(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168171
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】パッチアンテナ又は給電線路の取り付け部品
(51)【国際特許分類】
B64G 1/66 20060101AFI20241128BHJP
B64G 1/22 20060101ALI20241128BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
B64G1/66 C
B64G1/22
H01Q1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084617
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】522343980
【氏名又は名称】黒瀬 豊敏
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 豊敏
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA09
5J047AB13
5J047BG10
(57)【要約】
【課題】人工衛星に搭載する大型の平面アンテナの環境条件に対応して、十分な強度と耐久性を有する方法で、かつ簡便で作業時間の短い方法で、その平面アンテナに搭載するパッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を固定する技術を提供する。
【解決手段】パッチアンテナ9cとアンテナ支持構造11bとを貫通して穴をあけ、折り曲げ型取り付け部品22の端部をその穴に通し、差し込んだ側の反対側に突出した折り曲げ型取り付け部品22の端部を変形させ、折り曲げ型取り付け部品22とアンテナ支持構造11bとが分離できないようにすることで、パッチアンテナ9c、給電線路10、又は背面給電線路12をアンテナ支持構造11bに固定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星の大型の平面アンテナに搭載する、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路をアンテナ支持構造に取り付けるための取り付け部品であって、前記パッチアンテナは前記平面アンテナを構成するアンテナ素子部品であり、前記給電線路は複数の前記パッチアンテナを電気的に接続する部品であり、前記背面給電線路は複数の前記パッチアンテナが前記給電線路により電気的に接続されたサブアレイアンテナと電子回路を搭載する電気箱とを電気的に接続する部品であり、
前記取り付け部品が、前記パッチアンテナと前記アンテナ支持構造とを貫通し、又は前記給電線路と前記アンテナ支持構造とを貫通し、又は前記背面給電線路と前記アンテナ支持構造とを貫通し、貫通した前記取り付け部品の端部を変形させて前記取り付け部品が抜けないようにすることで、前記パッチアンテナ、前記給電線路、又は前記背面給電線路を、前記アンテナ支持構造に固定することを特徴とする。
【請求項2】
前記取り付け部品はリベット形状で、金属又は樹脂を材料に用いることを特徴とする、請求項1に記載の前記取り付け部品。
【請求項3】
前記取り付け部品はコの字型の形状で、金属又は樹脂を材料に用いることを特徴とする、請求項1に記載の前記取り付け部品。
【請求項4】
前記給電線路、又は前記背面給電線路を、前記アンテナ支持構造との間に挟み込むように支持する給電線路固定部品であって、
前記給電線路固定部品は、請求項1に記載の取り付け部品を用いて、前記アンテナ支持構造に固定することを特徴とする。
【請求項5】
前記給電線路固定部品は、電気的に不導体で、電波の透過性の高い材料を用い、膜状若しくはメッシュ状であることを特徴とする、請求項4に記載の給電線路固定部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造に取り付けるための部品に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の周回衛星軌道に、大型のアンテナを有する人工衛星を配置することで、これまでにない様々なサービスを提供できる。
【0003】
例えば、特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2には大型の平面アンテナを搭載した人工衛星の例として、宇宙太陽光発電衛星、警戒監視レーダ衛星、及び降水レーダ衛星、並びに、これらの人工衛星に搭載する大型フェーズドアレイアンテナの関連技術が示されている。
【0004】
