IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニー株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016818
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】導光板ユニット及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240131BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240131BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
G02B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116991
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2022118480
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 一恵
(72)【発明者】
【氏名】ペロズ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】張 傑
(72)【発明者】
【氏名】桑原 美詠子
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H042AA05
2H042AA16
2H042AA26
2H199CA12
2H199CA44
2H199CA50
2H199CA54
2H199CA67
2H199CA82
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA43
2H249AA60
2H249AA62
(57)【要約】
【課題】
本開示は、回折格子付近に形成される構造体によりもたらされる悪影響を低減するための技術を提供することを目的とする。
【解決手段】
本開示は、導光板と、前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体と、を備えており、空間周波数が10cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX10とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY10としたときに、以下の式1を満たすように構成されている
【数1】
導光板ユニットを提供する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板と、
前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体と、
を備えており、
空間周波数が10cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX10とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY10としたときに、以下の式1を満たすように構成されている
【数1】
導光板ユニット。
【請求項2】
前記山なり形状のスロープの幅が前記導光板内の前記光の全反射間隔未満である場合は、前記スロープの幅が前記全反射間隔に基づき特定される閾値以下であるように、前記スロープが構成されており、
前記山なり形状のスロープの幅が前記導光板内の前記光の全反射間隔以上である場合は、前記スロープの高さが前記スロープの幅及び前記スロープの傾き角に基づき特定される閾値以下であるように、前記スロープが構成されている、
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項3】
前記山なり形状の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが、前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の高さh1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式2を満たすように構成されており、
【数2】
前記山なり形状の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1が前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満であり且つ前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式3を満たすように構成されており、
【数3】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の幅w2が以下の式4を満たすように構成されている、
【数4】
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項4】
空間周波数が20cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX20とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY20としたときに、以下の式5を満たすように構成されている、
【数5】
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項5】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが、前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の高さh1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式6を満たすように構成されており、
【数6】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1が前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満であり且つ及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式7を満たすように構成されており、
【数7】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の幅w2が以下の式8を満たすように構成されている、

【数8】
請求項4に記載の導光板ユニット。
【請求項6】
前記導光板ユニットは、さらに、前記導光板の前記一方の面又は他方の面上に、前記構造体(以下「第一構造体」という)に起因する前記光の角度ずれを打ち消すように構成された山なり形状の第二構造体を備えている、
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項7】
前記第一構造体の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1は、
w1<0.1d
(ここで、dは、前記導光板内の前記光の全反射間隔である。)
を満たすように構成されている、請求項6に記載の導光板ユニット。
【請求項8】
前記第一構造体の前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が、前記光の全反射間隔d以上である場合において、前記第二構造体の山なり形状は、以下の式9-1、9-2、又は9-3のいずれかを満たすように構成されており、
【数9】
前記第一構造体の前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が、前記光の全反射間隔d未満である場合において、前記第二構造体の山なり形状は、以下の式10-1、10-2、又は10-3のいずれかを満たすように構成されている、

【数10】
請求項7に記載の導光板ユニット。
【請求項9】
前記構造体が存在する領域に、
前記構造体へと前記光が進入することを防ぐように構成された反射コーティング層、又は
前記構造体へ進入した前記光が前記山なり形状のスロープによって角度ずれを起こさないように構成されたコーティング層
が設けられている、
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項10】
前記反射コーティング層は、前記導光板と前記構造体との間に設けられている、請求項9に記載の導光板ユニット。
【請求項11】
前記コーティング層は、前記構造体の屈折率と略同一の屈折率を有する材料で形成されている、請求項9に記載の導光板ユニット。
【請求項12】
前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に、複数の山なり形状を有する構造体を備えており、
前記複数の山なり形状の全ての高さが90nm以下である、
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項13】
前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子、前記導光板内を進行した前記光を拡大するように構成されたエキスパンダー、及び、前記導光板から前記光を出射させるように構成された出射回折格子のうちのいずれかの回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記第一回折格子を通過して前記導光板の端に向かう光を回折して再度前記第一回折格子へと進行させるリサイクラーである、
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項14】
前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記第一回折格子によって回折されて導光板内を進行した前記光を拡大するように構成されたエキスパンダーである、
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項15】
前記第一回折格子は、前記導光板内を進行した光を拡大するように構成されたエキスパンダーであり、且つ、
前記第二回折格子は、前記エキスパンダーにより拡大された光を前記導光板から出射させるように構成された出射回折格子である、
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項16】
前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記導光板内を進行した光を前記導光板から出射させるように構成された出射回折格子である、
請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項17】
前記出射回折格子は、前記導光板内を進行した光を拡大し且つ前記導光板から出射させるよう構成された出射回折格子である、請求項16に記載の導光板ユニット。
【請求項18】
前記山なり形状の構造体は、前記第一回折格子若しくは前記第二回折格子又はこれら両方の回折格子を形成するために用いられた材料から形成されている、請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項19】
前記導光板ユニットは、画像表示装置を製造するために用いられる、請求項1に記載の導光板ユニット。
【請求項20】
導光板と、
前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体と、
を備えている導光板ユニットを含み、
前記導光板ユニットは、空間周波数が10cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX10とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY10としたときに、以下の式1を満たすように構成されている
【数11】
画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導光板ユニット及び画像表示装置に関し、特には回折格子を有する導光板ユニット、及び、当該導光板ユニットを備えた画像表示装置に関する。
【0002】
映像を表示するための装置の一種として頭部装着型表示装置(HMDともいう)が挙げられる。HMDが種々の局面において利用されるようになってきている。HMDには、外界の光景に画像を重ねて表示する技術を利用するものがある。当該技術は、拡張現実(ARともいう)技術とも呼ばれ、当該技術を利用した製品としてARグラスが挙げられる。また、HMDは仮想現実技術に基づく映像表示を行うためにも用いられうる。
【0003】
拡張現実技術や仮想現実技術に関して、これまでに種々の提案がされている。例えば、下記特許文献1には、光学導波管を形成するための方法が開示されている。当該方法は、特定の手法でメタ表面を形成することを含む(請求項1)。また、下記特許文献2には、ディスプレイシステム用の導波路が開示されている。当該導波路は、特定の位相変化を引き起こす第一部分及び第二部分を有している(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-176016号公報
