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特開2024-168198感情伝達装置、感情伝達プログラムおよび感情伝達方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168198
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】感情伝達装置、感情伝達プログラムおよび感情伝達方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084664
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】遠山 正之
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA05
5H181AA14
5H181AA25
5H181AA26
5H181AA30
5H181BB20
5H181CC04
5H181FF27
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】同乗者本人に気付かれず、また、運転の妨げとならずに同乗者の感情を操縦者等に伝達することを実現する。
【解決手段】乗物(2)の乗員をモニタリングして得られた検知情報を取得する入力部(110)と、検知情報を基に前記乗員(P)の感情を推定する感情推定部(130)と、推定された感情を示す感情情報を、前記乗員が認識できない形態で前記乗物の操縦者(D)へ伝達する出力部(150)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の乗員の感情を推定するために当該乗員をモニタリングして得られた検知情報を取得する入力部と、
前記検知情報を基に前記乗員の感情を推定する感情推定部と、
前記推定された感情を示す感情情報を、前記乗員が認識できない形態で前記乗物の操縦者へ伝達する出力部と、を備える、
感情伝達装置。
【請求項2】
上記出力部は、前記操縦者への触覚刺激によって前記感情情報を伝達する、
請求項1に記載の感情伝達装置。
【請求項3】
前記触覚刺激は、振動刺激、温冷刺激、空気圧刺激のいずれか、またはそれらの組み合わせを含む、
請求項2に記載の感情伝達装置。
【請求項4】
前記乗物は、前記操縦者の座席または前記操縦者が操作する操舵部を備え、
前記出力部は、前記座席または前記操舵部に1以上設けられる、
請求項2または3に記載の感情伝達装置。
【請求項5】
周期、強さ、出力部位および温度の一部または全部を設定した、前記振動刺激、前記温冷刺激、前記空気圧刺激の一部または全部を組み合わせた出力パターンを、前記感情情報に応じて前記出力部が出力する前記触覚刺激の出力パターンとして決定する出力パターン決定部を更に備える、
請求項3に記載の感情伝達装置。
【請求項6】
前記入力部はカメラであり、前記検知情報は前記乗員の表情画像である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の感情伝達装置。
【請求項7】
前記入力部は心拍計であり、前記検知情報は前記乗員の心拍情報である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の感情伝達装置。
【請求項8】
前記入力部は、前記乗員が前記乗物に乗ったときに前記検知情報を取得する
請求項1から3のいずれか1項に記載の感情伝達装置。
【請求項9】
前記入力部は、所定の時間間隔で前記検知情報を取得する
請求項1から3のいずれか1項に記載の感情伝達装置。
【請求項10】
前記入力部は、前記乗物の走行状態が所定の状態であるときに前記検知情報を取得する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の感情伝達装置。
【請求項11】
前記入力部は、前記乗物内部の空気質が所定の状態であるときに前記検知情報を取得し、前記空気質の状態の指標は、温度、湿度、臭気の少なくともいずれかである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の感情伝達装置。
【請求項12】
請求項1に記載の感情伝達装置としてコンピュータを機能させるための感情伝達プログラムであって、上記感情推定部としてコンピュータを機能させるための感情伝達プログラム。
【請求項13】
感情伝達装置によって実行される感情伝達方法であって、
乗物の乗員の感情を推定するために当該乗員をモニタリングして、検知情報を取得する入力ステップと、
前記検知情報を基に前記乗員の感情を推定する感情推定ステップと、
前記推定された感情を示す感情情報を、前記乗員が認識できない形態で前記乗物の操縦者へ伝達する出力ステップとを含む
感情伝達方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物内でのコミュニケーションを支援する感情伝達装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の2以上の着座位置について、その着座位置に着座する乗員の顔画像に基づいて前記乗員の感情を表す感情情報を取得し、感情情報に対応する感情表示を作成する感情表示作成手段を備える感情モニタリングシステムなどが従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-216241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、特に小型の乗物においては、感情を推定されたことが乗員本人にも分かるため、乗員に不快感を与えるという問題がある。また、視覚や聴覚を通じて伝達するため、伝達先が操縦者の場合には、操縦の妨げになりうるという問題がある。
