IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テクノス株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社誠和ダイアの特許一覧

<>
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図1
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図2
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図3
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図4
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図5
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図6
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図7
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図8
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図9
  • 特開-床版固定方法、及び、床版固定装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168201
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】床版固定方法、及び、床版固定装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 24/00 20060101AFI20241128BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084678
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】596118530
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502345278
【氏名又は名称】株式会社誠和ダイア
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝
(72)【発明者】
【氏名】山森 規安
(72)【発明者】
【氏名】石村 崇
(72)【発明者】
【氏名】田近 正春
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG41
(57)【要約】
【課題】主桁から切り離された後に主桁の上に載置されて固定される床版の鉛直方向の揺れ、橋軸方向の揺れ、及び、橋軸直角方向の揺れに対する抑制効果を向上できる床版固定方法等を提供する。
【解決手段】本発明に係る床版固定方法は、橋梁1の主桁2から切り離された床版(切離床版3)を当該主桁2の上に載置して固定する床版固定方法であって、主桁2の上に載置された床版(切離床版3)の鉛直方向の揺れ、主桁2の上に載置された床版(切離床版3)の橋軸方向の揺れ、及び、主桁2の上に載置された床版(切離床版3)の橋軸直角方向の揺れを規制した状態に当該床版(切離床版3)を主桁2に固定したことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の主桁から切り離された床版を当該主桁の上に載置して固定する床版固定方法であって、
主桁の上に載置された床版の鉛直方向の揺れ、主桁の上に載置された床版の橋軸方向の揺れ、及び、主桁の上に載置された床版の橋軸直角方向の揺れを規制した状態となるよう当該床版を主桁に固定したことを特徴とする床版固定方法。
【請求項2】
橋梁の主桁から切り離された床版を当該主桁の上に載置して固定する床版固定装置であって、
主桁の上に載置された床版の鉛直方向の揺れを規制した状態となるよう当該床版を主桁に固定する鉛直方向固定装置と、
主桁の上に載置された床版の橋軸方向の揺れを規制した状態となるよう当該床版を固定する橋軸方向固定装置と、
主桁の上に載置された床版の橋軸直角方向の揺れを規制した状態となるよう当該床版を固定する橋軸直角方向固定装置と、
を備えたことを特徴とする床版固定装置。
【請求項3】
鉛直方向固定装置は、主桁の上方に接合された床版の切断対象部位を水平方向に切断したことにより形成された上の切断面と下の切断面との間である切断面間に設置されて当該上下の切断面を支持する切断面支持装置と、当該切断面支持装置を介して主桁の上に載置された床版を主桁に固定する固定装置とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の床版固定装置。
【請求項4】
切断面支持装置は、切断面間に設置されたくさび状部材と、切断面間に設置されたくさび状部材の切断面間からの落下を防止する落下防止部材とを備えたことを特徴とする請求項3に記載の床版固定装置。
【請求項5】
固定装置は、主桁の下端を受ける受材と、受材を吊った状態で床版に固定することにより床版を主桁に固定する受材吊固定具とを備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の床版固定装置。
【請求項6】
橋軸方向固定装置は、主桁に連結されて橋軸直角方向に沿って延長するように設けられた横桁を橋軸方向の両側から挟み込むように配置された一対のストッパーと、当該ストッパーを主桁の上に載置された床版に固定する固定手段とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の床版固定装置。
【請求項7】
橋軸直角方向固定装置は、主桁の上方に接合された床版の切断対象部位を水平方向に切断したことにより形成された上の切断面と下の切断面との間である切断面間を橋軸直角方向に沿って貫通するように設置された連結板と、切断面間から橋軸直角方向の両側の外方に突出する連結板の各突出部にそれぞれ連結された各挟み込み部材とを備え、
