(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168159
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/26 20060101AFI20241128BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20241128BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02J3/26
H02J3/00 170
H02J3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084599
(22)【出願日】2023-05-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)掲載日:令和5年3月1日 ウェブサイト:https://gakkai-web.net/p/iee/ippan/mod2.php (2)掲載日:令和5年3月3日 ウェブサイト:https://www.bookpark.ne.jp/cm/ieej/detail/IEEJ-20230307X05701-013-PDF/ (3)開催日:令和5年3月7日 開催場所:電力技術/電力系統技術/半導体電力変換合同研究会 名護市産業支援センター(沖縄県名護市大中1丁目19番24) (4)開催日:令和5年3月16日 開催場所:令和5年電気学会全国大会 名古屋大学 東山キャンパス(名古屋市千種区不老町)
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 孝二郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】福山 良和
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE03
5G066AE09
5G066DA10
5G066GA02
5G066GC10
(57)【要約】
【課題】三相送配電線の電圧不平衡率を改善可能なねん架の状態を精度良く定めることができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置は、電力系統におけるm個のノードのそれぞれにおける三相送配電線の状態を、ねん架しない第1状態、第1パターンでねん架する第2状態、又は第1パターンと異なる第2パターンでねん架する第3状態のいずれかとして得られる複数の組み合わせと、n個のノードのそれぞれにおいて電力系統とやりとりされる電力と、電力系統の構成を示す系統構成情報と、に基づいて、n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率を算出する算出部と、m個のノードのそれぞれにおける三相送配電線の状態を決定変数とし、n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率に基づいて定まる目的関数を最適化する決定部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統におけるm個のノードのそれぞれにおける三相送配電線の状態を、ねん架しない第1状態、第1パターンでねん架する第2状態、又は前記第1パターンと異なる第2パターンでねん架する第3状態のいずれかとして得られる複数の組み合わせと、n個のノードのそれぞれにおいて前記電力系統とやりとりされる電力と、前記電力系統の構成を示す系統構成情報と、に基づいて、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率を算出する算出部と、
前記m個のノードのそれぞれにおける前記三相送配電線の状態を決定変数とし、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率に基づいて定まる目的関数を最適化する、前記m個のノードのそれぞれにおける前記三相送配電線の状態を決定する決定部と、
を備え、
前記決定部は、
前記第2状態、及び前記第3状態のそれぞれの発生確率と異なる発生確率で前記第1状態が発生する、前記決定変数の初期値を生成する
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記目的関数は、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率の平均値、又は、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率の最大値の少なくとも何れかと、前記三相送配電線をねん架するノードの数とに基づいて定まる関数であり、
前記決定部は、
前記目的関数を用いて、前記第1状態、前記第2状態、及び前記第3状態のそれぞれの発生確率を算出する
情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、
前記決定変数を前記三相送配電線の現在の状態にした場合における前記目的関数の値と、ねん架するノードの数の前記目的関数における重みとの比率に基づいて、前記第1状態、前記第2状態、及び前記第3状態のそれぞれの発生確率を算出する
情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、
前記目的関数が最適化された電力系統のノード数とねん架数とで定まる割合に基づいて算出された前記第1状態、前記第2状態、及び前記第3状態のそれぞれの発生確率で、前記初期値を生成する
情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、
前記第1状態の発生確率が、前記第2状態、及び前記第3状態のそれぞれの発生確率より大きくなる前記初期値を生成する
情報処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記決定部は、
メタヒューリスティクスを用いた組み合わせ最適化手法により、前記目的関数を最適化する、前記m個のノードのそれぞれにおける前記三相送配電線の状態を決定する
情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記算出部は、
前記電力系統における所定の位置の電圧、及び電流を計測するセンサの計測値、または、前記n個のノードのそれぞれに接続されたスマートメータの計測値の少なくとも何れかを用いて、前記n個のノードのそれぞれにおいて前記電力系統とやりとりされる電力を算出する
情報処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記目的関数は、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率の平均値、又は、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率の最大値の少なくとも何れかに基づいて定まる関数である
情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置が、
電力系統におけるm個のノードのそれぞれにおける三相送配電線の状態を、ねん架しない第1状態、第1パターンでねん架する第2状態、又は前記第1パターンと異なる第2パターンでねん架する第3状態のいずれかとして得られる複数の組み合わせと、n個のノードのそれぞれにおいて前記電力系統とやりとりされる電力と、前記電力系統の構成を示す系統構成情報と、に基づいて、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率を算出する算出ステップと、
前記m個のノードのそれぞれにおける前記三相送配電線の状態を決定変数とし、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率に基づいて定まる目的関数を最適化する、前記m個のノードのそれぞれにおける前記三相送配電線の状態を決定する決定ステップと、
を含み、
前記決定ステップにおいて、
前記第2状態、及び前記第3状態のそれぞれの発生確率と異なる発生確率で前記第1状態が発生する、前記決定変数の初期値を生成する
情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
電力系統におけるm個のノードのそれぞれにおける三相送配電線の状態を、ねん架しない第1状態、第1パターンでねん架する第2状態、又は前記第1パターンと異なる第2パターンでねん架する第3状態のいずれかとして得られる複数の組み合わせと、n個のノードのそれぞれにおいて前記電力系統とやりとりされる電力と、前記電力系統の構成を示す系統構成情報と、に基づいて、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率を算出する算出処理と、
前記m個のノードのそれぞれにおける前記三相送配電線の状態を決定変数とし、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率に基づいて定まる目的関数を最適化する、前記m個のノードのそれぞれにおける前記三相送配電線の状態を決定する決定処理と、
を実行させ、
前記決定処理において、
前記第2状態、及び前記第3状態のそれぞれの発生確率と異なる発生確率で前記第1状態が発生する、前記決定変数の初期値を生成する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の送電線、または配電線(以下、「送配電線」と称する。)において、相毎の電圧のばらつきは電圧不平衡率(以下、「不平衡率」と称する。)で算出され、不平衡率は小さいことが望ましい。そして、電力系統の不平衡率を解消するため、三相配電線においてねん架が行われることがある。
【0003】
特許文献1には、三相送配電線におけるねん架の位置を決定するねん架位置決定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、電力系統には、太陽光発電や電気自動車充電器などの機器が設置されることがある。これらの機器による不規則な負荷変動又は発電変動は電圧の不平衡を拡大させる。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、実際の負荷変動又は発電変動は考慮していないため、電圧不平衡率を改善可能なねん架の位置及び当該位置におけるねん架のパターン(相の入れ替え方)を必ずしも決定できるとは限らない。
