(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168152
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】安全パトロール指摘事項管理支援システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241128BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084589
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 朋美
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光明
(72)【発明者】
【氏名】中田 祐司
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】安全について指摘事項等の報告及び管理を、現場を知る担当者に依存せず且つ作業負荷を低減させつつ確実に行うこと。
【解決手段】安全についての指摘事項を入力する携帯端末11と、安全パトロール中の映像を取得する撮影装置12と、指摘事項に関する情報を登録し保存して管理するプラットフォーム13とを有し、プラットフォームは、指摘事項に関する情報を登録する登録機能部16と、指摘事項に関する情報から帳票を作成する帳票自動作成機能部17とを備えるほか、音声文字変換機能部18と、撮影装置の映像から撮影装置の位置を算出する位置情報算出機能部19と、撮影装置の位置に基づいて特定した指摘事項の位置を指摘事項の内容と連携させる指摘事項位置連携機能部20と、指摘事項に関する情報を管理エリア毎に分類して保存するエリア別分類機能部21と、処置が必要な指摘事項を抽出する残件抽出機能部22との少なくとも1つを更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場で安全パトロールを担う担当者が所持して現場での安全についての指摘事項を入力するための携帯端末と、
前記担当者が所持して安全パトロール中の周囲の映像を取得する撮影装置と、
前記指摘事項を含む指摘事項に関する情報を登録し保存して管理するプラットフォームと、
前記プラットフォームにて管理された前記指摘事項に関する情報を閲覧するための閲覧用端末と、を有し、
前記プラットフォームは、前記指摘事項に関する情報をデータベースに登録し保存する登録機能部と、前記指摘事項に関する情報を帳票として作成し出力する帳票作成機能部とを備えるほか、
前記携帯端末にて入力された音声を文字に変換する音声文字変換機能部と、前記撮影装置にて取得された映像から前記撮影装置の位置を算出する位置情報算出機能部と、前記撮影装置の位置に基づいて前記指摘事項の位置を特定し、この指摘事項の位置を前記指摘事項の内容と連携させる指摘事項位置連携機能部と、前記指摘事項に関する情報を管理エリア毎に分類して前記データベースに保存するエリア別分類機能部と、処置が必要な前記指摘事項を前記データベースから抽出して表示させる残件抽出機能部と、の少なくとも1つを更に備えて構成されたことを特徴とする安全パトロール指摘事項管理支援システム。
【請求項2】
前記位置情報算出機能部は、撮影装置にて取得された周囲の映像から自己位置推定技術により前記撮影装置の位置を3次元座標で時系列に算出するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の安全パトロール指摘事項管理支援システム。
【請求項3】
前記指摘事項位置連携機能部は、指摘事項がプラットフォームに登録された時刻情報に基づいて、その登録の前後における撮影装置の位置を表す時系列の3次元座標における所定距離の範囲内の位置を前記指摘事項の位置として算出し、更にこの指摘事項の位置と前記指摘事項の内容とを連携させるよう構成されたことを特徴とする請求項2に記載の安全パトロール指摘事項管理支援システム。
【請求項4】
前記エリア別分類機能部は、指摘事項の内容と位置とが連携された指摘事項に関する情報を、前記指摘事項の位置に基づき管理エリア毎に分類して、データベースの対応する階層に保存させるよう構成されたことを特徴とする請求項3に記載の安全パトロール指摘事項管理支援システム。
【請求項5】
前記残存抽出機能部は、データベースの各階層に保存された指摘事項に関する情報のうち、処置が必要な指摘事項を含む前記指摘事項に関する情報を管理エリア毎に抽出して表示させるよう構成されたことを特徴とする請求項4に記載の安全パトロール指摘事項管理支援システム。
【請求項6】
前記プラットフォームが指摘事項位置選択機能部を更に備え、