挟み込み部材は、突出部の上に配置された上部材と突出部の下に配置された下部材とを備え、
各挟み込み部材の各上部材が、主桁から切り離されて切断面間の上方に位置される床版の橋軸直角方向の両側の各側面に接触した状態に設置されたとともに、各挟み込み部材の各下部材が、切断面間の下方に位置される主桁の橋軸直角方向の両側の各端面に接触した状態に設置され、かつ、一方の挟み込み部材の上部材と下部材とが連結板の一方の突出部を挟んで連結されたとともに、他方の挟み込み部材の上部材と下部材とが連結板の他方の突出部を挟んで連結されたことを特徴とする請求項2に記載の床版固定装置。
【請求項8】
橋軸直角方向固定装置は、主桁を橋軸直角方向の両側から挟み込むように配置された一対のストッパーと、当該ストッパーを主桁の上に載置された床版に固定する固定手段とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の床版固定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主桁の上に接合されたコンクリート製の床版を新しい床版に更新する床版更新工事において、主桁から切り離された床版を新しい床版に更新するまでの間、主桁から切り離された床版を主桁に固定するための床版固定方法、及び、床版固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路橋、鉄道橋、水路橋等の橋梁のコンクリート製の床版を新しい床版に更新する床版更新工事においては、現存の主桁を再利用することから、主桁の上に設けられて主桁と接合された床版を切断して主桁から切り離して撤去した後、主桁の上に新しい床版を接合するようにしている。
床版更新工事においては、更新予定範囲の床版をワイヤーソー等の切断装置を用いて切断して主桁から切り離す床版切断工事と、主桁から切り離された床版を撤去する床版撤去工事とを繰り返した後に、床版が撤去された主桁の上に新しい床版を接合する床版接合工事を行なわなければならないため、更新予定範囲の床版更新工事にかかる時間が長くなってしまう。
この場合、床版切断工事から床版接合工事が終了するまでの期間、道路を通行止めにしなくてはならないので、連続する通行止め期間が長期化して、道路の通行止めに伴う道路管理者及び道路使用者の不利益が大きくなってしまう。
そこで、床版更新工事において、床版を道路として供用した状態で、床版を主桁から切り離して、当該主桁から切り離された床版を当該主桁の上に固定装置を用いて固定するようにし、当該床版の固定後、固定装置を外して床版を撤去するまでの間、床版を道路として供用するようにした本出願人による技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-88895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した固定装置を用いた床版固定方法においては、主桁から切り離された後に主桁の上に載置されて固定される床版の鉛直方向の揺れ、橋軸方向の揺れ、及び、橋軸直角方向の揺れに対する抑制対策が十分ではないという課題があった。
本発明は、主桁から切り離された後に主桁の上に載置されて固定される床版の鉛直方向の揺れ、橋軸方向の揺れ、及び、橋軸直角方向の揺れに対する抑制効果を向上できる床版固定方法及び床版固定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る床版固定方法は、橋梁の主桁から切り離された床版を当該主桁の上に載置して固定する床版固定方法であって、主桁の上に載置された床版の鉛直方向の揺れ、主桁の上に載置された床版の橋軸方向の揺れ、及び、主桁の上に載置された床版の橋軸直角方向の揺れを規制した状態となるよう当該床版を主桁に固定したことを特徴とする。
本発明に係る床版固定装置は、橋梁の主桁から切り離された床版を当該主桁の上に載置して固定する床版固定装置であって、主桁の上に載置された床版の鉛直方向の揺れを規制した状態となるよう当該床版を主桁に固定する鉛直方向固定装置と、主桁の上に載置された床版の橋軸方向の揺れを規制した状態となるよう当該床版を固定する橋軸方向固定装置と、主桁の上に載置された床版の橋軸直角方向の揺れを規制した状態となるよう当該床版を固定する橋軸直角方向固定装置と、を備えたことを特徴とする。
また、鉛直方向固定装置は、主桁の上方に接合された床版の切断対象部位を水平方向に切断したことにより形成された上の切断面と下の切断面との間である切断面間に設置されて当該上下の切断面を支持する切断面支持装置と、当該切断面支持装置を介して主桁の上に載置された床版を主桁に固定する固定装置とを備えたことを特徴とする。
また、切断面支持装置は、切断面間に設置されたくさび状部材と、切断面間に設置されたくさび状部材の切断面間からの落下を防止する落下防止部材とを備えたことを特徴とする。
また、固定装置は、主桁の下端を受ける受材と、受材を吊った状態で床版に固定することにより床版を主桁に固定する受材吊固定具とを備えたことを特徴とする。
また、橋軸方向固定装置は、主桁に連結されて橋軸直角方向に沿って延長するように設けられた横桁を橋軸方向の両側から挟み込むように配置された一対のストッパーと、当該ストッパーを主桁の上に載置された床版に固定する固定手段とを備えたことを特徴とする。
また、橋軸直角方向固定装置は、主桁の上方に接合された床版の切断対象部位を水平方向に切断したことにより形成された上の切断面と下の切断面との間である切断面間を橋軸直角方向に沿って貫通するように設置された連結板と、切断面間から橋軸直角方向の両側の外方に突出する連結板の各突出部にそれぞれ連結された各挟み込み部材とを備え、挟み込み部材は、突出部の上に配置された上部材と突出部の下に配置された下部材とを備え、各挟み込み部材の各上部材が、主桁から切り離されて切断面間の上方に位置される床版の橋軸直角方向の両側の各側面に接触した状態に設置されたとともに、各挟み込み部材の各下部材が、切断面間の下方に位置される主桁の橋軸直角方向の両側の各端面に接触した状態に設置され、かつ、一方の挟み込み部材の上部材と下部材とが連結板の一方の突出部を挟んで連結されたとともに、他方の挟み込み部材の上部材と下部材とが連結板の他方の突出部を挟んで連結されたことを特徴とする。