【0006】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、三相送配電線の電圧不平衡率を改善可能なねん架の状態(ねん架の位置及び当該位置におけるねん架のパターン)を精度良く定めることができる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決する主たる本発明は、情報処理装置は、電力系統におけるm個のノードのそれぞれにおける三相送配電線の状態を、ねん架しない第1状態、第1パターンでねん架する第2状態、又は前記第1パターンと異なる第2パターンでねん架する第3状態のいずれかとして得られる複数の組み合わせと、n個のノードのそれぞれにおいて前記電力系統とやりとりされる電力と、前記電力系統の構成を示す系統構成情報と、に基づいて、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率を算出する算出部と、前記m個のノードのそれぞれにおける前記三相送配電線の状態を決定変数とし、前記n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率に基づいて定まる目的関数を最適化する、前記m個のノードのそれぞれにおける前記三相送配電線の状態を決定する決定部と、を備え、前記決定部は、前記第2状態、及び前記第3状態のそれぞれの発生確率と異なる発生確率で前記第1状態が発生する、前記決定変数の初期値を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、三相送配電線の電圧不平衡率を改善可能なねん架の状態を精度良く定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態による情報処理装置10のハードウェア構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態による情報処理装置10がねん架の状態の決定を行う電力系統20の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態による情報処理装置10が備える機能及びデータベースの一例を示す構成図である。
【
図4】第1の実施形態による系統構成情報のデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
【
図5】第1の実施形態による付帯機器情報のデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
【
図6】第1の実施形態によるスマートメータマスタのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
【
図7】第1の実施形態によるスマートメータ計測値テーブルのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
【
図8】第1の実施形態による変圧器電力算出部13が出力する変圧器電力データの一例を示す概略図である。
【
図9】第1の実施形態による最適ねん架算出部15の詳細な機能ブロックの一例を示す図である。
【
図10】第1の実施形態による決定処理を説明するための図である。
【
図11】第1の実施形態による決定処理を説明するための図である。
【
図12】第1の実施形態による最適ねん架算出部15が生成する不平衡率算出結果テーブルの一例を示す概略図である。
【
図13】第1の実施形態による最適ねん架算出部15が生成する目的関数算出結果テーブルの一例を示す概略図である。
【
図14】第1の実施形態による不平衡解消処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】乱数により生成した初期集団の一例を示す図である。
【
図16】第1の実施形態による発生確率テーブル153のデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
【
図17】第1の実施形態による最適ねん架算出部15が生成する初期集団の一例を示す概略図である。
【
図18】第1の実施形態によるノードN毎の発生確率テーブル153の一例を示す概略図である。
【
図19】決定処理における計算時間を比較するグラフである。
【
図20】本発明の第3の実施形態による最適ねん架算出結果実績テーブルのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
【
図21】本発明の第4の実施形態による情報処理装置10Aが備える機能及びデータベースの一例を示す構成図である。
【
図22】第4の実施形態によるセンサ計測値テーブルのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
=====第1の実施形態=====
<<<情報処理装置10の構成>>>
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である情報処理装置10のハードウェア構成を示す図である。情報処理装置10は、例えば、
図2に示す電力系統20(後述)の三相送配電線に対するねん架の状態を決定する装置である。ねん架の状態とは、ねん架する位置、及び当該位置におけるねん架のパターンである。ねん架のパターンとは、各相の入れ替え方(捻り方)である。情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)101、メモリ102、入力部103、出力部104、記憶部105、記録媒体駆動部106、及びネットワーク接続部107を含むコンピュータである。CPU101、メモリ102、入力部103、出力部104、記憶部105、記録媒体駆動部106、及びネットワーク接続部107は、バスを介して相互に通信接続する。
【0012】
CPU101は、メモリ102又は記憶部105に格納されたプログラムを実行することにより、情報処理装置10における様々な機能を実現する。
メモリ102は、例えばRAM(Random-Access Memory)等であり、ねん架の状態を決定するためのプログラムやデータ等の一時的な記憶領域として用いられる。
【0013】
入力部103は、ユーザによるコマンドやデータの入力を受け付ける装置であり、キーボード、タッチパネルディスプレイ上でのタッチ位置を検出するタッチセンサなどの入力インタフェースを含む。
出力部104は、例えばディスプレイなどの表示装置、又はプリンタでなどの出力装置である。
【0014】
記憶部105は、例えば、ハードディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ、又はメモリカードなどにより構成され、CPU101によって、実行または処理されるプログラム又は各種データを格納する不揮発性の記憶装置である。
【0015】
記録媒体駆動部106は、例えば光ディスク又はコンパクトディスクなどの記録媒体6と接続し、記録媒体6からデータを読み出す、又はデータを書き込む。
【0016】
ネットワーク接続部107は、ネットワーク(不図示)を介して、他のコンピュータと各種プログラムやデータの受け渡しを行う。
【0017】
<<<電力系統20の一例>>>
図2は、情報処理装置10がねん架の状態の決定を行う電力系統20の一例を示す図である。電力系統20は、例えば、6.6kV系の送配電線系統であり、変圧器21、送配電線22、センサ内蔵開閉器23、複数の柱上変圧器TR(TR1~TR5)、及び複数の電力量計SM(SM1~SM5)を含む。また、送配電線22には、センサ内蔵開閉器23又は複数の柱上変圧器TRのそれぞれが接続されるノードN(N0~N5)が設けられる。なお、電力系統20は、自営線で構成されている場合も含む。
【0018】
変圧器21は、送電線(不図示)から供給される電圧を変圧し、6.6kVの電圧を送配電線22へと出力する。
【0019】
送配電線22は、変圧器21からの電力を各需要家に供給するための三相送配電線であり、上流側の変圧器21から下流側に向かって延びている。送配電線22は、変圧器21からのU相、V相、W相の三相交流電力を供給するための電力線である。送配電線22は、U相の電力を供給する送配電線221、V相の電力を供給する送配電線222、及びW相の電力を供給する送配電線223を有する。
【0020】
ノードNは、送配電線22上に設けられている任意の管理単位である。本実施形態では、ノードNは、柱上変圧器TR単位で管理されている集約単位である。ノードNは、ねん架の位置の候補である。以下、説明の便宜を図るため、ノード番号「i(iは整数)」のノードNをノードNiと記す。ノード番号は、各ノードNを識別する識別番号である。例えば、ノード番号「0」のノードNは、ノードN0と記す。なお、各ノードNに共通する事項については、ノード番号を省略し、単に「ノードN」又は「各ノードN」と記す。
【0021】
センサ内蔵開閉器23は、定周期で、設置点の少なくとも電圧、及び電流のそれぞれの測定値を測定可能なセンサを有する開閉器である。センサ内蔵開閉器23の設置点が、ノードN0である。
【0022】
柱上変圧器TRは、送配電線22に接続される変圧器である。柱上変圧器TRは、例えば一次側の電圧を所定の変圧比で変圧して、当該変圧された電圧を二次側から出力する変圧器である。柱上変圧器TR1~TR4の一次側はそれぞれ、送配電線221~223のうち何れか二相(二本)の送配電線22に接続され、変圧器TR5の一次側は送配電線221~223に接続される。柱上変圧器TR1~TR5の二次側はそれぞれ、需要家に接続される。需要家は、送配電線22から供給される電力を使用する者であり、電力を消費する負荷をそれぞれ有する。変圧器21が送配電線22へ出力した電力は、柱上変圧器TRを介して需要家に配給される。以下、説明の便宜を図るため、付帯機器ID「TRi」の柱上変圧器TRを、柱上変圧器TRiと記す。付帯機器IDは、各付帯機器(センサ内蔵開閉器23又は柱上変圧器TR)を識別する識別情報である。例えば、付帯機器ID「TR1」の柱上変圧器TRは、柱上変圧器TR1と記す。なお、各柱上変圧器TRに共通する事項については、数字を省略し、単に「柱上変圧器TR」又は「各柱上変圧器TR」と記す。
【0023】