【特許文献2】国際公開2016/130358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回折格子を導光板に設ける場合、当該回折格子の付近に、当該回折格子を形成するための材料から形成された構造体も生じうる。このような構造体は、導光板内を導光される光の進行に影響を及ぼし、提示される画像に悪影響を及ぼし得る。そこで、本開示は、回折格子付近に形成される構造体によりもたらされる悪影響を低減するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
導光板と、
前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体と、
を備えており、
空間周波数が10cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX10とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY10としたときに、以下の式1を満たすように構成されている
【数1】
導光板ユニットを提供する。
「前記山なり形状のスロープの幅」が「前記導光板内の前記光の全反射間隔」未満である場合は、「前記スロープの幅」が「前記全反射間隔に基づき特定される閾値」以下であるように、「前記スロープ」が構成されてよく、
「前記山なり形状のスロープの幅」が「前記導光板内の前記光の全反射間隔」以上である場合は、「前記スロープの高さ」が「前記スロープの幅及び前記スロープの傾き角に基づき特定される閾値」以下であるように、「前記スロープ」が構成されてよい。
前記山なり形状の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが、前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の高さh1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式2を満たすように構成されており、
【数2】
前記山なり形状の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1が前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満であり且つ前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式3を満たすように構成されており、
【数3】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の幅w2が以下の式4を満たすように構成されてよい。
【数4】
前記導光板ユニットは、空間周波数が20cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX20とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY20としたときに、以下の式5を満たすように構成されてよい。
【数5】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが、前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の高さh1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式6を満たすように構成されており、
【数6】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1が前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満であり且つ及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式7を満たすように構成されており、
【数7】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の幅w2が以下の式8を満たすように構成されてよい。
【数8】
前記導光板ユニットは、さらに、前記導光板の前記一方の面又は他方の面上に、前記構造体(以下「第一構造体」という)に起因する前記光の角度ずれを打ち消すように構成された山なり形状の第二構造体を備えてよい。
前記第一構造体の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1は、
w1<0.1d
(ここで、dは、前記導光板内の前記光の全反射間隔である。)
を満たすように構成されてよい。
前記第一構造体の前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が、前記光の全反射間隔d以上である場合において、前記第二構造体の山なり形状は、以下の式9-1、9-2、又は9-3のいずれかを満たすように構成されており、
【数9】
前記第一構造体の前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が、前記光の全反射間隔d未満である場合において、前記第二構造体の山なり形状は、以下の式10-1、10-2、又は10-3のいずれかを満たすように構成されてよい。
【数10】
前記構造体が存在する領域に、
前記構造体へと前記光が進入することを防ぐように構成された反射コーティング層、又は
前記構造体へ進入した前記光が前記山なり形状のスロープによって角度ずれを起こさないように構成されたコーティング層
が設けられてよい。
前記反射コーティング層は、前記導光板と前記構造体との間に設けられてよい。
前記コーティング層は、前記構造体の屈折率と略同一の屈折率を有する材料で形成されてよい。
前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に、複数の山なり形状を有する構造体を備えてよく、
前記複数の山なり形状の全ての高さが90nm以下であってよい。
前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子、前記導光板内を進行した前記光を拡大するように構成されたエキスパンダー、及び、前記導光板から前記光を出射させるように構成された出射回折格子のうちのいずれかの回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記第一回折格子を通過して前記導光板の端に向かう光を回折して再度前記第一回折格子へと進行させるリサイクラーであってよい。
前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記第一回折格子によって回折されて導光板内を進行した前記光を拡大するように構成されたエキスパンダーであってよい。
前記第一回折格子は、前記導光板内を進行した光を拡大するように構成されたエキスパンダーであり、且つ、
前記第二回折格子は、前記エキスパンダーにより拡大された光を前記導光板から出射させるように構成された出射回折格子であってよい。
前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記導光板内を進行した光を前記導光板から出射させるように構成された出射回折格子であってよい。
前記出射回折格子は、前記導光板内を進行した光を拡大し且つ前記導光板から出射させるよう構成された出射回折格子であってよい。
前記山なり形状の構造体は、前記第一回折格子若しくは前記第二回折格子又はこれら両方の回折格子を形成するために用いられた材料から形成されてよい。
前記導光板ユニットは、画像表示装置を製造するために用いられてよい。
また、本開示は、
導光板と、
前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体と、
を備えている導光板ユニットを含み、
前記導光板ユニットは、空間周波数が10cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX10とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY10としたときに、以下の式1を満たすように構成されている
【数11】
画像表示装置も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】回折格子を含む導光板の例の模式図である。
図2】TZが形成されるメカニズムを説明するための図である。
図3】TZによる画質劣化を説明するための図である。
図4A】TZを特定するために参照される入射光線及び出射光線を説明するための図である。
図4B】TZの場所を説明するための図である。
図4C】TZの場所を説明するための図である。
図5】TZの形状の例を示す模式図である。
図6】TZの形状に関する定義を説明するための図である。
図7】本開示において用いられるパラメータを説明するための図である。
図8】本開示の導光板ユニットの一例の模式図である。
図9】TZ形状とPSF及びMTFと関係を説明するための模式図である。
図10】MTF値の分布図である。
図11】MTF値の分布図である。
図12】MTF値の分布図である。
図13】MTF値の分布図である。
図14】MTF値の分布図である。
図15】MTF値の分布図である。
図16】TZとTZcとを有する導光板ユニットの例の模式図である。
図17】TZとTZcとを有する導光板ユニットの例の模式図である。
図18】MTF値の分布図である。
図19】MTF値の分布図である。
図20】MTF値の分布図である。
図21】MTF値の分布図である。
図22】TZとTZcとを有する導光板ユニットの例の模式図である。
図23】反射コーティング層が設けられた導光板ユニットの例の模式図である。
図24】コーティング層を有する導光板ユニットの例の模式図である。
図25】複数の山なり形状を有する構造体におけるMTF劣化抑制を説明するための図である。
図26】本開示に従う導光板ユニットの製造方法の一例のフロー図である。
図27】レジスト材料の堆積を説明するための図である。
図28】画像表示装置の例を示す模式図である。
図29A】MTFを測定するための測定系の模式図である。
図29B】MTFを測定するための測定系に含まれる部品の詳細を説明する図である。
図30A】MTFの測定方法のフローチャートである。
図30B】MTFの測定方法のフローチャートである。
図31A】導光板に設けられる回折格子の構成例を示す図である。
図31B】導光板に設けられる回折格子の構成例を示す図である。
図32A】導光板に設けられる回折格子の構成例を示す図である。
図32B】導光板に設けられる回折格子の構成例を示す図である。
図32C】導光板に設けられる回折格子の構成例を示す図である。
図32D】導光板に設けられる回折格子の構成例を示す図である。
図32E】導光板に設けられる回折格子の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示の代表的な実施形態を示したものであり、本開示の範囲はこれらの実施形態のみに限定されない。
【0009】
本開示について、以下の順序で説明を行う。
1.第1の実施形態(導光板ユニット)
1.1 本開示の概要
1.2 TZに関する定義と各種パラメータ
1.3 MTFに関する条件の例1
1.3.1 スロープの特定に関する例
1.3.2 1つのスロープによってもたらされる光線角度のズレ
1.3.3 TZ形状とPSF及びMTFとの関係
1.4 スロープの構成例1
1.4.1 構成例1-1(2つのスロープの幅がいずれも大きい場合)
1.4.2 構成例1-2(1つのスロープの幅が大きく他方のスロープの幅は小さい場合)
1.4.3 構成例1-3(2つのスロープの幅がいずれも小さい場合)
1.5 MTFに関する条件の例2
1.6 スロープの構成例2
1.6.1 構成例2-1(2つのスロープの幅が大きい場合)
1.6.2 構成例2-2(1つのスロープの幅が大きく他方のスロープの幅は小さい場合)
1.6.3 構成例2-3(2つのスロープの幅が小さい場合)
1.7 TZcの構成例
1.7.1 TZの存在する面と反対側の面に存在するTZcの例1
1.7.2 TZの存在する面と反対側の面に存在するTZcの例2
1.7.3 TZの存在する面に存在するTZcの例1
1.7.4 TZの存在する面に存在するTZcの例2
1.8 コーティング層
1.8.1 反射コーティング層の例
1.8.2 コーティング層の例
1.9 複数の山なり形状を有する構造体を有する場合の例
1.10 製造方法
1.11 使用方法
2.第2の実施形態(画像表示装置)
【0010】
1.第1の実施形態(導光板ユニット)
【0011】
1.1 本開示の概要
【0012】
