(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168158
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】エアジェット織機における緯糸張力付与装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/30 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
D03D47/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084597
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】横山 鉄夫
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA15
4L050AB03
4L050CB07
4L050CB13
4L050CB20
4L050CB84
4L050CB85
4L050CC17
(57)【要約】
【課題】ストレッチノズルからの噴射圧の低下を抑制しつつ、開閉バルブの移動を容易とするエアジェット織機における緯糸張力付与装置を提供すること。
【解決手段】エアジェット織機10における緯糸張力付与装置30において、支持バー23に支持されたテンプルベース61の反緯入れ側端部には、ストレッチノズル31に第1エア配管51で接続された開閉バルブ32と、開閉バルブ32と接続されるとともに主タンク34と第2エア配管52で接続され、主タンク34よりも小型の補助タンク33とが設置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のサイドフレームにロッキングシャフトが往復回動可能に支持され、前記ロッキングシャフトと一体に揺動するスレイには、緯糸案内通路を形成する変形筬が設置されるとともに、前記緯糸案内通路に指向するストレッチノズルが、緯糸の緯入れ方向へ移動可能に設置されており、
一対のサイドフレームのうち前記ストレッチノズルに近いサイドフレームには、圧縮エアの供給源としての主タンクが設置されているエアジェット織機における緯糸張力付与装置であって、
前記一対のサイドフレームに架設された支持バーに支持されたテンプルベースの反緯入れ側端部には、前記ストレッチノズルに第1エア配管で接続された開閉バルブと、
前記開閉バルブと接続されるとともに前記主タンクと第2エア配管で接続され、前記主タンクよりも小型の補助タンクとが設置されていることを特徴とするエアジェット織機における緯糸張力付与装置。
【請求項2】
前記開閉バルブと前記補助タンクは一体化されている請求項1に記載のエアジェット織機における緯糸張力付与装置。
【請求項3】
前記開閉バルブ及び前記補助タンクは、前記テンプルベースに対して別々に設置されている請求項1に記載のエアジェット織機における緯糸張力付与装置。
【請求項4】
前記第2エア配管は、前記補助タンクに接続された補助タンク側配管と、前記主タンクに接続された主タンク側配管と、両配管を接続する継手と、から形成され、前記主タンク側配管は、前記補助タンク側配管より大径であるとともに、前記補助タンク側配管は、フレキシブルな配管である請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のエアジェット織機における緯糸張力付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機における緯糸張力付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示のエアジェット織機における緯糸張力付与装置は、ストレッチノズルと、エアタンクと、開閉バルブと、を備える。ストレッチノズルは、ロッキングシャフトに固定されたスレイに取り付けられている。ストレッチノズルは、緯入れ用の補助ノズルよりも緯入れ方向下流側の位置において、織幅の変更に合わせて緯入れ方向に位置調整可能である。エアタンクは、エアジェット織機のフレームの一部に設置されている。開閉バルブは、エアタンクに取り付けられているとともに、その開閉バルブとストレッチノズルとは、フレキシブルなエア供給管により接続されている。
【0003】
