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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168165
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】回転電機及び回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/02 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H02K9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084607
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】塚 秋乃
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP06
5H609PP08
5H609PP09
5H609QQ23
5H609RR35
5H609RR58
5H609RR69
(57)【要約】
【課題】ステータコアの外周面及びハウジングの内周面が直に接触しない構成を採用しながらも、回転電機におけるステータの冷却性能を向上させることができる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は、ハウジング40、ステータ20、及びロータ10を備える。ステータ20は、ステータコア21及びコイル31を有し、ハウジング40に収容される。ロータ10は、ステータ20の内部において回転可能に設けられるロータコア11及びロータコア11を貫通するとともにロータコア11と一体に回転するロータシャフト12を有する。ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間には、外周面21aと内周面50bとの双方に当接する樹脂層73が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
ステータコア及びコイルを有し、前記ハウジングに収容されるステータと、
前記ステータの内部において回転可能に設けられるロータコア及び前記ロータコアを貫通するとともに前記ロータコアと一体に回転するロータシャフトを有するロータと、を備える回転電機であって、
前記ステータコアの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、前記外周面と前記内周面との双方に当接する樹脂層が設けられている、
回転電機。
【請求項2】
前記樹脂層は、粘土状のベース樹脂を含む、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ハウジングは、硬質樹脂製のハウジング本体を有する、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記ハウジング本体よりも硬質の材料により形成された補強部を有する、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記補強部は、前記ハウジング本体よりも高い熱伝導性を有するとともに、前記ハウジング本体の内周面のうち前記ステータの径方向において前記ステータの外周面と重なる位置に設けられている、
請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記樹脂層は、ベース樹脂と、前記ベース樹脂よりも高い熱伝導性を有するフィラーと、を有する、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ステータコアの外周面には、前記ステータコアの軸線方向の全体にわたって延びる複数の溝部が前記ステータコアの周方向において互いに間隔をあけて設けられている、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項8】
前記ステータコアは、複数の鉄心片を積層して構成され、
前記鉄心片は、前記鉄心片の外周面の周方向において間隔をあけて設けられた複数の切欠きを有し、
前記溝部は、前記切欠きにより形成されている、
請求項7に記載の回転電機。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の回転電機の製造方法であって、
前記ハウジングは、開口を有するケースと、前記開口を覆うキャップと、を有し、
前記ケースの内部に流動性を有する樹脂を配置する配置工程と、
前記ケースの内部に前記ステータを挿入することで、前記ステータコアの外周面と前記ハウジングの内周面との間に前記樹脂を充填する充填工程と、を備える、
回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機及び回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、複数のスロットが形成された円環状のステータコアと、複数のスロットに挿入された複数のコイルと、ステータコアの外周を覆う円筒状のハウジングとを備える(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の回転電機においては、ステータコアの外周面とハウジングの内周面とを直に接触させることで、通電によって発熱したコイルからの受熱によって加熱されたステータコアの熱をハウジングへと伝え易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