【0005】
乗用車、特に乗車体験をサービスとして提供するタクシーにおいては、操縦者(運転手)が乗員(乗客)と雑談などのコミュニケーションを取ることがある。しかし、その際、乗員の感情によっては、話しかけると乗員が不快になるおそれがある。たとえば、当該乗員が眠気を催しているときや、怒っているときである。このため、コミュニケーションを適切化し、乗員の乗車体験を快適にするため、乗員の感情を操縦者に伝達することが考えられる。しかしながら、乗員の感情をカーナビ等の画像情報や、音声による出力で操縦者に伝達した場合、カーナビ画面が乗員の目に入り、または音声が乗員の耳に届く状況においては、乗員の感情を操縦者に伝達していることが乗員本人に分かるため、乗員が不快になるおそれがある。
【0006】
本発明の一態様は、同乗者に気づかれず、また、運転の妨げとならずに乗員の感情を操縦者等に伝達することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る感情伝達装置は、乗物の乗員の感情を推定するために当該乗員をモニタリングして得られた検知情報を取得する入力部と、前記検知情報を基に前記乗員の感情を推定する感情推定部と、前記推定された感情を示す感情情報を、前記乗員が認識できない形態で前記乗物の操縦者へ伝達する出力部と、を備える。
【0008】
前記の構成によれば、同乗者に気づかれずに同乗者の感情を操縦者等に伝達することができる。よって、操縦者が乗員に対して適切なコミュニケーションを取ることを可能にし、乗員の乗車体験を快適にすることができる。
【0009】
前記出力情報は、前記操縦者への触覚刺激であってもよい。前記の構成によれば、操縦のために必要な視覚や聴覚を妨げずに、同乗者の感情を操縦者に伝達することができる。
【0010】
前記触覚刺激は、振動刺激、温冷刺激、空気圧刺激のいずれか、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。前記の構成によれば、刺激種別の組み合わせにより、多様な感情が表現でき、また、既存の情報との混乱を避けることができる。
【0011】
前記乗物は、前記操縦者の座席または前記操縦者が操作する操舵部を備え、前記出力部は、前記座席または前記操舵部に1以上設けられてもよい。前記の構成によれば、操縦者に伝わりやすい刺激ができる。また、刺激部位の組み合わせにより、多様な感情が表現でき、また、既存の情報との混乱を避けることができる。
【0012】
前記感情伝達装置は、周期、強さ、出力部位および温度の一部または全部を設定した、前記振動刺激、前記温冷刺激、前記空気圧刺激の一部または全部を組み合わせた出力パターンを、前記感情情報に応じて前記出力部が出力する前記触覚刺激の出力パターンとして決定する出力パターン決定部を更に備えてもよい。前記の構成によれば、刺激種別の組み合わせにより、多様な感情が表現でき、また、既存の情報との混乱を避けることができる。
【0013】
前記入力部は、カメラであり、前記検知情報は、前記乗員の表情画像であってもよい。前記の構成によれば、効果的に乗員の感情を推定できる。
【0014】
前記入力部は、心拍計であり、前記検知情報は、前記乗員の心拍情報であってもよい。前記の構成によれば、効果的に乗員の感情を推定できる。
【0015】
前記入力部は、前記乗員が前記乗物に乗ったときに前記検知情報を取得してもよい。前記の構成によれば、乗車時の乗員の感情を確実に1回は操縦者に伝達できる。
【0016】
前記入力部は、所定の時間間隔で前記検知情報を取得してもよい。前記の構成によれば、経時変化する乗員の感情を推定し、操縦者に伝達できる。
【0017】
前記入力部は、前記乗物の走行状態が所定の状態であるときに前記検知情報を取得してもよい。前記の構成によれば、乗物の走行状態によって変化する乗員の感情を推定し、操縦者に伝達できる。
【0018】
前記入力部は、前記乗物内部の空気質が所定の状態であるときに前記検知情報を取得し、前記空気質の状態の指標は、温度、湿度、臭気の少なくともいずれかである。前記の構成によれば、乗物内部の空気質によって変化する乗員の感情を推定し、操縦者に伝達できる。
【0019】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るプログラムは、前記感情伝達装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記入力部、前記感情推定部および前記出力部としてコンピュータを機能させるための感情伝達プログラムである。前記の構成によれば、前記感情伝達装置と同様の効果を奏する。
【0020】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る感情伝達方法は、感情伝達装置によって実行される感情推定方法であって、乗物の乗員の感情を推定するために当該乗員をモニタリングして、検知情報を取得する入力ステップと、前記検知情報を基に前記乗員の感情を推定する感情推定ステップと、前記推定された感情を示す感情情報を、前記乗員が認識できない形態で前記乗物の操縦者へ伝達する出力ステップとを含む。前記の方法によれば、前記感情伝達装置と同様の効果を奏する。
【0021】