特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2に示される大型の平面アンテナを有する人工衛星を実現するためには、搭載する大型の平面アンテナの軽量化が重要であり、特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2には、軽量で大型の平面アンテナの構造や製造に関する技術、及びその開発状況と課題が示されている。
【0005】
特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2に示される大型の平面アンテナは、アンテナ素子部品に、シンプルで軽量なパッチアンテナを採用している。
【0006】
このパッチアンテナを複数個、給電線路を用いて電気的に接続して、サブアレイアンテナを構成している。
【0007】
各サブアレイアンテナは、給電線路(以降、サブアレイアンテナと電気箱を接続する給電線路は、背面給電線路と称す)を用いて電子部品を搭載する電気箱に接続される。
電気箱は、サブアレイアンテナごとに、電波の送信、又は受信を行う。
【0008】
このサブアレイアンテナを、多数平面状に並べて大型の平面アンテナを構成する。
大型の平面アンテナを構成する各サブアレイアンテナの位相を適当に制御することにより、大型の平面アンテナは、フェーズドアレイアンテナとして機能する。
【0009】
パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路は、三角形で膜状のアンテナ支持構造に、それぞれ接着剤を用いて貼りつけられ、アンテナユニットを構成する。
【0010】
この三角形状のアンテナユニットは、各頂点に一定の力を作用させ、アンテナユニットが平面状に張られた状態でアンテナパネル構造に取り付けられ、アンテナユニットに要求される平面度を維持する。
【0011】
パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路は、接着剤を用いてアンテナ支持構造に貼りつけられる。
この接着剤は、平面アンテナが曝される温度環境において、十分な強度と耐久性を有したものである必要があり、並びに、多数のパッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路をアンテナ支持構造に貼りつける作業は、簡便で効率の良い作業が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】HTV-X搭載軽量平面アンテナの開発状況(第64回宇宙科学技術連合講演会講演集、JSASS-2020-4400―3C02)
【0014】
【非特許文献2】宇宙大型アレイアンテナとその応用(宇宙太陽発電学会論文誌、ISSN:2432-1060)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2に示される大型の平面アンテナの構造、及び製造技術に関しては、以下の問題がある。
(1)非特許文献2に示されるように、地上高1万kmの衛星軌道に配置する人工衛星に搭載する平面アンテナは、最低温度がマイナス120℃以下になることが予想され、又は静止軌道に配置する人工衛星に搭載する平面アンテナは、最低温度がマイナス160℃以下になることが予想され、それらの温度環境下においてパッチアンテナ、給電線路、及び背面給電線路を、必要な強度と耐久性を有してアンテナ支持構造に固定できる接着剤がない。
(2)パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、接着剤によりアンテナ支持構造に貼りつける作業は、接着剤の塗布作業に手間がかかり、又接着剤が硬化するための待ち時間が発生するため、多量のパッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を貼りつけ必要がある大型の平面アンテナの組立作業は、効率が悪くなる。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、人工衛星に搭載する大型の平面アンテナが曝される温度環境において、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、必要な強度と耐久性を有して、効率的な作業により、確実に固定することができる部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明にかかる人工衛星の大型の平面アンテナに搭載する、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路をアンテナ支持構造に取り付けるための取り付け部品であって、前記パッチアンテナは前記平面アンテナを構成するアンテナ素子部品であり、前記給電線路は複数の前記パッチアンテナを電気的に接続する部品であり、前記背面給電線路は複数の前記パッチアンテナが前記給電線路により電気的に接続されたサブアレイアンテナと電子回路を搭載する電気箱とを接続する部品であり、