-152852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の回転電機では、ステータコアの外周面とハウジングの内周面とを直に接触させるために、ステータコアの外周面及びハウジングの内周面の加工精度を高める必要があるため、回転電機の製造に手間を要するものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための回転電機は、ハウジングと、ステータコア及びコイルを有し、前記ハウジングに収容されるステータと、前記ステータの内部において回転可能に設けられるロータコア及び前記ロータコアを貫通するとともに前記ロータコアと一体に回転するロータシャフトを有するロータと、を備える回転電機であって、前記ステータコアの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、前記外周面と前記内周面との双方に当接する樹脂層が設けられている。
【0007】
同構成によれば、ステータコアの外周面とハウジングの内周面との間に樹脂層が設けられているので、ステータコアの外周面とハウジングの内周面との間に空気層が形成されることを抑制できる。このため、通電によって発熱したコイルからの受熱によって加熱されたステータコアの熱が、樹脂層を介してハウジングへと伝わり易くなる。したがって、ステータコアの外周面及びハウジングの内周面が直に接触しない構成を採用しながらも、回転電機におけるステータの冷却性能を向上させることができる。
【0008】
また、上記課題を解決するための回転電機の製造方法は、上記の回転電機の製造方法であって、前記ハウジングは、開口を有するケースと、前記開口を覆うキャップと、を有し、前記ケースの内部に流動性を有する樹脂を配置する配置工程と、前記ケースの内部に前記ステータを挿入することで、前記ステータコアの外周面と前記ハウジングの内周面との間に前記樹脂を充填する充填工程と、を備える。
【0009】
同方法によれば、ケースの内部にステータを挿入することで、ケースの内部に配置されていた樹脂が流動してステータコアの外周面とハウジングの周壁の内周面との間に充填される。このようにして樹脂層が形成される。したがって、ステータコアの外周面とハウジングの内周面との間に樹脂層を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る回転電機の断面図である。
図2図2は、図1のステータを示す断面図である。
図3図3は、配置工程を示す断面図である。
図4図4は、充填工程を示す断面図である。
図5図5は、ロータが挿入された状態のケースを示す断面図である。
図6図6は、キャップに対してケースが組み付けられる様子を示す断面図である。
図7図7は、ステータコアの第1変更例を示す断面図である。
図8図8は、ステータコアの第2変更例を示す断面図である。
図9図9は、ステータコアの第3変更例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図6を参照して、回転電機の一実施形態について説明する。
図1に示すように、回転電機は、ロータ10、ステータ20、ハウジング40、及び充填樹脂70を備える。
【0012】
<ロータ10>
図1に示すように、ロータ10は、ロータコア11及びロータシャフト12を備える。
ロータコア11は、中心孔10aを有する円筒状である。
【0013】
ロータシャフト12は、中心孔10aを貫通するとともに、ロータコア11に対して一体に回転可能に固定されている。
<ステータ20>
図1に示すように、ステータ20は、ステータコア21及びコイル31を備える。
【0014】
ステータコア21は、中心孔20aを有する略円筒状である。
なお、以降において、ステータコア21の軸線方向を単に軸線方向とし、ステータコア21の径方向を単に径方向とし、ステータコア21の周方向を単に周方向として説明する。また、径方向における内側及び外側を、それぞれ単に内側及び外側として説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、ステータコア21は、電磁鋼板製の鉄心片22が軸線方向に複数枚積層された積層体により形成されている。
図2に示すように、ステータコア21は、円環状のヨーク23、複数のティース24、及び複数のスロット25を有する。
【0016】
複数のティース24は、ヨーク23から内側に突出するとともに、周方向に等間隔にて設けられている。
スロット25は、周方向において隣り合うティース24同士の間に1つずつ形成されている。スロット25は、ステータコア21を軸線方向に貫通するとともに、径方向において中心孔20aと連通している。
【0017】
各鉄心片22の外周面22aには、周方向に互いに間隔をあけて設けられた複数の切欠き29が設けられている。切欠き29は、平面視半円状である。
ステータコア21の外周面21aには、軸線方向の全体にわたって延びる複数の溝部28が周方向において互いに間隔をあけて設けられている。溝部28は、切欠き29により形成されている。溝部28は、軸線方向に隣り合う鉄心片22の切欠き29同士が同位相となるように積層されることによって形成されている。
【0018】
スロット25には、コイル31が挿入されている。
図1に示すように、コイル31は、スロット25の内部に位置する複数の挿入部32、複数の第1コイルエンド33、及び複数の第2コイルエンド34を有する。
【0019】
第1コイルエンド33は、ステータコア21の第1端面21bから突出している。
第2コイルエンド34は、ステータコア21の第2端面21cから突出している。