本発明の各態様に係る感情伝達装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記感情伝達装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記感情伝達装置をコンピュータにて実現させる感情伝達装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、同乗者に気づかれず、また、運転の妨げとならずに乗員の感情を操縦者等に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1に係る感情伝達装置の概要を説明する図である。
図2】本発明の実施形態1に係る感情伝達装置のシステム構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る感情伝達装置の処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態1に係る感情の分類について説明する図である。
図5】本発明の実施形態1に係る推定された感情と出力パターンの対応を示す図である。
図6】本発明の実施形態1の変形例に係る感情伝達装置の処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態2に係る感情伝達装置のシステム構成を示す図である。
図8】本発明の実施形態2に係る感情伝達装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施形態1〕
(感情伝達装置の概要)
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0025】
本実施形態にかかる感情伝達装置は、乗物の乗員の感情を推定するために当該乗員をモニタリングして得られた検知情報を取得する入力部と、前記検知情報を基に前記乗員の感情を推定する感情推定部と、前記推定された感情を示す感情情報を、前記乗員が認識できない形態で前記乗物の操縦者へ伝達する出力部と、を備える。
【0026】
(感情伝達装置の構成)
図1を用いて、本実施形態に係る感情伝達装置1の構成を説明する。感情伝達装置1は、乗物2の乗員Pの感情を操縦者Dに伝達する装置である。感情伝達装置1は、全ての機能が乗物2に搭載されていてもよいが、一部の機能が乗物2外に設けられていてもよい。
【0027】
(乗物の構成)
乗物2は、座席21、座席22、および操舵部23を有する。座席22は、操縦者Dが着席する座席である。座席21は、操縦者D以外の乗員Pが着席する座席である。図1では省略しているが、座席21は乗員数に応じて複数あってもよい。各座席には、感情伝達装置1の処理上、座席を特定するための、固有のシートIDが割り当てられる。操舵部23は、操縦者Dが乗物2の操作に用いるハンドル等であって、操縦者Dが接触して操作するものである。
【0028】
本実施形態における乗物2は、タクシーのような小型の乗用車であるとする。ただし、これに限定されず、感情伝達装置1に適用される乗物は、航空機、船舶、鉄道車両、自動車、二輪車など、いかなる移動体であってもよい。操縦者Dのほかに乗員Pが乗物内に居り、かつ、操縦者Dに対して出力される音声や画像情報が容易に乗員Pに伝わる構成の乗物が好適である。
【0029】
(感情伝達装置1の各部の構成)
図2を用いて、感情伝達装置1の各部の構成を詳細に説明する。感情伝達装置1は、乗員Pをモニタリングして検知情報を得る入力部110と、入力部110からの検知情報を受付ける入力受付部120と、入力された検知情報から乗員Pの感情を推定する感情推定部130と、当該推定された感情に応じて当該感情の出力のパターンを決定する出力パターン決定部140と、決定された出力パターンで接触刺激を操縦者Dへ出力する出力部150とを有する。出力部150は、前記接触刺激を出力するために、背面上部出力部151、背面下部出力部152、操舵部出力部153を有する。
【0030】
(入力部の構成)
入力部110は、カメラ111および心拍計112を有するが、これに限らず、乗員Pの感情を推定するために必要な検知情報を取得するための入力装置を、これらに加えて、あるいはこれらに替えて有していてもよい。入力部110が有する入力装置は、乗物2に固定されていてもよいが、いわゆるウェアラブル端末であってもよい。
【0031】
カメラ111は、検知情報として、乗員Pの表情画像を取得する。カメラ111は、たとえば車載カメラであってもよい。心拍計112は、検知情報として、乗員Pの心拍情報を取得する。心拍計112は、たとえば座席21の座面に設置された圧電センサであってもよい。このように、検知情報として、前記乗員Pの表情画像および/または心拍情報を用いることにより、効果的に乗員Pの感情を推定できる。
【0032】
(感情推定部等の構成)
感情伝達装置1が有する、入力受付部120、感情推定部130、出力パターン決定部140、着座状態取得部1220、トリガ発生部1201、操作受付部1211および乗員選択部1212は、乗物2に搭載されたコンピュータによって実現されてもよく、乗物2の外部に設けられた図示しないサーバ等によって実現されてもよい。なお、図2に示す走行状態取得部1221および空気質取得部1222は本実施形態においては省略可能である。詳細については実施形態2において後述する。
【0033】
入力受付部120は、入力部110からの入力を受け付けて、感情推定部130へ検知情報を送信する。検知情報は、カメラ111からの表情画像または心拍計112からの心拍情報のいずれかであってもよく、両方であってもよいが、より正確な感情推定のためには、両方であることが望ましい。
【0034】
