(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168204
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】藻類培養リアクタ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
C12M1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084683
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】591016334
【氏名又は名称】大塚テクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515177088
【氏名又は名称】株式会社JERA
(71)【出願人】
【識別番号】322009088
【氏名又は名称】西尾 幸郎
(71)【出願人】
【識別番号】322009077
【氏名又は名称】西尾 香菜江
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 幸郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 篤
(72)【発明者】
【氏名】神末 和哉
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DB11
(57)【要約】
【課題】循環系統内の培養液を容易に排出できる藻類培養リアクタを提供する。
【解決手段】藻類培養リアクタは、微細藻類を含有する培養液が収容される培養槽と、培養槽の下端近傍に配置されたエアリフトポンプ9を備えている。エアリフトポンプ9は、培養槽に連通する内部スペース87を有する本体部82と、本体部82に接続され、本体部82の底壁89から内部スペース87に突出する突出部90を含み、培養層に培養液を供給する培養液入口11を形成する第1流路管83と、第1流路管83に形成され、第1流路管83内の培養液に気体を供給する第1気体供給口13と、本体部82に接続され、内部スペース87から培養液を排出する培養液出口12を形成する第2流路管とを含む。突出部90の側壁95には、内部スペース87と第1流路管83との間に培養液の流通を可能にするバイパス流通口151,152が形成されている。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細藻類を含有する培養液が収容される培養槽と、
前記培養槽の下端近傍に配置されたエアリフトポンプであって、
前記培養槽に連通する内部スペースを有する本体部と、
前記本体部に接続され、前記本体部の底壁から前記内部スペースに突出する突出部を含み、前記培養層に培養液を供給する培養液入口を形成する第1流路管と、
前記第1流路管に形成され、前記第1流路管内の培養液に気体を供給する第1気体供給口と、
前記本体部に接続され、前記内部スペースから培養液を排出する培養液出口を形成する第2流路管と、
を含む、エアリフトポンプと、
前記突出部に接続され、前記培養槽の内部に配置されるように前記突出部から上方に延び、前記培養槽に培養液を供給する培養液供給管とを含み、
前記突出部の側壁には、前記内部スペースと前記第1流路管との間に培養液の流通を可能にするバイパス流通口が形成されている、藻類培養リアクタ。
【請求項2】
前記バイパス流通口の開口面積が、前記第2流路管の流路面積よりも大きい、請求項1に記載の藻類培養リアクタ。
【請求項3】
前記バイパス流通口は、上下方向において間隔を空けて形成された複数のバイパス流通口を含み、
前記複数のバイパス流通口のトータルの開口面積が、前記第2流路管の流路面積よりも大きい、請求項2に記載の藻類培養リアクタ。
【請求項4】
前記複数のバイパス流通口は、第1バイパス流通口と、前記第1バイパス流通口に対して上方向に間隔を空けて形成された第2バイパス流通口とを含む、請求項3に記載の藻類培養リアクタ。
【請求項5】
前記第1バイパス流通口は、前記本体部の底壁の高さ位置に形成されている、請求項4に記載の藻類培養リアクタ。
【請求項6】
前記第1バイパス流通口の開口面積は、前記第2バイパス流通口の開口面積よりも小さい、請求項4に記載の藻類培養リアクタ。
【請求項7】
前記突出部の径方向において対向する一対の前記バイパス流通口を含む、請求項1に記載の藻類培養リアクタ。
【請求項8】
前記第2流路管は、前記本体部の側壁から水平方向に向かって延びており、
前記一対のバイパス流通口は、前記第2流路管の延出方向に対して交差する方向において対向している、請求項7に記載の藻類培養リアクタ。
【請求項9】
複数の前記培養槽が並んで配置され、前記複数の前記培養槽のうちの第1培養槽の前記第2流路管と、前記複数の前記培養槽のうち前記第1培養槽に隣接する第2培養槽の前記第1流路管とが連結されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の藻類培養リアクタ。
【請求項10】
前記培養槽は、樹脂フィルムによって形成された樹脂製の培養バッグからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の藻類培養リアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、藻類培養リアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、藻類を含有する培養液が収容された培養槽と、上部フレーム及び下部フレームと、培養液入口及び気体入口と、エアリフトポンプ用の管と、培養液出口とを備える、藻類培養リアクタを開示している。培養槽は、ガラス製の外管及び外管に対して着脱可能な樹脂製の内管からなる二重管構造を有している。上部フレーム及び下部フレームは、それぞれ、外管の上部及び下部を支持している。培養液入口及び気体入口は、培養槽の下端近傍に配置されている。エアリフトポンプ用の管は、培養槽の内部に配置され、培養液入口及び気体入口に連通し、かつ培養槽の下端から上端近傍に至っている。培養液出口は、培養槽の下端近傍かつエアリフトポンプ用の管の外側に配置されている。
【0003】
特許文献1の藻類培養リアクタでは、培養液及び気体が培養槽の下端から供給されると、それらはエアリフトポンプ用の管に入りこむ。培養液と気体とが一緒にエアリフトポンプ用の管に入りこむことによって、気泡が上方に浮上し、培養液が気泡によって上方に運搬される。この構成は、一般にエアリフトポンプと称される。気泡によって運搬されることによって、培養液はエアリフトポンプ用の管の上端に達し、当該管の外側に溢れ出る。これにより、内管の内部の培養液の液位が上昇し、培養液は内管内を下方に向かって流動し、培養液出口を通じて内管ひいては培養槽の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の
図1のように多数の培養槽により構成されたリアクタの循環系統から培養液を回収する場合、循環系統において最も外側に位置する最終の培養槽の出口が開放されることにより当該培養槽内の培養液が最初に排出され、残りの培養槽の培養液は、循環経路を介して最終の培養槽まで順に流されて排出される。
【0006】
最終の培養槽の下端に設けられた出口まで培養液を流すには、当該培養槽の供給管を介して培養槽の上端近傍まで培養液を一旦引き上げた後、供給管の上端から培養液を溢れ出させて培養槽の下端まで流す必要がある。残りの培養槽内の培養液の液面が最終の培養槽の供給管の上端よりも高い位置の場合には、気圧差により培養液が順に流れる。
【0007】
しかしながら、各培養槽内の培養液の液面が最終の培養槽の供給管の上端の高さ位置まで下がって高低差がなくなると、隣り合う培養槽内の気圧が平衡状態となり、培養液の流れが停止する場合がある。そのため、残りの培養槽内の気圧を高める作業が必要となり、培養液の回収作業の効率の低下が懸念される。
【0008】
本開示の一実施形態は、循環系統内の培養液を容易に排出することができる藻類培養リアクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態に係る藻類培養リアクタは、微細藻類を含有する培養液が収容される培養槽と、前記培養槽の下端近傍に配置されたエアリフトポンプであって、前記培養槽に連通する内部スペースを有する本体部と、前記本体部に接続され、前記本体部の底壁から前記内部スペースに突出する突出部を含み、前記培養層に培養液を供給する培養液入口を形成する第1流路管と、前記第1流路管に形成され、前記第1流路管内の培養液に気体を供給する第1気体供給口と、前記本体部に接続され、前記内部スペースから培養液を排出する培養液出口を形成する第2流路管と、を含む、エアリフトポンプと、前記突出部に接続され、前記培養槽の内部に配置されるように前記突出部から上方に延び、前記培養槽に培養液を供給する培養液供給管とを含み、前記突出部の側壁には、前記内部スペースと前記第1流路管との間に培養液の流通を可能にするバイパス流通口が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る藻類培養システムの概要図である。
【
図4】
図4は、
図2の二点鎖線IVで囲まれた部分の拡大図である。
【
図6】
図6は、
図5の二点鎖線VIで囲まれた部分の拡大図である。
【
図7】
図7は、接続ポートの模式的な平面図である。
【
図8】
図8は、接続ポートの模式的な正面図である。
【
図9】
図9は、接続ポートの模式的な側面図である。
【
図12】
図12は、エアリフトポンプの模式的な平面図である。
【
図13】
図13は、エアリフトポンプの模式的な正面図である。
【
図14】
図14は、エアリフトポンプの模式的な側面図である。
【
図15】
図15は、エアリフトポンプの模式的な底面図である。
【
図18】
図18は、培養槽(培養バッグ)とエアリフトポンプとの接続方法を説明する図である。
【
図19】
図19は、培養リアクタの設置方法を説明する図である。
【
図20】
図20は、藻類培養システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図22】
図22は、培養液の循環及び攪拌フローの一例を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、培養槽内における培養液の循環について説明する図である。
【
図25】
図25は、培養槽内における培養液の攪拌から循環への移行について説明する図である。
【
図26】
図26は、培養槽内における培養液の攪拌から循環への移行について説明する図である。
【
図27】
図27は、培養槽内における培養液の攪拌から循環への移行について説明する図である。
【
図28】
図28は、培養槽内における培養液の排出処理を説明する図である。
【
図29】
図29は、培養槽内における培養液の排出処理を説明する図である。
【
図30】
図30は、培養槽内への培養液の注入処理を説明する図である。
【
図31】
図31は、攪拌用エア開口の最適化検証に使用したエアリフトポンプの断面図である。
【
図32】
図32は、攪拌用エア開口の最適化検証に使用したエアリフトポンプの断面図である。
【
図33】
図33は、攪拌用エア開口の最適化検証に使用したエアリフトポンプの断面図である。
【
図34】
図34は、攪拌用エア開口の最適化検証に使用したエアリフトポンプの断面図である。
【
図35】
図35は、攪拌用エア開口の最適化検証に使用したエアリフトポンプの断面図である。
【
図36】
図36は、攪拌用エア開口の最適化検証に使用したエアリフトポンプの断面図である。
【
図37】
図37は、攪拌用エア開口の最適化検証に使用したエアリフトポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本開示の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[藻類培養システム1の全体構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る藻類培養システム1の概要図である。
図1において、破線矢印は液体の流れを示し、実線矢印は気体の流れを示している。
【0013】
藻類培養システム1は、閉鎖系培養システムである。閉鎖系の藻類培養システム1では、開放型とは異なって培養リアクタ2の上面が閉じられており、微細藻類を含む培養液Cが複数の培養リアクタ2に連続的に循環する。各培養リアクタ2内では、微細藻類が光合成して培養される。培養液Cは、微細藻類の光合成及び増殖のための栄養塩(例えば、窒素、リン等)が溶解した液体培地に微細藻類を含有させた液体であり、この培養液Cに光及び二酸化炭素が供給されることによって、微細藻類の光合成が行われる。
【0014】