各コイルエンド33,34は、周方向に屈曲することで、異なる2つのスロット25の内部に配置された2つの挿入部32同士を連結している。
【0020】
ステータ20の内部には、上記ロータコア11が回転可能に設けられている。
<ハウジング40>
図1に示すように、ハウジング40は、ステータ20を収容するものであり、開口50aを有するケース50と、開口50aを覆うキャップ60とを備える。
【0021】
ケース50は、開口50aを有する有底筒状のケース本体51と、ケース本体51の内周面に設けられる補強部80とを有する。
ケース本体51は、開口50aを取り囲むケース周壁52と、開口50aに対向する底壁53とを有する。ケース本体51は、硬質樹脂製である。
【0022】
補強部80は、ケース本体51の内周面のうち径方向においてステータ20の外周面21aと重なる位置に設けられている。補強部80は、ケース本体51よりも高い熱伝導性を有するとともに、ケース本体51よりも硬質の材料により形成されている。本実施形態では、補強部80は、金属製である。補強部80は、インサート成形によりケース周壁52の内周面に一体に形成されている。
【0023】
底壁53の中心には、貫通孔54aが形成されている。底壁53における貫通孔54aの周縁部には、ケース50の内部に向かって突出する筒部55が設けられている。筒部55の内周面には、環状凹部56が設けられている。環状凹部56には、金属製の軸受補強部81が嵌入されている。軸受補強部81の内周面には、軸受91が嵌入されている。
【0024】
筒部55の先端部には、外側に突出する円環状の支持部57が設けられている。支持部57の外側端には、ステータコア21の第1端面21bに向かって突出する支持突部58が全周にわたって設けられている。支持突部58は、ステータコア21の第1端面21bのうち第1コイルエンド33よりも内側の部分に当接している。支持突部58の外周面は、第1コイルエンド33の内周面に当接している。
【0025】
キャップ60は、開口60aを有する有底筒状である。キャップ60は、開口60aを取り囲むキャップ周壁62と、開口60aに対向する頂壁63とを有する。キャップ60は、硬質樹脂製である。
【0026】
頂壁63の中心には、貫通孔64aが形成されている。頂壁63における貫通孔64aの周縁部には、キャップ60の内部に向かって突出する筒部65が設けられている。筒部65の内周面には、環状凹部66が設けられている。環状凹部66には、金属製の軸受補強部82が嵌入されている。軸受補強部82の内周面には、軸受92が嵌入されている。
【0027】
筒部65の先端部には、ステータコア21の第2端面21cに向かって突出する支持突部68が全周にわたって設けられている。支持突部68は、ステータコア21の第2端面21cのうち第2コイルエンド34よりも内側の部分に当接している。支持突部68の外周面は、第2コイルエンド34の内周面に当接している。
【0028】
<充填樹脂70>
図1に示すように、充填樹脂70は、第1充填樹脂71及び第2充填樹脂74を含む。
第1充填樹脂71は、充填部72及び樹脂層73を有する。充填部72は、ケース50の内部であって第1コイルエンド33の周囲に充填されている。樹脂層73は、ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間に設けられ、外周面21aと内周面50b、詳しくは補強部80の内周面との双方に当接している。
【0029】
第2充填樹脂74は、キャップ60の内部であって第2コイルエンド34の周囲に充填されている。
第1充填樹脂71及び第2充填樹脂74は、いずれもベース樹脂と、ベース樹脂よりも高い熱伝導性を有するフィラーとを有する。ベース樹脂は、粘土状である。ベース樹脂としては、例えばシリコン樹脂が好ましい。フィラーとしては、例えば窒化アルミニウムなどのセラミックス材料が好ましい。
【0030】
次に、図3図6を参照して、回転電機の製造方法について説明する。
回転電機の製造方法は、配置工程、充填工程、組付工程、及び閉塞工程を備える。
<配置工程>
図3に示すように、配置工程においては、ケース50の内部に流動性を有する樹脂71Aを配置する。樹脂71Aは、底壁53の内面に配置される。
【0031】
<充填工程>
図4に示すように、充填工程においては、ケース50の内部にステータ20を挿入することで、ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間に樹脂71Aを充填する。ケース50の内部にステータ20が挿入されることによって、支持突部58がステータコア21及び第1コイルエンド33に当接する。このため、ステータ20によって押し出された樹脂71Aは、ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間へと充填される。これにより、充填部72及び樹脂層73が形成される。
【0032】
<組付工程>
図5に示すように、組付工程においては、軸受補強部81に軸受91を嵌入して組み付けた後、ステータ20にロータ10を挿入する。ロータシャフト12をケース50の軸受91に挿通することで、ロータシャフト12が軸受91により回転可能に支持される。
【0033】
<閉塞工程>
図6に示すように、閉塞工程においては、キャップ60の内部に流動性を有する樹脂74Aを配置するとともに、ケース50の開口50aをキャップ60によって覆う。このようにしてキャップ60によりケース50の開口50aを覆うことで、支持突部68がステータコア21及び第2コイルエンド34に当接する。このため、第2コイルエンド34によって押し出された樹脂74Aによって、キャップ60の内部に樹脂74A、すなわち第2充填樹脂74が充填される。
