(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168156
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241128BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20241128BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20241128BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 303K
A01C11/02 331D
A01B69/00 303T
G05D1/02 N
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084595
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】小佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】貝梅 光樹
【テーマコード(参考)】
2B043
2B062
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA03
2B043BA09
2B043BB06
2B043DC03
2B043EA12
2B043EA32
2B043EB04
2B043EB05
2B043EB07
2B043EC13
2B043EC14
2B043ED12
2B043EE02
2B062AA02
2B062AB01
2B062BA46
2B062CA05
2B062CB06
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG11
(57)【要約】
【課題】 直進アシストが終了して車体がつぎの直進アシストのために移動させられているとき、直線経路基準点を適切に取得することが容易でないことに本発明者は気付いた。
【解決手段】 車体100を直線経路に沿って直進させるための直進アシストを行うコントローラー110と、コントローラー110への直進アシスト開始指示をユーザーの手動操作に応じて行う直進アシスト開始指示部材120と、を備えており、直進アシストが終了して車体100がつぎの直進アシストのために移動させられているとき、コントローラー110は、直線経路基準点取得条件が満足されていると判断した時点で、車体100の位置を直線経路基準点として取得するとともに直線経路基準点を記憶し、直線経路基準点を記憶した後、直進アシスト開始指示が行われた場合は、直進アシストを開始する田植え機である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平行な直線経路に沿って走行する作業車両であって、
車体(100)を前記直線経路に沿って直進させるための直進アシストを行うコントローラー(110)と、
前記コントローラー(110)への直進アシスト開始指示をユーザーの手動操作に応じて行う直進アシスト開始指示部材(120)と、
を備えており、
前記直進アシストが終了して前記車体(100)がつぎの前記直進アシストのために移動させられているとき、前記コントローラー(110)は、直線経路基準点取得条件が満足されていると判断した時点で、前記車体(100)の位置を直線経路基準点として取得するとともに前記直線経路基準点を記憶し、前記直線経路基準点を記憶した後、前記直進アシスト開始指示が行われた場合は、前記直進アシストを開始することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記コントローラー(110)は、前記直線経路基準点を記憶した後、前記直線経路基準点取得条件が満足されていないと判断した時点より前に、前記直進アシスト開始指示が行われていない場合は、前記記憶されている直線経路基準点を破棄するが、前記直進アシスト開始指示が行われていた場合は、前記記憶されている直線経路基準点を破棄しないことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記コントローラー(110)は、前記直線経路基準点を記憶した後、直進アシスト開始条件が満足されていないと判断した時点より前に、前記直進アシスト開始指示が行われていない場合は、前記記憶されている直線経路基準点を破棄するが、前記直進アシスト開始指示が行われていた場合は、前記記憶されている直線経路基準点を破棄しないことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記コントローラー(110)は、前記直線経路基準点を破棄した後、直線経路基準点再取得条件が満足されていると判断する時点まで、前記直線経路基準点を再び取得しないことを特徴とする請求項2または3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記直線経路基準点再取得条件は、前記直線経路基準点が破棄された時点からの経過時間に関する条件であることを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記直線経路基準点再取得条件は、前記直線経路基準点が破棄された時点からの操舵角度に関する条件であることを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項7】