しかし、特許文献1に開示のエアジェット織機における緯糸張力付与装置において、ストレッチノズルと開閉バルブとの距離が遠いため、圧力損失によってストレッチノズルからのエアの噴射圧が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、開閉バルブをストレッチノズルの近傍に配置することで、ストレッチノズルと開閉バルブとの間の圧力損失を低減させることが考えられる。この場合、開閉バルブとエアタンクとは遠く離れたままであるため、開閉バルブとエアタンクとの間の圧力損失を低減するために、エアタンクと開閉バルブとを接続する配管を大径管とする必要がある。しかし、エアタンクと開閉バルブとの間の配管が大径管であると、ストレッチノズルの位置調整に伴って開閉バルブを移動させる際、大径管の剛性の高さを原因として開閉バルブの移動が困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのエアジェット織機における緯糸張力付与装置は、一対のサイドフレームにロッキングシャフトが往復回動可能に支持され、前記ロッキングシャフトと一体に揺動するスレイには、緯糸案内通路を形成する変形筬が設置されるとともに、前記緯糸案内通路に指向するストレッチノズルが、緯糸の緯入れ方向へ移動可能に設置されており、一対のサイドフレームのうち前記ストレッチノズルに近いサイドフレームには、圧縮エアの供給源としての主タンクが設置されているエアジェット織機における緯糸張力付与装置であって、前記一対のサイドフレームに架設された支持バーに支持されたテンプルベースの反緯入れ側端部には、前記ストレッチノズルに第1エア配管で接続された開閉バルブと、前記開閉バルブと接続されるとともに前記主タンクと第2エア配管で接続され、前記主タンクよりも小型の補助タンクとが設置されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、補助タンクは、開閉バルブが閉じている間に主タンクから圧縮エアが供給されることにより、開閉バルブが開く前には、主タンクと同様に、高圧な圧縮エアの圧力を保持している。そして、補助タンクは、テンプルベースに設置されているため、補助タンクは、主タンクよりも開閉バルブに近付けられている。これにより、補助タンクと開閉バルブとの距離を縮めて、補助タンクと開閉バルブとの間の圧力損失を低減できるため、ストレッチノズルからの噴射圧の低下が抑制される。したがって、圧力損失を低減して噴射圧の低下を抑制するために、開閉バルブと主タンクとを大径管で接続する必要がなくなる。その結果、開閉バルブと主タンクとの間の第2エア配管のうち補助タンクよりも主タンク側の配管を、小径の配管で形成することが可能になる。よって、ストレッチノズルの位置調整に伴って、開閉バルブを移動させる際、配管の剛性が開閉バルブの位置調整の妨げになることを抑制できる。
【0008】
エアジェット織機における緯糸張力付与装置について、前記開閉バルブと前記補助タンクは一体化されていてもよい。
これによれば、開閉バルブと補助タンクとの距離をより縮めることができるため、補助タンクと開閉バルブとの距離をより短くして、ストレッチノズルからの噴射圧の低下をさらに抑制できる。
【0009】
エアジェット織機における緯糸張力付与装置について、前記開閉バルブ及び前記補助タンクは、前記テンプルベースに対して別々に設置されていてもよい。
これによれば、開閉バルブと補助タンクとを別々に位置調整できる。
【0010】
エアジェット織機における緯糸張力付与装置について、前記第2エア配管は、前記補助タンクに接続された補助タンク側配管と、前記主タンクに接続された主タンク側配管と、両配管を接続する継手と、から形成され、前記主タンク側配管は、前記補助タンク側配管より大径であるとともに、前記補助タンク側配管は、フレキシブルな配管であってもよい。
【0011】
これによれば、大径な主タンク側配管によって、圧力損失が低減される。そして、小径でフレキシブルな補助タンク側配管によって、開閉バルブの移動が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ストレッチノズルからの噴射圧の低下を抑制しつつ、開閉バルブの移動を容易とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態の緯糸張力付与装置の周辺を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の緯糸張力付与装置の周辺を示す正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の緯糸張力付与装置の周辺を示す側面図である。
【
図4】
