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  • 特開-鉄道用制動システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168200
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】鉄道用制動システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/01 20240101AFI20241128BHJP
【FI】
G01V1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084667
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 英允
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】松村 善洋
(72)【発明者】
【氏名】他谷 周一
(72)【発明者】
【氏名】小林 学志
(72)【発明者】
【氏名】松井 勇太
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE01
2G105MM01
2G105NN02
(57)【要約】
【課題】 「架線電圧の低下」という間接的な情報に基づいて制動を開始するシステムに比べて、地震の発生を正確、かつ、迅速に認識して制動をすることが可能なシステムの一例を提供する。
【解決手段】 鉄道用制動システム1では、車両自身が地震情報に基づいて地震の発生を認識する。したがって、「架線電圧の低下」という間接的な情報に基づいて地震時制動プログラムを実行する現状のシステムに比べて、車両は、地震の発生を正確、かつ、迅速に認識することができる。延いては、制動開始タイミングの適正化、列車ダイヤの大幅な乱れの抑制、及び地震に応じたプログラムの実行性の確保が可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に設けられ、無線通信にて送信される地震情報を受信する地震情報受信部と、
鉄道車両に設けられ、前記地震情報受信部にて受信した地震情報を利用して、予め決められた地震時制動プログラムを実行するか否かを判断する制動要否判断部とを備え、
前記地震情報は、前記地震時制動プログラムを実行するか否かの判断に必要な情報であり、
さらに、前記地震時制動プログラムは、地震発生時に鉄道車両にて実行予定の1つ又は複数の作動である鉄道用制動システム。
【請求項2】
前記地震情報には、震度を推定するために必要な情報が含まれており、
前記制動要否判断部は、震度を推定した後、前記地震時制動プログラムを実行するか否かの判断をする請求項1に記載の鉄道用制動システム。
【請求項3】
前記地震時制動プログラムは、震度に応じた複数の作動プログラムの集合であり、
さらに、前記制動要否判断部は、前記地震時制動プログラムを実行すべきと判断した場合には、前記複数の作動プログラムの中から現実に実行すべき作動プログラムを少なくとも1つ選択する選択機能を有する請求項2に記載の鉄道用制動システム。
【請求項4】
前記制動要否判断部は、前記地震時制動プログラムを実行すべきと判断した後も、受信した地震情報を利用して前記地震時制動プログラムを実行するか否かを判断する継続判断機能を有しており、
さらに、前記制動要否判断部は、前記継続判断機能により前記地震時制動プログラムの実行が不要であると判断した場合には、実行中の前記作動プログラムを停止させる中断機能を有する請求項3に記載の鉄道用制動システム。
【請求項5】
前記複数の作動プログラムには、「制動と共に滑走防止剤を噴射する」作動プログラムが含まれている請求項4に記載の鉄道用制動システム。
【請求項6】
前記複数の作動プログラムには、「乗客への情報報知」作動プログラムが含まれている請求項5に記載の鉄道用制動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地震時に対応した鉄道用制動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現状の地震時に対応した鉄道用制動システムは、地上に設置された地震検出装置にて一定以上の地震を予測又は検出した場合に、変電所から架線への送電を停止させるとともに、架線電圧が一定基準を下回ったことを走行車両が検知した時に、当該走行車両が制動を開始する構成である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現状の地震時に対応した鉄道用制動システム(以下、システムと略す。)では、架線電圧が一定基準を下回ったことを走行車両が検知した時に制動を開始する構成であるので、以下の課題がある。