前記取り付け部品が、前記パッチアンテナと前記アンテナ支持構造とを貫通し、又は前記給電線路と前記アンテナ支持構造とを貫通し、又は前記背面給電線路と前記アンテナ支持構造とを貫通し、貫通した前記取り付け部品の端部を変形させて前記取り付け部品が抜けないようにすることで、前記パッチアンテナ、前記給電線路、又は前記背面給電線路を前記アンテナ支持構造に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路をアンテナ支持構造に取り付けるために、非特許文献1及び非特許文献2に示される接着剤を使用せずに、人工衛星に搭載する平面アンテナが曝される環境条件に対して十分な強度と耐久性を有する材料を用いた取り付け部品を用いて、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造に固定することができる。
【0019】
本発明によれば、非特許文献1、及び非特許文献2に示される、パッチアンテナ、前記給電線路、又は前記背面給電線路を、接着剤を用いてアンテナ支持構造に貼りつけて固定する作業と比較して、作業を簡素化、高速化して、作業工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
平面アンテナのアンテナ素子部品には、軽量、小型、及びシンプルな構造のパッチアンテナを用いる。
【0022】
給電線路は、複数のパッチアンテナを電気的に接続する部品であり、この給電線路により電気的に接続された複数のパッチアンテナはサブアレイアンテナを構成し、背面給電線路はこのサブアレイアンテナと電子部品が搭載される電気箱を電気的に接続する部品である。
【0023】
パッチアンテナ、給電線路、及び背面給電線路の構造及び材料は同じで、誘電体を挟んで、アンテナ支持構造に接する面に地板の役割を担う銅箔(グラウンド導体)、及び反対の面に信号電流が流れる銅箔を有する。
【0024】
パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を取り付けるアンテナ支持構造は、CFRP等の軽量で薄い膜状の材料を用い、平面アンテナに要求される平面度を得るように張力を作用させた状態で、アンテナパネル構造に取り付けられる。
【0025】
以下に、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造に取り付けるための3種類の取り付け部品を示す。
(1)リベット型取り付け部品
(2)折り曲げ型取り付け部品
(3)給電線路固定部品
【0026】
<リベット型取り付け部品>
リベット型取り付け部品は、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造に取り付ける際に用いられる。
【0027】
アンテナ支持構造、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路に、リベット型取り付け部品を取り付けるための穴を個別に加工する。
又は、パッチアンテナ、給電線路、若しくは背面給電線路を、アンテナ支持構造の取り付け位置に配置して、その状態でリベット型取り付け部品を取り付けるための穴を加工する。
【0028】
パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造の取り付け位置に配置し、リベット型取り付け部品を取り付けるための穴に、平面アンテナの温度環境において必要な強度と耐久性を有する、金属製、又は樹脂製のリベット型取り付け部品を差し込み、差し込んだ側の反対側に突出したリベット型取り付け部品の端部を、穴の径よりも太くなるよう変形、若しくは折り曲げ変形させて、リベット型取り付け部品が抜けないようにすることで、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造に固定する。
【0029】
リベット型取り付け部品を、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路の信号電流が流れる導体に接触しない位置に取り付ける場合は、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路の電気的な特性に影響(リベット型取り付け部品の材料のインピーダンス特性への影響等)がない範囲であれば、リベット型取り付け部品の材料や取り付け位置に制約はない。
【0030】
