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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168166
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20241128BHJP
   F02B 37/007 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F02B37/00 301H
F02B37/00 400C
F02B37/007
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084608
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕二
【テーマコード(参考)】
3G005
【Fターム(参考)】
3G005EA14
3G005EA26
3G005FA54
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制できかつ製造コストの増加を抑制できる過給機を備えた船外機が従来必要とされる。
【解決手段】船外機2は、内燃機関10と、内燃機関10の駆動によって回転するプロペラ24と、プロペラ24を回転可能に支持するロアユニット20と、ロアユニット20に設けられるロア排気路21と、内燃機関10とロア排気路21の間に設けられる過給機ユニット30を有する。過給機ユニット30は、内燃機関10から延出する排気管16に連結される入口34aを備える第1連通路34と、第1連通路34からの排気によって回転する過給機31のタービンと、過給機31からの排気が導入されかつロア排気路21と連結される出口35aを備える第2連通路35と、タービンと連動して回転して内燃機関10に空気を過給する過給機31のコンプレッサを有する。過給機ユニット30は、第1連通路34とタービンと第2連通路35とコンプレッサを一体に有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機であって、
内燃機関と、
前記内燃機関の駆動によって回転するプロペラと、
前記プロペラを回転可能に支持するロアユニットと、
前記内燃機関からの排気を排出可能に前記ロアユニットに設けられるロア排気路と、
前記内燃機関と前記ロア排気路の間に設けられる過給機ユニットを有し、前記過給機ユニットは、
前記内燃機関から延出する排気管に連結される入口を備える第1連通路と、
前記第1連通路からの排気によって回転する過給機のタービンと、
前記過給機からの排気が導入されかつ前記ロア排気路と連結される出口を備える第2連通路と、
前記タービンと連動して回転して前記内燃機関に空気を過給する前記過給機のコンプレッサを一体に有する船外機。
【請求項2】
請求項1に記載の船外機であって、
前記過給機ユニットは、前記ロアユニットの上方に配置され、
前記過給機ユニットの上方に前記内燃機関が配置される船外機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の船外機であって、
前記内燃機関は、気筒がそれぞれ形成されかつV字状に配置された第1バンクと第2バンクを有するV型内燃機関であり、
前記第1バンクと前記第2バンクは、前記内燃機関と前記過給機ユニットが並ぶ方向に対して交差する方向に横並びで配置され、
前記過給機は、前記第1バンクの前記気筒に連結される第1過給機と、前記第2バンクの前記気筒に連結される第2過給機を含み、
前記第1過給機と前記第2過給機は、前記過給機ユニットから前記内燃機関側へ突出しかつ前記第1バンクと前記第2バンクを避けた位置に設けられる船外機。
【請求項4】
請求項3に記載の船外機であって、
前記排気管は、前記第1バンクと前記第2バンクの間に配置され、
前記第1連通路は、前記入口の下流側で前記第1過給機と前記第2過給機に向けて分岐し、
