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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168213
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】液晶装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20241128BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G02F1/1333 505
G02F1/1343
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084695
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】杉本 陽平
【テーマコード(参考)】
2H092
2H190
【Fターム(参考)】
2H092HA04
2H092JA24
2H092JA25
2H092JB56
2H092JB69
2H092JB77
2H092KB23
2H092KB25
2H092QA09
2H092RA05
2H190HA03
2H190HA04
2H190HA07
2H190HA08
2H190HB03
2H190HB04
2H190HB06
2H190HD06
2H190JB02
2H190JB04
2H190KA07
2H190LA01
2H190LA11
2H190LA12
2H190LA16
2H190LA20
2H190LA22
(57)【要約】
【課題】液晶装置の平面視で画素電極と重なる領域での光の利用効率を高め、画素電極間の領域に重なって配置されている液晶の劣化を抑える。
【解決手段】本発明の液晶装置において、基板と、基板に配置される第1画素電極と、第1画素電極と並んで基板に配置される第2画素電極と、平面視で第1画素電極と第2画素電極との間に配置され、基板の厚み方向において、第1画素電極と基板との間、且つ、第2画素電極と基板との間に設けられる配線層と、基板の厚み方向において、第1画素電極と配線層との間、且つ、第2画素電極と配線層との間に配置されるとともに、平面視で配線層と第1画素電極の周辺領域と第2画素電極の周辺領域とに重なる絶縁層と、を備える。絶縁層は、配線層から高屈折率である第1絶縁層と低屈折率な第2絶縁層とが順番で積層されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に配置される第1画素電極と、
前記第1画素電極と並んで前記基板に配置される第2画素電極と、
平面視で前記第1画素電極と前記第2画素電極との間に配置され、前記基板の厚み方向において、前記第1画素電極と前記基板との間、且つ、前記第2画素電極と前記基板との間に設けられる配線層と、
前記基板の厚み方向において、前記第1画素電極と前記配線層との間、且つ、前記第2画素電極と前記配線層との間に配置されるとともに、平面視で前記配線層と前記第1画素電極の周辺領域と前記第2画素電極の周辺領域とに重なる絶縁層と、
を備え、
前記絶縁層は、前記配線層から高屈折率である第1絶縁層と低屈折率な第2絶縁層とが順番で積層されている、
液晶装置。
【請求項2】
前記第1絶縁層の厚みは前記配線層の厚みの1/3以下であり、
前記第2絶縁層の厚みは前記配線層の厚みの1/3以下である、
請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記第1絶縁層の厚みは30nmであり、
前記第2絶縁層の厚みは30nmである、
請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記絶縁層は、平面視したときに、前記第1画素電極において、前記配線層と前記第1画素電極とが互いに重ならない領域に配置されず、前記第2画素電極において、前記配線層と前記第2画素電極とが互いに重ならない領域には配置されていない、
請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の液晶装置を備える、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等の表示装置や電子機器には、入射する光を画像情報に応じて変調して画像光を射出する光変調装置として、液晶パネル等の液晶装置が用いられている。例えば、透過型の液晶装置では、透光性を有する画素電極を備える第1基板と、透光性を有する対向電極を備える第2基板との間に液晶層が設けられている。第2基板から入射する光は、液晶層で変調され、第1基板から射出される。その際に、入射光が画素電極の界面等で反射すると、第1基板から射出される光量が減少し、表示画像の明るさが低下する。
【0003】
例えば、特許文献1には、透過型の液晶装置において、画素電極での光の反射を抑制するとともに、画素電極を形成することによる段差の形成を抑制するために、厚み方向での画素電極と層間絶縁層との間に、第1透光層と、第2透光層と、が設けられている。第1透光層の屈折率は、第2透光層よりも高い。第2透光層の屈折率は、画素電極よりも低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-163280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の透過型の液晶装置では、複数の画素の各々の液晶層で変調される入射光は、第1基板を透過して第1基板の射出面、すなわち、第1基板の液晶層に向く面とは反対側の面から射出される。しかしながら、画素電極間に設けられた配線等によって反射される反射光は、入射面、すなわち第2基板の液晶層に向く面とは反対側の面に向かって戻る。
