(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016816
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】管材のインシュレータ
(51)【国際特許分類】
F16L 59/07 20060101AFI20240131BHJP
F01N 13/14 20100101ALI20240131BHJP
F01N 13/18 20100101ALI20240131BHJP
F16L 59/08 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F16L59/07
F01N13/14
F01N13/18
F16L59/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116540
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2022118958
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森崎 直樹
【テーマコード(参考)】
3G004
3H036
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004FA01
3G004FA04
3G004GA04
3G004GA06
3H036AA01
3H036AB12
3H036AB32
3H036AB45
3H036AC02
3H036AD09
(57)【要約】
【課題】容易な加工工程及び低い生産コストにて所望の形状を有するインシュレータを製造することができる技術を提供する。
【解決手段】管材の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆う部分であるカバー部と管材の外周面にカバー部を固定する部分である固定部とを含んでなる管材のインシュレータにおいて、予め定められた半径及び軸方向における長さを有する規格化された有限種の半割れ直管である直管部品並びに予め定められた半径及び軸方向における長さ及び軸の曲率半径を有する規格化された有限種の半割れ曲管である曲管部品からなる群である汎用部品群より選ばれる複数個の直管部品及び複数個の曲管部品である複数の汎用部品の組み合わせによってカバー部を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管材の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ前記管材の外周面と一定の間隔を空けて前記管材の前記外周面を覆う部分であるカバー部と、前記管材の前記外周面に前記カバー部を固定する部分である固定部と、を含んでなる、管材のインシュレータであって、
前記カバー部は、予め定められた半径及び軸方向における長さを有する規格化された有限種の半割れ直管である直管部品並びに予め定められた半径及び軸方向における長さ及び軸の曲率半径を有する規格化された有限種の半割れ曲管である曲管部品からなる群である汎用部品群より選ばれる複数個の前記直管部品及び複数個の前記曲管部品である複数の汎用部品の組み合わせによって構成されている、
管材のインシュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載された管材のインシュレータであって、
前記固定部は、前記カバー部の両方の端部をそれぞれ構成する一対の前記汎用部品である一対の端部部品の各々の前記カバー部の前記端部側の端部の内側にそれぞれ固定された一対の半割れ管状の部材である一対のブラケットであり、
前記ブラケットは、前記端部部品の内周面に沿った形状を有する部分である第1当接部と、前記管材の外周面に沿った形状を有する部分である第2当接部と、前記第1当接部と前記第2当接部とを接続する部分であるテーパ部と、少なくとも前記第2当接部の周方向における両端において径方向における外向きに延在する部分である第1接続部とを有し、
一対の前記ブラケットは、互いに対向する前記第1接続部同士が相互に固定されることにより、前記管材を間に挟んで互いに対向する前記第2当接部同士の間に前記管材を挟持して前記端部部品を前記管材の前記外周面に固定するように構成されている、
管材のインシュレータ。
【請求項3】
請求項1に記載された管材のインシュレータであって、
前記管材を間に挟んで互いに対向する前記汎用部品の対の一部が、前記管材への固定手段であるステーをそれぞれが備える一対の前記汎用部品である一対のステー付き部品によって構成されており、
前記ステーは、前記ステー付き部品の内側に固定されており、前記管材の外周面に沿った形状を有する部分である第3当接部と、前記第3当接部の周方向における両端において径方向における外向きに延在する部分である第2接続部とを有し、
一対の前記ステー付き部品は、互いに対向する前記第2接続部同士を相互に固定することにより、前記管材を間に挟んで互いに対向する前記第3当接部同士の間に前記管材を挟持して前記ステー付き部品を前記管材の前記外周面に固定するように構成されている、
管材のインシュレータ。
【請求項4】
請求項1に記載された管材のインシュレータであって、
前記管材を間に挟んで互いに対向する前記汎用部品の対の一部が、相互係止部及び第3接続部をそれぞれが備える一対の前記汎用部品である一対の仮留め部品によって構成されており、
一対の前記仮留め部品がそれぞれ備える前記相互係止部は、一対の前記仮留め部品の相互の位置関係を固定するための別個の治具を用いること無く、相互に係止することによって一対の前記仮留め部品の相互の位置関係が固定された状態である仮留め状態を達成するように構成されており、
一対の前記仮留め部品がそれぞれ備える前記第3接続部は、前記仮留め状態において互いに密着するように構成されており、
一対の前記仮留め部品は、前記仮留め状態において互いに密着する前記第3接続部同士が相互に固定されることにより、互いの位置関係が最終的に固定された状態である本留め状態を達成するように構成されている、
管材のインシュレータ。
【請求項5】
請求項4に記載された管材のインシュレータであって、
前記相互係止部が、前記管材の外周面の少なくとも一部に沿った形状を有する部分である第4当接部を更に有し、
一対の前記仮留め部品は、前記仮留め状態及び前記本留め状態において前記管材を間に挟んで互いに対向する一対の前記仮留め部品がそれぞれ備える前記相互係止部が有する前記第4当接部同士の間に前記管材を挟持して一対の前記仮留め部品を前記管材の前記外周面に固定するように構成されている、
管材のインシュレータ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された管材のインシュレータであって、
前記汎用部品のうちの一部が、前記直管部品の二次加工品及び/又は前記曲管部品の二次加工品である加工部品によって構成されている、
管材のインシュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管材のインシュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高温の流体が内部に流れる管材から外部への熱及び/又は音の放射を低減することを目的として、管材の軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆う被覆部材がインシュレータとして設けられることが知られている。このようなインシュレータは、一般的には、金属板のプレス成形(絞り加工)によって形成される。管材の外周面とインシュレータとの間の隙間は、空気層からなる断熱層及び/又は防音層として作用することができる。また、例えばインシュレータの断熱性の向上及び/又は被覆部材の振動の低減等を目的として、例えばグラスウール等の断熱材が上記隙間に充填される(管材の外周面と被覆部材との間に挟持される)場合もある。このような被覆型のインシュレータは、特に「ヒートインシュレータ」と呼称されるのが一般的である。
【0003】
更に、被覆部材は、管材から外部への熱及び/又は音の放射の低減に加えて、管材及び/又は断熱材の損傷及び/又は汚れ等を防止する保護部材としての機能をも担うことができる。このようなインシュレータは、特に自動車の排気管において多用されており、例えば飛び石による管材及び/又は断熱材の損傷及び/又は路面からの跳ね上げによる管材及び/又は断熱材の汚れ等の問題を被覆部材によって低減することができる。
【0004】
自動車の排気管の多くは、排気管の軸方向(延在方向)に沿って比較的長い範囲(例えば、数十cm~数m)に亘る三次元的な形状を有する。また、典型的には、インシュレータの横断面(管材の軸に対して垂直な面による断面)は、円形又は楕円形の形状を有する。このような構成を有するインシュレータは、管材の軸(管軸)を含む面によって半分に分割された一対の「半割れ管」の開口側を互いに向き合わせて一対の半割れ管の端部同士を当接させるか或いは端部の先端部分を互いに重なり合わせることによって形成され、この状態にて管材の外周面に固定される。
【0005】
一対の半割れ管の各々は金属板のプレス成形(絞り加工)によって形成されるのが通例であり、一対の半割れ管の各々について高価な大型のプレス型が必要である。
【0006】
一方、インシュレータに求められる機能は、上述したように、空気層又は断熱材からなる断熱層及び/又は防音層の形成・維持並びに管材及び/又は断熱材の被覆・保護であるので、軽量化及び/又はコスト削減の観点からは、インシュレータの肉厚を(例えば1mm又は1mm未満程度にまで)小さくすることが求められる。しかしながら、このような薄い金属板のプレス成形(絞り加工)においては皺及び/又は亀裂等の欠陥が生じ易く、成形が極めて困難であるという問題がある。斯かる問題への対策としては、例えば部分的に肉厚を大きくしたり、上記のような欠陥が生じ難い形状に変更したりすることが考えられるが、このような対策は例えばインシュレータの重量増及び/又は(自動車等への)搭載性の悪化等の問題を招いていた。
【0007】
上述したような種々の問題を回避しつつ薄い金属板のプレス成形(絞り加工)を良好に行うための方策としては、複数の段階(複数の工程)からなる漸次的なプレス成形(絞り加工)を行うことが考えられる。しかしながら、斯かる方策によれば、複数の段階(複数の工程)の各々について高価な大型のプレス型が必要となるため、成形コストが更に増大することになる。ましてや、インシュレータが適用される管材が少量多品種製品(例えば車種毎に異なる形状を有する排気管等)である場合、成形コストの増大がより顕著となる。
【0008】
上述したような問題に鑑み、例えば特許文献1(実開昭53-118161号公報)及び特許文献2(特開2012-167569号公報)においては、管材の軸方向に沿って延在するインシュレータを比較的短い複数の部分に分割し、隣接する部分同士を嵌合させて固定する技術が開示されている。しかしながら、これらの技術によっても、個々の部分の管材の軸方向に沿った長さ(延在長)はある程度は短くなるものの、個々の部分は適用される管材の形状に対応した複数の直線部及び曲線部を含む三次元的な形状を有する。従って、上述した薄い金属板のプレス成形(絞り加工)に伴う問題は依然として解消されず、問題の程度が軽減されるに過ぎない。
【0009】
また、特許文献3(特許第6357139号公報)においても、排気管の長手方向に沿って複数個配置されるカバーによって構成された排気管のカバー構造が開示されている。当該カバー構造においては、長手方向の途中(中央部)にて排気管に溶接されたカバー及び当該カバーに隣接する別のカバーの一方の端部が排気管の外周に摺接すると共に他方のカバー内に摺動可能に嵌合している。これにより、カバーの熱伸びを確実に吸収すると共に、相互に隣接するカバーの重なり部での振動による異音の発生を抑えると共に、径方向の広がりを抑えて溶接部にかかる負担軽減によって溶接部にかかる応力を低減し、耐久性を高めることができるとされている。しかしながら、当該技術によっても、上述した薄い金属板のプレス成形(絞り加工)に伴う問題は依然として解消されない。
【0010】
以上のように、当該技術分野においては、容易な加工工程及び低い生産コストにて所望の形状を有するインシュレータを製造することができる技術に対する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭53-118161号公報
【特許文献2】特開2012-167569号公報