眼鏡型アイウェアにおいて、SRG(surface relief gratings)構造を持つ導光板が用いられることがある。当該導光板は、導光板表面に回折格子が設けられている。当該回折格子は、例えばナノインプリント技術を用いて作成されうるが、作成手法によっては、当該回折格子の付近に、当該回折格子を形成する材料から形成される構造体が形成されることがある。本明細書内において、当該構造体が存在する領域をTZ(トランジションゾーン)ともいう。導光板表面に対して垂直方向におけるTZの厚みは、TZにわたって不均一であり、これは、導光板内を導光される光線への影響を及ぼすことがあり、さらに画質の劣化をもたらしうる。このようなTZは、例えば、上記のナノインプリント技術にさらにインクジェット方式を組み合わせて回折格子を形成する場合に特に生じやすい。
【0013】
上記のTZに関する問題について、以下で図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【0014】
図1に、回折格子を含む導光板の例の模式図が示されている。例えば描画エンジンから出射された光線Lを導光板を経由してユーザの眼に到達させるために、同図に示される導光板Pには、当該光線を導光板に取り込むための回折格子(ICG)と、当該光線を導光板から出射するための回折格子(OCG)の少なくとも2つ以上の回折格子が設けられる。OCGによって導光板Pから出射した光は、観察者(特には観察者の目E)へと到達する。また、一般的には、光線を導光板内で分割する機能を持つ回折格子(Expander)も設けられる。
【0015】
このような回折格子を導光板表面に形成するためにナノインプリント技術とインクジェット技術を組み合わせた導光板製造プロセスを採用すると、回折格子周辺で厚さ不均一形状の領域(TZ)が形成される。TZが形成されるメカニズムを、図2を参照して説明する。
同図の(a)に示されるように、インクジェットにより基板上に塗布されたレジスト材料RをスタンパーSTで型取ることで、回折格子が形成される。スタンパーSTのうち、G1領域の複数の溝が、回折格子1を得るための溝であり、G2領域の複数の溝が回折格子2を得るための溝である。G1領域の溝の深さ及びG2領域の溝の深さは、例えば所望の回折特性に応じて適宜調整され、例えば同図に示されるように互いに異なりうる。
また、これに伴い、基板SB上に施与されるレジスト材料Rの量も、同図に示されるように、G1領域及びG2領域の間で異なり、これに伴い、形成されるレジストの膜厚も、G1領域とG2領域との間で異なりうる。
なお、G1領域の溝の深さは、回折格子1の高さに相当し、例えば10nm以上、20nm以上、又は30nm以上であってよい。また、当該深さは、例えば500nm以下、400nm以下、又は300nm以下であってよい。
G2領域の溝の深さは、回折格子2の高さに相当し、例えば10nm以上、20nm以上、又は30nm以上であってよい。また、当該深さは、例えば500nm以下、400nm以下、又は300nm以下であってよい。
G1領域の溝の深さ(すなわち回折格子1の高さ)は、同図に示されるように、G2領域の溝の深さ(すなわち回折格子2の高さ)と異なっていてよいが、同じであってもよい。これらの値は、各回折格子の求められる回折特性に応じて当業者により適宜調整されうる。
【0016】
上記のとおりのスタンパーSTによる型取りを実行すると、レジスト材料Rが流動し、これに伴い、G1領域とG2領域との間にTZが形成される。同図の(b)に、縦軸がレジストの残膜厚(RLT)であり且つ横軸が位置(position)であるところのTZ残膜厚を示す模式的なグラフが示されている。T1は、回折格子1に求められるレジスト材料厚みである。T2は、回折格子2に求められるレジスト材料厚みである。領域A1には、回折格子1を形成するためのレジスト材料の流動による厚さのムラが生じうる。領域A2には、回折格子2を形成するためのレジスト材料の流動による厚さのムラが生じうる。
同図の(b)に示されるように、回折格子の高さが高い(G1領域)場合には、レジスト材料の塗布量も多くなり、TZのうちG1領域に近い部分では、TZにおけるレジストの残膜厚(RLT)も高くなる傾向がある。一方で、回折格子の高さが低い(G2領域)場合には、レジスト材料の塗布量は少なくなり、TZのうちG2領域に近い部分では、TZにおけるレジストの残膜厚(RLT)は低くなる。
【0017】
同図の(b)において、Case1の線は、理想的な平坦なTZの形状を示す。しかしながら、上記のとおりの回折格子形成方法では、レジスト材料の流動性や求められる回折格子の構造のために、このような平坦なTZは形成されない。例えば、TZは、例えばCase2の線に示されるように、残膜厚RLTが高くなりうる。
【0018】
TZによる画質劣化に関して、以下で図3を参照しながら説明する。同図は、TZを導光する光線の模式図である。TZにおける形状が平坦でない場合、TZにおけるレジスト残膜に到達する光線は、導光角が変化する。導光角の変化は、同図に示されるように、2φである。そのため、幾何光学的なMTF(Modulation Transfer Function)が劣化する。MTFとは画質の指標の一つであり、或る空間周波数におけるコントラストを表す。TZの形状の傾斜(以下「スロープ」ともいう)角度が大きければ、スロープに当たる光線の導光角の変化も大きくなる。さらにTZの幅の大きさによって光線がスロープに当たる面積と回数が変わり、導光角がズレる光線割合も変化する。ここで、図2のCase2とCase3とを比較すると、従来のCase2の形状はTZ形状が高く、スロープの角度が大きいためMTF劣化も大きい傾向にある。
【0019】
本発明者らは、所定の条件を満たすことで、上記の問題を解決できることを見出した。例えば、本開示により、2つの回折格子の間のTZを同図の(b)中のCase3の線に示されるように山なり形状の構造体とし、且つ、所定条件を満たすように制御することで、画質劣化を防ぐことができることを見出した。なお、同図に示される当該山なり形状は、実際の山なり形状でなく、本開示のより良い理解のために模式的に表されているものである。
【0020】
以下では、まず、TZに関する定義、及び、当該所定の条件を定義するために用いられる各種パラメータに関して説明する。次に、本開示の実施態様に関して説明する。
【0021】
1.2 TZに関する定義と各種パラメータ
【0022】
TZの場所および形状について、以下でより詳細に説明する。
【0023】
まずTZを特定するために参照される入射光線及び出射光線について図4Aを参照しながら説明する。同図に示されるように、例えばICGへ入射する光線を入射光線(同図において符号L1により示される実線)といい、OCGから出射する光線を出射光線(同図において符号L2により示される実線)ともいう。入射光線は、中心画角に相当する入射角度を有し且つピーク波長を有する光線である。出射光線は、中心画角の光線である。
【0024】
次にTZの場所について以下で説明する。図4Bに、回折格子が設けられた導光板の模式図が示されている。同図において丸で囲まれた領域にTZが存在する。TZは、導光板に設けられた2つの回折格子の間に存在し、例えば同図の左下に示されるようにICGとエキスパンダーとの間の領域であってよく、又は、同図の右下に示されるようにエキスパンダーとOCGとの間の領域であってよい。
また、同図の導光板にはICGとOCGとに加えてエキスパンダーが設けられているが、エキスパンダーが設けられていない場合には、TZはICGとOCGとの間の領域であってもよい。
また、導光板には、各回折格子から導光板端部に向かって進行する光を当該回折格子に戻すための回折格子(リサイクラーともいう)が設けられる場合がある。この場合において、TZは、各回折格子とリサイクラーとの間の領域であってもよい。
このように、TZは、導光板状に設けられた2つの回折格子の間に存在する。
同図に示されるように、中心画角かつ使用するピーク波長の光線が導光されるTZ領域において、光線が通る箇所のグレーティング境界と垂直な方向のTZをTZ断面とする。
【0025】
また、図4Cに示されるエキスパンダーへと光が入射する領域(丸で囲まれた領域)のように、回折格子へ光が垂直に入射せずに、斜めに入射する場合もありうる。この場合において、TZは、当該丸で囲まれた領域中の線TZによって示されるように、回折格子に垂直な断面で切り取られる。
なお、この場合において、同図中の丸で囲まれた領域中に示されるように、後述の全反射間隔dも、d’として再定義される。
【0026】
次にTZの形状について説明する。
TZの形状の例が、図5の(a)~(e)に示されている。(a)~(e)のそれぞれに示されるG1及びG2が、それぞれ第一回折格子及び第二回折格子であり、且つ、TZが、これら回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体である。
【0027】
同図の(a)に示されるように、TZはスロープ(斜面)が曲線である形状を有してよい。また、同図の(b)に示されるように、TZは不定形であってもよい。また、同図の(c)に示されるように、TZは台形であってもよい。また、同図の(d)に示されるように、TZのスロープの一部が第一回折格子及び/又は第二回折格子へ進入していてもよい。また、同図の(e)に示されるように、第一回折格子及び第二回折格子の間の距離が離れており、TZの一方の端が、導光板に到達していてもよい。
【0028】
本明細書内において、TZ断面における最も高い位置(導光板表面から最も離れている位置)を、TZの頂点とする。同図の(a)~(e)それぞれにおいて、頂点は黒丸によって示されている。
また、本明細書内において、TZの高さが回折格子のRLT(レジスト残膜厚)の高さとなる位置、又は、TZの高さがゼロになる2つの位置をTZの端点とする。当該端点は、同図においては城丸によって示されている。
本明細書内において、前記TZの頂点と前記2つのTZの端点とによって構成される形状を、山なり形状という。
【0029】
図6は、TZの形状に関する定義を説明するための図を示す。本明細書内において、黒丸(頂点)から白丸(端点)へ引かれる2本の直線をそれぞれスロープ1(Slope 1)及びスロープ2(Slope 2)と定義する。これらは順不同である。
同図に示されるように、導光板Pの表面(特には回折格子が設けられている表面)に対して水平な方向をX軸とし、当該表面に垂直な方向をY軸とする。そして、X軸方向におけるスロープ1及び2の長さをそれぞれ、スロープ1の幅w1及びスロープ2の幅w2とする。
Y軸方向におけるスロープ1及び2の長さをそれぞれ、スロープ1の高さh1及びスロープ2の高さh2とする。また、各スロープの高さは、隣接する回折格子の基準面から前記頂点までの長さであって、導光板面からの前記頂点までの長さでない。同図においては、スロープ1の高さh1は、第一回折格子G1の基準面S1から黒丸(頂点)までのY軸方向における長さである。スロープ2の高さh2は、第二回折格子G2の基準面S2から黒丸(頂点)までのY軸方向における長さである。
【0030】
図7及び同図中の表1に、本開示において用いられる他のパラメータについて説明されている。なお、これらのパラメータが対象とする光線は、光源のピーク波長を利用し、且つ、画角光線の中で導光角が最も臨界角に近い光線である。この光線は、TZの影響を最も強く受けやすい画角の光線である。そのため、この光線で、後述の目標MTF値が得られる場合は、画角全体においても目標MTF値が達成できている。
【0031】
1.3 MTFに関する条件の例1
【0032】
一実施態様において、本開示に従う導光板ユニットは、導光板と、前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体とを備えており、当該導光板ユニットは、空間周波数が10cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX10とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY10としたときに、以下の式1を満たすように構成されている。
ここで、前記山なり形状へ入射する直前の光は、前記第一回折格子によって回折された後、且つ、前記山なり形状を有する構造体へ入射する前の光を意味してよい。また、前記山なり形状を通過直後の光は、前記山なり形状を有する構造体を通過した後、且つ、前記第二回折格子によって回折される前の光を意味してよい。
【数12】
【0033】
式1を満たすように2つのMTF値X10及びY10が制御されていることで、画質の劣化を防ぐことができる。
ここで前記光は、使用する画角光線のうち、導光板内の導光角が最も臨界角に近い光線であってよい。
また、前記第二回折格子は、前記導光板の2つの面のうち、前記第一回折格子が設けられた面と同じ面上に設けられてよく、又は、前記第一回折格子が設けられた面と反対側の面上に設けられてもよい。
【0034】
この実施態様に関して、図8を参照しながらより詳細に説明する。
同図に示される本開示の導光板ユニットU1は、導光板Pと、前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子G1、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子G2、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体TZを備えており、上記式1を満たすように構成されている。
【0035】
