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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168162
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ガス遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/915 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H01H33/915
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084602
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小野 遼太
(72)【発明者】
【氏名】玉井 耕太郎
【テーマコード(参考)】
5G001
【Fターム(参考)】
5G001AA07
5G001BB03
5G001CC03
5G001DD03
5G001DD07
5G001EE01
(57)【要約】
【課題】アークに吹き付けるガスの低温化をより安定的なものとして、アークの消弧性能の向上を図り得るガス遮断器を提供する。
【解決手段】パッファ機構20は、第1パッファ室24a内に突出する態様にて設けられて同室内に導入される絶縁ガスGの熱を吸熱する冷却部材25を備える。冷却部材25は、第1パッファ室24aを構成する構成部材であるシリンダ21及び可動接点11bと連結して熱的に接続される。熱容量の十分大きいシリンダ21及び可動接点11bとの連結にて、冷却部材25での熱籠もりが極力抑えられて、冷却部材25による吸熱を安定して効果的に行うことが可能となる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ガスの雰囲気中に固定接点と可動接点とが配置され、開極時に前記固定接点から前記可動接点が離間動作し、各接点間で生じたアークを消弧して電流遮断を図るべく、
前記アークの熱にて膨張した前記絶縁ガスをパッファ室内に充填し、充填した前記絶縁ガスを前記アークの消弧ガスとして前記パッファ室から噴出させる、少なくとも熱パッファ動作を行うパッファ部を備えたガス遮断器であって、
前記パッファ部は、前記パッファ室内に突出する態様にて設けられて前記パッファ室内に導入される前記絶縁ガスの熱を吸熱する冷却部材を備え、
前記冷却部材は、前記パッファ室を構成する構成部材と連結して熱的に接続されて構成されている、ガス遮断器。
【請求項2】
前記パッファ部は、前記パッファ室を、前記アークによる前記絶縁ガスの熱膨張に基づく熱パッファ動作を行う容積不変の第1パッファ室と、ピストンの押し込み動作に基づく機械パッファ動作を行う容積可変の第2パッファ室とに分割して構成されており、
前記冷却部材は、前記第1パッファ室に設けられている、請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項3】
前記パッファ部は、前記パッファ室において、前記アークによる前記絶縁ガスの熱膨張に基づく熱パッファ動作、及びピストンの押し込み動作に基づく機械パッファ動作をともに行うように構成されており、
前記冷却部材は、前記パッファ室及び前記ピストンのいずれか一方に設けられるとともに、前記パッファ室及び前記ピストンのいずれか他方は、前記ピストンの動作に基づく前記冷却部材との干渉を防止する干渉防止凹部を備えている、請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項4】
前記パッファ部は、前記パッファ室に導入される前記絶縁ガスを前記冷却部材の好適箇所に向く流れが生じるように整流する整流部材を備えている、請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項5】
前記パッファ部は、前記可動接点の周りに前記冷却部材を含めて環状に構成されるものであり、前記パッファ室に導入される前記絶縁ガスを前記環状に沿って旋回する流れが生じるように構成されている、請求項1に記載のガス遮断器。
【請求項6】