【0004】
(1)制動開始の遅れ
架線電圧の低下は、地震発生以外の原因によっても生じる。このため、現状のシステムは、架線電圧が低下した状態が予め決められた時間を超えて継続したときに、地震が発生したものとみなして制動を開始する。したがって、現状のシステムでは、制動開始が地震発生時に対して遅れてしまう可能性がある。
【0005】
(2)列車ダイヤの大幅な乱れ
現状のシステムでは、架線への送電を停止させることにより、走行車両が検知する架線電圧を低下させている。架線への送電を停止させた場合、通常、送電の復旧には、一定以上の時間を要する。さらに、送電復旧後に、停車駅以外で停止した車両を発車・再加速する必要がある。このため、列車ダイヤが大幅に乱れてしまう。
【0006】
(3)地震に応じたプログラムの実行性
車両は、架線電圧の低下を検知した時に制動を開始するので、地震に応じたプログラムを車両側が実行できない。このため、例えば、以下のような問題が発生する。
【0007】
(a)地震以外の原因によって架線電圧が低下した場合であっても、地震発生時と同じ制動プログラムが実行されてしまう。(b)送電停止後、地震検知が誤報であっても、制動開始後は、その制動を解除して再加速することができない。(c)架線電圧の低下を検知した時に、最大制動力で制動を開始するので、トンネル中や橋梁上等の停止場所として不適切な場所で車両が停止してしまうおそれがある。
【0008】
本開示は、上記点に鑑み、上記課題のうち少なくとも1つを解決可能な鉄道用制動システムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
鉄道用制動システムは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、鉄道車両に設けられ、無線通信にて送信される地震情報を受信する地震情報受信部(3)と、鉄道車両に設けられ、地震情報受信部(3)にて受信した地震情報を利用して、予め決められた地震時制動プログラムを実行するか否かを判断する制動要否判断部(4)とである。
【0010】
そして、地震情報は、地震時制動プログラムを実行するか否かの判断に必要な情報であり、さらに、地震時制動プログラムは、地震発生時に鉄道車両にて実行予定の1つ又は複数の作動であることが望ましい。
【0011】
これにより、当該鉄道用制動システムでは、鉄道車両(以下、車両と略す。)自身が地震情報に基づいて地震の発生を認識する。したがって、「架線電圧の低下」という間接的な情報に基づいて地震時制動プログラムを実行する現状のシステムに比べて、車両は、地震の発生を正確、かつ、迅速に認識することができる。延いては、上記課題のうち少なくとも1つを解決することができ得る。
【0012】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る鉄道用制動システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0015】
なお、少なくとも符号が付されて説明された構成要素は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。また、本開示に示された鉄道用制動システムは、少なくとも符号が付されて説明された構成要素、並びに図示された構成要素のうち少なくとも1つを備える。
【0016】
(第1実施形態)
<1.鉄道用制動システムの概要>
本実施形態に係る鉄道用制動システム1は、新幹線等の高速鉄道車両の制動システムに本開示に係る鉄道用制動システムの一例が適用されたものである。
【0017】
鉄道用制動システム1(以下、システム1と記す。)は、図1に示されるように、地震情報送信部2、地震情報受信部3及び制動要否判断部4等を少なくとも備える。地震情報送信部2は、地上に設置された地上局である。当該地震情報送信部2は、沿線に沿って複数の箇所に設置されている。
【0018】
地震情報送信部2は、地震検出装置5が検出した地震情報を有線通信又は無線通信にて受信する。そして、地震情報送信部2は、その受信した地震情報を、鉄道車両(以下、車両と記す。)に設けられた地震情報受信部3に無線通信にて送信する。