リベット型取り付け部品を取り付けることにより、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路の、信号電流が流れる導体部分が、アンテナの地板、又は電気的に地板と同等であるアンテナ支持構造と電気的に導通する場合は、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路の、信号電流が流れる導体の電圧が常にゼロとなる位置に、リベット型取り付け部品を取り付ける必要がある。
【0031】
<折り曲げ型取り付け部品(その1)>
折り曲げ型取り付け部品は、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造に取り付ける際に用いられる。
【0032】
アンテナ支持構造、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路に、コの字形状の折り曲げ型取り付け部品を取り付けるための穴を個別に加工する。
又は、パッチアンテナ、給電線路、若しくは背面給電線路を、アンテナ支持構造の取り付け位置に配置して、その状態でコの字形状の折り曲げ型取り付け部品を取り付けるための穴を加工する。
【0033】
パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造の取り付け位置に配置し、折り曲げ型取り付け部品を取り付けるための穴に、平面アンテナの温度環境において必要な強度と耐久性を有する、金属製、又は樹脂製の折り曲げ型取り付け部品を差し込み、差し込んだ側の反対側に突出した折り曲げ型取り付け部品の端部を折り曲げ変形させて、折り曲げ型取り付け部品が抜けないようにすることで、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路をアンテナ支持構造に固定する。
【0034】
折り曲げ型取り付け部品は、固定する際に端部を折り曲げ加工するため、変形加工が容易な金属材料が適しているが、折り曲げ加工に対応する樹脂等の材料を用いることもでき、又、熱可塑性の樹脂を用いて、折り曲げ型取り付け部品の端部を、取り付けのための穴の径よりも太くなるように熱変形させることにより、折り曲げ型取り付け部品が抜けないようにすることで、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路をアンテナ支持構造に固定することもできる。
【0035】
<折り曲げ型取り付け部品(その2)>
アンテナ支持構造、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路に、折り曲げ型取り付け部品を取り付けるための穴を加工せずに、アンテナ支持構造、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路に、折り曲げ型取り付け部品の鋭利な端部を押し当てて貫通させ、差し込んだ側の反対側に突出した折り曲げ型取り付け部品の端部を折り曲げ変形、又は熱変形させて、折り曲げ型取り付け部品が抜けないようにすることで、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路をアンテナ支持構造に固定する方法も採用できる。
【0036】
前述の、組み立て前の穴加工を行わずに折り曲げ型取り付け部品を直接貫通させる方法は、取り付け作業工程が単純で、作業時間も短い。
【0037】
折り曲げ型取り付け部品を用いた、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路のアンテナ支持構造への取り付け方法は、一個の折り曲げ型取り付け部品を取り付けることにより二カ所を拘束することができるため、一個の折り曲げ型取り付け部品で、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路が回転方向にずれることを防止でき、リベット型取り付け部品を用いた場合と比較して、部品点数を削減、軽量化することができ、並びに、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路の取り付け作業時間を短縮できる。
【0038】
折り曲げ型取り付け部品を取り付けることにより、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路の各信号電流が流れる導体部分が、アンテナの地板、又は地板と電気的に同等のアンテナ支持構造と電気的に導通しない場合は、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路の、電気的な特性に影響(折り曲げ型取り付け部品の材料のインピーダンス特性への影響等)がない範囲であれば折り曲げ型取り付け部品の材料や取り付け位置に制約はない。