電力量計SMは、送配電線22の所定のノードNにおける需要家に設置される。電力量計SMとしては、所謂スマートメータを用いることができる。電力量計SMは、需要家の使用電力量(負荷量又は発電量)の測定値を、所定周期で測定する。以下、説明の便宜を図るため、スマートメータID「SMi」の電力量計SMを電力量計SMiと記す。スマートメータIDは、各電力量計SMを識別する識別情報である。例えば、スマートメータID「SM1」の電力量計SMは、電力量計SM1と記す。なお、各電力量計SMに共通する事項については、数字を省略し、単に「電力量計SM」又は「各電力量計SM」と記す。なお、本図では、1台の柱上変圧器TRそれぞれに1台の電力量計SMが接続されている構成を例示しているが、1台の柱上変圧器TRに対し複数台の電力量計SM(すなわち、需要家)が接続されていてもよい。
【0024】
<<<情報処理装置10の詳細>>>
図3は、情報処理装置10が備える機能及びデータベースの一例を示す構成図である。
【0025】
情報処理装置10は、電力系統20の各電力量計SMそれぞれと、通信線30を介して通信接続する。情報処理装置10は、系統構成データベース11と、スマートメータ情報データベース12と、変圧器電力算出部13と、データ生成部14と、最適ねん架算出部15と、結果出力部16とを有する。情報処理装置10の記憶部105には、系統構成データベース11、及びスマートメータ情報データベース12が予め記憶されている。また、CPU101が、記憶部105に格納された所定のプログラムをメモリ102に読み出して実行又は処理することにより、情報処理装置10には、変圧器電力算出部13、データ生成部14、最適ねん架算出部15、及び結果出力部16の各機能が実現される。
【0026】
系統構成データベース11は、電力系統20の構成を示す系統構成情報、及び、電力系統20が有する付帯機器(センサ内蔵開閉器23及び柱上変圧器TR)に関する情報を示す付帯機器情報を記憶するデータベースである。
【0027】
図4は、系統構成情報のデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
図示するように、系統構成情報は、ノード番号と、電柱番号と、緯度と、経度と、接続先電柱番号と、配電線R(U相)と、配電線X(U相)と、配電線R(V相)と、配電線X(V相)と、配電線R(W相)と、配電線X(W相)と、付帯機器IDとの各項目を有する。
ノード番号は、各ノードNを識別する識別情報である。電柱番号は、ノードNが配置される電柱の識別番号である。緯度は、電柱が設置されている位置の緯度である。経度は、電柱が設置されている位置の経度である。接続先電柱番号は、電柱が送配電線22を介して接続する上流側の電柱の電柱番号である。配電線R(U相)は、U相における線路の抵抗(単位は、「Ω(オーム)」)である。配電線X(U相)は、U相におけるリアクタンス(単位は、「Ω」)である。配電線R(V相)は、V相における線路の抵抗(単位は、「Ω」)である。配電線X(V相)は、V相におけるリアクタンス(単位は、「Ω」)である。配電線R(W相)は、W相における線路の抵抗(単位は、「Ω」)である。配電線X(W相)は、W相におけるリアクタンス(単位は、「Ω」)である。付帯機器IDは、ノードNに配置される付帯機器の識別情報である。
【0028】
図5は、付帯機器情報のデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
図示するように、付帯機器情報は、付帯機器IDと、付帯機器種別と、接続相との各項目を有する。
付帯機器IDは、各付帯機器(センサ内蔵開閉器23又は柱上変圧器TR)を識別する識別情報である。付帯機器種別は、付帯機器の種別である。例えば、付帯機器ID「SE1」は、センサ内蔵開閉器23であり、付帯機器ID「TR1」~「TR5」は、柱上変圧器TRである。接続相は、付帯機器が接続する送配電線22の相である。図示する例では、例えば、センサ内蔵開閉器23は、UVW相(すなわち、U相、V相、及びW相の全ての相)に接続する。また、柱上変圧器TR1は、UV相(すなわち、U相及びV相の二相)に接続する。
【0029】
図3に戻り、情報処理装置10の機能構成について説明を続ける。
スマートメータ情報データベース12は、各電力量計SMのそれぞれに関する情報を示すスマートメータマスタと、各電力量計SMのそれぞれで計測された定周期の計測値を示すスマートメータ計測値テーブルとを記憶するデータベースである。
【0030】
図6は、スマートメータマスタのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
図示するように、スマートメータマスタは、スマートメータIDと、接続先柱上変圧器IDと、型式と、定格電圧との各項目を有する。
スマートメータIDは、各電力量計SMを識別する識別情報である。接続先柱上変圧器IDは、電力量計SMが接続する柱上変圧器TRの付帯機器IDである。型式は、電力量計SMの型式である。定格電圧は、電力量計SMの定格電圧である。
【0031】
図7は、スマートメータ計測値テーブルのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
図示するように、スマートメータ計測値テーブルは、計測日時と、スマートメータIDと、メータ計測値との各項目を有する。
計測日時は、メータ計測値を計測した日時(年月日時分)である。メータ計測値は、電力量計SMが計測した需要家の使用電力量の測定値(単位は「kWh(キロワットアワー)」)である。
図示する例では、30分毎の各電力量計SMの計測値がスマートメータ計測値テーブルに格納されている。すなわち、本例では、各電力量計SMは、30分毎の定周期で、需要家の使用電力量を計測する。
スマートメータ計測値テーブルに格納されているデータは、記憶部105に予め記憶されていてもよいし、CPU101が、通信線30を介して、各電力量計SMからメータ計測値を取得し、取得したメータ計測値をスマートメータ計測値テーブルに書き込むことで、随時更新されてもよい。
【0032】
図3に戻り、情報処理装置10の機能構成について説明を続ける。
変圧器電力算出部13は、系統構成データベース11、及びスマートメータ情報データベース12が記憶する情報に基づいて、各柱上変圧器TR単位での電力状態(負荷、又は発電)の分布(以下、「負荷分布」とする。)を算出する。本実施形態では、変圧器電力算出部13は、負荷分布として、各柱上変圧器TRそれぞれの平均消費電力を算出する。
【0033】
以下、
図7に示すデータ例を用いて、計測日時「2019/12/10 9:00」から計測日時「2019/12/10 9:30」までの30分間の柱上変圧器TR1の平均消費電力を算出する場合を例に、平均消費電力の算出方法について具体的に説明する。まず、変圧器電力算出部13は、
図6のスマートメータマスタを参照して、柱上変圧器TR1に接続する電力量計SM1を特定する。そして、変圧器電力算出部13は、計測日時「2019/12/10 9:30」の電力量計SM1のメータ計測値「1550」から計測日時「2019/12/10 9:00」の電力量計SM1のメータ計測値「1500」を減算して、30分間の電力量計測値「50kWh(=1550-1500)」を算出する。そして、変圧器電力算出部13は、電力量計測値「50kWh」を「0.5時間(30分)」で除算して、30分間の柱上変圧器TR1の平均消費電力「100kW(キロワット)(=50kWh÷0.5h)」を算出する。同様に、変圧器電力算出部13は、柱上変圧器TR2の平均消費電力「150kW」、柱上変圧器TR3の平均消費電力「50kW」、柱上変圧器TR4の平均消費電力「80kW」、及び、柱上変圧器TR5の平均消費電力「200kW」を算出する。そして、変圧器電力算出部13は、算出した各柱上変圧器TRの平均消費電力を示す変圧器電力データを、データ生成部14に出力する。
【0034】
図8は、変圧器電力算出部13が出力する変圧器電力データの一例を示す概略図である。
変圧器電力データは、計測日時と、付帯機器IDと、変圧器電力との各項目を有する。
計測日時は、変圧器電力の算出に用いたメータ計測値を計測した日時(年月日時分)である。変圧器電力は、計測日時から直近30分間の柱上変圧器TRの平均消費電力(単位は、「kW」)である。
【0035】
なお、図示する例では、「2019/12/10 9:30」時点の単一の時間断面での負荷分布を示しているが、時間断面は複数であってもよい。また、本実施形態では、負荷分布を有効電力のみで説明しているが、無効電力も設定してもよい。
【0036】
図3に戻り、情報処理装置10の機能構成について説明を続ける。
データ生成部14は、系統構成データベース11、及び変圧器電力データに基づいて、入力データを生成する。入力データは、各ノードNのそれぞれにおける各相それぞれの負荷を示す。まず、データ生成部14は、系統構成データベース11が記憶する系統構成情報及び付帯機器情報を参照することにより、各柱上変圧器TRが設置される電柱、電柱単位の接続関係、及び各配電線のインピーダンスを特定する。例えば、データ生成部14は、系統構成情報及び付帯機器情報に基づいて、各ノードNに配置されている柱上変圧器TRが接続する相を特定し、特定した相に対する負荷を、柱上変圧器TRの変圧器電力とする。
図4及び
図5に示すデータ例では、例えば、データ生成部14は、ノードN1に配置される柱上変圧器TR1が、UV相の配電線に接続されていることを特定する。そして、データ生成部14は、変圧器電力データを参照し、ノードN1におけるUV相の負荷を柱上変圧器TR1の変圧器電力「100」とし、VW相の負荷を「0」とし、WU相の負荷を「0」とする。そして、データ生成部14は、全てのノードNのそれぞれにおける各相それぞれの負荷を示す入力データを最適ねん架算出部15に出力する。
【0037】
最適ねん架算出部15は、入力データに基づいて、電力系統20における不平衡率を小さくする、送配電線22のねん架の状態(ねん架位置及び各ねん架位置におけるねん架のパターン)を決定する決定処理を実行する。ねん架位置は、送配電線22をねん架する位置(本実施形態では、複数あるノードNのうちいずれか)である。ねん架のパターンは、送配電線22における相の入れ替え方である。
【0038】
図9は、最適ねん架算出部15の詳細な機能ブロックの一例を示す図である。
最適ねん架算出部15は、算出部151と、決定部152と、発生確率テーブル153とを備える。情報処理装置10の記憶部105には、発生確率テーブル153が予め記憶されている。
【0039】