前記冷却部材は、複数の冷却板を有しており、前記パッファ室に導入される前記絶縁ガスの流れに沿うように各冷却板を配置して構成されている、請求項1に記載のガス遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の電流遮断を行うガス遮断器においては、遮断動作過程で固定接点と可動接点との間に生じ得るアークを速やかに消弧することが望ましい。パッファ形と呼ばれるガス遮断器は、自身のパッファ室内に充填された絶縁ガスを遮断動作に伴いアークに向けて強く吹き付けて、アークの積極的な消弧を図るものである。
【0003】
ガス遮断器のアークの消弧性能を向上させるには、アークに吹き付けるガスの温度を極力低くすることが対策の一つとしてある。しかしながら、アークに吹き付けるガスのみならず、パッファ室内に高圧に充填されるガスは、アークからの熱を受けて非常に高温となるものである。
【0004】
上記対策の一例としては、パッファ室に出入りするガスの流路上にガスの熱を吸収する冷却部材を配置するものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-186796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記冷却部材の自身の熱容量には限りがあるため、冷却部材が熱飽和するとガスの熱を十分に吸収しきれない状況となる。冷却部材に熱が籠もると、パッファ室に出入りするガスの温度、ひいてはアークに吹き付けるガスの温度を十分に下げられないことが懸念事項となる。本発明者は、上記懸念事項の改善を図ってアークの消弧性能を向上させることを検討している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するガス遮断器は、絶縁ガスの雰囲気中に固定接点と可動接点とが配置され、開極時に前記固定接点から前記可動接点が離間動作し、各接点間で生じたアークを消弧して電流遮断を図るべく、前記アークの熱にて膨張した前記絶縁ガスをパッファ室内に充填し、充填した前記絶縁ガスを前記アークの消弧ガスとして前記パッファ室から噴出させる、少なくとも熱パッファ動作を行うパッファ部を備えたガス遮断器であって、前記パッファ部は、前記パッファ室内に突出する態様にて設けられて前記パッファ室内に導入される前記絶縁ガスの熱を吸熱する冷却部材を備え、前記冷却部材は、前記パッファ室を構成する構成部材と連結して熱的に接続されて構成されている。
【0008】
上記構成によれば、冷却部材は、パッファ室内に突出する態様をなしてパッファ室内に導入される絶縁ガスの熱を吸熱する機能を有しており、パッファ室の構成部材と連結して熱的に接続される。つまり、熱容量の十分大きいパッファ室の構成部材との連結にて、冷却部材での熱籠もりが極力抑えられて、冷却部材による吸熱を安定して効果的に行うことが可能となる。パッファ室内に充填する絶縁ガスをより安定的に低温にできるため、より低温の良質な消弧ガスをアークに対して吹き付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本開示のガス遮断器によれば、アークに吹き付けるガスの低温化がより安定的なものとなり、アークの消弧性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態のガス遮断器の構成を示す軸方向断面図である。
図2図2は、同形態のガス遮断器の構成を示す径方向断面図である。
図3図3は、同形態のガス遮断器の遮断動作初期の状態を示す断面図である。
図4図4は、同形態のガス遮断器の遮断動作中期の状態を示す断面図である。
図5図5は、同形態のガス遮断器の遮断動作後期の状態を示す断面図である。
図6図6は、第2実施形態のガス遮断器の構成を示す軸方向断面図である。
図7図7は、第3実施形態のガス遮断器の構成を示す軸方向断面図である。
図8図8は、同形態のガス遮断器の構成を示す径方向断面図である。
図9図9は、第4実施形態のガス遮断器の構成を示す軸方向断面図である。
図10図10は、同形態のガス遮断器の構成を示す径方向断面図である。
図11図11は、第5実施形態のガス遮断器の構成を示す軸方向断面図である。
図12図12は、同形態のガス遮断器の構成を示す径方向断面図である。
図13図13は、第6実施形態のガス遮断器の構成を示す軸方向断面図である。