図4は、補助タンク及び開閉バルブを位置調整した図である。
【
図5】
図5は、別例の緯糸張力付与装置の周辺を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、エアジェット織機における緯糸張力付与装置を具体化した一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。
<エアジェット織機>
図1及び
図2に示すように、エアジェット織機10は、左右一対のサイドフレーム11を備えるとともに、一対のサイドフレーム11に往復回動可能に支持されたロッキングシャフト12を備える。ロッキングシャフト12には、上方へ延びるアーム12aが複数箇所に配置されている。アーム12aの上端には、スレイ13が支持されている。スレイ13は、ロッキングシャフト12の往復回動により、ロッキングシャフト12と一体に揺動する。
【0015】
スレイ13の支持溝14には変形筬16の下端が挿入されている。変形筬16は、緯糸案内通路16aを形成する。このため、スレイ13には、緯糸案内通路16aを形成する変形筬16が設置されている。複数の変形筬16の下端は、支持溝14に挿入された楔17によって固定されている。変形筬16は、スレイ13の長手方向へ列状に並べた多数の筬羽18によって形成されている。複数の筬羽18の上端は、上枠19により保持されている。
【0016】
エアジェット織機10は、変形筬16の前面側に配置された補助ノズル20を備える。補助ノズル20は、スレイ13に形成された溝13aに移動可能に装着されている。補助ノズル20は、スレイ13の長手方向へ位置調整可能である。
【0017】
図1及び
図3に示すように、エアジェット織機10は、緯糸捕捉パイプ22を備える。緯糸捕捉パイプ22は、変形筬16の後面側に配置されている。緯糸捕捉パイプ22は、スレイ13の長手方向の所定位置において固定されている。緯糸捕捉パイプ22はL字型に屈曲されている。緯糸捕捉パイプ22の短部22aは変形筬16に対してほぼ直角に配置されている。短部22aの先端部には、導入口22bが開口している。導入口22bは、緯糸案内通路16aと連通している。
【0018】
緯糸捕捉パイプ22の長部22cは変形筬16とほぼ平行に配置されている。導入口22bの後端部には、導出口22dが緯入れ方向下流側に向けて開口している。後に説明するストレッチノズル31の噴射孔31aから噴射される圧縮エアは、緯糸案内通路16aを横切って導入口22bに吹き込まれる。圧縮エアは、緯糸捕捉パイプ22内を短部22a側から長部22c側へほぼ直角に曲がりながら流れて、導出口22dから外部へ流出する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、エアジェット織機10は、一対のサイドフレーム11の間に架設された支持バー23を備える。支持バー23の左右両側には、織り縮み防止用のテンプル装置60が設置されている。テンプル装置60は、テンプルベース61と、テンプル装置本体62と、を備える。テンプルベース61は、支持バー23の上面に支持された断面台形状の長板である。テンプルベース61は、当該テンプルベース61の長手を支持バー23の長手に一致させて支持バー23に支持されている。なお、左右方向に延びるテンプルベース61の緯入れ側端部及び反緯入れ側端部には、それぞれテンプル装置60が設置されているが、緯入れ側端部のテンプル装置60は、図示を省略している。以下は、テンプルベース61の反緯入れ側端部に設置されるテンプル装置60について説明する。
【0020】
テンプル装置本体62は、テンプルベース61に対する取付位置を調節できるように、テンプルベース61の長手方向に移動可能である。テンプル装置本体62は、テンプルブラケット63と、テンプルブラケット63に一体化された支持ブラケット65と、支持ブラケット65に支持された図示しないテンプル本体と、を備える。また、テンプル装置本体62は、テンプルブラケット63に一体化された取付片64を備える。テンプル装置本体62において、テンプルブラケット63と、支持ブラケット65と、図示しないテンプル本体とは、一体化されている。
【0021】
テンプル装置本体62の取付片64は、テンプルベース61の側面に対向配置されている。取付片64を貫通させたボルト67をテンプルベース61に押し付けることにより、テンプル装置本体62をテンプルベース61に位置決めできる。また、ボルト67を取付片64から螺退させると、テンプル装置本体62は、テンプルベース61の長手方向へ移動可能になる。
