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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168160
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 29/00 20060101AFI20241128BHJP
   B66B 27/00 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
B66B29/00 Z
B66B27/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084600
(22)【出願日】2023-05-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 良太
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA04
3F321DA05
3F321DB05
3F321DD01
3F321EA02
3F321EB07
3F321EC07
3F321GA31
(57)【要約】
【課題】安全性を保ったまま、できる限り遠隔操作者の意図通り動作させることのできる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】本開示に係る乗客コンベアは、複数のステップを循環移動させるモーターを駆動する制御装置を備えた乗客コンベアであって、乗客コンベアを遠隔操作により起動または停止するための遠隔制御装置と、乗客コンベアに乗り込もうとする乗客を検出する乗客検出装置と、乗客の移動速度を検出する移動速度検出部と、を備える。制御装置は、遠隔操作による起動または停止が完了するまでに乗客がクシまで到達すると予想される場合には遠隔操作を無効とし、遠隔操作による起動または停止が完了するまでに乗客がクシまで到達しないと予想される場合には遠隔操作を有効とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステップを循環移動させるモーターを駆動する制御装置を備えた乗客コンベアであって、
前記乗客コンベアを遠隔操作により起動または停止するための遠隔制御装置と、
前記乗客コンベアに乗り込もうとする乗客を検出する乗客検出装置と、
前記乗客の移動速度を検出する移動速度検出部と、
を備え、
前記制御装置は、前記遠隔操作による起動または停止が完了するまでに前記乗客がクシまで到達すると予想される場合には前記遠隔操作を無効とし、前記遠隔操作による起動または停止が完了するまでに前記乗客が前記クシまで到達しないと予想される場合には前記遠隔操作を有効とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記制御装置は、前記遠隔操作による停止指令が出された後に前記乗客検出装置が乗客を検出した場合において、当該乗客の移動速度が所定速度以下の場合には前記乗客コンベアを停止させ、当該乗客の移動速度が前記所定速度を超える場合には前記乗客コンベアを停止させない請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記移動速度検出部は、乗客の進行方向に沿って設けられた複数の光電センサを有する請求項1または請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記制御装置は、前記乗客検出装置から前記クシまでの距離を前記乗客の移動速度で割った到達予想時間と、前記遠隔操作による起動または停止が完了するまでの推定残り時間とを比較することにより、前記遠隔操作を無効とするか有効とするかを判断する請求項1または請求項2に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乗客の有無を検知する手段を備え、乗客コンベアの起動と停止に際して当該乗客コンベアに乗客が居ないことを確認する方式の乗客コンベア制御システムにおいて、乗客コンベアに対する起動指令と停止指令の少なくとも一方が与えられた時点からの経過時間を計測する手段を設け、経過時間が予め設定してある判定時間になるまでの期間に乗客の有無を検知する手段により乗客が検知された場合、起動指令と停止指令の少なくとも一方が無効にされる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-131411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような遠隔から操作する乗客コンベアは、操作性の向上を主な目的としているが、操作したときに利用者がいる場合には操作者の意図通り動かず、安全のために操作を無効にしてしまう。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、安全性を保ったまま、できる限り遠隔操作者の意図通り動作させることのできる乗客コンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る乗客コンベアは、複数のステップを循環移動させるモーターを駆動する制御装置を備えた乗客コンベアであって、乗客コンベアを遠隔操作により起動または停止するための遠隔制御装置と、乗客コンベアに乗り込もうとする乗客を検出する乗客検出装置と、乗客の移動速度を検出する移動速度検出部と、を備え、制御装置は、遠隔操作による起動または停止が完了するまでに乗客がクシまで到達すると予想される場合には遠隔操作を無効とし、遠隔操作による起動または停止が完了するまでに乗客がクシまで到達しないと予想される場合には遠隔操作を有効とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、安全性を保ったまま、できる限り遠隔操作者の意図通り動作させることのできる乗客コンベアを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る乗客コンベアを示す図である。
図2】乗客検出装置の斜視図である。
図3】起動に関するシーケンスの例と推定残り時間の設定例を示す図である。