図14図14は、同形態のガス遮断器の構成を示す径方向断面図である。
図15図15は、第7実施形態のガス遮断器の構成を示す軸方向断面図である。
図16図16は、同形態のガス遮断器の構成を示す径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、ガス遮断器の第1実施形態について説明する。
(ガス遮断器10の全体構成)
図1に示すように、本実施形態のガス遮断器10は、絶縁ガスGにて満たされる収容タンクT内に収容され、絶縁ガスGの雰囲気中に配置されている。絶縁ガスGには、CO2ガス(二酸化炭素ガス)及びSF6ガス(六フッ化硫黄ガス)等が用いられる。
【0012】
ガス遮断器10は、接点部11を構成するそれぞれ導電金属製の固定接点11aと可動接点11bとを備えている。固定接点11aは、ガス遮断器10を挟んだ電路の一方と接続される固定電極部(図示略)と一体的に構成されている。可動接点11bは、ガス遮断器10を挟んだ電路の他方と接続される可動電極部(図示略)と一体的に構成されている。可動接点11bは、固定接点11aに対して軸線L1方向(以下単に軸方向という)に沿って進退動作する。固定接点11aに対する可動接点11bの進退による接離動作にて、ガス遮断器10の対象電路の開閉がなされる。
【0013】
図1は、接点部11の固定接点11aと可動接点11bとが接触するガス遮断器10の閉極状態を示している。後述する図3図4及び図5は、接点部11の固定接点11aと可動接点11bとが離間するガス遮断器10の開極時の遮断動作過程を示している。
【0014】
(接点部11)
図1に示すように、接点部11は、固定接点11aと可動接点11bとを備えている。固定接点11aは、円棒状をなしている。固定接点11aは、自身の軸線が上記軸方向に沿うようにして不動に設置されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、可動接点11bは、円筒状をなしている。可動接点11bは、自身の中心軸線と固定接点11aの中心軸線とが一致するように、固定接点11aと同軸上に配置されている。可動接点11bは、上記軸方向に沿って移動可能に設けられている。可動接点11bは、固定接点11aに対して軸方向に沿った進退動作を行い、固定接点11aに対する接離動作を行う。可動接点11bは、自身と連結された操作ロッド(図示略)との連動により可動する。
【0016】
可動接点11bと固定接点11aとが接触する閉極時においては、可動接点11bの先端部に固定接点11aの先端部が挿入されて互いに接触する。可動接点11bが固定接点11aから離間動作する開極時においては、可動接点11bの先端部と固定接点11aの先端部との間においてアークA(図3等参照)が生じ得る。
【0017】
(パッファ機構20)
パッファ形の本実施形態のガス遮断器10は、パッファ機構20を備えている。パッファ機構20は、機械パッファ式と熱パッファ式とを併用するものである。パッファ機構20は、アークAの生じ得る可動接点11bの先端部に絶縁ガスGを消弧ガスとして吹き付ける機能を有している。パッファ機構20は、可動接点11bの周りに設けられている。
【0018】
パッファ機構20は、それぞれ金属製のシリンダ21とピストン22とを備えている。シリンダ21は、周壁部21aと端壁部21bとを有している。周壁部21aは、可動接点11bと同軸の略円筒状をなしており、可動接点11bの外側面から径方向外側に間隔を有している。端壁部21bは、可動接点11bの周りに円環板状をなしており、可動接点11bの先端寄りに位置する周壁部21aの端部から連続して設けられている。端壁部21bは、周壁部21aと可動接点11bとの間を略閉塞する態様をなしている。端壁部21bの径方向内側部には、開口部23が設けられている。開口部23は、周方向に間隔を有して複数設けられている。端壁部21bは、図1の開口部23の位置の断面では可動接点11bと離間しているように見えるが、開口部23以外の周方向部分で可動接点11bと連結している。シリンダ21は、自身の端壁部21b及び後述の仕切壁部21c等による可動接点11bと連結にて一体的に構成されており、可動接点11bとともに一体的に動作する。
【0019】
