、撮像画像・診断画像データ管理部2がデータベース10に格納した撮像画像データを、劣化診断モデル8を取り込んだ画像診断AI(図示せず)に入力し、画像診断を行う。画像診断AIとしては、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)等のもので構成される。具体的には、フィルタ処理や2値化処理でのエッジ検出による劣化箇所の領域(寸法含む)特定及びその領域のマスキング、劣化原因推定を行い、マスク済診断画像データ及び点検記録(診断データ)をデータベース10に出力する。なお、劣化原因としては、腐食、欠損または摩耗の特定が既知の技術で可能である。ここで、
図3に示すように、データベース10は、撮像画像データ15、診断画像データ16、比較基準・過去画像データ17、仮報告書18、及び修正報告書(確認済最終報告書)19と領域を区分して格納するデータ構造を有する。なお、必ずしもこの構成に限られるものではなく、上記撮像画像データ15、診断画像データ16、比較基準・過去画像データ17、仮報告書18、及び修正報告書(確認済最終報告書)19毎にハートウェア的に個別に格納するよう構成しても良い。
【0033】
経年劣化比較画像検索部5は、撮像画像・診断画像データ管理部2の撮像画像データ又は画像診断出力部3による(マスク済・劣化領域特定済)診断画像データから報告書に採用する表示用の画像データを抽出する。抽出に当たっては、画像診断出力部3の関連データから比較データ(過去の当該点検対象ポンプの撮像画像データ、診断画像データまたは参照用画像データ)を抽出する。今回の画像データと過去の画像データ(または参照画像データ)と少なくとも撮像位置、画角、及び鮮明度などのいずれか一つを比較することで、経年劣化の目視比較がしやすい画像データを自動抽出する。或いは、表示用の画像データを抽出は、今回の画像データと過去の画像データまたは参照画像データとの類似度で行う。過去のレポートを機械学習してもよい。これにより、属人的な経験による報告書作成業務を自動化できるようにもなるので、属人化を防止することが可能となる。また、顧客にとっても利用しやすい報告書となる。なお、過去の画像データ(または参照画像データ)は、データベース10の1つの領域である比較基準・過去画像データ17に格納されている。
【0034】
報告書出力部4は、画像診断出力部3による診断画像データ、点検記録及び経年劣化比較画像検索部5により抽出された画像データを入力とし、報告書自動化モデルを取り込んだAIで報告書を自動で生成し、仮報告書としてデータベース10の1つの領域である仮報告書18に格納する。なお、報告書自動化モデルを取り込んだAIとしては、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)等のもので構成される。
【0035】
AI出力の修正部6は、報告書出力部4による仮報告書は必要に応じて目視確認を行い、必要に応じて修正を行う。修正した場合は修正報告書としてデータベース10の1つの領域である修正報告書(確認済最終報告書)19に格納する。
【0036】
[ポンプ点検報告書生成支援システムの動作]
次に、本実施例に係るポンプ点検報告書生成支援システム1の動作につき、
図2に示す現場に診断者(本実施例では点検者を兼務)が訪問する状況と関連付けて、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0037】
先ず、現場に診断者(本実施例では点検者を兼務)が訪問する。現場を訪問した診断者は、スマートフォンの点検アプリを立ち上げる。点検データ取得アプリは、点検者に対して、点検対象ポンプ及び点検箇所別に内視鏡画像の撮影を促す。
点検者はファイバースコープ(内視鏡)を操作し、ポンプ内部の内視鏡画像を撮影する。現場アプリを立上げ、WANを介してポンプ点検報告書生成支援システム1(クラウド)にアクセスし、ポンプ保守点検システムを起動する。点検者がユーザIDとパスワードを入力することで、ポンプ点検報告書生成支援システム1が起動する。すなわち、ユーザ管理・アクセス管理部7は、クラウドにおけるポンプ点検報告書生成支援システム1へのログイン用ユーザ認証及びアクセス権限管理を行い、現場からのデータを取得可能にする。
【0038】
ステップS11では、ポンプ点検報告書生成支援システム1を構成する撮像画像・診断画像データ管理部2が、現場からアップロードされた撮像画像データをデータベース10に格納する。次に、撮影した内視鏡画像と点検者の点検記録を、WANを介して撮像画像・診断画像データ管理部2によりデータベース10にアップロードする。点検記録とは文書解析(文書AI)により点検報告書が自動生成できる程度の点検者が作成した点検メモである。ここで、文書解析自体は既知の技術を用いればよい。