算出部151は、電力系統20におけるm(mは正の整数)個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態を、第1状態~第3状態のいずれかとして得られる複数の組み合わせと、n(nは正の整数)個のノードNのそれぞれにおいて電力系統とやりとりされる電力と、系統構成情報と、に基づいて、n個のノードNのそれぞれの電圧の不平衡率を算出する算出処理を実行する。
【0040】
ここで、第1状態とは、送配電線22をねん架しない状態であり、第2状態とは、送配電線22を第1パターンでねん架する状態であり、第3状態とは、送配電線22を第1パターンと異なる第2パターンでねん架する状態である。なお、第1パターン、及び第2パターンの詳細については後述する。また、本実施形態におけるm個のノードNは、送配電線22に設けられる全てのノードNであるが、これに限らず、送配電線22に設けられるノードNのうち予め選定した複数のノードNであってもよい。また、本実施形態におけるn個のノードNは、電力量計SM(柱上変圧器TR)が接続されるノードN(すなわち、センサ内蔵開閉器23が配置されるノードN0以外の全てのノードN)である。また、本実施形態では、算出部151は、n個のノードのそれぞれに接続された電力量計SMの計測値を用いて、n個のノードのそれぞれにおいて電力系統20とやりとりされる電力を算出する。
【0041】
決定部152は、電圧の不平衡率の算出結果に基づいて、m個のノードのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定する決定処理を実行する。すなわち、決定部152は、電力系統20におけるねん架の状態を決定する。具体的には、決定部152は、m個のノードのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定変数とし、n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率の平均値、又は、n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率の最大値の少なくとも何れかに基づいて定まる目的関数を最適化する、m個のノードのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定する。このとき、決定部152は、発生確率テーブル153を参照して、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率と異なる発生確率で第1状態が発生する、決定変数の初期値を生成する。例えば、決定部152は、第1状態の発生確率が、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率より大きくなる初期値を生成する。
【0042】
発生確率テーブル153は、決定変数の初期値における第1状態、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率を示す情報である。発生確率テーブル153の詳細については後述する。
【0043】
図10~
図13を参照して、最適ねん架算出部15が実行する決定処理について、詳細に説明する。
図10及び
図11は、決定処理を説明するための図である。
【0044】
まず、最適ねん架算出部15は、入力データに基づいて、
図10に示すテーブルT100のように、各ノードNのそれぞれにおける各相の負荷を、変数「ノード[i].負荷設定[j]」にそれぞれ代入する。ここで、配列「ノード」のインデックス「i」は、ノード番号を示す。また、配列「負荷設定」のインデックス「j」は、0,1,2の三値をとり、「0」がUV相を示し、「1」がVW相を示し、「2」がWU相を示す。例えば、ノード[i].負荷設定「0」は、ノード番号「i」のノードNにおけるUV相の負荷を示し、ノード[i].負荷設定「1」は、ノード番号「i」のノードNにおけるVW相の負荷を示し、ノード[i].負荷設定「2」は、ノード番号「i」のノードNにおけるWU相の負荷を示す。また、本実施形態における負荷は、ノードNに配置されている柱上変圧器TRの変圧器電力である。最適ねん架算出部15は、柱上変圧器TRが接続する相に対応する「負荷設定」に、柱上変圧器TRの変圧器電力を代入する。例えば、ノードN1に配置されている柱上変圧器TR1は、UV相に接続しているため、最適ねん架算出部15は、ノード[1].負荷設定[0]を、柱上変圧器TR1の変圧器電力「100」(ノード[1].負荷設定[0]=100)とする。
【0045】
続いて、最適ねん架算出部15は、m個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態の組み合わせ(以下、「ねん架パターンの組み合わせ」とする。)を生成し、
図10示すテーブルT200のように、生成したねん架パターンの組み合わせを、変数「ノード[n].ねん架パターン」により離散値の配列を用いて定義する。変数「ねん架パターン」は、0,1,2の三値をとり、「0」は、送配電線22をねん架しない(捻らない)ことを示し、「1」は、U相をV相に、V相をW相に、W相をU相に入れ替える第1パターンを示し、「2」は、U相をW相に、V相をU相に、W相をV相に入れ替える第2パターンを示す。例えば、ノード[0].ねん架パターン=0は、ノードN0においてねん架を行わないことを示す。また、ノード[2].ねん架パターン=2は、ノードN2において、U相をW相に、V相をU相に、W相をV相に入れ替える(第2パターンでねん架する)ことを示す。また、ノード[4].ねん架パターン=1は、ノードN4において、U相をV相に、V相をW相に、W相をU相に入れ替える(第1パターンでねん架する)ことを示す。なお、三相交流電力を供給する電力系統20では、相の順序を変更することはできないため、ねん架パターンはこの三値に限られる。
【0046】
図10に示す電力系統20に対し、テーブルT200に示すねん架パターンの組み合わせでねん架を行うと、
図11に示す電力系統20Aのように、ノードN2において、U相がV相に、V相がW相に、W相がU相に接続され、ノードN4において、U相がW相に、V相がU相に、W相がV相に接続される。
【0047】
続いて、最適ねん架算出部15は、
図11に示すテーブルT300のように、変数「ノード[i].ねん架パターン」を用いて各ノードNにおける相回転を算出し、変数「ノード[i].相回転」に代入する。変数「相回転」は、生成したねん架パターンの組み合わせで送配電線22をねん架した際の、m個のノードNのそれぞれにおける、相の入れ替わり方を示す。変数「相回転」は、変数「ねん架パターン」と同様に、0,1,2の三値をとり、「0」は、送配電線22の状態が変わらないことを示し、「1」は、U相がV相に、V相がW相に、W相がU相に入れ替わることを示し、「2」は、U相がW相に、V相がU相に、W相がV相に入れ替わることを示す。例えば、ノードN3では、ノードN2において第2パターンでねん架された結果、U相がW相に、V相がU相に、W相がV相に入れ替わるため、相回転に「2」が設定される。また、ノードN5では、ノードN2が第2パターンでねん架され、ノードN4が第1パターンでねん架された結果、送配電線22の状態が変わらないため、相回転に「0」が設定される。
【0048】
具体的には、まず、最適ねん架算出部15は、ノードN0の相回転を0(ノード[0].相回転=0)に設定する。そして、最適ねん架算出部15は、iが1以上である場合に、ノード[i].相回転を、ノード[i-1].相回転+ノード[i].ねん架パターンの3による剰余(すなわち3で割った余り)とする。つまり、最適ねん架算出部15は、「ノード[i].相回転=ノード[i-1].相回転+ノード[i].ねん架パターン%3」とする。ここで、「%」は、余剰を示す。
【0049】
続いて、最適ねん架算出部15は、算出した相回転を利用して、生成したねん架パターンの組み合わせでねん架をした後の負荷を算出する。具体的には、最適ねん架算出部15は、ねん架後の各ノードNのそれぞれにおける負荷を、次の式(1)~(3)により、変数「ノード[i].ねん架負荷設定[j]」にそれぞれ代入する。
【0050】
ノード[i].ねん架負荷設定[(0+ノード[i].相回転)%3]=ノード[i].負荷設定[0]…(1)
【0051】
ノード[i].ねん架負荷設定[(1+ノード[i].相回転)%3]=ノード[i].負荷設定[1]…(2)
【0052】
ノード[i].ねん架負荷設定[(2+ノード[i].相回転)%3]=ノード[i].負荷設定[2]…(3)
【0053】
配列「ねん架負荷設定」のインデックスは、0,1,2の三値をとり、「0」がUV相を示し、「1」がVW相を示し、「2」がWU相を示す。例えば、ノード[i].ねん架負荷設定「0」は、ノード番号「i」のノードNにおけるねん架後のUV相の負荷を示し、ノード[i].ねん架負荷設定「1」は、ノード番号「i」のノードNにおけるねん架後のVW相の負荷を示し、ノード[i].ねん架負荷設定「2」は、ノード番号「i」のノードNにおけるねん架後のWU相の負荷を示す。
【0054】
ノードN2の負荷を例に、上述した式(1)を用いて具体的に説明する。ノードN2における上述した式(1)は、次の式(1A)になる。
【0055】
ノード[2].ねん架負荷設定[(0+ノード[2].相回転)%3]=ノード[2].負荷設定[0]…(1A)
【0056】
そして、式(1A)に、ノード[2].相回転=2を代入すると、次の式(1B)で表せる。
【0057】
ノード[2].ねん架負荷設定[(0+2)%3]=ノード[2].負荷設定[0]…(1B)
【0058】
その結果、次の式(1C)になり、ノードN2のUV相の負荷が、ねん架によりWU相に接続されることを算出することができる。
【0059】
ノード[2].ねん架負荷設定[2]=ノード[2].負荷設定[0]…(1C)
【0060】
そして、式(1C)に、ノード[2].負荷設定[0]=150.0を代入することにより、次の式(1D)のように、ねん架後のノードN2のWU相の負荷を算出することができる。
【0061】
ノード[2].ねん架負荷設定[2]=150.0…(1D)
【0062】
このように、式(1)を用いることで、ノードN2のUV相の負荷「150.0」が、ねん架によりWU相に変更されることを、変数「ねん架負荷設定」に設定することができる。
【0063】