また、橋軸直角方向固定装置は、主桁を橋軸直角方向の両側から挟み込むように配置された一対のストッパーと、当該ストッパーを主桁の上に載置された床版に固定する固定手段とを備えたことを特徴とする。
本発明に係る床版固定方法及び床版固定装置によれば、主桁から切り離された後に主桁の上に載置されて固定される床版の鉛直方向の揺れ、橋軸方向の揺れ、及び、橋軸直角方向の揺れに対する抑制効果を向上できる床版固定方法及び床版固定装置を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る床版固定装置を用いた床版固定方法を示す図であり、(a)は各固定装置と各桁との位置関係を橋梁の上方から見た図、(b)は(a)のA矢視断面図である。
図2】(a)は図1(a)のB矢視図、(b)は図1(a)のC矢視図、(c)は図1(a)のD矢視図である。
図3】鉛直方向固定装置の切断面支持装置の一例を示す図であり、(a)は切断面支持装置を示す平面図、(b)は切断面支持装置の左側面図、(c)は切断面支持装置の正面図である。
図4】切断面支持装置を切断面間に設置した状態を示す図であり、(a)は切断面間に設置された切断面支持装置を上方から見た図、(b)は切断面間に設置された切断面支持装置を横から見た図である。
図5】鉛直方向固定装置の一例を示す図であり、(a)は切断面間に設置された切断面支持装置を上方から見た図、(b)は固定装置を橋軸方向の一方側(前側)から見た図、(c)は固定装置を橋軸直角方向の一方側(右側)から見た図、(d)は(b)の下方から見た図である。
図6】橋軸方向固定装置の一例を示す図であり、(a)は装置を橋軸方向の一方側(前側)から見た図、(b)は装置を橋軸直角方向の一方側(右側)から見た図である。
図7】橋軸方向固定装置の一例を示す図であり、(a)は装置を橋軸直角方向の一方側(右側)から見た図、(b)は装置を橋軸方向の一方側(前側)から見た図である。
図8】橋軸直角方向固定装置の一例を示す図であり、(a)は装置を上方から見た図、(b)は装置を橋軸方向の一方側(前側)から見た図、(c)は装置を橋軸直角方向の一方側(右側)から見た図である。
図9】橋軸直角方向固定装置の一例を示す図であり、(a)は装置を上方から見た図、(b)は装置を橋軸方向の一方側(前側)から見た図、(c)は装置を橋軸直角方向の一方側(右側)から見た図である。
図10】橋軸直角方向固定装置の一例を示す図であり、(a)は装置を上方から見た図、(b)は装置を橋軸方向の一方側(前側)から見た図、(c)は装置を橋軸直角方向の一方側(右側)から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図1乃至図10に基づき、橋梁1の主桁2から切り離された床版3を当該主桁2の上に載置して固定する床版固定方法及び床版固定装置の実施形態について説明する。
尚、以下の説明において、主桁2から切り離された後、主桁2の上に載置されて本発明の床版固定装置により主桁2に固定される床版3のことを、「切離床版3」という。
また、本明細書において、前,後,上,下,左,右は、各図に示した方向と定義して説明する。
また、図1(a)は、橋梁1を橋梁1の上方から見た図(平面図)であり、後述する各固定装置(鉛直方向固定装置4,橋軸方向固定装置5,橋軸直角方向固定装置6)により固定された切離床版3が図示されるべきであるが、各固定装置と各桁との位置関係を明確にするため、当該図1(a)においては、切離床版3の図示は省略してある。
また、図1(b)は、図1(a)のA矢視断面図であるが、断面を示すハッチングの図示は省略してある。また、図1(b)に各固定装置を図示した場合、各固定装置が重なって不明瞭となるため、図1(b)では各固定装置の図示は省略してある。
橋梁1は、道路橋、鉄道橋、水路橋等であり、当該橋梁1は、図1(b)に示すように、床版が主桁2を介して橋脚2Fにより支持された構成であり、床版更新工事において、床版の切断対象部位30が切断されて床版が主桁2から切り離された後は、当該切離床版3が各固定装置を用いて主桁2に固定されることになる。
主桁2の種類としては、箱形(断面ロ形)の箱桁2A,2B、I形(断面I形)のI桁2C等がある。
図1では、箱桁2Aは、海側(右側)に位置された主桁2であり、箱桁2Bは、山側(左側)に位置された箱形の主桁2であり、I桁2Cは、海側の箱桁2Aと山側の箱桁2Bとの間に位置された主桁2である構成の橋梁1を例示している。
また、図1(b)において、2Gは壁高欄、2Hはブラケット、2I,2Jは補剛桁、2Mは、箱桁2A,2Bに設けられた横桁2D部分とブラケット2Hとを連結するスプライスプレート(添接板)、あるいは、箱桁2A,2Bに設けられた横桁2Dとの連結部分と横桁2Dとを連結するスプライスプレートである(図6(a),図7(b)参照)。
尚、補剛桁2I,2Jは、長期間、自動車の活荷重が床版に作用することによって床版の下面にひび割れが生じて床版の剛性低下を招いてしまうことを抑制防止するために設けられた、床版補強補剛用の部材である。
【0008】
本発明の実施形態に係る床版固定方法は、橋梁1の主桁2から切り離された切離床版3を当該主桁2の上に載置して固定する床版固定方法であって、主桁2の上に載置された切離床版3の鉛直方向の揺れ、主桁2の上に載置された切離床版3の橋軸方向の揺れ、及び、主桁2上に載置された切離床版3の橋軸直角方向の揺れを規制した状態となるよう当該切離床版3を主桁2に固定するようにした方法である。
また、実施形態に係る床版固定装置は、橋梁1の主桁2から切り離された切離床版3を当該主桁2の上に載置して固定する床版固定装置であって、主桁2の上に載置された切離床版3の鉛直方向の揺れを規制した状態となるよう当該切離床版3を主桁2に固定するための鉛直方向固定装置4(図3乃至図5参照)と、主桁2の上に載置された切離床版3の橋軸方向の揺れを規制した状態となるよう当該切離床版3を固定するための橋軸方向固定装置5(図6及び図7参照)と、主桁2の上に載置された切離床版3の橋軸直角方向の揺れを規制した状態となるよう当該切離床版3を固定するための橋軸直角方向固定装置6(図8図9図10参照)と、を備えた装置である。
【0009】