【特許文献3】特許第6357139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述したように、当該技術分野においては、容易な加工工程及び低い生産コストにて所望の形状を有するインシュレータを製造することができる技術に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、予め規格化された有限種の半割れ状の直管部品及び曲管部品からなる群より選ばれる複数個の汎用部品の組み合わせによってインシュレータを構成することにより上記課題を解決することができることを見出した。
【0014】
具体的には、本発明に係る管材のインシュレータ(以降、「本発明インシュレータ」と称呼される場合がある。)は、カバー部と固定部とを含んでなる、管材のインシュレータである。カバー部は、管材の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆う部分である。固定部は、管材の外周面にカバー部を固定する部分である。
【0015】
本発明インシュレータにおいて、カバー部は、汎用部品群より選ばれる複数の汎用部品の組み合わせによって構成されている。汎用部品群は、詳しくは後述するが、予め定められた半径及び軸方向における長さを有する規格化された有限種の半割れ直管である直管部品並びに予め定められた半径及び軸方向における長さ及び軸の曲率半径を有する規格化された有限種の半割れ曲管である曲管部品からなる群である。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、本発明インシュレータにおいては、管材の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆う部分であるカバー部が、予め規格化された有限種の半割れ状の直管部品及び曲管部品からなる群(汎用部品群)より選ばれる複数の汎用部品の組み合わせによって構成される。
【0017】
従って、少なくともカバー部の一部については、複数の汎用部品(即ち、予め規格化された有限種の半割れ状の直管部品及び曲管部品)を組み合わせることにより、管材の外周面に沿った形状とすることができる。当然のことながら、個々の汎用部品は、従来技術に係るインシュレータを構成する一対の半割れ管に比べて、形状が単純であり且つサイズも小さい。従って、従来技術に係るインシュレータの成形において必須であった管材の品種毎に専用の大型のプレス型は不要であり、プレス成形(絞り加工)も容易である。即ち、本発明によれば、容易な加工工程及び低い生産コストにて所望の形状を有するインシュレータを製造することができる。
【0018】
本発明によって達成される上記のような効果は、本発明インシュレータが適用される管材を備える装置又は設備(例えば、自動車等)の量産が終了した後にインシュレータの破損及び/又は劣化に対応するための所謂「補給品」としてインシュレータ及び/又はインシュレータを構成するサブアセンブリを供給する際にも極めて有用である(詳しくは後述する)。
【0019】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施態様に係る管材のインシュレータ(第1インシュレータ)の構成の一例を示す模式的な平面図である。
【
図2】第1インシュレータのカバー部を構成する構成要素としての直管部品及び曲管部品の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図3】第1インシュレータのカバー部の屈曲部を構成する曲管部品の幾つかの構成を例示する模式的な平面図である。
【
図4】管材を間に挟んで開口側を互いに向き合う一対の半割れ管の周方向における端部の先端部分の重なり合いの幾つかの例を示す、管軸に垂直な平面による模式的な断面図である。
【
図5】第1インシュレータのカバー部を構成する汎用部品の端部同士が相互に重なった状態において固定されている様子を示す模式的な斜視図である。
【
図6】管材を間に挟んで互いに対向する汎用部品同士の軸方向における長さが等しい場合及び異なる場合における汎用部品同士の軸方向における継ぎ目の位置の違いを例示する模式的な斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施態様に係る管材のインシュレータ(第2インシュレータ)が備える固定部としてのブラケットの構成の一例を示す模式図である。
【
図8】本発明の第3実施態様に係る管材のインシュレータ(第3インシュレータ)が備えるカバー部を構成する汎用部品に含まれるステー付き部品の構成の一例を示す模式図である。
【
図9】1つの変形例に係る第3インシュレータが備えるカバー部を構成する汎用部品に含まれるステー付き部品の構成の一例を示す模式図である。
【
図10】もう1つの変形例に係る第3インシュレータが備えるカバー部を構成する汎用部品に含まれるステー付き部品の構成の一例を示す模式図である。
【
図11】2つのサブアセンブリの間に介在して2つのサブアセンブリを接続すると共に2つのサブアセンブリを管材に固定する第3インシュレータによってサブアセンブリの端部に形成された縮径部と管材とが共締めされている様子を示す模式的な断面図である。
【0021】
【
図12】本発明の第4実施態様に係る管材のインシュレータ(第4インシュレータ)が備える仮留め部品の相互係止部が互いに係合する前と後の状態を示す模式的な斜視図である。
【
図13】第4インシュレータが備えるカバー部を構成する汎用部品に含まれる仮留め部品の構成の一例を示す模式図である。
【
図14】本発明の第1実施例に係る管材のインシュレータ(第1実施例インシュレータ)を集成する前段階において製作される中間部材であるサブアセンブリの構成を例示する模式図である。
【
図15】サブアセンブリから第1実施例インシュレータが集成される手順及び集成された第1実施例インシュレータの構成の一例を示す模式図である。
【
図16】
図15に例示した手順によって集成された第1実施例インシュレータの構成を示す模式図である。
【
図17】1つの変形例に係る第1実施例インシュレータの構成を例示する模式図である。
【
図18】もう1つの変形例に係る第1実施例インシュレータの構成を例示する模式図である。
【
図19】もう1つの変形例に係る第1実施例インシュレータの構成を例示する模式図である。
【
図20】もう1つの変形例に係る第1実施例インシュレータの構成を例示する模式図である。
【
図21】本発明の第2実施例に係る管材のインシュレータ(第2実施例インシュレータ)の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る管材のインシュレータ(以降、「第1インシュレータ」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0023】
〈構成〉
第1インシュレータは、カバー部と固定部とを含んでなる、管材のインシュレータである。第1インシュレータが適用される管材は、外部への熱及び/又は音の放射が低減されるべき管材である限り特に限定されない。典型的には、このような管材は、その内部に高温の流体が流れる管材である。具体的には、第1インシュレータが適用される管材は、例えば、内燃機関の排気管であり、特に自動車の排気管である。
【0024】
カバー部は、管材の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆う部分である。カバー部の構成(材料及び構造)は、後述する構成要件を除き、管材の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆うこと及び第1インシュレータの使用環境に耐えることが可能である限り特に限定されない。このような材料の具体例としては、例えば、ステンレス鋼、銅及びアルミニウム等の金属並びにこれらの金属を含む合金等を挙げることができる。
【0025】
管材の外周面においてカバー部によって覆われる範囲は特に限定されないが、管材から外部への熱及び/又は音の放射を低減する観点からは出来る限り広い範囲が覆われるべきである。例えば、管材を他の部材と接続するためのフランジが管材の両端に形成されている場合は、管材の一方のフランジから他方のフランジに至る範囲の外周面の全て又は殆どがカバー部によって覆われていることが好ましい。
【0026】
固定部は、管材の外周面にカバー部を固定する部分である。固定部の構成(材料及び構造)は、管材の外周面にカバー部を固定すること及び第1インシュレータの使用環境に耐えることが可能である限り特に限定されない。このような材料の具体例としては、例えばステンレス鋼、銅及びアルミニウム等の金属並びにこれらの金属を含む合金等を挙げることができる。固定部の具体的な構造については、他の実施形態に関する説明において詳しく後述する。
【0027】
第1インシュレータにおいて、カバー部は、汎用部品群より選ばれる複数の汎用部品の組み合わせによって構成されている。汎用部品群は、予め定められた半径及び軸方向における長さを有する規格化された有限種の半割れ直管である直管部品並びに予め定められた半径及び軸方向における長さ及び軸の曲率半径を有する規格化された有限種の半割れ曲管である曲管部品からなる群である。
【0028】
即ち、汎用部品群とは、第1インシュレータを適用しようとする管材の形状に適合するカバー部を構成するために不可欠な部品として予め用意された複数種の部品の集まりである。このような汎用部品群の中から選ばれる複数の汎用部品を適宜組み合わせることにより、目的とする管材の形状に適合したカバー部を備える第1インシュレータを容易に集成することができる。
【0029】
尚、第1インシュレータは、カバー部を構成する個々の汎用部品及び固定部を構成する部品から直接的に集成してもよい。或いは、詳しくは本発明の第1実施例に関する説明において後述するように、第1インシュレータを集成する前段階において製作される中間部材であるサブアセンブリを、カバー部を構成する個々の汎用部品及び固定部を構成する部品から予め製作しておき、これらのサブアセンブリを管材の外周面に装着することにより、第1インシュレータを集成してもよい。
【0030】
前述したように、個々の汎用部品は、従来技術に係るインシュレータを構成する一対の半割れ管に比べて、形状が単純であり且つサイズも小さい。従って、従来技術に係るインシュレータの成形において必須であった管材の品種毎に専用の大型のプレス型は不要である。また、個々の汎用部品のプレス成形(絞り加工)も容易である。
【0031】
尚、本発明によって達成される効果を高める観点からは、第1インシュレータを適用しようとする管材の形状に適合するカバー部を構成することが可能である限りにおいて、汎用部品群を構成する汎用部品の種類はできる限り少ないことが好ましい。本明細書において使用される「有限種」なる文言は、斯かる概念を表す用語である。つまり、カバー部を構成する最小単位としての汎用部品をできる限り共通化して、汎用部品群を構成する汎用部品の種類をできる限り少なくすることが好ましい。これにより、目的とする管材の形状に適合したカバー部を備える第1インシュレータを量産するに当たっても、汎用部品群として在庫を確保すべき汎用部品の種類を限定することができるので、例えば生産管理の複雑化及び/又は製造コストの増大を低減することができる。
【0032】
尚、本発明によって達成される効果を高める観点からは、汎用部品群より選ばれる汎用部品のみによってカバー部の全体が構成されていることが好ましい。しかしながら、本発明による効果が達成される限りにおいて、カバー部を構成する部材の一部に汎用部品ではない構成要素が含まれることは排除されない。
【0033】
図1は、第1インシュレータの構成の一例を示す模式的な平面図である。
図1においては、第1インシュレータ101は実線にて、第1インシュレータ101が適用される管材200は破線にて、それぞれ描かれている。
図1に例示する第1インシュレータ101は、カバー部110と固定部120とを含んでなる。カバー部110は、管材200の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ管材200の外周面と一定の間隔(例えば、数mm)を空けて管材200の外周面を覆っている。固定部120は、管材200の外周面にカバー部110を固定している。
【0034】
図1に例示するように、カバー部110は、汎用部品群より選ばれる複数の汎用部品の組み合わせによって構成されている。汎用部品群は、予め定められた半径及び軸方向における長さを有する規格化された有限種の半割れ直管である直管部品111並びに予め定められた半径及び軸方向における長さ及び軸の曲率半径を有する規格化された有限種の半割れ曲管である曲管部品112からなる群である。
【0035】