この指摘事項位置選択機能部は、携帯端末の配置図上で指摘事項の発生位置が選択されたとき、予め記憶された前記配置図座標系とプラント座標系との対応関係に基づき、前記指摘事項の発生位置をプラント座標系に変換することで、前記指摘事項にプラント座標系の位置を付与するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の安全パトロール指摘事項管理支援システム。
【請求項7】
前記携帯端末が点群データを取得可能に構成されると共に、プラットフォームが、指摘事項の対象である指摘対象の位置を推定する指摘対象位置推定機能部を更に備え、
前記指摘対象位置推定機能部は、撮影装置にて取得された周囲の映像と前記携帯端末にて取得された周囲の点群データとから、それぞれに付された時刻情報に基づいて前記携帯端末の位置を推定し、また、前記携帯端末が取得した前記指摘対象の点群データから前記携帯端末の方位を推定し、これらの前記携帯端末の位置及び前記携帯端末の方位から、前記指摘対象の位置を3次元座標で算出するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の安全パトロール指摘事項管理支援システム。
【請求項8】
前記データベースには、指摘対象の位置が、携帯端末により撮影された前記指摘対象の写真と、撮影装置により撮影された前記指摘対象の映像と、前記携帯端末により取得された前記指摘対象の点群データから得られる形状データと共に、登録されるよう構成されたことを特徴とする請求項7に記載の安全パトロール指摘事項管理支援システム。
【請求項9】
現場で安全パトロールを担う担当者が所持する携帯端末が、現場での安全についての指摘事項を入力支援し、
前記担当者が所持する撮影装置が、安全パトロール中の周囲の映像を取得し、
プラットフォームが、前記指摘事項を含む指摘事項に関する情報を登録し保存して管理し、
閲覧用端末が、前記プラットフォームにて管理された前記指摘事項に関する情報を閲覧支援し、
前記プラットフォームは、前記指摘事項に関する情報をデータベースに登録し保存する登録ステップと、前記指摘事項に関する情報を帳票として作成し出力する帳票作成ステップとを行うほか、
前記携帯端末にて入力された音声を文字に変換する音声文字変換ステップと、前記撮影装置にて取得された映像から前記撮影装置の位置を算出する位置情報算出ステップと、前記撮影装置の位置に基づいて前記指摘事項の位置を特定し、この指摘事項の位置を前記指摘事項の内容と連携させる指摘事項位置連携ステップと、前記指摘事項に関する情報を管理エリア毎に分類して前記データベースに保存するエリア別分類ステップと、処置が必要な前記指摘事項を前記データベースから抽出して表示させる残件抽出ステップと、の少なくとも1つを更に行うことを特徴とする安全パトロール指摘事項管理支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、安全パトロール指摘事項管理支援システム及び安全パトロール指摘事項管理支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発電所の安全パトロールでは、指摘事項を抽出し、この指摘事項に対して対象物(指摘対象)をカメラで撮影し、内容をメモ書きし、事務所に戻って帳票を作成して報告している。安全パトロール1回当たりの指摘事項の抽出件数は、100件弱であって抽出事項が多く、記録と編集での作業量が多いため、報告までに時間を要する課題がある。また、指摘事項に対して位置などの記録はなく、写真の情報をもとに是正処置を確認している。このため、発電所の安全パトロールにおける指摘事項の抽出と管理には、現場をよく知る担当者が対応する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-15669号公報
【特許文献2】特開2021-47638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、点検事項を高低のランク付けで分類して、報告書を作成する自動作成機能(特許文献1)や、詳細な記載方法を担当者に依存することで指摘事項の分類や集約が煩雑になる課題に対して、定められた項目で報告書を集約するシステムが提案されている(特許文献2)。
【0005】
実際の現場は工事の進捗とともに時系列で変化していき、安全パトロールの巡回ルートや指摘する場所、指摘する内容が固定されていない。このため、適切な安全管理を行うためには、処置内容や指摘された場所を人が把握している必要があり、担当者に依存する課題がある。また、変化する現場に対して、その情報をタイムリーに反映し共有すると共に、プラント座標などの固定値で処置内容を履歴管理する必要がある。