【0039】
折り曲げ型取り付け部品を取り付けることにより、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路の各信号電流が流れる導体部分が、アンテナの地板、又は地板と電気的に同等のアンテナ支持構造と電気的に導通する場合は、パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路の、信号電流が流れる導体の電圧が常にゼロとなる位置に、折り曲げ型取り付け部品を取り付ける必要がある。
【0040】
<給電線路固定部品>
給電線路固定部品は、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造に取り付ける際に用いられる。
【0041】
給電線路固定部品は、平面アンテナの温度環境下において、必要な強度と耐久性を有し、電気的に不導体で、電波の透過性が高い、膜状又はメッシュ状の材料を用いる。
【0042】
給電線路、又は背面給電線路を覆うように給電線路固定部品を配置し、その給電線路固定部品を、リベット型取り付け部品、又は折り曲げ型取り付け部品を用いて、アンテナ支持構造に固定することで、給電線路、又は背面給電線路を、アンテナ支持構造に固定する。
【0043】
前述のパッチアンテナを固定するために用いる、リベット型取り付け部品、又は折り曲げ型取り付け部品を用いて、パッチアンテナと同時に給電線路固定部品を取り付けることもできる。
【0044】
このパッチアンテナを固定するために用いるリベット型取り付け部品、又は折り曲げ型取り付け部品を用いて、パッチアンテナと同時に給電線路固定部品を取り付ける方法は、給電線路固定部品の固定に専用のリベット型取り付け部品、又は折り曲げ型取り付け部品を用いる方法と比較して、取り付けのための部品点数を削減し、取り付け作業工数を削減する。
【0045】
給電線路固定部品とアンテナ支持構造に用いる材料の、線膨張係数の差と温度環境に起因して発生する、アンテナユニットの反りや凹凸状の変形の発生を防ぐため、給電線路固定部品の剛性は必要最低限度の設計とする。
【実施例0046】
パッチアンテナ、給電線路、又は背面給電線路を、リベット型取り付け部品、又は折り曲げ型取り付け部品を用いてアンテナ支持構造に取り付ける実施例、及び、給電線路固定部品を用いて給電線路をアンテナ支持構造に取り付ける実施例を示す。
【0047】
背面給電線路の取り付け実施例は、給電線路の取り付け実施例と同じであり、説明を割愛する。
【0048】
図1に示す大型平面アンテナを有する人工衛星例概要
図1は、特許文献1、非特許文献1、及び非特許文献2に示される技術を用いた、大型の平面アンテナ2を搭載する人工衛星の例を示す
【0049】
平面アンテナ2は、複数枚の平面状に並べたアンテナパネル3(
図1においては16枚)により構成し、アンテナパネル3は1個のアンテナパネル構造5と、複数の単体のアンテナユニット6(
図1においては48枚)と、電子部品を搭載する複数の電機箱7(
図1においては12個)を有する。
【0050】
図2に示すように、単体のアンテナユニット6aは、直角二等辺三角形状で薄い膜状の1枚のアンテナ支持構造11に、複数のサブアレイアンテナ8(
図2においては25個)が取り付けられており、個々のサブアレイアンテナ8は複数のパッチアンテナ9(
図2においては16枚)が給電線路10により互いに電気的に接続されており、そのサブアレイアンテナ8は、アンテナ支持構造11のサブアレイアンテナ8を取り付ける面の反対側の面に取り付ける背面給電線路12を介して、各々電気箱7aに電気的に接続されている。
【0051】
なお、背面給電線路12は、同軸ケーブルなどの一般的な高周波信号伝送用線材部品を用いることも可能である。
【0052】
図3に、パッチアンテナ9aを、アンテナ支持構造11aに取り付けるリベット型取り付け部品14を示す。
【0053】
パッチアンテナ9aは3層構造で、誘電体16を挟んで、アンテナ支持構造11aに接する面に地板の役割を担う銅箔(地板)17、及び反対の面に信号電流が流れる銅箔(アンテナ、給電線路)15を有している。
【0054】
パッチアンテナ9a、給電線路10a、及び
図2に示す背面給電線路12の断面構造及び材料は、構造の単純化、製造の合理化、軽量化、及びコストダウンのために共通化している。
【0055】
パッチアンテナ9a、給電線路10a、及び
図2に示す背面給電線路12は、各々銅箔(地板)17側の面がアンテナ支持構造11aに接するように取り付けられる。
【0056】