汎用部品群に含まれる直管部品111の半径及び軸方向における長さ並びに曲管部品112の半径及び軸方向における長さ及び軸の曲率半径のバリエーションは、第1インシュレータ101が適用される管材200において想定される形状のバリエーションに合わせて設計される。但し、例えば自動車等の工業製品において使用される管材200に想定される形状(例えば、管材200の外径及び屈曲部の曲率半径等)は管材200の用途において定められる規格に準拠したものとなっている。従って、管材200に対応して用意されるべき直管部品111の半径及び軸方向における長さ並びに曲管部品112の半径及び軸方向における長さ及び軸の曲率半径のバリエーションを有限種とすることができる。
【0036】
図1に示す例においては、3種類の直管部品111a、直管部品111b及び直管部品111cが複数の直管部品111として選ばれており、2種類の曲管部品112a及び曲管部品112bが複数の曲管部品112として選ばれている。直管部品111a乃至直管部品111c並びに曲管部品112a及び曲管部品112bの内径は管材200の外径よりも上述した「一定の間隔」に対応する寸法だけ大きく、曲管部品112a及び曲管部品112bの軸の曲率半径は管材200の屈曲部における軸の曲率半径に一致している。また、
図1に例示するように、直管部品111の軸方向における長さは、直管部品111a、直管部品111b、直管部品111cの順に大きく、曲管部品112aの軸方向における長さは曲管部品112bの軸方向における長さよりも大きい。
【0037】
管材200を間に挟んで互いに対向する汎用部品同士(直管部品111同士及び曲管部品112同士)は、開口側を互いに向き合わせて半割れ管としての端部同士を当接させた状態又は端部の先端部分を互いに重なり合わせた状態にて、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、互いに固定することができる。また、管材200の軸(管軸)に沿って互いに隣接する汎用部品同士もまた、管軸方向における端部同士を当接させた状態又は端部の先端部分を互いに重なり合わせた状態にて、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、互いに固定することができる。汎用部品同士の端部同士を当接させた状態にて固定するか或いは端部の先端部分を互いに重なり合わせた状態にて固定するかについては、例えば汎用部品の肉厚等に応じて定めることができる。典型的には、汎用部品の肉厚がある程度(例えば、数mm)以上である場合は前者の状態にて、汎用部品の肉厚がある程度(例えば、数mm)未満である場合は後者の状態にて、互いに固定されることが一般的である。
【0038】
尚、
図1に例示する第1インシュレータ101は、中央の直線部と当該直線部の図面に向かって上側に隣接する屈曲部との継ぎ目(黒塗りの矢印を参照)において当該継ぎ目から先の部分が図面の紙面よりも手前に向かって延在するように捻られた構造を有する。即ち、上記継ぎ目よりも図面に向かって上側の部分と下側の部分とは同一平面内に存在しない。このように、本発明によれば、カバー部を構成する汎用部品の組み合わせによって、三次元的な形状を有するインシュレータを容易に構成することができる。
【0039】
図2の(a)及び(b)は、それぞれ、第1インシュレータのカバー部を構成する構成要素としての直管部品及び曲管部品の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図2に例示する直管部品111及び曲管部品112は、端部の先端部分を互いに重なり合わせた状態にて固定するための重なり代が設けられている。具体的には、
図2に例示する直管部品111及び曲管部品112は、管材を間に挟んで開口側を互いに向き合わせて半割れ管の周方向における端部の先端部分を互いに重なり合わせるための重なり代Wpを有する。更に、曲管部品112は、重なり代Wpに加えて、管軸方向における端部の先端部分を管軸に沿って隣接する直管部品111と重なり合わせるための重なり代Waを有する。
【0040】
尚、
図2の(a)に例示した直管部品111には重なり代Waは設けられていないが、重なり代Wpにおける重なり具合を調節して径の大きさを調節することにより、隣接する他の直管部品111と端部の先端部分とを重なり合わせることを可能とすることができる。この場合、直管部品111の管軸方向における端部同士の重なり具合を調節することにより、これらの直管部品111によって構成されるカバー部110の直線部の長さを調節することができる。
【0041】
尚、第1インシュレータを適用しようとする管材200の形状並びに/又は汎用部品として予め用意される直管部品111及び/若しくは曲管部品112のバリエーションによっては、汎用部品の管軸方向における端部同士の重なり具合を調節することにより、カバー部110の直線部の長さ及び/又は屈曲部の屈曲角度を所望の大きさに調節することが困難な箇所が生ずる場合がある。このような場合には、例えば切削加工等の手法により直管部品111及び/又は曲管部品112を二次加工することにより、直管部品111の管軸方向における長さ及び/又は曲管部品112の曲線部分(重なり代Waではない部分)の長さを調節することができる。その結果、カバー部110の直線部の長さ及び/又は屈曲部の屈曲角度を所望の大きさに調節することができる。即ち、カバー部110を構成する汎用部品(直管部品111及び/又は曲管部品112)に汎用部品の二次加工品が含まれていてもよい。
【0042】
また、
図3の(a)に例示するように、
図2の(b)に例示したような曲管部品112の対と当該対に左右対称な他の曲管部品112の対とを隣接するように配置して曲線部分(重なり代Waではない部分)の端部同士を重なり合わせて固定することができる。これにより、
図2の(b)に示した重なり代Waとは反対側の端部に他の曲管部品112の重なり代Waを配置してカバー部110の屈曲部を構成することができる。その結果、当該屈曲部の前後に直管部品111を重なり合わせて固定することが可能となる。
【0043】
更に、
図3の(b)に例示するように、隣接する一対の曲管部品112の端部同士の重なり具合を調節することにより、これらの曲管部品112によって構成されるカバー部の屈曲部の屈曲角度θを調節することができる。この場合、実現可能な屈曲角度θの最小値は隣接する一対の曲管部品112の曲線部同士の重なり具合を最大とした場合における屈曲角度であり、実現可能な屈曲角度θの最大値は隣接する一対の曲管部品112の曲線部同士の重なり具合を最小とした場合における屈曲角度である。
【0044】
加えて、例えば
図3の(c)に例示するように、個々の曲管部品112の曲線部の屈曲角度を小さくして屈曲角度θの最小値をより小さくすると共に、上述した重なり代Waを備えない1つ以上の曲管部品112’を一対の曲管部品112の間に介在させて屈曲角度θの最大値をより大きくしてもよい。これにより、隣接する曲管部品112同士の重なり具合によって調節可能なカバー部の屈曲部の屈曲角度の範囲を大きくすることができるので、より多様な形状の管材に第1インシュレータを適用することが可能となる。
【0045】
以上、汎用部品同士の端部の先端部分を互いに重なり合わせた状態にて固定する場合について
図2及び
図3を参照しながら詳述したが、汎用部品同士の重なり合いの態様は
図2及び
図3に例示したものに限定されない。
図4は、管材を間に挟んで開口側を互いに向き合う一対の半割れ管の周方向における端部の先端部分の重なり合いの幾つかの例を示す、管軸に垂直な平面による模式的な断面図である。
【0046】
図4の(a)においては、汎用部品としての半割れ管の管壁を半周よりも重なり代分だけ長く形成しておき、一方の汎用部品の内側に他方の汎用部品を嵌め込むことにより両者の周方向における端部の先端部分同士を互いに重なり合わせている。(b)においては、(a)と同様に汎用部品としての半割れ管の管壁を半周よりも重なり代分だけ長く形成しておき、一方の汎用部品と他方の汎用部品とを径方向に僅かにずれた位置において両者の周方向における端部の先端部分同士を互いに重なり合わせている。(c)及び(d)においては、重なり代となる部分を曲面では無く平面とした点を除き、それぞれ上述した(a)及び(b)と同様である。(e)においては、周方向における一方の端部に他の部分の径よりも大きい径を有する部分である大径部が形成されており、一対の半割れ管の一方の半割れ管の大径部が他方の半割れ管の大径部とは反対側の端部と重なるように配置されている。(f)においては、重なり代となる部分を曲面では無く平面とした点を除き、上述した(e)と同様である。このように、汎用部品同士の重なり合いの態様には多種多様なバリエーションが存在する。
【0047】
上記のように汎用部品同士の端部同士を相互に重なった状態において固定するための具体的手法としては、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法を挙げることができる。前述したように第1インシュレータを集成する前段階において製作される中間部材であるサブアセンブリを個々の汎用部品から予め製作する際には、汎用部品の溶接箇所を一対の電極の間に挟むことができるので、汎用部品同士の端部同士をスポット溶接によって固定することができる。しかしながら、前述したようにカバー部を構成する汎用部品と管材の外周面との間の隙間は狭い。従って、予め製作しておいたサブアセンブリを管材の外周面に装着して第1インシュレータを集成する場合及びカバー部を構成する個々の汎用部品及び固定部を構成する部品から第1インシュレータを直接的に集成する場合は、一般的なスポット溶接のように汎用部品の溶接箇所を一対の電極の間に挟むことは困難又は不可能である。このような場合において汎用部品同士の端部同士をスポット溶接によって固定する際には、所謂「ワンサイドスポット溶接」を採用する必要がある。
【0048】
上記のようにワンサイドスポット溶接によって汎用部品同士の端部同士を相互に重なった状態において固定する場合、汎用部品の溶接箇所に電極の先端を所定の圧力にて押し付ける必要がある。従って、ワンサイドスポット溶接に必要とされる圧力及び汎用部品の溶接箇所の機械的強度によっては、カバー部を構成する汎用部品と管材の外周面との間の隙間が空気層からなる断熱層(即ち、中空)であると、溶接時の圧力に汎用部品が耐えられずに変形してしまう虞がある。このような場合は、カバー部を構成する汎用部品と管材の外周面との間の隙間を例えばグラスウール等の断熱材によって充填することが好ましい。これにより、溶接時の圧力を受ける汎用部品の下支えとして断熱材が機能して、溶接時における汎用部品の変形等の問題を低減することができる。アーク溶接を採用する場合も同様である。
【0049】
図5は、第1インシュレータのカバー部を構成する汎用部品の端部同士が相互に重なった状態において固定されている様子を示す模式的な斜視図である。
図5の(a)は第1インシュレータ101’の全容を示す模式的な斜視図であり、(b)は(a)において太い破線によって囲まれている部分の拡大図である。(b)に例示するように、第1インシュレータ101’においては、カバー部を構成する汎用部品(直管部品111、曲管部品112及びステー付き部品113)同士の端部同士が相互に重なった状態にて溶接によって固定されている(図中に示す黒い丸印を参照)。
【0050】
上記のように、第1インシュレータにおいては、管材を間に挟んで互いに対向する汎用部品同士の周方向における端部同士及び管軸方向に沿って互いに隣接する汎用部品同士の管軸方向における端部同士が相互に重なった状態において固定することができる。斯かる構成を有する第1インシュレータによれば、
図2乃至
図4を参照しながら説明したように、汎用部品の管軸方向における端部同士の重なり具合を調節することにより、カバー部の直線部の長さ及び/又は屈曲部の屈曲角度を所望の大きさに調節することができる。即ち、斯かる構成を有する第1インシュレータは、多種多様なバリエーションを有する管材に容易に適合することができる。
【0051】
一方、汎用部品同士の端部同士を当接させた状態にて固定する場合においては、有限種の汎用部品の組み合わせによってカバー部110の直線部の長さ及び/又は屈曲部の屈曲角度を調節することができる。しかしながら、第1インシュレータを適用しようとする管材200の形状並びに/又は汎用部品として予め用意される直管部品111及び/若しくは曲管部品112のバリエーションによっては、カバー部110の直線部の長さ及び/又は屈曲部の屈曲角度を所望の大きさに調節することが困難な箇所が生ずる場合がある。
【0052】
上記のような場合には、例えば切削加工等の手法により直管部品111及び/又は曲管部品112を二次加工することにより、直管部品111の管軸方向における長さ及び/又は曲管部品112の曲線部分(重なり代Waではない部分)の長さを調節することができる。その結果、カバー部110の直線部の長さ及び/又は屈曲部の屈曲角度を所望の大きさに調節することができる。即ち、汎用部品同士の端部同士を当接させた状態にて固定する場合においてもまた、カバー部110を構成する汎用部品(直管部品111及び/又は曲管部品112)に汎用部品の二次加工品が含まれていてもよい。