【0019】
なお、地震情報送信部2による地震情報の送信は、送信先車両を特定し、その特定された車両の地震情報受信部3のみ送信する送信手法、送信先車両を特定せずに地震情報を送信する送信手法、又はそれら送信手法を組み合わせた送信手法である。
【0020】
なお、地震情報送信部2による地震情報の送信は、例えば、ミリ波を用いた列車無線、及びIP・QoSによる輻輳制御や帯域制御等を用いたネットワーク制御を利用したものである。
【0021】
地震検出装置5は、多数箇所に設置された地震計(図示せず。)と有線通信又は無線通信にて繋がっている。このため、地震検出装置5は、各地震計で計測された地震データを取得することができる。
【0022】
地震検出装置5が検出した地震情報とは、後述する地震時制動プログラムを実行するか否かの判断(以下、要否判断という。)に必要な情報である。
具体的には、地震情報とは、地震データ、並びに当該地震データに基づいて推定された震央の位置及び地震の規模(例えば、マグニチュード)等のうち少なくとも1つを含む情報である。なお、地震データとは、例えば、地震計で測定した地震動(地面の動き)を示すデータである。
【0023】
本実施形態に係る地震検出装置5は、地震情報として、震央の位置及び地震の規模を地震情報受信部3に送信する。つまり、地震検出装置5は、地震データを受信すると、当該地震データに基づいて震央の位置及び地震の規模を演算した後、その演算結果である震央の位置及び地震の規模を地震情報受信部3に送信する。
【0024】
地震情報受信部3は、車両に設けられ、無線通信にて送信される地震情報を受信する。なお、本実施形態に係る地震情報受信部3は、列車無線器にて構成されている。制動要否判断部4は、車両に設けられている。
【0025】
制動要否判断部4は、地震情報受信部3にて受信した地震情報を利用して、予め決められた地震時制動プログラムを実行するか否かを判断する。「地震時制動プログラム」とは、地震発生時に車両にて実行予定の1つ又は複数の作動である。
【0026】
「車両にて実行予定の作動」とは、例えば、「制動装置(ブレーキ装置)6による制動開始作動」や「乗客・乗員(運転士及び車掌等)対する地震発生通知を含む情報の報知開始作動」等の「地震が発生した時に車両側にて自動実行される予定の作動」である。
【0027】
<2.制動要否判断部の詳細>
本実施形態に係る制動要否判断部4は、CPU、ROM及びROM等を有するコンピュータにて構成されている。制動要否判断部4は、不揮発性記憶部(図示せず。)に予め記憶されたソフトウェアがCPUにて実行されることにより、要否判断等を実行する。
【0028】
地震検出装置5及び地震情報送信部2は、停止することなく、常時作動している。地震情報受信部3及び制動要否判断部4は、車両が運転中である場合に作動する。運転中の車両とは、走行中の車両及び駅等にて停車中の車両をいう。
【0029】
具体的には、制動要否判断部4は、地震情報受信部3にて地震情報を受信すると、現時の走行位置における震度を推定した後、地震時制動プログラムを実行するか否かの判断をする。
【0030】
そして、制動要否判断部4は、推定した震度が予め決められた震度(震度0も含む。)より大きい場合には、地震時制動プログラムを実行すると判断する。なお、「現時の走行位置」とは、例えば、地震情報受信時の走行位置、又は震度推定完了時の走行位置である。
【0031】
地震時制動プログラムは、震度に応じた複数の作動プログラムの集合である。具体的には、各作動プログラムには、例えば、震度に応じた「車両で実行すべき作動」が予め決められている。
【0032】
そして、制動要否判断部4は、地震時制動プログラムを実行すべきと判断した場合には、複数の制動プログラムの中から現実に実行すべき1つ又は複数の制動プログラムを選択する。なお、作動プログラムの具体例は、例えば、以下の通りである。
【0033】
第1作動プログラム:最大制動力にて制動装置を自動作動
第2作動プログラム:滑走防止剤を自動噴射
第3作動プログラム:最大制動力にて制動すべき旨を運転士に対して発報
第4作動プログラム:滑走防止剤を噴射すべき旨を運転士に対して発報
第5作動プログラム:推定震度に応じた制動力にて制動装置を自動作動
第6作動プログラム:停止すべき位置(以下、停止位置という。)の自動決定作動
第7作動プログラム:停止位置で車両を停止させるための制動装置の自動作動
第8作動プログラム:推定震度に応じた制動をすべき旨を運転士に対して発報
第9作動プログラム:運転士に対する停止位置の表示