この実施態様は例えば、同図に示されるとおり第一回折格子G1(特には前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子)の高さとレジスト厚とを合計した高さHが150nm以上である場合に、特に適している。すなわち、本開示において、第一回折格子G1の高さとレジスト厚とを合計した高さHは、好ましくは150nm以上であってよい。
前記山なり形状を有する構造体は、例えば、前記第一回折格子をインクジェット方式のナノインプリントで作製された回折格子の周囲に形成される。
前記山なり形状の構造体は、前記第一回折格子若しくは前記第二回折格子又はこれら両方の回折格子を形成するために用いられた材料から形成されていてよい。すなわち、前記構造体は、これら回折格子の形成に伴い、これら回折格子の材料から形成されうる。
上記式1に関して、「1-Y10/X10」は、TZに到達する前の光線(入射光線L1)のMTFに対する、TZへ到達後の光線(出射光線L2)のMTFの劣化率に相当する。
空間周波数10cycle/degはおよそ視力の0.3に相当し、一般的にはヒトが裸眼で生活できる最低基準である。そのため、空間周波数が10cycle/degである場合において上記のとおりのMTFに関する条件を満たすことで、小さな文字でも見えることができる程度の画質を達成することができる。
【0036】
(MTF測定方法)
MTFの測定方法について、以下で図29A及びB並びに図30A及びBを参照しながら説明する。図29Aには、測定系の構成が示されている。図29Bには、及び当該測定系に含まれる部品の詳細を記載した表が示されている。
【0037】
図29Aに示されるとおり、当該測定系は、導光板に対して平行光線を入射させる照明系100と、当該導光板から出射した光を検出する撮像系110とを含む。
照明系100は、光源(LED)101、コリメータレンズ102、及びアパーチャー103を有する。当該照明系を構成するこれら部品の詳細は、図29Bに説明されるとおりである。
撮像系110は、瞳用アパーチャー113、カメラレンズ112、及びカメラ111を有する。当該撮像系を構成するこれら部品の詳細も、図29Bに説明されるとおりである。
なお、図29Bにおいて、ICGは、上記で述べたとおり入射光を導光板P内へ進行させるための回折格子である。OCGは、導光板P内を進行した光を導光板から出射させるための回折格子である。
【0038】
図30A及びBには、当該測定方法のフローチャートが示されており、TZのMTF劣化率は当該フローチャートに示す手順を実行することによって取得可能である。
具体的には、測定対象となる導光板ユニットに対して、図30Aに示されるフローチャートに従い、PSF画像の取得及び当該PSF画像に対するフーリエ変換を実行することによってMTF値(A’)が得られる。なお、A’、B’、 X10、Y10、X20、Y20は、取り得る範囲が0~1である割合を示す値である。次に、当該導光板ユニットからTZ(山なり形状の構造体)を除去したものについて、図30Bに示されるフローチャートに従い、PSF画像の取得及び当該PSF画像に対するフーリエ変換を実行することによってMTF値(B’)が得られる。
ここで、PSF画像の空間周波数が10cycle/degである場合の(A’/B’)が、上記式1における(Y10/X10)である。
また、PSF画像の空間周波数が20cycle/degである場合の(A’/B’)が、後述の上記式5における(Y20/X20)である。
このように、上記測定方法では、TZの有無だけを変更した2つのMTF値測定が行われ、そして、最終的な出射光のMTF値だけに着目して、上記比率が得られる。これにより、第一回折格子及び第二回折格子がそれぞれ入射回折格子及び出射回折格子である場合だけに限らず、第一回折格子及び第二回折格子がそれぞれエキスパンダー及びOCGである場合など、種々のパターンの導光板ユニットについて測定を実行することができる。
【0039】
図30A及び30Bに示されるフローチャートは、測定対象となる導光板ユニットにおけるTZの有無以外は、同じである。上記フローチャートのうち、主な工程は以下のとおりである。
まず照明系100によって生成された平行光線を、導光板Pへと入射させる。入射した当該平行光線は、ICGへ到達して、回折されて、導光板内を進行する。導光板上にTZが存在する場合は、当該光線はTZにより進行方向が変更されてよい(S11~S14及びS21~S24)。
次に、導光板内を進行した当該光線は、OCGによって回折されて導光板の外へと出射する。当該出射した光は、撮像系110によって撮像される。撮像系110は、レンズ112によって出射された光線を集光し、そして、カメラ110によって点像分布(PSF)画像を得る(S15~S16及びS25~S26)。
解析機器(PC)が、当該PSF画像を2次元フーリエ変換することによって、MTFが得られる(S17~18及びS27~28)。すなわち、当該点像分布がフーリエ変換によって空間周波数分布へと変換され、所望の周波数におけるMTFが取得される。当該解析機器は、PSF画像を2次元フーリエ変換することができるものであればよく、当技術分野で一般的に利用されている情報処理装置(例えば汎用のコンピュータ)が用いられてよい。当該フーリエ変換を実行するソフトウェアとして、Pythonが用いられる。
導光板ユニット(導光板と回折格子とTZ(山なり形状構造体)を含むユニット)のMTFの値をA’とし、当該TZを除去した導光板ユニットのMTFの値をB’とすると、TZのMTF劣化割合は1-(A’/B’)によって導出可能である。
【0040】
(第一回折格子、第二回折格子、山なり形状構造体が存在する面)
前記第一回折格子及び前記第二回折格子は、導光板上に存在し且つTZを挟むように配置された2つの回折格子であってよい。
前記第一回折格子及び前記第二回折格子は、導光板の同じ面上に存在してよく、又は、前記第一回折格子が導光板の一方の面に存在し且つ前記第二回折格子が当該導光板の他方の面に存在していてもよい。
いずれの場合においても、本開示に従い、MTF劣化を抑制することができる。
これら回折格子が存在する面について、図31A及び図31Bを参照しながら説明する。
【0041】
図31Aに示されるように、導光板Pの一方の面SF1上に、前記第一回折格子G1及び前記第二回折格子G2が存在していてよい。そして、これら2つの回折格子の間に、山なり形状構造体が存在する領域TZが存在していてよい。本開示に従い、当該山なり形状構造体に起因するMTF劣化が抑制されてよい。
【0042】
また、図31Bに示されるように、導光板Pの一方の面SF1上に、第一回折格子G1が存在し、他方の面SF2上に、第二回折格子G2’が存在していてもよい。そして、これら2つの回折格子の間に、山なり形状構造体が存在する領域TZ2が存在していてよい。
また、面SF1上にさらに第二回折格子G2が存在している場合、第二回折格子G2’と第二回折格子G2との間に、山なり形状構造体が存在する領域TZ3が存在していてよい。この場合、回折格子G2及びG2’のいずれかが、第一回折格子として取り扱われてよい。
さらに、この場合、面SF1上に存在する、第一回折格子G1及び第二回折格子G2との間に、山なり形状構造体が存在する領域TZ1が存在していてよい。
本開示に従い、これらの山なり形状構造体の少なくとも一つに起因するMTF劣化が抑制されてよい。
【0043】
このように、本開示に従い、導光板上に設けられたいずれか2つの回折格子の間に存在する山なり形状構造体に起因するMTF劣化が抑制されてよい。
【0044】
(第一回折格子及び第二回折格子の回折特性)
前記第一回折格子及び前記第二回折格子は、上記で説明した、ICG、エキスパンダー、OCG、及びリサイクラーのうちのいずれか2つであってよい。すなわち、前記第一回折格子は、ICG、エキスパンダー、OCG、又はリサイクラーとしての回折特性を有してよい。また、前記第二回折格子も、ICG、エキスパンダー、OCG、又はリサイクラーとしての回折特性を有してよい。本開示の導光板ユニットは、前記第一回折格子及び前記第二回折格子を含む2以上の回折格子を有してよく、各回折格子の回折特性は、例えば光の当業者により適宜選択されてよい。
このように本開示に従う導光板ユニットにおいて、前記第一回折格子及び前記第二回折格子を含む2以上の回折格子が設けられてよく、これら回折格子の回折特性及び配置は、当業者に適宜選択されてよい。そして、2つの回折格子の間に存在するTZに起因するMTF劣化が、本開示に従い抑制されてよい。 以下では、これら回折格子の配置に関する例を、図32A~Eを参照しながら説明する。これらの図は、導光板ユニットの面の模式的な例を示す図であり、回折格子の構成例が示されている。
【0045】
図32Aにおいて、導光板P上に、第一回折格子としてICGが設けられており、第二回折格子としてOCGが設けられている。これら回折格子の間のグレー領域TZに、山なり形状構造体が存在してよい。
本開示において、これらの間のTZ1に存在する山なり形状構造体に起因するMTF劣化が抑制されてよい。
このように、前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記導光板内を進行した光を前記導光板から出射させるように構成された出射回折格子であってよい。
また、前記OCGは、エキスパンダーとしての回折特性を有してもよい。すなわち、前記出射回折格子は、前記導光板内を進行した光を拡大し且つ前記導光板から出射させるよう構成された出射回折格子であってよい。
【0046】
図32Bにおいて、導光板P上に、ICG、エキスパンダー、OCGが設けられている。ICG及びエキスパンダーの間のグレー領域TZ1に山なり形状構造体が存在してよく、又は、エキスパンダー及びOCGの間のグレー領域TZ2に山なり形状構造体が存在してよく、又は、領域TZ1及びTZ2の両方に山なり形状構造体が存在してもよい。
本開示において、前記ICGが第一回折格子として捉えられ且つ前記エキスパンダーが第二回折格子として捉えられてもよい。そして、本開示に従い、これらの間のTZ1に存在する山なり形状構造体に起因するMTF劣化が抑制されてよい。
本開示において、前記エキスパンダーが第一回折格子として捉えられ且つ前記OCGが第二回折格子として捉えられてもよい。そして、本開示に従い、これらの間のTZ2に存在する山なり形状構造体に起因するMTF劣化が抑制されてよい。
このように、本開示において、前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記第一回折格子によって回折されて導光板内を進行した前記光を拡大するように構成されたエキスパンダーであってよい。
また、前記第一回折格子は、前記導光板内を進行した光を拡大するように構成されたエキスパンダーであり、且つ、
前記第二回折格子は、前記エキスパンダーにより拡大された光を前記導光板から出射させるように構成された出射回折格子であってもよい。
【0047】
図32Cは、導光板P上に、第一回折格子としてICGが設けられており、第二回折格子としてOCGが設けられている。前記ICGは、エキスパンダーとしての回折特性も有する。これら回折格子の間のグレー領域TZに、山なり形状構造体が存在してよい。この場合、山なり形状構造体が存在する領域は、図32Aにおける場合よりも大きくなりうる。
本開示において、これらの間のTZに存在する山なり形状構造体に起因するMTF劣化が抑制されてよい。
すなわち、前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させ且つ当該光を拡大して前記導光板内を進行させるように構成された入射回折格子であってよい。
【0048】
図32Dは、図32Bの構成例における回折格子の周囲に、リサイクラーが配置された構成例を示す。導光板P上に、ICG、エキスパンダー、OCGが設けられている。導光板P上には、さらに、ICGから導光板の端(同図における左端)へと進行する光をICGへと戻すためのリサイクラー1、エキスパンダー又はOCGから導光板の端(同図における上端)へと進行する光をエキスパンダー又はOCGへと戻すためのリサイクラー2、OCGから導光板の端(同図における右端)へと進行する光をOCGへと戻すためのリサイクラー3、エキスパンダー又はOCGから導光板の端(同図における下端)へと進行する光をエキスパンダー又はOCGへと戻すためのリサイクラー4が設けられている。
これらの回折格子のうちの隣接する2つの回折格子の間のグレー領域TZ1~6の1つ以上に山なり形状構造体が存在してよい。
本開示において、これらの間のTZに存在する山なり形状構造体に起因するMTF劣化が抑制されてよい。
【0049】
図32Eは、図32Cの構成例における回折格子の周囲に、リサイクラーが配置された構成例を示す。導光板P上に、ICG及びOCGが設けられている。前記ICGは、エキスパンダーとしての回折特性も有する。導光板P上には、さらに、ICGから導光板の端(同図における左端)へと進行する光をICGへと戻すためのリサイクラー1、OCGから導光板の端(同図における上端)へと進行する光をOCGへと戻すためのリサイクラー2、OCGから導光板の端(同図における右端)へと進行する光をOCGへと戻すためのリサイクラー3、OCGから導光板の端(同図における下端)へと進行する光をOCGへ戻すためのリサイクラー4が設けられている。