培養対象となる微細藻類としては、光合成によって増殖する藻類であれば特に制限されず、例えば、藍藻、紅藻、トレボウキシア藻、緑藻、珪藻、ラフィド藻、ユーグレナ類(ミドリムシ類)等が挙げられる。藍藻としては、例えば、スピルリナ、アナベナ、ノストック、シネコキスティス等が挙げられる。紅藻としては、例えば、シアニジウム、シアニディオシゾン等が挙げられる。トレボウキシア藻としては、例えば、クロレラ、ボトリオコッカス等が挙げられる。緑藻としては、例えば、ドナリエラ、クラミドモナス、イカダモ等が挙げられる。珪藻としては、例えば、フェオダクチラム、スケレトネマ等が挙げられる。ラフィド藻としては、例えば、ヘテロシグマ、シャットネラ等が挙げられる。ユーグレナ類(ミドリムシ類)としては、例えば、ユーグレナ等が挙げられる。これらの藻類は、自然界に存在する野生種であってもよいし、人為的に遺伝子操作された変異種であってもよい。液体培地としては、上記の微細藻類を培養できる培地であれば特に制限されず、公知のものを使用することができる。
【0015】
光合成に使用される光は、自然光及び人工光のどちらであってもよい。自然光が使用される場合、藻類培養システム1は、屋外に設置されていてもよい。人工光が使用される場合、藻類培養システム1は、屋内に設置されていてもよい。人工光としては、培養される微細藻類が有する光合成色素によって吸収可能な波長の光を発する光源を使用してもよい。そのような光源としては、例えば、光合成色素としてクロロフィルを有する微細藻類を培養する場合、青色の光(例えば、波長が400nm~500nm程度)及び赤色の光(例えば、波長が600nm~700nm程度)を発するLED(Light Emitting Diode)光源等が挙げられる。
【0016】
光合成に使用される二酸化炭素は、空気中の二酸化炭素であってもよいし、工場からの排出ガス中の二酸化炭素であってもよい。例えば、火力発電所、製鉄所の自家発電設備等、二酸化炭素の排出量が比較的多い工場を藻類培養システム1の二酸化炭素供給源として採用すれば、社会全体としての二酸化炭素の排出量を減らすことができるので、地球温暖化を軽減することもできる。
【0017】
藻類培養システム1は、培養リアクタ2と、気体ユニット3と、培養液貯留部4と、培地貯留部5と、培養液回収部6と、コントローラ7とを含む。
【0018】
培養リアクタ2は、並んで配置された複数の培養リアクタ2を含む。この実施形態では、4つの培養リアクタ2が、互いに隣り合って配置されている。これら複数の培養リアクタ2を培養液Cが順次循環し、例えば、各培養リアクタ2内で微細藻類の光合成が行われる。
【0019】
各培養リアクタ2は、微細藻類の培養スペースとしての培養槽8と、エアリフト方式によって培養液Cを培養槽8内に送るエアリフトポンプ9と、エアリフトポンプ9に接続され、培養槽8内に配置された培養液供給管10とを含む。
【0020】
エアリフトポンプ9には、培養槽8へ培養液Cを流入させる培養液入口11と、培養槽8から流出する培養液Cを排出する培養液出口12と、培養液Cに二酸化炭素を含む気体を供給する第1気体供給口13とが形成されている。複数の培養リアクタ2のエアリフトポンプ9は、
図1においてグレーで塗られた循環ライン15によって互いに接続されている。より具体的には、1つの培養リアクタ2の培養液出口12と、当該培養リアクタ2に隣接する培養リアクタ2の培養液入口11とが循環ライン15で接続され、かつ閉鎖系の端同士の培養リアクタ2の培養液入口11及び培養液出口12が同様に循環ライン15で接続されている。
【0021】
例えば、1つの培養リアクタ2の培養液入口11から流入した培養液Cに第1気体供給口13から気体が供給されると、当該気体の気泡Aによって培養液Cが培養液供給管10を通って上方に運搬される。その後、培養液Cが培養液供給管10の上端に達すると培養液供給管10の外側に溢れ出し、培養槽8内を下方に向かって流動し、培養液出口12から排出される。排出された培養液Cは、循環ライン15を通って、次の培養リアクタ2の培養液入口11に供給される。これにより、複数の培養リアクタ2に培養液Cが連続的に循環することとなる(
図1の破線16参照)。各培養槽8内では、透明な培養槽8を通して光を受けた微細藻類が、気泡A中の二酸化炭素及び培養液C中の栄養塩を基質として光合成を行うと共に増殖する。
【0022】
気体ユニット3は、導入した二酸化炭素を含む気体を下流側の培養リアクタ2に供給するユニットであり、上流側で気体導入ライン17に接続され、下流側で第1気体供給ライン18に接続されている。気体導入ライン17は、複数の培養リアクタ2に供給する気体を一括して導入するラインであり、この実施形態では、4つの培養リアクタ2に対して1本の気体導入ライン17が設けられている。第1気体供給ライン18は、各培養リアクタ2に対応して個別に設けられている。これにより、各培養リアクタ2に供給する気体の流量等を個別に管理することができる。
【0023】
気体導入ライン17において気体ユニット3よりも上流側には、例えば、エアフィルタ20、ブロワ21及び気体供給源22が設けられている。気体供給源22は、この実施形態では発電所等の工場の排気ガスであるが、空気であってもよい。
【0024】
気体ユニット3は、レギュレータ23と、第1流量調整装置25と、逆止弁27とを含む。
【0025】
レギュレータ23は、気体導入ライン17において、培養リアクタ2に供給する気体の圧力を調節する。レギュレータ23は、例えば、減圧バルブ、圧力調整バルブと称してもよい。
【0026】
レギュレータ23の流体出口には、第1気体大本ライン131が接続されている。第1気体大本ライン131の下流側端部は、第1流量調整装置25に接続されている。第1気体大本ライン131は、第1流量調整装置25から複数の第1気体供給ライン18に分岐している。この実施形態では、4つの培養リアクタ2に対して1本ずつの第1気体供給ライン18が設けられている。したがって、第1気体大本ライン131は、4つの第1気体供給ライン18に分岐している。
【0027】
第1流量調整装置25は、内蔵される構造に応じて、流量調整弁と称してもよい。逆止弁27は、各第1気体供給ライン18に設けられている。
【0028】
例えば、工場等の気体供給源22からの排出ガスは、ブロワ21で吸引加圧されることによって圧縮気体として気体導入ライン17内に噴出する。そして、この圧縮気体中のゴミや塵等がエアフィルタ20で捕獲された後、レギュレータ23で気体圧が調節され、第1気体大本ライン131に送られる。そして、エアリフトポンプ9の第1気体供給口13に気体が供給される。
【0029】
培養液貯留部4は、培養リアクタ2(培養槽8)の収容量を超えた培養液Cを一時的に貯留するスペースである。例えば、培養液貯留部4は、一定の容積を有する貯留タンク、貯留容器等であってもよい。培養液貯留部4と培養槽8とは、オーバーフローライン29によって、気体及び液体が流通可能に接続されている。
【0030】
培養液貯留部4には、培養液貯留部4に溜まった培養液Cの量を測定するための液面計30が備えられている。液面計30としては、公知の液面計30を使用することができる。また、培養液貯留部4には、培養液Cに溜まった気体の圧力を測定するための気圧センサ31が備えられている。気圧センサ31としては、公知の気圧センサ31を使用することができる。なお、図面の明瞭化のため、
図1では液面計30及び気圧センサ31を共通の要素として示しているが、これらは互いに独立して設けられている。
【0031】
オーバーフローライン29は、各培養槽8に対してそれぞれ独立して接続された複数の独立ライン32(第1ライン及び第2ライン)と、複数の独立ライン32をまとめたラインとして培養液貯留部4に連通する集合ライン33とを含む。この実施形態では、各培養槽8に対応して独立ライン32が1本ずつ接続されており、合計4本の独立ライン32が1本の集合ライン33として培養液供給ライン35に接続されている。より具体的には、培養液貯留部4の下方において、分岐管37を介して培養液供給ライン35に接続されていてもよい。
【0032】
培養槽8の収容量を超えた培養液Cは、培養液供給管10の上端から上方に移動する気泡Aによって各独立ライン32に誘導され、独立ライン32及び集合ライン33を介して、エアリフト方式によって気泡Aと共に運搬される。この実施形態では、集合ライン33が培養液供給ライン35に接続されているので、培養液C中の気泡Aを培養液貯留部4の下部から供給することができる。これにより、培養液貯留部4に貯留された培養液Cを気泡Aによって曝気攪拌することができる。
【0033】
培養液貯留部4には排気バルブ34が設けられている。排気バルブ34は、例えば電磁バルブである。排気バルブ34を開けることによって、培養液貯留部4の内部に溜まった気体を排出し、培養液貯留部4の内圧を下げることができる。これにより、オーバーフローライン29の培養槽8側に比べて培養液貯留部4側の圧力が下がるので、培養槽8から培養液貯留部4へ向かって、気泡Aと共に培養液Cを効率よく運搬することができる。なお、排気バルブ34が省略されることによって、培養液貯留部4の上部は開放されていてもよい。
【0034】
培養液貯留部4と循環ライン15とは、培養液供給ライン35によって、液体が流通可能に接続されている。例えば、循環ライン15の液の流れ方向途中部に分岐管36が設けられ、この分岐管36に対して培養液供給ライン35が接続されていてもよい。つまり、各培養リアクタ2から排出された培養液Cを、オーバーフローライン29、培養液貯留部4及び培養液供給ライン35を介して循環ライン15に戻すことができる。したがって、オーバーフローライン29及び培養液供給ライン35は、培養リアクタ2のエアリフトポンプ9を介して形成される循環ライン15とは異なる第2循環ラインとして利用することができる。
【0035】
培養液供給ライン35において分岐管37と分岐管36との間には、サンプリング部38が設けられている。サンプリング部38は、サンプリング部38を通過する培養液Cの物理量を測定する計測機器、及び培養液Cを抽出するためのサンプリングポートを含んでいてもよい。計測機器としては、例えば、温度計、濁度計、pH計、溶存二酸化炭素計、溶存酸素計等が挙げられる(
図20参照)。また、サンプリングポートから培養液Cを抽出し、抽出液をセルカウンタで測定することによって、培養液Cに含有された細胞の種類や個数、細胞の状態等を確認することができる。
【0036】
培地貯留部5は、循環ライン15及び培養リアクタ2を循環する培養液Cに補充する培地39を貯留するスペースである。例えば、培地貯留部5は、一定の容積を有する貯留タンク、貯留容器等であってもよい。培地貯留部5に貯留される培地39としては、例えば、蒸留水等であってもよい。培地貯留部5と培養液供給ライン35とは、培地供給ライン40によって、液体が流通可能に接続されている。培養液供給ライン35と培地供給ライン40との接続部には、培地供給切替バルブ133が設けられている。
【0037】
培地供給切替バルブ133は、例えば、培地供給用の三方電磁バルブであり、循環ライン15への培地の供給元を、2方向に切り替えることができる。この実施形態では、培養液貯留部4から培養液供給ライン35を通る経路と、培地貯留部5から培地供給ライン40を通る経路との2経路のどちらかを選択することができる。
【0038】
培地供給ライン40には、ポンプ41が設けられている。ポンプ41の駆動によって、培地貯留部5内の培地39を、培地供給ライン40を介して培養液供給ライン35に供給することができる。これにより、培養液Cの回収によって循環中の培養液Cの量が減っても、培地供給ライン40を介して循環ライン15に培地39を供給できるので、微細藻類に対して安定した培養環境を提供することができる。また、ポンプ41による圧送によって、培養液貯留部4の下方において培養液供給ライン35に培地及びエアが供給されるので、培養液供給ライン35内でエアロック等の詰まりが発生することを抑制することもできる。
【0039】
培養液回収部6は、循環ライン15から培養液Cを回収するスペースである。培養液回収部6と循環ライン15とは、回収ライン42によって、液体が流通可能に接続されている。例えば、循環ライン15の培養液Cの流れ方向途中部に回収用切替バルブ43が設けられている。回収用切替バルブ43は、例えば、培養液回収用の三方電磁バルブであり、循環ライン15を流れる培養液Cの流路を、2方向に切り替えることができる。より具体的には、回収用切替バルブ43の2つの流体出口には、それぞれ、循環ライン15及び回収ライン42が接続されている。回収用切替バルブ43を回収ライン42側に切り替えることによって、循環ライン15から培養液Cを回収することができる。そして、回収された培養液Cから微細藻類を抽出することによって、各種製品の原料とすることができる。抽出された微細藻類は、例えば、ジェット燃料、化成品原薬、タンパク質製品、食用油脂、健康補助食品、不飽和脂肪酸オイル、抗酸化物質、医薬品原薬等の原料とすることができる。
【0040】
コントローラ7は、例えば、気体ユニット3、液面計30、気圧センサ31、ポンプ41、排気バルブ34、サンプリング部38、及び回収用切替バルブ43に電気的に接続されている。
【0041】
[培養リアクタ2の具体的な構成]
【0042】
(1)培養槽8の構造
図2は、培養槽8の模式的な正面図である。