第10作動プログラム:乗客及び乗員への地震情報等の報知
第11作動プログラム:パンタグラフの自動下降
第12作動プログラム:震度に応じたダンパーの自動制御作動
なお、「推定震度に応じた制動」とは、震度が大きくなるほど、大きい制動力を発生させる制動をいう。つまり、震源から近い位置で走行している車両や地震の規模が大きい場合には、制動要否判断部4は、大きな制動力を必要とすると判断する。
【0034】
そして、例えば、第5作動プログラムが選択された場合には、制動要否判断部4は、震度に応じた制動力にて制動装置6を作動させる。例えば、第8作動プログラムが選択された場合には、制動要否判断部4は、「震度に応じた制動力を表示するとともに、当該制動力にて制動を開始すべき旨」を運転士に発報する。
【0035】
なお、本実施形態に係る制動要否判断部4は、震度の推定値が0より大きい場合には、第1作動プログラム、第2作動プログラム及び第10作動プログラムを少なくとも選択するとともに、それらのプログラムを現実に実行する。
【0036】
具体的には、震度の推定値が0より大きい場合、制動要否判断部4は、電送装置7を介して全ての制動装置6に対して、最大制動力にて制動すべき旨の指令、及び滑走防止剤を噴射すべき旨の指令を発する。
【0037】
なお、本実施形態に係る制動要否判断部4は、要否判断を実行した場合には、少なくとも以下の情報を中央指令へ自動報告する。中央指令とは、運転中の全ての車両を監視・指示する地上局である。
【0038】
当該情報は、例えば、(a)要否判断の結果、(b)作動プログラムを実行した場合には、実行した作動プログラムの種類、(c)自車両の現時の走行位置、(d)車両を停止させた場合には、自車両の停止位置等である。
【0039】
制動要否判断部4は、地震時制動プログラムを実行すべきと判断した後も、受信した地震情報を利用して地震時制動プログラムを継続実行するか否かを判断する。そして、制動要否判断部4は、地震時制動プログラムの実行が不要であると判断した場合には、現在実行中の制動プログラムを停止させる。
【0040】
すなわち、制動要否判断部4は、地震情報受信部3が地震情報を受信する度に、当該受信した情報を利用して要否判断を実行する。このとき、前回受信した地震情報が誤報であった旨の地震情報を受信した場合には、制動要否判断部4は、その「誤報である旨の地震情報」に基づいて要否判断を実行する。
【0041】
したがって、当該地震情報を利用した場合には、制動要否判断部4は、作動プログラムを実行させる必要がないと判断するため、制動要否判断部4は、現在実行中の作動プログラムを停止させる。
【0042】
なお、仮に、今回受信した地震の規模又は震央の位置についての具体的な数値が、前回受信した具体的な数値と異なる場合には、制動要否判断部4は、今回受信した数値を利用して、再度、要否判断を実行する。
【0043】
そして、当該判断の結果として、前回、選択された作動プログラムと異なる作動プログラムが選択された場合には、制動要否判断部4は、現在実行中の作動プログラムを停止させた後、新たに選択した作動プログラムを実行する。
【0044】
つまり、現在実行中の作動プログラムが、例えば、第1作動プログラム及び第2作動プログラムである場合において、今回受信した数値を利用した要否判断により、例えば、第5作動プログラムが選択された場合には、制動要否判断部4は、制動装置6に対して、制動力を小さくする旨の指令、及び滑走防止剤の噴射を停止する旨の指令を発する。
【0045】
なお、仮に、現在実行中の作動プログラムが、例えば、第3作動プログラム及び第4作動プログラムである場合において、今回受信した数値を利用した要否判断により、例えば、作動プログラムを実行させる必要がないと判断された場合には、制動要否判断部4は、運転士に対して、制動を停止すべき旨を報知する。
【0046】
<3.本実施形態に係る鉄道用制動システムの特徴>
本実施形態に係る鉄道用制動システム1では、車両自身が地震情報に基づいて地震の発生を認識する。したがって、「架線電圧の低下」という間接的な情報に基づいて地震時制動プログラムを実行するシステムに比べて、車両は、地震の発生を正確、かつ、迅速に認識することができる。延いては、下記の効果を得ることが可能である。
【0047】
(1)制動開始タイミングの適正化
当該鉄道用制動システム1では、車両自身が地震情報に基づいて地震の発生を認識するので、車両は、地震の発生を正確、かつ、迅速に認識することができ得る。したがって、架線電圧の低下をトリガーとして制動を開始するシステムに比べて、制動開始タイミングを早めることが可能となるとともに、当該開始タイミングを適正なタイミングとすることが可能となる。