入力受付部120は、トリガ発生部1201からの指令を受けた際に感情推定部130へ検知情報を送信してもよい。ここで、トリガ発生部1201は、所定の周期で、あるいは、所定のタイミングで、入力受付部120に前記指令を発出してもよい。前記所定のタイミングとは、たとえば、乗員Pが着座したとき、乗物2の走行状態が所定の状態になったとき、または乗物2内部の空気質が所定の状態になったときなどである。
【0035】
感情伝達装置1は、乗員Pが座席21に着席しているかどうか(着座状態)を取得する着座状態取得部1220を備える。着座状態取得部1220は、たとえば図示しない感圧センサまたはカメラ111から、座席21毎に乗員Pが着座しているかどうかを検知し、着座を検知した座席のシートIDを特定する。また、着座状態取得部1220は、前回判定時には乗員Pがいずれかの座席21にも着座していなかったが、今回判定時には乗員Pが座席21に着座している場合には、「乗員の乗り込みがあった」と判定する。また、着座状態取得部1220は、着座を検知した座席数をカウントし、乗物2に乗っている乗員Pの数を判定する。
【0036】
操作受付部1211は、乗員Pが複数の場合に、出力対象となる乗員Pの座席を操縦者Dが選択する操作を受け付ける。操作受付部1211は、乗物2が有する入力装置であってよく、たとえばカーナビのタッチパネルである。
【0037】
乗員選択部1212は、操作受付部1211からの操作を受け付けて、操縦者Dが選択した座席のシートIDを、入力受付部120へ出力する。すなわち、乗員選択部1212は、乗員Pが複数の場合、操縦者Dによって選択された座席のシートIDを入力受付部120へ出力する。また、乗員選択部1212は、乗員Pが1名の場合、着座を検出した座席のシートIDを入力受付部120へ出力する。
【0038】
入力受付部120は、乗員選択部1212より出力対象であるシートIDと、入力部110よりシートIDと対応付けられた検知情報とが入力され、シートIDに対応する検知情報を感情推定部130へ出力する。詳細には、入力受付部120は、シートIDの座席の乗員Pの顔をカメラ111で撮像した表情画像、および/または、シートIDの座席に設けられた心拍計112で測定した乗員Pの心拍情報を感情推定部130へ出力する。
【0039】
感情推定部130は、入力受付部120から送信された検知情報をもとに乗員Pの感情を推定し、推定結果を感情情報として出力パターン決定部140に送信する。感情情報とは、乗員Pがどのような感情を抱いているかに関する情報である。感情の推定処理については、後述する。感情推定部130は、感情推定処理を所定の規則に従って行ってもよく、AIによって行ってもよい。感情推定処理の詳細は、図4を用いて後述する。
【0040】
出力パターン決定部140は、感情推定部130から受信した感情情報に対応する出力パターンを決定する。出力パターンとは、出力する感情情報に応じた出力位置や出力種別の組み合わせとして規定される。出力パターン決定部140には、各出力パターンが感情と対応付けてあらかじめ出力パターン情報として登録されており、出力パターン決定部140は受信した感情情報に対応する出力パターンを出力パターン情報から選択する。なお、本実施形態では、感情情報の操縦者Dへの出力形態は、触覚刺激であるが、これに限定されず、乗員Pが認識できない形態であれば任意である。
【0041】
(出力部の構成)
感情情報を出力する出力部150を構成する各出力装置は、乗物2に固定されており着脱の手間がないことが望ましいが、いわゆるウェアラブル端末であってもよい。出力部150のうち、背面上部出力部151は座席22の背面上部に、背面下部出力部152は座席22の背面下部に、操舵部出力部153は操舵部23にそれぞれ設けられる。操縦者Dに触覚刺激を伝達しやすくするため、背面上部出力部151および背面下部出力部152は、座席背面において操縦者Dの姿勢支持に重要な胸郭上部から腰椎下部を支持する範囲にあることが望ましい。なお、出力部150は、図示しない他の出力装置を備えていてもよい。たとえば、座面において出力装置を設ける場合は、操縦者Dの座骨近傍から大腿部を支持する範囲にあることが望ましい。背面上部出力部151、背面下部出力部152、操舵部出力部153は、それぞれ、振動装置、温冷装置および空気圧出力装置を有するものとするが、その他の種類の刺激装置を備えていてもよい。振動装置、温冷装置および空気圧出力装置は、それぞれ振動刺激、温冷刺激および空気圧刺激を出力する。空気圧刺激は、たとえば、エアブラダによる圧力刺激である。また、一般に、操舵部23からの刺激は操縦に関する情報であることが多いので、それら操縦に関する情報と感情情報との混乱を避けるため、操舵部出力部153は省略されてもよい。
【0042】
以上のように、感情伝達装置1は、乗物2の乗員Pの感情を推定するために当該乗員をモニタリングして得られた検知情報を取得する入力部110と、前記検知情報を基に前記乗員の感情を推定する感情推定部130と、前記推定された感情を示す感情情報を、前記乗員Pが認識できない形態で前記乗物2の操縦者Dへ伝達する出力部150と、を備える。この構成により、感情伝達装置1は、乗物2に同乗する乗員Pに気づかれず、また、操縦者Dの運転の妨げとならずに、乗員Pの感情を操縦者D等に伝達することができる。
【0043】
また、出力部150は、前記操縦者Dへの触覚刺激によって前記感情情報を伝達する。この構成により、操縦のために必要な操縦者Dの視覚や聴覚を妨げずに、乗員Pの感情を操縦者に伝達することができる。
【0044】
(感情伝達装置1が実行する処理)
図3は、感情伝達装置1が実行する処理を示すフローチャートである。
【0045】