図1及び図2に示すように、シリンダ21は、周壁部21aの軸方向中間部に仕切壁部21cを有している。仕切壁部21cは、可動接点11bの周りに円環板状をなしており、周壁部21aの軸方向中間部から連続して設けられている。仕切壁部21cは、周壁部21aと可動接点11bとの間を略閉塞する態様をなしている。仕切壁部21cは、シリンダ21とピストン22とで形成される内部空間を二分する。仕切壁部21cは、可動接点11bの先端寄りに位置する空間を第1パッファ室24a、可動接点11bの後端寄りに位置する空間を第2パッファ室24bに分割している。第1パッファ室24aは、上記開口部23と連通している。第2パッファ室24bは、第1パッファ室24aを介して上記開口部23と連通している。
【0020】
(冷却部材25)
仕切壁部21cの第1パッファ室24aに向く面には、冷却部材25が一体的に設けられている。冷却部材25は、複数の冷却板25aにて構成されている。各冷却板25aは、仕切壁部21cの周方向に等間隔に配置されている。各冷却板25aは、それぞれ長方形板状をなしている。各冷却板25aは、自身の長辺を軸方向に向けて、短辺を径方向に向けて配置されている。各冷却板25aは、第1パッファ室24a内に突出する態様をなしており、第1パッファ室24aに充填される絶縁ガスGと接触して冷却する機能を有している。各冷却板25aは、本実施形態では周囲部材と同様の金属製としたが、金属製以外で例えばセラミック製等、吸熱性に優れた材料で作製してもよい。各冷却板25aは、仕切壁部21cを介してシリンダ21の全体、及び可動接点11bと連結しており、熱容量の大きな周囲部材と熱的に接続されている。
【0021】
仕切壁部21cの径方向内側部には、逆止弁26が設けられている。逆止弁26は、周方向に間隔を有して複数設けられている。仕切壁部21cは、逆止弁26以外の周方向部分で可動接点11bと連結している。逆止弁26は、第1パッファ室24aから第2パッファ室24bへの絶縁ガスGの流入を抑制しつつ、第2パッファ室24bから第1パッファ室24aへの絶縁ガスGの噴出を許容する機能を有している。第2パッファ室24bは、ピストン22の相対的な押し込み動作による容積可変の空間である。第2パッファ室24bは、機械パッファ動作時に主に機能させる空間である。第1パッファ室24aについては、容積不変の空間である。第1パッファ室24aは、熱パッファ動作時に主に機能させる空間である。
【0022】
ピストン22は、押圧部22aと支持部材22bとを備えている。押圧部22aは、支持部材22bにて支持されて不動に設置されている。押圧部22aは、第2パッファ室24bの一つの壁部を構成している。可動接点11bが固定接点11aから離間する可動接点11bの後退動作が生じると、可動接点11bとともにシリンダ21が動作すると、シリンダ21に対するピストン22の相対的な押し込み動作が生じるようになっている。
【0023】
パッファ機構20には、ノズル27が付随して設けられている。ノズル27は、例えば絶縁樹脂製である。ノズル27は、シリンダ21の端壁部21bに取り付けられている。ノズル27は、シリンダ21と同様、可動接点11bとともに一体的に動作する。
【0024】
ノズル27は、可動接点11bと同軸の略円筒状をなしており、可動接点11bの外周面から間隔を有して設けられている。ノズル27は、自身の内側空間とパッファ機構20の開口部23と連通している。ノズル27の内周面27aは、軸方向断面において軸方向中央部が径方向内側に突出、中央部から軸方向両端部に向けて次第に径方向外側に向けて傾斜する略台形状をなしている。ノズル27は、自身の内周面27aの面形状に基づいて、パッファ機構20の開口部23にて出入りする絶縁ガスGを整流する機能を有している。パッファ機構20及びノズル27の動作の詳細については後述する。
【0025】
(本実施形態の作用)
本実施形態の作用について説明する。
図1に示すように、ガス遮断器10の閉極状態では、可動接点11bと固定接点11aとが接触している。
【0026】
ガス遮断器10にて開極する必要が生じると、ガス遮断器10では、図3に示す遮断状態初期、図4に示す遮断動作中期、及び図5に示す遮断動作後期にかけて順次進む開極時の電流遮断動作が行われる。可動接点11bの退避動作により可動接点11bが固定接点11aから離間すると、可動接点11bの先端部と固定接点11aの先端部との間にアークAが生じ得る。可動接点11bの退避動作に伴い、パッファ機構20ではアークAの消弧動作が行われる。