実施形態においては、橋梁1の主桁2の上に設けられて主桁2と接合されていたコンクリート製の旧い床版を新しい床版に更新する床版更新工事において、旧い床版を道路として供用した状態で、旧い床版を主桁2から切り離す床版切離しステップと、主桁2から切り離した切離床版3を当該主桁2の上に床版固定装置を用いて固定する床版固定ステップとを行い、さらに、床版固定ステップ終了後、床版固定装置を外して切離床版3を撤去する床版撤去ステップに移行するまでの間、当該切離床版3を道路として供用する。
【0010】
床版切離しステップで行われる更新予定部分の床版の切断作業は、例えば特許文献1で開示された切断装置としてのワイヤーソー等を使用して、床版と主桁2との境界よりも上方に位置する床版の切断対象部位30を水平方向に切断することにより、旧い床版を主桁2から切り離す。
床版固定ステップにおいては、主桁2から切り離された切離床版3を、主桁2の上に床版固定装置を用いて固定する床版固定作業を行う。
この場合、切断装置を用いて旧い床版を切断する切断作業と床版固定装置を用いて切離床版3を主桁2に固定する床版固定作業とを繰り返しながら行っていくことが好ましい。例えば、切断装置による切断作業を数十cm~数十m程度行った後に、床版固定装置を用いた当該切離床版3の床版固定作業を行うという作業サイクルを繰り返し行うことによって、床版の下方側において、床版切離しステップと床版固定ステップとを連続して行えるようになり、床版切離しステップと床版固定ステップとにおいて道路の通行止めを行わなくても良くなるので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れるようになる。
そして、床版固定ステップにおいて床版固定装置を用いて主桁2に固定された切離床版3を新しい床版に取替える際には、道路を通行止めとして、床版撤去ステップにおいて、床版固定装置を外して切離床版3を撤去する床版撤去工事を行った後、切離床版3が撤去された主桁2の上に新しい床版を接合する床版接合工事を行う。
従って、旧い床版を道路として供用したままの状態で、切断作業と床版固定作業とを行え、さらに、旧い床版である切離床版3を撤去するまでの間、床版固定装置を用いて主桁2に固定された切離床版3の上を、道路として供用できる。
即ち、実施形態に係る床版更新工事においては、床版切離しステップから床版撤去ステップに移行するまでの期間、旧い床版を道路として供用でき、道路の通行止めを行わなくても良くなるので、床版更新工事において道路の通行止め期間の短縮化を図れ、道路の通行止めに伴う道路管理者及び道路使用者の不利益を少なくできるようになる。
【0011】
以下、図1乃至図9に基づいて、床版固定ステップについて詳説する。
床版固定ステップは、鉛直方向固定ステップと、橋軸方向固定ステップと、橋軸直角方向固定ステップとを備える。
鉛直方向固定ステップは、鉛直方向固定装置4を使用して、主桁2の上に載置された切離床版3の鉛直方向の揺れを規制した状態となるよう切離床版3を主桁2に固定するステップである。
橋軸方向固定ステップは、橋軸方向固定装置5を使用して、主桁2の上に載置された切離床版3の橋軸方向の揺れを規制した状態となるよう切離床版3を固定するステップである。
橋軸直角方向固定ステップは、橋軸直角方向固定装置6を使用して、主桁2の上に載置された切離床版3の橋軸直角方向の揺れを規制した状態となるよう切離床版3を固定するステップである。
尚、鉛直方向は各図に示した上下方向に相当し、橋軸方向は各図に示した前後方向に相当し、橋軸直角方向は各図に示した左右方向に相当する。
【0012】
次に、鉛直方向固定装置4の構成について、図3乃至図5に基づいて説明する。
尚、図3乃至図5は、主桁2としての海側の箱桁2Aの上に切離床版3を固定するための鉛直方向固定装置4を図示している。
鉛直方向固定装置4は、例えば、主桁2の上方に接合された床版の切断対象部位30を水平方向に切断したことにより形成された上の切断面31xと下の切断面31yとの間である切断面間31に設置されて当該上下の切断面31x,31yを支持する切断面支持装置4Aと、当該切断面支持装置4Aを介して主桁2の上に載置された切離床版3を主桁2に固定する固定装置4Bとを備えた構成とした。
【0013】
切断面支持装置4Aは、例えば、切断面間31に設置されるくさび状部材10Aと、切断面間31に設置されたくさび状部材10Aの切断面間31からの落下を防止する落下防止部材10Bとを備えた構成とした。
くさび状部材10Aは、切断面間31に挿入する際の先端側(図3(c)の左側)から後端側(図3(c)の右側)に向けて上方に傾斜する傾斜面10sを有した構成とした。
落下防止部材10Bは、くさび状部材10Aの先端側より前方(図3(c)の左側)に突出するように設けられた構成とした。
【0014】
図3に示すように、くさび状部材10Aは、例えば、下側平板11と、上側傾斜平板12と、スペーサ13と、止板14とで構成される。
下側平板11は、矩形平板の長手方向の一端側である前端部(図3(a)の左側)が台形状に形成された構成とした。換言すれば、下側平板11は、矩形平板部11aと矩形平板部11aの長手方向の一端側に設けられた台形状の平板部である先端部11bとを備えた構成とした。
上側傾斜平板12は、矩形平板部11aの大きさに対応した矩形平板等により構成される。
スペーサ13は、上面が、矩形平板部11aの長手方向の一端側(図3(c)の左側)から他端側(図3(c)の右側)に向けて上傾する傾斜面に形成された棒状材等により構成される。
スペーサ13は、下側平板11の矩形平板部11aの一方の板面において、矩形平板部11aの両方の長辺縁側の位置に長辺縁に沿って延長するようにそれぞれ設けられるとともに、長辺縁間の中央位置に長辺縁に沿って延長するように設けられる。即ち、スペーサ13は、例えば、下側平板11の矩形平板部11aの一方の板面において、矩形平板部11aの短辺に沿って所定の間隔を隔てて3つ設けられている。
そして、上側傾斜平板12の一方の板面が、上述した3つのスペーサ13,13,13の上面である傾斜面上に載置された状態に設けられたことにより、上側傾斜平板12の他方の板面が、一端側(図3(c)の左側)から他端側(図3(c)の右側)に向けて上傾する傾斜面10sに形成される。