前記直線経路基準点が記憶されているか否かに関するアラートが、前記ユーザーに対して出力されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項8】
後輪(210)の駆動力を利用することにより駆動される施肥機(220)を備えており、
前記施肥機(220)の駆動速度は、遊星歯車機構(230)を介して出力されるモーター(240)の回転数に応じて調節可能であることを特徴とする作業車両。
【請求項9】
圃場の水面までの距離を測定する距離センサー(320)を備えており、
圃場資材の投入量は、前記圃場の前記水面までの前記距離に基づいて算出された圃場深さに応じて調節可能であり、
前記距離センサー(320)は、車体側面視において、車体前側部へ設けられたバンパー(310)の最前面と比べて後方へ位置することを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植え機のような作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS装置と、ティーチング経路生成手段を備え、GPS装置により計測される位置情報に基づいて、ティーチング経路生成手段によりティーチング経路を生成し、さらに、ティーチング経路生成手段によりティーチング経路に対して平行な目標経路を生成し、目標経路上を自律的に走行する農用作業車において、オペレータにより、自動旋回操作具が操作されることにより、次の目標経路へ向けて自動的に旋回し、かつ、旋回動作の終了後に引き続き、次の目標経路上を自律的に走行する農用作業車のような作業車両が、知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、作業車両ユーザーのさまざまなニーズを考慮し、便利な機能が田植え機のような作業車両へつぎつぎと実装される趨勢はますます加速すると考えている。
【0005】
しかしながら、従来の作業車両については、便利な機能を利用するときの使い勝手が必ずしもよくないことに本発明者は気付いた。
【0006】
より具体的には、たとえば、直進アシストが終了して車体がつぎの直進アシストのために移動させられているとき、直線経路基準点を適切に取得することが容易でないことに本発明者は気付いた。
【0007】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、使い勝手を向上することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、複数の平行な直線経路に沿って走行する作業車両であって、
車体(100)を前記直線経路に沿って直進させるための直進アシストを行うコントローラー(110)と、
前記コントローラー(110)への直進アシスト開始指示をユーザーの手動操作に応じて行う直進アシスト開始指示部材(120)と、
を備えており、
前記直進アシストが終了して前記車体(100)がつぎの前記直進アシストのために移動させられているとき、前記コントローラー(110)は、直線経路基準点取得条件が満足されていると判断した時点で、前記車体(100)の位置を直線経路基準点として取得するとともに前記直線経路基準点を記憶し、前記直線経路基準点を記憶した後、前記直進アシスト開始指示が行われた場合は、前記直進アシストを開始することを特徴とする作業車両である。
【0009】
第2の本発明は、前記コントローラー(110)は、前記直線経路基準点を記憶した後、前記直線経路基準点取得条件が満足されていないと判断した時点より前に、前記直進アシスト開始指示が行われていない場合は、前記記憶されている直線経路基準点を破棄するが、前記直進アシスト開始指示が行われていた場合は、前記記憶されている直線経路基準点を破棄しないことを特徴とする第1の本発明の作業車両である。
【0010】
第3の本発明は、前記コントローラー(110)は、前記直線経路基準点を記憶した後、直進アシスト開始条件が満足されていないと判断した時点より前に、前記直進アシスト開始指示が行われていない場合は、前記記憶されている直線経路基準点を破棄するが、前記直進アシスト開始指示が行われていた場合は、前記記憶されている直線経路基準点を破棄しないことを特徴とする第2の本発明の作業車両である。
【0011】