【0053】
以上のように、第1インシュレータにおいては、管材の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆う部分であるカバー部が、予め規格化された有限種の半割れ状の直管部品及び曲管部品からなる群(汎用部品群)より選ばれる複数の汎用部品の組み合わせによって構成される。尚、本明細書の冒頭において述べたように、例えばインシュレータの断熱性の向上及び/又はカバー部の振動の低減等を目的として、例えばグラスウール等の断熱材が管材の外周面とカバー部との間に挟持されていてもよい。
【0054】
ところで、
図1に示した例においては、固定部120としてのブラケット及び管材200への固定手段であるステーを備える汎用部品であるステー付き部品113も描かれているが、これらについては、他の実施形態に関する説明において詳しく後述する。
【0055】
また、
図1においては、管材200を間に挟んで互いに対向する汎用部品同士の軸方向における長さが等しい。その結果、
図6の(a)に例示するように、管軸に沿って互いに隣接する全ての汎用部品同士の継ぎ目が全周に亘って連続している。しかしながら、管材200を間に挟んで互いに対向する汎用部品同士の軸方向における長さは必ずしも等しい必要は無い。即ち、
図6の(b)に例示するように、管軸に沿って互いに隣接する汎用部品同士の継ぎ目の軸方向における位置が管材200を間に挟んで互いに対向する汎用部品同士の一方と他方とで異なっていてもよい。尚、
図6においては、上記内容の理解を容易なものとすることを目的として直管部品のみによって構成されたカバー部を例示したが、曲管部品によって構成された部分についても同様である。
【0056】
〈効果〉
上記のように、第1インシュレータにおいては、管材の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆う部分であるカバー部が、予め規格化された有限種の半割れ状の直管部品及び曲管部品からなる群(汎用部品群)より選ばれる複数の汎用部品の組み合わせによって構成される。
【0057】
従って、少なくともカバー部の一部については、複数の汎用部品(即ち、予め規格化された有限種の半割れ状の直管部品及び曲管部品)を組み合わせることにより、管材の外周面に沿った形状とすることができる。当然のことながら、個々の汎用部品は、従来技術に係るインシュレータを構成する一対の半割れ管に比べて、形状が単純であり且つサイズも小さい。従って、従来技術に係るインシュレータの成形において必須であった管材の品種毎に専用の大型のプレス型は不要であり、プレス成形(絞り加工)も容易である。即ち、第1インシュレータによれば、容易な加工工程及び低い生産コストにて所望の形状を有するインシュレータを製造することができる。
【0058】
第1インシュレータによって達成される上記のような効果は、第1インシュレータが適用される管材を備える装置又は設備(例えば、自動車等)の量産が終了した後にインシュレータの破損及び/又は劣化に対応するための所謂「補給品」としてインシュレータ及び/又はインシュレータを構成するサブアセンブリを供給する際にも極めて有用である。
【0059】
例えば、自動車部品メーカーには、該当車両の生産終了後も、例えば該当車両の品質及び/又は性能の維持等を目的として、一定の期間に亘って部品を供給する責任がある。そのため、該当車両の量産時におけるように部品を量産していないにもかかわらず、単発且つ不定期に生ずる要請に応じて、要求される部品及び/又はアセンブリを供給しなければならない。これらの部品及び/又はアセンブリの在庫が無い場合は、その都度、材料、金型及び/又は治具等を準備して少量(或いは単品)にて生産することとなるため、生産効率は著しく低い。特に、従来技術に係るインシュレータの場合は、前述したように管材の品種毎に専用の高価な大型のプレス型及び/又は治具を保管しておかなければならず、例えば管理コスト面及び保管スペース面等における部品メーカーの負担が大きい。
【0060】
しかしながら、第1インシュレータにおいては、上述したように、カバー部を構成する個々の汎用部品の形状が単純であり且つサイズも小さいことから、大型のプレス型及び/又は治具の保管は不要であり、個々の汎用部品のプレス成形(絞り加工)も容易である。即ち、第1インシュレータによれば、所謂「補給品」として供給されるインシュレータ及び/又はインシュレータを構成するサブアセンブリについても、容易な加工工程及び低い生産コストにて製造・供給することができる。従って、例えば管理コスト面及び保管スペース面等における部品メーカーの負担を軽減することができる。
【0061】
尚、本発明の他の実施形態及び実施例に関する説明において後述するが、第1インシュレータを適用しようとする管材の形状並びに/又は汎用部品として予め用意される直管部品及び/若しくは曲管部品のバリエーションによっては、汎用部品のみによってカバー部を構成することが困難又は不可能な箇所が生ずる場合がある。このような場合には、汎用部品を二次加工したり、当該箇所に専用のカバー部を用意したりしてもよい。このような場合においても、専用のカバー部以外の箇所については汎用部品によって構成することが好ましいことは言うまでも無い。
【0062】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態に係る管材のインシュレータ(以降、「第2インシュレータ」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0063】
第1インシュレータに関する説明において述べたように、固定部は管材の外周面にカバー部を固定する部分であり、その構成は、管材の外周面にカバー部を固定すること及び第1インシュレータの使用環境に耐えることが可能である限り特に限定されない。例えば、管材の外周面にカバー部を確実に固定してカバー部の振動に起因する異音の発生等の問題を低減する観点からは、カバー部の両端において管材及びカバー部の双方に対して出来るだけ大きな面積にて面接触して両者を固定することが好ましい。
【0064】
〈構成〉
そこで、第2インシュレータは、上述した第1インシュレータであって、一対の半割れ管状の部材である一対のブラケットを固定部として備える管材のインシュレータである。一対のブラケットは、例えば
図1において例示した固定部120のように、カバー部の両方の端部をそれぞれ構成する一対の汎用部品である一対の端部部品の各々のカバー部の端部側の端部の内側にそれぞれ固定された一対の半割れ管状の部材である。ブラケットは、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、端部部品の内周面に固定される。
【0065】
ブラケットは、端部部品の内周面に沿った形状を有する部分である第1当接部と、管材の外周面に沿った形状を有する部分である第2当接部と、第1当接部と第2当接部とを接続する部分であるテーパ部とを有する。第1インシュレータに関する説明において述べたように、カバー部を構成する汎用部品の内径は管材の外径よりも上述した「一定の間隔」に対応する寸法だけ大きい。従って、第1当接部の径は第2当接部の径よりも大きく、テーパ部の径は第1当接部から第2当接部に近付くにつれて小さくなる。これにより、ブラケットは、管材及びカバー部の双方に対して大きな面積にて面接触することができる。
【0066】
ブラケットは、少なくとも第2当接部の周方向における両端において径方向における外向きに延在する部分である第1接続部を更に有する。そして、一対のブラケットは、互いに対向する第1接続部同士を相互に固定することにより、管材を間に挟んで互いに対向する第2当接部同士の間に管材を挟持して端部部品を管材の外周面に固定するように構成されている。一方、ブラケットの第1当接部は、上述したように、端部部品のカバー部の端部側の端部の内側に固定されている。従って、一対のブラケットは、互いに対向する第1接続部同士を相互に固定することにより、第2インシュレータのカバー部を管材の外周面に固定することができる。互いに対向する第1接続部同士もまた、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、相互に固定することができる。
【0067】
尚、端部部品を管材の外周面に固定する手順としては、先ず互いに対向する第2当接部同士の間に管材を挟持した状態において互いに対向する第1接続部同士を相互に固定して一対のブラケットを管材の外周面に固定し、その後に第1当接部を端部部品の内周面に固定することにより、管材の外周面に端部部品を固定してもよい。或いは、上記とは逆に、先ずブラケットの第1当接部を端部部品の内周面に固定し、その後に互いに対向する第2当接部同士の間に管材を挟持した状態において互いに対向する第1接続部同士を相互に固定して一対のブラケットを管材の外周面に固定することにより、管材の外周面に端部部品を固定してもよい。
【0068】
図7は、第2インシュレータが備える固定部としてのブラケットの構成の一例を示す模式図である。
図7の(a)は固定部120としての一対のブラケット(以降、「ブラケット120」と称呼される場合がある。)の模式的な斜視図であり、(b)は直管部品111(端部部品)がブラケット120によって管材200に固定されている様子を示す模式的な平面図である。また、(c)は(b)において線A-Aによって示す平面による模式的な断面図であり、(d)は変形例に係る第2インシュレータが備えるブラケットが管材の外周面に固定されている様子を例示する模式的な断面図である。
【0069】
(a)に例示するように、ブラケット120は、カバー部の両方の端部を構成する汎用部品(端部部品)の内周面に沿った形状を有する部分である第1当接部C1と、管材の外周面に沿った形状を有する部分である第2当接部C2と、第1当接部C1と第2当接部C2とを接続する部分であるテーパ部T1と、少なくとも第2当接部C2の周方向における両端において径方向における外向きに延在する部分である第1接続部F1とを有する。
図7に例示するブラケット120の第1接続部F1は、第2当接部C2及びテーパ部T1との周方向における両端において径方向における外向きに延在する平板状の部分である。
【0070】
(b)に例示するように、カバー部の端部に配設された一対の直管部品111(端部部品)のカバー部の端部側の端部の内側に一対のブラケット120の第1当接部C1がそれぞれ溶接されて固定されている。従って、本来は(b)の平面図において第1当接部C1は見えない筈であるが、ブラケット120による直管部品111(端部部品)の管材200への固定についての理解を容易なものとすることを目的として、第1当接部C1の端部が点線によって描かれている。また、管材200は第2インシュレータの構成要素ではないので破線によって描かれている。
【0071】
そして、(c)に例示するように、互いに対向する一対のブラケット120の第1接続部F1同士を相互に固定することにより、管材200を間に挟んで互いに対向する第2当接部C2同士の間に管材200が挟持され、一対の直管部品111(端部部品)が管材200の外周面に固定される。
【0072】
尚、(d)に例示するように、変形例に係る第2インシュレータにおいては、管材200を間に挟んで互いに対向する第2当接部C2同士と管材200の外周面との間に弾性変形可能な部材M1が挟持されている。この弾性変形可能な部材M1は、第2当接部C2同士と管材200の外周面との間に挟持されて弾性変形に伴う復元力により両者の間に介在すること及び第2インシュレータの使用環境に耐えることが可能である限り特に限定されない。このような弾性変形可能な部材の具体例としては、例えばステンレス鋼製メッシュ等の金属製のメッシュ等を挙げることができる。
【0073】
上記のように、管材200を間に挟んで互いに対向する第2当接部C2同士と管材200の外周面との間に弾性変形可能な部材を挟持することにより、例えば第2当接部C2及び/又は管材200の外周面の形状誤差等に起因して両者の間隔が厳密には均一ではない場合等においても両者を確実に固定することができる。その結果、例えばカバー部の振動に起因する異音の発生等の問題を低減することができる。
【0074】
また、管材200の外周面にカバー部110をより強固に固定すること等を目的として、ブラケット120の第2当接部C2を管材200の外周面に溶接してもよい。但し、この場合、カバー部110の両端に配設された両方の汎用部材(端部部品)に固定されるブラケット120の第2当接部C2を管材200の外周面に溶接すると、管材200の内部に流れる高温の流体に起因する温度上昇に伴うカバー部110の熱伸びを吸収することができず、例えばブラケット120及び/又は端部部品の変形及び/又は破損及び/又は脱離等の問題に繋がる場合がある。