前記第2連通路は、前記出口の上流側で前記第1過給機と前記第2過給機に向けて分岐している船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の外部に取り付けられる船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシングやクルージング等にて使用されるボート等の船舶の外部、例えば船舶後端の外部に取り付けられる船外機が従来提供されている。近年、大型ボートの需要が高まり、船外機の高出力化する需要が高まっている。例えば船外機を複数個取り付けることで高出力化を図ることができる。
【0003】
特許文献1には、複数の気筒が形成された2つのバンクがV字状に並んだ、いわゆる多気筒V型の内燃機関が記載されている。船外機のさらなる高出力化を狙って、例えば多気筒V型で自然吸気の内燃機関に代えて、多気筒V型でターボ過給機を備えた内燃機関を船外機に設ける技術が従来知られている。
【0004】
しかしながらターボ過給機を備えるためには、内燃機関の排気系構造を専用化する必要がある。例えばターボ過給機は、バンク内の複数の気筒から排出された排気が通る排気マニホルドに連結される。ターボ過給機は、水中へ排気するロアユニットの排気路に連結される。そのため排気系構造を中心とする内燃機関の周辺部品を新しく設計する必要がある。これにより船外機の製造コストが増大する。また、ターボ過給機を備えた内燃機関は大型化し、特に2つのバンクが並んだ左右方向に大型化する。そのため複数の船外機を左右横並びで船舶に取り付ける際、取り付け可能な船外機の個数が少なくなる場合がある。船外機の個数が少ないと出力が狙った高出力よりも不足してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-279733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって大型化を抑制できかつ製造コストの増加を抑制できる過給機を備えた船外機が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの特徴によると船外機は、内燃機関を有する。船外機は、内燃機関の駆動によって回転するプロペラを有する。船外機は、プロペラを回転可能に支持するロアユニットを有する。船外機は、内燃機関からの排気を排出可能にロアユニットに設けられるロア排気路を有する。船外機は、内燃機関とロア排気路の間に設けられる過給機ユニットを有する。過給機ユニットは、内燃機関から延出する排気管に連結される入口を備える第1連通路を有する。過給機ユニットは、第1連通路からの排気によって回転する過給機のタービンを有する。過給機ユニットは、過給機からの排気が導入されかつロア排気路と連結される出口を備える第2連通路を有する。過給機ユニットは、タービンと連動して回転して内燃機関に空気を過給する過給機のコンプレッサを有する。過給機ユニットは、第1連通路とタービンと第2連通路とコンプレッサを一体に有する。
【0008】
したがって内燃機関から出た排気は、過給機ユニットの過給機を介してロアユニットのロア排気路から排出される。そのため自然吸気の内燃機関とロア排気路との間に過給機ユニットを介在させて過給機を備えた船外機を設けることができる。そのため従来の自然吸気の内燃機関と従来のロア排気路を利用できる。これにより新たに設計する部品数が少なくなり、船外機の製造コストを抑制できる。しかも過給機ユニットを内燃機関やロアユニットと別体で交換できる。そのため過給機の交換やメンテナンスを容易にできる。
【0009】
しかも内燃機関と過給機ユニットとロアユニットを直列に並べて設けることができる。従来の過給機を備えた内燃機関は、従来の自然吸気の内燃機関よりも幅方向に大きい。従来構造の自然吸気の内燃機関を利用することで、内縁機関と過給機ユニットとロアユニットが直列に並んだ船外機について、直列方向と交差する幅方向の大型化を抑制できる。
【0010】
本開示の他の特徴によると過給機ユニットは、ロアユニットの上方に配置される。過給機ユニットの上方に内燃機関が配置される。したがって内燃機関と過給機ユニットとロアユニットを上下方向に並べて配置することで、上下方向と交差する幅方向において船外機の大型化を抑制できる。また、過給機ユニットをユニット化し、下方でロアユニットと組付け、上方で内燃機関と組付ける。これにより船外機の組付性を向上させることができる。
【0011】