第4の本発明は、前記コントローラー(110)は、前記直線経路基準点を破棄した後、直線経路基準点再取得条件が満足されていると判断する時点まで、前記直線経路基準点を再び取得しないことを特徴とする第2または第3の本発明の作業車両である。
【0012】
第5の本発明は、前記直線経路基準点再取得条件は、前記直線経路基準点が破棄された時点からの経過時間に関する条件であることを特徴とする第4の本発明の作業車両である。
【0013】
第6の本発明は、前記直線経路基準点再取得条件は、前記直線経路基準点が破棄された時点からの操舵角度に関する条件であることを特徴とする第4の本発明の作業車両である。
【0014】
第7の本発明は、前記直線経路基準点が記憶されているか否かに関するアラートが、前記ユーザーに対して出力されることを特徴とする第1から第3のいずれかの本発明の作業車両である。
【0015】
第8の本発明は、後輪(210)の駆動力を利用することにより駆動される施肥機(220)を備えており、
前記施肥機(220)の駆動速度は、遊星歯車機構(230)を介して出力されるモーター(240)の回転数に応じて調節可能であることを特徴とする作業車両である。
【0016】
第9の本発明は、圃場の水面までの距離を測定する距離センサー(320)を備えており、
圃場資材の投入量は、前記圃場の前記水面までの前記距離に基づいて算出された圃場深さに応じて調節可能であり、
前記距離センサー(320)は、車体側面視において、車体前側部へ設けられたバンパー(310)の最前面と比べて後方へ位置することを特徴とする作業車両である。
【発明の効果】
【0017】
第1の本発明により、使い勝手を向上することが可能である。
【0018】
第2の本発明により、第1の本発明の効果に加えて、利便性を向上することが可能である。
【0019】
第3の本発明により、第2の本発明の効果に加えて、利便性をさらに向上することが可能である。
【0020】
第4の本発明により、第2または第3の本発明の効果に加えて、使い勝手をさらに向上することが可能である。
【0021】
第5の本発明により、第4の本発明の効果に加えて、構成を簡素化することが可能である。
【0022】
第6の本発明により、第4の本発明の効果に加えて、構成を簡素化することが可能である。
【0023】
第7の本発明により、第1から第3のいずれかの本発明の効果に加えて、作業者の負担を軽減することが可能である。
【0024】
第8の本発明により、使い勝手を向上することが可能である。
【0025】
第9の本発明により、使い勝手を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明における実施の形態の田植え機の左側面図
【
図2】本発明における実施の形態の田植え機の直線経路基準点取得および直進アシスト開始指示の説明図
【
図3】本発明における実施の形態の田植え機の作業車両動作制御方法の説明図
【
図4】本発明における実施の形態の田植え機の直進アシストセンサー近傍の説明図
【
図5】本発明における実施の形態の田植え機の施肥機近傍の説明図(その一)
【
図6】本発明における実施の形態の田植え機の施肥機近傍の説明図(その二)
【
図7】本発明における実施の形態の田植え機の施肥機近傍の説明図(その三)
【
図8】本発明における実施の形態の田植え機の距離センサー近傍の説明図(その一)
【
図9】本発明における実施の形態の田植え機の距離センサー近傍の説明図(その二)
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
以下同様であるが、いくつかの構成要素は図面において示されていないこともあり、透視的にまたは省略的に示されていることもある。
【0029】
本実施の形態の田植え機の動作について説明しながら、コントローラー110などにより実現される、本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法についても説明する。
【0030】
本実施の形態の田植え機は、複数の平行な直線経路に沿って走行する、本発明における作業車両の具体的な例である。
【0031】
(1)はじめに、
図1から4を参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作について具体的に説明する。
【0032】
ここに、
図1は本発明における実施の形態の田植え機の左側面図であり、
図2は本発明における実施の形態の田植え機の直線経路基準点取得および直進アシスト開始指示の説明図であり、
図3は本発明における実施の形態の田植え機の作業車両動作制御方法の説明図であり、
図4は本発明における実施の形態の田植え機の直進アシストセンサー1006近傍の説明図である。
【0033】
本実施の形態の作業車両動作制御方法は、ステップS1からS7を有するフローチャートに基づいて行われる制御方法である。
【0034】
直進アシスト開始指示部材120は、車体100を直線経路に沿って直進させるための直進アシストを行うコントローラー110への直進アシスト開始指示をユーザーの手動操作に応じて行う部材である。