【0022】
<緯糸張力付与装置>
エアジェット織機10の緯糸張力付与装置30は、ストレッチノズル31と、開閉バルブ32と、補助タンク33と、主タンク34と、を備える。
【0023】
主タンク34は、一対のサイドフレーム11のうちの反緯入れ側のサイドフレーム11に設置されている。主タンク34には、高圧の圧縮エアが蓄えられている。主タンク34は、ストレッチノズル31への圧縮エアの供給源である。
【0024】
図3に示すように、ストレッチノズル31は、スレイ13に形成された溝13aに装着されている。ストレッチノズル31は、溝13aの長手方向に沿って位置調整可能である。ストレッチノズル31の噴射孔31aは、緯糸捕捉パイプ22の導入口22bと対向するように、緯糸案内通路16aに指向して設置されている。
【0025】
図1、
図2及び
図3に示すように、開閉バルブ32及び補助タンク33は、テンプル装置本体62に一体化されている。テンプルブラケット63には、ブラケット42が締結されている。ブラケット42は、テンプルブラケット63に取り付けられる第1取付片42aと、補助タンク33に取り付けられる第2取付片42bと、開閉バルブ32の取り付けられる第3取付片42cと、を備える。ブラケット42は、第1取付片42a、第2取付片42b、及び第3取付片42cが形成されるように、板材を屈曲させて形成されている。
【0026】
第1取付片42aによってテンプルブラケット63に取り付けられたブラケット42において、第2取付片42bは、補助タンク33に取り付けられるとともに、第3取付片42cには、開閉バルブ32が取り付けられている。したがって、ブラケット42によって、テンプル装置本体62と、開閉バルブ32と、補助タンク33とが一体化されている。テンプルベース61に対してテンプル装置本体62を移動させると、テンプル装置本体62と一体になって開閉バルブ32及び補助タンク33も移動する。また、テンプル装置本体62をテンプルベース61に取り付けると、開閉バルブ32及び補助タンク33も、テンプル装置本体62を介してテンプルベース61に設置される。よって、開閉バルブ32及び補助タンク33は、テンプルベース61に設置されている。
【0027】
開閉バルブ32は、ストレッチノズル31と第1エア配管51によって接続されている。第1エア配管51は、例えば、樹脂ホースといったフレキシブルな配管である。第1エア配管51は、ストレッチノズル31と開閉バルブ32の間に余長を持ってストレッチノズル31と開閉バルブ32を接続している。
【0028】
補助タンク33は、第1継手55及び第3エア配管53を介して開閉バルブ32と接続されている。第1継手55は、補助タンク33に接続されている。第3エア配管53は、例えば、樹脂ホースといったフレキシブルな配管である。第3エア配管53は、開閉バルブ32と補助タンク33の間に余長を持って開閉バルブ32と補助タンク33を接続している。
【0029】
主タンク34は、一対のサイドフレーム11のうち、開閉バルブ32の取付側、すなわち反緯入れ側のサイドフレーム11に設置されている。そして、開閉バルブ32の近傍にはストレッチノズル31が設置されているため、主タンク34は、一対のサイドフレーム11のうちストレッチノズル31に近いサイドフレーム11に設置されている。主タンク34は、第1継手55及び第2エア配管52を介して補助タンク33と接続されている。第2エア配管52は、補助タンク側配管52aと、第2継手56と、主タンク側配管52bと、を備える。補助タンク側配管52aの第1端部は、第1継手55に接続されるとともに、補助タンク側配管52aの第2端部は、第2継手56に接続されている。主タンク側配管52bの第1端部は、第2継手56に接続されるとともに、主タンク側配管52bの第2端部は、主タンク34に接続されている。
【0030】
補助タンク側配管52aは、フレキシブルな配管である。また、補助タンク側配管52aは、第1継手55と第2継手56との間に余長部を持って第1継手55と第2継手56を接続している。
【0031】
主タンク側配管52bは、鋼管製であるとともに、補助タンク側配管52aよりも大径な大径管である。主タンク側配管52bは、第2継手56から下方へ直線状に延びるとともに、第2端部付近で主タンク34に向けて屈曲している。主タンク側配管52bは、サイドフレーム11に一体化されるとともに、主タンク側配管52bの剛性によって、主タンク側配管52b単独で直線状に延びる形状を保持している。そして、この主タンク側配管52bの第1端部に接続された第2継手56は、主タンク側配管52bの剛性によって所定の位置に位置決めされている。