【0048】
(2)列車ダイヤの大幅な乱れの抑制
当該鉄道用制動システム1では、「架線電圧の低下」、つまり送電停止をすることなく、制動を開始させることができ得る。したがって、送電の復旧に要する時間、及び停車駅以外で停止した車両を発車・再加速するために必要な時間が大きくなることが抑制され得る。延いては、列車ダイヤが大幅に乱れてしまうことが抑制され得る。
【0049】
(3)地震に応じたプログラムの実行性の確保
当該鉄道用制動システム1では、車両自身が地震情報に基づいて地震の発生を認識するので、(a)地震以外の原因によって架線電圧が低下した場合の影響が小さく、(b)地震検知が誤報であった場合には、速やかに制動を解除して再加速するができるとともに、(c)第6作動プログラム及び第7作動プログラムを実行することにより、トンネルの中や橋梁の上で車両が停止してしまうことを抑制でき得る。
【0050】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る地震検出装置5は、地震情報として、震央の位置及び地震の規模を地震情報受信部3に送信した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、地震情報として地震データそのものを送信する構成であってもよい。なお、地震情報として地震データを送信する構成では、例えば、制動要否判断部4にて地震の震源及び地震の規模を推定することが望ましい。
【0051】
上述の実施形態では、新幹線等の高速鉄道車両の制動システムに本開示に係る鉄道用制動システムの一例が適用されたものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、在来線車両の制動システムにも適用可能である。
【0052】
上述の実施形態では、地震情報送信部2による地震情報の送信は、ミリ波を用いた列車無線、及びIP・QoSによる輻輳制御や帯域制御等を用いたネットワーク制御を利用したものであった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0053】
上述の実施形態では、地震情報として、地震データ、震央の位置及び地震の規模が例示されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、地震情報は、要否判断に必要な情報であれば十分である。
【0054】
上述の実施形態では、地震情報を利用して制動要否判断部4が具体的な作動プログラムを選択した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、地上局にて実行すべき具体的な作動プログラムを選択し、当該選択された作動プログラムを無線通信にて車両に送信する構成であってもよい。
【0055】
上述の実施形態では、震度に応じた作動プログラムが選択される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、震度を考慮することなく、地震が発生したか否かに基づいて作動プログラムが選択される構成であってもよい。
【0056】
上述の実施形態では、地震時制動プログラムを実行すべきと判断されたときに、複数の作動プログラムが選択された。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、当該判断がされたときに1つの作動プログラムが選択される構成であってもよい。なお、作動プログラムは、上記の具体例に限定されない。
【0057】
上述の実施形態では、架線電圧の低下を考慮することなく、受信した地震情報のみを利用して制動要否判断部4が要否判断を実行する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0058】
すなわち、当該開示は、例えば、「地上に設置された地震検出装置にて一定以上の地震を予測又は検出した場合に架線電圧を低下させる構成」と「上記の実施形態に開示された構成」とが組み合わされた構成であってもよい。
【0059】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1… 鉄道用制動システム
2… 地震情報送信部
3… 地震情報受信部
4… 制動要否判断部
5… 地震検出装置
6… 制動装置
7… 電送装置
図1