【0035】
本実施の形態においては、直線経路基準点取得条件が満足されている場合において、直進アシスト開始指示部材120としてのフィンガーレバーのレバー上げ操作が手動で行われた場合において、直進アシストは開始される。
【0036】
直進アシストが終了して車体100がつぎの直進アシストのために移動させられているとき、コントローラー110は、直線経路基準点取得条件が満足されていると判断した時点で、車体100の位置を直線経路基準点として取得するとともに直線経路基準点を記憶し、直線経路基準点を記憶した後、直進アシスト開始指示が行われた場合は、直進アシストを開始する。
【0037】
直線経路から直線経路への移行のために旋回は、典型的には手動で行われるが、あらかじめ定められた目標の直線経路を目指す手法などを利用することにより、自動で行われてもよい。何れにせよ、車体100が旋回させられているとき、直線経路基準点Pが自動で取得されて記憶されると、直線経路基準点Pを通る直線経路Rが旋回の直前の直線経路と平行な直線経路として設定される。
【0038】
円弧状の旋回経路をたどる旋回走行が行われることにより、車体100が通常の意味で旋回させられているとき、車体100の位置が直線経路基準点として取得されることがあり、他方で、このような旋回走行が終了した後、車体100の位置が直線経路基準点として取得されることもある。より具体的には、旋回走行が終了した後、ユーザーの操舵技術レベルにも依存するが、隣接する苗植付け条の間の間隔を調節するためのいわゆる条合わせが行われるタイミングと、植込み桿が回転させられて植付けのための直進走行が開始されるタイミングと、の間の時点で、操舵角度が直進ステアリング位置に対応するおよそゼロの角度と安定的に一致して直線経路基準点取得条件がしばしば満足され、車体100の位置が直線経路基準点として取得されることもある。
【0039】
本実施の形態においては、つぎの(要求1)から(要求9)により規定された直線経路基準点取得条件が完全に満足されている場合において、直進アシストによる自動操舵機能が実装されている田植え機のような農機の直線経路基準点Pが取得される。
【0040】
(要求1)複数の平行な直線経路の方向を決定するための第一および第二の基準点である、いわゆるA点およびB点は、直進アシストに先立ってあらかじめ取得されている。
【0041】
(要求2)整地ローター1001は、450ミリメートル未満の高さでオンされている。
【0042】
(要求3)GPS(Global Positioning System)電波は、GPS装置1002により取得可能である。
【0043】
(要求4)旋回している車体100の車体方位と、直線経路の方向により与えられる直進方位と、の間のズレである車体方位ズレは、3度以下である。
【0044】
(要求5)車体姿勢を把握するために重要である、車体100の水平面からの傾きは、10度未満である。
【0045】
(要求6)車体100の車速は、いわゆる路上走行速でない。
【0046】
(要求7)HST(Hydro Static Transmission)装置1003のトラニオン角度は、後進側の角度でない。
【0047】
(要求8)GPS装置1002により測定されたGPS車速は、0.5キロメートル毎時以上である、つまり、およそ0.14メートル毎秒以上である。
【0048】
(要求9)操舵角度を与える操舵装置1004のステアリングハンドル角度は、-20度以上であって+20度以下である。
【0049】
したがって、直線経路基準点Pの取得は、直進アシストの開始と切離されている。
【0050】
たとえば、上述された(要求9)によるステアリング直進判定においては、操舵角度の瞬時値は利用されず、500ミリ秒の平均移動についての操舵角度の平均値が利用される態様も考えられる。小刻みなハンドル操作が隣接する植付け条への移行のために行われて操舵角度が僅かな期間において直進角度範囲を逸脱しても、直線経路基準点Pの取得は問題なく行われるので、直進アシスト開始が妨げられにくい。
【0051】
平均移動時間を与える上述された500ミリ秒の値は100から3000ミリ秒の値で書換え可能であり、ステアリングハンドル角度範囲を与える上述された20度の値は10から100度の値で書換え可能である。直進アシスト開始にともなってステアリングモーターにより駆動されるステアリングハンドルシャフト1005の回転角度を検出する直進アシストセンサー1006については、検出範囲が-150度から150度のステアリング角度範囲に対応しており、分解能がおよそ0.3度である。
【0052】
たとえば、直線経路基準点取得条件において、つぎの(要求10)が追加される態様も考えられる。
【0053】
(要求10)操舵角速度は、90度毎秒以下である。
【0054】