本開示の他の特徴によると内燃機関は、気筒がそれぞれ形成されかつV字状に配置された第1バンクと第2バンクを有するV型内燃機関である。第1バンクと第2バンクは、内燃機関と過給機ユニットが並ぶ方向に対して交差する方向に横並びで配置される。過給機は、第1バンクの気筒に連結される第1過給機と、第2バンクの気筒に連結される第2過給機を含む。第1過給機と第2過給機は、過給機ユニットから内燃機関側へ突出しかつ第1バンクと第2バンクを避けた位置に設けられる。
【0012】
したがって第1過給機と第2過給機を過給機ユニットから内燃機関側へ突出するように設けることができる。これにより第1過給機と第2過給機を除いた分の過給機ユニットを、内燃機関と過給機ユニットが並ぶ方向においてコンパクトに設けることができる。しかも第1過給機と第2過給機は、第1バンクと第2バンクを避けた位置で第1バンクまたは第2バンクに対して横並びで配置される。そのためV型内燃機関のデッドスペースを利用して第1過給機と第2過給機を配置できる。これにより内燃機関と過給機ユニットが並ぶ方向と交差する幅方向において船外機の大型化を抑制できる。
【0013】
本開示の他の特徴によると排気管は、第1バンクと第2バンクの間に配置される。第1連通路は、入口の下流側で第1過給機と第2過給機に向けて分岐している。第2連通路は、出口の上流側で第1過給機と第2過給機に向けて分岐している。したがって第1連通路を、自然吸気のV型内燃機関の排気管に連通し、かつ第1過給機と第2過給機に向けて排気を送るように設けることができる。第2連通路を、第1過給機と第2過給機からの排気をロアユニットのロア排気路へ送るように設けることができる。これにより従来の自然吸気のV型内燃機関と従来のロアユニットを利用して、2つの過給機を備えた船外機を、製造コストを抑制して設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る船外機を後端の外部に取付けた船舶の概略側面図である。
図2】カウルを取り外した船外機の斜視図である。
図3】船外機の側面図である。
図4】カウルを取り外した船外機の上面図である。
図5】船外機の吸排気構造を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の一つの実施形態を図1~5を参照して下記に詳しく説明する。説明中の同じ参照番号は、重複する説明をしないが、同じ機能を有する同じ要素を意味する。図1は、本実施形態に係る船外機2を後端の外部に取り付けられた船舶1の概略側面図である。なお、図中および以下の説明に記載されている前後方向は、船外機2の推進方向を前方と示し、前方の反対方向を後方と示す。上下方向は鉛直上方に向かう方向および下方に向かう方向を示す。左右方向は、前後方向および上下方向を基準にして定めた左右方向を示す。
【0016】
図1~3に示すように船外機2は、動力源としての内燃機関10と、内燃機関10の駆動によって軸回りに回転するプロペラシャフト24aと、プロペラシャフト24aと一体で回転するプロペラ24を有する。内燃機関10は、上方および前後側方および左右側方をカウル3によって覆われる。カウル3の下方には、下方へ延出する箱型のロアユニット20が設けられる。プロペラシャフト24aは、略水平に前後方向に延出してロアユニット20に回転可能に支持される。プロペラ24は、プロペラシャフト24aの後部に設けられる。ロアユニット20の下部は、プロペラ24が水中で回転可能に水面下に進入している。プロペラ24は、プロペラシャフト24aの軸回りに回転することで前進する推進力を生じる。ロアユニット20の前部には、船舶1の後端に船外機2を取り付けるための連結部材4が設けられる。
【0017】
図2,4に示すように内燃機関10は、クランクシャフトを収容したクランクケース18と、クランクケース18に連結された第1バンク11と第2バンク12の2つのバンクを有する。内燃機関10は、第1バンク11と第2バンク12が左右横並びで配置された、いわゆるV型内燃機関である。内燃機関10は、例えば、陸用ディーゼルエンジンを船舶用に改良した6気筒のディーゼルエンジンである(図5参照)。内燃機関10としてガソリンエンジンを用いてもよい。内燃機関10をディーゼルエンジンとすることで、ガソリンエンジンと比較して、燃費及び低回転時の扱い易さ(低回転でもトルクが大きい)を向上できる。
【0018】