【0027】
パッファ機構20では、可動接点11bの退避動作と連動してシリンダ21内へのピストン22の相対的な押し込み動作が行われる。第2パッファ室24bでは、ピストン22の動作により室内の絶縁ガスGが圧縮される。圧縮された絶縁ガスGは、逆止弁26から噴出されて第1パッファ室24aを介して開口部23から噴出する。開口部23から噴出した絶縁ガスGはノズル27によってアークAに向けられて、消弧ガスとして勢い良くアークAに吹き付けられる。こうしたピストン22の押し込みに基づいたアークAの消弧動作は機械パッファ動作であって、アークAの発熱量が比較的低い小電流域の場合で主となる消弧動作である。
【0028】
遮断電流が大きくなると、可動接点11bと固定接点11aとの間に生じるアークAもより高温となる。アークAがより高温となると、アークA周りの絶縁ガスGの熱膨張もより大きくなる。図3に示す遮断動作初期から図4に示す遮断動作中期では、可動接点11bとともに動作するノズル27の固定接点11aとの位置関係における整流機能にて、膨張した絶縁ガスGの主流は開口部23から第1パッファ室24a内に流入する流れとなる。第1パッファ室24a内に導入する絶縁ガスGの第2パッファ室24bへの流入は逆止弁26にて抑制されるため、第1パッファ室24aの内圧は大きく高まる。
【0029】
図5に示す遮断動作後期になると、ノズル27の固定接点11aとの位置関係における整流機能にて、第1パッファ室24a内に高圧に充填された絶縁ガスGが開口部23から勢い良く噴出する。開口部23から噴出した絶縁ガスGはノズル27によってアークAに向けられて、消弧ガスとしてアークAに強く吹き付けられる。こうしたアークAの熱による絶縁ガスGの熱膨張に基づいたアークAの消弧動作は熱パッファ動作であって、アークAの発熱量が比較的高い大電流域の場合で主となる消弧動作である。パッファ機構20では機械パッファ動作及び熱パッファ動作が並行して行われるが、電流遮断により生じるアークAの強さで各パッファ動作のいずれかが効果的となる。
【0030】
上記熱パッファ動作に係り、第1パッファ室24aに充填した絶縁ガスGをアークAに対して吹き付ける際、より低温とすることがアークAの消弧に効果的である。本実施形態ではこれを考慮し、第1パッファ室24a内に充填される絶縁ガスGと接触するように冷却部材25が設置されている。図4等には、第1パッファ室24a内の絶縁ガスGの大凡の流れα1が示してある。冷却部材25は軸方向に沿った冷却板25aで構成していることから、軸方向及び径方向に沿う流れα1への影響は小さく滞留は生じ難い。開口部23から導入される高熱の絶縁ガスGは、第1パッファ室24a内を円滑に流れながら冷却部材25にて吸熱される。
【0031】
また本実施形態では、冷却部材25は、熱容量の十分大きいシリンダ21及び可動接点11bと熱的にも連結されている。つまり、冷却部材25の熱籠もりが極力抑えられて、冷却部材25による吸熱を安定して効果的に行うことが可能となっている。そのため、第1パッファ室24aに充填する絶縁ガスGをより安定的に低温にできて、より低温の良質な消弧ガスをアークAに対して吹き付けることが可能である。このことは、ガス遮断器10の電流遮断性能の向上に貢献するものである。
【0032】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(1-1)本実施形態のパッファ機構20は、第1パッファ室24a内に突出する態様にて設けられて同室内に導入される絶縁ガスGの熱を吸熱する冷却部材25を備える。冷却部材25は、第1パッファ室24aを構成する構成部材であるシリンダ21及び可動接点11bと連結して熱的に接続される。つまり、熱容量の十分大きいシリンダ21及び可動接点11bとの連結にて、冷却部材25での熱籠もりを極力抑えることができて、冷却部材25による吸熱を安定して効果的に行うことができる。第1パッファ室24a内に充填する絶縁ガスGをより安定的に低温にできるため、より低温の良質な消弧ガスをアークAに対して吹き付けることができる。ガス遮断器10の電流遮断性能の向上を図ることができる。
【0033】