図3は、培養槽8の模式的な側面図である。
図4は、
図2の二点鎖線IVで囲まれた部分の拡大図である。
図5は、
図2のV-V線に沿う断面図である。
図6は、
図5の二点鎖線VIで囲まれた部分の拡大図である。
図2~
図6では、培養液Cが収容されていない状態の培養槽8が示されている。
【0043】
培養槽8は、この実施形態では、樹脂製の扁平な培養バッグで構成されており、バッグ本体44と、上部接続ポート45と、下部接続ポート46とを含む。
【0044】
主に
図2及び
図3を参照して、バッグ本体44は、口部47が形成された下端48及びその反対側の上端49を有し、上下方向に長い形状に形成されている。バッグ本体44は、バッグ本体44の長手方向に沿って並んで延び、バッグ本体44の左右周縁50L,50Rを形成する一対の縦周縁部51と、一対の縦周縁部51の端部間に形成され、バッグ本体44の上下端48,49を形成する横周縁部52,53とを有している。横周縁部52,53は、バッグ本体44の上部に配置された上部周縁部52と、バッグ本体44の下部に配置された下部周縁部53とを含む。一対の縦周縁部51、上部周縁部52及び下部周縁部53で囲まれたバッグ本体44の内部に、培養液Cが収容される収容室54が区画されている。バッグ本体44は、バッグ本体44の下端48及び上端49に各端部を有する筒状のインフレーションフィルムで構成されていてもよい。
【0045】
一対の縦周縁部51は、左右周縁50L,50Rを有している。左右周縁50L,50Rは、互いに平行な直線状に形成されており、例えば、折り重なった樹脂フィルム72(
図5及び
図6参照)の折り目からなる。左右周縁50L,50Rは、バッグ本体44の側縁と称してもよい。左右周縁50L,50R間の距離であるバッグ本体44の幅W
1は、例えば、30mm~300mmであってもよい。バッグ本体44の幅W
1が上記の範囲であれば、攪拌用の気泡Aによって、培養槽8内の培養液Cを効率よく攪拌することができる。これにより、汚染細胞の滞留等を抑制することができる。
【0046】
また、バッグ本体44の長さL
1は、例えば、30cm~300cmであってもよい。縦周縁部51は、左右周縁50L,50Rから、例えば、10mm程度内側までの直線状の領域であってもよい。図面の明瞭化のため、
図2では、縦周縁部51と定義される領域がハッチングで示されている。この実施形態では、バッグ本体44が筒状のインフレーションフィルムで構成されているため縦周縁部51は非ヒートシール部であるが、ハッチングが付された領域をヒートシール部として形成してもよい。例えば、バッグ本体44は、Tダイ-キャスト成形によって形成された2枚のキャストフィルムを重ね合わせ、当該2枚のキャストフィルムの両サイドを溶着することによって筒状に形成されてもよい。この場合、
図2のハッチングが付された領域がヒートシール部を提供する。2枚のキャストフィルムは、同種フィルムであってもよいし、互いに異なる素材により形成された異種フィルムであってもよい。また、インフレーションフィルム及びキャストフィルムは、目的に応じて、縦延伸工程、横延伸工程、斜め延伸工程等の工程を経て形成されてもよい。
【0047】
上部周縁部52は、バッグ本体44にヒートシールが施されることによって形成された上部シール部52であってもよい。上部シール部52においてバッグ本体44の幅方向中央部には、上部接続ポート45を取り付けるための上部ポート取付部が形成されている。上部接続ポート45は、上部ポート取付部においてバッグ本体44を構成する樹脂フィルム72が溶着することによって、バッグ本体44に固定されている。
【0048】
上部シール部52において、上部接続ポート45の両側には、一対の引っ掛け穴55が形成されている。各引っ掛け穴55は、バッグ本体44を厚さ方向に貫通して形成されている。引っ掛け穴55の内周部には、環状の補強部材56が設けられている。補強部材56は、培養槽8の引っ掛け時、バッグ本体44に加わる荷重によってバッグ本体44が破損することを防止する。補強部材56としては、例えば、鳩目を使用することができる。補強部材56は、金属製、プラスチック製のいずれであってもよい。
【0049】
上部シール部52は、収容室54の外側に形成された外縁57と、収容室54の内側に形成された内縁58とを有している。上部シール部52の外縁57及び内縁58は、バッグ本体44の左側周縁50L及び右側周縁50Rのそれぞれに端部を有し、バッグ本体44の幅方向に沿って延びる一対として形成されている。上部シール部52において、外縁57と内縁58との間の領域が、樹脂フィルム72がヒートシールされた領域である。上部シール部52の外縁57は、バッグ本体44の上端49を形成し、例えば、左側周縁50L及び右側周縁50Rに対して直交する一直線に形成されていてもよい。上部シール部52の内縁58は、例えば、上部シール部52の外縁57(バッグ本体44の上端49)に向かって凸となる弧状に湾曲する湾曲縁部であってもよい。これにより、上部シール部52の内縁58によって形成された収容室54の上端99まで培養液Cが満たされ、上部シール部52の内縁58に液圧が加わる状態であっても、この湾曲縁部によって液圧を分散させることができる。その結果、上部シール部52の内縁58を起点としてバッグ本体44が破損することを抑制することができる。
【0050】
主に
図2及び
図4を参照して、下部周縁部53は、バッグ本体44にヒートシールが施されることによって形成された下部シール部53であってもよい。下部シール部53は、バッグ本体44の下端48に向かって先細りとなる形状で形成されている。下部シール部53は、接続シール部59、口部シール部60及び傾斜シール部61を含む。
【0051】
接続シール部59は、バッグ本体44の口部47を形成しており、下部接続ポート46が接続される部分である。
図2及び
図4では、接続シール部59が下部接続ポート46に重なっているため参照符号「59(47)」が下部接続ポート46から引き出されている。下部接続ポート46に対する接続シール部59の溶着形態は、例えば
図5に示されている。下部接続ポート46は、接続シール部59においてバッグ本体44を構成する樹脂フィルム72が溶着することによって、バッグ本体44に固定されている。
【0052】
口部シール部60は、バッグ本体44の幅方向における接続シール部59の両端部からバッグ本体44の長手方向に沿って並んで延びる一対として形成されている。一対の口部シール部60は、バッグ本体44の長手方向に沿って互いに平行な直線状の内縁62を有している。一対の口部シール部60の内縁62で挟まれた領域は、バッグ本体44の口部流路63であってもよい。
【0053】
傾斜シール部61は、口部シール部60と縦周縁部51との間に一対として形成されている。より具体的には、一対の傾斜シール部61は、一対の縦周縁部51から口部シール部60へ向かって互いに近づく直線状の内縁64を形成するシール部である。傾斜シール部61と縦周縁部51との間の角度θは、90°を超え、例えば、120°~150°であることが好ましい。角度θが上記の範囲であれば、培養槽8の下部にコンタミネーションの原因となる汚染細胞等が溜まったり固着したりすることを抑制でき、かつバッグ本体44が無駄に長くなってしまうことを防止することができる。
【0054】
一対の傾斜シール部61によって形成された直線状の内縁64は、口部シール部60に向かって互いに近づくテーパ状である。これにより、バッグ本体44の下部には、バッグ本体44の幅方向において一対の傾斜シール部61の内縁64の間の領域であるテーパ流路65と、当該テーパ流路65から下部接続ポート46に至る一定幅の口部流路63とが連続的に形成されている。テーパ流路65の最大幅W2(縦周縁部51と傾斜シール部61との接続部分の幅)に対する口部流路63の幅W3の比率(W3/W2)は、例えば、0.1~0.95であることが好ましい。
【0055】
テーパ流路65を形成する一対の傾斜シール部61は、この実施形態では、一対の縦周縁部51から口部シール部60へ向かって互いに近づくテーパ状の外縁66を形成しており、内縁64と外縁66との間が一定幅の直線状シール部である。これにより、バッグ本体44の下部は、一対の傾斜シール部61の外縁66で区画された略三角形状の第1領域67と、第1領域67に対してバッグ本体44の下端48側に形成され、一対の口部シール部60及び接続シール部59の外縁(バッグ本体44の下端48)で区画された略四角形状の第2領域68とに区別できる。テーパ流路65を形成できれば、一対の傾斜シール部61の外縁66は、例えば
図4に破線69で示すように、口部シール部60へ向かって一定間隔で延びていてもよい。
【0056】
また、口部シール部60は、傾斜シール部61との接続部分に凸部70を有している。凸部70は、各口部シール部60から口部流路63側に突出する一対の凸部70を含む。凸部70は、口部シール部60と一体的なヒートシール部として形成されている。また、凸部70は、口部流路63側に向かって凸状に湾曲して形成された湾曲凸部70であってもよい。これにより、テーパ流路65と口部流路63との境界部には、流路幅が口部流路63よりも狭い括れ部71が形成されている。例えば、口部流路63の幅W3に対する括れ部71の幅W4の比率(W4/W3)は、例えば、0.1~0.95であることが好ましい。
【0057】
主に
図5及び
図6を参照して、バッグ本体44を構成する樹脂フィルム72の層構成について説明する。バッグ本体44は、例えば、互いに重なる積層フィルムのヒートシールによって構成されている。樹脂フィルム72は、全体として透明であり、例えば、50μm~400μmの厚さを有している。樹脂フィルム72の厚さが上記の範囲であれば、フィルムの透明度が高くなるので、培養槽8内の培養液C全体に光を効率よく行き渡らせることができる。また、樹脂フィルム72の透過率は、青色の光(例えば、波長が400nm~500nm程度)及び赤色の光(例えば、波長が600nm~700nm程度)に対して60%~99%程度であってもよい。
【0058】
樹脂フィルム72は、例えば、3層フィルムで構成されている。3層の樹脂フィルム72は、収容室54側から順に積層された、内層73、中間層74及び外層75を含む。なお、
図6では示されていないが、互いに隣接する樹脂層(例えば、内層73と中間層74)が異種原料により形成されている場合は、これらの樹脂層同士の剥離を防止するために接着層が介在されていてもよい。例えば、一方がナイロン系樹脂であり他方がオレフィン系樹脂である場合、接着層としては無水マレイン酸変性ポリプロピレンを使用してもよい。
【0059】
内層73としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリテトラフルオロエチレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-テトラシクロドデセン等のポリ環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等のビニル系重合体樹脂、ナイロン-6、ナイロン-12、ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂等を使用できる。これらの樹脂は、単独使用又は2種以上混合して使用してもよい。
【0060】
中間層74は、バリア性を有する層であることが好ましく、例えば、ポリ環状オレフィン系樹脂及びエチレン-ビニルアルコール共重合体の少なくとも一方を使用できる。
【0061】
外層75は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリテトラフルオロエチレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-テトラシクロドデセン等のポリ環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等のビニル系重合体樹脂、ナイロン-6、ナイロン-12、ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂等を使用できる。これらの樹脂は、単独使用又は2種以上混合して使用してもよい。
【0062】
図7は、接続ポート45,46の模式的な平面図である。
図8は、接続ポート45,46の模式的な正面図である。
図9は、接続ポート45,46の模式的な側面図である。
図10は、接続ポート45,46の模式的な底面図である。
図11は、
図7のXI-XI線に沿う断面図である。
【0063】
次に、
図7~
図11を参照して、上部接続ポート45及び下部接続ポート46の構造を説明するが、上部接続ポート45及び下部接続ポート46は同じ構造を有しているので、共通の参照符号を使用して説明する。
【0064】
上部接続ポート45及び下部接続ポート46は、例えば、プラスチック製の一体品からなる。上部接続ポート45及び下部接続ポート46の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の汎用プラスチックを使用できる。上部接続ポート45及び下部接続ポート46は、ベース部76と、接続部77と、フランジ部78とを含む。