光が入射する方向に沿って平面視したときに、画素電極間の配線等と重なる領域に配置されている液晶には、入射光と反射光の双方が照射される。そのため、画素電極間の配線等と重なる領域に配置されている液晶は、画素電極と重なる領域に配置されている液晶に比べて早く劣化する場合があった。上述の特許文献1に開示されている液晶装置では、第1透光層及び第2透光層が平面視で全体に設けられているため、画素電極間の領域に入射する光の反射を抑制することができるが、画素電極と重なる領域での光の利用効率を高めるのに限度があった。すなわち、透過型の液晶装置において、平面視で画素電極と重なる領域での光の利用効率を高め、画素電極間の領域に重なって配置されている液晶の劣化を抑える対策が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様の液晶装置は、基板と、基板に配置される第1画素電極と、第1画素電極と並んで基板に配置される第2画素電極と、平面視で第1画素電極と第2画素電極との間に配置され、基板の厚み方向において、第1画素電極と基板との間、且つ、第2画素電極と基板との間に設けられる配線層と、基板の厚み方向において、第1画素電極と配線層との間、且つ、第2画素電極と配線層との間に配置されるとともに、平面視で配線層と第1画素電極の周辺領域と第2画素電極の周辺領域とに重なる絶縁層と、を備える。絶縁層は、配線層から高屈折率である第1絶縁層と低屈折率な第2絶縁層とが順番で積層されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の液晶装置の平面図である。
図2図1の液晶装置の断面図である。
図3図1の液晶装置の等価回路図である。
図4A図1の液晶装置の第1基板の平面図である。
図4B図4Aの第1基板の断面図である。
図4C図4Aの第1基板の断面図である。
図4D図4Aの第1基板の断面図である。
図5図1の液晶装置の表示領域の上部構造の断面図である。
図6A図1の液晶装置の第1基板の製造工程を説明するための平面図である。
図6B図1の液晶装置の第1基板の製造工程を説明するための断面図である。
図7A図1の液晶装置の第1基板の製造工程を説明するための平面図である。
図7B図1の液晶装置の第1基板の製造工程を説明するための断面図である。
図8A図1の液晶装置の第1基板の製造工程を説明するための平面図である。
図8B図1の液晶装置の第1基板の製造工程を説明するための断面図である。
図9図1の液晶装置の表示領域の上部構造の断面図である。
図10】本発明の一実施形態の電子機器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面では、各々の構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺が異なる場合がある。
【0009】
図面には、必要に応じて、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸が図示されている。また、X軸に沿う一方向を+X方向と記載し、+X方向とは反対の方向を-X方向と表記する。同様に、Y軸に沿う一方向を+Y方向と表記し、+Y方向とは反対の方向を-Y方向と記載する。Z軸に沿う一方向を+Z方向と表記し、+Z方向とは反対の方向を-Z方向と記載する。また、X軸とY軸とを含む面を「XY面」と記載し、XY面をZ軸に沿って見ることを「平面視」と記載する場合がある。
【0010】
以下の説明において、例えば、基板に対して、「基板上に」という記載は、基板の上面に接して配置される場合、基板の上面に基板以外の構造物等の構成要素を介して配置される場合、基板の上面に一部が接して配置され、他の一部が基板以外の構成要素を介して配置される場合の何れかを表す。また、液晶装置の各々の構成要素の材料や膜厚は、好適な理由等が説明されている場合を除き、例示されている材料や膜厚に限定されない。
【0011】
本発明の一実施形態では、液晶装置として、画素毎にスイッチング素子としての薄膜トランジスター(Thin Film Transistor;TFT)を備えるアクティブ駆動型の液晶装置を例に挙げて説明する。以下では、薄膜トランジスターをTFTと省略して記載する場合がある。液晶装置は、例えば、後述する電子機器としてのプロジェクターにおいて、光変調装置として好適に用いられる。
【0012】
(液晶装置の物理的な構造の概要)
図1は、本実施形態の液晶装置100の平面図である。図2は、液晶装置100の断面図であり、図1に示すH-H’線で矢視した場合の断面図である。図1及び図2に示すように、液晶装置100は、第1基板10と、第2基板20と、液晶層5と、を備える。第2基板20は、第1基板10と対向するように配置されている。液晶層5は、Z軸で第1基板10と第2基板20との間に挟まれており、液晶装置100の電気光学層として機能する。液晶層5には、不図示の複数の液晶が含まれている。
【0013】
第1基板10の素子基板111及び第2基板20の対向基板112には、液晶装置100に入射する色光を透過可能な材料で形成された基板が用いられ、例えば、ガラス基板、石英基板等の基板が用いられる。
【0014】
平面視したときに、第1基板10のX軸上での幅及びY軸上での幅は、第2基板20よりも大きい。第1基板10と第2基板20とは、第2基板20の外縁に沿って配置されるシール材6を介してZ軸において接合されている。第1基板10と第2基板20とシール材6によって囲まれる空間に、正又は負の誘電異方性を有する液晶が封入され、液晶層5が設けられている。
【0015】
平面視したときに、シール材6の内側には、複数の画素Pを含む表示領域Eが設けられている。複数の画素Pは、X軸及びY軸に沿ってマトリクス状に配列されている。平面視したときに、表示領域Eよりも外側の領域は、周辺領域Fである。平面視したときに、周辺領域Fのうちでシール材6と表示領域Eとの間の第1周辺領域F1には、ダミー画素DPが設けられている。第1周辺領域F1は、XY面で表示領域Eを囲んでいる。ダミー画素DPは、第1周辺領域F1において最も表示領域Eに近い領域に配置されている。ダミー画素DPが配置されている領域は、表示に寄与しない、ダミー画素領域DFである。
【0016】
平面視したときに、第1周辺領域F1に、表示領域Eを囲む仕切り材23が設けられている。例えば、第1周辺領域F1のうちでX軸に沿って延在してY軸において+Y方向側に配置されている1辺のシール材6と表示領域Eとの間の領域に、検査回路41が設けられている。第1周辺領域F1のうちでX軸に沿って延在する2辺のシール材6のそれぞれと表示領域Eとの間の領域に、走査線駆動回路45が設けられている。第1周辺領域F1のうちでシール材6と検査回路41との間の領域に、2つの走査線駆動回路45同士を繋ぐ複数の配線49が設けられている。
【0017】
周辺領域Fのうちでシール材6よりも外側の第1基板10の第2周辺領域F2には、複数の外部接続端子43が設けられている。複数の外部接続端子43は、例えばX軸に沿って延在してY軸において-Y方向側の第2周辺領域F2に、X軸に沿って互いに間隔をあけて配置されている。平面視したときに、第2周辺領域F2において、複数の外部接続端子43が配置されている領域とX軸に沿って延在するシール材6との間に、データ線駆動回路47が設けられている。
【0018】