【0034】
また、ロータシャフト12が軸受92に挿通されることで、ロータシャフト12が軸受92により回転可能に支持される。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0035】
図1に示すように、ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間に樹脂層73が設けられているので、ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間に空気層が形成されることを抑制できる。このため、通電によって発熱したコイル31からの受熱によって加熱されたステータコア21の熱が、樹脂層73を介してケース50へと伝わり易くなる。
【0036】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間には、外周面21aと内周面50bとの双方に当接する樹脂層73が設けられている。
【0037】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、ステータコア21の外周面21a及びケース50の内周面50bが直に接触しない構成を採用しながらも、回転電機におけるステータ20の冷却性能を向上させることができる。
【0038】
(2)樹脂層73は、粘土状のベース樹脂を含む。
こうした構成によれば、ベース樹脂が粘土状であるため、回転電機を解体する際に、ステータコア21の外周面21a及びケース50の内周面50bから樹脂層73を除去し易くなる。したがって、回転電機の解体性を向上できる。
【0039】
(3)ケース50は、硬質樹脂製のケース本体51を有する。
こうした構成によれば、ケース本体51が硬質樹脂製なので、ケース50を軽量化することができる。
【0040】
(4)ケース50は、ケース本体51よりも硬質の材料により形成された補強部80を有する。
こうした構成によれば、ケース本体51を硬質樹脂製とすることで軽量化を図りながらも、補強部80によりケース50の強度を高めることができる。
【0041】
(5)補強部80は、ケース本体51よりも高い熱伝導性を有するとともに、ケース本体51の内周面のうちステータ20の径方向においてステータ20の外周面21aと重なる位置に設けられている。
【0042】
こうした構成によれば、ステータコア21の熱が、樹脂層73及び補強部80を介してケース本体51へと一層伝わり易くなる。したがって、回転電機におけるステータ20の冷却性能を一層向上させることができる。
【0043】
(6)樹脂層73は、ベース樹脂と、ベース樹脂よりも高い熱伝導性を有するフィラーとを有する。
こうした構成によれば、樹脂層73には、ベース樹脂よりも熱伝導性の高いフィラーが含まれているので、ステータ20の熱が樹脂層73を介してケース50へと伝わり易くなる。したがって、回転電機におけるステータ20の冷却性能を一層向上させることができる。
【0044】
(7)ステータコア21の外周面21aには、軸線方向の全体にわたって延びる複数の溝部28が周方向において互いに間隔をあけて設けられている。
こうした構成によれば、ステータコア21の外周面21aに設けられた複数の溝部28を通じて、ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間に樹脂層73を形成する樹脂71Aが充填されるようになる。したがって、ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間の隙間が小さい場合であっても、外周面21aと内周面50bとの間に樹脂71Aを充填することができる。
【0045】
(8)鉄心片22は、鉄心片22の外周面22aの周方向において間隔をあけて設けられた複数の切欠き29を有する。溝部28は、切欠き29により形成されている。
こうした構成によれば、切欠き29を設けることによって、切欠き29がない鉄心片の外周面の表面積よりも切欠き29が設けられた鉄心片22の外周面22aの表面積を大きくすることができる。このため、ケース50の内周面50bと切欠きがない鉄心片の外周面との間よりも、ケース50の内周面50bと鉄心片22の外周面22aとの間に樹脂をより多く流し込むことができる。このため、鉄心片22の熱が樹脂層73を介してケース50へとより一層伝わり易くなる。したがって、回転電機におけるステータ20の冷却性能を一層向上させることができる。
【0046】
(9)ケース50の内部に流動性を有する樹脂71Aを配置する配置工程と、ケース50の内部にステータ20を挿入することで、ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間に樹脂71Aを充填する充填工程とを備える。
【0047】
こうした方法によれば、ケース50の内部にステータ20を挿入することで、ケース50の内部に配置されていた樹脂71Aが流動してステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間に充填される。このようにして樹脂層73が形成される。したがって、ステータコア21の外周面21aとケース50の内周面50bとの間に樹脂層73を容易に形成することができる。
【0048】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・本実施形態では、鉄心片22の切欠き29が、平面視半円状を有するようにしたが、これに限られない。例えば図7に示すように、切欠き129が、略円状を有するものであってもよい。
【0050】
・切欠き29の形状及び配置は、上記本実施形態に限定されない。