即ち、下側平板11とスペーサ13と上側傾斜平板12とによりくさび形状部が構成される。
止板14は、矩形平板部11aの一方の板面の他端側において板面が矩形平板部11aの一方の板面と直交する状態となるように、矩形平板部11aの短辺縁に沿って延長する
ように設けられて、上端面が、上側傾斜平板12の他方の板面(傾斜面10s)よりも上方に位置される大きさの平板等により構成される。
尚、くさび状部材10Aは、下側平板11と上側傾斜平板12とスペーサ13と止板14とが溶接等の連結手段により連結されて構成される。
【0015】
図3図4に示すように、落下防止部材10Bは、例えば、一端側がくさび状部材10Aの先端側より前方に突出するように設けられたねじ棒15と、ねじ棒15の一端側に螺着されたナット16及びワッシャ17とを備えて構成される。
ねじ棒15は、下側平板11の先端部11bの一方の板面における台形の中心線に沿って延長して先端部11bよりも前方に突出するように設けられる。尚、ねじ棒15の他端側と下側平板11の先端部11bの一方の板面とが溶接等の連結手段により連結される。
ワッシャ17は、切断面間31における橋軸直角方向の端縁より下方に延長する床版残存部分の側面31a、及び、切断面間31における橋軸直角方向の端縁より上方に延長する切離床版3の側面31bに係止する係止手段として機能し、ナット16はワッシャ17の位置決め手段として機能する。
【0016】
図5に示すように、固定装置4Bは、例えば、主桁2の下端2eを受ける受材20Aと、受材20Aを吊った状態で切離床版3の下面3u側に固定することにより切離床版3を主桁2に固定する受材吊固定具20Bとを備えて構成される。
尚、図5(b)において、切断面支持装置4Aの図示は省略してある。
受材20Aは、角形鋼管等の長尺材により構成される。
受材吊固定具20Bは、受材20Aの両端側に設けられた左右の吊り部21,21と、各吊り部21,21にそれぞれ連結された左右の緊結吊り部材22,22と、当該左右の緊結吊り部材22,22を切離床版3の下面3u側に固定するための左右の固定部材23,23とを備えて構成される。
吊り部21は、断面L字状の所謂アングル材等を組み合わせて構成される。
緊結吊り部材22は、緊結材27と、緊結材27の下端と吊り部21とを連結する下側連結部材28と、緊結材27の上端と固定部材23とを連結する上側連結部材29とを備えて構成される。
緊結材27としては、寸切ボルト等を用いる。
下側連結部材28としては、継手金具28aとシャックル28bとを備えた構成の連結部材等を用いる。
上側連結部材29としては、継手金具29aとシャックル29bとマルチアイボルト29cとを備えた構成の連結部材等を用いる。
固定部材23は、雌ねじアンカー等のアンカーを用いる。
【0017】
即ち、切離床版3の下面3uに固定部材23が固定されて、当該固定部材23である雌ねじアンカーの雌ねじとマルチアイボルト29cのボルトとが連結されて、かつ、当該マルチアイボルト29cのシャックル部とシャックル29bとが連結され、当該シャックル29bと継手金具29aとが連結される。そして、緊結材27の上端側が調整ナット等の緊結調整具27aを介して継手金具29aと連結されて、かつ、緊結材27の下端側が調整ナット等の緊結調整具27bを介して継手金具28aと連結されて、当該継手金具28aがシャックル28bを介して吊り部21と連結された構成となっている。
つまり、切離床版3の下面3uに固定された固定部材23に対して、緊結材27の上端側が、継手金具29a,シャックル29b,マルチアイボルト29cを介して回動可能に連結され、かつ、吊り部21が、緊結材27の下端側に、継手金具28a,シャックル28bを介して回動可能に連結された構成となっている。
【0018】
鉛直方向固定ステップでは、旧い床版を主桁2から切り離した後、切断面支持装置4Aを切断面間31に設置し、その後、固定装置4Bを用いて切離床版3を主桁2に固定する。
即ち、旧い床版を主桁2から切り離した後、主桁2と接合されていた旧い床版の切断対象部位30の橋軸直角方向の一方の側面側から切断面支持装置4Aのねじ棒15を切断面間31に挿入して、ねじ棒15の一端側が切断面間31の外側に突出するように、くさび状部材10Aを切断面間31に嵌入する。
その後、切断面間31の外側に突出するねじ棒15の一端側にワッシャ17を螺着して、図4(b)に示すように、ワッシャ17が床版残存部分の側面31a及び切離床版3の側面31bに押し付けられた状態となるよう、ナット16をねじ棒15の一端側に締結することにより、切断面支持装置4Aが切断面間31に設置される。即ち、くさび状部材10Aに溶接されたねじ棒15等の一端側に螺着したワッシャ17を上述した側面31a及び側面31bに接触させることで、くさび状部材10Aの脱落防止を実現させる構造となっている。
そして、固定装置4Bの固定部材23,23を主桁2の上に載置された切離床版3の下面3u側に固定するとともに、固定部材23に受材吊固定具20Bを取付け、さらに、主桁2の下方に配置した受材20Aの左右の吊り部21,21と左右の受材吊固定具20B,20Bの下端部とを連結する。
その後、左右の緊結材27,27の上下端に設けられたナット等の緊結調整具27a,27bを操作して緊結材27を緊結状態に設定することにより、主桁2の上に載置された切離床版3が鉛直方向(図1(b)の上下方向)の揺れを規制された状態に主桁2Aに固定されるようになる。
【0019】
図5(a),(c)に示すように、一対の切断面支持装置4A,4Aが、橋軸方向に沿って所定の間隔を隔てて配置される。即ち、一方の切断面支持装置4Aは、くさび状部材10Aが切断面間31における橋軸直角方向の一方側(図5(a)の左側)に設置され、他方の切断面支持装置4Aは、くさび状部材10Aが切断面間31における橋軸直角方向の他方側(図5(a)の右側)に設置される。
そして、固定装置4Bは、橋軸方向に沿って所定の間隔を隔てて配置された一対の切断面支持装置4A,4Aの間に位置するように設置される。
従って、切断面間31の橋軸直角方向の両端側が一対の切断面支持装置4A,4Aの各くさび状部材10A,10Aによって支持されるので、切離床版3を水平に近い安定な状態に支持できるようになり、切離床版3を水平に近い安定な状態で主桁2に固定できるようになるので、主桁2の上に載置された切離床版3の鉛直方向の揺れを規制できる安定な固定状態を維持できるようになる。