【0065】
ベース部76は、バッグ本体44に対する溶着部分である。ベース部76は、底面視においてボート形状に形成されている(
図10参照)。ボート形状のベース部76の中央には、円形の貫通孔79が形成されている。貫通孔79は、培養液Cの流路を形成する。貫通孔79の径D
1は、例えば、10mm~50mmであってもよい。ベース部76の周面には、複数のリブ80が周方向に沿って形成されている。複数のリブ80の形成によってベース部76と樹脂フィルム72との接触面積を小さくできるので、ベース部76にバッグ本体44を溶着する際、効率よく短時間で溶着することができる。
【0066】
また、
図8を参照して、ベース部76における接続部77とは反対側の端部134(バッグ内部側の端部)は、バッグ本体44の収容室54に臨む部分である。この端部134には、培養液Cを収容しバッグ本体44を吊り下げた状態(例えば、
図18参照)において、培養液Cから比較的大きな圧力が加わる。そのため、バッグ本体44の口部47に捻じる力が加わったときに、端部134の角部135が破損し易い。そこで、この実施形態では、角部135が、ラウンド形状に形成されている。角部135が鋭利な形状ではなくラウンド形状であれば、角部135においてバッグ本体44を破損し難くすることができる。
【0067】
接続部77は、エアリフトポンプ9及びオーバーフローライン29が接続される部分である。接続部77は、略円筒状に形成されており、その周面には、複数の環状段部81が周方向全体にわたって形成されている。複数の環状段部81は、上部接続ポート45及び下部接続ポート46からエアリフトポンプ9及びオーバーフローライン29が外れることを防止するストッパとして機能する。特に、オーバーフローライン29等の管がシリコーンホース、ウレタンホース等の可撓性ホースである場合には、当該ホースが環状段部81の形状に沿って変形して環状段部81に引っ掛かるので、ホース外れを防止することができる。一方、オーバーフローライン29等の管が金属等の硬質の管である場合には、環状段部81に沿って変形しないので、Oリング等のシール部材を取り付けてもよい。例えば、紙面下側の環状段部81(環状段部81A)と、その下方のフランジ部81Bとの間の溝81Cに、Oリングが嵌められてもよい。
【0068】
フランジ部78は、接続部77の周方向全体にわたって形成されている。フランジ部78は、複数の環状段部81に対してベース部76側に配置されている。フランジ部78は、この実施形態では、平面視八角形状に形成されている(
図7参照)。フランジ部78は、エアリフトポンプ9(後述する本体部82)及びオーバーフローライン29の各端部が当接することによって、エアリフトポンプ9及びオーバーフローライン29の過挿入を防止する。また、接続部77とベース部76との間にフランジ部78が設けられていれば、ベース部76にバッグ本体44が溶着された後も、作業用の把持部としてフランジ部78を残しておくことができる。例えば、接続部77への管の接続作業に際して、フランジ部78を掴んで固定することで、接続作業性を向上することができる。
【0069】
(2)エアリフトポンプ9の構造
図12は、エアリフトポンプ9の模式的な平面図である。
図13は、エアリフトポンプ9の模式的な正面図である。
図14は、エアリフトポンプ9の模式的な側面図である。
図15は、エアリフトポンプ9の模式的な底面図である。
図16は、
図12のXVI-XVI線に沿う断面図である。
図17は、
図12のXVII-XVII線に沿う断面図である。
【0070】
エアリフトポンプ9は、例えば、金属製又はプラスチック製の一体品からなる。エアリフトポンプ9は、本体部82と、第1流路管83と、第2流路管84と、第1気体供給管85とを含む。エアリフトポンプ9は、例えば、本体部82、第1流路管83、第2流路管84及び第1気体供給管85を溶接で互いに接合することによって一体的に形成されていてもよい。また、エアリフトポンプ9は、成形機、3Dプリンタ等を用いて一体的に形成されたプラスチック製であってもよい。
【0071】
本体部82は、内部スペース87を区画する筒状の側壁88と、側壁88の下部に形成された底壁89とを有し、側壁88の上部が開放された有底筒状に形成されている。本体部82の開口径D2は、下部接続ポート46の接続部77に嵌合する程度の大きさであり、例えば、15mm~60mm程度であってもよい。
【0072】
第1流路管83は、本体部82の底壁89に接続され、本体部82に連通している。第1流路管83は、本体部82の底壁89を上下に貫通しており、その一部が本体部82の底壁89の径方向中央から上方に向かって突出している。第1流路管83の当該突出部90は、培養液供給管10が接続される接続部14を有している。接続部14の周面には、環状段部19が周方向全体にわたって形成されている。環状段部19は、第1流路管83から培養液供給管10が外れることを防止するストッパとして機能する。
【0073】
突出部90の周囲の環状(ドーナツ状)の空間が、本体部82の内部スペース87である。
図17を参照して、突出部90は、本体部82の内部において、第2流路管84の径方向の上端91よりも上方にまで延びている。したがって、本体部82の軸方向(上下方向)において、第2流路管84の径方向の下端92から上端91まで全体にわたって、第1流路管83(突出部90)の側壁95が横切っている。
【0074】
図16及び
図17を参照して、突出部90の側壁95には、複数の開口151,152が形成されている。複数の開口151,152は、培養液供給管10を介さずに内部スペース87と第1流路管83との間に培養液Cの流通を可能にする開口であり、バイパス流通口151,152と称されてもよい。複数のバイパス流通口151,152は、第1バイパス流通口151及び第2バイパス流通口152を含む。第1バイパス流通口151及び第2バイパス流通口152は、突出部90の軸方向において上下に離れて形成されている。第1バイパス流通口151が下側に形成され、第2バイパス流通口152が上側に形成されている。
【0075】
第1バイパス流通口151の形状は、特に制限されず、例えば、円形、四角形、三角形等であってもよい。この実施形態では、第1バイパス流通口151の形状は、円形である。第1バイパス流通口151の幅(径)D5は、突出部90の内径D4よりも小さくてもよい。第1バイパス流通口151の形成により突出部90の一部が切り欠かれていても、突出部90の周方向の半分以上の範囲において突出部90の素材部分を残すことができる。これにより、突出部90の機械的強度が脆弱になることを防止することができる。例えば、第1バイパス流通口151の高さ位置を起点に突出部90が折れ曲がることを防止することができる。第1バイパス流通口151の幅(径)D5は、例えば、1mm~6mmであってもよい。
【0076】
第1バイパス流通口151は、突出部90の径方向において対向する一対の第1バイパス流通口151を含む。一対の第1バイパス流通口151は、第1流路管83の内部空間を介して対向している。一対の第1バイパス流通口151は、第2流路管84の延出方向(本体部82から第2流路管84の先端に向かう方向であって、第1方向Xとする)に対して交差する方向(この実施形態では、第1方向Xに直交する第2方向Y)において対向している。これにより、一対の第1バイパス流通口151は、本体部82の側壁88に向かって開口している。
【0077】
第1バイパス流通口151は、本体部82の底壁89の高さ位置に形成されている。例えば、第1バイパス流通口151の下端と底壁89(底面96)の高さが一致していてもよい。言い換えれば、底壁89を基準にした第1バイパス流通口151の高さは、0mmであってもよい。
【0078】
第2バイパス流通口152の形状は、特に制限されず、例えば、円形、四角形、三角形等であってもよい。この実施形態では、第2バイパス流通口152の形状は、第1バイパス流通口151と同じ形状である。つまり、第2バイパス流通口152の形状は、円形である。第2バイパス流通口152の幅(径)D6は、突出部90の内径D4よりも小さくてもよい。第2バイパス流通口152の幅(径)D6は、第1バイパス流通口151の幅(径)D5よりも大きい。第2バイパス流通口152の形成により突出部90の一部が切り欠かれていても、突出部90の周方向の半分以上の範囲において突出部90の素材部分を残すことができる。これにより、突出部90の機械的強度が脆弱になることを防止することができる。例えば、第2バイパス流通口152の高さ位置を起点に突出部90が折れ曲がることを防止することができる。第2バイパス流通口152の幅(径)は、例えば、6mm~11mmであってもよい。
【0079】
第2バイパス流通口152の開口面積S2は、第1バイパス流通口151の開口面積S1よりも大きい。また、第1バイパス流通口151及び第2バイパス流通口152のトータルの開口面積(S1+S2)は、第2流路管84の流路面積S3よりも大きいことが好ましい。
【0080】
この実施形態によれば、複数のバイパス流通口151,152が第1流路管83の突出部90に分散して形成されているので、バイパス流通口151,152それぞれの幅(径)D5,D6を、突出部90の内径D4よりも小さくすることができる。これにより、開口面積S1+S2>流路面積S3を成立させながら、械的強度が脆弱になる部分が局所的に突出部90に形成されることを防止することができる。
【0081】
第2バイパス流通口152は、突出部90の径方向において対向する一対の第2バイパス流通口152を含む。一対の第2バイパス流通口152は、第1流路管83の内部空間を介して対向している。一対の第2バイパス流通口152は、第2流路管84の延出方向(本体部82から第2流路管84の先端に向かう方向であって、第1方向Xとする)に対して交差する方向(この実施形態では、第1方向Xに直交する第2方向Y)において対向している。これにより、一対の第2バイパス流通口152は、本体部82の側壁88に向かって開口している。
【0082】
第2バイパス流通口152は、第1バイパス流通口151と突出部90の接続部14との間の位置に形成されている。例えば、第2バイパス流通口152の下端は、第2流路管84の上端91よりも上方に位置していてもよい。底壁89を基準にした第2バイパス流通口152の高さ(底面96から第2バイパス流通口152の下端までの距離)は、例えば、10mm~30mmであってもよい。
【0083】
第1流路管83の本体部82側とは反対側の端部には、循環ライン15が接続される接続部24が形成されている。接続部24の周面には、環状段部26が周方向全体にわたって形成されている。環状段部26は、第1流路管83から循環ライン15が外れることを防止するストッパとして機能する。接続部24の端部開口は、前述の培養液入口11を形成している。第1流路管83には、隣り合う培養リアクタ2のエアリフトポンプ9の第2流路管84に接続された循環ライン15が接続される。
【0084】
第2流路管84は、本体部82の側壁88に接続されている。第2流路管84は、本体部82の側壁88から横方向に直線状に延びている。第2流路管84は、本体部82の側壁88の下部に接続されており、第2流路管84の径方向下端92が本体部82の底面96と平坦な面で連続している。例えば、
図17では、第2流路管84の下端92と本体部82の底面96との間が完全な平坦面で連続している。しかしながら、第2流路管84を本体部82に対して溶接等で接合する場合には、第2流路管84と本体部82との接合部に溶接ビードのような加工痕が、小さな段差として残る場合がある。このような場合は、加工痕のような小さな段差が存在しているが、第2流路管84の下端92と本体部82の底面96との間が平坦と定義してもよい。本体部82の底壁89に対して第2流路管84を意図的に上側にずらして接合したことによって生じた段差とは異なるからである。
【0085】
第2流路管84の本体部82側とは反対側の端部には、循環ライン15が接続される接続部93が形成されている。接続部93の周面には、環状段部94が周方向全体にわたって形成されている。環状段部94は、第2流路管84から循環ライン15が外れることを防止するストッパとして機能する。接続部93の端部開口は、前述の培養液出口12を形成している。第2流路管84には、循環ライン15が接続され、当該循環ライン15は、隣り合う培養リアクタ2のエアリフトポンプ9の第1流路管83に接続される。
【0086】
第1気体供給管85は、第1流路管83の側壁95に接続されている。第1気体供給管85は、第1流路管83の側壁95から、培養液Cの流れ方向に対して交差する方向に直線状に延びている。第1気体供給管85は、第1流路管83に連通している。第1気体供給管85の第1流路管83側とは反対側の端部開口は、前述の第1気体供給口13を形成している。
【0087】
(3)培養リアクタ2の組み立て方法及び設置方法
図18は、培養槽8(培養バッグ)とエアリフトポンプ9との接続方法を説明する図である。
図19は、培養リアクタ2の設置方法を説明する図である。
【0088】