最初に、入力受付部120が、着座状態取得部1220から乗員の着座状態を取得して、乗り込みを検知する(S100)。乗り込みがあった場合(S100でYES)、着座状態取得部1220は、全座席の着座状態、すなわち、シートIDごとに当該座席が着座されているか否かを検知する(S101)。一方、乗り込みがなかった場合(S100でNO)、入力受付部120は、乗り込みの検知を繰り返して、待機を継続する。
【0046】
全座席の着座状態の検知後、着座状態取得部1220は、着座されている座席の数に応じて、乗員数を検知する。たとえば、着座状態取得部1220は、着座されている座席21の数が2であれば、乗員数が2であると検知する(S110)。
【0047】
次に、入力受付部120は、トリガ発生部1201を通じて送信された、着座状態取得部1220にて検知された乗員数に基づいて、乗員数が1人または2人以上であるかを判定する(S111)。乗員数が1人の場合(S111で「1」)、入力受付部120は、着座状態の座席21を処理対象として特定する(S112)。一方、乗員数が2人以上の場合(S111で「2以上」)、操作受付部1211が操縦者Dによる座席選択操作を受け付ける。そして、乗員選択部1212が、前記座席選択操作に従って、処理対象となるシートIDを1つ特定し、入力受付部120へ送信する(S113)。
【0048】
そして、入力受付部120は、特定された1つのシートIDに対応する座席の検知情報をから入力部110から取得し、感情推定部130に送信する。具体的には、入力受付部120は、シートIDに対応する座席21の乗員Pの表情画像をカメラ111から取得して、感情推定部130に送信する(S114)。また、入力受付部120は、シートIDに対応する座席21の乗員Pの心拍情報を心拍計112から取得して、感情推定部130に送信する(S115)。
【0049】
次に、感情推定部130は、感情推定に必要な検知情報としての表情画像および心拍情報を受信すると、表情画像および心拍情報から、シートIDに対応する座席21の乗員の感情を推定する。続いて、出力パターン決定部140は、感情推定部130によって推定された感情に応じて、出力部150が出力すべき触覚刺激の組み合わせである出力パターンをあらかじめ登録されている出力パターン情報から決定し、出力部150に送信する(S117)。出力パターンには、たとえば、出力部位、振動周波数、振動強さ、振動周期、温冷種別、温冷周期、空気圧周期が含まれる。出力パターン決定処理の詳細は、図5を用いて後述する。次に、出力部150は、出力パターン決定部140から受信した出力パターンに従って触覚刺激を操縦者Dに対して出力する(S118)。
【0050】
出力部150による触覚刺激の出力後、トリガ発生部1201は、着座状態の変化を検知するために、所定の終了待ち時間、たとえば1分間待機する(S120)。そして、待機後、トリガ発生部1201は、着座状態取得部1220から着座状態を取得し、乗員全員が乗物2から降りたことを検知した場合(S130で「YES」)、トリガ発生部1201は、感情伝達装置1の処理を終了する。一方、乗物2に乗員が1人以上残っていた場合(S130で「NO」)、トリガ発生部1201は、前回ステップS101を実行してから所定の再処理待ち時間経過したかどうかを判定する(S150)。当該再処理待ち時間は、ステップS120における終了待ち時間以上であることが望ましく、たとえば約10分である。再処理待ち時間が経過していない場合(S150で「NO」)、トリガ発生部1201は待機を継続する。一方、再処理待ち時間が経過している場合(S150で「YES」)、再度の感情推定処理を行うために、トリガ発生部1201は、全座席の着座状態の検知を行わせる(S101)。
【0051】
このように、入力部110は、乗員Pが乗物2に乗ったときに検知情報を取得してもよい。これにより、乗員Pは必ず乗物2に乗るので、乗員Pの感情を確実に1回は操縦者Dに伝達できる。
【0052】
また、入力部110は、ステップS150のとおり、再処理待ち時間のスパンで検知情報を取得してもよい。これにより、経時変化する乗員Pの感情を推定し、操縦者Dに伝達できる。
【0053】
(感情推定処理)
図4は、感情推定部130が行う感情推定の分類例を図示したものである。人間の感情は多種多様であるが、分類方法は何通りか知られている。ここでは、そのうち、ラッセルの円環モデルを元にした4象限で分類するが、分類方法はより単純であっても複雑であってもよい。本実施形態では、細かい変化が区別しづらい触覚刺激を用いるため、感情を4種に分類する。これにより、「刺激がある/刺激がない」の2値を持つ2軸を用意するだけで、感情を4通りに推定できる。
【0054】
本実施形態では、「覚醒-眠気」軸および「快-不快」軸の2軸で感情を4通りに分類する。すなわち、感情推定部130は、乗員Pの状態が「覚醒」かつ「快」の場合は「覚醒または興奮」の状態、「眠気」かつ「快」の場合は「リラックスまたは眠気」の状態、「眠気」かつ「不快」の場合は「哀しみ」の状態、「覚醒」かつ「不快」の場合は「怒り」の状態にあるとそれぞれ判断する。
【0055】
(出力パターン決定処理)
図5は、感情推定部130により推定された感情と触覚刺激の出力パターンとの対応関係を規定した出力パターン情報の一例を示す。たとえば、感情伝達装置1は、当該出力パターン情報を図示しない記憶部に保存していてもよい。出力パターン決定部140は、当該出力パターン情報を参照して、出力パターンを決定する。たとえば、図5に示すように、出力パターンは、感情の種別に対応した出力部位、振動周波数、振動強さ、振動周期、温冷種別、温冷周期、空気圧周期などの組み合わせであってもよい。なお、出力パターン決定部140は、出力パターンを動的に決定してもよい。