配線49は、データ線駆動回路47及び走査線駆動回路45に繋がっており、複数の外部接続端子43に接続されている。なお、検査回路41は、上述した領域、すなわちX軸に沿って延在してY軸において+Y方向側に配置されている1辺のシール材6と表示領域Eとの間の領域とは異なる領域に配置されてもよい。
【0019】
図2に示すように、第1基板10の基材としての素子基板111において液晶層5に向く表面に、薄膜トランジスター30と、検査回路41と、配線49と、配向膜12が設けられている。薄膜トランジスター30は、画素P毎に設けられたスイッチング素子である。配向膜12は、画素電極11及び薄膜トランジスター30、配線49を被覆している。薄膜トランジスター30及び画素電極11は、画素Pの構成要素である。第1基板10は、素子基板111、画素電極11、薄膜トランジスター30、配線49、及び配向膜12を含み、これらの構成要素及び検査回路41によって構成されている。
【0020】
第2基板20の基材としての対向基板112において液晶層5に向く表面に、仕切り材23と、絶縁層25と、対向電極21と、配向膜22が設けられている。絶縁層25は、仕切り材23を被覆している。対向電極21は、絶縁層25を被覆して設けられた共通配線として配置されている。配向膜22は、対向電極21を被覆している。第2基板20は、仕切り材23、対向電極21、及び配向膜22を含み、これらの構成要素及び絶縁層25によって構成されている。なお、対向電極21は一例として第2基板20に設けられているが、第1基板10に設けられてもよい。例えば、薄膜トランジスター30と、検査回路41と、配線49とを被覆する不図示の絶縁層が設けられ、対向電極21は前述の不図示の絶縁層と配向膜12との間に設けられてもよい。
【0021】
図1に示すように平面視したときに、走査線駆動回路45及び検査回路41は、仕切り材23に重なっている。仕切り材23は、遮光部として機能する。光Lは、不図示の光源装置から射出され、-Y方向に沿って第2基板20から液晶装置100に入射する。仕切り材23は、光Lが走査線駆動回路45等の周辺回路に入射しないように遮光する。仕切り材23が設けられていることによって、周辺回路の誤動作が防止される。仕切り材23は、不要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮光する。仕切り材23が設けられていることによって、液晶装置100におけるコントラストの低下が抑制される。
【0022】
絶縁層25は、例えば、光Lに対して透光性を有する酸化シリコン(SiO)等の無機材料によって形成されている。絶縁層25において液晶層5に接する表面は、XY面に平行な平坦面である。
【0023】
導通部材7は、平面視において、シール材6の四隅に設けられ、Z軸に沿って延在している。対向電極21は、導通部材7と電気的に接続されている。導通部材7は、後述する共通配線18と電気的に接続されている。
【0024】
画素電極11及び対向電極21は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide;ITO)やIZO(Indium Zinc Oxide;IZO)等の透明導電体で形成されている。配向膜12,22の材料は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。配向膜12,22の材料としては、例えば、酸化シリコン等の無機化合物、或いは、ポリイミド等の有機化合物が挙げられる。
【0025】
液晶装置100では、ノーマリーホワイトモード或いはノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。ノーマリーホワイトモードでは、電圧が印加されない状態での画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも大きい。ノーマリーブラックモードでは、電圧が印加されない状態での画素Pの透過率が電圧印加時の透過率よりも小さい。以下では、液晶装置100において、ノーマリーブラックモードの光学設計が採用されている場合を想定して説明する。なお、液晶装置100の光学設計に応じて、液晶装置100に対して光Lの入射側の空間及び射出側の空間のそれぞれに、不図示の偏光素子が配置されている。
【0026】
(液晶装置の電気的な構造の概要)
図3は、液晶装置100の等価回路図である。図3に示すように、液晶装置100では、第1基板10の素子基板111上に、複数の走査線13、複数のデータ線16、複数の共通配線18が設けられている。複数の走査線13は、X軸と平行に延在している。複数のデータ線16及び複数の共通配線18は、Y軸と平行に延在している。複数のデータ線16は、少なくとも複数の走査線13と交差している。すなわち、走査線13が延在する方向とデータ線16が延在する方向とは、互いに異なる。なお、複数の共通配線18は必ずしもY軸に沿って延在している必要はなく、共通配線18が延在する方向は特定の方向に限定されない。
【0027】
画素Pは、X軸に沿って延在する走査線13と、Y軸に沿って延在するデータ線16によって、区画されている。画素Pには、画素電極11、薄膜トランジスター30及び容量素子60が設けられている。
【0028】
走査線13は、薄膜トランジスター30のゲートに電気的に接続されている。データ線16は、薄膜トランジスター30のソースに電気的に接続されている。走査線13は、同一行に設けられた薄膜トランジスター30のオン、オフを一斉に制御する。画素電極11は、薄膜トランジスター30のドレインに電気的に接続されている。
【0029】
データ線16は、データ線駆動回路47に電気的に接続されており、データ線駆動回路47から供給される画像信号D1,D2,・・・,Dnを画素Pに供給する。走査線13は、走査線駆動回路45に電気的に接続されており、走査線駆動回路45から供給される走査信号SC1,SC2,・・・,SCmを各画素Pに供給する。
【0030】
データ線駆動回路47からデータ線16に供給される画像信号D1から画像信号Dnは、順次供給されてもよく、互いに隣り合う複数のデータ線16同士のグループ毎にまとめて供給されてもよい。走査線駆動回路45は、走査線13に対して、走査信号SC1から走査信号SCmを、所定のタイミングでパルスとして順次供給する。
【0031】
薄膜トランジスター30に走査信号SC1が入力されると、TFT30は、一定期間だけオン状態になる。このことによって、データ線16から供給される画像信号D1は、所定のタイミングで画素電極11に書き込まれる。画素電極11を介して液晶層5に書き込まれた所定レベルの画像信号D1は、画素電極11と液晶層5とを介して対向配置されている対向電極21との間で一定期間保持される。