パッチアンテナ9aを、リベット型取り付け部品14を用いて取り付ける方法は、パッチアンテナ9aとアンテナ支持構造11aを貫通する穴をあけ、リベット型取り付け部品14を前記穴に通し、差し込んだ側の反対側に突出したリベット型取り付け部品14の端部が穴の径よりも太くなるよう変形させ、あるいは折り曲げ変形させて、リベット型取り付け部品14が抜けないようにすることで、パッチアンテナ9aをアンテナ支持構造11aに固定する。
【0057】
リベット型取り付け部品14の端部にねじ部を設けてナットを用いる、又は、Eリングなどのリベット型取り付け部品14を固定するための部品を用いて、リベット型取り付け部品14が抜けないようにすることで、パッチアンテナ9aをアンテナ支持構造11aに固定する方法も選択できる。
【0058】
図3に示す1個のリベット型取り付け部品14を用いてパッチアンテナ9aをアンテナ支持構造11aに固定する方法は、1個のリベット型取り付け部品14により十分な強度が得られる場合、かつ温度や振動などの環境条件によるパッチアンテナ9aの回転方向のずれが問題とならない場合に採用できる。
【0059】
リベット型取り付け部品14の材料には、平面アンテナが曝される環境下において十分な強度と耐久性を有する金属や樹脂を用いる。
【0060】
銅箔(アンテナ、給電線路)15が、リベット型取り付け部品14を介して銅箔(地板)17、又はアンテナ支持構造11aと電気的に導通する場合は、信号電流が流れる銅箔(アンテナ、給電線路)15の電圧が常にゼロとなる位置にリベット型取り付け部品14を取り付ける必要がある。
【0061】
リベット型取り付け部品14に電気的に絶縁性の材料を用いる場合、若しくは電気的に導通のある材料を用いる場合でも、電気的に導通のない材料を挟み込むなどの対策を講じることで、銅箔(アンテナ、給電線路)15が銅箔(地板)17、及びアンテナ支持構造11aと電気的に絶縁されている場合は、アンテナ特性に影響(リベット型取り付け部品14を取り付けるための穴のアンテナの電気的な特性への影響等)が無い範囲において、リベット型取り付け部品14の材料と取り付け位置に制約はない。
【0062】
図4に、パッチアンテナ9bが回転方向にずれることを防止する、パッチアンテナ9bを強固に取り付ける、又はパッチアンテナ9bの反り変形を防止することを目的に、一個のパッチアンテナ9bの固定において複数個用いるリベット型取り付け部品14aを示す。
【0063】
なお、
図4に示す4つのパッチアンテナ9bの取り付け方法には、リベット型取り付け部品14aをそれぞれ2個用いているが、2個以上としても良い。
【0064】
パッチアンテナを取り付ける複数のリベット型取り付け部品(1)18は、信号電流が流れる銅箔15aの、中央部の電圧が常にゼロとなる位置に2個のリベット型取り付け部品14aを配置するが、アンテナ特性に影響(リベット型取り付け部品14aを取り付けるための穴のアンテナの電気的な特性への影響等)が無い範囲において、リベット型取り付け部品14aの材料に制約はない。
【0065】
パッチアンテナを取り付ける複数のリベット型取り付け部品(2)19は、リベット型取り付け部品14aに電気的に導通の無い材料を用いる場合、又はリベット型取り付け部品14aが電気的に導通のある材料を用いる場合でも、電気的に絶縁性の材料を挟み込むなどの対策を講じることで、銅箔15aが
図3に示す銅箔(地板)17、及び
図3に示すアンテナ支持構造11aと電気的に絶縁されている場合の、リベット型取り付け部品14aの取り付け方法を示す。
【0066】
アンテナ特性に影響(リベット型取り付け部品14aを取り付けるための穴のアンテナの電気的な特性への影響等)が無い範囲において、信号電流が流れる銅箔15aの中央部の電圧が常にゼロの位置以外にも、リベット型取り付け部品14aを配置することができる。
【0067】
パッチアンテナを取り付ける複数のリベット型取り付け部品(3)20、及びパッチアンテナを取り付ける複数のリベット型取り付け部品(4)21においては、2個のリベット型取り付け部品14aは、銅箔15aに接触しない位置に取り付けられており、アンテナ特性に影響(リベット型取り付け部品14aの材料がアンテナ特性に与える影響等)が無い範囲において、リベット型取り付け部品14aの取り付け位置と材料に制約はない。
【0068】
図5に、パッチアンテナ9cをアンテナ支持構造11bに取り付ける、折り曲げ型取り付け部品22を示す。
【0069】
パッチアンテナ9cを、折り曲げ型取り付け部品22を用いてアンテナ支持構造11bに取り付けるためには、パッチアンテナ9cとアンテナ支持構造11bを貫通する穴をあけ、折り曲げ型取り付け部品22を穴に通し、差し込んだ側の反対側に突出した折り曲げ型取り付け部品22の端部を折り曲げ変形させて、折り曲げ型取り付け部品22が抜けないようにすることで、パッチアンテナ9cをアンテナ支持構造11bに固定する。
【0070】