【0056】
操縦者Dに出力される触覚刺激は、乗員Pの感情を示すものである。そこで、触覚刺激の出力パターンを、乗員Pの感情を模したものとすることが望ましい。出力パターンが感情を模したものであれば、操縦者Dは説明書等を確認することなく、乗員Pの感情を直観的に理解できる。たとえば、「眠気」に分類される「リラックスまたは眠気」または「哀しみ」の感情に対しては冷刺激、リラクゼーション効果があるとされる揺らぎのある連続周期をもつ振動刺激を操縦者Dに与えるようなパターンが対応付いていてもよい。逆に、「覚醒」に分類される「覚醒または興奮」または「怒り」の感情に対しては、温刺激、心拍を模したインパルス周期をもつ振動刺激を操縦者Dに与えるようなパターンが対応付いていてもよい。また、「快」に分類される「リラックスまたは眠気」または「覚醒または興奮」の感情に対しては、高周波の振動刺激が対応付いていてもよい。また、「不快」に分類される「怒り」または「哀しみ」の感情に対しては、低周波の振動刺激を操縦者Dに与えるようなパターンが対応付いていてもよい。
【0057】
また、操縦者Dに出力される出力パターンは、操縦者Dに行動を促すことが望ましい。出力パターンが行動を促すものであれば、操縦者Dは説明書等を確認することなく、乗員Pに対して取るべきコミュニケーションを直観的に理解できるためである。たとえば、推定される乗員Pの感情が「リラックスまたは眠気」または「怒り」の場合、操縦者Dが乗員Pに話しかけないことが望ましい。また、推定される乗員Pの感情が「覚醒または興奮」または「哀しみ」の場合、操縦者Dが話しかけることが望ましい。そこで、たとえば、話しかけないほうが良い「リラックスまたは眠気」または「怒り」の感情に対して、出力パターンとして空気圧刺激以外の出力パターンが対応付いていてもよい。また、話しかけることが望ましい「覚醒または興奮」または「哀しみ」の感情に対しては、出力パターンとして空気圧刺激が対応付いていてもよい。
【0058】
座席22または操舵部23に触覚刺激を与える既存の装置等がある場合には、当該触覚刺激と紛らわしい部位・紛らわしい種類を避けて出力パターンが対応付いていてもよい。たとえば、航空機においては、操舵部23から操縦者Dに振動刺激を与える失速警報装置であるスティックシェイカーが知られている。乗用車においては、冬季の運転時に手が凍えないように操舵部23から操縦者Dに温熱刺激を与えるハンドルヒーターが知られている。このような装置がある場合、操舵部出力部153から振動刺激や温冷刺激があると、それが既存装置によるものか、感情伝達装置1によるものか、操縦者Dが区別できないため、操縦者Dが正しい情報を得られず、ときに操縦の妨げになる。そこで、このような場合、操舵部出力部153からは感情情報を出力しないように出力パターンが対応付いていてもよい。あるいは、乗物2が激しく振動するものである場合、振動刺激を避けて出力パターンが対応付いていてもよい。
【0059】
また、出力部150は、乗物2についての警報が動作している間、操縦者Dを警報に集中させるため、感情情報の出力を保留してもよい。また、出力部150は、乗物2の所定の箇所、たとえばカーナビが操作されている間、操縦者Dを操作に集中させるため、感情情報の出力を保留してもよい。なお、入力受付部120は、たとえば、乗物2の重量が所定値以上増加した場合に、乗り込みがあったと判断してもよい。
【0060】
このように、感情伝達装置1が出力する触覚刺激は、振動刺激、温冷刺激、空気圧刺激のいずれか、またはそれらの組み合わせを含む。これにより、刺激種別の組み合わせにより、乗員Pの多様な感情が表現でき、また、操縦者Dに対する既存の警報などの情報との混乱を避けることができる。
【0061】
また、乗物2は、操縦者Dの座席22または操縦者Dが操作する操舵部23を備え、出力部150は、座席22または操舵部23に1以上設けられる。これにより、操縦者Dに伝わりやすい刺激ができる。また、刺激部位の組み合わせにより、乗員Pの多様な感情が表現でき、また、操縦者Dに対する既存の警報などの情報との混乱を避けることができる。
【0062】
また、感情伝達装置1は、周期、強さ、出力部位および温度の一部または全部を設定した、振動刺激、温冷刺激、空気圧刺激の一部または全部を組み合わせた出力パターンを、感情情報に応じて前記出力部150が出力する触覚刺激の出力パターン情報として決定する出力パターン決定部140を更に備える。これにより、刺激種別の組み合わせにより、乗員Pの多様な感情が表現でき、また、操縦者Dに対する既存の警報などの情報との混乱を避けることができる。
【0063】
〔実施形態1の変形例〕
本変形例に係る感情伝達装置1は、乗員全員についての情報取得または感情推定処理を行い、出力時に対象となる乗員を選択する構成であってもよい。
【0064】
図6は、本変形例に係る感情伝達装置1のシステム構成を示す図である。この構成では、乗員選択部1212は、操作受付部1211から取得した乗員情報を、入力受付部120ではなく、出力パターン決定部140に送信する。他の部については、図2と同様である。
【0065】
図7は、本変形例に係る処理を示すフローチャートである。ステップS100およびステップS101は、図3と同様である。そのため、ここでの説明を繰り返さない。
【0066】
着座状態取得部1220から全座席の着座状態を受信した入力受付部120は、着座状態の全ての座席の乗員の表情画像をカメラ111から取得する。入力受付部120は、当該取得された情報を検知情報として感情推定部130に送信する(S214)。また、入力受付部120は、着座状態の全ての座席の乗員の心拍情報を心拍計112から取得した情報を検知情報として感情推定部130に送信する(S215)。