(1-2)パッファ機構20は、熱パッファ動作を行う容積不変の第1パッファ室24aと、機械パッファ動作を行う容積可変の第2パッファ室24bとに分割して構成される。冷却部材25は、容積不変の第1パッファ室24aに設けられる。冷却部材25を容易に設置できる等の効果を得ることができる。
【0034】
(1-3)冷却部材25は、複数の冷却板25aにて構成されており、各冷却板25aは、第1パッファ室24aに導入される絶縁ガスGの流れに沿うように配置される。冷却板25aは板状をなすため、容易に作製することができる。また、冷却板25aは自身が板状をなすが、配置により絶縁ガスGの流れを阻害しない配置である。
【0035】
(第2実施形態)
以下、ガス遮断器の第2実施形態について説明する。
図6に示す本実施形態のガス遮断器10は、上記実施形態に対して、パッファ機構20の構成を変更したものである。本実施形態のパッファ機構20は、開口部23から導入する絶縁ガスGの第1パッファ室24a内の流れα1を整流する整流部材28を備えている。
【0036】
整流部材28は、例えばシリンダ21の端壁部21bの内側面に取り付けられている。整流部材28は、冷却部材25を構成する冷却板25aの軸方向基端部である仕切壁部21cの近くまで絶縁ガスGを案内する流れα1を形成する。整流部材28により案内された絶縁ガスGは、開口部23から遠い冷却部材25の軸方向基端部まで回り込むことができて、絶縁ガスGの冷却効果の一層の向上が見込める態様となっている。絶縁ガスGの冷却効果をある程度で維持できれば、冷却部材25を軸方向に短く構成することも可能である(図6参照)。
【0037】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(2-1)上記第1実施形態と同様の構成においては、同様の効果を得ることができる。
【0038】
(2-2)本実施形態のパッファ機構20は、第1パッファ室24aに導入される絶縁ガスGを冷却部材25の好適箇所に向く流れα1が生じるように整流する整流部材28を備える。整流部材28により案内された絶縁ガスGは、開口部23から遠い冷却部材25の軸方向基端部まで回り込むようになる。冷却部材25の全体での吸熱がなされて、絶縁ガスGの冷却効果の一層の向上が期待できる。
【0039】
(第3実施形態)
以下、ガス遮断器の第3実施形態について説明する。
図7及び図8に示す本実施形態のガス遮断器10においても、上記実施形態に対して、パッファ機構20の構成を変更したものである。本実施形態のパッファ機構20は、第1パッファ室24a内の絶縁ガスGに周方向一方に旋回する流れα2を形成するような冷却部材25の構成としている。
【0040】
冷却部材25を構成する複数の冷却板25aは、自身の長辺を軸方向に向けつつ、図8に示すように短辺を径方向に対して同様の傾斜角θを持たせて配置されている。各冷却板25aは、それぞれ一様に径方向に対して傾斜させていることで、第1パッファ室24a内の絶縁ガスGに周方向一方に旋回する流れα2を形成する。傾斜配置させた各冷却板25aにて旋回流の生じる絶縁ガスGは、より多くの冷却部材25に接触することができて、絶縁ガスGの冷却効果の一層の向上が見込める態様となっている。絶縁ガスGの冷却効果をある程度で維持できれば、冷却部材25を軸方向に短く構成することも可能である(図7参照)。
【0041】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(3-1)上記各実施形態と同様の構成においては、同様の効果を得ることができる。
【0042】
(3-2)本実施形態のパッファ機構20は、第1パッファ室24aに導入される絶縁ガスGを冷却部材25の並ぶ環状に沿って旋回する流れα2が生じるように構成される。旋回流の生じる絶縁ガスGは、より多くの冷却部材25に接触する機会が増えて、絶縁ガスGの冷却効果の一層の向上が期待できる。
【0043】
(第4実施形態)
以下、ガス遮断器の第4実施形態について説明する。
図9及び図10に示す本実施形態のガス遮断器10においても、上記実施形態に対して、パッファ機構20の構成を変更したものである。本実施形態のパッファ機構20は、シリンダ21の仕切壁部21cを省略し、1つの空間のパッファ室24にて構成されている。冷却部材25は、複数の冷却板25aを用いており、ピストン22の押圧部22aのパッファ室24に向く面に一体的に設けられている。各冷却板25aは、上記実施形態と同様、自身の長辺を軸方向に向けて短辺を径方向に向けて配置、若しくは短辺を径方向に対して傾斜させて配置してもよい。