【0039】
ステップS12では、ポンプ点検報告書生成支援システム1を構成する画像診断出力部3が、撮像画像・診断画像データ管理部2がデータベース10に格納した撮像画像データを、劣化診断モデル8を取り込んだ画像診断AI(図示せず)に入力し、画像診断を行う。上述のように、具体的には、フィルタ処理や2値化処理でのエッジ検出による劣化箇所の領域(寸法含む)特定及びその領域のマスキング、劣化原因推定を行い、マスク済診断画像データ及び点検記録(診断データ)をデータベース10に出力する。
【0040】
ステップS13では、ポンプ点検報告書生成支援システム1を構成する経年劣化比較画像検索部5が、撮像画像・診断画像データ管理部2の撮像画像データ又は画像診断出力部3による(マスク済・劣化領域特定済)診断画像データから報告書に採用する表示用の画像データを抽出する。
【0041】
ステップS14では、ポンプ点検報告書生成支援システム1を構成する報告書出力部4が、点検記録及びステップS13で抽出された画像データを入力する。
ステップS15では、ポンプ点検報告書生成支援システム1を構成する報告書出力部4が、報告書自動化モデルを取り込んだAIで報告書を自動で生成し、仮報告書としてデータベース10の1つの領域である仮報告書18に格納する。
【0042】
ステップS16では、ポンプ点検報告書生成支援システム1を構成するAI出力の修正部6が、報告書出力部4による仮報告書を点検者に表示し修正が必要か否かの判断を促す。ステップS16にて修正が必要と判断された場合は、ステップS17へ進み、AI出力の修正部6が修正報告書を作成し処理を終了する。一方、ステップS16にて修正が不要と判断された場合には、ステップS15で作成された仮報告書を確認済み最終報告書として処理を終了する。なお、図示しないが、ステップS15で作成された仮報告書又はステップS16で作成された修正報告書に対するアクセスを点検者に促し、報告者として仮報告書の確認作業を行う。修正が必要な場合はデータ修正、修正が不要な場合は確認のみを行う。修正した場合、修正報告書としてデータベースに格納する。
なお、確認済み最終報告書は、関係者が承認した後、報告者はダウンロード、プリントアウトし、顧客に報告提出するとともに、ポンプの整備・修理の提案を行う。
【0043】
ここで、
図5は画像診断及び報告書作成モデルの概念図である。
図5の「画像診断」の欄に示すように、劣化診断モデル8(
図2)は、ポンプ内部画像をポンプ点検報告書生成支援システム1に入力すると、腐食、欠損、摩耗といった不良個所が人口知能(AI)によりマスキングされ、マスク付き画像を生成する。視認を容易とするため、内部画像11とマスク付き不適合画像12を並べて表示する。
【0044】
また、
図5の「報告書自動化」の欄に示すように、報告書作成モデル9が画像分析AIによりマスク付き不適合箇所出力された画像12と、点検結果13をポンプ点検報告書生成支援システム1に入力すると、報告資料14がテキスト分析AI(図示せず)により自動出力される。
図5では、欠損の部分をマスクする(マスクを貼付する)場合を示したが、例えば、腐食の場合は、欠損の場合と異なる色でマスクすればよい。
【0045】
なお、本実施例では、ポンプ点検報告書生成支援システム1がAI出力の修正部6を有する構成としたがこれに限られるものではない。すなわち、ポンプ点検報告書生成支援システム1がAI出力の修正部6を有しない構成とすることで報告書が自動で作成される構成としてもよい。
【0046】
以上の通り本実施例によれば、ユーザに好適な点検報告書を自動又は半自動で作成し得るポンプ点検報告書生成方法及びポンプ点検報告書生成支援システムを提供することができる。
【0047】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
1…ポンプ点検報告書生成支援システム、2…撮像画像・診断画像データ管理部、3…画像診断出力部、4…報告書出力部、5…経年劣化比較画像検索部、6…AI出力の修正部、7…ユーザ管理・アクセス管理部、8…劣化診断モデル、9…報告書作成モデル、10…データベース、11…内部画像、12…マスク付き不適合画像、13…点検結果、14…報告資料、15…撮像画像データ、16…診断画像データ、17…比較基準・過去画像データ、18…仮報告書、19…修正報告書(確認済最終報告書)、21…吸込ベルマウス、22…インペラケーシング、23…水槽、24…吊下管、25…吐出曲管、26…羽根、27…羽根車、28…回転軸、29…下側水中軸受29、30…上側水中軸受、31…保持体、32…案内羽根、33…ポンプ据付床、34…挿通孔、35…据付用ベース、36…弁、37…ファイバーケーブル、43…圧力空気供給管接続、44…圧力計接続口、45…圧力空気供給管、46…圧縮機