車体方位ズレが3度未満であって直進ハンドル状態が継続されていれば、(要求1)から(要求9)により規定された直線経路基準点取得条件はしばしば満足され、記憶された直線経路基準点Pは保持される。しかしながら、このような場合において、直進アシスト開始指示が行われないで走行距離が大きくなると、直進アシスト開始位置は直線経路基準点Pを通る直線経路Rから大きく離れやすいので、直線経路Rに向かうための車体100の大きな蛇行走行が発生しやすい。(要求10)が追加されることにより、位置合わせのための急速なハンドル操作が大きな操舵角速度で行われたとき、直線経路基準点Pは適切に破棄され、蛇行走行の発生が抑制される。
【0055】
直線経路基準点が記憶されているか否かに関するアラートが、ユーザーに対して出力される。
【0056】
このようなアラートは、アラートランプのオン状態またはオフ状態などを利用して行われる。後述される、許容されたレベルを超える横ズレ量の発生のような事象が、汎用のアラートランプのオン状態およびオフ状態の短い時間間隔での繰返しによる点滅を利用して行われてもよいし、専用のランプのオン状態を利用して行われてもよい。
【0057】
ユーザーは直線経路基準点が記憶されているか否かをアラートで認識することができるので、直線経路基準点が記憶されていないにもかかわらず、直進アシスト開始指示が行われることはほとんどない。
【0058】
しかしながら、直線経路基準点が記憶されていないにもかかわらず、直進アシスト開始指示がユーザーの不注意などに起因して行われた場合において、直進アシスト開始指示の受付けが行われず、直進アシストが開始されない態様も考えられるし、直進アシスト開始指示の仮受付けが行われて直進アシスト開始そのものは保留され、直線経路基準点が取得されると、直進アシストが直ちに開始される態様も考えられることは言うまでもない。
【0059】
コントローラー110は、直線経路基準点を記憶した後、直線経路基準点取得条件が満足されていないと判断した時点より前に、直進アシスト開始指示が行われていない場合は、記憶されている直線経路基準点を破棄するが、直進アシスト開始指示が行われていた場合は、記憶されている直線経路基準点を破棄しない。
【0060】
たとえば、直線経路基準点Pが記憶された後、(要求1)から(要求10)により規定された直線経路基準点取得条件が満足されていないと判断された時点より前に、直進アシスト開始指示が行われていない場合は、記憶されている直線経路基準点Pは破棄される態様も考えられる。
【0061】
なお、コントローラー110は、直線経路基準点を記憶した後、直進アシスト開始条件が満足されていないと判断した時点より前に、直進アシスト開始指示が行われていない場合は、記憶されている直線経路基準点を破棄するが、直進アシスト開始指示が行われていた場合は、記憶されている直線経路基準点を破棄しなくてもよい。
【0062】
たとえば、直線経路Rからの横ズレ量が10センチメートルを超えていないという要求により規定された直進アシスト開始条件が採用されており、直線経路基準点Pが記憶された後、直線経路基準点取得条件が満足されている直進アシストスタンバイ状態においても、直進アシストユニットから受信されたCAN(Controller Area Network)データに基づいて算出された横ズレ量が10センチメートルを超えていると判断された時点より前に、直進アシスト開始指示が行われていない場合は、記憶されている直線経路基準点Pは破棄される態様が考えられる。
【0063】
もちろん、直線経路基準点Pの破棄にともなって、直進アシスト開始指示の受付けは拒否されるので、不適切な直進アシストの開始は抑制される。
【0064】
直進アシスト開始指示が行われることにより、仮取得が行われていた直線経路基準点の正式な採用が決定されると言うことができる。
【0065】
また、コントローラー110は、直線経路基準点を破棄した後、直線経路基準点再取得条件が満足されていると判断する時点まで、直線経路基準点を再び取得しなくてもよい。
【0066】
直線経路基準点Pが破棄された直後でも、直線経路基準点取得条件はしばしば満足されているが、許容されたレベルを超える横ズレ量の発生をアラートなどで認識したユーザーが適切なハンドル操作を行う可能性を考慮して、新しい直線経路基準点の取得が抑制される。
【0067】
直線経路基準点再取得条件は、直線経路基準点が破棄された時点からの経過時間に関する条件である。
【0068】
たとえば、横ズレ量が許容されたレベルを超えて直線経路基準点Pが破棄された後、およそ1秒の観察時間が経過するまで、直線経路基準点は新しく取得されない態様が考えられる。横ズレ量が小さくなって理想的な直進アシストの開始が期待されるタイミングまで、新しい直線経路基準点の取得は抑制される。
【0069】
なお、直線経路基準点再取得条件は、直線経路基準点が破棄された時点からの操舵角度に関する条件であってもよい。
【0070】