【0032】
画素電極11と対向電極21との間に設けられた液晶容量に対して、容量素子60が並列に、且つ電気的に接続されている。このことによって、液晶層5に保持された画像信号D1のリークが防止される。容量素子60は、画素電極11及び共通配線18に電気的に接続している。
【0033】
図3では省略されているが、データ線16には、検査回路41が接続されている。そのため、液晶装置100の製造工程において、画像信号D1,D2,・・・,Dnを検出することによって、液晶装置100の動作不具合等の確認が可能である。
【0034】
(液晶素子の電気的な構造の概要)
図4Aは、液晶装置100の画素Pの平面図である。図4Bは、画素Pの素子基板111から第7導電層127までの積層構造の断面図であり、図4Aに示すC1-C1線で矢視した場合の図である。図4Cは、画素Pの素子基板111から第7導電層127までの積層構造の他の断面図であり、図4Aに示すC2-C2線で矢視した場合の図である。図4Dは、画素Pの素子基板111から第7導電層127までの積層構造の他の断面図であり、図4Aに示すC3-C3線で矢視した場合の図である。
【0035】
図4Aから図4Dに示すように、素子基板111上に、第1導電層121、第2導電層122、第3導電層123、半導体層31、第4導電層124、第5導電層125、第6導電層126、第7導電層127、及び画素電極11が+Z方向に順次積層されている。
【0036】
第1導電層121は、容量素子60の第2容量電極62を含む。第2導電層122は、容量素子60の第1容量電極61を含む。第3導電層123は、走査線13を含む。半導体層31及び第4導電層124は、薄膜トランジスター30を構成する。薄膜トランジスター30には、トップゲート構造及びLDD(Lightly Doped Drain)構造が採用されている。半導体層31は、第1領域RAの半導体層31Aと、第2領域RBの半導体層31Bと、第3領域RCの半導体層31Cと、を有する。第4導電層124は、薄膜トランジスター30のゲート電極32を含む。半導体層31と第4導電層124のゲート電極32との間に、ゲート絶縁膜33としての絶縁膜133が設けられている。
【0037】
半導体層31Aは、Z軸においてゲート絶縁膜33を介して第4導電層124のゲート電極32と隣り合うように設けられている。すなわち、半導体層31Aは、ゲート絶縁膜33を挟んでゲート電極32の下方に配置されている。半導体層31Bは、半導体層31のうちで、Y軸において半導体層31Aに隣接し、半導体層31Aの+Y方向側及び-Y方向側に設けられている。半導体層31Bには、リン(P)等の不純物が注入されている。半導体層31Cは、半導体層31のうちの半導体層31A,31B以外の残りの部分を含み、Y軸で半導体層31Bに隣接し、半導体層31Bよりも+Y方向側及び-Y方向側に設けられている。半導体層31Cには、半導体層31Bと同様に、リン等の不純物が注入されている。但し、第3領域RCの半導体層31Cの不純物濃度は、第2領域RBの半導体層31Bの不純物濃度よりも高い。Y軸においてゲート電極32よりも+Y方向側に設けられている半導体層31B,31Cは、薄膜トランジスター30のドレイン領域及びソース領域のうちの一方の領域を構成し、本実施形態ではドレイン領域31dを構成する。Y軸においてゲートよりも-Y方向側に設けられている半導体層31B,31Cは、薄膜トランジスター30のドレイン領域及びソース領域のうちの他方の領域を構成し、本実施形態ではソース領域31sを構成する。すなわち、第3領域RCの半導体層31Cに薄膜トランジスター30のドレイン領域及びソース領域として求められる所定の濃度で不純物が添加されている。第2領域RBの半導体層31Bには、前述のように所定の濃度よりも低濃度で不純物が添加されている。半導体層31Bは、LDD31lを構成している。半導体層31Bが配置されていることによって、薄膜トランジスター30の動作時においてソース・ドレイン拡散層の不純物分布及び電界が緩和され、薄膜トランジスター30の劣化が抑えられる。
【0038】
第5導電層125は、第6中継電極50を含む。第6導電層126は、データ線16を含む。第7導電層127は、共通配線18を含む。
【0039】
第2容量電極62である第1導電層121と第1容量電極61である第2導電層122との間に、第1誘電膜63が設けられている。第2導電層122と第3導電層123との間に、第1層間絶縁層71が設けられている。第3導電層123と半導体層31との間に、第2層間絶縁層72が設けられている。第4導電層124と第5導電層125との間には、第3層間絶縁層73が設けられている。第5導電層125と第6導電層126との間には、第4層間絶縁層74が設けられている。第6導電層126と第7導電層127との間には、第5層間絶縁層75が設けられている。
【0040】
図4Bに示すように、容量素子60は、Z軸において走査線13に近い側、すなわち+Z方向側に配置されている第1容量電極61と、Z軸において第1容量電極61よりも素子基板111に近い側、すなわち-Z方向側に配置されている第2容量電極62と、を有する。
【0041】
図4C及び図4Dに示すように、容量素子60の第1容量電極61は、第6導電層126に含まれる第1中継電極81、及び第4導電層124に含まれる第2中継電極82を介して、共通配線18に電気的に接続されている。図4Cに示すように、共通配線18と第2中継電極82とは、第6導電層126に配置された第1中継電極81を介して電気的に接続されている。図4Cに示すように、第2中継電極82は、容量素子60の第1容量電極61の延出部61tに電気的に接続されている。延出部61tは、後述するように、第1容量電極61の一部である。
【0042】
第6中継電極50と容量素子60の第2容量電極62とは、画素電極11及び薄膜トランジスター30のドレイン領域31dに電気的に接続されている。図4Dに示すように、画素電極11は、第7導電層127に含まれる第3中継電極83に電気的に接続されている。図4Cに示すように、第3中継電極83は、第6導電層126に含まれる第4中継電極84に電気的に接続されている。第4中継電極84は、第6中継電極50に電気的に接続されている。図4Bに示すように、第6中継電極50は、第4導電層124に含まれる第5中継電極85に電気的に接続されている。第5中継電極85は、容量素子60の第2容量電極62に電気的に接続されている。
【0043】
走査線13,共通配線18等の信号配線、薄膜トランジスター30、及び第1中継電極81等の電極は、平面的に複数の画素Pを区画する遮光領域SDに設けられている。遮光領域SDは、X軸に沿って延在する走査線13を含む直線状の部分と、Y軸に沿って延在するデータ線16を含む直線状の部分とを含み、平面視したときに格子状に設けられている。