作業の簡素化と作業時間の短縮を目的に、鋭利な端部形状を有する折り曲げ型取り付け部品22を用いて、取り付け位置に配置した折り曲げ型取り付け部品22を取り付けるための穴を有しないパッチアンテナ9cとアンテナ支持構造11bを、同時に折り曲げ型取り付け部品22の鋭利な端部を貫通させて、折り曲げ型取り付け部品22を取り付ける方法も選択できる。
【0071】
折り曲げ型取り付け部品22は、一個でパッチアンテナ9cとアンテナ支持構造11bとを2カ所拘束するため、一個の折り曲げ型取り付け部品22によりパッチアンテナ9cが回転方向にずれることを防止できる。
【0072】
折り曲げ型取り付け部品22の材料は、端部を折り曲げ加工するため金属材料が適するが、折り曲げ加工に対応する樹脂材料、又は、金属材料と樹脂材料を組み合わせた塑性変形する材料を用いても良い。
【0073】
折り曲げ型取り付け部品22のパッチアンテナ9cとアンテナ支持構造11bを貫通して突出した端部を、取り付けのための穴径よりも太く変形させて抜けなくすることで、パッチアンテナ9cをアンテナ支持構造11bに固定することもできる。
【0074】
折り曲げ型取り付け部品22を取り付けることにより、銅箔15bが、銅箔17a、又はアンテナ支持構造11bと電気的に導通する場合は、信号電流が流れる銅箔15bの電圧がゼロとなる位置に、折り曲げ型取り付け部品22を取り付ける必要がある。
【0075】
折り曲げ型取り付け部品22に電気的に絶縁性の材料を用いる場合、若しくは電気的に導通のある材料を用いる場合でも、電気的に絶縁性の材料を挟み込むなどの対策を講じることで、銅箔15bが、銅箔17a、及びアンテナ支持構造11bと電気的に絶縁されている場合は、アンテナ特性に影響(折り曲げ型取り付け部品22の材料や取り付けるための穴のアンテナの電気的な特性への影響等)が無い範囲において、折り曲げ型取り付け部品22の材料や取り付け位置に制約はない。
【0076】
図6は、パッチアンテナ9dの各固定方法に対応する、折り曲げ型取り付け部品22aを示す。
【0077】
パッチアンテナを取り付ける複数の折り曲げ型取り付け部品(1)23とパッチアンテナを取り付ける複数の折り曲げ型取り付け部品(2)24においては、パッチアンテナ9dの外周部に2個の折り曲げ型取り付け部品22aを用いて取り付けている。
【0078】
2個の折り曲げ型取り付け部品22aを用いることにより、パッチアンテナ9dが反り変形することを防止、パッチアンテナ9dを強固に固定、及び小型の折り曲げ型取り付け部品22aを用いることで軽量化することができる。
【0079】
なお、
図6に示すパッチアンテナを取り付ける複数の折り曲げ型取り付け部品(1)23とパッチアンテナを取り付ける複数の折り曲げ型取り付け部品(2)24においては、折り曲げ型取り付け部品22aをそれぞれ2個用いているが、2個以上としても良い。
【0080】
パッチアンテナを取り付ける複数の折り曲げ型取り付け部品(1)23とパッチアンテナを取り付ける複数の折り曲げ型取り付け部品(2)24においては、銅箔15cと折り曲げ型取り付け部品22aが接触しないように配置するため、アンテナ特性に影響(折り曲げ型取り付け部品22aの材料がアンテナ特性に与える影響等)が無い範囲において、折り曲げ型取り付け部品22aの取り付け位置と材料に制約はない。
【0081】
パッチアンテナを取り付ける折り曲げ型取り付け部品(3)25は、パッチアンテナ9dが折り曲げ型取り付け部品22aと比較して小さい場合の取り付け方法であり、銅箔15cをまたぐように折り曲げ型取り付け部品22aを取り付ける。
【0082】
折り曲げ型取り付け部品22aを介して、銅箔15cが、
図5に示す銅箔17a、又は
図5に示すアンテナ支持構造11bと電気的に導通がある場合は、信号電流が流れる銅箔15cの電圧が常にゼロとなる位置に折り曲げ型取り付け部品22aを取り付ける。
【0083】
折り曲げ型取り付け部品22aに電気的に導通のない材料を用いる場合、又は折り曲げ型取り付け部品22aに電気的に導通のある材料を用いる場合でも、電気的に絶縁性の材料を挟み込むなど対策を講じることで、銅箔15cが
図5に示す銅箔17a、及び
図5に示すアンテナ支持構造11bと電気的に絶縁されている場合は、アンテナ特性に影響(折り曲げ型取り付け部品22aの材料のアンテナの電気的な特性への影響等)がない範囲において、折り曲げ型取り付け部品22aの取り付け位置と材料に制約はない。
【0084】
図7に、給電線路10bを取り付ける、リベット型取り付け部品14b、及び折り曲げ型取り付け部品22bを示す。
図7に示す、パッチアンテナ9eの各取り付け方法は参考である。
【0085】
給電線路10bを取り付ける、リベット型取り付け部品14b、及び折り曲げ型取り付け部品22bの取り付け位置と数は、平面アンテナの温度環境において、給電線路10bと