【0006】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、現場での安全についての指摘事項等の報告及び管理を、現場を知る担当者に依存せず且つ作業負荷を低減させつつ確実に行うことができる安全パトロール指摘事項管理支援システム及び安全パトロール指摘事項管理支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態における安全パトロール指摘事項管理支援システムは、現場で安全パトロールを担う担当者が所持して現場での安全についての指摘事項を入力するための携帯端末と、前記担当者が所持して安全パトロール中の周囲の映像を取得する撮影装置と、前記指摘事項を含む指摘事項に関する情報を登録し保存して管理するプラットフォームと、前記プラットフォームにて管理された前記指摘事項に関する情報を閲覧するための閲覧用端末と、を有し、前記プラットフォームは、前記指摘事項に関する情報をデータベースに登録し保存する登録機能部と、前記指摘事項に関する情報を帳票として作成し出力する帳票作成機能部とを備えるほか、前記携帯端末にて入力された音声を文字に変換する音声文字変換機能部と、前記撮影装置にて取得された映像から前記撮影装置の位置を算出する位置情報算出機能部と、前記撮影装置の位置に基づいて前記指摘事項の位置を特定し、この指摘事項の位置を前記指摘事項の内容と連携させる指摘事項位置連携機能部と、前記指摘事項に関する情報を管理エリア毎に分類して前記データベースに保存するエリア別分類機能部と、処置が必要な前記指摘事項を前記データベースから抽出して表示させる残件抽出機能部と、の少なくとも1つを更に備えて構成されたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の実施形態における安全パトロール指摘事項管理支援方法は、現場で安全パトロールを担う担当者が所持する携帯端末が、現場での安全についての指摘事項を入力支援し、前記担当者が所持する撮影装置が、安全パトロール中の周囲の映像を取得し、プラットフォームが、前記指摘事項を含む指摘事項に関する情報を登録し保存して管理し、閲覧用端末が、前記プラットフォームにて管理された前記指摘事項に関する情報を閲覧支援し、前記プラットフォームは、前記指摘事項に関する情報をデータベースに登録し保存する登録ステップと、前記指摘事項に関する情報を帳票として作成し出力する帳票作成ステップとを行うほか、前記携帯端末にて入力された音声を文字に変換する音声文字変換ステップと、前記撮影装置にて取得された映像から前記撮影装置の位置を算出する位置情報算出ステップと、前記撮影装置の位置に基づいて前記指摘事項の位置を特定し、この指摘事項の位置を前記指摘事項の内容と連携させる指摘事項位置連携ステップと、前記指摘事項に関する情報を管理エリア毎に分類して前記データベースに保存するエリア別分類ステップと、処置が必要な前記指摘事項を前記データベースから抽出して表示させる残件抽出ステップと、の少なくとも1つを更に行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、現場での安全についての指摘事項等の報告及び管理を、現場を知る担当者に依存せず且つ作業負荷を低減させつつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る安全パトロール指摘事項管理支援システムの構成を示すブロック図。
【
図2】
図1の指摘事項位置連携機能部の機能を説明する説明図。
【
図3】(A)は指摘事項の1番~4番の位置が、(B)は指摘事項の5番~9番の位置がそれぞれプロットされた配置図。
【
図4】
図1のデータベースにおける階層構造を示す概略図。
【
図5】
図1の安全パトロール指摘事項管理支援システムの動作を示すフローチャート。
【
図6】
図1の指摘事項位置選択機能部の機能を説明する説明図。
【
図7】第2実施形態に係る安全パトロール指摘事項管理支援システムの構成を示すブロック図。
【
図8】
図7の指摘対象位置推定機能部の機能を説明する説明図。
【
図9】
図7における携帯端末のLiDAR機能により取得された点群データ及び形状データを示し、(A)、(B)が是正処置前のそれぞれの形状データ、点群データを示す図、(C)、(D)が是正処置後のそれぞれ形状データ、点群データを示す図。
【
図10】
図7及び
図8の指摘対象位置推定機能部による指摘対象の位置推定状況を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(
図1~
図6)
図1は、第1実施形態に係る安全パトロール指摘事項管理支援システムの構成を示すブロック図である。この