【0044】
本実施形態のパッファ機構20は、1つのパッファ室24にて機械パッファ動作と熱パッファ動作とを上記と同様に行う。その際、開口部23から導入される高熱の絶縁ガスGは、パッファ室24内に突出する態様の各冷却板25aよりなる冷却部材25にて吸熱される。冷却部材25は、本実施形態では熱容量の十分大きいピストン22と熱的にも連結されているため、冷却部材25の熱籠もりも極力抑えられて、冷却部材25による吸熱を効果的に行うことが可能となっている。
【0045】
また、ピストン22の押圧部22aと軸方向に対向するシリンダ21の端壁部21bにおいては、ピストン22の押し込みがなされた時の冷却部材25の軸方向先端部との干渉が防止されている。シリンダ21の端壁部21bを軸方向に膨出させて、膨出させた部分のパッファ室24に向く面に各冷却板25aの先端部を挿入可能な干渉防止凹部21dが設けられている。干渉防止凹部21dは、可動接点11bの周りに円環状をなしており、周方向に並ぶ複数の冷却板25aを一括に収容する態様である。本実施形態では、冷却部材25をピストン22に設けながらも、ピストン22の押し込みストロークを確保することが可能となっている。また、干渉防止凹部21dの凹形状が比較的単純な形状であるため、干渉防止凹部21dを含むシリンダ21等の作製を容易に行うことが期待できる。
【0046】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(4-1)上記各実施形態と同様の構成においては、同様の効果を得ることができる。
【0047】
(4-2)本実施形態のパッファ機構20は、冷却部材25をピストン22に設けるのに対し、パッファ室24を構成するシリンダ21の端壁部21bに、ピストン22の動作に基づく冷却部材25との干渉を防止する干渉防止凹部21dを備える。冷却部材25をピストン22に設けながらも、ピストン22の押し込みストロークを確保することができる。また別の見方をすると、ピストン22の押し込みストロークを変更することなく、対応することができる。
【0048】
(第5実施形態)
以下、ガス遮断器の第5実施形態について説明する。
図11及び図12に示す本実施形態のガス遮断器10においても、上記実施形態に対して、パッファ機構20の構成を変更したものである。本実施形態のパッファ機構20は、1つのパッファ室24であり、複数の冷却板25aよりなる冷却部材25をピストン22の押圧部22aに設けている。
【0049】
ピストン22の押圧部22aと軸方向に対向するシリンダ21の端壁部21bにおいても、ピストン22の押し込みがなされた時の冷却部材25の軸方向先端部との干渉が防止されている。本実施形態では、シリンダ21の端壁部21bの軸方向に膨出させた部分のパッファ室24に向く面に、各冷却板25aの先端部を個別に挿入可能な複数の干渉防止凹部21eが設けられている。冷却部材25をピストン22に設けながらも、ピストン22の押し込みストロークを確保することが可能である。
【0050】
また本実施形態では、各干渉防止凹部21eのそれぞれが自身に収容する各冷却板25aの先端部形状に対応することから、各干渉防止凹部21eに各冷却板25aの先端部が挿入された後では、各干渉防止凹部21eが略閉塞された状態となる。そのため、パッファ室24内の無用な空間を極力無くすことが可能となっている。パッファ室24内での絶縁ガスGの圧縮を効果的に行うことが期待できる。
【0051】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(5-1)上記各実施形態と同様の構成においては、同様の効果を得ることができる。
【0052】
(第6実施形態)
以下、ガス遮断器の第6実施形態について説明する。