図2,4に示すように第1バンク11と第2バンク12は、クランクケース18から前方に向けてY字状に分岐して配置される。左側のバンクが第1バンク11であり、右側のバンクが第2バンク12である。第1バンク11と第2バンク12には、それぞれ3つの気筒13が形成される。船外機2には、船外機2全体を制御する制御装置であるECUが搭載される。ECU41は、CPU、ROM、RAM、タイマ、入出力インターフェース等を有する。各気筒13には、ECUから入力される噴射制御信号に従って各気筒13内の燃焼室に燃料を噴射するインジェクタが設けられる。
【0019】
図2,5に示すように内燃機関10は、吸気を取り込む吸気管14を有する。吸気管14は、自然吸気の内燃機関10に従来設けられているものを利用する。吸気管14は、第1バンク11の気筒13に連通される第1吸気路14aと、第2バンク12の気筒13に連通される第2吸気路14bに分岐する。第1吸気路14aと第2吸気路14bは、それぞれの経路途中にエアフィルタ15を有する。第1吸気路14aは、後述する第1過給機32のコンプレッサ31bを介して吸気マニホルド14cで複数の枝管に分岐する。第2吸気路14bは、後述する第2過給機33のコンプレッサ31bを介して吸気マニホルド14cで複数の枝管に分岐する。吸気マニホルド14cの各枝管は、吸気ポートを介して各気筒13に設けられた燃焼室に連通される。
【0020】
図2~5に示すように内燃機関10は、排気を排出する排気管16を有する。排気管16は、自然吸気の内燃機関10に従来設けられているものを利用する。排気管16は、複数の枝管に分岐した排気マニホルド16aを有する。排気マニホルド16aの各枝管は、第1バンク11または第2バンク12の各気筒13に設けられた燃焼室に連通される。排気マニホルド16aおよび排気マニホルド16aが合流した1つの排気管16は、左右方向において第1バンク11と第2バンクの間に設けられる。排気管16は、下方に向けて延出する。排気管16の下端は、従来構造であるロアユニット20のロア排気路21の上端と連通可能な構造である。排気管16の径方向外周を覆うようにして、排気管16と略同軸の円管状の冷却水通路17が設けられる。
【0021】
図3に示すようにロアユニット20の内部には、上端から下方へ延出するロア排気路21が設けられる。ロア排気路21の排気口21aは、プロペラ24の前方で水中に向けて開口する。ロア排気路21の径方向外周を覆うようにして、ロア排気路21と略同軸の円管状の冷却水通路22が設けられる。冷却水通路22の排水口22aは、排気口21aよりも上流側においてロア排気路21に連通される。ロア排気路21の上端と冷却水通路22の上端は、それぞれ排気管16の下端と冷却水通路17の下端と連通可能な径で設けられる。
【0022】
図3に示すように船外機2は、クランクケース18内の不図示のクランクシャフトの回転動力をプロペラシャフト24aに伝達させる動力伝達部23を有する。動力伝達部23は、上方のクランクケース18から下方のロアユニット20に向けて上下方向に延出する回転軸を有する。ロアユニット20において動力伝達部23には、回転動力を変速して伝達する変速機構19が介在される。変速機構19によって、回転動力の回転方向の順逆、回転動力の伝達の遮断等を切り替えることができる。動力伝達部23の下端には、回転動力の方向を前後方向に延出するプロペラシャフト24aの軸回りの回転に変換する動力方向変換部23aが設けられる。プロペラシャフト24aの前部には、プロペラシャフト24aの回転によって駆動するポンプ25が設けられる。ポンプ25は、冷却水供給路26を介して内燃機関10へ冷却水を汲み上げる。
【0023】
図2~5に示すように上下方向において内燃機関10とロアユニット20の間には、過給機31を備えた過給機ユニット30が設けられる。過給機ユニット30は、ロアユニット20に対して内燃機関10を支持するエンジンベッドとも称される。過給機ユニット30は、矩形箱型のブロック状または矩形箱型のフレームとして設けられる。過給機ユニット30を構成するブロックまたはフレームは、例えばアルミ製である。過給機31は、相互に連結されたタービン31aとコンプレッサ31bを有する。タービン31aは、内燃機関10からの排気によって回転する。コンプレッサ31bは、タービン31aの回転によって空気を圧縮して内燃機関10へ過給する。
【0024】