図2に示すアンテナ支持構造11の材料の線膨張係数の差により発生する、給電線路10bに作用する応力や、給電線路10bのねじれや浮き上がりなどの変形が発生しないように決定する。
【0086】
給電線路を取り付けるリベット型取り付け部品26は、リベット型取り付け部品14bを用いた給電線路10bの取り付け方法を示す。
【0087】
リベット型取り付け部品14bは、銅箔15dと接触しない位置に取り付け、給電線路10bの電気的特性に影響(リベット型取り付け部品14bの材料の給電線路10bの電気的な特性への影響等)がない範囲において、リベット型取り付け部品14bの取り付け位置と材料に制約はない。
【0088】
給電線路を取り付ける折り曲げ型取り付け部品(1)27と、給電線路を取り付ける折り曲げ型取り付け部品(2)28は、給電線路10bを取り付ける折り曲げ型取り付け部品22bを示す。
【0089】
給電線路を取り付ける折り曲げ型取り付け部品(1)27に示す折り曲げ型取り付け部品22bは、銅箔15dと接触しない位置に取り付けられており、給電線路10bの電気的特性に影響(折り曲げ型取り付け部品22bの材料の給電線路10bの電気的な特性への影響等)がない範囲において、折り曲げ型取り付け部品22bの材料や取り付け位置に制約はない。
【0090】
給電線路を取り付ける折り曲げ型取り付け部品(2)28に示す折り曲げ型取り付け部品22bは、銅箔15dと交差する。
銅箔15dと折り曲げ型取り付け部品22bが接触して、銅箔15dが
図5に示す銅箔17a、又は
図5に示すアンテナ支持構造11bと電気的に導通がある場合は、銅箔15dの電圧が常にゼロとなる位置に折り曲げ型取り付け部品22bを取り付ける。
【0091】
折り曲げ型取り付け部品22bの材料に電気的に導通のない材料を用いる場合、又は電気的に導通のある材料を用いる場合でも、電気的に導通のない材料を挟み込むなどの対策を講じることで、銅箔15dが、
図5に示す銅箔17a、及び
図5に示すアンテナ支持構造11bと電気的に絶縁されている場合は、給電線路10bの電気的特性に影響(折り曲げ型取り付け部品22bの材料の給電線路10bの電気的な特性への影響等)がない範囲において、折り曲げ型取り付け部品22bの材料や取り付け位置に制約はない。
【0092】
図8に、給電線路10cをアンテナ支持構造11cに取り付ける、給電線路固定部品13を示す。
【0093】
給電線路固定部品13を、給電線路10cを覆うように配置し、給電線路固定部品13をアンテナ支持構造11cに取り付けることで、給電線路10cをアンテナ支持構造11cに固定する。
【0094】
給電線路固定部品13は、電気的に絶縁性で、電波透過性の高い、膜状若しくはメッシュ状の材料を用いる。
【0095】
図8は、1個の折り曲げ型取り付け部品22cにより、パッチアンテナ9fと給電部品固定部品13を同時にアンテナ支持構造11cに取り付ける方法を示す。
給電線路固定部品13のみをアンテナ支持構造11cに取り付ける折り曲げ型取り付け部品22cを用いて、給電部品固定部品13をアンテナ支持構造11cに取り付けることもできる。
【0096】
平面アンテナの温度環境、及び給電線路固定部品13とアンテナ支持構造11cの材料の線膨張係数の差により発生する、アンテナ支持構造11cの皺やうねり状の面外方向の変形を防止するため、給電部品固定部品13の材料は、アンテナ支持構造11cの材料と比較して剛性を小さくする必要があり、そのため給電部品固定部品13は、給電線路10cの固定に必要な最低限度の、強度、剛性、及び大きさを有する設計とする。
【0097】
給電部品固定部品13の固定には、
図3に示すリベット型取り付け部品14を用いることもできる。
【0098】
図9は、
図7に示す給電線路を取り付ける折り曲げ型取り付け部品(1)27による給電線路10bの取り付け方法を用いた、
図2に示すサブアレイアンテナ8を
図9のアンテナ支持構造11dに取り付ける実施例を示す。
【0099】
図10は、給電線路固定部品13aを用いてアンテナ支持構造11eに給電線路10eを固定する方法を採用した、
図2に示すサブアレイアンテナ8を
図10のアンテナ支持構造11eに取り付ける実施例を示す。
【0100】
図9に示す給電線路固定部品を用いないサブアレイアンテナ29と、
図10に示す給電線路固定部品を用いたサブアレイアンテナ30は、
図5に示す折り曲げ型取り付け部品22を用いた実施例を示すが、
図3に示すリベット型取り付け部品14を用いることもできる。
巨大なアンテナを搭載する人工衛星を提供できるため、宇宙太陽光発電衛星の他、電波を用いた各種観測監視、及び通信分野において、画期的な機能性能を有する人工衛星を提供することができ、それにより新たな分野(観測監視、通信中継等)の宇宙機器製造産業、及び新たな宇宙利用に関する産業を創出する。