これらの回折格子のうちの隣接する2つの回折格子の間のグレー領域TZ1~51つ以上に山なり形状構造体が存在してよい。
本開示において、これらの間のTZに存在する山なり形状構造体に起因するMTF劣化が抑制されてよい。
【0050】
図32D及びEに示されるように、第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子、前記導光板内を進行した前記光を拡大するように構成されたエキスパンダー、及び、前記導光板から前記光を出射させるように構成された出射回折格子のうちのいずれかの回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記第一回折格子を通過して前記導光板の端に向かう光を回折して再度前記第一回折格子へと進行させるリサイクラーであってよい。
【0051】
1.3.1 スロープの特定に関する例
【0052】
好ましい実施態様において、「前記山なり形状のスロープの幅」が「前記導光板内の前記光の全反射間隔」未満である場合は、「前記スロープの幅」が「前記全反射間隔に基づき特定される閾値」以下であるように、「前記スロープ」が構成されており、
「前記山なり形状のスロープの幅」が「前記導光板内の前記光の全反射間隔」以上である場合は、「前記スロープの高さ」が「前記スロープの幅及び前記スロープの傾き角に基づき特定される閾値」以下であるように、「前記スロープ」が構成されていてよい。
前記山なり形状は、2つのスロープを有する。好ましくは、当該2つのスロープのうちの1つスロープに着目した場合において、当該1つのスロープの幅と当該導光板内を進行する光線の全反射間隔との関係に応じて、当該スロープの幅又はスロープの高さが所定の閾値以下となるように当該スロープが構成される。このように、スロープの幅と全反射間隔に応じてスロープの構成を変更することで、上記のMTFを満たしやすくなり、MTF劣化を防ぎやすい。
本明細書内において、全反射間隔は、導光板に入射される光の光源スペクトルのピーク波長を有する光線に関して、図7に記載されたとおりに特定される距離である。
【0053】
以下でこの実施態様をより理解しやすくするために、1つのスロープによってもたらされる光線角度のズレを説明し、そして次に、TZ形状とPSF及びMTFとの関係を説明する。その後、より具体的な実施態様を説明する。
【0054】
1.3.2 1つのスロープによってもたらされる光線角度のズレ
【0055】
図7に示されるように、空気中からθairinの角度を持つ光線が導光板へ入射し、そして、ICGにより光線が導光板内部に取り込まれて伝搬する。その際に当該光線は、TZに1回当たり、すなわち、OCGから瞳側に出射する光線の角度はθairin+Δpeakとなると想定する。当該Δpeakは、グレーティング方程式とスネルの法則から以下のように求めることができる。
Δpeak ~ φ*(2*n2*cos(θ’TIR)) / cos(θairin)
ここで、φは、基板とTZのスロープとの間の角度である。θairinは空気中における入射角である。n2は、TZの屈折率である。θ’TIRは、TZ内における導光角である。すなわち、光線角度のズレ量とスロープの角度とは比例関係にある。
【0056】
1.3.3 TZ形状とPSF及びMTFとの関係
【0057】
図9に、TZ形状とPSF及びMTFと関係を説明するための1次元方向の模式図を示す。
同図の(a)を参照して、TZのスロープ幅を小さくすることができる場合について説明する。すなわち、TZのスロープ幅wが光線の導光板内における全反射間隔dより小さい場合について説明する。
スロープ幅が全反射間隔より小さいので、光線面中にスロープに当たる箇所と当たらない箇所が存在し、スロープに当たる光線割合がそのまま角度がずれる光線割合になる。光線面の中でスロープに当たる幅の比率は、w/dで表される。光線面がスロープに当たる回数は1回である。また、上述の通り、スロープの角度は光線角度のズレ量に影響を与える。
PSF(Point Spread Function)に関して考えたときに、全体光量を1とした場合、1-w/dの光量については光線角度はズレないが、w/dの光量については光線角度がズレたPSF画像となる。このPSF画像から幾何光学的MTFを計算できる。そのため、任意のスロープ角度に対して目標MTF値を達成するためにはw/dをコントロールすればよい。
ここで、PSFは点像分布であり、光線を1点に集光する際に光線内に異なる角度の光線が存在すると1点ではなく複数の点を有する画像となり、点の散らばり方で光線内の角度の散らばり方も分かる。
【0058】
同図の右を参照して、TZのスロープ幅が大きい場合について説明する。すなわち、TZのスロープ幅wが光線の導光板内における全反射間隔dより大きい場合について説明する。
スロープ幅が大きいため光線面の全てがスロープに当たり、光線面内にn(=1、2、3、…)回スロープに当たる箇所とn+1回当たる箇所が存在する。光線全体としてはn回以上スロープに当たるため、元の光線角度から変化しているので画像歪みは存在するが、画像のボケ(MTF)としては光線面内の角度差が影響するため、スロープ1回分の影響である。
PSFに関して考えたときに、スロープ1回分の角度ずれ量は上述のΔpeakで表せるため、任意のスロープ幅に対して目標MTF値を達成するためには角度ずれ量(すなわちΔpeak)をコントロールすればよい。
【0059】
以上を踏まえ、以下では、MTF劣化を防ぐための具体的なスロープ構成例について説明する。
【0060】
1.4 スロープの構成例1
【0061】
TZの山なり形状は、2つのスロープを有する。そこで、例えば本開示の導光板ユニットは、以下の3つに場合分けして、それぞれの場合毎に、スロープが特定されてよい。
【0062】
1.4.1 構成例1-1(2つのスロープの幅がいずれも大きい場合)
【0063】
2つのスロープの幅がいずれも大きい場合について以下で説明する。この場合は、TZのスロープ幅w1及びw2のいずれもが、光線の導光板内における全反射間隔d以上である場合に相当する。
この場合において、2つのスロープそれぞれによる光線角度ずれ量Δpeakを縦横軸にとった場合のMTF値の分布が、図10に示されている。横軸、縦軸はそれぞれスロープ1、スロープ2によって変化させられる光線角度ずれ量Δpeakである。
同図において、空間周波数が10 cycle/degにおけるMTFの劣化率が50%以下になる(すなわち式1を満たす)ところのΔpeakの範囲(図10に示される斜線部分の領域)に基づき、好ましいTZの形状は、以下の式2のとおりに表される。
【数13】
この式2によるTZ形状の制約は、上記で図7を参照して説明したh1及びh2を強く制限するものであるため、w1及びw2は大きくても許容されるというものである。すなわち、wがコントロールできなくともhを制限すればよい。
例としてθairin=25[deg]、n1=2.0、n2=1.5、Λ(ICGのピッチ)=360nm、λ(ピーク波長)=530nmとすると、w(もしくはw)=0.5 mmの場合に、0<h1≦92 nmとなる。
【0064】
1.4.2 構成例1-2(1つのスロープの幅が大きく他方のスロープの幅は小さい場合)
【0065】
1つのスロープ幅は小さいが他方のスロープ幅は大きい場合の例について以下で説明する。この場合は、TZのスロープ幅w1は光線の導光板内における全反射間隔d未満であり且つTZのスロープ幅w2は光線の導光板内における全反射間隔d以上である場合に相当する。
この場合において、一方のスロープによる光線角度ずれ量Δpeakを縦軸、もう片方のスロープによる角度がズレる光線割合PSを横軸にとった場合のMTF値の分布が図11に示されている。
同図において、空間周波数が10cycle/degにおけるMTFの劣化率が50%以下になる(すなわち式1を満たす)PS及びΔpeakの範囲(図11中の斜線により示される領域)に基づき、好ましいTZの形状は、以下の式3のとおりに表される。
【数14】
この式の特徴として、図7における片側のスロープの幅を強く制限できる際に有効な制約条件であるということが挙げられる。
例としてθairin=25[deg]、n1=2.0、n2=1.5、Λ(ICGのピッチ)=360nm、λ(ピーク波長)=530nm、t=0.5mmとすると、d=0.6 mm、0 < w1 ≦ 0.14 mmとなる。
【0066】
1.4.3 構成例1-3(2つのスロープの幅がいずれも小さい場合)
【0067】
2つのスロープの幅が小さい場合の例を以下に説明する。この場合は、TZのスロープ幅w1及びw2のいずれも、光線の導光板内における全反射間隔d未満である場合に相当する。
この場合において、2つのスロープそれぞれのスロープによる角度がズレる光線割合PSを縦横軸にとった場合のMTF値の分布が図12に示されている。横軸及び縦軸はそれぞれスロープ1及びスロープ2によって変化させられる角度がズレる光線割合PSである。
同図において空間周波数が10cycle/degにおけるMTFの劣化率が50%以下になる(すなわち式1を満たす)PSの範囲に基づき、好ましいTZの形状は、以下の式4のとおりに表される。
【数15】
特徴としては、図7における両側のスロープの幅を強く制限できる際に有効な制約条件である。
例としてθairin=25[deg]、n1=2.0、n2=1.5、Λ(ICGのピッチ)=360nm、λ(ピーク波長)=530nm、t=0.5mmとすると、d=0.6 mm、0 < w1,w2 ≦ 0.090 mmとなる。
【0068】
以上の構成例1-1~1-3において説明したとおり、TZの山なり形状構造体のスロープの幅と全反射間隔との大小関係に応じて各スロープの幅又は高さを制御することによって、MTF劣化を防ぐことができる。
すなわち、好ましい実施態様において、
「前記山なり形状のスロープの幅」が「前記導光板内の前記光の全反射間隔」未満である場合は、「前記スロープの幅」が「前記全反射間隔に基づき特定される閾値」以下であるように、「前記スロープ」が構成されてよく、
「前記山なり形状のスロープの幅」が「前記導光板内の前記光の全反射間隔」以上である場合は、「前記スロープの高さ」が「前記スロープの幅及び前記スロープの傾き角に基づき特定される閾値」以下であるように、「前記スロープ」が構成されてよい。
より具体的には、前記山なり形状の2つのスロープの幅又は高さが、各スロープの幅と前記全反射間隔との間の大小関係に応じて、上記式2~4のいずれかを満たすように、本開示の導光板ユニットは構成されてよい。
【0069】
1.5 MTFに関する条件の例2
【0070】
上記1.3において、空間周波数が10cycle/degである場合に関する式1について説明し、そして、上記1.4において、式1を満たすように構成された山なり形状構造体(TZ)の例について説明した。
本開示において、より好ましくは、空間周波数が20cycle/degである場合におけるMTF値が所定の条件を満たすように、本開示の導光板ユニットは構成されてよい。
すなわち、より好ましい実施態様において、本開示に従う導光板ユニットは、導光板と、前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体とを備えており、当該導光板ユニットは、空間周波数が20cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX20とし且つ前記山なり形状を通過後の光のMTF値をY20としたときに、以下の式5を満たすように構成されている。
【数16】
【0071】
式5を満たすように2つのMTF値X20及びY20が制御されていることで、画質の劣化を防ぐことができる。
ここで前記光は、使用する画角光線のうち、導光板内の導光角が最も臨界角に近い光線であってよい。
【0072】
1.6 スロープの構成例2
【0073】
空間周波数が20cycle/degである場合についても、空間周波数が10cycle/degである場合と同様に、例えば本開示の導光板ユニットは、以下の3つに場合分けして、それぞれの場合毎に、スロープが特定されてよい。
【0074】
1.6.1 構成例2-1(2つのスロープの幅が大きい場合)
【0075】
2つのスロープの幅がいずれも大きい場合について以下で説明する。この場合は、TZのスロープ幅w1及びw2のいずれもが、光線の導光板内における全反射間隔d以上である場合に相当する。
この場合において、2つのスロープそれぞれによる光線角度ずれ量Δpeakを縦横軸にとった場合のMTF値の分布が、図13に示されている。横軸、縦軸はそれぞれスロープ1、スロープ1によって変化させられる光線角度ずれ量Δpeakである。
同図において、空間周波数が20cycle/degにおけるMTFの劣化率が50%以下になる(すなわち式5を満たす)Δpeakの範囲から求まるTZの形状は、以下の式6のとおりに表される。
【数17】
この式6によるTZ形状の制約は、上記で図7を参照して説明したh1及びh2を強く制限するものであるため、w1及びw2は大きくても許容されるというものである。すなわち、wがコントロールできなくともhを制限すればよい。
例としてθairin=25[deg]、n1=2.0、n2=1.5、Λ(ICGのピッチ)=360nm、λ(ピーク波長)=530nmとすると、w1(もしくはw2)=0.5 mmの場合に、0 < h1 ≦ 92 nmとなる。