例えば図8に示すように、各鉄心片222は、同一の形状の切欠き224を有する。切欠き224は、半円状の主切欠き部225と、主切欠き部225の両側に設けられ、主切欠き部225よりも浅い副切欠き部226,227とを有する。隣り合う鉄心片222の切欠き224の位相が互いにずれている。詳しくは、一方の鉄心片222の一方の副切欠き部226と、他方の鉄心片222の他方の副切欠き部227とが軸線方向において重なっている。
【0051】
また、図9に示すように、切欠き29に相当する構成を有していない円板状の第1鉄心片322と、複数の切欠き325を有する第2鉄心片323とを交互に積層してもよい。第2鉄心片323には、切欠き325同士の間に位置するとともに第1鉄心片322の外周縁よりも外側に突出する突部326が設けられている。この場合、ステータ320の外周面には、互いに隣り合う突部326と、第1鉄心片322の外周縁とによって溝部328が形成される。
【0052】
・ステータコア21の溝部28を省略してもよい。
・本実施形態では、樹脂層73が、ベース樹脂と、ベース樹脂よりも高い熱伝導性を有するフィラーとを有するようにしたが、フィラーを省略し、ベース樹脂のみによって樹脂層を形成するようにしてもよい。
【0053】
・補強部80の配置は上記実施形態に限定されず、ハウジング40の任意の位置に補強部を配置することができる。
・本実施形態では、補強部80が金属製であったが、例えば補強部が強化繊維プラスチックによって形成されていてもよい。
【0054】
・補強部80を省略してもよい。
・本実施形態では、ハウジング本体が硬質樹脂製であったが、ハウジング本体を金属製にしてもよい。
【0055】
・樹脂層73の形成方法は、上記実施形態において例示した方法に限定されない。例えば、ステータコア21の外周面21aまたはハウジング40の内周面に予めシート状の樹脂層を当接させた状態で、ケース50の内部にステータコア21を挿入するようにしてもよい。この場合であっても、樹脂層が、ステータコア21の外周面21aとハウジング40の内周面との間において、外周面21aと内周面との双方に当接すればよい。
【0056】
<付記>
[付記1]ハウジングと、ステータコア及びコイルを有し、前記ハウジングに収容されるステータと、前記ステータの内部において回転可能に設けられるロータコア及び前記ロータコアを貫通するとともに前記ロータコアと一体に回転するロータシャフトを有するロータと、を備える回転電機であって、前記ステータコアの外周面と前記ハウジングの内周面との間には、前記外周面と前記内周面との双方に当接する樹脂層が設けられている、回転電機。
【0057】
[付記2]前記樹脂層は、粘土状のベース樹脂を含む、[付記1]に記載の回転電機。
[付記3]前記ハウジングは、硬質樹脂製のハウジング本体を有する、[付記1]または[付記2]に記載の回転電機。
【0058】
[付記4]前記ハウジングは、前記ハウジング本体よりも硬質の材料により形成された補強部を有する、[付記3]に記載の回転電機。
[付記5]前記補強部は、前記ハウジング本体よりも高い熱伝導性を有するとともに、前記ハウジング本体の内周面のうち前記ステータの径方向において前記ステータの外周面と重なる位置に設けられている、[付記4]に記載の回転電機。
【0059】
[付記6]前記樹脂層は、ベース樹脂と、前記ベース樹脂よりも高い熱伝導性を有するフィラーと、を有する、[付記1]~[付記5]のいずれか一つに記載の回転電機。
[付記7]前記ステータコアの外周面には、前記ステータコアの軸線方向の全体にわたって延びる複数の溝部が前記ステータコアの周方向において互いに間隔をあけて設けられている、[付記1]~[付記6]のいずれか一つに記載の回転電機。
【0060】
[付記8]前記ステータコアは、複数の鉄心片を積層して構成され、前記鉄心片は、前記鉄心片の外周面の周方向において間隔をあけて設けられた複数の切欠きを有し、前記溝部は、前記切欠きにより形成されている、[付記7]に記載の回転電機。
【0061】
[付記9][付記1]~[付記8]のいずれか一つに記載の回転電機の製造方法であって、前記ハウジングは、開口を有するケースと、前記開口を覆うキャップと、を有し、前記ケースの内部に流動性を有する樹脂を配置する配置工程と、前記ケースの内部に前記ステータを挿入することで、前記ステータコアの外周面と前記ハウジングの内周面との間に前記樹脂を充填する充填工程と、を備える、回転電機の製造方法。
【符号の説明】
【0062】
10…ロータ
10a…中心孔
11…ロータコア
12…ロータシャフト
20,320…ステータ
20a…中心孔
21…ステータコア
21a…外周面
21b…第1端面
21c…第2端面
22,222…鉄心片
22a…外周面
23…ヨーク
24…ティース
25…スロット
28,328…溝部
29,129,224,325…切欠き
31…コイル
32…挿入部
33…第1コイルエンド
34…第2コイルエンド
40…ハウジング
50…ケース
50a…開口
50b…内周面
51…ケース本体
52…ケース周壁
53…底壁
54a…貫通孔
55…筒部
56…環状凹部
57…支持部
58…支持突部
60…キャップ
60a…開口
62…キャップ周壁
63…頂壁
64a…貫通孔
65…筒部
66…環状凹部
68…支持突部
70…充填樹脂
71…第1充填樹脂
71A,74A…樹脂
72…充填部
73…樹脂層
74…第2充填樹脂
80…補強部
81,82…軸受補強部
91,92…軸受
225…主切欠き部
226,227…副切欠き部
326…突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9