図1に示す安全パトロール指摘事項管理支援システム10は、現場での安全パトロールで発見された安全について気がかりな指摘対象(気づき対象)に関する指摘事項等の報告及び管理を支援するものであり、安全パトロールを担う担当者が所持する携帯端末11及び撮影装置12と、これらの携帯端末11及び撮影装置12に通信ネットワーク14を介して接続されるプラットフォーム13と、このプラットフォーム13に通信ネットワーク14を介して接続されて例えば事務所等に設けられた閲覧用端末15と、を有して構成される。
【0012】
このうち、プラットフォーム13は、登録機能部16及び帳票自動作成機能部17を備えるほか、音声文字変換機能部18、位置情報算出機能部19、指摘事項位置連携機能部20、エリア別分類機能部21、残件抽出機能部22及び指摘事項位置選択機能部23の少なくとも一つを備える。
【0013】
携帯端末11は、現場での安全についての指摘事項等を入力するものであり、ブラウザ表示機能、入力機能、音声収集機能、撮影機能等の一般的なスマートフォンの機能を備える。ブラウザ表示機能により検索用メニューなどのメニュー画面が表示される。また、入力機能により、現場での安全についての指摘事項の内容(後述)のテキスト入力が可能になる。音声収集機能は、上記入力機能によるテキスト入力が困難な場合に、指摘事項の内容を音声で収集するものである。また、撮影機能は、指摘対象の写真を撮影可能とする。上述のテキストまたは音声入力された指摘事項の内容と指摘対象の写真は、担当者により携帯端末11からプラットフォーム13にアップロードされる。この携帯端末11は、スマートフォンのほか、タブレット端末やポケットPCなどであってもよく、また、1台に限らず複数台であってもよい。
【0014】
閲覧用端末15は、ブラウザ表示機能と帳票ダウンロード機能を備え、ブラウザ表示機能が、プラットフォーム13にて管理された指摘事項に関する情報(後述)の閲覧を可能とする。帳票ダウンロード機能は、プラットフォーム13の帳票自動作成機能部17にて後述の如く作成された帳票を、通信ネットワーク14を介してダウンロード可能とする。この閲覧用端末15は、スマートフォンやタブレット端末、ポケットPCなどであり、1台に限らず複数台であってもよい。また、この閲覧用端末15は、現場及びプラットフォーム13に対して遠隔地の事務所などに設けられてもよい。
【0015】
撮影装置12は、安全パトロールを担う担当者の例えばヘルメットに装着されて、安全パトロール中の周囲の映像(動画)を取得する。この撮影装置12にて取得された映像は、通信ネットワーク14を経てプラットフォーム13にアップロードされる。この撮影装置12は、一般的な動画を撮影可能なカメラ、360度カメラ、またはLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)が用いられる。この撮影装置12は、安全パトロールの開始時に撮影を開示し、安全パトロールの終了時に撮影を終了する。撮影装置12は、撮影終了時に、撮影した映像をプラットフォーム13にアップロードすることを想定するが、撮影中に随時プラットフォーム13に映像をアップロードしてもよい。
【0016】
プラットフォーム13は、指摘事項を含む指摘事項に関する情報を登録し保存して管理するものである。ここで、指摘事項に関する情報は、指摘事項の内容(指摘内容、指摘分類、是正処置の要否)のほかに、指摘事項の位置、携帯端末11による指摘対象の写真、安全パトロール中における撮影装置12の移動軌跡(担当者の移動軌跡)などである。上記指摘分類は、例えば良好、指導、指摘、気がかり、参考、品質などがある。
【0017】
上述のプラットフォーム13における音声文字変換機能部18は、携帯端末11の音声収集機能により収集されて入力された指摘事項の内容に関する音声メモを、文字に変換してテキストデータとする機能を実行する。
【0018】
プラットフォーム13における位置情報算出機能部19は、撮影装置12により取得された周囲の映像から特徴点を抽出し、撮影装置12の移動に伴う特徴点の変化から撮影装置12の位置を推定する自己位置推定技術を用いて、撮影装置12の位置(担当者の位置)を3次元座標で時系列に算出する。この位置情報算出機能部19により算出された撮影装置12の位置の3次元座標は、座標変換機能部24によりプラント座標系の値に変換される。上述の位置情報算出機能部19による撮影装置12の位置算出では、撮影装置12が屋外を移動する場合には、GPS(Global Positioning System)を併用してもよい。また、上述の特徴点処理を活用して、撮影装置12により撮影された映像(動画)から、差分検知技術を用いて機器の配置変化を検出することも可能である。
【0019】
プラットフォーム13における登録機能部16は、指摘事項に関する情報のうち、指摘事項の内容(指摘内容、指摘分類及び是正処置の要旨)、指摘対象の携帯端末11による写真、及び安全パトロール中における撮影装置12の移動軌跡(担当者の移動軌跡)のそれぞれを、時刻情報を付して、プラットフォーム13のデータベース25に登録して保存する。