【0075】
従って、ブラケット120の第2当接部C2を管材200の外周面に溶接する場合は、カバー部110の両端の端部部品に固定されるブラケット120の第2当接部C2を管材200の外周面に溶接するのではなく、カバー部110の何れか一端の端部部品に固定されるブラケット120の第2当接部C2のみを管材200の外周面に溶接することが好ましい。これによれば、溶接されていない方のブラケット120の第2当接部C2が管材200の外周面に沿って管軸方向にある程度は摺動することができるので、カバー部110の熱伸びを吸収することができる。
【0076】
〈効果〉
以上のように、第2インシュレータが備える固定部としてのブラケットの一端である第1当接部はカバー部の両端に配設された汎用部品である端部部品の内周面に固定され、ブラケットの他端である第2当接部は管材の外周面に固定される。第1当接部及び第2当接部はそれぞれ端部部品の内周面及び管材の外周面に沿った形状を有するので、ブラケットはカバー部及び管材の双方に対して大きな面積にて面接触して両者を固定することができる。その結果、例えば管材の外周面にカバー部を確実に固定することができ且つカバー部の振動に起因する異音の発生等の問題を低減することができる。
【0077】
更に、互いに対向するブラケットの第1接続部同士を相互に固定することにより管材の外周面にブラケットを容易に固定することができるので、第2インシュレータを管材に装着する際の作業効率を高めることができる。
【0078】
《第3実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第3実施形態に係る管材のインシュレータ(以降、「第3インシュレータ」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0079】
上述したように、第2インシュレータにおいては、ブラケットによりカバー部の両端を管材の表面に確実に固定することができ且つカバー部の振動に起因する異音の発生等の問題を低減することができる。しかしながら、管軸に沿ったカバー部の長さがある程度(例えば、数十cm)以上に大きくなると、ブラケットによりカバー部の両端を管材の表面に固定するだけではカバー部の振動を十分に低減することが困難となる場合がある。また、例えば本発明に係るインシュレータ(本発明インシュレータ)を適用しようとする管材の構成及び/又は当該管材が配設される箇所における周囲の状況等によっては固定部としてのブラケットをカバー部の両端に設けることが困難な場合がある。
【0080】
〈構成〉
そこで、第3インシュレータは、上述した第1インシュレータ又は第2インシュレータであって、管材を間に挟んで互いに対向する汎用部品の対の一部が一対のステー付き部品によって構成されている、管材のインシュレータである。一対のステー付き部品は、管材への固定手段であるステーをそれぞれが備える一対の汎用部品である。即ち、第3インシュレータにおいては、カバー部の両端にそれぞれ配設された端部部品がブラケットによって管材の外周面に固定されていることに加えて、カバー部の途中の少なくとも1箇所に配設されたステー付き部品がステーによって管材の外周面に固定されている。
【0081】
ステーは、ステー付き部品の内側に固定されており、管材の外周面に沿った形状を有する部分である第3当接部と、第3当接部の周方向における両端において径方向における外向きに延在する部分である第2接続部とを有する。上記のように、ステーの第3当接部は管材の外周面に沿った形状を有する。これにより、ステーは管材に対して大きな面積にて面接触することができる。
【0082】
ところで、第1インシュレータに関する説明において述べたように、カバー部を構成する汎用部品の内径は管材の外径よりも上述した「一定の間隔」に対応する寸法だけ大きい。従って、カバー部の径は第3当接部の径よりも大きい。このため、ステー付き部品がカバー部の一部として配設された状態においてステーの第3当接部が管材の外周面に沿うことができるように、ステー付き部品の内側における所定の位置にステーを固定する必要がある。
【0083】
上記のようにステー付き部品の内側における所定の位置にステーを固定するための具体的な構成は、ステー付き部品がカバー部の一部として配設された状態においてステーの第3当接部が管材の外周面に沿うことが可能である限り、特に限定されない。例えば、上記所定の位置にステーを固定することができるように、ステー付き部品の内周面とステーとの間に所定の形状を有する固定部材を介在させてもよい。但し、このような固定部材を採用することは、例えば部品点数及び組み立て工数の増大等の問題を招く虞がある。斯かる問題を低減する観点からは、ステー及び/又はステー付き部品の形状に手を加えて、上記所定の位置にステーを固定することを可能とすることが好ましい。
【0084】
例えば、上記所定の位置にあるステーの一部がステー付き部品の内周面に到達することができるようにステーの一部を変形させておき、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により当該部分とステー付き部品の内周面とを互いに固定してもよい。或いは、図面を参照しながら後述するように、上記所定の位置にあるステーの外周面に到達することができるようにステー付き部品の一部を変形させておき、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により当該部分とステーの外周面とを互いに固定してもよい。
【0085】
一対のステー付き部品は、互いに対向する第2接続部同士を相互に固定することにより、管材を間に挟んで互いに対向する第3当接部同士の間に管材を挟持してステー付き部品を管材の外周面に固定するように構成されている。一方、第3当接部及び第2接続部を有するステーは、上述したように、ステー付き部品の内側に固定されている。従って、一対のステー付き部品は、互いに対向する第2接続部同士を相互に固定することにより、第3インシュレータのカバー部の両端に加えて、途中の任意の箇所においても、カバー部を管材の外周面に固定することができる。互いに対向する第2接続部同士もまた、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、相互に固定することができる。
【0086】
図8は、第3インシュレータが備えるカバー部を構成する汎用部品に含まれるステー付き部品の構成の一例を示す模式図である。
図8の(a)は一対のステー付き部品113の模式的な斜視図であり、(b)はステー付き部品113の模式図であり、(c)はステー付き部品113がステー113sによって管材200に固定されている様子を示す模式的な平面図であり、(d)は(c)において線B-Bによって示す平面による模式的な断面図である。尚、(b)は(a)に示した一対のステー付き部品113のうち上側のステー付き部品113の模式図であり、上段の図は(a)に示すy軸の正側から負側に向かって観察した場合、下段の左側の図は(a)に示すz軸の負側から正側に向かって観察した場合、及び下段の右側の図は(a)に示すx軸の正側から負側に向かって観察した場合をそれぞれ示している。
【0087】
(a)及び(b)に例示するように、ステー113sは、ステー付き部品113の内側に固定されており、管材200の外周面に沿った形状を有する部分である第3当接部C3と、第3当接部C3の周方向における両端において径方向における外向きに延在する部分である第2接続部F2とを有する。上記のように、ステー113sの第3当接部C3は管材200の外周面に沿った形状を有する。これにより、ステー113sは管材200に対して大きな面積にて面接触することができる。
【0088】
ところで、上述したように、カバー部110を構成する汎用部品111の内径は管材200の外径よりも大きいので、第3当接部C3の径はカバー部110の径よりも小さい。従って、ステー付き部品113がカバー部110の一部として配設された状態においてステー113sの第3当接部C3が管材200の外周面に沿うことができるように、ステー付き部品113の内側における所定の位置にステー113sを固定する必要がある。
図8に示す例においては、上記所定の位置にあるステー113sの外周面に到達することができるようにステー付き部品113の一部に凹部113dが形成されており、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、ステー113sが凹部113dに内側から固定されている。
【0089】
そして、(c)及び(d)に例示するように、互いに対向する一対のステー付き部品113の第2接続部F2同士を相互に固定することにより、管材200を間に挟んで互いに対向する第3当接部C3同士の間に管材200が挟持され、一対のステー付き部品113が管材200の外周面に固定される。尚、管材200は第3インシュレータの構成要素ではないが、ステー113sによるステー付き部品113の管材200への固定についての理解を容易なものとすることを目的として、管材200が破線によって描かれている。
【0090】
ところで、
図8に示した例においては、上述したように、所定の位置にあるステー113sの外周面に到達することができるようにステー付き部品113の一部に凹部113dが形成されており、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、ステー113sが凹部113dに内側から固定されている。即ち、
図8に例示したステー付き部品113においては、周方向における両端にそれぞれ形成された合計で2つの凹部113dによってステー113sが支持されている。しかしながら、第3インシュレータが適用される管材の用途によっては、このような2点支持では剛性が不十分であり支持剛性を更に高める必要が生ずる場合もある。また、例えば使用時における異音の低減等の観点から、管材に装着されたインシュレータの共振周波数を所定の閾値よりも高くすることが求められる場合もある。
【0091】
そこで、1つの変形例に係る第3インシュレータにおいては、ステー付き部品の周方向における両端にそれぞれ形成された合計で2つの凹部に加えて、他の1つ以上の箇所においても、ステーが支持される。即ち、当該変形例に係る第3インシュレータにおいては、ステー付き部品の内側における3箇所以上の所定の位置においてステーが固定される。尚、第3インシュレータと管材とをより強固に且つ確実に固定する観点からは、例えばステー付き部品の内周面にステーを固定する複数の固定箇所のうち少なくとも一部を軸方向においてずれた位置に配置する等、第3インシュレータと管材との位置関係が一意に定まるように複数の固定箇所を配置することが好ましい。
【0092】
図9は、斯かる変形例に係る第3インシュレータが備えるカバー部を構成する汎用部品に含まれるステー付き部品の構成の一例を示す模式図である。
図9の(a)乃至(d)は、
図8の(a)乃至(d)に対応する図面である。即ち、
図9の(a)は当該変形例に係る第3インシュレータが備える一対のステー付き部品114の模式的な斜視図であり、(b)はステー付き部品114の模式的な三面図である。また、(c)はステー付き部品114がステー114sによって管材200に固定されている様子を示す模式的な平面図であり、(d)は(c)において線B-Bによって示す平面による模式的な断面図である。尚、(b)は(a)に示した一対のステー付き部品114のうち上側のステー付き部品114の三面図であり、上段の図は(a)に示すy軸の正側から負側に向かって観察した場合、下段の左側の図は(a)に示すz軸の負側から正側に向かって観察した場合、及び下段の右側の図は(a)に示すx軸の正側から負側に向かって観察した場合をそれぞれ示している。
【0093】
(a)及び(b)に例示するように、ステー114sは、ステー付き部品114の内側に固定されており、管材200の外周面に沿った形状を有する部分である第3当接部C3と、第3当接部C3の周方向における両端において径方向における外向きに延在する部分である第2接続部F2とを有する。上記のように、ステー114sの第3当接部C3は管材200の外周面に沿った形状を有する。これにより、ステー114sは管材200に対して大きな面積にて面接触することができる。
【0094】
また、ステー付き部品114が備えるステー114sは、
図8に例示したステー付き部品113が備えるステー113sと同様に、周方向における両端にそれぞれ形成された2つの凹部114dに内側から固定されている。これに加えて、ステー114sは、周方向における両端の間の所定の位置(