そして、最適ねん架算出部15は、ねん架後の負荷を示す変数「ノード[i].ねん架負荷設定[j]」を用いて、三相潮流計算によるシミュレーションを実行し、生成したねん架パターンの組み合わせでねん架後の各ノードNのそれぞれの相毎の電圧、及び不平衡率を算出する。具体的には、最適ねん架算出部15は、三相各相の電圧から正相電圧及び逆相電圧を算出し、逆相電圧を正相電圧で除算した値に100を乗算する(すなわち、「逆相電圧÷正相電圧×100」)ことで算出する。
【0064】
図12は、最適ねん架算出部15が生成する不平衡率算出結果テーブルの一例を示す概略図である。
最適ねん架算出部15は、算出した各ノードNのそれぞれの相毎の電圧、及び不平衡率を含む不平衡率算出結果テーブルを生成する。例えば、最適ねん架算出部15は、m個のノードNのそれぞれについて、ねん架パターン、相回転、負荷設定[0]~負荷設定[2]、ねん架負荷設定[0]~ねん架負荷設定[2]、電圧[0]~電圧[2]、及び不平衡率の各変数の値を、不平衡率算出結果テーブルに書き込む。ここで、電圧[0]は、UV相の電圧を示し、電圧[1]は、VW相の電圧を示し、電圧[2]は、WU相の電圧を示す。
図12には、
図11に示すように、電力系統20に対し、テーブルT200に示すようにノードN2を第2パターンで、ノードN4を第1パターンでねん架したときのデータ例を示している。最適ねん架算出部15は、m個のノードNのそれぞれにおけるねん架パターンの組み合わせ毎に、それぞれ不平衡率算出結果テーブルを生成する。また、最適ねん架算出部15は、複数の時間断面(例えば、所定期間内における電力量計SMの計測周期(例えば、30分)毎の時間断面全て)について、それぞれ不平衡率算出結果テーブルを生成する。
【0065】
続いて、最適ねん架算出部15は、n個のノードNのそれぞれの電圧の不平衡率から目的関数を算出する。例えば、最適ねん架算出部15は、n個のノードNのそれぞれの電圧の不平衡率の平均値(以下、「平均不平衡率」とし、
図12に示すデータ例の場合「1.07」である。)、n個のノードNのそれぞれの電圧の不平衡率の最大値(以下、「最大不平衡率」とし、
図12に示すデータ例の場合「1.95」である。)、及び、送配電線22をねん架するノードNの数(以下、「ねん架数」とし、
図12に示すデータ例の場合「2」である。)を選択的に組み合わせた目的関数を算出する。本実施形態では、最適ねん架算出部15は、次の式(4)により、目的関数F(p)を算出する。
【0066】
F(p) = X×f(p) + Y×g(p) + Z×h(p) …(4)
【0067】
ここで、pは、次の式(5)で示される、ねん架パターンの組み合わせである。ねん架パターンの組み合わせpが、決定変数である。
【0068】
p ∈ {x1, x2,・・・, xm-1, xm } , xi ∈ {0, 1, 2}…(5)
【0069】
ここで、mは、ノードNの数である。また、関数f(p)は、ねん架パターンの組み合わせpを入力として全ての時間断面で全てのノードNの平均不平衡率を算出する関数である。また、g(p)は、ねん架パターンの組み合わせpを入力として全ての時間断面で全てのノードNの中から最大不平衡率を抽出する関数である。また、h(p)は、ねん架パターンpを入力としてねん架数をカウントする関数である。
【0070】
また、「X」は、平均不平衡率の重みであり、「Y」は、最大不平衡率の重みであり、「Z」は、ねん架数の重みである。X,Y,Zそれぞれの値を変化させることにより、各要素(平均不平衡率、最大不平衡率、及びねん架数)の重みを変更することができる。例えば、Xの値をY及びZの値より大きくすることで、平均不平衡率の重みを、最大不平衡率及びねん架数の重みより重くすることができる。すなわち、Xの値を大きくすることで平均不平衡率の重みを重くし、Xの値を小さくすることで平均不平衡率の重みを小さくすることができる。同様に、Yの値を大きくすることで最大不平衡率の重みを重くし、Yの値を小さくすることで最大不平衡率の重みを小さくすることができる。同様に、Zの値を大きくすることでねん架数の重みを重くし、Zの値を小さくすることでねん架数の重みを小さくすることができる。また、X,Y,Zの値を0にすることにより、目的関数から各要素(平均不平衡率、最大不平衡率、又はねん架数)を除外することができる。例えば、Zを0とすれば、ねん架数を目的関数から除外することができる。なお、本実施形態では、目的関数は、平均不平衡率又は最大不平衡率の少なくとも何れかに基づいて定まるが、これに限らず、例えば、n個のノードNのそれぞれの電圧の不平衡率の中央値等、n個のノードNのそれぞれの電圧の不平衡率に基づいて定まるものであればよい。
【0071】
そして、最適ねん架算出部15は、予め設定された閾値α~γを用いて、目的関数の各要素(平均不平衡率、最大不平衡率、又はねん架数)に制約条件を定める。例えば、平均不平衡率に対する制約条件は閾値αより小さいことであり、最大不平衡率に対する制約条件は閾値βより小さいことであり、ねん架数に対する制約条件は閾値γより小さいことである。具体的には、最適ねん架算出部15は、次のように目的関数の各要素の重みの値を決定する。
【0072】
f(p)<閾値αのとき X=A
f(p)≧閾値αのとき X=A′(ただしA′≫A)
ここで、A及びA′は予め設定された定数である。また、A′は、Aより充分に大きい。
【0073】
g(p)<閾値βのとき Y=B
g(p)≧閾値βのとき Y=B′(ただしB′≫B)
ここでB及びB′は予め設定された定数である。また、B′は、Bより充分に大きい。
【0074】
h(p)<閾値γのときZ=C
h(p)≧閾値γのときZ=C′(ただしC′≫C)
ここで、C及びC′は予め設定された定数である。また、C′は、Cより充分に大きい。
【0075】
このように目的関数の各要素に対する重みの値を決定することで、各制約条件を満たさないねん架パターンの組み合わせが、不平衡率を小さくするねん架の状態として選択されることを防ぐことができる。例えば、閾値γを2とした場合、後述する
図13に示すデータ例では、ねん架数が2以上のNo.3及びNo.5は、目的関数が非常に大きな値となるため、不平衡率を小さくするねん架の状態として選択されることがない。
【0076】
その後、最適ねん架算出部15は、終了条件を満たすまで、ねん架パターンの組み合わせを変更し、変更したねん架パターンの組み合わせに対する目的関数を算出する。終了条件は、例えば、ねん架パターンの組み合わせの数(算出した目的関数の数)が所定の閾値を超える、又は算出した目的関数の値が所定の閾値よりも小さくなる、などである。終了条件は、任意に定義することができる。
【0077】
図13は、最適ねん架算出部15が生成する目的関数算出結果テーブルの一例を示す概略図である。
最適ねん架算出部15は、目的関数を算出する毎に、ねん架パターンの組み合わせを識別するNo.と、ねん架パターンの組み合わせを示す変数「ノード[n].ねん架パターン」の値と、平均不平衡率(単位は、%)と、最大不平衡率(単位は、%)と、ねん架数と、算出した目的関数とを対応付けて目的関数算出結果テーブルに書き込む。
【0078】
そして、最適ねん架算出部15は、終了条件を満たすと、目的関数を最適化する。具体的には、最適ねん架算出部15は、目的関数算出結果テーブルを参照して、最も目的関数が小さい(すなわち、min F(p)の)ねん架の状態の組み合わせを、不平衡率を小さくするねん架の状態として選択する。例えば、図示するデータ例では、最適ねん架算出部15は、最も目的関数の小さいNo.4のねん架パターンの組み合わせ(ノードN5において第2パターンでねん架する)を、不平衡率を小さくするねん架の状態として選択する。そして、最適ねん架算出部15は、選択したねん架の状態を示すデータ(以下、「決定結果」とする。)を結果出力部16に出力する。
【0079】
結果出力部16は、最適ねん架算出部15から入力された決定結果を、ディスプレイによる表示、又はプリンタによる印字などにより出力する。結果出力部16は、決定結果を、ネットワーク接続部107を介して他のコンピュータなどに送信してもよい。
【0080】
==情報処理装置10で実行される不平衡解消処理の一例==
図14は、情報処理装置10で実行される、電力系統20の不平衡解消処理の一例を示すフローチャートである。
まず、データ生成部14が、系統構成情報、付帯機器情報、及び変圧器電力データに基づいて、入力データを生成する(ステップS100)。続いて、最適ねん架算出部15が、データ生成部14が生成した入力データを読み込む(ステップS200)。そして、最適ねん架算出部15は、入力データに基づいて、三相潮流計算によるシミュレーションを実行し、各ノードNのそれぞれにおける相毎の電圧を算出する(ステップS300)。続いて、最適ねん架算出部15は、算出した各ノードNの相毎の電圧に基づいて、各ノードNのそれぞれの現在の不平衡率を算出する(ステップS400)。
【0081】
続いて、最適ねん架算出部15は、算出した各ノードNの不平衡率に基づいて、ねん架による不平衡対策が必要か否かを判定する(ステップS500)。例えば、最適ねん架算出部15は、ステップS400において算出した各ノードNの平均不平衡率、最大不平衡率、またはその両方が予め設定された閾値を超えた場合に、不平衡対策が必要であると判定する。不平衡対策が必要でないと判定した場合(ステップS500:No)、情報処理装置10は、本不平衡解消処理を終了する。
【0082】
一方、最適ねん架算出部15は、不平衡対策が必要であると判定した場合(ステップS500:Yes)、ステップS601~S608に示す決定処理を実行する(ステップS600)。
【0083】
最適ねん架算出部15は、メタヒューリスティクスを用いた組み合わせ最適化手法を用いて、不平衡率を小さくするねん架の状態を決定する。メタヒューリスティクスを用いた最適化手法では、一般的に乱数を用いて初期集団を生成する。
【0084】
図15は、乱数により生成した初期集団の一例を示す図である。
本図では、生成した初期集団を、テーブル形式で例示している。例示するテーブルの項目「初期個体」には、初期集団における個体の識別情報が設定されている。図示する例では、n個の個体が初期集団に含まれる。例示するテーブルの項目「ノード[i](iは、ノード番号)」には、各個体におけるノードNiのねん架パターンが設定される。以下、テーブル形式で例示した初期集団における、ねん架パターンが設定されるマス目を「セル」と称する。乱数を用いて初期集団を生成すると、ねん架パターンには、第1状態「0」、第2状態「1」、及び第3状態「2」が等確率(3分の1)でランダムに設定される。そのため、乱数を用いて初期集団を生成すると、ねん架数が比較的多い個体も初期集団に含まれる。