【0044】
図5は、液晶装置100の表示領域Eにおける第1基板10の第5層間絶縁層75から画素電極11までの積層構造と液晶層5との断面図であり、図4Aに示すC10-C110線で矢視した場合に対応する図である。図5に示すように、Z軸において、第5層間絶縁層75と画素電極11との間に、共通配線18と、絶縁層150と、第6層間絶縁層76が設けられている。
【0045】
画素電極11は、X軸及びY軸の各々において、画素Pのサイズに応じた所定の寸法を有し、隣り合う画素電極11と所定の間隔Gpをあけて配置されている。例えば、X軸において、1つの画素電極11Aに対して、間隔Gpをあけて隣り合う画素電極11を画素電極11Bとする。
【0046】
共通配線18は、前述のようにY軸に沿って延在している。共通配線18は、X軸において、少なくとも画素電極11A,11Bの間の領域RPと重なっている。領域RPは、画素電極11A,11Bの各々の周辺領域に相当する。共通配線18は、X軸において、領域RPを挟んで領域RPよりも大きく形成されている。共通配線18のX軸での幅W18は、間隔Gpよりも大きく、例えば間隔Gpの1.2倍から1.8倍までの範囲内に設定されている。
【0047】
絶縁層150の少なくとも一部は、Z軸において共通配線18と画素電極11A,11Bとの間に設けられ、平面視で共通配線18と重なっている。絶縁層150の少なくとも一部は、平面視において、画素電極11Aの周辺領域及び画素電極11Bの周辺領域である領域RPに重なっている。絶縁層150は、第1絶縁層151と、第1絶縁層151に積層されている第2絶縁層152と、を有する。
【0048】
第1絶縁層151は、共通配線18の+Z方向側の表面18aと、共通配線18の側面18sと、を略一定の所定の厚みで覆っている。第1絶縁層151は、共通配線18が延在する方向に直交する方向において、共通配線18の両側に、共通配線18に隣接して所定の寸法で延在している。第1絶縁層151のX軸での幅W151は、共通配線18のX軸での幅W18よりも大きく、例えば幅W18の1.2倍から1.5倍までの範囲内に設定されている。
【0049】
第2絶縁層152は、第1絶縁層151の+Z方向側の表面151aを略一定の所定の厚みで覆っている。第2絶縁層152は、延在する方向に直交する方向において、第1絶縁層151と同じ幅を有する。すなわち、第2絶縁層152のX軸での幅W152は、共通配線18のX軸での幅W18よりも大きく、第1絶縁層151のX軸での幅W151と同等である。
【0050】
共通配線18は、例えば、タングステン(W)等の導電性を有する金属によって形成されている。第1絶縁層151は、1.7以上の屈折率を有する絶縁材料によって形成されている。第1絶縁層151の絶縁材料として、例えば、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、窒化珪素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、酸化タンタル(Ta)等が挙げられる。第2絶縁層152の屈折率は、少なくとも第1絶縁層151の屈折率よりも低い。第2絶縁層152は、1.6未満の屈折率を有する絶縁材料によって形成されている。第2絶縁層152の絶縁材料として、例えば、酸化シリコン(SiO)、フッ素添加酸化シリコン(SiOF)等が挙げられる。
【0051】
第1絶縁層151のZ軸での厚みt151、及び第2絶縁層152のZ軸での厚みt152は、前述の第1絶縁層151の所定の波長における屈折率、及び第2絶縁層152の所定の波長における屈折率と共通配線18の所定の波長における反射率及びZ軸での厚みt18に応じて、設定されている。所定の波長は、可視波長域の波長であり、光Lの+Z方向側への反射を考慮する際に基準とする波長を意味する。所定の波長は、例えば、緑色光のピーク波長であり、550nmである。
【0052】
第1絶縁層151のZ軸での厚みt151は、共通配線18のZ軸での厚みt18の1/3以下であることが好ましい。共通配線18の厚みt18が90nmに設定されている場合には、第1絶縁層151の厚みt151は、例えば、30nmに設定されている。
第2絶縁層152のZ軸での厚みt152は、共通配線18のZ軸での厚みt18の1/3以下であることが好ましい。共通配線18の厚みt18が90nmに設定されている場合には、第2絶縁層152の厚みt152は、例えば、30nmに設定されている。厚みt151,t152が前述のように設定されていることによって、光LがZ軸において画素電極11側から、すなわち+Z方向側から絶縁層150に入射し、絶縁層150の第2絶縁層152の+Z方向側の面、第1絶縁層151の+Z方向側の面、及び共通配線18の+Z方向の面の各々で反射する反射光の位相が互いに打ち消される。
【0053】
第6層間絶縁層76は、Z軸において、絶縁層150を覆い、第5層間絶縁層75と画素電極11との間に設けられ、領域RPについては共通配線18及び絶縁層150と後述する配向膜12との間に設けられている。第6層間絶縁層76の+Z方向側の面、すなわち、液晶層5側に向く表面は、XY面に平行であり、平坦である。第6層間絶縁層76は、例えば、酸化シリコンで形成されている。
【0054】
配向膜12は、画素電極11の+Z方向側の表面、すなわち、液晶層5側に向く表面と、側面と、領域RPの第6層間絶縁層76の+Z方向側の表面と、を覆っている。配向膜12は、第1配向膜161と、第1配向膜161に積層されている第2配向膜162と、を有する。
【0055】
第1配向膜161は、画素電極11の+Z方向側の表面、すなわち、液晶層5側に向く表面と、側面と、領域RPの第6層間絶縁層76の+Z方向側の表面に積層されている。第2配向膜162は、第1配向膜161の+Z方向側の表面に積層されている。第1配向膜161及び第2配向膜162は、斜方蒸着膜からなる無機配向膜である。具体的には、第1配向膜161及び第2配向膜162の各々は、無機化合物からなる図示略の複数の柱状体からなる。複数の柱状体は、XY面に沿って並び、XY面で互いに隣接している。複数の柱状体の軸線及び延伸方向は、Z軸に対して所定の傾斜角度をなし、平面視したときに互いに同じ方向に傾斜している。第1配向膜161及び第2配向膜162を構成する無機化合物は、例えば、酸化シリコン、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム等である。
【0056】