【0020】
プラットフォーム13における指摘事項位置連携機能部20は、撮影装置12の位置(担当者の位置)に基づいて指摘事項の位置を特定し、この指摘事項の位置と指摘事項の内容とを連携させる。つまり、指摘事項位置連携機能部20は、
図2に示すように、まず、指摘事項の内容が登録機能部16によりデータベース25に登録された時刻情報に基づいて、その登録の前または後における撮影装置12の位置を表す時系列の3次元座標(プラント座標)を求め、この3次元座標における所定距離(例えば1メートル)の範囲内の停止位置を指摘事項の位置として算出する。次に、指摘事項位置連携機能部20は、算出した指摘事項の位置と指摘事項の内容(指摘内容、指摘分類及び是正処置の要旨)とを、指摘事項の登録時の時刻情報に基づいて連携する。
【0021】
指摘事項位置連携機能部20により算出された指摘事項の位置は、プラットフォーム13における指摘事項位置プロット機能部26(
図1)によって、
図3(A)及び(B)に示すように配置図(レイアウト図)上にプロットされる。
図3(A)では指摘事項の1番~4番までの指摘事項の位置が、
図3(B)では指摘事項の5番~9番までの指摘事項の位置が、それぞれ配置図上に示されている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、プラットフォーム13におけるエリア別分類機能部21は、指摘事項に関する情報を、その指摘事項の位置に基づき管理エリア毎に分類してデータベース25に保存する。
図4に示すように、データベース25は、上記管理エリアに対応した階層に区分されており、この各階層に指摘事項に関する情報がエリア別分類機能部21により保存される。
【0023】
図1に示すプラットフォーム13における帳票自動作成機能部17は、安全パトロールの終了後に、指摘事項に関する情報を、指摘事項位置プロット機能部26により作成された指摘事項の位置記載の配置図と共に、帳票として作成し出力する。
【0024】
プラットフォーム13における残件抽出機能部22は、データベース25の各階層に保存された指摘事項に関する情報のうち、是正処置が必要な指摘事項を含む指摘事項に関する情報を、データベース25から管理エリア毎に抽出して、携帯端末11及び閲覧用端末15に表示させる。
【0025】
次に、安全パトロール指摘事項管理支援システム10の動作を、
図5を用いて説明する。
担当者による安全パトロールの開始時に(S1)、担当者により携帯端末11が通信ネットワーク14を介してプラットフォーム13に接続され、携帯端末11のブラウザ表示機能により携帯端末11にメニューが表示される(S2)。このとき、プラットフォーム13のデータベース25に是正処置が必要な指摘事項に関する情報が保存されている場合には、この指摘事項に関する情報が、プラットフォーム13の残件抽出機能部22により管理エリア毎に抽出されて(S3)、携帯端末11に表示される。また、安全パトロールの開始時には、撮影装置12による周囲の映像の撮影も開始される(S4)。
【0026】
安全パトロールにおいて、安全について気がかりな指摘対象を発見した場合には(S5)、担当者により、携帯端末11の入力機能または音声入力機能を用いて指摘事項が入力され(S6)、携帯端末11の撮影機能を用いて指摘対象が写真撮影されて(S7)、これらがプラットフォーム13にアップロードされる。指摘事項が音声入力された場合には、この指摘事項は、プラットフォーム13の音声文字変換機能部18により文字変換された後(S8)、上述の撮影された写真と共に、登録機能部16により時刻情報を付してデータベース25に登録される(S9)。
【0027】
担当者の移動(S10)による安全パトロールの継続中に新たな指摘対象を発見した際には、上述のステップS5~S9が、それぞれステップS11~S15として繰り返される。この担当者の移動(S16)による安全パトロール中には、通常100件程度の指摘対象が発見されて指摘事項等が登録される。
【0028】
担当者による安全パトロールの終了時に(S17)、撮影装置12による映像の撮影も終了され(S18)、この映像は、撮影装置12からプラットフォーム13にアップロードされる(S19)。そして、プラットフォーム13の位置情報算出機能部19により撮影装置12の映像から撮影装置12の位置が算出され(S20)、この位置が座標変換機能部24によりプラント座標系の値に変換される。プラント座標系に変換された撮影装置12の位置は、登録機能部16により撮影装置12の移動軌跡(担当者の移動軌跡)として、時刻情報を付してデータベース25に登録される(S21)。