【0085】
一方で、上述した目的関数は、ねん架数に基づいて定まるため、ねん架数が多くなると、その値が大きくなる特性を有する。そのため、乱数を用いて初期集団を生成すると、評価値の低い(目的関数の値が大きい)個体も比較的多く初期集団に含まれる。このため、乱数を用いて初期集団を生成すると、目的関数を最適化する(電圧不平衡率を改善するねん架の状態を決定する決定処理の)計算時間が長くなる。一般に、メタヒューリスティクスを用いた組み合わせ最適化手法では、初期集団に評価値の高い個体が含まれていると収束が速くなる(計算時間が短くなる)ことが知られている。よって、本実施形態における最適ねん架算出部15は、初期集団における各ノードNのねん架パターン(第1状態~第3状態)のそれぞれの発生確率を調整し、評価値の高い(目的関数の値が小さい)個体が多く含まれる初期集団を生成することにより、目的関数を最適化する計算時間を短縮させる。
【0086】
よって、本実施形態における最適ねん架算出部15は、決定処理において、まず、初期集団(n,p)における各ノードNのねん架パターン(第1状態~第3状態)のそれぞれの発生確率を調整する(ステップS601)。具体的には、まず、最適ねん架算出部15は、発生確率テーブル153から、各ねん架パターン「0」、「1」、「2」それぞれの発生確率を読み出す。
【0087】
図16は、発生確率テーブル153のデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
図示するように、発生確率テーブル153は、値と、発生確率との各項目を有する。値は、各ねん架パターン(第1状態「0」、第2状態「1」、又は、第3状態「2」)を示す。発生確率は、初期集団における値の発生確率である。図示する例では、第1状態「0」の発生確率は「0.750」であり、第2状態「1」の発生確率は「0.125」であり、第3状態「2」の発生確率は「0.125」である。本実施形態では、第1状態「0」の発生確率が、第2状態「1」及び第3状態「2」と異なる発生確率となるよう、ユーザが予め発生確率テーブル153に各値の発生確率を設定する。
図16に示す例では、第1状態「0」の発生確率が、第2状態「1」及び第3状態「2」よりも大きい。また、第2状態「1」及び第3状態「2」の発生確率は等しい。
【0088】
続いて、最適ねん架算出部15は、m個のノードNのそれぞれにおけるねん架パターン(ねん架の状態)の組み合せpが異なるn個の初期個体を含む初期集団(n,p)を生成する(ステップS602)。このとき、最適ねん架算出部15は、初期集団(n,p)全体における第1状態「0」~第3状態「2」のそれぞれの発生確率が、読み出した第1状態~第3状態のそれぞれの発生確率となるように、初期集団(n,p)を生成する。
【0089】
図17は、最適ねん架算出部15が生成する初期集団の一例を示す概略図である。
本図では、生成した初期集団を、テーブル形式で例示している。最適ねん架算出部15は、初期集団において、発生確率「0.750」で第1状態「0」を、発生確率「0.125」で第2状態「1」を、発生確率「0.125」で第3状態「2」を各セルに設定する。これにより、第1状態「0」の発生確率が「0.750」であり、第2状態「1」の発生確率が「0.125」であり、第3状態「2」の発生確率が「0.125」である初期集団が生成される。よって、各初期個体における第1状態「0」の発生比率が、第2状態「1」及び第3状態「2」に比べて多くなる。例えば、
図17に例示する初期個体「n」では、ねん架するノードNはノードN4(第2状態「1」)の1つのみであって、他の4つのノードNはねん架しない第1状態「0」である。このように、最適ねん架算出部15は、初期集団における第1状態「0」~第3状態「2」の発生確率を調整することで、目的関数の値が比較的小さい初期個体を、乱数を用いて初期集団を生成した場合と比べて多く含む初期集団を生成することができる。すなわち、初期集団の段階で、目的関数を最適化する最適解のねん架の状態に近い個体を生成することができる。
【0090】
続いて、最適ねん架算出部15は、生成した集団に含まれる複数の個体(ねん架の状態)のそれぞれに対し、次のステップS603~ステップS604の処理を実行する。すなわち、集団に含まれる個体の数nだけ、ステップS603~ステップS604の処理を繰り返し実行する。
【0091】
最適ねん架算出部15は、複数の時間断面tのそれぞれについて、時間断面tの負荷を用いて三相潮流計算によるシミュレーションを実行し、m個のノードNのそれぞれにおいてねん架パターンpを適用した際の、各ノードNのそれぞれにおける電圧の不平衡率を算出する(ステップS603:算出ステップ)。すなわち、最適ねん架算出部15は、複数の時間断面tの負荷全てについて、ステップS603の処理を繰り返し実行する。
【0092】
続いて、最適ねん架算出部15は、全ての時間断面tにおける各ノードNのそれぞれの不平衡率に基づいて、目的関数を算出する(ステップS604)。ここで、最適ねん架算出部15は、生成した集団に含まれる全ての個体(ねん架の状態)のそれぞれに対し、目的関数を算出する。
【0093】
その後、最適ねん架算出部15は、生成した集団に対し、交差、突然変異、又は淘汰などの遺伝的操作を行う(ステップS605)。
【0094】
その後、最適ねん架算出部15は、上述した終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS606)。
【0095】
終了条件を満たさないと判定した場合(ステップS606:No)、ステップS605で行った遺伝的操作により世代交代し、集団を入れ替え(ステップS607)、ステップS603の処理に戻る。すなわち、最適ねん架算出部15は、終了条件を満たすまで、集団を入れ替えてステップS603~S605の処理を繰り返す。
【0096】
一方、終了条件を満たすと判定した場合(ステップS606:Yes)、最適ねん架算出部15は、目的関数が最も小さくなるねん架の状態を、決定結果として結果出力部16に出力する(ステップS608:決定ステップ)。結果出力部16は、ディスプレイによる表示、又はプリンタによる印字などにより決定結果を出力する。その後、情報処理装置10は、不平衡解消処理を終了する。
【0097】
なお、本実施形態では、メタヒューリスティクスを用いた組み合わせ最適化手法の一例として、遺伝的アルゴリズムを用いる場合について説明したが、これに限らず、粒子群最適化法、又はタブーサーチなどの他の手法も当然適用できる。
【0098】
また、本実施形態では、最適ねん架算出部15は、発生確率テーブル153を用いて初期集団全体における第1状態「0」~第3状態「2」の発生確率を調整しているが、これに限らず、初期個体毎に発生確率を調整してもよいし、ノードN毎に発生確率を調整してもよい。
【0099】
図18は、ノードN毎の発生確率テーブル153の一例を示す概略図である。
ノードN毎の発生確率テーブル153は、値と、各ノードNのそれぞれの発生確率との各項目を有する。なお、図示する例では、全てのノードNにおいて、第1状態「0」の発生確率が「0.750」であり、第2状態「1」の発生確率が「0.125」であり、第3状態「2」の発生確率が「0.125」である場合を例示しているが、これに限らず、ノードN毎に異なる発生確率を設定してもよい。最適ねん架算出部15は、ノードN毎の発生確率テーブル153を参照して、初期集団においてノードN毎に発生確率を調整する。例えば、最適ねん架算出部15は、初期集団において、ノードN0の列にあるセルに、発生確率「0.750」で第1状態「0」を、発生確率「0.125」で第2状態「1」を、発生確率「0.125」で第3状態「2」を設定する。これにより、初期集団のノードN0における第1状態「0」の発生確率が「0.750」となり、第2状態「1」の発生確率が「0.125」となり、第3状態「2」の発生確率が「0.125」となる。
【0100】
メタヒューリスティクスを用いた組み合わせ最適化手法は多数あるが、遺伝的アルゴリズム(GA)やタブーサーチ(TS)、粒子群最適化(PSO)のような、初期値として初期個体の集団を生成するアルゴリズムついては、発生確率テーブル153を用いて第1状態「0」~第3状態「2」の発生確率を調整した初期集団のデータを入力値とする。一方、Population-Based Incremental Learning (PBIL)のような分布推定アルゴリズム(EDA)の場合、初期値として初期確率を与えるアルゴリズムであるため、発生確率テーブル153の値をそのまま初期値として設定する。したがって、本実施形態に開示する、初期集団における第1状態「0」~第3状態「3」の発生確率を調整する手法は、上記に具体的に挙げたアルゴリズムに限定せず、初期個体または初期確率またはその両方を用いて初期集団を生成するステップを有するメタヒューリスティクス手法に適用できる。
【0101】
図19は、決定処理における計算時間を比較するグラフである。
図示するグラフにおける縦軸は、目的関数の値であり、横軸は、世代数である。目的関数を最適化する決定処理の計算時間は、世代数に比例する。また、実線L1は、発生確率テーブル153を用いて初期集団における第1状態「0」~第3状態「2」の発生確率を調整した場合の目的関数の値の推移を示し、破線L2は、乱数を用いて初期集団を生成した場合の目的関数の値の推移を示す。図示するように、発生確率を調整して初期集団を生成した場合に収束する世代数T1は、乱数を用いて初期集団を生成した場合に収束する世代数T2の半数以下である。すなわち、本実施形態における情報処理装置10では、発生確率を調整して初期集団することにより、乱数を用いて初期集団を生成する場合と比べて、目的関数を最適化する(不平衡率を解消するねん架の状態を算出する)計算時間を短縮することができる。
【0102】
=====第2の実施形態=====
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、ユーザが手動で発生確率テーブル153を設定しているが、本実施形態では、情報処理装置10が目的関数を用いて発生確率テーブル153を設定する点が、第1の実施形態と異なる。情報処理装置10のハードウェア構成及び機能構成は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0103】