図9に示す例においては中央部分)からステー付き部品114の内周面に向かって延在する脚部114fを備えており、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、脚部114fの先端部分がステー付き部品114に内側から固定されている。これにより、ステー付き部品114の内側における所定の位置にステー114sを3点支持により強固に保持することができる。
【0095】
そして、(c)及び(d)に例示するように、互いに対向する一対のステー付き部品114の第2接続部F2同士を相互に固定することにより、管材200を間に挟んで互いに対向する第3当接部C3同士の間に管材200が挟持され、一対のステー付き部品114が管材200の外周面に固定される。尚、管材200は第3インシュレータの構成要素ではないが、ステー114sによるステー付き部品114の管材200への固定についての理解を容易なものとすることを目的として、管材200が破線によって描かれている。
【0096】
上記のように、当該変形例に係る第3インシュレータが備えるステー付き部品によれば、前述したようにステー付き部品の内側における所定の位置にステーを2点支持によって保持する場合に比べて、第3インシュレータの管材に対する支持剛性を更に高めることができる。また、例えば、管材に装着された第3インシュレータの共振周波数を所定の閾値よりも高くして、使用時における異音を低減することにも繋がる。
【0097】
図10は、もう1つの変形例に係る第3インシュレータが備えるカバー部を構成する汎用部品に含まれるステー付き部品の構成の一例を示す模式図である。
図10の(a)及び(b)は、
図9の(a)及び(b)に対応する図面である。即ち、
図10の(a)は当該変形例に係る第3インシュレータが備える一対のステー付き部品115の模式的な斜視図であり、(b)はステー付き部品115の模式的な三面図である。(b)は(a)に示した一対のステー付き部品115のうち上側のステー付き部品115の三面図であり、上段の図は(a)に示すy軸の正側から負側に向かって観察した場合、下段の左側の図は(a)に示すz軸の負側から正側に向かって観察した場合、及び下段の右側の図は(a)に示すx軸の正側から負側に向かって観察した場合をそれぞれ示している。
【0098】
図10に例示するステー付き部品115は、基本的には、
図9に例示したステー付き部品114と同様の構成を有する。従って、ステー付き部品115においても、上述したステー付き部品114と同様に、第3インシュレータの管材に対する支持剛性を更に高めることができる。また、例えば、管材に装着された第3インシュレータの共振周波数を所定の閾値よりも高くして、使用時における異音を低減することも可能である。
【0099】
但し、
図10に例示するステー付き部品115の構成と
図9に例示したステー付き部品114の構成との間には、以下に列挙する2つの構成相違点が存在する。1つ目の相違点は、ステー付き部品115の周方向における両端が、ステー115sの周方向における両端(に設けられた第2接続部F2)と面一となるように構成されている点である。斯かる構成から明らかであるように、一対のステー付き部品115は、ステー115sの両端に設けられた第2接続部F2同士を相互に固定した際に、半割れ管としての端部同士が互いに重なり合うのではなく、半割れ管としての端部同士が当接した状態となる。2つ目の相違点は、ステー付き部品115においては、管材の軸方向である管軸方向における一方の端部に拡径部115xが形成されている点である。斯かる構成によれば、例えば、ステー付き部品115の拡径部115xが形成された側の端部に隣接する他の汎用部品111又はサブアセンブリに対してはステー付き部品115を外嵌させ、反対側の端部に隣接する他の汎用部品111又はサブアセンブリに対してはステー付き部品115を内嵌させることにより、ステー付き部品115を介して両隣の汎用部品111を接続することができる。
【0100】
上記のように、ステー付き部品は、管軸方向において2つのサブアセンブリの間に介在して、これら2つのサブアセンブリを管材に固定する機能のみならず、これら2つのサブアセンブリを接続する機能をも発揮することができる。2つのサブアセンブリのうちの何れか一方又は両方のステー付き部品側の端部において管材に外嵌する縮径部が形成されている場合は、例えば
図11に例示するように、2つのサブアセンブリ130及び130’の間に介在するステー付き部品115の一方の端部に形成された拡径部115xをサブアセンブリ130に外嵌させ、他方の端部をサブアセンブリ130’に内嵌させることにより、これら2つのサブアセンブリ130及び130’を接続することができる。これに加えて、ステー付き部品115が備えるステー115sによってサブアセンブリ130の縮径部130nと管材200とを共締めにすることもできる。
【0101】
尚、図示しないが、更にもう1つの変形例に係る第3インシュレータにおいては、管材200を間に挟んで互いに対向する第3当接部C3同士と管材200の外周面との間に弾性変形可能な部材が挟持される。この弾性変形可能な部材は、第3当接部C3同士と管材200の外周面との間に挟持されて弾性変形に伴う復元力により両者の間に介在すること及び第3インシュレータの使用環境に耐えることが可能である限り特に限定されない。このような弾性変形可能な部材の具体例としては、例えばステンレス鋼製メッシュ等の金属製のメッシュ等を挙げることができる。
【0102】
上記のように、管材200を間に挟んで互いに対向する第3当接部C3同士と管材200の外周面との間に弾性変形可能な部材を挟持することにより、例えば第3当接部C3及び/又は管材200の外周面の形状誤差等に起因して両者の間隔が厳密には均一ではない場合等においても両者を確実に固定することができる。その結果、例えばカバー部の振動に起因する異音の発生等の問題を低減することができる。
【0103】
〈効果〉
以上のように、第3インシュレータにおいては、カバー部の両端にそれぞれ配設された端部部品がブラケットによって管材の外周面に固定されていることに加えて、カバー部の途中の少なくとも1箇所に配設されたステー付き部品がステーによって管材の外周面に固定されている。従って、カバー部の両端に加えて途中の任意の箇所においてカバー部を管材に固定することができるので、カバー部の両端のみを管材に固定する場合に比べて、カバー部を管材の表面により確実に固定することができ、カバー部の振動に起因する異音の発生等の問題をより確実に低減することができる。
【0104】
《第4実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第4実施形態に係る管材のインシュレータ(以降、「第4インシュレータ」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0105】
前述したように、第1インシュレータ乃至第3インシュレータを始めとする本発明に係るインシュレータ(本発明インシュレータ)においては、予め規格化された有限種の半割れ状の直管部品及び曲管部品からなる群(汎用部品群)より選ばれる複数の汎用部品の組み合わせによってカバー部が構成される。管材を間に挟んで互いに対向する汎用部品同士(直管部品同士及び曲管部品同士)は、開口側を互いに向き合わせて半割れ管としての端部同士を当接させた状態又は端部の先端部分を互いに重なり合わせた状態にて、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、互いに固定することができる。また、管材の軸(管軸)に沿って互いに隣接する汎用部品同士もまた、管軸方向における端部同士を当接させた状態又は端部の先端部分を互いに重なり合わせた状態にて、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、互いに固定することができる。
【0106】
しかしながら、例えば管材の形状等によっては、管材の軸方向である管軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆うように複数の汎用部品によって本発明インシュレータのカバー部を構成することが困難な場合がある。具体的には、例えば、管材を間に挟んで互いに対向する汎用部品同士(直管部品同士及び曲管部品同士)の開口側を互いに向き合わせて半割れ管としての端部同士を当接させたり、端部の先端部分を互いに重なり合わせたりすることが困難な場合があり得る。
【0107】
また、管材の軸(管軸)に沿って互いに隣接する汎用部品同士の管軸方向における端部同士を当接させたり、端部の先端部分を互いに重なり合わせたりすることが困難な場合もあり得る。更に、管材を間に挟んで互いに対向するステー付き部品同士の第2接続部同士を十分に近付けることができず、第2接続部同士の間の隙間が過大となり、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法によって第2接続部同士を相互に固定することが困難な場合もあり得る。
【0108】
加えて、例えば前述したようにサブアセンブリとして集成された汎用部品同士を、管材を間に挟んで互いに対向させて汎用部品同士の端部同士を相互に重ね合わせた状態においては、汎用部品と管材の外周面との間の隙間は狭い。従って、一般的なスポット溶接のように汎用部品の溶接箇所を一対の電極の間に挟んで溶接することは困難又は不可能であり、汎用部品同士の端部同士をスポット溶接によって固定する場合は、前述したようにワンサイドスポット溶接を採用する必要がある。
【0109】
上記のようにワンサイドスポット溶接によって汎用部品同士の端部同士を相互に重なった状態において固定する場合、汎用部品の溶接箇所に電極の先端を所定の圧力にて押し付ける必要がある。従って、これらの溶接に必要とされる圧力、汎用部品の溶接箇所の機械的強度及び/又は汎用部品と管材の外周面との間の隙間における断熱材(例えばグラスウール等)の有無等によっては、溶接時の圧力に汎用部品が耐えられずに変形したり、汎用部品同士の端部同士を十分な強度にて溶接することが困難となったりする問題が生ずる場合があり得る。
【0110】
上記問題を回避するための方策としては、例えば、所定の汎用部品によって管材の外周面の所定の領域が覆われた状態を維持しつつ互いに対向するブラケットの第1接続部同士及び/又はステー付き部品の第2接続部同士を電極によって挟んで通電するスポット溶接によって互いに固定することが考えられる。しかしながら、上記のような状態を維持しつつ第1接続部同士及び/又は第2接続部同士をスポット溶接が可能な程度に互いに密着させた状態を保持するためには個々の汎用部品の配置に応じた保持治具が必要となり、製造工程の複雑化及び/又は製造コストの増大を招く虞が高い。
【0111】
〈構成〉
そこで、第4インシュレータは、上述した第1インシュレータ乃至第3インシュレータの何れかであって、管材を間に挟んで互いに対向する汎用部品の対の一部が、相互係止部及び第3接続部をそれぞれが備える一対の汎用部品である一対の仮留め部品によって構成された、管材のインシュレータである。
【0112】
一対の仮留め部品がそれぞれ備える相互係止部は、一対の仮留め部品の相互の位置関係を固定するための別個の治具を用いること無く、相互に係止することによって一対の仮留め部品の相互の位置関係が固定された状態である仮留め状態を達成するように構成されている。尚、本明細書における「係止」なる用語は、例えば、双方の部材に形成された凸部(例えば突起又は隆起等)が互いに当接することにより双方の部材の位置関係が固定される形態及び一方の部材に形成された凸部(例えば爪、突起又は隆起等)が他方の部材に形成された凹部(例えば穴、窪み又は溝等)に嵌合することにより双方の部材の位置関係が固定される形態等を始めとする、多種多様な形態にて双方の部材の位置関係が固定されることを包含するものであり、特定の形態に限定されるものではない。
【0113】
更に、一対の仮留め部品がそれぞれ備える第3接続部は、仮留め状態において互いに密着するように構成されている。加えて、一対の仮留め部品は、仮留め状態において互いに対向する第3接続部同士が相互に固定されることにより、互いの位置関係が最終的に固定された状態である本留め状態を達成するように構成されている。
【0114】
図12の(a)は第4インシュレータが備える仮留め部品の相互係止部が互いに係合する前の状態を示す模式的な斜視図であり、
図12の(b)は相互係止部が互いに係合した後の状態を示す部分的且つ模式的な斜視図である。また、
図13は第4インシュレータが備えるカバー部を構成する汎用部品に含まれる仮留め部品の構成の一例を示す模式図である。
図13の(a)は
図12の(a)に示すy軸の負側から正側に向かって観察した場合、
図13の(b)は
図12の(a)に示すz軸の正側から負側に向かって観察した場合、
図13の(c)は