液晶層5には、複数の液晶分子200が含まれる。液晶装置100はノーマリブラックのVA(Vertical Alignment)モードで作動する。液晶分子200は、例えば、負の誘電異方性を備えたネマチック液晶分子である。第1配向膜161及び第2配向膜162の複数の柱状体は、第1基板10の素子基板111の+Z方向側の表面、及び作動前の複数の液晶分子200の軸線に対して傾斜した状態で配向されている。
【0057】
液晶装置100では、Z軸において、第2基板20側から、すなわち、図5の紙面の上方から、液晶層5を通って-Z方向に進み、第1基板10に入射する光Lの少なくとも一部は、Z軸において、互いに隣接するとともに光Lのピーク波長において互いに異なる屈折率を有する材料及び層構造同士の界面で反射される。これらの反射光は、互いに異なる光路を経て反射する。そのため、第1基板10を透過して第1基板10の素子基板111から-Z方向に射出される光Lの強度は、前述の反射光の強度及び各層構造をなす材料の光Lに対する反射率に依存する。
【0058】
平面視において、画素電極11が配置されている画素Pの領域では、-Z方向に沿って第1基板10に入射する光Lは、配向膜12の第2配向膜162、第1配向膜161と、画素電極11と、第6層間絶縁層76と、を順次通り、さらに第5層間絶縁層75を通って、第5層間絶縁層75よりも-Z方向側の第1基板10の積層構造に入射する。第5層間絶縁層75を透過する光Lは、概ね第1基板10の素子基板111から-Z方向側に射出される。画素Pの領域では、画素電極11よりも-Z方向側に、画素電極11と第6層間絶縁層76とがZ軸で互いに接して配置され、第6層間絶縁層76と第5層間絶縁層75とがZ軸で互いに接して配置されている。第5層間絶縁層75と、第6層間絶縁層76と、配向膜12の第1配向膜161及び第2配向膜162とは、酸化シリコン等の互いに同様の材料で形成され、互いに同等の屈折率を有する。-Z方向側から第1基板10の配向膜12に入射する光Lの+Z方向側への反射は、Z軸において、共通配線18の位置までに、画素電極11と配向膜12の第1配向膜161との界面での反射、及び画素電極11と第6層間絶縁層76との界面での反射に因る。画素Pの領域では、Z軸での配向膜12から第5層間絶縁層75までの光Lの+Z方向側への反射が極力抑えられ、光Lの利用効率が向上する。
【0059】
第5層間絶縁層75と、第6層間絶縁層76と、配向膜12の第1配向膜161及び第2配向膜162の各々の屈折率は、画素電極11の屈折率に相対的に近い方が好ましい。第5層間絶縁層75と、第6層間絶縁層76と、配向膜12の第1配向膜161及び第2配向膜162の各々の屈折率と画素電極11の屈折率が互いに近い程、画素電極11と配向膜12の第1配向膜161との界面での光Lの+Z方向側への反射、及び画素電極11と第6層間絶縁層76との界面での光Lの+Z方向側への反射が抑えられ、光Lの利用効率のさらなる向上が図られる。
【0060】
平面視において、領域RPでは、-Z方向に沿って第1基板10に入射する光Lは、配向膜12の第2配向膜162、第1配向膜161と、画素電極11と、第6層間絶縁層76と、絶縁層150の第2絶縁層152、第1絶縁層151を順次通り、共通配線18の+Z方向側の表面に照射される。共通配線18に照射される光Lは、+Z方向に反射され、絶縁層150の第1絶縁層151、第2絶縁層152に入射する。上述説明したように、第2絶縁層152の屈折率が第1絶縁層151の屈折率よりも低く、第1絶縁層151の厚みt151及び第2絶縁層152の厚みt152が共通配線18の表面18a、第1絶縁層151の表面151a、及び第2絶縁層152の+Z方向側の表面152aで反射される光Lの位相を互いに反転させ、反射光同士を打ち消すように設定されている。そのため、絶縁層150は共通配線18から+Z方向に反射される光Lに対して反射防止層として作用する。そのため、共通配線18から+Z方向側に反射される光Lは、第1絶縁層151及び第2絶縁層152で多重反射し、減衰する。光Lは、-Z方向側から領域RPの液晶層5に、殆ど照射されない。
【0061】
(液晶装置の製造方法の概要)
次に、液晶装置100の製造方法のうちで第1基板10のZ軸における画素電極11から配向膜12までの積層構造を説明する。
【0062】
図6Aは、液晶装置100の表示領域Eの上部構造の平面図である。図6Bは、液晶装置100の表示領域Eの上部構造を製造する工程を説明するための断面図であり、図6Aに示すC15-C15線で矢視した時の断面図である。図6A及び図6Bに示すように、第5層間絶縁層75の+Z方向側のXY面に平行な表面75aに、Y軸に沿って延在する複数の第7導電層127を、X軸において画素Pの寸法に応じた間隔をあけて形成する。
【0063】
図7Aは、液晶装置100の表示領域Eの上部構造の平面図である。図7Bは、液晶装置100の表示領域Eの上部構造を製造する工程を説明するための断面図であり、図7Aに示すC15-C15線で矢視した時の断面図である。続いて、共通配線18を構成する第7導電層127の+Z方向側の表面127a上と、第7導電層127の側面127s上と、第7導電層127が設けられていない領域の第5層間絶縁層75の表面75a上と、に第1絶縁層151を厚みt151で形成する。その後、第1絶縁層151の+Z方向側の表面151aに、第2絶縁層152を厚みt152で積層する。
【0064】
続いて、図7A及び図7Bに示すように、XY面において各々の共通配線18或いは領域RPを含んで幅W151,W152の領域の第2絶縁層152の表面152a上に、レジスト層210を形成する。レジスト層210をマスクとして、+Z方向側からエッチングを行い、X軸において幅W151,W152の領域以外の領域に設けられている第1絶縁層151及び第2絶縁層152を削除する。その後、レジスト層210を除去する。
【0065】
図8Aは、液晶装置100の表示領域Eの上部構造の平面図である。図8Bは、液晶装置100の表示領域Eの上部構造を製造する工程を説明するための断面図であり、図8Aに示すC15-C15線で矢視した時の断面図である。続いて、絶縁層150の第2絶縁層152及び第5層間絶縁層75を覆うように第6層間絶縁層76を積層する。第6層間絶縁層76の+Z方向側の表面76aを、XY面に平行に平坦化する。その後、平面視において画素Pに相当する領域の第6層間絶縁層76の表面76aに、ITOからなる導電層128を積層し、画素電極11を形成する。さらに、導電層128の+Z方向側の表面128a上及び側面128s上と、第6層間絶縁層76のうちで導電層128に覆われていない領域の表面76a上と、に酸化シリコン等の配向膜150の材料を斜方蒸着する。斜方蒸着は、例えば、第6層間絶縁層76の表面76a及び導電層128の表面128aをZ軸に対して所定の傾斜角度をなすように傾けた状態で、積層構造全体を不図示の支持台等に固定し、行う。