たとえば、横ズレ量が許容されたレベルを超えて直線経路基準点Pが破棄された後、操舵角度を与える操舵装置1004のハンドル角度が-1度以上であって+1度以下の角度範囲内に入るまで、直線経路基準点は新しく取得されない態様が考えられる。(要求9)と比べて厳しい操舵角度についての要求に応じたハンドル操作がハンドル中央位置を跨ぐように行われたとき、新しい直線経路基準点が上述された観察時間の経過にかかわらずスムーズに取得されるので、理想的な直進アシストの開始が期待される。
【0071】
(2)つぎに、
図5から7を主として参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0072】
ここに、
図5から7は、本発明における実施の形態の田植え機の施肥機220近傍の説明図(その一から三)である。
【0073】
図5においては正面視における後輪回転軸出力方向が説明されており、
図6においては側面視における後輪回転軸出力方向が説明されており、
図7においてはいわゆる電動HMT(Hydro Mechanical Transmission)施肥機構成が説明されている。
【0074】
後輪回転出力が、ユニバーサルジョイント2002、電動ユニット2003およびローラークラッチ2007を経て、施肥駆動軸への施肥出力として取出される、HMT機構を利用する施肥機220の構成についてより具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0075】
後輪210の駆動力を利用することにより駆動される施肥機220の駆動速度は、遊星歯車機構230を介して出力されるモーター240の回転数に応じて調節可能である。
【0076】
施肥機付き田植え機において、後輪210から回転出力を取得し、電動施肥機である施肥機220を駆動し、遊星ギヤ2006およびモーター240を利用する機構によりモーター回転数に応じて施肥機駆動速度を調節する構成が考えられる。トルクを後輪210の後輪回転から取得することにより、施肥機220が必要とする大きい起動トルクに起因する機械走始め遅延が抑制され、モーター240の大きいトルクを必要としない構成が実現される。
【0077】
上述された構成において、後輪リヤケースとも呼ばれる後輪ケース2001から車体上向きに施肥駆動出力を行う構成が考えられる。
【0078】
上述された構成において、後輪ケース2001からの出力を遊星ギヤ2006からリングギヤ2004へ伝達して施肥駆動軸へ出力するユニットによる構成が考えられる。
【0079】
上述された構成において、サンギヤ2005はモーター240によって回転する構成が考えられる。モーター状態は通常は停止状態であるが、車速が増やされて施肥量が減らされると、モーター240はより高速で回転する。
【0080】
上述された構成において、モーター240の停止状態における施肥駆動軸の回転速度が最大であり、施肥量が80kg/10aの最大量をとる構成が考えられる。
【0081】
上述された構成において、後輪210の後輪回転速度を検知するセンサー、および施肥駆動軸への施肥出力の出力回転数を検知するセンサーを利用する構成が考えられる。
【0082】
上述された構成において、施肥が行われない場合において、施肥駆動軸への出力回転数がゼロになるように、モーター240の回転速度を調節する制御を行う構成が考えられる。
【0083】
上述された構成において、施肥量がゼロと最大量との間で設定される場合において、後輪210の後輪回転速度と施肥駆動軸の回転速度の比をモーター240の回転により制御することにより、施肥量を調節する構成が考えられる。ゼロと80kgとの間の任意の施肥量が設定可能であり、40kg/10aの施肥量による肥料散布の場合において、2:1の回転速度の比でモーター制御を行う。
【0084】
上述された構成において、施肥回転向きと逆の回転向きでモーター240を回転させることにより、いわゆる電動試し繰出しを行う構成が考えられる。
【0085】
上述された構成において、駐車ブレーキペダルがロックされている車体停車状態において、エンジンはオンされているが後輪210は回転していないとき、電動試し繰出しボタンが押されると、モーター240の逆回転が行われる構成が考えられる。
【0086】
上述された構成において、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ付きの田植え機ではアンテナ車速と後輪回転車速から計算されたスリップ率に応じて、後輪210の回転速度および施肥駆動軸の回転速度の比を補正する構成が考えられる。スリップ率による補正を行うことにより、車輪摩滅などにともなう施肥量の不正確性の悪影響は低減される。
【0087】
(3)つぎに、
図8および9を主として参照しながら、本実施の形態の田植え機の構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0088】
ここに、
図8および9は、本発明における実施の形態の田植え機の距離センサー320近傍の説明図(その一および二)である。
【0089】