図12の(a)に示すy軸の正側から負側に向かって観察した場合、及び
図13の(d)は
図12の(a)に示すx軸の正側から負側に向かって観察した場合をそれぞれ示している。
【0115】
図12及び
図13に示す例においては、一対の仮留め部品116の周方向における両端に凹部116dがそれぞれ形成されており、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法により、ステー116sが凹部116dに内側から固定されている。仮留め部品116の周方向における両端側のステー116sの端部には径方向における外向きに延在する部分である第3接続部F3が形成されており、一方の第3接続部F3には係止用凸部116esとしての爪が形成され、他方の第3接続部F3には係止用凹部116erとしての孔が形成されている。
【0116】
上記のように係止用凸部116esが形成された第3接続部F3を有するステー116s及び係止用凹部116erが形成された第3接続部F3を有するステー116sを弾性変形可能な材料(例えば薄い鋼板等)によって構成することが好ましい。これにより、
図12の(a)に例示するように図示しない管材を間に挟んで開口側を互いに向き合う一対の仮留め部品116の係止用凸部116esが形成された第3接続部F3と係止用凹部116erが形成された第3接続部F3とを互いに近付ける過程において、係止用凸部116es及び係止用凹部116erが互いに弾性変形することにより、互いに当接する位置にまで第3接続部F3同士を近付けることができる。
【0117】
この際、一方の第3接続部F3に形成された係止用凸部116es(としての爪)が他方の第3接続部F3に形成された係止用凹部116er(としての孔)に到達し、係止用凸部116es(としての爪)が係止用凹部116er(としての孔)に入り込み互いに係止される。このように、一対の仮留め部品116の相互の位置関係を固定するための別個の治具を用いること無く、係止用凸部116es(としての爪)と係止用凹部116er(としての孔)とを相互に係止することによって、一対の仮留め部品116の相互の位置関係が固定された状態である仮留め状態を容易に達成することができる。即ち、係止用凸部116esと係止用凹部116erとによって相互係止部116eが構成されている。
【0118】
更に、一対の仮留め部品116がそれぞれ備える第3接続部F3は、上記のようにして達成された仮留め状態において互いに密着するように構成されている。従って、仮留め状態において互いに密着する第3接続部F3同士を例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法によって相互に固定することにより、一対の仮留め部品の互いの位置関係が最終的に固定された状態である本留め状態を達成することができる。その結果、一対の仮留め部品116と接続された他の汎用部品(直管部品111及び曲管部品112)についても位置関係が固定される。
【0119】
尚、第4インシュレータが備える相互係止部は、上述したように一対の仮留め部品の相互の位置関係を固定するための別個の治具を用いること無く相互に係止することによって一対の仮留め部品の相互の位置関係が固定された状態である仮留め状態を達成することが可能である限り、特に限定されない。従って、一対の仮留め部品が管材に密着又は接触すること無く相互に係止すると共に隣接する他の汎用部品との接続により、管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆うように、一対の仮留め部品が構成されていてもよい。
【0120】
一方、第4インシュレータが備える相互係止部は、管材の外周面の少なくとも一部に沿った形状を有する部分である第4当接部を更に有していてもよい。この場合、一対の仮留め部品は、仮留め状態及び本留め状態において管材を間に挟んで互いに対向する一対の仮留め部品がそれぞれ備える相互係止部が有する第4当接部同士の間に管材を挟持して一対の仮留め部品を管材の外周面に固定するように構成することができる。例えば、
図12の(a)に例示した一対の仮留め部品116においては、4つの凹部116dの内側にそれぞれ固定された4つのステー116sの内周面が管材の外周面の一部に沿った形状を有する部分である第4当接部C4を構成している。仮留め状態及び本留め状態においては、これら4つの第4当接部C4の間に管材を挟持して一対の仮留め部品116を管材の外周面に固定することができる。
【0121】
ところで、
図12及び
図13に例示した一対の仮留め部品116においては、上述したように、周方向における両端にそれぞれ形成された凹部116dに固定されたステー116sに相互係止部116e(を構成する係止用凸部116es及び係止用凹部116er)並びに第3接続部F3が設けられている。しかしながら、相互係止部及び第3接続部の具体的な構成は、一対の仮留め部品の相互の位置関係を固定するための別個の治具を用いること無く仮留め状態及び本留め状態を達成することが可能である限り、上記に限定されるものではない。例えば、仮留め部品に凹部が形成されておらず相互係止部及び第3接続部が設けられるステーが仮留め部品に直接的に固定されていてもよく、或いは、相互係止部及び第3接続部が仮留め部品と一体的に形成されていてもよい。
【0122】
また、相互係止部及び第3接続部が設けられたステーを一対の仮留め部品が備える場合において、各々の仮留め部品が備えるステーは、例えば
図8に例示したステー付き部品113が備えるステー113sのように、周方向における一方の端部から他方の端部へと連続的に延在する1本の部材であってもよい。更に、各々の仮留め部品が備えるステーは、例えば
図9及び
図10にそれぞれ例示したステー付き部品114及び115が備えるステー114s及び115sのように、周方向における一方の端部から他方の端部へと連続的に延在すると共に周方向における両端の間の所定の位置からステー付き部品の内周面に向かって延在する脚部を備えていてもよい(即ち、3点以上の箇所においてステー付き部品の内周面に固定されていてもよい)。
【0123】
〈効果〉
以上のように、第4インシュレータにおいては、管材を間に挟んで互いに対向する汎用部品の対の一部が、相互係止部及び第3接続部をそれぞれが備える一対の汎用部品である一対の仮留め部品によって構成されている。また、相互係止部は、一対の仮留め部品の相互の位置関係を固定するための別個の治具を用いること無く、相互に係止することによって一対の仮留め部品の相互の位置関係が固定された状態である仮留め状態を達成するように構成されている。更に、第3接続部は、仮留め状態において互いに密着するように構成されている。加えて、一対の仮留め部品は、仮留め状態において互いに密着する第3接続部同士が相互に固定されることにより、互いの位置関係が最終的に固定された状態である本留め状態を達成するように構成されている。
【0124】
従って、第4インシュレータによれば、管材の軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆うように複数の汎用部品によってカバー部を構成する際に、個々の汎用部品の配置に応じた保持治具等の別個の治具を必要とすること無く、一対の仮留め部品116の相互の位置関係が固定された状態である仮留め状態を容易に達成することができる。その結果、第4インシュレータによれば、製造工程の複雑化及び/又は製造コストの増大を招く虞を低減しつつ、多種多様な形状を有する管材に対応するインシュレータを容易に製造することができる。
【0125】
《第5実施形態》
以下、本発明の第5実施形態に係る管材のインシュレータ(以降、「第5インシュレータ」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0126】
第1インシュレータに関する説明において述べたように、有限種の汎用部品の組み合わせ及び/又は有限種の汎用部品の端部同士の重なり具合の調節のみによっては、これらの汎用部品によって構成されるカバー部の直線部の長さ及び/又は屈曲部の屈曲角度を所望の大きさに調節することが困難な箇所が生ずる場合がある。このような場合には、例えば切削加工等の手法により直管部品及び/又は曲管部品を二次加工することにより、直管部品の管軸方向における長さ及び/又は曲管部品の曲線部分の長さを調節することができる。その結果、カバー部の直線部の長さ及び/又は屈曲部の屈曲角度を所望の大きさに調節することができる。即ち、カバー部を構成する汎用部品(直管部品及び/又は曲管部品)に汎用部品の二次加工品が含まれていてもよい。
【0127】
また、上記に限らず、例えば本発明に係るインシュレータ(本発明インシュレータ)が適用される管材を備える装置又は設備(例えば、自動車等)によっては、有限種の汎用部品の組み合わせのみによって構成されたカバー部が周辺の物品と干渉する場合がある。このような場合においては、干渉部位に対応する汎用部品を例えばプレス加工等の二次加工に付すことにより、例えば、汎用部品の干渉部位に対応する箇所に凹みを形成する等して、周辺の部品との干渉を回避することが可能な形状とすることができる。即ち、斯かる観点からも、カバー部を構成する汎用部品(直管部品及び/又は曲管部品)に汎用部品の二次加工品が含まれていてもよい。
【0128】
〈構成〉
そこで、第5インシュレータは、上述した第1インシュレータ乃至第4インシュレータの何れかであって、汎用部品のうちの一部が、直管部品の二次加工品及び/又は曲管部品の二次加工品である加工部品によって構成されている、管材のインシュレータである。
【0129】
上記のように、第5インシュレータのカバー部の一部を構成する加工部品は、直管部品の二次加工品及び/又は曲管部品の二次加工品である。二次加工の具体的な手法は、二次加工の目的を達成すること及び本発明による効果を著しく損ねないことが可能である限り特に限定されない。このような二次加工の具体的な手法としては、上述したように、例えば切削加工及びプレス加工等を挙げることができる。
【0130】
尚、本発明によって達成される効果を十分に享受する観点からは、上記のような加工部品がカバー部において占める割合を出来る限り小さくすることが好ましいことは言うまでもない。
【0131】
〈効果〉
第5インシュレータによれば、カバー部を構成する汎用部品の中に(汎用部品の二次加工品である)加工部品を必要に応じて取り入れることにより、例えば、カバー部の直線部の長さ及び/又は屈曲部の屈曲角度を所望の大きさに調節したり、カバー部が周辺の物品と干渉することを回避したりすることができる。
【実施例0132】
以上のように説明してきた第1インシュレータ乃至第5インシュレータを始めとする本発明の様々な実施形態に係る管材のインシュレータの実施例につき、以下に図面を参照しながら説明する。但し、以下に説明する実施例は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0133】
先ず、本発明の第1実施例に係る管材のインシュレータ(以降、「第1実施例インシュレータ」と称呼される場合がある。)の集成方法の一例について説明する。
図14は、第1実施例インシュレータを集成する前段階において製作される中間部材であるサブアセンブリの構成を例示する模式図である。即ち、本実施例においては、カバー部を構成する個々の汎用部品及び固定部を構成する部品から第1実施例インシュレータを直接的に集成するのではなく、中間部材であるサブアセンブリを製作してから、これらのサブアセンブリを管材の外周面に装着することにより、第1実施例インシュレータを集成する。
【0134】
図14の(a)に例示するサブアセンブリ131は、直管部品111a乃至111c、曲管部品112a及び112b、ステー付き部品113並びに固定部としてのブラケット120からなる中間部材である。一方、
図14の(b)に例示するサブアセンブリ132は、直管部品111a及び111d、曲管部品112a及び112b、ステー付き部品113並びに固定部としてのブラケット120からなる中間部材である。この他にも、図示しない半割れ管状のサブアセンブリが、第1実施例インシュレータを適用しようとする管材の形状に応じて汎用部品群より選ばれる汎用部品を組み合わせることによって、適宜製作される。
【0135】
具体的には、
図14の(a)において黒い丸印によって示すように、カバー部を構成する汎用部品(直管部品111、曲管部品112及びステー付き部品113)同士の端部同士が相互に重なった状態にて溶接によって固定されて半割れ管状のサブアセンブリが製作される。
図14の(b)においては溶接によって固定されている箇所が表示されていないが、(b)に例示するサブアセンブリも図示しない他のサブアセンブリも(a)と同様にして製作される。尚、(a)に示すP及びQは、それぞれ、サブアセンブリ131が備えるブラケット120の第2当接部及びステー付き部品113のステー113sの第3当接部を通る管軸に垂直な平面による模式的な断面図であり、ブラケット120の第2当接部及び第1接続部並びにステー113sの第3当接部及び第2接続部が太い実線によって描かれている。