【0032】
つまり、第2継手56は、支持バー23の上面より上側でテンプルベース61の近くに位置している。したがって、この第2継手56と第1継手55とを接続する補助タンク側配管52aは、支持バー23の上面より上側に配設されている。また、補助タンク側配管52aの余長部も、支持バー23の上面より上側に配設されている。そして、補助タンク側配管52aは、支持バー23の上面より上側にて、第1継手55と第2継手56との間で、余長部を長くしたり、短くしたりできる。つまり、補助タンク側配管52aは、支持バー23の上面より上側に配設されたフレキシブルな配管である。
【0033】
第1継手55と第2継手56との間での補助タンク側配管52aの長さは、テンプル装置本体62の移動範囲に依存して設定される。テンプル装置本体62が、主タンク34の設置されたサイドフレーム11から最も離れた位置に移動したときでも、補助タンク側配管52aが突っ張らずに、余長を持てるように、補助タンク側配管52aの長さが設定されている。
【0034】
主タンク34に蓄えられた高圧の圧縮エアは、主タンク側配管52b、第2継手56、補助タンク側配管52a及び第1継手55を経由して補助タンク33に補給されている。大径な主タンク側配管52bにより、主タンク側配管52bを補助タンク側配管52aと同じ径とした場合と比較して、主タンク34と補助タンク33との間での圧力損失が低減されている。
【0035】
上記のように、開閉バルブ32と主タンク34との間には、第3エア配管53と、第1継手55と、補助タンク33と、第2エア配管52とからなる流路Rが形成されている。そして、この流路R上には、主タンク34よりも小型の補助タンク33が設けられている。補助タンク33の大きさは、ストレッチノズル31の1回のエア噴射で所定値以上の圧力低下が生じないような大きさとされている。
【0036】
上記の緯糸張力付与装置30において、開閉バルブ32が開くと、補助タンク33に蓄えられた圧縮エアが、第1エア配管51を経由してストレッチノズル31に供給される。また、開閉バルブ32が閉じると、第1エア配管51が遮断されるため、補助タンク33からストレッチノズル31への圧縮エアの供給が停止され、主タンク側配管52b及び補助タンク側配管52aを介して、次の噴射開始までに主タンク34から補助タンク33に圧縮エアが供給される。したがって、補助タンク33は、開閉バルブ32が閉じている間に主タンク34から圧縮エアが供給されることにより、開閉バルブ32が開く前には、主タンク34と同様に、高圧な圧縮エアの圧力を保持している。
【0037】
<エアジェット織機による織成>
エアジェット織機10の運転中、図示しない緯糸は、図示しない緯入れノズル及び補助ノズル20によって緯糸案内通路16a内に緯入れされる。緯入れされた緯糸がストレッチノズル31の位置に到達すると、開閉バルブ32が開く。補助タンク33内の圧縮エアは、第3エア配管53、開閉バルブ32及び第1エア配管51を経由してストレッチノズル31に供給される。すると、ストレッチノズル31の噴射孔31aから、圧縮エアが、緯糸案内通路16aと直角な方向に噴射される。
【0038】
緯糸案内通路16a内の緯糸は、圧縮エアによって緯糸捕捉パイプ22の導入口22b内に吹き込まれる。圧縮エアは、緯糸捕捉パイプ22の短部22aから長部22cに案内される。したがって、緯糸は、圧縮エアによって、緯糸案内通路16aから短部22aに向けて直角に屈曲された後、さらに短部22aから長部22cに向けて直角に屈曲された状態に維持される。この状態で筬打ちされると、緯糸が変形筬16、ストレッチノズル31及び緯糸捕捉パイプ22によって把持されているため、緯入れされた緯糸は全体に所定の張力を付与された状態で織成される。
【0039】
<実施形態の作用>
図4に示すように、ある織幅の織物を織成するため、ストレッチノズル31は、スレイ13に形成された溝13aの長手方向に沿って位置調整される。また、織幅に合わせて、テンプル装置本体62も位置調整される。テンプル装置本体62の位置調整では、テンプル装置本体62の取付片64からボルト67を螺退させて、テンプル装置本体62をテンプルベース61に沿って移動可能な状態にする。そして、織幅に合わせた位置に図示しないテンプル本体が位置するように、テンプル装置本体62を位置調整する。このテンプル装置本体62には、開閉バルブ32及び補助タンク33が一体化されているため、テンプル装置本体62の移動と共に開閉バルブ32及び補助タンク33も移動する。