【0076】
1.6.2 構成例2-2(1つのスロープの幅が大きく他方のスロープの幅は小さい場合)
【0077】
1つのスロープ幅は小さいが他方のスロープ幅は大きい場合の例について以下で説明する。この場合は、TZのスロープ幅w1は光線の導光板内における全反射間隔d未満であり且つTZのスロープ幅w2は光線の導光板内における全反射間隔d以上である場合に相当する。
この場合において、一方のスロープによる光線角度ずれ量Δpeakを縦軸、もう片方のスロープによる角度がズレる光線割合PSを横軸にとった場合のMTF値の分布が図14に示されている。
同図において、空間周波数が20cycle/degにおけるMTFの劣化率が50%以下になる(すなわち式5を満たす)PSとΔpeakの範囲から求まるTZの形状は、以下の式7のとおりに表される。
【数18】
この式の特徴として、図7における片側のスロープの幅を強く制限できる際に有効な制約条件であるということが挙げられる。
例としてθairin=25[deg]、n1=2.0、n2=1.5、Λ(ICGのピッチ)=360nm、λ(ピーク波長)=530nm、t=0.5mmとすると、d=0.6 mm、0 < w1 ≦ 0.12 mmとなる。
【0078】
1.6.3 構成例2-3(2つのスロープの幅が小さい場合)
【0079】
2つのスロープの幅が小さい場合の例を以下に説明する。この場合は、TZのスロープ幅w1及びw2のいずれも、光線の導光板内における全反射間隔d未満である場合に相当する。
この場合において、2つのスロープそれぞれのスロープによる角度がズレる光線割合PSを縦横軸にとった場合のMTF値の分布が図15に示されている。横軸及び縦軸はそれぞれスロープ1及びスロープ2によって変化させられる角度がズレる光線割合PSである。
同図において空間周波数が20cycle/degにおけるMTFの劣化率が50%以下になる(すなわち式5を満たす)PSの範囲から求まるTZの形状は、以下の式8のとおりに表される。
【数19】
この式の特徴としては、図7における両側のスロープの幅を強く制限できる際に有効な制約条件であるということが挙げられる。
例としてθairin=25[deg]、n1=2.0、n2=1.5、Λ(ICGのピッチ)=360nm、λ(ピーク波長)=530nm、t=0.5mmとすると、d=0.6 mm、0 < w1,w2 ≦ 0.090 mmとなる。
【0080】
以上の構成例2-1~2-3において説明したとおり、TZの山なり形状構造体のスロープの幅と全反射間隔との大小関係に応じて各スロープの幅又は高さを制御することによって、MTF劣化を防ぐことができる。
すなわち、好ましい実施態様において、
「前記山なり形状のスロープの幅」が「前記導光板内の前記光の全反射間隔」未満である場合は、「前記スロープの幅」が「前記全反射間隔に基づき特定される閾値」以下であるように、「前記スロープ」が構成されてよく、
「前記山なり形状のスロープの幅」が「前記導光板内の前記光の全反射間隔」以上である場合は、「前記スロープの高さ」が「前記スロープの幅及び前記スロープの傾き角に基づき特定される閾値」以下であるように、「前記スロープ」が構成されてよい。
より具体的には、前記山なり形状の2つのスロープの幅又は高さが、各スロープの幅と前記全反射間隔との間の大小関係に応じて、上記式6~8のいずれかを満たすように、本開示の導光板ユニットは構成されてよい。
【0081】
1.7 TZcの構成例
【0082】
本開示の導光板ユニットには、導光板の2つの面のうち、山なり形状構造体(以下では、第一構造体又はTZともいう)が設けられた面と反対側の面に又は同じ側の面に、当該山なり形状構造体による影響を打ち消すための構造体(以下では、第二構造体又はTZcともいう)が設けられてよい。
すなわち、本開示に従う導光板ユニットは、TZによって角度を変えられた光線がTZcに当たるように構成されてよい。TZcにより、光線の角度ずれが打ち消される。TZの形状及びTZcの設置位置によって、種々の実施態様を採用することができる。
このような構成を有する導光板ユニットにおいても、MTF劣化を解消することができ、上記で述べた式1の条件を満たすことができ、さらには、式5の条件を満たすこともできる。
以下ではこれら2つの構造体を有する導光板ユニットの例について説明する。
【0083】
1.7.1 TZの存在する面と反対側の面に存在するTZcの例1
【0084】
一実施態様において、導光板の2つの面のうち、TZが設けられた面と反対側の面にTZcが設けられてよい。導光板内を進行する光線がTZに当たってその光線角度が変化した後に、当該光線がTZcに当たることで光線角度をTZに当たる前の導光角度に戻すことができる。
この場合において、TZとTZcとは、好ましくは同じ材料から形成されてよい。これにより、光線の角度ずれを打ち消しやすくなる。
例えば図16に示されるように、導光板Pの2つの面のうち、一方の面にTZが存在し、そして、他方の面にTZcが設けられていてよい。TZcはTZと略同一の形状を有してよい。TZcは、基板断面に対してTZと点対称になるように配置されてよい。
同図に示される導光板ユニットU2は、導光板Pと、当該導光板の一方の面に設けられた第一回折格子G1、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子G2、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する第一構造体TZとを有する。さらに、前記導光板の前記一方の面又は他方の面上に、前記第一構造体TZに起因する前記光の角度ずれを打ち消すように構成された山なり形状の第二構造体TZcを備えている。
【0085】
この実施態様に関して、TZ及びTZcの形状をそれぞれ説明する。
【0086】
まずTZの形状について説明する。
TZの形状に関して、好ましくは、スロープ1の幅w1は、w1<0.1*dを満たし、且つ、スロープ2の幅がw2≧dである。ここで、dは、前記導光板内の前記光の全反射間隔である。
TZによる光線への影響を打ち消すためには、TZのスロープそれぞれに対応するTZcのスロープを配置することが望ましい。図17に示されるように、スロープ幅が大きい場合はTZcの形状は谷形状且つ側面が垂直であることが求められることがあり、この形状を実現することは難しい。そのため、上記のとおりw1<0.1*dを満たすことによって、TZcを形成しやすくなる。
また、w1<0.1*dを満たす場合は、一方のスロープ(w1のスロープ)の影響が非常に小さいため、他方のスロープの影響のみを打ち消せばよいというメリットもある。
すなわち、前記導光板ユニットは、前記第一構造体の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1が、w1<0.1d(ここで、dは、前記導光板内の前記光の全反射間隔である。)を満たすように構成されていてよい。
【0087】
次に、TZcの形状について説明する。
MTF劣化を改善するためには、MTF劣化を完全に打ち消すのではなく弱められれば良い。そのため、TZcは、TZと完全に一致した形状でなくてもよく、すなわち、TZcの形状に関する許容誤差及び位置に関する許容誤差が存在する。以下で、これらの許容誤差について説明する。
【0088】
TZcの形状におけるスロープの幅をwc1及びwc2とし、TZcのスロープと基板との成す角をφc1及びφc2とする。
この場合、TZcの形状は、以下の4つの式により表される。
wc1<0.1*d、
wc2=w2+Δw、
φc2=φ2+Δφ、及び
x=d/2+n*d+Δx
ここで、これらの式におけるパラメータは以下のとおりである。
x:TZの頂点とTZcの端の水平方向の距離差
Δw:TZcのスロープ幅の許容誤差
Δφ:TZcのスロープ角度の許容誤差
Δx:xの許容誤差
n:任意の整数
xについて、d/2+n*dは、導光板の表面にあるTZに当たった光線が裏面に当たる間隔を示している。xは、前記第一構造体のスロープ2の左端から、前記スロープ2の影響を打ち消す役割を持つ前記第二構造体のスロープの左端までの水平方向の距離である。Δxは、(光線の全反射間隔の半分)+(光線の全反射間隔の整数倍)であり、つまり(d/2+n*d)からの誤差である。そのため、上記のとおり、x=d/2+n*d+Δxと表される。
【0089】
上記式におけるΔw、Δφ、Δx、及びnの範囲について以下でさらに説明する。
TZによる光線の角度ずれを修正する位置にTZcを配置した場合、TZcのスロープの幅及び位置は、角度ずれを修正できる光線割合に影響を与え、スロープの角度は、光線のずれた角度をどれだけ戻せるかに影響を与える。これらのパラメータはスロープの構成例1(特には構成例1-1~1-3)と同様にPSFの形状で表現でき、つまりMTF値を導出できる。w2≧dであるため、PSFの考え方は図9の右に示されたとおりである。
【0090】
Δw(横軸)とΔφ(縦軸)が変化したときのMTF分布が図18に示されている。
同図から、MTF値が、TZcが無い場合のMTF値よりも高くなる範囲、すなわち丸囲み数字1により示される範囲が、以下の(式9-1)に示される関係式により表される。
また、Δx(横軸)とΔφ(縦軸)が変化したときのMTF分布が図19に示されている。同図から、MTF値が、TZcが無い場合のMTF値よりも高くなる範囲、すなわち丸囲み数字2により示される範囲と丸囲み数値3により示される範囲がそれぞれ、以下の(式9-2)及び(式9-3)の関係式により表される。
これらの式において、φc2<0の場合は、スロープの左右が逆転して、スロープの角度が-φc2である構造を意味する。
【数20】
このように、(式9-1)、(式9-2)、又は(式9-3)のいずれかを条件を満たせば、空間周波数が10cycle/degである場合のMTF劣化を改善することができる。
【0091】
1.7.2 TZの存在する面と反対側の面に存在するTZcの例2
【0092】
上記1.7.1では、TZの形状に関して、スロープ2の幅がw2≧dである場合について説明した。
以下では、スロープ2の幅がw2<dである場合について説明する。
【0093】
TZcの形状におけるスロープの幅をwc1及びwc2とし、TZcのスロープと基板との成す角をφc1及びφc2とする。
この場合、TZcの形状は、以下の4つの式により表される。
wc1<0.1*d、
wc2=w2+Δw、
φc2=φ2+Δφ、
x=d/2+n*d+Δxを満たす。
ここで、xについて、d/2+n*dは導光板の表面にあるTZに当たった光線が裏面に当たる間隔を示している。
【0094】
上記式におけるΔw、Δφ、Δx、及びnの範囲について以下で説明する。
w2<dであるため、PSFの考え方は図9の左に示されるとおりである。
Δw(横軸)とΔφ(縦軸)が変化したときのMTF分布が、図20に示されている。この図からTZcが無いときのMTF値より高くなる範囲、すなわち丸囲み数値4により示される範囲及び丸囲み数値5により示される範囲が、それぞれ(式10-1)及び(式10-2)の関係式により表される。
また、Δx(横軸)とΔφ(縦軸)が変化したときのMTF分布が、図21に示されている。この図から、MTF値が、TZcが無いときのMTF値より高くなる範囲、すなわち丸囲み数字6により示される範囲が、(式10-3)の関係式により表される。
ただし、φc2<0の場合は、スロープの左右が逆転して、スロープの角度が-φc2の構造を意味する。
【数21】
このように、(式10-1)、(式10-2)、又は(式10-3)のいずれかを条件を満たせば、空間周波数が10cycle/degである場合のMTF劣化を改善することができる。
【0095】
1.7.3 TZの存在する面に存在するTZcの例1
【0096】
上記1.7.1では、TZの存在する面と反対側の面にTZcが存在する場合の構成例について説明した。
以下では、TZが存在する面と同じ面にTZcが存在する場合について説明する。
【0097】
この場合において、図22に示されるように、TZcはTZと略同一の形状を有してよい。TZcは、基板に直行する軸に対して線対称になるように配置されてよい。
【0098】
まずTZの形状について説明する。
TZの形状に関して、上記1.7.1と同様に、好ましくは、スロープ1の幅w1は、w1<0.1*dを満たし、且つ、スロープ2の幅w2がw2≧dである。ここで、dは、前記導光板内の前記光の全反射間隔である。w1<0.1*dを満たすことによって、TZcを形成しやすくなる。
また、この場合は、一方のスロープ(w1のスロープ)の影響が非常に小さいため、他方のスロープの影響のみを打ち消せばよいというメリットもある。
【0099】
次に、TZcの形状について説明する。
MTF劣化を改善するためには、MTF劣化を完全に打ち消すのではなく弱められれば良い。そのため、TZcは、TZと完全に一致した形状でなくてもよく、すなわち、TZcの形状に関する許容誤差及び位置に関する許容誤差が存在する。以下で、これらの許容誤差について説明する。
【0100】
TZcの形状におけるスロープの幅をwc1及びwc2とし、TZcのスロープと基板との成す角をφc1及びφc2とする。
この場合、TZcの形状は、以下の4つの式により表される。
wc1<0.1*d、
wc2=w2+Δw、
φc2=φ2+Δφ、
x=d+n*d+Δx。