上述した式(4)で示される目的関数において、例えば、各重みX,Y,Zが、X=0.5,Y=0.5,Z=0.01である場合を例に、具体的に説明する。ねん架前(現在)の電力系統20の平均不平衡率f(0)=0.01(ねん架前の平均不平衡率1%)であり、最大不平衡率g(0)=0.01666(ねん架前の最大不平衡率1.666%)である場合、ねん架前の目的関数の値F(0)は、ねん架数h(0)=0であるため、次の式(6)で示すように、0.01333となる。
【0104】
F(0) = X×f (0) + Y×g(0) = 0.01333…(6)
【0105】
そして、f(p),g(p)は、0以上の値しかとらないため、h(p)>1.333になると、f(p),g(p)がどのような値になっても、目的関数の値F(p)は、ねん架前の目的関数の値F(0)を超える。すなわち、ねん架数h(p)=1であれば、目的関数を小さくできる可能性があるが、h(p)>1.333であるときには、ねん架前よりも常に目的関数が大きくなる。そして、ねん架数は整数であるため、目的関数を最小にするねん架数は1以下であると推定できる。したがって、最適ねん架算出部15は、本例では、初期個体において、ねん架数が1である初期個体が多くなるように発生確率を設定する。具体的には、最適ねん架算出部15は、目的関数を用いて、次の式(7)により、第1状態「0」の発生確率P(0)を算出する。
【0106】
【0107】
ここで、分母(X×f(0)+Y×g(0))は、ねん架前の目的関数の値F(0)である。また、分子Zは、目的関数におけるねん架数の重みであり、ねん架する工事1回(ねん架数1)あたりの評価値である。すなわち、第1状態「0」の発生比率P(0)は、決定変数を送配電線22の現在の状態にした場合における目的関数の値F(0)と、ねん架数の目的関数における重みZとの比率に基づいて定まる。ただし、最適ねん架算出部15は、上述した式(7)により算出した値が1以上である場合には、P(0)=1とする。ねん架前の目的関数の値F(0)(分母)よりも工事1回あたりの評価値Z(分子)が大きい場合には、ねん架すると、ねん架前よりも評価値が悪化する(目的関数の値が大きくなる)。このため、最適ねん架算出部15は、分子Z>分母(X×f(0)+Y×g(0))である場合には、ねん架しない確率を1(第1状態「0」の発生確率P(0)を1)とする。一方、最適ねん架算出部15は、分子Z<分母(X×f(0)+Y×g(0))である場合には、分子Zと分母(X×f(0)+Y×g(0))との比率に応じて、ねん架しない確率を決定する。具体的には、最適ねん架算出部15は、分母(X×f(0)+Y×g(0))に比べて分子Zが非常に小さいほど、ねん架数が目的関数に与える影響が少ないため、ねん架しない確率を0(第1状態「0」の発生確率P(0)を0)に近づける。
【0108】
また、最適ねん架算出部15は、次の式(8)により、第2状態「1」の発生確率P(1)を算出する。
【0109】
【0110】
また、最適ねん架算出部15は、次の式(9)により、第3状態「2」の発生確率P(2)を算出する。
【0111】
【0112】
ここで、上述した例のように、X=0.5,Y=0.5,Z=0.01であって、ねん架前の平均不平衡率f(0)=0.01,ねん架前の最大不平衡率g(0)=0.01666である場合、第1状態「0」~第3状態「2」のそれぞれの発生確率P(0)~P(2)は、それぞれ次の式(10)~(12)のように算出される。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
最適ねん架算出部15は、算出した第1状態「0」~第3状態「2」のそれぞれの発生確率P(0)~P(2)を、発生確率テーブル153に書き込む。発生確率テーブル153を用いた初期集団の調整の方法は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0117】
なお、上述した式(7)~(9)は、目的関数をもとに発生確率を調整する手段の一例を示したものであり、これに限らず、上述した式(7)~(9)にさらに四則演算を行うなど、目的関数を利用することによって、初期集団における第1状態「0」~第3状態「2」のそれぞれの発生確率を調整するものであればよい。例えば、上述した例のように、h(p)>1.333になると、目的関数の値F(p)が、ねん架前の目的関数の値F(0)を超える場合には、ねん架数が1(1.333以下の正の整数)である初期個体を多く含む初期集団を生成するように調整するものであればよい。
【0118】
=====第3の実施形態=====
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、ユーザが手動で発生確率テーブル153を設定しているが、本実施形態では、情報処理装置10または他の情報処理装置が、電力系統20と異なる他の電力系統に対する不平衡率解消処理の決定結果(ねん架の状態)の実績値を用いて発生確率テーブル153を設定する点が、第1の実施形態と異なる。本実施形態における情報処理装置10は、目的関数が最適化された電力系統に対する不平衡率解消処理の決定結果の実績値(目的関数を最適化した実績値)を格納する最適ねん架算出結果テーブルを記憶部105に予め記憶している。情報処理装置10の他のハードウェア構成及び機能構成は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0119】
図20は、最適ねん架算出結果実績テーブルのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
図示するように、最適ねん架算出結果実績テーブルは、系統Noと、ノード数と、平均不平衡率(単位は、「%」)と、最大不平衡率(単位は、「%」)と、ねん架数と、ねん架数÷ノード数との各項目を有する。系統Noは、各電力系統を識別する識別情報である。ノード数は、電力系統に含まれるノードNの数である。平均不平衡率は、目的関数を最適化した決定結果における平均不平衡率である。最大不平衡率は、目的関数を最適化した決定結果における最大不平衡率である。ねん架数は、目的関数を最適化した決定結果におけるねん架数である。ねん架数÷ノード数は、ねん架数をノード数で除算した値である。すなわち、ねん架数÷ノード数は、目的関数が最適化された電力系統のノード数とねん架数とで定まる割合である。
【0120】
各電力系統に含まれるノードの数に対する、目的関数を最適化した決定結果のねん架数の割合は、実績から見積もることができる。例えば
図20に示す例では、各電力系統における「ねん架数÷ノード数(ねん架数をノード数で除算した値)」の平均値は「0.25」である。そのため、本例では、ノード数に対して4分の1(0.25)程度のねん架数のときに最適解となる(目的関数を最適化できる)ことがわかる。つまり、全てのノードのうち4分の3(0.75)はねん架しない第1状態「0」が最適解となる。したがって、本実施形態では、最適ねん架算出部15は、最適ねん架算出結果実績テーブルから各電力系統における「ねん架数÷ノード数」を読み出し、読み出した(ねん架数÷ノード数)を次の式(13)~式(15)に代入することで、第1状態「0」~第3状態「2」のそれぞれの発生確率P(0)~P(2)を算出する。
【0121】
P(0) = 1 - ((ねん架数÷ノード数)の平均値)・・・(13)
【0122】
P(1) = ((ねん架数÷ノード数)の平均値)÷2 ・・・(14)
【0123】
P(2) = ((ねん架数÷ノード数)の平均値)÷2 ・・・(15)
【0124】
例えば、(ねん架数÷ノード数)の平均値が0.25である場合には、P(0)=1―0.25=0.75であり、P(1)=0.25÷2=0.125であり、P(2)=0.25÷2=0.125である。最適ねん架算出部15は、算出した第1状態「0」~第3状態「2」のそれぞれの発生確率P(0)~P(2)を、発生確率テーブル153に書き込む。発生確率テーブル153を用いた初期集団の調整の方法は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する
【0125】
なお、上述した式(13)~(15)は、他の電力系統における不平衡率算出処理の決定結果の実績値をもとに発生確率を調整する手段の一例を示したものであり、これに限らず、上述した式(13)~(15)にさらに四則演算を行うなど、目的関数を最適化する決定結果の実績値に基づいて、初期集団における第1状態「0」~第3状態「2」のそれぞれの発生確率を調整するものであればよい。
【0126】
また、発生確率テーブル153を生成するタイミングは、上述したS601であってもよいし、不平衡算出処理を開始する前のオフライン処理時であってもよい。
【0127】
また、本実施形態では、情報処理装置10が、発生確率テーブル153を生成する場合を例に説明したが、これに限らず、情報処理装置10と異なる他の装置が、最適ねん架算出結果実績テーブルに基づいて発生確率テーブル153を生成し、情報処理装置10に送信するようにしてもよい。
【0128】
=====第4の実施形態=====
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
第1の実施形態から第3の実施形態では、電力量計SMの計測値に基づいて、各ノードNの負荷分布を算出しているが、本実施形態では、センサ内蔵開閉器23の計測値を用いて負荷分布を算出する点が、第1の実施形態から第3の実施形態と異なる。
【0129】
図21は、本実施形態による情報処理装置10Aが備える機能及びデータベースの一例を示す構成図である。
本図において第1の実施形態による情報処理装置10と同様の構成には、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、情報処理装置10Aのハードウェア構成は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。本実施形態による情報処理装置10Aは、第1の実施形態による情報処理装置10の構成に加えて、センサ開閉器計測データベース17を備える。情報処理装置10Aの記憶部105には、センサ開閉器計測データベース17が予め記憶されている。
【0130】