図18を参照して、培養槽8(培養バッグ)とエアリフトポンプ9とを接続するには、例えば、まずエアリフトポンプ9に培養液供給管10を装着する。ここで、培養液供給管10の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の汎用プラスチックを使用できる。この実施形態では、ポリエチレン製の管で構成されている。培養液供給管10は、硬質の管であってもよいし、可撓性を有する管であってもよい。例えば、培養液供給管10は、硬質の管として金属製(例えば、ステンレス製)の管であってもよい。培養液供給管10を、エアリフトポンプ9の第1流路管83の突出部90に挿すことによって装着することができる。また、培養液供給管10の長さL
2は、30cm~300cmであることが好ましい。培養液供給管10の内径D
3は、5mm~30mmであることが好ましい。培養液供給管10の長さL
2が長いほど、かつ内径D
3が大きいほど、複数の培養リアクタ2を連結しても全体の流速が上昇する。したがって、長さL
2及び内径D
3を上記の範囲にすることによって、複数の培養リアクタ2間に培養液Cを効率よく循環させることができる。
【0089】
次に、培養槽8にエアリフトポンプ9を装着する。例えば、エアリフトポンプ9の本体部82の上端が下部接続ポート46のフランジ部78に当接するまで、培養液供給管10を下部接続ポート46の貫通孔79(
図7、
図10、
図11参照)を介して培養槽8内に挿入する。これにより、下部接続ポート46がエアリフトポンプ9の本体部82内に収容される(他に
図23参照)。
【0090】
次に、
図19を参照して、培養リアクタ2の設置方法を説明する。培養リアクタ2は、例えば、地面に固定された架台101(支持部材)に設置される。
【0091】
架台101は、例えば、複数本の金属製のフレームを縦横に組むことによって構成されており、隣り合う一対の縦フレーム102の間の空間部106に、複数の培養リアクタ2を横方向に並んで配置することができる。架台101は、培養リアクタ2を固定する固定具107を備えている。この実施形態では、架台101は、隣り合う一対の縦フレーム102間に架設された第1横フレーム103、第2横フレーム104及び第3横フレーム105を有しており、第1横フレーム103、第2横フレーム104及び第3横フレーム105のそれぞれに固定具107が取り付けられている。第1横フレーム103、第2横フレーム104及び第3横フレーム105は、上下方向において上から下に順に配置されている。第1横フレーム103、第2横フレーム104及び第3横フレーム105は、それぞれの高さ位置に基づいて、上部横フレーム、中部横フレーム及び下部横フレームと称してもよい。
【0092】
固定具107は、例えば、各横フレーム103~105から前方に突出するように形成され、培養リアクタ2を引っ掛け可能な引掛部であってもよいし、培養リアクタ2を周方向に挟み込む環状のバンド部であってもよい。この実施形態の固定具107は、引掛部の一例としての一対のボルト108と、バンド部の一例としての一対の半円状のバンドプレート109,110との組み合わせによって構成されている。一対のボルト108は、各横フレーム103~105に対して、互いに離れた位置から前方に突出するように固定されている。一対のバンドプレート109,110は、上バンドプレート109及び下バンドプレート110を含み、これらの間に円形の空間が形成されるように一対のボルト108に挿通されている。例えば、上バンドプレート109及び下バンドプレート110は、一対のボルト108に螺合するナット111で上下方向から挟み込むことによって、一対のボルト108に固定されていてもよい。
【0093】
また、オーバーフローライン29は、架台101に対して位置決めされ、架台101の上方で固定されている。オーバーフローライン29としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の汎用プラスチックからなる硬質の管であってもよいし、可撓性を有する管であってもよい。可撓性を有する管としては、例えば、シリコーンホース、ウレタンホース等が挙げられる。また、硬質の管としては、例えば、ステンレス等の金属製の管が挙げられる。
【0094】
なお、詳細な説明を省略するが、培養液供給ライン35及び培地供給ライン40についても、循環ライン15と同様の配管材料を使用することができる。
【0095】
培養リアクタ2を架台101に設置するには、まず、オーバーフローライン29を培養槽8の上部接続ポート45に接続すると共に、培養槽8の引っ掛け穴55を介して第1横フレーム103の固定具107の一対のボルト108に培養槽8を引っ掛ける。これにより、培養槽8が吊り下がった状態で位置決めされる。そして、培養槽8の上部接続ポート45を一対のバンドプレートで挟み込むことによって、培養リアクタ2の上部を架台101に固定する。次に、第2横フレーム104の固定具107の上バンドプレート109と下バンドプレート110との間の円形の空間に培養槽8を通す。つまり、第2横フレーム104に設けられた上バンドプレート109と下バンドプレート110とは、ナット111で固定されていてもよい。
【0096】
次に、
図18に示したように培養液供給管10をエアリフトポンプ9に接続した後、架台101に固定された培養槽8内に当該培養液供給管10を挿入することによって、培養槽8とエアリフトポンプ9とを接続して培養リアクタ2を組み立てる。次に、第3横フレーム105の固定具107の上バンドプレート109と下バンドプレート110でエアリフトポンプ9を挟み込むことによって、培養リアクタ2の下部を架台101に固定する。これにより、樹脂製バッグである培養槽8が単独で上下方向に直立した姿勢で架台101に支持される。なお、各固定具107と培養槽8との間には、培養槽8に傷がつくことを防止するために、例えばゴム製の緩衝材を介在させてもよい。
【0097】
この状態で、循環ライン15及び第1気体供給ライン18の配管を行う。例えば、循環ライン15及び第1気体供給ライン18としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の汎用プラスチックからなる硬質の管であってもよいし、可撓性を有する管であってもよい。可撓性を有する管としては、例えば、シリコーンホース、ウレタンホース等が挙げられる。また、硬質の管としては、例えば、ステンレス等の金属製の管が挙げられる。この実施形態では、配管設計の自由度が高いという観点から、液体用の管にはシリコーンホースが使用され、気体用の管にはウレタンホースが使用されている。配管に際しては、図示しない継手等を適宜使用してもよい。
【0098】
循環ライン15及び第1気体供給ライン18をエアリフトポンプ9に接続して配管する。上記の作業を複数の培養リアクタ2について行うことによって、複数の培養リアクタ2を並んで設置することができる。これにより、
図1の藻類培養システム1を構築することができる。
【0099】
その後、培養槽8内に培養液Cを注入する。培養液Cは、例えば培地貯留部5からの供給によって、収容室54が完全に満たされるように循環ライン15から注入される。より具体的には、
図1を参照して、培地貯留部5から培地供給ライン40及び培養液供給ライン35を介して循環ライン15に供給された培養液Cが、
図1の紙面左端の培養リアクタ2の下側から注入される。当該培養リアクタ2に注入された培養液Cは、培養液入口11から循環ライン15を通って、隣の培養リアクタ2に注入される。同様に培養液Cが循環ライン15を流れることによって、全ての培養リアクタ2に培養液Cが注入されることとなる。この注入によって、各培養リアクタ2では、扁平な培養槽8(培養バッグ)の収容室54に培養液Cが溜まって培養槽8が膨らむ。これにより、第2横フレーム104の高さ位置においても、培養槽8が上バンドプレート109と下バンドプレート110で挟まれることになる。その結果、上部接続ポート45及びエアリフトポンプ9に加えて、培養槽8の側部においても固定具107で培養槽8を支持することができる。
【0100】
[藻類培養システム1の電気的構成]
図20は、藻類培養システム1の電気的構成を示すブロック図である。
図21は、
図20の記憶部116に格納されているプログラムの一例を示す図である。
【0101】
図20を参照して、藻類培養システム1は、電気的構成として、コントローラ7(制御部)と、センサ部112と、出力部113と、通信I/F114とを含む。
【0102】
コントローラ7は、マイコン(マイクロコンピュータ)等の半導体チップで構成されていてもよい。コントローラ7は、例えば、プロセッサ115と、記憶部116と、タイマ117とを含んでいてもよい。
【0103】
プロセッサ115は、例えば、制御装置、演算装置、レジスタ、記憶部116とのインターフェース、ならびに、センサ部112、出力部113及び通信I/F114とのインターフェース等を含むCPUで構成されていてもよい。プロセッサ115は、前述の第1流量調整装置25、培地供給切替バルブ133、ポンプ41、排気バルブ34、回収用切替バルブ43、センサ部112に電気的に接続されている。プロセッサ115は、記憶部116に格納されているプログラム(PGM:Program)を実行する。プロセッサ115は、演算結果を出力部113に出力したり、通信I/F114を介して外部の機器に出力したりしてもよい。また、プロセッサ115は、センサ部112、タイマ117及び第1流量調整装置25等からの入力値に基づいて、培地供給切替バルブ133、ポンプ41、排気バルブ34、回収用切替バルブ43を制御してもよい。
【0104】
図21を参照して、記憶部116は、例えば、ROM、RAMを含んでおり、プログラム128が格納されている。プログラム128は、例えば、気体供給プログラム118、培地供給プログラム120、排気プログラム121、培養液回収プログラム122等を含んでいてもよい。
【0105】
気体供給プログラム118は、レギュレータ23を制御して、気体ユニット3から第1気体供給ライン18へ気体を流すか流さないかのオン/オフを制御するプログラムであってもよい。気体供給プログラム118のフローについては、以下で
図22~
図27を参照して詳細に説明する。
【0106】
培地供給プログラム120は、ポンプ41を駆動させることによって、培地貯留部5から培地供給ライン40を介して循環ライン15に培地39を補充するプログラムであってもよい。例えば、培地供給プログラム120は、培養液回収プログラム122の実行によって、閉鎖系を循環する培養液Cの量が減少した場合に実行されてもよい。
【0107】
排気プログラム121は、排気バルブ34を開けることによって、培養液貯留部4に溜まった気体を排出するプログラムであってもよい。例えば、排気プログラム121は、培養液貯留部4の気圧センサ31の測定値に基づき、培養液貯留部4内の気圧が所定圧力に達したときに実行されてもよい。
【0108】
培養液回収プログラム122は、回収用切替バルブ43を切り替えることによって、循環ライン15から培養液Cを回収するプログラムであってもよい。例えば、培養液回収プログラム122は、温度計123、濁度計124、pH計125、溶存二酸化炭素計126及び溶存酸素計127等からの入力値から電子的に算出される培養状態(培養の達成度)、サンプリング部38から抽出し、セルカウンタによって直接的に導かれる微細藻類の細胞の状態等に基づいて、培養が十分進行したと判断される場合に実行されてもよい。
【0109】
タイマ117は、例えば、クロックを数えるカウンタ機能を有している。タイマ117は、第1気体供給ライン18の開通時間をカウントしてもよい。
【0110】
センサ部112は、前述の液面計30、気圧センサ31、温度計123、濁度計124、pH計125、溶存二酸化炭素計126、溶存酸素計127を含んでいてもよい。温度計123、濁度計124、pH計125、溶存二酸化炭素計126及び溶存酸素計127は、前述のサンプリング部38であってもよい。
【0111】
出力部113は、コントローラ7に電気的に接続されている。出力部113は、プロセッサ115で実行された処理結果が視覚的に出力される表示部129、当該処理結果が聴覚的に出力される音声出力部130を含んでいてもよい。この実施形態では、センサ部112からの入力値等に基づいて、微細藻類の培養状態が情報として出力されてもよい。表示部129は、例えば、モニタを含んでいてもよい。音声出力部130は、例えば、スピーカを含んでいてもよい。
【0112】
通信I/F114は、藻類培養システム1と、外部の電子機器(例えば、遠隔地に設置されたパソコン、スマートフォン、タブレットコンピュータ等の端末)との間のデータ交換を仲介する。そのようなデータ交換は、有線通信、無線通信のいずれで行われてもよい。例えば、通信I/F114を介して藻類培養システム1と外部の電子機器とを接続することによって、プロセッサ115で実行された処理結果を外部の電子機器に出力することができる。これにより、関係者が遠隔地に居る場合でも、藻類培養システム1の稼働状況を知ることができる。
【0113】
なお、