【0020】
尚、図3乃至図5では、固定装置4Bは、海側の箱桁2Aの上に切離床版3を固定するための固定装置を例示したが、山側の箱桁2Bの上に切離床版3を固定する固定装置、I桁2Cの上に切離床版3を固定する固定装置についても、同様の構成の固定装置を用いればよい。つまり、固定装置は、主桁2の断面形状や寸法に応じて、緊結材27の長さと受材20Aの長さが違うものを使用すればよい。
また、図3乃至図5では、切断面支持装置4Aは、海側の箱桁2Aに形成された切断面間31に設置する切断面支持装置を例示したが、山側の箱桁2Bの上に載置する切断面支持装置、I桁2Cの上に載置する切断面支持装置についても、同様の構成のものを用いればよい。尚、切断面支持装置4Aは、くさび状部材10Aの傾斜面10sを下に向けて当該傾斜面10sと下の切断面31yとを接触させるようにして使用しても構わない。
即ち、鉛直方向固定装置4は、主桁2が異なる場合においても、構成としては同様の構成のものを用いればよい。
【0021】
次に、橋軸方向固定装置5の構成について、図6図7に基づいて説明する。
尚、図6は、主桁2としての海側の箱桁2Aより延長する横桁2Dに作用させて橋軸方向の揺れを抑制するための橋軸方向固定装置5Aを図示しており、図7は、主桁2としての山側の箱桁2Bより延長する横桁2Dに作用させて橋軸方向の揺れを抑制するための橋軸方向固定装置5Bを図示している。
橋軸方向固定装置5は、例えば、主桁2に連結されて橋軸直角方向に沿って延長するように設けられた横桁2Dを橋軸方向(図6(b),図7(a)の前後方向)の両側から挟み込むように配置された一対の前後のストッパーと、当該ストッパーを主桁2の上に載置された切離床版3に固定する固定手段51とを備えた構成とした。
橋軸方向固定装置5としては、図6(b)に示すような一対の前後のストッパー50A,50Aを用いた橋軸方向固定装置5A、あるいは、図7(a)に示すような一対の前後のストッパー50B,50Bを用いた橋軸方向固定装置5Bを用いる。
橋軸方向固定装置5Aは、切断面間31の端縁より上方に延長する切離床版3の側面31bに固定手段51を固定することができる場合に使用される橋軸方向固定装置であり、橋軸方向固定装置5Bは、固定手段51を切離床版3の側面31bに固定することができずに、固定手段51を切離床版3の下面3u側に固定する場合に使用される橋軸方向固定装置である。
尚、主桁2としてのI桁2Cの場合、固定手段51を切離床版3の側面31b側に固定することができる構成となっているので、図1(a)に示すように、橋軸方向固定装置5Aを使用すればよい。
【0022】
ストッパー50Aは、爪板52とフィラー53とで構成される。
ストッパー50Bは、ウェブ55とベース56とで構成される。
爪板52やウェブ55は、直角三角形状の板面を有した平板等により構成される。
フィラー53は、切離床版3の側面31bと爪板52の板面との間の隙間を埋める板材等により構成される。
ベース56は、板面がウェブ55の板面と直交するようにウェブ55の一端側に溶接等で連結されて、固定手段51で切離床版3に固定される被固定部として機能する板材等で構成される。
固定手段51は、ストッパー50Aやストッパー50Bを切離床版3に固定するためのアンカーボルト等で構成される。
橋軸方向固定装置5Aのストッパー50Aは、固定手段51を用いて切離床版3の側面31bに固定される。
橋軸方向固定装置5Bのストッパー50Aは、固定手段51を用いて切離床版3の下面3uに固定される。
【0023】
橋軸方向固定ステップでは、床版を主桁2から切り離した後、横桁2Dの橋軸方向の前後を挟み込むように前後の一対のストッパー50A,50A、あるいは、50B,50Bを配置して、これらストッパー50A,50A、あるいは、50B,50Bが、横桁2Dの上端部における橋軸方向の前後の端面2a,2aに接触した状態となるように切離床版3に固定されることによって、主桁2の上に載置された切離床版3が橋軸方向の揺れを規制された状態となるように、当該切離床版3が橋軸方向固定装置5A又は5Bを介して主桁2に固定されることになる。
【0024】
尚、橋軸方向固定装置5A,5Bについて、図1(a)においては、橋軸直角方向に沿って主桁2を挟んだ左右のいずれか一方にだけ装置を設置した例を図示し、図6(a),図7(b)においては、橋軸直角方向に沿って主桁2を挟んだ左右の両方に装置を設置した例を図示している。
つまり、橋軸方向固定装置5Aや橋軸方向固定装置5Bを、橋軸直角方向に沿って主桁2を挟んだ左右の両方に配置するか、左右の一方にのみ配置するかは、設計荷重と装置強度の関係に応じて適宜決めればよい。
即ち、橋軸方向固定装置5A,5Bについては、橋軸直角方向に沿って主桁2を挟んだ左右の一方にのみ配置するだけで設計荷重を満足するのであれば、一方にのみ装置を配置すれば良く、左右の一方にのみ配置するだけでは設計荷重を満足しないのであれば、左右の両方に装置を配置すればよい。
【0025】
次に、橋軸直角方向固定装置6の構成について、図8図9に基づいて説明する。
尚、図8は、主桁2としてのI桁2Cに作用させて橋軸直角方向の揺れを抑制するための橋軸直角方向固定装置6Aを図示しており、図9は、主桁2としての山側の箱桁2Bに作用させて橋軸直角方向の揺れを抑制するための橋軸方向固定装置6Bを図示している。
即ち、橋軸直角方向固定装置6としては、例えば、図8に示すような、かすがい方式の橋軸直角方向固定装置6A、あるいは、図9に示すような、ストッパー方式の橋軸直角方向固定装置6Bを用いる。
かすがい方式の橋軸直角方向固定装置6Aは、床版の切断対象部位30に後述の挟み込み部材61を設置できるスペースが存在する場合に使用される橋軸直角方向固定装置である。
ストッパー方式の橋軸直角方向固定装置6Bは、床版の切断対象部位30に後述の挟み込み部材61を設置できるスペースが存在しない場合に使用される橋軸直角方向固定装置である。
尚、主桁2としての海側の箱桁2Aの場合、床版の切断対象部位30に後述の挟み込み部材61を設置できるスペースが存在するので、図1(a)に示すように、かすがい方式の橋軸直角方向固定装置6Aを使用すればよい。