【0029】
プラットフォーム13では、指摘事項が登録機能部16によりデータベース25に登録された時刻情報と、時刻情報が付された撮影装置12の移動軌跡とに基づいて、指摘事項位置連携機能部20により、まず指摘事項の位置が特定(算出)され、次にこの指摘事項の位置と指摘事項の内容とが連携される(S22)。また、指摘事項位置連携機能部20により特定された指摘事項の位置は、指摘事項位置プロット機能部26により配置図上にプロットされる。
【0030】
更に、プラットフォーム13では、安全パトロールの終了後に、指摘事項の内容及び位置並びに指摘対象の写真を含む指摘事項に関する情報が、指摘事項がプロットされた配置図と共に、帳票自動作成機能部17により帳票として作成される(S23)。この帳票自動作成機能部17にて作成された帳票が担当者により確認された後に(S24)、報告される(S25)。
【0031】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)~(4)を奏する。
(1)
図1に示すように、現場での安全についての指摘事項等が携帯端末11を用いて取り込まれアップロードされるプラットフォーム13では、その登録機能部16及びエリア別分類機能部21が、指摘事項の内容及び位置を含めた指摘事項に関する情報をデータベース25に登録し保存して管理することから、現場での安全パトロール担う担当者に依存せずに、指摘事項に関する情報の管理を確実に行うことができる。
【0032】
(2)プラットフォーム13では、帳票自動作成機能部17が、指摘事項の内容及び位置を含めた指摘事項に関する情報を帳票として作成し出力することから、指摘事項に関する情報の報告を、作業負荷を低減させつつ確実に行うことができる。
【0033】
(3)携帯端末11では、指摘事項の内容を入力機能によりテキスト入力する操作が困難な場合に、音声収集機能により音声で収集することができ、この音声メモをプラットフォーム13の音声文字変換機能部18が文字に変換してテキストデータとしている。このため、安全パトロール中に携帯端末11を用いて指摘事項の内容を入力する現場での入力作業を効率化できる。
【0034】
(4)指摘事項の内容(指摘内容、指摘分類、是正処置の要否)及び位置を含む指摘事項に関する情報が、プラットフォーム13のエリア別分類機能部21により管理エリア毎に分類されて、データベース25の各階層に保存される。このため、安全パトロールの移動ルートが異なる場合であっても指摘事項の是正処置を的確に行うことができ、また、指摘内容が異なる場合であっても指摘事項の管理を最適に行うことができる。
【0035】
ところで、安全パトロールの移動ルートによっては撮影装置12を持ち込めない場合がある。プラットフォーム13における前記指摘事項位置選択機能部23は、このような場合であっても指摘事項にプラント座標系の位置を付与するものである。
【0036】
つまり、携帯端末11の表示画面には、安全パトロールを行うための配置図(
図3(A)及び(B)参照)が表示される。安全パトロールの実施中に指摘対象が発見された場合、そのときの安全パトロール中の担当者の位置が指摘事項の発生位置として、携帯端末11の表示画面の配置図上で担当者により選択(例えば、携帯端末11の表示画面にタッチ操作)される。一方、プラットフォーム13の指摘事項位置選択機能部23には、
図6に示すように、携帯端末11の表示画面に表示された配置図上の座標系[点A(x
a、y
a)、点B(x
b、y
b)]と、プラント座標系[点A(X
a、Y
a)、点B(X
b、Y
b)]との対応関係Mが、担当者等により手入力またはデータベース25から抽出されて予め記録されている。
【0037】
従って、指摘事項位置選択機能部23は、携帯端末11に表示された配置図上で指摘事項の発生位置[例えば位置(x1、y1)]が選択されたとき、上記対応関係Mに基づいて、この指摘事項の発生位置をプラント座標系の位置[例えば位置(X1、Y1)]に変換することで、指摘事項にプラント座標系の位置を付与する。このようにして、安全パトロール中に撮影装置12を持ち込むことができず、位置情報算出機能部19、座標変換機能部24及び指摘事項位置連携機能部20により撮影装置12の映像に基づき指摘事項の位置を算出できない場合であっても、指摘事項位置選択機能部23によって、指摘事項にプラント座標系の位置を付与することができる。
【0038】
なお、指摘事項位置選択機能部23による座標変換は、携帯端末11により指摘事項の発生位置が選択される度に実行されてもよいが、指摘事項の発生位置が全て選択されてデータベース25に保存された後に、一括して実施されてもよい。
【0039】
[B]第2実施形態(
図7~
図10)