図20では示していないが、藻類培養システム1は、電気的構成として、各種プログラムの実行を指示するための入力部(タッチパネル、キーボード等)を備えていてもよい。
【0114】
[培養リアクタ2における培養液Cの流れ及び培養液Cの攪拌処理のフロー]
図22は、培養液Cの循環及び攪拌フローの一例を示すフローチャートである。
図23は、培養槽8内における培養液Cの循環について説明する図である。
図24は、
図23の一部を拡大して示す図である。
図25~
図27は、培養槽8内における培養液Cの攪拌から循環への移行について経時的に説明する図である。
図23~
図27において、黒塗り矢印は液体の流れを示し、白抜き矢印は気体の流れを示している。
【0115】
この実施形態に係る藻類培養システム1では、エアリフトポンプ9内にコンタミネーションの原因となる汚染細胞等が長期にわたって堆積したり沈着したりすることを防止する培養液Cの攪拌処理を実行することができる。コンタミネーションの原因となる汚染細胞等としては、例えば、前述の培養対象の微細藻類の細胞以外のコンタミネーション生物の細胞(雑菌、雑藻等)、培養対象の微細藻類の細胞及びコンタミネーション生物の死骸、並びに、これらの細胞から排出される分泌物等が挙げられる。
【0116】
図1、
図22~
図24を参照して、藻類培養システム1において微細藻類の培養を開始するには、
図18及び
図19に従って藻類培養システム1を構築した後、培養液Cの循環が開始する(ステップS1)。例えば、各培養リアクタ2に接続された全ての第1気体供給ライン18を開通させる。これにより、気体供給源22からの気体が第1気体供給ライン18を通って、各培養リアクタ2のエアリフトポンプ9の第1気体供給口13に供給される。
【0117】
図23及び
図24を参照して、各培養リアクタ2では、第1流路管83内の第1流路97の培養液Cに第1気体供給口13から気体(循環用エア)が供給されると、当該気体の気泡Aによって培養液Cが培養液供給管10の内部を通って上方に運搬される。その後、培養液Cが培養液供給管10の上端に達すると培養液供給管10の外側に溢れ出し、培養槽8内を下方に向かって流動する。
【0118】
そして、培養液Cは、
図24に示すように、下部接続ポート46の貫通孔79と培養液供給管10との間の隙間によって形成された流通路136を介してエアリフトポンプ9の内部スペース87に流入し、第2流路管84を通って培養液出口12から排出される。ここで、流通路136は、貫通孔79の径D
1(
図10参照)が培養液供給管10の外径よりも大きいことに起因して形成されている。この実施形態では、下部接続ポート46の貫通孔79に挿入された培養液供給管10の周囲全体にわたって環状の流通路136が形成されている。また、内部スペース87の上部は、下部接続ポート46の溝81Cに嵌められたシール部材137(例えば、Oリング)が本体部82の側壁88に密着することによって封止されている。これにより、内部スペース87に流入した培養液Cがエアリフトポンプ9から漏れ出ることを防止することができる。
【0119】
そして、エアリフトポンプ9から排出された培養液Cは、循環ライン15を通って、次の培養リアクタ2の培養液入口11に供給される。つまり、培養槽8内を循環する培養液Cは、互いに連続するエアリフトポンプ9の内部スペース87及び第2流路管84の内部によって形成された環状の第2流路98を通って、培養液出口12から排出される。これにより、複数の培養リアクタ2に培養液Cが連続的に循環することとなる(
図1の破線16参照)。各培養槽8内では、透明な培養槽8を通して光を受けた微細藻類が、気泡A中の二酸化炭素及び培養液C中の栄養塩を基質として光合成を行うと共に増殖して培養が進行する。
【0120】
一方、この実施形態では、培養液Cが収容室54の上端99まで充填されることによって、培養槽8が液相で満たされている。そのため、
図23に示すように、エアリフト方式によって上方に向かって運搬された培養液Cが培養液供給管10の上端から培養槽8内に供給されると、培養槽8内の培養液Cの容量が増え、培養槽8の収容量を超えることとなる。培養槽8の上端(上部接続ポート45)にオーバーフローライン29が接続されているので、収容量を超えた培養液Cは、気泡Aによってオーバーフローライン29に誘導され、オーバーフローライン29を介して培養槽8の外側に排出される。
【0121】
これにより、培養槽8の上部からオーバーフローライン29へ向かう培養液Cの流れを発生させることができる。その結果、培養槽8の上部において、培養液Cの流れが弱い箇所を減らすことができるので、培養槽8内に汚染細胞が長期にわたって溜まったり固着したりすることを防止することができる。汚染細胞の滞留・固着の防止によって、培養過程の微細藻類がコンタミネーションの影響を受けることを抑制することができる。逆に言えば、培養槽8内において培養液Cの液面と収容室54の上端99との間に空間が設けられ、培養槽8の内部が培養液Cからなる液相と空気からなる気相とに分離されていると、汚染細胞が滞留し易い。液相と気相との境界の縁部では培養液Cの流れが弱く、汚染細胞が、当該縁部近傍に溜まったり、当該縁部近傍の培養槽8の内壁面に固着したりし易いためである。
【0122】
また、収容室54の上端99まで気泡Aが上昇するので、培養液供給管10の上端からの気泡Aの移動距離を増加させることができる。その結果、培養液Cに対する二酸化炭素の溶解度を向上できるので、微細藻類の培養効率を向上させることができる。さらに、培養液Cが収容室54の上端99まで充填されて培養槽8が液相で満たされているので、収容室54の上部に気相が残っている場合に比べて、収容室54内の水圧(バッグ内圧)を高くすることができる。バッグ内圧が高まることによって培養液Cに対する二酸化炭素の溶解度を向上することもできるので、微細藻類の培養効率を一層向上させることができる。
【0123】
そして、第1気体供給ライン18から第1流路97に気体が供給される第1状態は、第1状態の開始後、一定時間(例えば、10分程度)が経過するまでは保持される(ステップS2、ステップS3のNO)。その後、一定時間が経過すると(ステップS3のYES)、第1気体供給ライン18からの気体の供給が停止される(ステップS4)。気体の停止時間は、例えば、各培養槽8内の気泡Aが消失するまでの時間であってもよく、例えば、5秒~20分程度であってもよい。
【0124】
その後、再び、各培養リアクタ2に接続された全ての第1気体供給ライン18を開通させる(ステップS5)。第1気体供給ライン18の再開通により、第1流路管83内の第1流路97の培養液Cに第1気体供給口13から気体(循環用エア)が供給される。これにより、当該気体の気泡Aによって培養液Cが培養液供給管10の内部を通って上方に運搬される。一方で、
図25を参照して、循環用エアにより第1流路97の圧力が高くなるので、気泡Aの一部が気泡Bとして、第1バイパス流通口151を介して内部スペース87に吹き出す。
【0125】
この実施形態では、第1バイパス流通口151が第2バイパス流通口152よりも小さく形成されているので、第1バイパス流通口151から選択的に気泡Bを噴射することができる。一方で、第2バイパス流通口152の幅(径)を適切に設計しておくことにより、残りの気泡Aを第2バイパス流通口152から極力出さず、培養槽8に向かって上昇させることができる。
【0126】
気泡Bは、例えば、エアリフトポンプ9の内部スペース87に噴射されて内部スペース87内の培養液Cを攪拌すると共に、流通路136を介して収容室54に達し、収容室54の下部の培養液Cも攪拌する。また、内部スペース87から第2流路管84を介して循環ライン15にも拡散する。この際、内部スペース87の上部がシール部材137でシールされているので、攪拌された培養液Cがエアリフトポンプ9から漏れ出ることを防止することができる。
【0127】
これにより、例えば、エアリフトポンプ9の内部スペース87に汚染細胞が堆積したり沈着したりしていても、第1バイパス流通口151から吹き出す気体によって、培養液Cと共に堆積物を攪拌することができる。その結果、エアリフトポンプ9内に汚染細胞が長期にわたって堆積したり沈着したりすることを防止することができる。汚染細胞の堆積・沈着の防止によって、培養過程の微細藻類がコンタミネーションの影響を受けることを抑制することができる。
【0128】
培養液Cの攪拌によって汚染細胞の堆積・沈着を防止できるので、エアリフトポンプ9の形状設計に際して、汚染細胞が堆積し難い形状に制約されない。そのため、エアリフトポンプ9の形状設計の自由度を高めることができる。例えば、前述のバンドプレートのような固定具107との適合性を考慮すると、エアリフトポンプ9の本体部82の形状は、筒状にすることが好ましい。一方、汚染細胞の堆積を防止する観点では、エアリフトポンプ9の本体部82の形状は、傾斜した側壁を有する錐状等にすることが好ましく、固定具107との適合性か汚染細胞の堆積防止のどちらを優先するかによって、エアリフトポンプ9の形状設計が制約を受ける。しかしながら、この実施形態では、エアリフトポンプ9の本体部82が筒状であっても、第1バイパス流通口151からの気体の噴射によって堆積物を攪拌して分散させることができるので、固定具107との適合性と、汚染細胞の堆積防止とを両立することができる。
【0129】
さらに、培養液供給管10の周囲に第2流路98を形成する比較的大きな内部スペース87が確保されるので、培養液Cの排出用に十分な大きさの流路を確保することができる。これにより、汚染細胞の堆積・沈着によって第2流路98が詰まることを防止することができる。
【0130】
また、この実施形態では、一対の第1バイパス流通口151は、第2流路管84から離れた位置、つまり本体部82の側壁88に向かって開口している。そのため、第1バイパス流通口151から吹き出した気体は、本体部82の側壁88に衝突し、ドーナツ状の内部スペース87に回り込むように分散するので、培養液Cを効率よく攪拌することができる。
【0131】
さらに、培養槽8の収容室54が全て液相であるため、エアリフトポンプ9の内部スペース87とオーバーフローライン29とが連続した液相で繋がっている。そのため、
図25に示すように、エアリフトポンプ9に噴射された気泡Bによって、収容室54内の培養液Cを攪拌できると共に、オーバーフローライン29内の培養液C、さらにはオーバーフローライン29を介して培養液貯留部4内の培養液Cも攪拌することができる。つまり、閉鎖系の藻類培養システム1の全体が連続した液相で繋がっているため、エアリフトポンプ9に噴射された気泡Bによって流路全体の培養液Cを攪拌することができる。その結果、藻類培養システム1の流路全体において汚染細胞の堆積・沈着を防止することができる。
【0132】
第1流路97の内圧と内部スペース87との内圧が平衡状態に近づくと、
図26に示すように気泡Bの量が減少する一方、培養槽8へ向かって上昇する気泡Aの量が増加する。この際、相対的に大きな第2バイパス流通口152が第1バイパス流通口151よりも上方に形成されているため、気泡Bとして内部スペース87に噴射された一部を、流通路136から第2バイパス流通口152を介して第1流路管83の内部に取り込み、再び気泡Aとして上昇させることができる。気泡Aの増加により、第1流路管83の内部には、上へ向かう培養液Cの流れが発生する。
【0133】
その後は、
図27に示すように、気泡Aの大半が安定的に上昇し、複数の培養リアクタ2に培養液Cが連続的に循環することとなる。
【0134】
以降は、ステップS2~S5の処理が繰り返されることによって、藻類培養システム1における循環培養が進行する。
【0135】
以上、この藻類培養システム1は、第2気体供給管86からの気体供給による培養液Cの攪拌以外にも、汚染細胞の滞留を防止する特徴を有している。
【0136】
例えば、培養槽8に関して、バッグ本体44の下部に、一対の傾斜シール部61によってテーパ流路65が形成されているため、培養液Cを培養槽8の口部47に良好に誘導することができる。これにより、汚染細胞が、培養槽8の下部に留まったり、内壁面に固着したりしないようにすることができる。その結果、この培養槽8を使用することによって、培養過程の微細藻類がコンタミネーションの影響を受けることを抑制することができる藻類培養システム1を構築することができる。
【0137】
また、汚染細胞の滞留防止の効果とは異なるが、培養槽8が、樹脂製の培養バッグのみからなるため、培養リアクタ2にガラス製の培養槽8を使用する場合に比べて、地震や台風等の自然災害に対する培養槽8(培養バッグ)の破損の確率を低減することができる。その結果、培養リアクタ2のメンテナンスを容易に行うことができる。さらに、樹脂製の培養バッグであれば、地震等の自然災害が多い地域においても、安心して利用することができる。
【0138】
また、培養槽8の傾斜シール部61と口部シール部60との接続部分に凸部70が形成されている。これにより、バッグ本体44の口部47に捻じる力が加わったときに、凸部70の形成箇所が優先的に捻じれるようにすることができる。例えば、エアリフトポンプ9を固定具107で固定する際に下部接続ポート46に力が加わり、バッグ本体44の口部47に捻じる力が加わる場合がある。このような場合であっても、下部接続ポート46の溶着部分(接続シール部59)に加わる力を軽減することができるので、当該溶着部分での破損を抑制することができる。また、凸部70が湾曲凸部70であるため、培養槽8内の培養液Cの液圧を凸部70全体で分散することができる。