【0026】
図8に示すように、かすがい方式の橋軸直角方向固定装置6Aは、主桁2の上方に接合された床版の切断対象部位30を水平方向に切断したことにより形成された上の切断面31xと下の切断面31yとの間である切断面間31を橋軸直角方向に沿って貫通するように設置された連結板60と、切断面間31から橋軸直角方向の両側の外方に突出する連結板60の各突出部60a,60aにそれぞれ連結された各挟み込み部材61,61とを備える。
挟み込み部材61は、突出部60aの上に配置された上部材61Aと突出部60aの下に配置された下部材61Bとを備える。
上部材61A、及び、下部材61Bは、例えば、断面L字状のアングル材61aと、アングル材61aの縦板と横板とに接合された補強リブ材61bとで構成される。
そして、各挟み込み部材61,61の各上部材61A,61Aが、主桁2Cから切り離されて切断面間31の上方に位置される床版の互いに対向する橋軸直角方向の両側の各側面31b,31bに接触した状態に設置される。
また、各挟み込み部材61,61の各下部材61B,61Bが、切断面間31の下方に位置される床版残存部分の橋軸直角方向の両側の互いに対向する各側面31a,31a、及び、主桁2の上端部における橋軸直角方向の両側の互いに対向する各縁面2t,2tに接触した状態に設置される。
尚、挟み込み部材61の上部材61Aと下部材61Bと連結板60の突出部60aとには、例えば長孔等のボルト通し孔62bが形成されており、当該ボルト通し孔62bにボルト62aを通して図外のナットを締結することで、挟み込み部材61の上部材61Aと下部材61Bと連結板60とが連結される。
即ち、一方の挟み込み部材61の上部材61Aと下部材61Bとが連結板60の一方の突出部60aを挟んで連結されたとともに、他方の挟み込み部材61の上部材61Aと下部材61Bとが連結板60の他方の突出部60aを挟んで連結される。
【0027】
図8に示す橋軸直角方向固定装置6Aを用いた橋軸直角方向固定ステップでは、床版3が切断された箇所の上の切断面31xと下の切断面31yとの間の切断面間31に連結板60が挿入されて、当該連結板60の橋軸直角方向両側に位置する左右の端部が、切断面間31の左右端よりも外側に突出するように設置され、このように設置された連結板60の左右の突出部60a,60aに、それぞれ挟み込み部材61が設けられる。
即ち、連結板60の各突出部60a,60aの上下に、上部材61Aと下部材61Bとを上下対称となるように配置されて、かつ、上部材61Aのアングル材61aを側面31bに接触させるとともに、下部材61Bのアングル材61aを側面31a及び縁面2tに接触させた後、上部材61A、連結板60の突出部60a、下部材61Bを連結手段(ボルト62a,ボルト通し孔62b及び図外のナット)で連結して、上部材61Aと連結板60の突出部60aと下部材61Bとを一体化させる。
以上のように、橋軸直角方向固定装置6Aを用いた場合、主桁2の上に載置された切離床版3が橋軸直角方向の揺れを規制された状態となるように、当該切離床版3が橋軸直角方向固定装置6Aを介して主桁2に固定されることになる。
【0028】
図9に示すように、橋軸直角方向固定装置6Bは、主桁2を橋軸直角方向の両側から挟み込むように配置された一対の左右のストッパー65,65と、当該ストッパー65を主桁2の上に載置された切離床版3の下面3u側に固定する固定手段66とを備えた構成とした。
【0029】
ストッパー65は、平板等により構成される。
固定手段66は、ストッパー65と連結された連結部材67と、当該連結部材67を切離床版3の下面3u側に固定する固定部材68とで構成される。
連結部材67は、断面T形の板状部材等により構成され、T字の縦板部にストッパー65が連結され、T字の横板部が固定部材68により切離床版3の下面3u側に固定される。
尚、ストッパー65と連結部材67の縦板部とには、例えば長孔等のボルト通し孔65bが形成されており、当該ボルト通し孔65bにボルト65aを通して図外のナットを締結することで、ストッパー65Aと連結部材67とが連結される。
固定部材68は、アンカーボルト等で構成される。
【0030】
橋軸直角方向固定装置6Bを用いた橋軸直角方向固定ステップでは、床版を主桁2から切り離した後、主桁2を橋軸直角方向の両側から挟み込むように左右一対のストッパー65,65を配置する。そして、ストッパー65,65と切断面間31の下方に位置される主桁2の互いに対向する橋軸直角方向の両側の側面31a,31a、及び、主桁2の上端部における橋軸直角方向の両側の互いに対向する各縁面2t,2tとを接触した状態に設定した後、当該ストッパー65,65が固定手段66,66を介して切離床版3の下面3u側に固定される。
即ち、橋軸直角方向固定装置6Bを用いた場合、主桁2の上に載置された切離床版3が橋軸直角方向の揺れを規制された状態となるように、切離床版3が橋軸直角方向固定装置6Bを介して主桁2に固定されることになる。
【0031】
図10に示すように、橋軸直角方向固定装置6として、ストッパー方式の橋軸直角方向固定装置6Cを用いるようにしてもよい。
尚、図10は、主桁2としての海側の箱桁2Aに作用させて橋軸直角方向の揺れを抑制するための橋軸直角方向固定装置6Cを図示している。
当該橋軸直角方向固定装置6Cは、主桁2を橋軸直角方向の両側から挟み込むように配置された一対の左右のストッパー65A,65Aと、当該ストッパー65Aを主桁2の上に載置された切離床版3の側面31b側に固定する固定手段66Aとを備えた構成とした。
【0032】
ストッパー65Aは、平板等により構成される。
固定手段66Aは、ストッパー65Aと連結された連結部材67Aと、当該連結部材67Aを切離床版3の側面31b側に固定する固定部材68Aとで構成される。
連結部材67Aは、断面T形の板状部材等により構成され、T字の縦板部にストッパー65Aが連結され、T字の横板部が固定部材68Aにより切離床版3の側面31b側に固定される。尚、ストッパー65Aと連結部材67Aの縦板部とには長孔等のボルト通し孔65bが形成されており、当該ボルト通し孔65bにボルト65aを通して図外のナットを締結することで、ストッパー65Aと連結部材67Aとが連結される。