【0066】
上述の工程を経て、図5に示す液晶装置100の表示領域Eの上部構造が製造される。
【0067】
以上説明した本実施形態の液晶装置100は、第1基板10の素子基板111と、第1画素電極である画素電極11Aと、第2画素電極である画素電極11Bと、配線層である共通配線18と、絶縁層150と、を備える。画素電極11Aは、素子基板111に配置されている。画素電極11Bは、XY面で画素電極11Aと並んで素子基板111に配置されている。共通配線18は、平面視で画素電極11Aと画素電極11Bとの間に配置されている。共通配線18は、素子基板111の厚み方向、すなわちZ軸において、画素電極11Aと素子基板111との間、且つ、画素電極11Bと素子基板111との間に設けられている。絶縁層150は、素子基板111の厚み方向において、画素電極11A,11Bと共通配線18との間に配置されている。絶縁層150は、素子基板111の厚み方向、すなわちZ軸において、画素電極11Aと共通配線18との間、且つ、画素電極11Bと共通配線18との間に設けられている。絶縁層150は、平面視で共通配線18と、画素電極11A,11Bの周辺領域とに重なっている。本実施形態の液晶装置100において、絶縁層150は、共通配線18から相対的に高い屈折率を有する第1絶縁層151と低屈折率の第2絶縁層152とが順番に積層されている。
【0068】
本実施形態の液晶装置100は、透過型の液晶装置であり、平面視で互いに隣り合う画素電極11A,11B間に配置されている共通配線18と、平面視で共通配線18と重なるとともに画素Pの開口領域の全体とは重ならない位置の領域RPに配置されている絶縁層150と、を備える。絶縁層150は、高屈折率層である第1絶縁層151と、低屈折率層である第2絶縁層152と、を有し、反射防止層として作用する。このことによって、平面視で画素電極11A,11B間に+Z方向側から-Z方向に侵入する光Lは、共通配線18によって反射され、+Z方向側、すなわち液晶層5側に進むが、絶縁層150によって減じられる。本実施形態の液晶装置100によれば、平面視で領域RPに重なって配置されている液晶層5の液晶分子200の劣化が画素Pの開口領域に配置されている液晶層5の液晶分子200よりも進むことを抑えられる。また、本実施形態の液晶装置100によれば、画素電極11と重なる画素Pの開口領域の全体に、絶縁層150を配置しない。画素電極11と重なる画素Pの開口領域では、配向膜160と、第6層間絶縁層76、及び第5層間絶縁層75の屈折率が互いに同等である場合、配向膜160から共通配線18とZ軸で同じ位置の第6層間絶縁層76までのZ軸での範囲内で、光Lの+Z方向側への反射を抑え、光Lの利用効率を高めることができる。
【0069】
本実施形態の液晶装置100では、第1絶縁層151の厚みt151は、共通配線18の厚みt18の1/3以下である。第2絶縁層152の厚みt152は、共通配線18の厚みt18の1/3以下である。
【0070】
本実施形態の液晶装置100では、厚みt151,t152が上述のように適切に設定されているため、Z軸における共通配線18と第1絶縁層151との界面、第1絶縁層151と第2絶縁層152との界面、及び第2絶縁層152と第6層間絶縁層76との界面の各々で反射される反射光同士の位相が打ち消される。そのため、平面視で領域RPに重なって配置されている液晶層5の液晶分子200への反射光の照射を極力抑え、領域RPに重なって配置されている液晶層5の液晶分子200の劣化を画素Pの開口領域に配置されている液晶層5の液晶分子200よりも進むことを抑えられる。
【0071】
本実施形態の液晶装置100では、第1絶縁層151の厚みt151は30nmであり、第2絶縁層152の厚みt152は30nmである。
【0072】
本実施形態の液晶装置100では、共通配線18の厚みt18が例えば、90nmに設定されている場合には、厚みt151,t152が上述のように適切に設定されている。そのため、Z軸における共通配線18と第1絶縁層151との界面、第1絶縁層151と第2絶縁層152との界面、及び第2絶縁層152と第6層間絶縁層76との界面の各々で反射される反射光同士の位相が打ち消される。そのため、平面視で領域RPに重なって配置されている液晶層5の液晶分子200への反射光の照射を極力抑え、領域RPに重なって配置されている液晶層5の液晶分子200の劣化を画素Pの開口領域に配置されている液晶層5の液晶分子200よりも進むことを抑えられる。
【0073】
図9は、上述の実施形態の変形例の液晶装置100の表示領域Eにおける第1基板10の第5層間絶縁層75から画素電極11までの積層構造と液晶層5との断面図であり、図4Aに示すC10-C110線で矢視した場合に対応する図である。本変形例の第1基板10の積層構造に関しては、上述の本実施形態の液晶装置100の第1基板10の積層構造と異なる内容について説明し、液晶装置100の第1基板10の積層構造と共通する内容の説明を省略する。
【0074】
図9に示すように、本変形例では、絶縁層150は、共通配線18をなす第7導電層127の+Z方向側の面、すなわち共通配線18の表面18aのみに積層されている。第1絶縁層151は、共通配線18の表面18aを覆い、側面18sは覆っていない。第2絶縁層152は、第1絶縁層151の表面を覆っている。第1絶縁層151の幅W151は、共通配線18の幅W18と同等である。第2絶縁層152の幅W152は、第1絶縁層151の幅W151及び共通配線18の幅W18と同等である。
【0075】
本実施形態の液晶装置100の変形例において、絶縁層150は、平面視したときに、画素電極11Aにおいて、共通配線18と画素電極11Aとが重ならない領域には配置されていない。絶縁層150は、平面視したときに、画素電極11Bにおいて、共通配線18と画素電極11Bとが重ならない領域には配置されていない。
【0076】
本実施形態の液晶装置100の変形例では、平面視において、画素電極11A,11Bの各々において共通配線18と重なっていない画素Pの開口領域に、絶縁層150が延出していない。そのため、画素電極11A,11Bの各々において共通配線18と重なっていない領域全体で、絶縁層150と第5層間絶縁層75或いは第6層間絶縁層76との界面での光Lの反射を抑えることができる。その結果、光Lの+Z方向側への反射を抑え、光Lの利用効率を高めることができる。
【0077】