【0139】
また、凸部70によって培養槽8の破損を抑制できるので、培養槽8を構成する樹脂フィルム72を薄くすることについての許容量を大きくすることができる。したがって、培養槽8の樹脂フィルム72を薄くすることにより、樹脂フィルム72の光の透過度を向上させることができるので、培養液C中の微細藻類に対して、より多くの光を与えることができる。その結果、微細藻類の培養効率を向上させることができる。
【0140】
[第1バイパス流通口151及び第2バイパス流通口152の効果]
図28及び
図29は、培養槽8内における培養液Cの排出処理を説明する図である。
図30は、培養槽8内への培養液Cの注入処理を説明する図である。
【0141】
図28及び
図29を参照して、複数の培養リアクタ2により構成された藻類培養システム1の循環系統から培養液Cを回収(排出)する場合、循環系統において最も外側に位置する最終の培養槽8(
図28及び
図29では、最も左側の培養槽8E)の培養液出口12が開放されることにより当該培養槽8E内の培養液Cが最初に排出され、残りの培養槽8の培養液Cは、循環ライン15を介して最終の培養槽8Eまで順に流されて排出される。その後、循環ライン15を通って培養液回収部6で回収される。
【0142】
図28に示すように、この実施形態とは異なり、バイパス流通口151,152が形成されていない場合を考える。この場合、最終の培養槽8Eの下端に設けられた培養液出口12まで培養液Cを流すには、当該培養槽8Eの培養液供給管10を介して培養槽8Eの上端の近傍まで培養液Cを一旦引き上げた後、矢印132で示すように、培養液供給管10の上端139から培養液Cを溢れ出させて培養槽8の下端まで流す必要がある。残りの培養槽8内の培養液Cの液面138が最終の培養槽8Eの培養液供給管10の上端139よりも高い位置の場合には、気圧差により培養液Cが順に右から左へと流れる。
【0143】
しかしながら、各培養槽8内の培養液Cの液面138が最終の培養槽8Eの培養液供給管10の上端139の高さ位置まで下がって高低差Hがなくなると、隣り合う培養槽8内の気圧が平衡状態となり、培養液Cの流れが停止する場合がある。そのため、残りの培養槽8内の気圧を高める作業が必要となり、培養液Cの回収作業の効率の低下が懸念される。
【0144】
これに対して、
図29を参照して、この実施形態では、エアリフトポンプ9の突出部にバイパス流通口151,152が形成されている。これにより、培養槽8及び培養液供給管10を介さずに、バイパス流通口151,152を介して流通する第1流路管83と第2流路管84との間の循環ライン15を利用して、互いに連結された複数の培養槽8の培養液Cを最終の培養槽8Eまで流すことができる。つまり、複数の培養槽8の下端近傍に配置されたエアリフトポンプ9間の流通により培養液Cを順に流すことができるため、培養槽8間の気圧差の制約を受けず、培養液Cの回収効率を向上させることができる。端的には、培養槽8からの培養液Cの回収作業を、
図29に二点鎖線で示されたシステム下部140の領域のみで完結させることができる。これにより、全ての培養槽8の培養液Cの液面141を並行して下げていくことができる。
【0145】
また、この実施形態によれば、第1バイパス流通口151がエアリフトポンプ9の本体部82の底壁89の高さ位置に形成されているので(
図17参照)、エアリフトポンプ9の内部スペース87の培養液Cも効率よく排出することができる。
【0146】
また、この実施形態によれば、第1バイパス流通口151及び第2バイパス流通口152のトータルの開口面積(S1+S2)が第2流路管84の流路面積S3よりも大きいので、バイパス流通口151,152から第2流路管84へ向かって適度な液圧を加えることができ、最終の培養槽8Eまで培養液Cを安定して流すことができる。
【0147】
図30を参照して、バイパス流通口151,152は、回収後に新たな培養液Cを藻類培養システム1の循環系統に注入する際に、高濃度の培養液Cを循環系統に拡散させることにも貢献する。例えば、互いに連結された複数の培養槽8に一定量の液体培地142を事前に貯め(例えば、培養槽8の容量の80%程度まで)、その後、最終の培養槽8のエアリフトポンプ9から高濃度の培養液Cを注入する。
【0148】
注入された高濃度の培養液Cは、各培養槽8に予め貯められた液体培地142の液圧143(
図30の黒色矢印)により、流通路136を介して培養槽8へ向かう流れ144が抑えられる。これにより、バイパス流通口151,152、第1流路管83及び循環ライン15を介して次の培養槽8の第2流路管84へと誘導される。これにより、全ての培養槽8のエアリフトポンプ9に、高濃度の培養液Cを速やかに行き渡らせることができる。その結果、例えば、最終の培養槽8Eのみに集中して高濃度の培養液Cを注入して、その後に循環する場合に比べて、藻類培養システム1の循環系統の循環開始から短時間で、循環系統の液体培地142と高濃度の培養液Cとを混合することができる。
【0149】
[攪拌用エア開口(バイパス流通口151,152)の最適化検証]
次に、
図31~
図37を参照して、バイパス流通口151,152の形状、位置及び大きさを変えることによって、培養液Cの循環及び攪拌の挙動を検証した。その結果から、バイパス流通口151,152の形状、位置及び大きさの最適値を検討した。
【0150】
なお、以下のサンプル1~18の循環及び攪拌の検証は、目視による官能的判断による結果である。したがって、サンプル1~18の優劣を示す絶対的な評価ではなく、あくまでも、サンプル1~18の範囲内における相対的な評価である。また、サンプル1~18はいずれも、バイパス流通口151,152の少なくとも一方を含む。そのため、気体の供給ラインの選択及び気体の供給量(L/min)等の気体供給条件を適切に調整すれば、前述の培養液Cの排出・注入の作業効率の向上効果を発現できることを付記しておく。
【0151】
図31は、サンプル1~6に係るエアリフトポンプ9の断面図である。表1は、サンプル1~6のエアリフトポンプ9の仕様及び気体供給条件を示している。
【0152】
図31を参照して、サンプル1~6に係るエアリフトポンプ9では、エアリフトポンプ9に気体を供給するラインとして、前述の循環用エアを供給する第1気体供給管85に加え、第2気体供給管86が設けられている。第2気体供給管86は、内部スペース87の培養液Cに直接的に攪拌用エアを噴射可能であり、攪拌ラインと称されてもよい。
【0153】
第2気体供給管86は、本体部82の側壁88に接続され、側壁88から横方向に直線状に延びている。第2気体供給管86は、第2流路管84の反対側に接続され、第2流路管84の延出方向とは反対方向に延びている。第2気体供給管86は、本体部82の側壁88の下部に接続されている。第2気体供給管86の本体部82側とは反対側の端部開口は、前述の第2気体供給口100を形成している。
【0154】
サンプル1~6では、エアリフトポンプ9の仕様として、長方形状の一対の第1バイパス流通口151のみが形成されている。第1バイパス流通口151の開口幅W
1、開口高さH
1及び開口位置(方向)を変えることによって、サンプル1~6の第1バイパス流通口151から攪拌エア(
図25及び
図26の気泡B)がどのような挙動を示すか検証した。検証結果を表1に示す。
【0155】
表1の「開口高さ」は、本体部82の底壁89から第1パイバス流通口151の上端までの高さH
1を示している。表1の「方向=タテ」は、一対の第1バイパス流通口151が第2流路管84の延出方向(
図16及び
図17の第1方向X)に対する直角方向(
図16及び
図17の第2方向Y)に対向していることを示し、「方向=ヨコ」は、一対の第1バイパス流通口151が第1方向Xに対向していることを示している。
図31では、「方向=タテ」の第1バイパス流通口151を第1バイパス流通口151Aで示し、「方向=ヨコ」の第1バイパス流通口151を第1バイパス流通口151Bで示している。
【0156】
【表1】
表1の結果から、0.5L/min及び1L/minの供給量では、気体が第1バイパス流通口151A,151Bに一旦入り始めると培養液Cが吸い込まれる挙動が示された。一方で、1L/minの供給量で気体を供給すると、供給元が第1気体供給管85及び第2気体供給管86のどちらであっても、第1バイパス流通口151A,151Bから攪拌エアが出ることが確認できた。
【0157】
図32は、サンプル7~12に係るエアリフトポンプ9の断面図である。表2は、サンプル7~12のエアリフトポンプ9の仕様及び気体供給条件を示している。
【0158】
図32を参照して、サンプル7~12に係るエアリフトポンプ9は、サンプル1~6のエアリフトポンプ9と同様に、第2気体供給管86を備えている。サンプル7~12では、エアリフトポンプ9の仕様として、円形状の一対の第1バイパス流通口151のみが形成されている。互いに開口高さが異なる第1バイパス流通口151を区別して、低い順から第1バイパス流通口151C,第1バイパス流通口151D及び第1バイパス流通口151Eとして示す。第1バイパス流通口151C,151D,151Eの開口幅W
2,W
3,W
4及び開口高さH
2,H
3を変えることによって、サンプル7~12の第1バイパス流通口151C,151D,151Eから攪拌エア(
図25及び
図26の気泡B)がどのような挙動を示すか検証した。検証結果を表2に示す。
【0159】
表2の「開口高さ」は、本体部82の底壁89から第1パイバス流通口151D,151Eの中心までの高さH2,H3を示している。高さH2=25mmであり、高さH3=50mmである。「開口高さ=0mm」は、第1バイパス流通口151Cの下端と底壁89の高さが一致していることを示している。
【0160】
【表2】
表2の結果から、第1気体供給管85(循環ライン)から気体を供給した場合、流路の内圧が高まれば攪拌エアが出ることが確認できた。さらに、当該攪拌エアの量は、第1バイパス流通口151C,151D,151Eの開口幅(径)が小さいほど多いことが確認できた。
【0161】
また、前述の培養液Cの排出・注入の作業効率の向上効果を見込むのであれば、第1バイパス流通口151の高さは0mmが好ましい。一方で、第1バイパス流通口151の高さ=0mmでは、第2気体供給管86(攪拌ライン)から供給した気体が一方の第1バイパス流通口151に流入し、他方の第1バイパス流通口151から気泡として出ることはほとんどなかった。
【0162】
図33は、サンプル13に係るエアリフトポンプ9の断面図である。
図34は、サンプル14に係るエアリフトポンプ9の断面図である。表3は、サンプル13及び14のエアリフトポンプ9の仕様及び気体供給条件を示している。
【0163】
図33及び
図34を参照して、サンプル13及び14に係るエアリフトポンプ9は、サンプル1~6のエアリフトポンプ9と同様に、第2気体供給管86を備えている。
【0164】
図33のサンプル13では、エアリフトポンプ9の仕様として、長方形状の一対の第1バイパス流通口151(第1バイパス流通口151F)のみが形成されている。第1バイパス流通口151Fの開口幅W
5=2mmである。第1バイパス流通口151Fの高さH
4は、サンプル1~6の高さH
1よりも大きい。これにより、第1バイパス流通口151Fの上端は、下部接続ポート46を超え、培養液供給管10にまで達している。
【0165】
図34のサンプル14では、エアリフトポンプ9の仕様として、円形状の一対の第1バイパス流通口151(第1バイパス流通口151G)と、長方形状の一対の第2バイパス流通口152(第2バイパス流通口152A)が形成されている。
図33の第1バイパス流通口151Fを上方にずらして第2バイパス流通口152Aとし、新たに高さ=0mmの位置に第1バイパス流通口151Gが形成されている。第1バイパス流通口151Gの開口幅W
6=2mmである。第2バイパス流通口152Aの開口幅W
7=4mmである。底壁89から第2バイパス流通口152Aの下端までの高さH
6=20mmであり、第2バイパス流通口152Aの下端から上端までの高さH
7=60mmである。したがって、底壁89から第2バイパス流通口152Aの上端までの高さH
5=80mmである。
【0166】
そして、サンプル13及び14の第1バイパス流通口151F,151G及び第2バイパス流通口152Aから攪拌エア(
図25及び
図26の気泡B)がどのような挙動を示すか検証した。検証結果を表3に示す。
【0167】
【表3】
表3の結果から、培養液Cの排出・注入の作業効率の向上効果と、バイパス流通口151,152からの攪拌エアの噴射とを両立させるのであれば、第1バイパス流通口151Fのみのサンプル13よりも、第1バイパス流通口151G及び第2バイパス流通口152Aの両方を備えるサンプル14の方が好ましいと考えられる。
【0168】