図13及び図14に示す本実施形態のガス遮断器10においても、上記実施形態に対して、パッファ機構20の構成を変更したものである。本実施形態のパッファ機構20は、1つのパッファ室24であり、複数の冷却板25aよりなる冷却部材25をシリンダ21の周壁部21a及び端壁部21bに設けられている。冷却部材25を構成する複数の冷却板25aは、自身の長辺を周壁部21aに、短辺を端壁部21bに連結して、周壁部21a及び端壁部21bの角部に配置されている。各冷却板25aは、上記実施形態と同様、自身の長辺を軸方向に向けて短辺を径方向に向けて配置、若しくは短辺を径方向に対して傾斜させて配置してもよい。
【0053】
シリンダ21の端壁部21bと軸方向に対向するピストン22の押圧部22aにおいては、ピストン22の押し込みがなされた時の冷却部材25の軸方向先端部との干渉が防止されている。ピストン22の押圧部22aを軸方向に膨出させて、膨出させた部分のパッファ室24に向く面に各冷却板25aの先端部を挿入可能な干渉防止凹部22cが設けられている。干渉防止凹部22cは、複数の冷却板25aを一括に収容する態様、若しくは個別に収容する態様のいずれの凹形状であってもよい。本実施形態においても、冷却部材25をピストン22と対向するシリンダ21の端壁部21bに設けながら、ピストン22の押し込みストロークを確保することが可能である。
【0054】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(6-1)上記各実施形態と同様の構成においては、同様の効果を得ることができる。
【0055】
(第7実施形態)
以下、ガス遮断器の第7実施形態について説明する。
図15及び図16に示す本実施形態のガス遮断器10においても、上記実施形態に対して、パッファ機構20の構成を変更したものである。本実施形態のパッファ機構20は、第1パッファ室24a内の絶縁ガスGに周方向一方に旋回する流れα2を増加させる冷却部材25の構成としている。
【0056】
冷却部材25を構成する複数の冷却板25aは、自身の長辺を軸方向に向けつつ、短辺を径方向に対して同様の傾斜角θを持たせて配置されている。さらに、複数の冷却板25aは、径方向において例えば径方向中間部に間隔を有して2つ並んで配置されている。これにより、第1パッファ室24a内にて、周方向一方に旋回する絶縁ガスGの流れα2が径方向外側部と径方向中間部とのそれぞれに生じさせることが期待できる。傾斜配置させた各冷却板25aにて複数の旋回流の生じる絶縁ガスGは、より多くの冷却部材25に接触することができて、絶縁ガスGの冷却効果の一層の向上が見込める態様となっている。絶縁ガスGの冷却効果をある程度で維持できれば、冷却部材25を軸方向に短く構成することも可能である(図15参照)。
【0057】
(本実施形態の効果)
本実施形態の効果について説明する。
(7-1)上記各実施形態と同様の構成においては、同様の効果を得ることができる。
【0058】
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
・冷却部材25として長方形板状の複数の冷却板25aを用いたが、形状は適宜変更してもよい。板素材に対して複数の穴を設けてもよい。板状以外で棒状、網状等、他の形状のものを用いてもよい。
【0060】
・冷却部材25の各冷却板25aとの干渉を防止する干渉防止凹部21d,21e,22cを設けたが、冷却部材25と関係する周囲部材の位置や動作の調整等を図ることで、凹部を設けない態様としてもよい。
【0061】
・パッファ部として、シリンダ21及びピストン22を有する機械パッファ動作を行うパッファ機構20を用いたが、ピストン22の無い熱パッファ動作のみを行うものであってもよい。
【0062】
・1つの固定接点11a及び可動接点11bを備えるものであったが、主接点部とアーク接点部とを備えるものであってもよい。
・固定接点11aを不動としたが、若干動作するものも含む。
【符号の説明】
【0063】
10 …ガス遮断器
11a…固定接点
11b…可動接点(構成部材)
20 …パッファ機構(パッファ部)
21 …シリンダ(構成部材)
21d…干渉防止凹部
21e…干渉防止凹部
22 …ピストン
22c…干渉防止凹部
24 …パッファ室
24a…第1パッファ室(パッファ室)
24b…第2パッファ室(パッファ室)
25 …冷却部材
25a…冷却板
28 …整流部材
A …アーク
G …絶縁ガス
α1 …流れ
α2 …流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16