固定部材68Aは、アンカーボルト等で構成される。
【0033】
橋軸直角方向固定装置6Bを用いた橋軸直角方向固定ステップでは、床版を主桁2から切り離した後、主桁2を橋軸直角方向の両側から挟み込むように左右一対のストッパー65A,65Aを配置する。そして、ストッパー65A,65Aと切断面間31の下方に位置される主桁2の互いに対向する橋軸直角方向の両側の側面31a,31a、及び、主桁2の上端部における橋軸直角方向の両側の互いに対向する各縁面2t,2tとを接触した状態に設定した後、当該ストッパー65A,65Aが固定手段66A,66Aを介して切離床版3の側面31b側に固定される。
即ち、橋軸直角方向固定装置6Cを用いた場合、主桁2の上に載置された切離床版3が橋軸直角方向の揺れを規制された状態となるように、切離床版3が橋軸直角方向固定装置6Cを介して主桁2に固定されることになる。
【0034】
図8に示した、かすがい方式の橋軸直角方向固定装置6Aは、切断面間31に連結板60を設置する構成であるが、切断方法等の違いによって、切断面間31の上の切断面31x及び下の切断面31yの切断面の面精度(切削精度)が悪くなる場合がある。例えば、切断面が蛇行したり、切粉が残存する等の要因により、切断面の面精度が悪い場合、切断面間31に薄鋼板等で形成された連結板60を挿入及び貫通させることが難しくなり、かすがい方式の橋軸直角方向固定装置6Aを採用できない可能性がある。
従って、このような場合には、図8に示した、かすがい方式の橋軸直角方向固定装置6Aの代わりに、切断面間31に連結板60を設置しなくても良い構成である、図10に示した、ストッパー方式の橋軸直角方向固定装置6Cを用いればよい。
【0035】
以上説明したように、実施形態に係る床版固定方法及び床版固定装置によれば、鉛直方向固定装置4を用いて主桁2の上に載置された切離床版3の鉛直方向の揺れを規制した状態に当該切離床版3を主桁2に固定でき、橋軸方向固定装置5を用いて主桁2の上に載置された切離床版3の橋軸方向の揺れを規制した状態に当該切離床版3を主桁2に固定でき、さらに、橋軸直角方向固定装置6を用いて主桁2の上に載置された切離床版3の橋軸直角方向の揺れを規制した状態に当該切離床版3を主桁2に固定できる。
即ち、実施形態に係る床版固定方法及び床版固定装置によれば、主桁2から切り離された後に主桁2の上に載置されて固定される切離床版3の鉛直方向の揺れ、橋軸方向の揺れ、及び、橋軸直角方向の揺れに対する抑制効果を向上できる床版固定方法及び床版固定装置を提供できるようになった。
【0036】
また、床版切断後の切断面間31の切断幅と上下の切断面31x,31yの凹凸は、切断時の抵抗、自動車荷重の影響によってばらつくことが考えられるが、実施形態によれば、切断面間31に密着して設置できるように、くさび状部材10Aを備えた切断面支持装置4Aを用いるようにした。
即ち、上述したくさび状部材10Aを備えた切断面支持装置4Aを用いれば、切断面間31の切断幅や凹凸状態が変動したとしても、くさび状部材10Aの切断面間31への挿入代を調整することで、当該くさび状部材10Aを切断面間31の上下の切断面31x,31yに密着させて設置できるようになり、切断面31x,31yを安定且つ確実に支持できるようになる。
【0037】
また、橋軸方向固定装置5としては、主桁2に連結されて橋軸直角方向に沿って延長するように設けられた横桁2Dの橋軸方向の両端面2a,2aに接触して横桁2Dを橋軸方向の両端側から挟み込むように配置された一対のストッパー50A,50Aや50B,50Bを用いる構成としたので、簡単かつ容易に固定作業を行える。
【0038】
また、橋軸直角方向固定装置6としては、切離床版3及び主桁2を橋軸直角方向の両側から挟み込むように配置されたかすがい方式の橋軸直角方向固定装置6A、あるいは、主桁2を橋軸直角方向の両側から挟み込むように配置されたストッパー方式の橋軸直角方向固定装置6B又は6Cを用いる構成としたので、簡単かつ容易に固定作業を行える。
【0039】
尚、鉛直方向固定作業、橋軸方向固定作業、橋軸直角方向固定作業については、例えば、切断装置を用いて床版を橋軸方向に沿って所定の長さ(例えば、1~2m程度)だけ切断して切断装置を盛替える毎に、逐次、その切断した場所に対応した固定作業を行っていけばよい。尚、この際、各固定装置を固定するアンカー等の固定部材は、予め、切断工事の前に施工しておくことで、固定作業を迅速に行えるようになる。
【0040】
また、本発明で使用する鉛直方向固定装置としては、上述の実施形態で説明した構成のものに限らず、主桁2の上に載置された切離床版3の鉛直方向の揺れを規制した状態となるよう当該切離床版3を主桁2に固定することができる構成を備えたものであればよい。
また、本発明で使用する橋軸方向固定装置としては、上述の実施形態で説明した構成のものに限らず、主桁2の上に載置された切離床版3の橋軸方向の揺れを規制した状態となるよう当該切離床版3を主桁2に固定することができる構成を備えたものであればよい。
また、本発明で使用する橋軸直角方向固定装置としては、上述の実施形態で説明した構成のものに限らず、主桁2の上に載置された切離床版3の橋軸直角方向の揺れを規制した状態となるよう当該切離床版3を主桁2に固定することができる構成を備えたものであればよい。
【符号の説明】
【0041】
1 橋梁
2 主桁
2A,2B 箱桁(主桁)
2C I桁(主桁)
2D 横桁
2a 主桁の端面
3 切離床版(主桁から切り離された後、主桁の上に載置されて床版固定装置により主桁に固定される床版)
4 鉛直方向固定装置
4A 切断面支持装置
4B 固定装置
10A くさび状部材
10B 落下防止部材
5,5A,5B 橋軸方向固定装置
6,6A,6B,6C 橋軸直角方向固定装置
20A 受材
20B 受材吊固定具
30 切断対象部位
31 切断面間、
31a,31b 側面
31x 上の切断面
31y 下の切断面、
50A,50B ストッパー
51 固定手段
60 連結板
60a 突出部、
61 挟み込み部材
61A 上部材
61B 下部材
65,65A ストッパー
66,66A 固定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10