図35は、サンプル15及び16に係るエアリフトポンプ9の断面図である。表4は、サンプル15及び16のエアリフトポンプ9の仕様及び気体供給条件を示している。
【0169】
図35を参照して、サンプル15及び16に係るエアリフトポンプ9は、サンプル1~6のエアリフトポンプ9と同様に、第2気体供給管86を備えている。サンプル15及び16では、エアリフトポンプ9の仕様として、円形状の一対の第1バイパス流通口151(第1バイパス流通口151H)及び一対の第2バイパス流通口152(第2バイパス流通口152B)が形成されている。第1バイパス流通口151Hの開口幅W
8=3mmであり、第2バイパス流通口152Bの開口幅W
9=8mmである。第1バイパス流通口151Hの開口高さ=0mmである。第2バイパス流通口152Bの開口高さH
8を変えることによって、サンプル15及び16の第1バイパス流通口151H及び第2バイパス流通口152Bから攪拌エア(
図25及び
図26の気泡B)がどのような挙動を示すか検証した。検証結果を表4に示す。
【0170】
【表4】
表4の結果から、サンプル15において、循環ライン側に2L/minで開始し、次第に0.5L/minに変化させることによって、攪拌から循環へスムーズに移行できることが分かった。サンプル16において、攪拌ライン側に2L/minで開始し、次第に0.5L/minに変化させることによって、攪拌から循環へスムーズに移行できることが分かった。
【0171】
図36は、サンプル17に係るエアリフトポンプ9の断面図である。
図37は、サンプル18に係るエアリフトポンプ9の断面図である。表5は、サンプル17及び18のエアリフトポンプ9の仕様及び気体供給条件を示している。
【0172】
図36を参照して、サンプル17に係るエアリフトポンプ9は、サンプル1~6のエアリフトポンプ9とは異なり、第2気体供給管86が備えられていない。サンプル17では、エアリフトポンプ9の仕様として、円形状の一対の第1バイパス流通口151(第1バイパス流通口151I)及び一対の第2バイパス流通口152(第2バイパス流通口152C)が形成されている。第1バイパス流通口151Iの開口幅W
10=3mmであり、第2バイパス流通口152Cの開口幅W
11=8mmである。第1バイパス流通口151Iの開口高さ=0mmである。第2バイパス流通口152Cの開口高さH
9=20mmである。
【0173】
図37を参照して、サンプル18に係るエアリフトポンプ9は、第2気体供給管86を備えていること、及び第2バイパス流通口152Cの開口高さH
9=40mmであることを除いて、サンプル17に係るエアリフトポンプ9と同じである。
【0174】
サンプル17及び18それぞれにおいて、エアリフトポンプ9を4つ連結させ、第1バイパス流通口151I及び第2バイパス流通口152Cから攪拌エア(
図25及び
図26の気泡B)がどのような挙動を示すか検証した。検証結果を表5に示す。サンプル17は、循環ラインから気体を供給した場合の結果であり、サンプル18は、攪拌ラインから気体を供給した場合の結果である。
【0175】
【表5】
表5の結果から、サンプル18では、連結した4つの検体(培養リアクタ)のうち、循環を始めない検体が確認された。一方、サンプル17では、1L/min以上の量で気体のオン/オフ制御を繰り返すことによって、4つ連結しても安定した動作が確認できた。
【0176】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は他の形態で実施することもできる。
【0177】
例えば、前述の実施形態では、培養槽8が樹脂製の培養バッグのみからなる場合のみ例示したが、第2気体供給管86から気体を供給することによるコンタミネーションの抑制、及びオーバーフローライン29に培養液Cを循環させることによるコンタミネーションの抑制については、培養槽8がガラス製であっても達成することができる。
【0178】
以上、本開示の実施形態は、すべての点において例示であり限定的に解釈されるべきで
はなく、すべての点において変更が含まれることが意図される。
【0179】
この明細書及び図面の記載から以下に付記する特徴が抽出され得る。
【0180】
[付記1-1]
微細藻類を含有する培養液が収容される培養槽と、
前記培養槽の下端近傍に配置されたエアリフトポンプであって、
前記培養槽に連通する内部スペースを有する本体部と、
前記本体部に接続され、前記本体部の底壁から前記内部スペースに突出する突出部を含み、前記培養層に培養液を供給する培養液入口を形成する第1流路管と、
前記第1流路管に形成され、前記第1流路管内の培養液に気体を供給する第1気体供給口と、
前記本体部に接続され、前記内部スペースから培養液を排出する培養液出口を形成する第2流路管と、
を含む、エアリフトポンプと、
前記突出部に接続され、前記培養槽の内部に配置されるように前記突出部から上方に延び、前記培養槽に培養液を供給する培養液供給管とを含み、
前記突出部の側壁には、前記内部スペースと前記第1流路管との間に培養液の流通を可能にするバイパス流通口が形成されている、藻類培養リアクタ。
【0181】
この構成によれば、エアリフトポンプの突出部にバイパス流通口が形成されている。これにより、培養槽及び培養液供給管を介さずに、バイパス流通口を介して流通する第1流路管と第2流路管との間の流路を利用して、互いに連結された複数の培養槽の培養液を最終の培養槽まで流すことができる。つまり、複数の培養槽の下端近傍に配置されたエアリフトポンプ間の流通により培養液を順に流すことができるため、培養槽間の気圧差の制約を受けず、培養液の回収効率を向上させることができる。
【0182】
また、バイパス流通口は、回収後に新たな培養液をリアクタの循環系統に注入する際に、高濃度の培養液を循環系統に拡散させることに貢献する。例えば、互いに連結された複数の培養槽に一定量の液体培地を事前に貯め、その後、最終の培養槽のエアリフトポンプから高濃度の培養液を注入する。注入された高濃度の培養液は、各培養槽に予め貯められた液体培地の液圧により、バイパス流通口及び第1流路管を介して次の培養槽へと誘導される。これにより、全ての培養槽のエアリフトポンプに、高濃度の培養液を速やかに行き渡らせることができる。その結果、リアクタの循環系統の循環開始から短時間で、循環系統の液体培地と高濃度の培養液とを混合することができる。
【0183】
[付記1-2]
前記バイパス流通口の開口面積が、前記第2流路管の流路面積よりも大きい、付記1-1に記載の藻類培養リアクタ。
【0184】
この構成によれば、バイパス流通口の開口面積が第2流路管の流路面積よりも大きいので、バイパス流通口から第2流路管へ向かって適度な液圧を加えることができ、最終の培養槽まで培養液を安定して流すことができる。
【0185】
[付記1-3]
前記バイパス流通口は、上下方向において間隔を空けて形成された複数のバイパス流通口を含み、
前記複数のバイパス流通口のトータルの開口面積が、前記第2流路管の流路面積よりも大きい、付記1-1または付記1-2に記載の藻類培養リアクタ。
【0186】
この構成によれば、複数のバイパス流通口を第1流路管の突出部に分散して形成できるので、機械的強度が脆弱になる部分が局所的に突出部に形成されることを防止することができる。
【0187】
[付記1-4]
前記複数のバイパス流通口は、第1バイパス流通口と、前記第1バイパス流通口に対して上方向に間隔を空けて形成された第2バイパス流通口とを含む、付記1-3に記載の藻類培養リアクタ。
【0188】
[付記1-5]
前記第1バイパス流通口は、前記本体部の底壁の高さ位置に形成されている、付記1-4に記載の藻類培養リアクタ。
【0189】
この構成によれば、第1バイパス流通口が本体部の底壁の高さ位置に形成されているので、エアリフトポンプの内部スペースの培養液も効率よく排出することができる。
【0190】
[付記1-6]
前記第1バイパス流通口の開口面積は、前記第2バイパス流通口の開口面積よりも小さい、付記1-4または付記1-5に記載の藻類培養リアクタ。
【0191】
この構成によれば、第1気体供給口から供給された気体(気泡)を、第1バイパス流通口を介してエアリフトポンプの内部スペースに供給することができる。この気泡により内部スペースの培養液を攪拌することができる。その結果、エアリフトポンプの内部スペースにコンタミネーションの原因となる汚染細胞等が長期にわたって堆積したり沈着したりすることを防止することができる。
【0192】
[付記1-7]
前記突出部の径方向において対向する一対の前記バイパス流通口を含む、付記1-1~付記1-6に記載の藻類培養リアクタ。
【0193】
[付記1-8]
前記第2流路管は、前記本体部の側壁から水平方向に向かって延びており、
前記一対のバイパス流通口は、前記第2流路管の延出方向に対して交差する方向において対向している、付記1-7に記載の藻類培養リアクタ。
【0194】
[付記1-9]
複数の前記培養槽が並んで配置され、前記複数の前記培養槽のうちの第1培養槽の前記第2流路管と、前記複数の前記培養槽のうち前記第1培養槽に隣接する第2培養槽の前記第1流路管とが連結されている、付記1-1~付記1-8のいずれか一項に記載の藻類培養リアクタ。
【0195】
[付記1-10]
前記培養槽は、樹脂フィルムによって形成された樹脂製の培養バッグからなる、付記1-1~付記1-9のいずれか一項に記載の藻類培養リアクタ。
【符号の説明】
【0196】
1 :藻類培養システム
2 :培養リアクタ
3 :気体ユニット
4 :培養液貯留部
5 :培地貯留部
6 :培養液回収部
7 :コントローラ
8 :培養槽
8E :培養槽
9 :エアリフトポンプ
10 :培養液供給管
11 :培養液入口
12 :培養液出口
13 :第1気体供給口
14 :接続部
15 :循環ライン
16 :破線
17 :気体導入ライン
18 :第1気体供給ライン
19 :環状段部
20 :エアフィルタ
21 :ブロワ
22 :気体供給源
23 :レギュレータ
24 :接続部
25 :第1流量調整装置
26 :環状段部
27 :逆止弁
29 :オーバーフローライン
30 :液面計
31 :気圧センサ
32 :独立ライン
33 :集合ライン
34 :排気バルブ
35 :培養液供給ライン
36 :分岐管
37 :分岐管
38 :サンプリング部
39 :培地
40 :培地供給ライン
41 :ポンプ
42 :回収ライン
43 :回収用切替バルブ
44 :バッグ本体
45 :上部接続ポート
46 :下部接続ポート
47 :口部
48 :下端
49 :上端
50L :左側周縁
50R :右側周縁
51 :縦周縁部
52 :上部シール部
53 :下部シール部
54 :収容室
55 :引っ掛け穴
56 :補強部材
57 :外縁
58 :内縁
59 :接続シール部
60 :口部シール部
61 :傾斜シール部
62 :内縁
63 :口部流路
64 :内縁
65 :テーパ流路
66 :外縁
67 :第1領域
68 :第2領域
69 :破線
70 :湾曲凸部
71 :部
72 :樹脂フィルム
73 :内層
74 :中間層
75 :外層
76 :ベース部
77 :接続部
78 :フランジ部
79 :貫通孔
80 :リブ
81 :環状段部
81A :環状段部
81B :フランジ部
81C :溝
82 :本体部
83 :第1流路管
84 :第2流路管
85 :第1気体供給管
86 :第2気体供給管
87 :内部スペース
88 :側壁
89 :底壁
90 :突出部
91 :上端
92 :下端
93 :接続部
94 :環状段部
95 :側壁
96 :底面
97 :第1流路
98 :第2流路
99 :上端
100 :第2気体供給口
101 :架台
102 :縦フレーム
103 :第1横フレーム
104 :第2横フレーム
105 :第3横フレーム
106 :空間部
107 :固定具
108 :ボルト
109 :上バンドプレート
110 :下バンドプレート
111 :ナット
112 :センサ部
113 :出力部
114 :通信I/F
115 :プロセッサ
116 :記憶部
117 :タイマ
118 :気体供給プログラム
120 :培地供給プログラム
121 :排気プログラム
122 :培養液回収プログラム
123 :温度計
124 :濁度計
125 :pH計
126 :溶存二酸化炭素計
127 :溶存酸素計
128 :プログラム
129 :表示部
130 :音声出力部
131 :第1気体大本ライン
132 :矢印
133 :培地供給切替バルブ
134 :端部
135 :角部
136 :流通路
137 :シール部材
138 :液面
139 :上端
140 :システム下部
141 :液面
142 :液体培地
143 :液圧
151 :第1パイバス流通口
151A :第1バイパス流通口
151B :第1バイパス流通口
151C :第1バイパス流通口
151D :第1バイパス流通口
151E :第1パイバス流通口
151F :第1バイパス流通口
151G :第1バイパス流通口
151H :第1バイパス流通口
151I :第1バイパス流通口
152 :第2バイパス流通口
152A :第2バイパス流通口
152B :第2バイパス流通口
152C :第2バイパス流通口
A :気泡
B :気泡
C :培養液