【0136】
次に、上記のようにして製作された複数の半割れ管状のサブアセンブリ及び固定部としてのブラケットを管材の外周面に装着することにより、第1実施例インシュレータが集成される。
図15は、
図14の(a)に例示したサブアセンブリ131及び他のサブアセンブリ133乃至135から第1実施例インシュレータ109aが集成される手順及び集成された第1実施例インシュレータの構成の一例を示す模式図である。即ち、
図14の(b)に例示したサブアセンブリ132は
図15に例示する第1実施例インシュレータ109aの集成には使用されないが、このことに特段の意味は無く、単なる例示に過ぎない。
【0137】
また、
図15においては、第1実施例インシュレータ109aがサブアセンブリから集成される様子を解り易く表示することを目的として、第1実施例インシュレータ109aのカバー部を構成する汎用部品及び固定部の符号は省略されている。しかしながら、以下の説明においては、これらの構成要素の符号を使用するので、
図14及び前述した本発明の様々な実施形態に関する説明において参照した各図面を必要に応じて参照されたい。
【0138】
図15において「a」によって示されるステップにおいては、固定部としてのブラケット120の第1当接面C1を端部部品の内周面に、第2当接面C2を管材200の外周面にそれぞれ固定することにより管材200の外周面に端部部品が装着され、サブアセンブリを構成するステー付き部品113が備えるステー113sの第3当接面C3を管材200の外周面に固定することにより管材200の外周面にステー付き部品113が装着される。上記により管材200に対する各サブアセンブリ131及び133乃至135の位置が定まるので、「b」によって示されるステップにおいて、管軸方向において隣接するサブアセンブリ同士の管軸方向における端部同士が互いに固定される。更に、「c」によって示されるステップにおいて、管材200を間に挟んで開口側を互いに向き合うサブアセンブリの周方向における端部同士が互いに固定され、半割れ管状の各サブアセンブリが閉じられて、第1実施例インシュレータ109aが完成する。
【0139】
図16は上記のようにして集成された第1実施例インシュレータ109aの構成を示す模式図である。
図16においても、
図15と同様に、第1実施例インシュレータ109aのカバー部を構成する汎用部品及び固定部の符号は省略されているので、関連する図面を必要に応じて参照されたい。
図16の(a)は図面に向かって下側に位置する第1実施例インシュレータ109aによって覆われていない管材200の屈曲部の管軸が図面に平行な平面内にある場合を示し、(b)は管材200の上記屈曲部の管軸が図面に垂直な平行な平面内にある場合を示す。このように、本発明によれば、カバー部を構成する汎用部品の組み合わせによって、三次元的な形状を有するインシュレータを容易に構成することができる。即ち、本発明によれば、容易な加工工程及び低い生産コストにて所望の形状を有するインシュレータを製造することができる。
【0140】
但し、予め規格化された有限種の半割れ状の直管部品及び曲管部品からなる群(汎用部品群)より選ばれる複数の汎用部品の組み合わせによって本発明に係る管材のインシュレータ(本発明インシュレータ)を構成することができる手順は上記に限定されるものではない。即ち、本発明インシュレータを構成する手順は、本発明インシュレータを適用しようとする管材の形状並びに/又は汎用部品として予め用意される直管部品及び/若しくは曲管部品のバリエーションに適合するように、適宜変更することができる。
【0141】
次に、本発明の実施例に係る管材のインシュレータ(第1実施例インシュレータ)の幾つかの変形例について、図面を参照しながら以下に説明する。
図17乃至
図20は、それぞれ、変形例に係る第1実施例インシュレータの構成を例示する模式図である。
図17乃至
図20においても、
図15及び
図16と同様に、第1実施例インシュレータ109b乃至109eのカバー部を構成する汎用部品及び固定部の符号は省略されているので、関連する図面を必要に応じて参照されたい。また、
図17乃至
図20に例示する変形例に係る第1実施例インシュレータ109b乃至109eにおいて管材200は構成要素ではないが、これらの第1実施例インシュレータにおいては管材200が露出している部分が非常に小さいので、
図16のように破線によってではなく、実線によって管材200が描かれている。
【0142】
図16に例示した第1実施例インシュレータ109aにおいては、上述したように、図面に向かって下側に位置する管材200の屈曲部を含む部分が第1実施例インシュレータ109aによって覆われていない。本発明インシュレータが適用される管材の用途及び/又は周辺状況によっては、このように管材の外周面の一部が本発明インシュレータによって覆われない態様もあり得る。
【0143】
しかしながら、前述したように、本発明によって達成される効果を高める観点からは、汎用部品群より選ばれる汎用部品のみによってカバー部の全体が構成されており且つ管材の外周面の出来るだけ大きい範囲が本発明インシュレータによって覆われていることが好ましい。
図17に例示する第1実施例インシュレータ109bにおいては、管材200を他の部材と接続するためのフランジが管材200の両端に形成されており、管材200の一方のフランジから他方のフランジに至る範囲の外周面の殆ど全てが第1実施例インシュレータ109bによって覆われている。即ち、第1実施例インシュレータ109bにおいては、予め規格化された有限種の半割れ状の直管部品及び曲管部品からなる群(汎用部品群)より選ばれる複数個の汎用部品の組み合わせによって構成されたインシュレータによって、管材200の外周面の殆ど全てが覆われている。従って、第1実施例インシュレータ109bによれば、容易な加工工程及び低い生産コストにて製造可能な所望の形状を有するインシュレータによって高温の流体が内部に流れる管材から外部への熱及び/又は音の放射を低減すると共に、管材及び/又は断熱材の損傷及び/又は汚れ等を防止することができる。
【0144】
次に、第1インシュレータに関する説明において述べたように、本発明インシュレータを適用しようとする管材の形状並びに/又は汎用部品として予め用意される直管部品及び/若しくは曲管部品のバリエーションによっては、汎用部品のみによってカバー部を構成することが困難又は不可能な箇所が生ずる場合がある。このような場合には、汎用部品を二次加工したり、当該箇所に専用のカバー部を用意したりしてもよい。
【0145】
図18に例示する第1実施例インシュレータ109cにおいては、カバー部110の一部が専用一体サブアセンブリ141及び142によって構成されている。これらの専用一体サブアセンブリ141及び142は、管材200の外周面の対応する領域の構成に合わせて専用品として製作されたサブアセンブリである。これにより、汎用部品群より選ばれる汎用部品の組み合わせのみによっては好適に覆うことができない外周面の領域を有する管材200についても、本発明インシュレータを適用することが可能となる。但し、このような場合においても、専用一体アセンブリ以外の箇所については汎用部品によって構成することが好ましいことは言うまでも無い。
【0146】
ところで、例えば自動車に搭載される内燃機関の排気管等の管材においては、例えば、管材200を介して伝達される振動を低減したり管材200の内部に流れる高温の流体に起因する温度上昇に伴う管材200の熱伸びを吸収したりすること等を目的として管材の端部及び/又は途中に蛇腹部品(ベローズ)が配設される場合がある。このような場合、蛇腹部品(ベローズ)にまで本発明インシュレータのカバー部を固定してしまうと、上記のような目的を十分に発揮することが困難となる場合がある。
【0147】
図19に例示する第1実施例インシュレータ109dが適用される管材200は、蛇腹部品(ベローズ)210が途中に配設されている。そこで、第1実施例インシュレータ109dにおいては、蛇腹部品(ベローズ)210が配設されている領域には、カバー部110が設けられていない。これにより、蛇腹部品(ベローズ)210によって達成されるべき上述したような効果を維持しつつ、本発明による効果をも達成することができる。
【0148】
ところで、第1インシュレータに関する説明において述べたように、本発明インシュレータのカバー部を構成する汎用部品に管軸方向における重なり代Waが設けられていない場合においても、周方向における重なり代Wpにおける重なり具合を調節して径の大きさを調節することにより、隣接する他の汎用部品と管軸方向における端部同士を重なり合わせることを可能とすることができる。
【0149】
ところが、汎用部品の肉厚がある程度(例えば、数mm程度)以上である場合、上記のように周方向における重なり代Wpにおける重なり具合を調節して径の大きさを調節することが困難である場合がある。このような場合は、汎用部品に管軸方向における端部に他の部分よりも径が小さい部分を形成し、当該部分を管軸方向において隣接する他の汎用部品に内嵌させることにより、カバー部を構成する汎用部品同士の密着性を高めることができる。
【0150】
例えば、
図20に例示する第1実施例インシュレータ109eにおいては、(a)に例示する直管部品111e及び(b)に例示するステー付き部品113cの図面に向かって左側の部分の径が右側の部分の径よりも小さく、これらの部分の間に段差部Ldが形成されている。図示しないが、曲管部品もまた同様の構成とすることができる。このような汎用部品によれば、径が小さい側の部分を管軸方向において隣接する他の汎用部品における径が大きい側の部分に内嵌させることにより、カバー部を構成する汎用部品同士の密着性を高めることができる。(c)に例示する第1実施例インシュレータ109eは、このようにして製造された、汎用部品同士が良好に密着したカバー部を備えるインシュレータである。
前述したように、一対の仮留め部品116がそれぞれ備える第3接続部F3は、上記のようにして達成された仮留め状態において互いに密着するように構成されている。従って、仮留め状態において互いに密着する第3接続部F3同士を例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法によって相互に固定することにより、一対の仮留め部品の互いの位置関係が最終的に固定された状態である本留め状態を達成することができる。その結果、一対の仮留め部品116と接続された他の汎用部品(直管部品111及び曲管部品112)についても位置関係が固定される。
尚、上述した仮留め状態の達成に伴い、第2実施例インシュレータ109fの管軸方向における両端に配設される一対のブラケット120がそれぞれ備える第1接続部F1同士及び管軸方向において隣接するサブアセンブリの間に介装される一対のステー付き部品115がそれぞれ備える第2接続部F2同士もまた互いに密着する。これらの第1接続部F1同士及び第2接続部F2同士もまた、例えばスポット溶接及びアーク溶接等の手法によって相互に固定することにより、第2実施例インシュレータ109fの管材200への組み付けが完了する。
以上のように、第2実施例インシュレータ109fによれば、カバー部を構成する汎用部品の組み合わせによって、三次元的な形状を有するインシュレータを、特別な保持治具等を必要とすること無く、極めて容易に構成することができる。即ち、本発明によれば、容易な加工工程及び低い生産コストにて所望の形状を有するインシュレータを製造することができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例並びにそれらの変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例並びにそれらの変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。また、上記においては、管材から外部への熱及び/又は音の放射を低減する機能並びに管材及び/又は断熱材の損傷及び/又は汚れ等を防止する機能に主に着目して、本発明に係る管材のインシュレータ(本発明インシュレータ)について説明してきた。しかしながら、本発明は斯かる実施態様に限定されるものではなく、管軸方向に沿って延在しつつ管材の外周面と一定の間隔を空けて管材の外周面を覆うインシュレータ全般に広く適用することができる。例えば、本発明は、例えば自動車、列車、船舶及び航空機等の輸送機械に搭載される種々の配管への適用に限定されるものではなく、例えば建築用の配管等を始めとする管材の広範な用途に対しても好適に適用することができる。