センサ開閉器計測データベース17は、センサ内蔵開閉器23が計測する定周期の計測値を示すセンサ計測値テーブルを記憶するデータベースである。センサ内蔵開閉器23の計測値は、設置点の少なくとも電圧、及び電流を含む。センサ計測値テーブルに格納されているデータは、記憶部105に予め記憶されていてもよいし、CPU101が、通信線30を介して、センサ内蔵開閉器23から計測値を取得し、取得した計測値をセンサ計測値テーブルに書き込むことで、随時更新されてもよい。
【0131】
図22は、センサ計測値テーブルのデータ構成及びデータ例を示す概略図である。
図示するように、センサ計測値テーブルは、センサ内蔵開閉器IDと、計測日時と、電圧Vuvと、電圧Vvwと、電圧Vwuと、電流Iu0と、電流Iv0と、電流Iw0と、力率uと、力率vと、力率wとの各項目を有する。
センサ内蔵開閉器IDは、センサ内蔵開閉器23を識別する付帯機器IDである。計測日時は、計測値(電圧Vuv、電圧Vvw、電圧Vwu、電流Iu0、電流Iv0、電流Iw0、力率u、力率v、及び力率w)を計測した日時(年月日時分)である。電圧Vuvは、UV相の電圧(単位は、V(ボルト))である。電圧Vvwは、VW相の電圧である。電圧Vwuは、WU相の電圧である。電流Iu0は、U相に流れる電流(単位は、A(アンペア))である。電流Iv0は、V相に流れる電流である。電流Iw0は、W相に流れる電流である。力率uは、U相の力率である。力率vは、V相の力率である。力率wは、W相の力率である。
図示する例では、1分毎のセンサ内蔵開閉器23の計測値がセンサ計測値テーブルに格納されている。すなわち、本例では、センサ内蔵開閉器23は、1分毎の定周期で、計測値を計測する。
【0132】
データ生成部14Aは、系統構成データベース11及びセンサ計測値テーブルが記憶する情報に基づいて、各ノードNにおける負荷分布を推定し、推定した負荷分布に基づいて入力データを生成する。例えば、データ生成部14Aは、各柱上変圧器TRの平均消費電力(又は各需要家の使用電力量)を変化させて、センサ内蔵開閉器23の計測値に一致するよう、三相潮流計算を行う。この結果、データ生成部14Aは、各ノードNにおける負荷分布を推定することができる。
【0133】
なお、本実施形態では、情報処理装置10Aは、センサ内蔵開閉器23の計測値のみを用いて、各ノードNにおける負荷分布を推定しているが、これに限らず、各電力量計SMの計測値及びセンサ内蔵開閉器23の計測値の両方を用いて、各ノードNにおける負荷分布を推定してもよい。一般に、電力量計SMの計測周期(例えば、30分)は、センサ内蔵開閉器23の計測周期(例えば、1分)よりも長い。よって、情報処理装置10Aは、各電力量計SMの計測値に加えて、センサ内蔵開閉器23の計測値を用いることで、電力量計SMの計測周期よりも短い周期で各ノードNの負荷分布を推定することができる。これにより、情報処理装置10Aは、各ノードNの負荷分布を時系列で精度良く推定することができる。すなわち、情報処理装置10Aは、より細かい時間断面で各ノードNの負荷分布を生成することができる。
【0134】
=====まとめ=====
以上、本発明の情報処理装置10について説明した。本発明における情報処理装置10は、電力系統20におけるm個のノードのそれぞれにおける送配電線22の状態を、ねん架しない第1状態、第1パターンでねん架する第2状態、又は第1パターンと異なる第2パターンでねん架する第3状態のいずれかとして得られる複数の組み合わせと、n個のノードNのそれぞれにおいて電力系統20とやりとりされる電力と、電力系統20の構成を示す系統構成情報と、に基づいて、n個のノードNのそれぞれの電圧の不平衡率を算出し、m個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定変数とし、n個のノードNのそれぞれの電圧の不平衡率の平均値、又は、n個のノードNのそれぞれの電圧の不平衡率の最大値の少なくとも何れかに基づいて定まる目的関数を最適化する、m個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定する。
【0135】
このような構成により、本発明による情報処理装置10によれば、送配電線22の電圧不平衡率を改善可能なねん架の状態を精度良く定めることができる。
【0136】
また、本発明による情報処理装置10は、m個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定する際に、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率と異なる発生確率で第1状態が発生する、決定変数の初期値を生成する。
【0137】
このような構成により、本発明による情報処理装置10では、目的関数の評価値の高い初期値を設定することができる。よって、乱数を用いて初期値を設定する場合と比べて、目的関数を最適化する計算時間を短縮することができる。すなわち、より短時間で、m個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定することができる。
【0138】
また、目的関数は、n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率の平均値、又は、n個のノードのそれぞれの電圧の不平衡率の最大値の少なくとも何れかと、三相送配電線をねん架するノードの数とに基づいて定まる関数であり、本発明による情報処理装置10は、目的関数を用いて、第1状態、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率を算出する。より具体的には、情報処理装置10は、決定変数を送配電線22の現在の状態にした場合における目的関数の値と、ねん架するノードの数の目的関数における重みとの比率に基づいて、第1状態、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率を算出する。
【0139】
このような構成により、本発明による情報処理装置10では、目的関数の評価値が比較的高い第1状態、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率を精度良く算出することができる。これにより、目的関数の評価値の高い初期値を設定することができるため、より短時間で、m個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定することができる。
【0140】
また、本発明による情報処理装置10は、目的関数が最適化された電力系統のノード数とねん架数とで定まる割合に基づいて算出された第1状態、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率で、初期値を生成する。
【0141】
このような構成により、本発明による情報処理装置10では、目的関数の評価値が比較的高い第1状態、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率を精度良く算出することができる。これにより、目的関数の評価値の高い初期値を設定することができるため、より短時間で、m個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定することができる。
【0142】
また、本発明による情報処理装置10は、第1状態の発生確率が、第2状態、及び第3状態のそれぞれの発生確率より大きくなる初期値を生成する。
【0143】
このような構成により、本発明による情報処理装置10では、m個のノードNのうちねん架しない第1状態のノードNが、ねん架するノードNより多く含まれる初期値を設定することができる。目的関数は、送配電線22をねん架するノードNの数に基づいて定まるため、ねん架しないノードNが多く含まれる初期値を設定することにより、目的関数の評価値が比較的高い初期値を設定することができる。これにより、より短時間で、m個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定することができる。
【0144】
また、本発明による情報処理装置10は、メタヒューリスティクスを用いた組み合わせ最適化手法により、目的関数を最適化する、m個のノードNのそれぞれにおける送配電線22の状態を決定する。
【0145】
このような構成により、計算コストを削減して効率良く、かつ精度良く、不平衡率を小さくするねん架の状態を決定することができる。
【0146】
また、本発明による情報処理装置10は、電力系統20における所定の位置の電圧、及び電流を計測するセンサ内蔵開閉器23の計測値、または、n個のノードNのそれぞれに接続された電力量計SMの計測値の少なくとも何れかを用いてを用いて、n個のノードNのそれぞれにおいて電力系統20とやりとりされる電力を算出する。
【0147】
このような構成により、本発明による情報処理装置10では、センサ内蔵開閉器23又は各電力量計SMの計測値を用いて、各ノードNにおける実際の負荷変動又は発電変動が反映された負荷分布を生成することができる。
【0148】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【0149】
例えば、上述した系統構成データベース11、スマートメータ情報データベース12、又はセンサ開閉器計測データベース17それぞれが記憶する各データは、CPU101が、記録媒体駆動部106を介して記録媒体6に格納されたデータを読み込んでもよいし、ネットワーク接続部107を介して外部のコンピュータ又はサーバから取得してもよい。
【0150】
また、上述した変圧器電力データ、ねん架毎の不平衡率算出結果テーブル、又は目的関数算出結果テーブルなどの情報処理装置10,10Aの各機能が生成する各種データは、CPU101が、記憶部105に格納してもよいし、記録媒体駆動部106を介して記録媒体6に書き込んでもよいし、メモリ102上に構造体として格納してもよいし、算出した決定結果とともに出力部104に出力してもよい。
【符号の説明】
【0151】
10,10A 情報処理装置
11 系統構成データベース
12 スマートメータ情報データベース
13 変圧器電力算出部
14,14A データ生成部
15 最適ねん架算出部
16 結果出力部
17 センサ開閉器計測データベース
101 CPU
102 メモリ
103 入力部
104 出力部
105 記憶部
106 記録媒体駆動部
107 ネットワーク接続部
20 電力系統
21 変圧器
22 送配電線
23 センサ内蔵開閉器
30 通信線
N ノード
SM 電力量計
TR 柱上変圧器