図4,5に示すように過給機ユニット30は、過給機31として第1バンク11内の各気筒13に連結される第1過給機32と、過給機31として第2バンク12内の各気筒13に連結される第2過給機33を有する。第1過給機32と第2過給機33は、過給機ユニット30の箱型形状に連結され、かつ箱型形状から上方へ突出する。そのため第1過給機32と第2過給機33は、内燃機関10と上下方向にオーバーラップする。第1過給機32は、第1バンク11の後方かつクランクケース18の後方で第1バンク11とクランクケース18を避けた位置に設けられる。第2過給機33は、第2バンク12の後方かつクランクケース18の後方で第2バンク12とクランクケース18を避けた位置に設けられる。
【0025】
図5に示すように第1過給機32のコンプレッサ31bは、第1吸気路14aにおいてエアフィルタ15の下流側かつ吸気マニホルド14cの上流側に設けられる。第2過給機33のコンプレッサ31bは、第2吸気路14bにおいてエアフィルタ15の下流側かつ吸気マニホルド14cの上流側に設けられる。
【0026】
図3~5に示すように過給機ユニット30は、内燃機関10の排気管16とロアユニット20のロア排気路21を連通する第1連通路34と第2連通路35を有する。第1連通路34は、内燃機関10の排気管16と過給機31のタービン31aを連通する。第1連通路34の入口34aは、排気管16の下端に連結される。第1連通路34は、入口34aの下流側で、第1過給機32に向けて延出する第1分岐路34bと、第2過給機33に向けて延出する第2分岐路34cに分岐する。第1分岐路34bと第2分岐路34cは、内燃機関10の下方で略水平に後方に延出して配設される。第1分岐路34bの後端は、上方に向けて延出して第1過給機32のタービン31aに連結される。第1分岐路34bで送られた内燃機関10の排気は、第1過給機32のタービン31a第2分岐路34cの後端は、上方に向けて延出して第2過給機33のタービン31aに連結される。
【0027】
図4,5に示すように内燃機関10の排気管16から過給機ユニット30の第1連通路34へ送られた排気は、第1過給機32と第2過給機33それぞれに向けて送られる。第1連通路34の第1分岐路34bを通る排気は、第1過給機32のタービン31aへ送られてタービン31aを回転させる。これにより第1過給機32のコンプレッサ31bで圧縮した吸気が第1バンク11の各気筒13へ送られる。第1連通路34の第2分岐路34cを通る排気は、第2過給機33のタービン31aへ送られてタービン31aを回転させる。これにより第2過給機33のコンプレッサ31bで圧縮した吸気が第2バンク12の各気筒13へ送られる。
【0028】
図3~5に示すように第2連通路35は、過給機31のタービン31aとロアユニット20のロア排気路21を連通する。第2連通路35の出口35aは、ロア排気路21の上端に連結される。第2連通路35は、出口35aの上流側で、第1過給機32に向けて延出する第1分岐路35bと、第2過給機33に向けて延出する第2分岐路35cに分岐する。第1分岐路35bと第2分岐路35cは、クランクケース18の後方で略水平に左右方向に延出する。第1過給機32のタービン31aから第1分岐路35bへ導入された排気と、第2過給機33のタービン31aから第2分岐路35cへ導入された排気は、第2連通路35の途中経路で合流して出口35aからロア排気路21へ送られる。
【0029】
図3~5に示すように第1連通路34の径方向外周を覆うようにして、第1連通路34と略同軸の円管状の冷却水通路36が設けられる。第2連通路35の径方向外周を覆うようにして、第2連通路35と略同軸の円管状の冷却水通路36が設けられる。第1連通路34側の冷却水通路36の上流端は、内燃機関10の冷却水通路17の下端と連結される。第2連通路35側の冷却水通路36の下流端は、ロアユニット20の冷却水通路22の上端と連結される。これによりポンプ25から冷却水供給路26を介して内燃機関10に送られた冷却水は、内燃機関10の冷却水通路17、過給機ユニット30の冷却水通路36、ロアユニット20の冷却水通路22をそれぞれ通る。この時、排気管16、第1連通路34、第2連通路35、ロア排気路21を通る排気は、径方向外方の冷却水によって冷却されながら排気口21aに向けて送られる。排水口22aに達した冷却水は、ロア排気路21へ排出されて排気と混合させる。混合された冷却水と排気は、排気口21aから一緒に排出される。