図7は、第2実施形態に係る安全パトロール指摘事項管理支援システムの構成を示すブロック図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0040】
本第2実施形態の安全パトロール指摘事項管理支援システム30が第1実施形態と異なる点は、携帯端末31が、第1実施形態の携帯端末11の機能に加えて、点群データを取得可能なLiDAR機能を更に備え、プラットフォーム32が、指摘事項の対象である指摘対象P(
図10)の位置を算出して推定する指摘対象位置推定機能部33を、第1実施形態の位置情報算出機能部19に代えて有する点である。
【0041】
携帯端末31のLiDAR機能を用いることで、指摘対象P及び周囲の点群データを取得することが可能になる。
図9に、携帯端末31のLiDAR機能で取得された指摘対象P及び周囲の点群データと、この点群データから得られた形状データを示す。
図9(A)、(B)がそれぞれ是正処置前の形状データ、点群データを示し、
図9(C)、(D)がそれぞれ是正処置後の形状データ、点群データを示す。
【0042】
指摘対象位置推定機能部33は、
図8に示すように、撮影装置12にて取得された周囲の映像と携帯端末31のLiDAR機能により取得された周囲の点群データとから、それぞれに付された時刻情報に基づいて、携帯端末31の位置(担当者の位置)を自己位置推定技術により推定する。
図10の符号Rは、安全パトロールにおける携帯端末31及び撮影装置12の移動ルート(担当者の移動ルート)を示す。また、
図8に示すように、指摘対象位置推定機能部33は、携帯端末31のLiDAR機能により取得された指摘対象Pの点群データから、指摘対象Pへ向かう携帯端末31の方位を、時刻情報を付して推定する。
図9の符号Sは、指摘対象Pへ向かう携帯端末31の方位を示す。
図8に示すように、指摘対象位置推定機能部33は、上述の携帯端末31の位置(移動ルートR)と携帯端末31の方位Sとから、時刻情報に基づき、指摘対象Pの位置を3次元座標で算出して推定する。
【0043】
指摘対象位置推定機能部33により推定された指摘対象Pの位置は、座標変換機能部24(
図7)によりプラント座標系の値に変換された後、
図8に示すように、携帯端末31の撮影機能により撮影された指摘対象Pの写真と、撮影装置12により撮影された指摘対象Pの映像と、携帯端末31のLiDAR機能により取得された指摘対象Pの点群データから得られる形状データと共に、時刻情報を付して登録機能部16によりデータベース25に登録される。また、指摘対象位置推定機能部33により推定された指摘対象Pの位置は、
図7に示す指摘事項位置連携機能部34により、時刻情報に基づき指摘事項の内容と連携されると共に、指摘対象位置プロット機能部35により配置図上にプロットされる。
【0044】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態においても、第1実施形態の効果(1)~(4)と同様な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
【0045】
(5)携帯端末31のLiDAR機能により取得された点群データと撮影装置12により取得された映像とから、指摘対象位置推定機能部33によって指摘対象Pの位置が算出されて推定され、この指摘対象Pの位置が指摘事項位置連携機能部34により、指摘事項の内容(指摘内容、指摘分類、是正処置の要否)と連携される。そして、これらの指摘対象の位置と指摘事項の内容とが、携帯端末31による指摘事項Pの写真と、撮影装置12による指摘対象Pの映像と、携帯端末31により取得された点群データから得られる指摘対象Pの形状データと共に、エリア別分類機能部21により管理エリア毎にデータベース25に保存される。これにより、指摘対象Pの位置及び形状の特定、並びに指摘対象Pについての是正処置の管理を確実に行うことができる。このため、次回の安全パトロールにおいて、撮影装置12の映像や携帯端末31の写真から、指摘対象Pについて是正処置がなされたか否かを的確に判断することができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10…安全パトロール指摘事項管理支援システム、11…携帯端末、12…撮影装置、13…プラットフォーム、15…閲覧用端末、16…登録機能部、17…帳票自動作成機能部、18…音声文字変換機能部、19…位置情報算出機能部、20…指摘事項位置連携機能部、21…エリア別分類機能部、22…残件抽出機能部、23…指摘事項位置選択機能部、25…データベース、26…指摘事項位置プロット機能部、30…安全パトロール指摘事項管理支援システム、31…携帯端末、32…プラットフォーム、33…指摘対象位置推定機能部、M…対応関係、P…指摘対象、R…移動ルート、S…方位