図4】乗客の推定移動速度により遠隔操作による起動または停止の可否を判断する時間を説明するための図である。
図5】実施の形態1における制御装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。以下に示す実施の形態に示した構成は、本開示に係る技術的思想の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示に記載の複数の技術的思想を組み合わせることも可能である。また、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略または変更することも可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る乗客コンベア1を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の乗客コンベア1は、図示しないトラス、複数のステップ、主軸、モーター、ブレーキ、制御装置2、乗客検出装置3、カメラ4及び遠隔制御装置5を備えている。モーターは、複数のステップを循環移動させる。制御装置2は、モーターの動作を制御する。図1の乗客コンベア1は、エスカレーターであるが、本開示の乗客コンベアは、動く歩道にも適用可能である。
【0011】
乗客検出装置3は、乗客コンベア1に乗り込もうとする乗客を検出する。乗客検出装置3は、乗客コンベア1の一方の乗降口と他方の乗降口とのそれぞれに対して設けられている。乗客コンベア1が上り専用または下り専用であり、乗り口と降り口が定まっている場合には、乗り口のみに乗客検出装置3を設けてもよい。カメラ4は、乗客コンベア1の一方の乗降口と他方の乗降口とのそれぞれに対して設けられている。
【0012】
遠隔制御装置5は、乗客コンベア1に乗客がいないときに乗客コンベア1を遠隔操作により起動または停止することが可能なものである。乗客コンベア1の乗り口から降り口までの領域をカメラ4で撮像し、撮像された画像の中に乗客がいないことを確認して、遠隔制御装置5が起動指令または停止指令を出すようにしてもよい。
【0013】
制御装置2は、遠隔操作による起動または停止が完了するまでに乗客がクシまで到達すると予想される場合には遠隔操作を無効とし、遠隔操作による起動または停止が完了するまでに乗客がクシまで到達しないと予想される場合には遠隔操作を有効とする。これにより、乗客の安全を確保しつつ、遠隔操作が無効となる時間を短縮できるので、操作性が向上する。すなわち、安全性を保ったまま、できる限り遠隔操作者の意図通り動作させることのできる乗客コンベア1を提供することが可能となる。
【0014】
図2は、乗客検出装置3の斜視図である。乗客検出装置3は、2個の乗客検出部31及び乗客検出部32を備えている。乗客検出部31及び乗客検出部32は、乗客の移動速度を検出する移動速度検出部としての機能も有している。
【0015】
遠隔制御装置5から起動指令を制御装置2が受け取ってから、起動を開始するまでに乗客が乗客検出部31及び32で検出された場合には、移動速度検出部が乗客の移動速度を測定する。2つの乗客検出部31,32間の距離Dと、乗客検出時の時間差から、次式により、乗客の移動速度を算出できる。
【0016】
V=D/(Ta2-Ta1)
ただし、V:乗客の推定移動速度、D:2つの乗客検出部31,32間の距離、Ta2:乗客検出部32で乗客を検出した時間、Ta1:乗客検出部31で乗客を検出した時間、である。乗客検出部32がステップに近い側にある。
【0017】
制御装置2は、予め設定されている乗客検出部32からステップの乗り口であるクシ6までの水平方向距離D1と上記で算出した乗客の移動速度Vとから、乗客がクシ6に到達する予想時間Tを算出する。
【0018】
制御装置2は、起動に関するシーケンスの各処理に関して推定残り時間を設定し、起動までの時間を算出する。図3は、起動に関するシーケンスの例と推定残り時間の設定例を示す図である。図3に示す例では、遠隔制御装置5による起動操作から起動が完了するまでの間に、ブザーによる警告の場合にはブザー5秒間とブレーキ制御及びモーター制御に1秒の計6秒の時間がかかり、メッセージによる警告の場合にはメッセージ10秒間とブレーキ制御及びモーター制御に1秒の計11秒の時間がかかる。
【0019】
制御装置2は、上記で算出したクシ6までの到達予想時間Tと、現時点でのシーケンスに応じた起動までの推定残り時間とを比較し、推定残り時間が到達予想時間Tよりも長ければ遠隔起動操作を受け付けず、乗客コンベア1を起動しない。これに対し、制御装置2は、推定残り時間が到達予想時間Tよりも短い場合には遠隔起動操作を受け付け、乗客コンベア1を起動する。
【0020】
遠隔停止操作の場合も同様に、制御装置2は、推定残り時間が到達予想時間Tよりも長ければ遠隔停止操作を受け付けず、乗客コンベア1を停止しない。これに対し、制御装置2は、推定残り時間が到達予想時間Tよりも短い場合には遠隔停止操作を受け付け、乗客コンベア1を停止する。
【0021】
上述したように、本実施の形態では、乗客検出装置3からクシ6までの距離を乗客の移動速度で割った到達予想時間Tと、遠隔操作による起動または停止が完了するまでの推定残り時間とを比較することにより、遠隔操作を無効とするか有効とするかを判断する。これにより、乗客の安全を確保しつつ、遠隔操作が無効となる時間を短縮できるので、操作性が向上する。
【0022】
例えば乗客検出部31,32は反射式の光電センサで、横に2人乗り込める乗客コンベア1の場合は左右それぞれに乗客検出部31,32を取り付けて2人同時に乗り込んだ場合にそれぞれ検出できるようにしてもよい。また、1人で乗り込む乗客コンベア1の場合は、乗客検出部31,乗客検出部32は透過式の光電センサでもよい。
【0023】
上述したように、本実施の形態における移動速度検出部は、乗客の進行方向に沿って設けられた複数の光電センサを有するものでもよい。これにより、簡単な構成で精度良く乗客の移動速度を検出することが可能となる。
【0024】
例えば、乗客検出部31の検出開始時間が10秒、乗客検出部32の検出開始時間が10.08秒の時に、乗客検出部31と乗客検出部32の距離D=0.1mの場合、乗客の推定速度V=0.1/(10.08-10)=1.25[m/sec]となる