図8においては側面視における距離センサー配置箇所が説明されており、
図9においては正面視における距離センサー配置箇所が説明されている。
【0090】
可変施肥田植え機の距離センサー320の位置についてより具体的に説明すると、つぎの通りである。
【0091】
圃場資材の投入量は、圃場の水面までの距離に基づいて算出された圃場深さに応じて調節可能である。
【0092】
超音波センサーである距離センサー320の位置から圃場水面までの距離を測定することにより、圃場深さを算出して圃場資材投入量を変更することができる田植え機の構成が考えられる。
【0093】
圃場の水面までの距離を測定する距離センサー320は、車体側面視において、車体前側部へ設けられたバンパー310の最前面と比べて後方へ位置する。
【0094】
上述された構成において、距離センサー320を、田植え機前側のバンパー310の最前面と比べて、車体100の後側へ配置する構成が考えられる。バンパー310の内側への配置により、距離センサー320をガードすることができる。
【0095】
上述された構成において、距離センサー320を、車体正面視において、田植え機前側のバンパー310と重なる位置に配置する構成が考えられる。
【0096】
上述された構成において、距離センサー320を、車体側面視において、田植え機前側のバンパー310と重なる位置に配置する構成が考えられる。
【0097】
上述された構成において、GNSSおよびIMU(Inertial Measurement Unit)のアンテナセンサーで車体100の車体ロール角度を測定して補正を行うアンテナありの型式仕様の構成が考えられる。
【0098】
上述された構成において、GNSSおよびIMUのアンテナセンサーで車体100の車体ピッチ角度を測定して補正を行うアンテナありの型式仕様の構成が考えられる。
【0099】
上述された構成において、本機メインフレームに配置された水平センサーで車体100の車体ピッチ角度を測定して補正を行うアンテナなしの型式仕様の構成が考えられる。
【0100】
上述された構成において、水平センサーを、水側面視における前輪軸と後輪軸との間の範囲において、本機左右方向における中心位置へ配置する構成が考えられる。
【0101】
なお、本発明に関連した発明のプログラムは、上述された本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0102】
また、本発明に関連した発明の記録媒体は、上述された本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の全部または一部の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、読取られたプログラムがコンピュータと協働して利用されるコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【0103】
なお、上述された「一部のステップ(または工程、動作および作用など)」は、それらの複数のステップの内の一つまたはいくつかのステップを意味する。
【0104】
また、上述された「ステップ(または工程、動作および作用など)の動作」は、上述されたステップの全部または一部の動作を意味する。
【0105】
また、本発明に関連した発明のプログラムの一利用形態は、インターネット、光、電波または音波などのような伝送媒体の中を伝送され、コンピュータにより読取られ、コンピュータと協働して動作するという形態であってもよい。
【0106】
また、記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)などが含まれる。
【0107】
また、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などのような純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【0108】
なお、上述されたように、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明における作業車両は、使い勝手を向上することができ、田植え機のような作業車両に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0110】
100 車体
110 コントローラー
120 直進アシスト開始指示部材
210 後輪
220 施肥機
230 遊星歯車機構
240 モーター
310 バンパー
320 距離センサー
1001 整地ローター
1002 GPS装置
1003 HST装置
1004 操舵装置
1005 ステアリングハンドルシャフト
1006 直進アシストセンサー
2001 後輪ケース
2002 ユニバーサルジョイント
2003 電動ユニット
2004 リングギヤ
2005 サンギヤ
2006 遊星ギヤ
2007 ローラークラッチ
P 直線経路基準点
R 直線経路