ここで、これらの式におけるパラメータは以下のとおりである。
x:TZの頂点とTZcの端の水平方向の距離差
Δw:TZcのスロープ幅の許容誤差
Δφ:TZcのスロープ角度の許容誤差
Δx:xの許容誤差
n:任意の整数
xについて、d+n*dは導光板の表面にあるTZに当たった光線が再度表面に当たる間隔を示している。
【0101】
上記式に関して、Δw、Δφ、Δx、及びnの範囲は、上記1.7.1において説明された(式9-1)、(式9-2)、及び(式9-3)によって表されてよい。すなわち、Δw、Δφ、Δx、及びnに関して、(式9-1)、(式9-2)、又は(式9-3)のいずれかを条件を満たせば、空間周波数が10cycle/degである場合のMTF劣化を改善することができる。
【0102】
1.7.4 TZの存在する面に存在するTZcの例2
【0103】
上記1.7.3では、TZの形状に関して、スロープ2の幅がw2≧dである場合について説明した。
以下では、スロープ2の幅がw2<dである場合について説明する。
【0104】
この場合は、上記1.7.2において説明したように、TZcの形状におけるスロープの幅をwc1及びwc2とし、TZcのスロープと基板との成す角をφc1及びφc2とする。
この場合、TZcの形状は、以下の4つの式により表される。
wc1<0.1*d、
wc2=w2+Δw、
φc2=φ2+Δφ、
x=d+n*d+Δx。
ここで、xについて、d+n*dは導光板の表面にあるTZに当たった光線が再度表面に当たる間隔を示している。
【0105】
上記式におけるΔw、Δφ、Δx、及びnの範囲は、上記1.7.2において説明された(式10-1)、(式10-2)、及び(式10-3)によって表されてよい。すなわち、Δw、Δφ、Δx、及びnに関して、(式10-1)、(式10-2)、又は(式10-3)のいずれかを条件を満たせば、空間周波数が10cycle/degである場合のMTF劣化を改善することができる。
【0106】
1.8 コーティング層
【0107】
一実施態様において、前記構造体が存在する領域に、前記構造体へと前記光が進入することを防ぐように構成された反射コーティング層、又は前記構造体へ進入した前記光が前記山なり形状のスロープによって角度ずれを起こさないように構成されたコーティング層が設けられていてよい。このような反射コーティング層又はコーティング層によっても、MTF劣化を抑制することができる。このような構成を有する導光板ユニットにおいても、MTF劣化を解消することができ、上記で述べた式1の条件を満たすことができ、さらには、式5の条件を満たすこともできる。以下でこれらの層に関してより詳細に説明する。
【0108】
1.8.1 反射コーティング層の例
【0109】
以下で反射コーティング層が設けられた本開示の導光板ユニットの構成例について、図23を参照しながら説明する。同図は、当該構成例の模式図である。
【0110】
同図の左に示されるように、導光板P上に反射コーティング層RLが積層されて積層体が得られる。そして、当該積層体に対するインクジェット及びナノインプリンティングによる回折格子の形成によって、同図の右に示されるように、回折格子G1及びG2並びに山なり形状構造体TZが形成される。このようにし、導光板P、反射コーティング層RL、及び、回折格子G1及びG2並びに山なり形状構造体TZを有する導光板ユニットU31が得られる。このように、前記反射コーティング層は、前記導光板と前記構造体との間に設けられていてよい。
【0111】
ここで、回折格子G1及びG2は、反射コーティング層RL上が存在する領域には形成されず、導光板Pと接触するように形成される。
一方で、山なり形状構造体TZは、反射コーティング層RL上に形成される。すなわち、反射コーティング層CLが存在する領域においては、導光板Pと反射コーティング層RLと山なり形状構造体TZとがこの順に積層された積層体構造が形成される。
反射コーティング層RLが存在する領域は、山なり形状構造体TZが存在する領域を全てカバーするように形成されてよく、反射コーティング層RLが存在する領域は、山なり形状構造体TZが存在する領域よりも広くてよい。
【0112】
上記のとおり、導光板ユニットU81は、山なり形状構造体TZと導光板Pとの間に反射コーティング層RLを有する。当該反射コーティング層CLによって、導光板内を進行する光は、TZに当たることなく導光板Pの平坦な面で全反射するので、MTF劣化がない。このように、反射コーティング層によって、TZによるMTF劣化を大きく緩和できる。
【0113】
好ましくは、前記反射コーティング層は、金属材料で形成されてよく、すなわち金属反射コーティング層であってよい。当該金属材料は、例えばアルミ、銀、金、アルミ合金、銅、水銀、クローム、ニッケル、白金、又はすずを主成分として含んでよく、好ましくはアルミ、銀、金、又はアルミ合金を主成分として含む。
【0114】
前記反射コーティング層の膜厚は、例えば10nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上であってよい。前記膜厚は、例えば500nm以下、400nm以下、300nm以下、又は200nm以下であってよい。
【0115】
前記反射コーティング層は、必ずしもコーティング処理により形成されたものである必要はなく、他の手法により形成されたものであってもよい。例えば、前記反射コーティング層は、蒸着又はスパッタリングにより形成されてもよい。前記反射コーティング層は、反射層と呼ばれてもよい。
【0116】
1.8.2 コーティング層の例
【0117】
以下で、前記構造体へ進入した前記光が前記山なり形状のスロープによって角度ずれを起こさないように構成されたコーティング層を有する本開示の導光板ユニットについて、図24を参照しながら説明する。同図は、導光板ユニットの模式図である。
【0118】
同図に示される導光板ユニットU32のように、導光板P上に、インクジェット及びナノインプリンティングによる回折格子の形成によって、回折格子G1及びG2並びに山なり形状構造体TZが形成される。そして、さらに、当該山なり形状構造体TZが存在する領域をカバーするようにコーティング層CLが形成される。すなわち、山なり形状構造体TZが存在する領域には、導光板P、山なり形状構造体TZ、及びコーティング層CLがこの順に存在する積層体構造が形成される。
このようにして、導光板P、回折格子G1及びG2並びに山なり形状構造体TZ、及びコーティング層CLを有する導光板ユニットU82が得られる。
【0119】
同図に示されるように、前記コーティング層CLは、前記山なり形状TZをカバーし、且つ、フラット形状(フラットな平面S)を形成するように設けられてよい。前記コーティング層は、TZの材料と略同一の屈折率を有する材料により形成されてよく、好ましくはTZと同じ屈折率を有する材料で形成されてよい。
このようなコーティング層によって、TZがフラットに近づくので光線への影響が小さくなり、MTF劣化が緩和される。
また、本開示において、元のTZと当該コーティング層とからなる構造体が、1つの新たなTZとして捉えられてもよい。そして、当該新たなTZに対して、上記1.8.1以前で述べたいずれかの手段が適用されてもよい。
【0120】
1.9 複数の山なり形状を有する構造体を有する場合の例
【0121】
本開示の導光板ユニットは、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に、複数の山なり形状を有する構造体を備えてもよい。この場合において、好ましくは、前記複数の山なり形状の全ての高さが90nm以下である。これにより、MTF劣化を抑制することができる。このような構成を有する導光板ユニットにおいても、MTF劣化を解消することができ、上記で述べた式1の条件を満たすことができ、さらには、式5の条件を満たすこともできる。これに関して図25を参照しつつ以下に説明する。
【0122】
同図の(a)に示される導光板ユニットU41のように、回折格子の形成過程において、2つの山なり形状の構造体m1及びm2が形成される場合がある。例えば回折格子形成のために屈折率の高いレジスト材料が使用され且つ2つの回折格子の間の距離が大きい場合に、回折格子G1に最も近い山なり形状構造体m1の隣に、高さの高い山なり形状構造体m2が形成される場合がある。このような導光板ユニットU91において、当該構造体m2の高さが高すぎる場合、例えば90nmを超える場合に特に、MTF劣化がもたらされる可能性が高まる。
【0123】
そこで、本開示の導光板ユニットは、2つの回折格子の間に複数の山なり形状が設けられた場合に、これら山なり形状の高さはいずれも、好ましくは90nm以下、より好ましくは85nm以下、さらにより好ましくは80nm以下であることが望ましい。
すなわち、同図の(b)に示される導光板ユニットU42のように、山なり形状構造体m1の隣、前記構造体m1の代わりに、山なり形状構造体m3及びm4が形成されてよく、これら構造体m1、m3、及びm4のいずれもが、高さが好ましくは90nm以下、より好ましくは85nm以下、さらにより好ましくは80nm以下である。
これにより、MTF劣化を防ぐことができる。これにより、空間周波数が10cycle/degにおけるMTFの劣化率を50%以下にすることができる。
【0124】
1.10 製造方法
【0125】
本開示に従う導光板ユニットは、例えばナノインプリント技術を利用した製造方法によって製造することができる。特には、当該製造方法は、レジスト材料をインクジェット方式によって導光板上に堆積することを含んでよく、当該インクジェット方式を用いたレジスト材料の堆積が、当該導光板上に前記山なり形状の構造体の形成をもたらす。当該製造方法について、以下で図26に示されたフロー図及び図27の模式図を参照しながら説明する。
【0126】
同図に示される工程S1において、レジスト材料RMが、導光板P上に堆積される。当該レジスト材料は、例えば光硬化性樹脂組成物であれば何でもよく、特には紫外線硬化性樹脂組成物であってもよい。当該レジスト材料は、樹脂成分として、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、及びエポキシ樹脂のうちのいずれか1つ又は2つ以上の組合せを含んでよい。また、これら光硬化性樹脂はナノ粒子を含んでいてもよい。このナノ粒子は一般に知られているナノ粒子は何でも用いることができ、例えば酸化チタン、酸化ジルコニア、シリカ、シリコン、ナノダイヤモンドなどが挙げられる。また、ナノ粒子を含む場合は、1種類又は2種類以上のナノ粒子が光硬化性樹脂に含まれてもよい。当該導光板Pは、当技術分野において導光板材料として使用されうるいずれの材料から形成されてもよく、導光板Pの材料は、例えば無機材料でも有機材料でもこれらのハイブリッド材料でもよい。例えば無機材料ではガラス、シリコンなど、有機材料ではポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、チオウレタン系樹脂又はエポキシ系樹脂などが具体例として挙げられる。
【0127】
工程S1において、前記レジスト材料は、例えばインクジェット方式によって前記導光板上に施与される。当該インクジェット方式による施与は、上記の山なり形状の構造体が形成されやすく、上記で述べたTZに関する問題が生じやすい。工程S1におけるレジスト材料の滴下量及び位置を調整することによって、導光板ユニットに含まれる山なり形状構造体の形状を調整することができる。より具体的には、TZが生じる領域におけるレジスト材料滴下量及びその周囲の2つの回折格子を形成する領域におけるレジスト材料滴下量、並びに、これらレジスト材料が滴下される位置を調整することによって、山なり形状構造体の形状を所望の形状へと(例えばMTF劣化が抑制された形状へと)調整することができる。
【0128】
例えば、図27の左に示されるようにレジスト材料を滴下した場合に得られる導光板ユニットが本開示に従うMTFに関する特性を有さない場合に、同図の右に示されるようにレジスト材料の滴下量及び位置を調整することによって、例えばスロープや高さを調整することができ、本開示に従うMTFに関する特性を有する導光板ユニットを得ることができる。これらレジスト材料の滴下量及び位置は、例えば導光板ユニットの所望の性能及びレジスト材料の種類又は特性などに応じて、当業者が適宜調整することができる。
なお、第一回折格子及び第二回折格子を形成するために必要なレジスト材料の厚みT1及びT2は、これら回折格子の構造に応じて決まる。そこで、各回折格子が形成される領域においてはこれらの厚みを満たしつつ、且つ、TZにおけるレジスト材料の厚み分布を調整することで、各回折格子と所望の形状を有するTZを形成することができる。
【0129】
工程S2において、スタンパーSTが、導光板に押し付けられる。すなわち、当該スタンパー及び当該導光板が、これらによって前記レジスト材料を挟むように押し付けられる。これにより、当該スタンパーに予め設けられた回折構成形成用の模様中に入り込む。
【0130】
工程S3において、前記レジスト材料が硬化される。当該硬化は、転写とも呼ばれうる。当該硬化のための手段は、例えば樹脂の種類に応じて適宜選択されてよい。当該樹脂が光硬化性である場合は光が樹脂に照射されてよい。より具体的には、当該樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合は紫外線が当該樹脂に照射される。当該硬化によって、前記第一回折格子及び第二回折格子が形成されるとともに、これらの間に存在する山なり形状構造体も形成される。