【0025】
例として、乗客検出部32からステップの乗り口であるクシ6までの距離D1が1.7mの場合、到達予想時間T=1.7[m]/1.25[m/sec]=1.36秒となる。そのため、制御装置2のシーケンスがモーター制御あるいはブレーキ制御を開始していた場合には、そのまま遠隔操作に対する起動処理または停止処理を進め、ブザーあるいはメッセージによる警告中であれば遠隔操作に対する起動処理または停止処理を中断する。
【0026】
図4は、乗客の推定移動速度により遠隔操作による起動または停止の可否を判断する時間を説明するための図である。図4に示すように、遠隔制御装置5からの起動指令を制御装置2が受けてから起動までの間には、注意案内あるいは警告などの時間と起動処理にかかる時間との和の時間がかかる。当該時間は、図3の例では、ブザーによる警告の場合で6秒、メッセージによる警告の場合で11秒となる。当該時間内に乗客検出装置3が乗客を検出した場合には、制御装置2は、乗客の推定移動速度により、遠隔操作による起動または停止の可否を判断する。
【0027】
制御装置2は、遠隔操作による停止指令が出された後に乗客検出装置3が乗客を検出した場合において、当該乗客の移動速度が所定速度以下の場合には乗客コンベア1を停止させ、当該乗客の移動速度が上記所定速度を超える場合には乗客コンベア1を停止させないようにしてもよい。これにより、所定速度以上の速度で進入した乗客に対しては乗客コンベア1を停止させずに運転を継続することで高い安全性を確保できる。
【0028】
図5は、実施の形態1における制御装置2の機能を実現する構成の一例を示す図である。制御装置2の各機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、専用ハードウェア600であってもよい。処理回路は、プロセッサ601およびメモリ602を備えていてもよい。処理回路の一部が専用ハードウェア600として形成され、且つ、当該処理回路は更にプロセッサ601およびメモリ602を備えていてもよい。図5に示す例において、処理回路の一部は専用ハードウェア600として形成されている。また、図5に示す例において、処理回路は、専用ハードウェア600に加えて、プロセッサ601およびメモリ602を更に備えている。
【0029】
一部が少なくとも1つの専用ハードウェア600である処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
【0030】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ601および少なくとも1つのメモリ602を備える場合、制御装置2の各部の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0031】
ソフトウェアおよびファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ602に格納される。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。プロセッサ601は、メモリ602に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ601は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ602には、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROMおよびEEPROM等の不揮発性または揮発性の半導体メモリ、または磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクおよびDVD等が該当する。
【0032】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、制御装置2の機能を実現することができる。なお、制御装置2の各機能は、複数の機器が連携することで実現されてもよいし、単一の機器によって実現されてもよい。また、制御装置2の各機能の少なくとも一部は、外部ネットワーク上のサーバ等に実装されていてもよい。
【0033】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0034】
(付記1)
複数のステップを循環移動させるモーターを駆動する制御装置を備えた乗客コンベアであって、
前記乗客コンベアを遠隔操作により起動または停止するための遠隔制御装置と、
前記乗客コンベアに乗り込もうとする乗客を検出する乗客検出装置と、
前記乗客の移動速度を検出する移動速度検出部と、
を備え、
前記制御装置は、前記遠隔操作による起動または停止が完了するまでに前記乗客がクシまで到達すると予想される場合には前記遠隔操作を無効とし、前記遠隔操作による起動または停止が完了するまでに前記乗客が前記クシまで到達しないと予想される場合には前記遠隔操作を有効とする乗客コンベア。
(付記2)
前記制御装置は、前記遠隔操作による停止指令が出された後に前記乗客検出装置が乗客を検出した場合において、当該乗客の移動速度が所定速度以下の場合には前記乗客コンベアを停止させ、当該乗客の移動速度が前記所定速度を超える場合には前記乗客コンベアを停止させない付記1に記載の乗客コンベア。
(付記3)
前記移動速度検出部は、乗客の進行方向に沿って設けられた複数の光電センサを有する付記1または付記2に記載の乗客コンベア。
(付記4)
前記制御装置は、前記乗客検出装置から前記クシまでの距離を前記乗客の移動速度で割った到達予想時間と、前記遠隔操作による起動または停止が完了するまでの推定残り時間とを比較することにより、前記遠隔操作を無効とするか有効とするかを判断する付記1から付記3のいずれか一項に記載の乗客コンベア。
【符号の説明】
【0035】
1 乗客コンベア、 2 制御装置、 3 乗客検出装置、 4 カメラ、 5 遠隔制御装置、 6 クシ、 31 乗客検出部、 32 乗客検出部、 600 専用ハードウェア、 601 プロセッサ、 602 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5