【0040】
そして、所望する位置に位置調整されたテンプル装置本体62において、取付片64にボルト67を挿入するとともに、ボルト67をテンプルベース61に押し込む。これにより、テンプル装置本体62が位置決めされるとともに、開閉バルブ32及び補助タンク33も位置決めされる。その結果、開閉バルブ32及び補助タンク33は、テンプルベース61の反緯入れ側端部に設置される。
【0041】
ストレッチノズル31の位置調整に合わせて開閉バルブ32及び補助タンク33も位置調整される。このとき、開閉バルブ32と補助タンク33とが一体で移動するため、開閉バルブ32と補助タンク33を接続する第3エア配管53についての伸縮はほとんどない。一方、補助タンク33と主タンク34との距離は変動する。例えば、補助タンク33が主タンク34から離れる場合、余長部を持つ補助タンク側配管52aは、余長部を短くするように伸びる。この補助タンク側配管52aの伸長によって、補助タンク33の移動が許容される。その一方で、主タンク側配管52bは、伸長しない。
【0042】
逆に、
図4の場合と比較して、
図2に示すように、補助タンク33が主タンク34に近付く場合、ストレッチノズル31は、主タンク34の設置されたサイドフレーム11に近付く方向へ移動させて位置調整される。また、織幅に合わせて、テンプル装置本体62も位置調整される。このとき、上記と同じ方法によってテンプル装置本体62を移動させるとともに、テンプル装置本体62と一体に、開閉バルブ32及び補助タンク33も移動させる。
【0043】
このとき、開閉バルブ32と補助タンク33が一体で移動するため、開閉バルブ32と補助タンク33を接続する第3エア配管53については伸縮はほとんどない。一方、補助タンク33は、主タンク34に近付くように移動する。このとき、余長部を伸ばす状態にあった補助タンク側配管52aは、余長部を長くするように変位する。この補助タンク側配管52aの変位によって、補助タンク33の移動が許容される。その一方で、主タンク側配管52bは、伸長しない。
【0044】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)補助タンク33は、開閉バルブ32が閉じている間に主タンク34から圧縮エアが供給されることにより、開閉バルブ32が開く前には、主タンク34と同じ高い圧力の圧縮エアを保持できる。そして、補助タンク33は、テンプルベース61に設置されているため、補助タンク33は、主タンク34よりも開閉バルブ32に近付けられている。このため、補助タンク33と開閉バルブ32との間の圧力損失が低減されて、ストレッチノズル31からの噴射圧の低下が抑制される。その結果、開閉バルブ32と主タンク34との間の第2エア配管52のうち、補助タンク33に接続された補助タンク側配管52aを、主タンク側配管52bよりも小径のフレキシブルな配管で形成することが可能になる。よって、ストレッチノズル31の位置調整に伴って、開閉バルブ32を移動させる際、第2エア配管52の剛性が開閉バルブ32の位置調整の妨げになることを抑制できる。つまり、開閉バルブ32を容易に移動させることができる。
【0045】
(2)開閉バルブ32は、ブラケット42によって補助タンク33と一体化されている。このため、開閉バルブ32と補助タンク33との距離をより縮めて開閉バルブ32と補助タンク33を近付けることができる。これにより、補助タンク33と開閉バルブ32との距離を短くして、ストレッチノズル31からの噴射圧の低下をさらに抑制できる。
【0046】
(3)開閉バルブ32と補助タンク33は、ブラケット42によって一体化されているため、開閉バルブ32の移動と共に補助タンク33も移動する。このため、開閉バルブ32と補助タンク33との距離は一定であるため、開閉バルブ32及び補助タンク33が移動させられても両者の距離が長くなることはない。よって、開閉バルブ32と補助タンク33の移動によって、開閉バルブ32と補助タンク33の間の圧力損失が大きくなることがない。
【0047】
(4)補助タンク33と主タンク34とは、第1継手55及び第2エア配管52によって接続されている。そして、第2エア配管52のうちの主タンク側配管52bは、大径管であるとともに、補助タンク側配管52aは、主タンク側配管52bより小径のフレキシブルな配管である。よって、緯糸張力付与装置30は、大径な主タンク側配管52bによって圧力損失を低減できる。また、緯糸張力付与装置30は、小径でフレキシブルな補助タンク側配管52aによって、開閉バルブ32の移動が容易になる。また、小径でフレキシブルな補助タンク側配管52aによって、補助タンク33の移動の際の補助タンク側配管52aの変形時に発生する抵抗を抑制できるため、補助タンク33の移動を容易に行うことができる。