【0030】
図3,4に示すように内燃機関10とロアユニット20の間に過給機ユニット30を介在させる。これによりロア排気路21は、排気管16よりも後方に位置する。そのため、従来の内燃機関10の排気管16と従来のロアユニット20のロア排気路21を上下方向に並べて直接連結させる構造よりも、ロア排気路21の内燃機関10に対する相対位置が後方である。あるいは従来の内燃機関10は、第1バンク11、第2バンク12,排気管16等をクランクケース18よりも後方へ配置される場合がある。換言すると本実施形態の内燃機関10と前後を逆にした姿勢で配置される場合がある。この場合の従来構造と比較して、本実施形態の過給機ユニット30を有する船外機2は、第1バンク11、第2バンク12、および排気管16のロア排気路21に対する相対位置がより前方である。
【0031】
上述するように船外機2は、図2,3,5に示すように内燃機関10を有する。船外機2は、内燃機関10の駆動によって回転するプロペラ24を有する。船外機2は、プロペラ24を回転可能に支持するロアユニット20を有する。船外機2は、内燃機関10からの排気を排出可能にロアユニット20に設けられるロア排気路21を有する。船外機2は、内燃機関10とロア排気路21の間に設けられる過給機ユニット30を有する。過給機ユニット30は、内燃機関10から延出する排気管16に連結される入口34aを備える第1連通路34を有する。過給機ユニット30は、第1連通路34からの排気によって回転する過給機31のタービン31aを有する。過給機ユニット30は、過給機31からの排気が導入されかつロア排気路21と連結される出口35aを備える第2連通路35を有する。過給機ユニット30は、タービン31aと連動して回転して内燃機関10に空気を過給する過給機31のコンプレッサ31bを有する。過給機ユニット30は、第1連通路34とタービン31aと第2連通路35とコンプレッサ31bを一体に有する。
【0032】
したがって内燃機関10から出た排気は、過給機ユニット30の過給機31を介してロアユニット20のロア排気路21から排出される。そのため自然吸気の内燃機関10とロア排気路21との間に過給機ユニット30を介在させて過給機31を備えた船外機2を設けることができる。そのため従来の自然吸気の内燃機関10と従来のロア排気路21を利用できる。これにより新たに設計する部品数が少なくなり、船外機2の製造コストを抑制できる。しかも過給機ユニット30を内燃機関10やロアユニット20と別体で交換できる。そのため過給機31の交換やメンテナンスを容易にできる。
【0033】
しかも内燃機関10と過給機ユニット30とロアユニット20を直列に並べて設けることができる。従来の過給機を備えた内燃機関は、従来の自然吸気の内燃機関よりも幅方向に大きい。従来構造の自然吸気の内燃機関10を利用することで、内縁機関10と過給機ユニット30とロアユニット20が直列に並んだ船外機2について、直列方向と交差する幅方向の大型化を抑制できる。
【0034】
図2,3に示すように過給機ユニット30は、ロアユニット20の上方に配置される。過給機ユニット30の上方に内燃機関10が配置される。したがって内燃機関10と過給機ユニット30とロアユニット20を上下方向に並べて配置することで、上下方向と交差する幅方向において船外機2の大型化を抑制できる。また、過給機ユニット30をユニット化し、下方でロアユニット20と組付け、上方で内燃機関10と組付ける。これにより船外機2の組付性を向上させることができる。
【0035】
図2,4に示すように内燃機関10は、気筒13がそれぞれ形成されかつV字状に配置された第1バンク11と第2バンク12を有するV型内燃機関である。第1バンク11と第2バンク12は、内燃機関10と過給機ユニット30が並ぶ方向に対して交差する方向に横並びで配置される。過給機31は、第1バンク11の気筒13に連結される第1過給機32と、第2バンク12の気筒13に連結される第2過給機33を含む。第1過給機32と第2過給機33は、過給機ユニット30から内燃機関10側へ突出しかつ第1バンク11と第2バンク12を避けた位置に設けられる。
【0036】