【0067】
次に、感情推定部130は、受信した検知情報から、着座状態の全ての座席の乗員の感情を推定した感情情報を出力パターン決定部140に送信する(S216)。感情推定処理の詳細は、図3のステップS116と同様である。続いて、出力パターン決定部140は、受信した着座状態の全ての座席の乗員の感情情報に応じて各出力パターンを決定する(S217)。出力パターン決定処理の詳細は、図3のステップS117と同様である。図7のステップS220は、図3のステップS110に対応する。そのため、ここでの説明を繰り返さない。
【0068】
次に、出力パターン決定部140は、着座状態取得部1220から検知された乗員数に基づいて、乗員数が1人または2人以上であるかを判定する(S221)。乗員数が1人の場合(S221で「1」)、入力受付部120は、着座が検出された座席のシートIDを特定する(S222)。乗員数が2人以上の場合(S221で「2以上」)、乗員選択部1212は、操作受付部1211によって受け付けた操縦者Dの選択操作から、処理対象となるシートIDを特定する(S223)。
【0069】
次に、出力部150は、出力パターン決定部140から受信した出力パターンに従って触覚刺激を操縦者Dに対して出力する(S230)。出力部150による触覚刺激の出力後、図7のステップS120以降のステップは、図3のステップS120以降と同様である。そのため、ここでの説明を繰り返さない。
【0070】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0071】
本実施形態に係る感情伝達装置1は、乗物2が所定の走行状態にあるときに感情推定処理を行ってもよい。たとえば、信号待ちによる停止時や、渋滞による長時間の低速時、長時間の蛇行時のような状況では、乗員Pの感情が変化すると考えられるからである。
【0072】
そこで、走行状態取得部1221は、乗物2の走行状態として、たとえば、図示しない車内加速度センサにより、乗物2内の加速度を取得してもよい。また、走行状態取得部1221は、走行状態として、たとえば、図示しないギア情報取得部により、乗物2のギア状態、たとえば、乗物2が停止しているか、前進しているか、後退しているかを取得してもよい。そして、走行状態取得部1221が取得した走行状態に応じて、入力受付部120は、たとえば乗物2の走行状態が一定時間の停止、一定時間の低速または一定時間の蛇行であるときに、カメラ111または心拍計112から検知情報を取得してもよい。
【0073】
また、本実施形態に係る感情伝達装置1は、乗物2の内部の空気質が所定の状態にあるときに感情推定処理を行ってもよい。たとえば、暑すぎる、寒すぎる、悪臭がするなどの場合には、乗員の感情が変化すると考えられるからである。
【0074】
そこで、空気質取得部1222は、乗物2内の空気質情報として、たとえば、図示しない温度計により、乗物2内の温度を取得してもよい。また、空気質取得部1222は、乗物2内の空気質情報として、たとえば、図示しない湿度計により、乗物2内の湿度を取得してもよい。また、空気質取得部1222は、乗物2内の空気質情報として、たとえば、図示しないにおいセンサにより、乗物2内のにおい値を取得してもよい。そして、取得した空気質情報に応じて、入力受付部120は、たとえば乗物2内部の空気が一定の基準を上回るまたは下回るとき、湿度が一定の基準を上回るまたは下回るとき、またはにおいが一定の基準を超えたときに、カメラ111または心拍計112から検知情報を取得してもよい。
【0075】
図8は、感情伝達装置1が走行状態または乗物2内の空気質の状態を取得して実行する処理の一例を示すフローチャートである。ステップS100からステップS130まで、およびステップS150は、図3と同じである。そのため、ここでは説明を省略する。
【0076】
トリガ発生部1201が、着座状態取得部1220から着座状態を取得し、乗物2に乗員が1人以上残っていた場合(S130で「NO」)、まず、トリガ発生部1201は、走行状態取得部1221から走行状態を示すデータを取得し、乗物2の走行状態が所定の状態であるかどうかを判定する(S141)。所定の状態とは、たとえば、長時間の停止、長時間の低速、長時間の蛇行などである。乗物2の走行状態が所定の状態である場合(S141でYES)、トリガ発生部1201は、入力受付部120にステップS110を実行させる。乗物2の走行状態が所定の状態でない場合(S141でNO)、次の判定として、トリガ発生部1201は、空気質取得部1222から乗物内の空気質に関する情報を取得して、乗物2内部の空気質が所定の空気質であるかどうかを判定する(S142)。乗物2内の空気質状態の指標には、温度、湿度、においなどが含まれる。乗物2の内部の空気質が所定の空気質である場合(S142でYES)、トリガ発生部1201は、入力受付部120にステップS110を実行させる。乗物2の内部の空気質が所定の空気質でない場合(S141でNO)、トリガ発生部1201は、次の判定として、ステップS150を実行する。
【0077】
上記の処理により、感情伝達装置1は、乗員Pの感情が変化する適切なタイミングで感情推定処理を行い、乗員Pの推定された感情を操縦者Dに伝達することができる。なお、上記の処理では、走行状態の判定の後で空気質の判定を行ったが、同時に行ってもよいし、逆順に行ってもよいし、どちらか一方のみを行ってもよい。
【0078】