【0048】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○
図5に示すように、テンプルベース71は、支持バー23よりも上方に支持されていてもよい。そして、支持バー23よりも上方に支持されたテンプルベース71に、図示しないテンプル装置本体が支持される。
【0049】
この場合、開閉バルブ32を第1ブラケット451に取り付けるとともに、補助タンク33を第2ブラケット452に取り付ける。そして、第1ブラケット451及び第2ブラケット452を支持部材453に取り付けるとともに、その支持部材453をテンプルベース71に取り付ける。これにより、開閉バルブ32及び補助タンク33がテンプルベース71に別々に設置される。
【0050】
支持部材453は、テンプルベース71の長手方向に位置調整可能に取り付けられる。また、第1ブラケット451及び第2ブラケット452は、支持部材453に対して、テンプルベース71の長手方向に位置調整可能である。
【0051】
織物の織幅によって、開閉バルブ32及び補助タンク33を別々に位置調整したほうが好ましいときがある。このような場合であっても、支持部材453に対する第1ブラケット451及び第2ブラケット452の位置調整によって、開閉バルブ32及び補助タンク33を別々に移動させて位置調整できる。
【0052】
また、この場合、開閉バルブ32と補助タンク33を接続する第3エア配管53においては、開閉バルブ32と補助タンク33との距離が長くなるように位置調整できるように、第3エア配管53に余長部を持たせるのが好ましい。
【0053】
○主タンク側配管52bは、実施形態のような大径管でなく補助タンク側配管52aのようなフレキシブル管や小径管であってもよい。このように構成しても、ストレッチノズル31及び開閉バルブ32の近くに配設された補助タンク33によって、ストレッチノズル31からの噴射圧の低下を抑制できる。また、補助タンク側配管52aによって、開閉バルブ32の移動が容易となる。
【0054】
○第2継手56は、サイドフレーム11や、支持バー23に固定されていてもよい。
○第2継手56はなくてもよい。この場合、補助タンク33と主タンク34を接続する第2エア配管52は、一本のエア配管によって形成される。
【0055】
○第2継手56は、支持バー23の上面より下方に位置していてもよい。この場合、補助タンク側配管52aは、支持バー23の上面に配設されるとともに、支持バー23の下方にも延びている。
【0056】
○補助タンク33は、テンプルベース61に取り付けられていてもよい。この場合、開閉バルブ32だけがテンプル装置本体62に一体化されるとともに、ストレッチノズル31の位置調整に合わせて移動する。
【0057】
○開閉バルブ32及び補助タンク33は、テンプル装置本体62と一体化されていなくてもよい。例えば、開閉バルブ32及び補助タンク33は、テンプルベース61の上面に沿って個別に移動可能かつ設置可能であってもよい。要は、ストレッチノズル31に追従して位置調整可能であれば、開閉バルブ32及び補助タンク33の設置態様は任意である。
【0058】
○実施形態において、開閉バルブ32とストレッチノズル31を接続する第1エア配管51は、フレキシブルな配管でなく、剛性の高い鋼管であってもよい。
○開閉バルブ32と補助タンク33は、ブラケット42によってテンプル装置本体62に一体化されていたが、開閉バルブ32と補助タンク33は、別々にテンプル装置本体62に一体化されていてもよい。
【0059】
○開閉バルブ32と補助タンク33は、テンプル装置本体62と一体化されていなくてもよい。
○開閉バルブ32と補助タンク33とは、第3エア配管53を介さずに直結していてもよい。
【0060】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記主タンク側配管は、鋼管製である。
【符号の説明】
【0061】
11…サイドフレーム、12…ロッキングシャフト、13…スレイ、16…変形筬、16a…緯糸案内通路、23…支持バー、30…緯糸張力付与装置、31…ストレッチノズル、32…開閉バルブ、33…補助タンク、34…主タンク、51…第1エア配管、52…第2エア配管、52a…補助タンク側配管、52b…主タンク側配管、56…第2継手、61,71…テンプルベース。