【0131】
工程S4において、前記スタンパーが前記導光板から離される。すなわち、回折格子がスタンパーの型から離型される。このようにして、本開示に従う導光板ユニットが製造される。
【0132】
1.11 使用方法
【0133】
本開示に従う導光板ユニットは、画像表示装置を製造するために用いられてよい。そして、当該導光板ユニットは、例えば当該画像表示装置において、描画エンジンから出射された光(特には画像表示光)をユーザの眼に導くために用いられてよい。前記導光板ユニットによりMTFの劣化を防ぐことができるので、より良い画質の画像をユーザに提示することができる。当該画像表示光の構成例については、以下で説明する。
【0134】
2.第2の実施形態(画像表示装置)
【0135】
本開示は、上記1.において説明した導光板ユニットを含む画像表示装置も提供する。当該画像表示装置の例について、図28を参照しながら説明する。
【0136】
同図に示される画像表示装置100は、導光板ユニット101及び描画システム102を備えている。
導光板ユニット101は、上記1.において説明した本開示の導光板ユニットのいずれかであってよい。
描画システム102は、導光板ユニット101によって導光される画像表示光を形成する。導光板ユニット101は、当該映像表示光を導光して、ユーザの眼103に到達させる。
【0137】
同図には示されていないが、画像表示装置100は、描画システム102と導光板ユニット101との間の光路上に、1以上の光学素子を有してよい。当該光学素子は、導光光学系を含んでよく、当該導光光学系は、例えば1以上のコリメータレンズ及び/又は1以上のリレーレンズを含んでよい。
【0138】
描画システム102は、筐体に格納されていてよい。当該筐体に、前記導光光学系も格納されていてよい。
また、画像表示装置100は、導光板ユニット101を目の前に保持するための器具をさらに有してよい。当該器具は、例えばメガネのテンプル状部分及びリム状部分を含んでよい。当該器具は、画像表示装置100を頭部に固定するためのバンドであってもよい。当該器具に、前記筐体が取り付けられていてもよい。
【0139】
画像表示装置100は、例えば頭部装着型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ、以下HMDともいう)として構成されてよい。当該頭部装着型ディスプレイは、例えば透過型のHMDであってよく、又は、非透過型のHMDであってもよい。
当該透過型のHMDは例えば眼鏡型のディスプレイとして構成されうる。この場合、導光板ユニット101は、外界風景からの光を透過して眼に到達させるものでありうる。導光板ユニット101は、眼鏡のレンズに相当する部分に設けられてよい。当該透過型のHMDによって、外界風景に、画像表示装置100により提示される映像を重畳させることができ、例えばARをユーザに提供することができる。
当該非透過型のHMDは、例えば両目を完全に覆うものであってよい。この場合、外界風景からの光は眼に到達しない。
【0140】
本開示は、以下のような構成を採用することもできる。
[1]
導光板と、
前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体と、
を備えており、
空間周波数が10cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX10とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY10としたときに、以下の式1を満たすように構成されている
【数22】
導光板ユニット。
[2]
前記山なり形状のスロープの幅が前記導光板内の前記光の全反射間隔未満である場合は、前記スロープの幅が前記全反射間隔に基づき特定される閾値以下であるように、前記スロープが構成されており、
前記山なり形状のスロープの幅が前記導光板内の前記光の全反射間隔以上である場合は、前記スロープの高さが前記スロープの幅及び前記スロープの傾き角に基づき特定される閾値以下であるように、前記スロープが構成されている、
[1]に記載の導光板ユニット。
[3]
前記山なり形状の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが、前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の高さh1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式2を満たすように構成されており、
【数23】
前記山なり形状の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1が前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満であり且つ前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式3を満たすように構成されており、
【数24】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の幅w2が以下の式4を満たすように構成されている、
【数25】
[1]又は[2]に記載の導光板ユニット。
[4]
空間周波数が20cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX20とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY20としたときに、以下の式5を満たすように構成されている、
【数26】
[1]~[3]のいずれか一つに記載の導光板ユニット。
[5]
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが、前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の高さh1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式6を満たすように構成されており、
【数27】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1が前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満であり且つ及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が前記導光板内の前記光の全反射間隔d以上である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の高さh2が以下の式7を満たすように構成されており、
【数28】
前記山なり形状の、前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1及び前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2のいずれもが前記導光板内の前記光の全反射間隔d未満である場合において、
前記山なり形状は、前記スロープ1の幅w1及び前記スロープ2の幅w2が以下の式8を満たすように構成されている、
【数29】
[4]に記載の導光板ユニット。
[6]
前記導光板ユニットは、さらに、前記導光板の前記一方の面又は他方の面上に、前記構造体(以下「第一構造体」という)に起因する前記光の角度ずれを打ち消すように構成された山なり形状の第二構造体を備えている、
[1]~[5]のいずれか一つに記載の導光板ユニット。
[7]
前記第一構造体の前記第一回折格子側のスロープ1の幅w1は、
w1<0.1d
(ここで、dは、前記導光板内の前記光の全反射間隔である。)
を満たすように構成されている、[6]に記載の導光板ユニット。
[8]
前記第一構造体の前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が、前記光の全反射間隔d以上である場合において、前記第二構造体の山なり形状は、以下の式9-1、9-2、又は9-3のいずれかを満たすように構成されており、
【数30】
前記第一構造体の前記第二回折格子側のスロープ2の幅w2が、前記光の全反射間隔d未満である場合において、前記第二構造体の山なり形状は、以下の式10-1、10-2、又は10-3のいずれかを満たすように構成されている、
【数31】
[7]に記載の導光板ユニット。
[9]
前記構造体が存在する領域に、
前記構造体へと前記光が進入することを防ぐように構成された反射コーティング層、又は
前記構造体へ進入した前記光が前記山なり形状のスロープによって角度ずれを起こさないように構成されたコーティング層
が設けられている、
[1]~[8]のいずれか一つに記載の導光板ユニット。
[10]
前記反射コーティング層は、前記導光板と前記構造体との間に設けられている、[9]に記載の導光板ユニット。
[11]
前記コーティング層は、前記構造体の屈折率と略同一の屈折率を有する材料で形成されている、[9]に記載の導光板ユニット。
[12]
前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に、複数の山なり形状を有する構造体を備えており、
前記複数の山なり形状の全ての高さが90nm以下である、
[1]に記載の導光板ユニット。
[13]
前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子、前記導光板内を進行した前記光を拡大するように構成されたエキスパンダー、及び、前記導光板から前記光を出射させるように構成された出射回折格子のうちのいずれかの回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記第一回折格子を通過して前記導光板の端に向かう光を回折して再度前記第一回折格子へと進行させるリサイクラーである、
[1]~[12]のいずれか一つに記載の導光板ユニット。
[14]
前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記第一回折格子によって回折されて導光板内を進行した前記光を拡大するように構成されたエキスパンダーである、
[1]~[12]のいずれか一つに記載の導光板ユニット。
[15]
前記第一回折格子は、前記導光板内を進行した光を拡大するように構成されたエキスパンダーであり、且つ、
前記第二回折格子は、前記エキスパンダーにより拡大された光を前記導光板から出射させるように構成された出射回折格子である、
[1]~[12]のいずれか一つに記載の導光板ユニット。
[16]
前記第一回折格子は、前記導光板に入射した光を回折して導光板内を進行させるように構成された入射回折格子であり、且つ、
前記第二回折格子は、前記導光板内を進行した光を前記導光板から出射させるように構成された出射回折格子である、
[1]~[12]のいずれか一つに記載の導光板ユニット。
[17]
前記出射回折格子は、前記導光板内を進行した光を拡大し且つ前記導光板から出射させるよう構成された出射回折格子である、[16]に記載の導光板ユニット。
[18]
前記山なり形状の構造体は、前記第一回折格子若しくは前記第二回折格子又はこれら両方の回折格子を形成するために用いられた材料から形成されている、[1]~[17]のいずれか一つに記載の導光板ユニット。
[19]
前記導光板ユニットは、画像表示装置を製造するために用いられる、[1]~[18]のいずれか一つに記載の導光板ユニット。
[20]
導光板と、
前記導光板の一方の面上に設けられた第一回折格子、前記第一回折格子によって回折された光を回折する第二回折格子、及び、前記第一回折格子及び前記第二回折格子の間に存在する山なり形状を有する構造体と、
を備えている導光板ユニットを含み、
前記導光板ユニットは、空間周波数が10cycle/degである場合の前記山なり形状へ入射する直前の光のMTF値をX10とし且つ前記山なり形状を通過直後の光のMTF値をY10としたときに、以下の式1を満たすように構成されている
【数32】
画像表示装置。
【0141】
以上、本開示の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0142】
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等を用いてもよい。また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0143】
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0144】
TZ 山なり形状を有する構造体、又は、当該構造体が存在する領域
G1 第一回折格子
G2 第二回折格子
P 導光板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図30A
図30B
図31A
図31B
図32A
図32B
図32C
図32D
図32E