上記のように、入力部110は、ステップS141のように、乗物2の走行状態が所定の状態であるときに検知情報を取得してもよい。これにより、乗物2の走行状態によって変化する乗員Pの感情を推定し、適時に操縦者Dに伝達できる。
【0079】
また、入力部110は、ステップS142のように、乗物2内部の空気質が所定の状態であるときに前記検知情報を取得し、空気質の状態の指標は、温度、湿度、臭気の少なくともいずれかであってもよい。これにより、乗物2内部の空気質によって変化する乗員Pの感情を推定し、適時に操縦者Dに伝達できる。
【0080】
〔実施形態2の変形例〕
なお、感情推定部130は、走行状態取得部1221から取得した走行状態を示すデータ、および空気質取得部1222から取得した乗物2内の空気質に関する情報の少なくとも1つに基づいて、感情推定処理に利用する情報や推定方法を変更してもよい。たとえば、感情推定部130は、乗物2が静止状態であるときは、乗物2が走行状態であるときよりも低いにおいの閾値などを用いて、乗員が「不快」状態であるか否かを判断してもよい。
【0081】
〔実施形態3〕
(入力元と出力先のバリエーション)
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0082】
本実施形態に係る感情伝達装置1は、乗員または操縦者の感情を他の乗員に伝達するものであってもよい。これにより、たとえばツアーガイドが他の乗員の感情に合わせて適切なコミュニケーションを取ったり、助手席に着席した同乗者が操縦者の眠気に合わせて操縦の交代を提案したりすることができる。
【0083】
また、感情伝達装置1は、操縦者が乗物2に乗っていない場合に適用されてもよい。これは、人力車、車椅子、ベビーカー等、操縦者が乗物2の動力となる場合が主に想定される。この場合、感情伝達装置1は、背面上部出力部151および背面下部出力部152を備えていない構成としてもよい。
【0084】
また、感情伝達装置1は、座席21に替えて、各乗員に個別に割り当てられる他の要素にシートIDを割り当ててもよい。たとえば、乗物2が電車やバスのようにつり革に掴まって立って乗るものである場合には、座席21に替えて、つり革にシートIDが割り振られていてもよい。
【0085】
また、感情伝達装置1は、座席21を介して乗員を識別することに替えて、直接乗員を識別してもよい。たとえば、感情伝達装置1は、カメラ111から取得した乗員の顔画像を用いて乗員を識別し、シートIDに替えて、乗員に対してIDを割り当ててもよい。
【0086】
また、感情伝達装置1は、操縦者の感情を操縦者本人に伝達するものであってもよい。これにより、たとえば、操縦者に眠気を自覚させることで休憩を促したり、怒りを自覚させることであおり運転を防止したりといったセルフコントロールを実現でき、より安全な操縦を実現できる。
【0087】
〔実施形態4〕
(乗物以外・遠隔コミュニケーションへの拡張)
本発明の実施形態4について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0088】
本実施形態に係る感情伝達装置1は、乗物2以外の空間に適用されてもよい。たとえば、遊園地のアトラクションや、個室で行われる面接試験などが想定される。この場合であっても、感情伝達装置1は、被伝達者のほかに感情を推定される者が同じ空間に居り、かつ、被伝達者に対して出力される音声や画像情報が感情を推定される者に容易に伝わる場合に適用するのが望ましい。
【0089】
また、感情伝達装置1は、遠隔コミュニケーションに適用されてもよい。たとえば、乗物2が遠隔操作により操縦される場合や、インターネットを介したコミュニケーションなどに適用されてもよい。
【0090】
〔ソフトウェアによる実現例〕
感情伝達装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0091】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(たとえばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(たとえばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0092】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0093】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。たとえば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、たとえば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0094】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(たとえばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 感情伝達装置
2 乗物
21、22 座席
23 操舵部
110 入力部
111 カメラ
112 心拍計
120 入力受付部
130 感情推定部
140 出力パターン決定部
150 出力部
151 背面上部出力部
152 背面下部出力部
153 操舵部出力部
1201 トリガ発生部
1211 操作受付部
1212 乗員選択部
1221 走行状態取得部
1222 空気質取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8