したがって第1過給機32と第2過給機33を過給機ユニット30から内燃機関10側へ突出するように設けることができる。これにより第1過給機32と第2過給機33を除いた分の過給機ユニット30を、内燃機関10と過給機ユニット30が並ぶ方向においてコンパクトに設けることができる。しかも第1過給機32と第2過給機33は、第1バンク11と第2バンク12を避けた位置で第1バンク11または第2バンク12に対して横並びで配置される。そのためV型内燃機関10のデッドスペースを利用して第1過給機32と第2過給機33を配置できる。これにより内燃機関10と過給機ユニット30が並ぶ方向と交差する幅方向において船外機2の大型化を抑制できる。
【0037】
図4,5に示すように排気管16は、第1バンク11と第2バンク12の間に配置される。第1連通路34は、入口34aの下流側で第1過給機32と第2過給機33に向けて分岐している。第2連通路35は、出口35aの上流側で第1過給機32と第2過給機33に向けて分岐している。したがって第1連通路34を、自然吸気のV型内燃機関10の排気管16に連通し、かつ第1過給機32と第2過給機33に向けて排気を送るように設けることができる。第2連通路35を、第1過給機32と第2過給機33からの排気をロアユニット20のロア排気路21へ送るように設けることができる。これにより従来の自然吸気のV型内燃機関10と従来のロアユニット20を利用して、2つの過給機31を備えた船外機2を、製造コストを抑制して設けることができる。
【0038】
以上説明した本実施形態の船外機2には様々な変更を加えることができる。船舶1の後端外部に取り付ける船外機2を例示した。船外機2の取付位置はこれに限定されず、例えば船舶の左右側端外部としても良い。例えば船外機2の一部が船舶1の内側に配置されていても良い。
【0039】
内燃機関10と過給機ユニット30とロアユニット20を上下方向に並べる構成を例示した。これに代えて、例えば内燃機関10と過給機ユニット30とロアユニット20を前後方向に並べても良い。この場合、排気管16とロア排気路21は前後方向に延出する。内燃機関10と過給機31は、前後方向にオーバーラップするように配置される。この場合でも船外機2が左右方向に大型化することを抑制できる。
【0040】
6気筒のディーゼルエンジンのV型内燃機関10を例示した。これに代えて、例えば4気筒、8気筒等としても良い。例えば、各気筒が1列に配置された内燃機関であっても良い。例えば内燃機関10をガソリンエンジンとしても良い。エアフィルタ15を第1吸気路14aと第2吸気路14bの両方に設ける構成を例示した。これに代えて、第1吸気路14aと第2吸気路14bに分岐するよりも上流側の吸気管14に1つのエアフィルタ15を設けても良い。例えば第1吸気路14aとしての吸気管と第2吸気路14bとしての吸気管の2つの吸気管が設けられる構成であっても良い。回転軸で動力を伝達する動力伝達部23を例示した。これに代えて、例えばベルトとプーリによってクランクシャフトからプロペラシャフト24aへ動力を伝達しても良い。
【0041】
ブロック状の過給機ユニット30を例示した。これに代えて、例えば過給機ユニット30をフレーム状とし、フレーム内に第1連通路34、第2連通路35等が配設される構成であっても良い。過給機ユニット30と内燃機関10の連結構造、過給機ユニット30とロアユニット20の連結構造は、例えばねじ締めによる連結構造等を適宜選択して良い。
【符号の説明】
【0042】
1…船舶
2…船外機
3…カウル
4…連結部材
10…内燃機関(V型内燃機関)
11…第1バンク
12…第2バンク
13…気筒
14…吸気管、14a…第1吸気路、14b…第2吸気路、14c…吸気マニホルド
15…エアフィルタ
16…排気管、16a…排気マニホルド
17…冷却水通路
18…クランクケース
19…変速機構
20…ロアユニット
21…ロア排気路、21a…排気口
22…冷却水通路、22a…排水口
23…動力伝達部、23a…動力方向変換部
24…プロペラ、24a…プロペラシャフト
25…ポンプ
26…冷却水供給路
30…過給機ユニット(エンジンベッド)
31…過給機、31a…タービン、31b…コンプレッサ
32…第1過給機
33…第2過給機
34…第1連通路、34a…入口、34b…第1分岐路、34c…第2分岐路
35…第2連通路、35a…出口、35b…第1分岐路、35c…第2分岐路
36…冷却水通路
図1
図2
図3
図4
図5