前述のように、画素電極11A,11Bの各々において共通配線18と重なっていない画素Pの開口領域における光Lの利用効率をより高めるために、共通配線18の幅W18と、第1絶縁層151の幅W151と、第2絶縁層152の幅W152とは、周辺領域RPの間隔Gpに近い寸法に設定されていることが好ましい。例えば、液晶装置100の製造時に生じ得る製造誤差をMpと表すと、共通配線18の幅W18、第1絶縁層151の幅W151、及び、第2絶縁層152の幅W152は、例えば、(Gp+2×Mp)に設定されていてもよい。このように設定されている場合に、平面視したときに、共通配線18及び絶縁層150が周辺領域RPと重なり、X軸において周辺領域RPよりも-X方向側及び+X方向側に製造誤差Mpだけ大きく形成される。このことによって、平面視において画素電極11A,11Bの各々に含まれる画素Pの開口領域が最大限に確保され、画素Pの開口領域における光Lの利用効率が最大限に高められる。
【0078】
(電子機器)
次に、本実施形態の電子機器について、説明する。本実施形態では、電子機器として、液晶装置100を備えたプロジェクター1000を例に挙げて説明する。図10は、プロジェクター1000の概略図である。図10に示すように、プロジェクター1000は、光源装置1001と、ダイクロイックミラー1011,1012と、液晶装置100B,100G,100Rと、反射ミラー1111,1112,1113と、リレーレンズ1121,1122,1123と、クロスダイクロイックプリズム1130と、投射レンズ1140と、を備える。
【0079】
光源装置1001は、白色光Wを射出する。光源装置1001は、例えば、放電型のランプユニットであるが、発光ダイオード、レーザー等であってもよく、青色光を射出する発光体と発光体から発せられる青色光の一部を黄色光に変換して射出する蛍光体とを組み合わせた装置であってもよく、特定の光源装置に限定されない。
【0080】
光源装置1001から射出される白色光Wは、2個のダイクロイックミラー1011,1012によって、互いに異なる波長域の3色の色光に分離される。3色の色光は、赤色光Rと、緑色光Gと、青色光Bと、を含む。ダイクロイックミラー1011は、赤色光Rを透過し、赤色光Rよりも波長が短い緑色光G及び青色光Bを反射する。ダイクロイックミラー1011を透過する赤色光Rは、反射ミラー1111で反射され、液晶装置100Rに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射される緑色光Gは、ダイクロイックミラー1012によって反射された後、液晶装置100Gに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射される青色光Bは、ダイクロイックミラー1012を透過し、リレーレンズ系1120へ射出される。
【0081】
リレーレンズ系1120は、リレーレンズ1121,1122,1123と、反射ミラー1112,1113と、を有する。ダイクロイックミラー1011から液晶装置100Bまでの青色光Bの光路は、ダイクロイックミラー1011から液晶装置100Gまでの緑色光Gの光路や、ダイクロイックミラー1011から液晶装置100Rまでの赤色光Rの光路と比べて長い。そのため、青色光Bの光束は、緑色光Gや赤色光Rの光束よりも大きくなり易い。リレーレンズ1122が用いられることによって、青色光Bの光束の拡大が抑えられている。リレーレンズ系1120に入射する青色光Bは、反射ミラー1112で反射され、リレーレンズ1121によってリレーレンズ1122の近傍で収束する。青色光Bは、反射ミラー1113及びリレーレンズ1123を経て、液晶装置100Bに入射する。
【0082】
液晶装置100R,100G,100Bは、プロジェクター1000における光変調装置である。液晶装置100R,100G,100Bには、上述した液晶装置としての液晶装置100が適用されている。
【0083】
液晶装置100R,100G,100Bのそれぞれは、プロジェクター1000の外部制御装置に電気的に接続されている。赤色光R、緑色光G、青色光Bのそれぞれの階調レベルを指定する画像信号は、それぞれの色光の外部制御装置から供給され、液晶装置100R,100G,100Bのそれぞれに付属する集積回路で処理される。液晶装置100R,100G,100Bは、それぞれの集積回路から受信する画像信号に従って駆動される。液晶装置100Rは、入射する赤色光Rを変調する。液晶装置100Gは、入射する緑色光Gを変調する。液晶装置100Bは、入射する青色光Bを変調する。
【0084】
液晶装置100R,100G,100Bによって変調された赤色光R、緑色光G、青色光Bは、クロスダイクロイックプリズム1130に3方向から入射する。クロスダイクロイックプリズム1130は、プロジェクター1000における色合成光学系であり、入射する赤色光R、緑色光G、青色光Bを合成する。クロスダイクロイックプリズム1130において、赤色光R及び青色光Bはそれぞれの入射方向に対して90度反射され、緑色光Gは透過する。その結果、互いに合成される赤色光R、緑色光G、青色光Bは、同じ方向に射出される。赤色光R、緑色光G、青色光Bは、カラー画像を表示する表示光として合成され、クロスダイクロイックプリズム1130から投射レンズ1140に向かって射出される。
【0085】
投射レンズ1140は、プロジェクター1000の外側を向いて配置されている。表示光は、投射レンズ1140を介して拡大されて射出され、投射対象であるスクリーンSCRに投射される。
【0086】
以上説明した本実施形態のプロジェクター1000は、光変調装置として上述した本実施形態の液晶装置100を備え、赤色光Rに対応する液晶装置100Rと、緑色光Gに対応する液晶装置100Gと、青色光Bに対応する液晶装置100Bと、を備える。
【0087】
本実施形態のプロジェクター1000では、色光を変調して画像光に変換する光変調装置として、液晶装置100が用いられる。本実施形態のプロジェクター1000によれば、液晶装置100を備えるため、平面視で画素電極11と重なる画素Pの開口領域において色光の利用効率が向上させ、平面視で画素電極11間の周辺領域での不要な発光及び液晶層5に含まれる液晶分子200の劣化を抑えることができる。
【0088】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0089】
例えば、上述の実施形態では、電子機器としてプロジェクターを例示したが、電子機器は、プロジェクターに限定されない。上述の液晶装置を備える電子機器は、例えば光造形装置であってもよく、プロジェクターや光造形装置以外で液晶装置によって変換される画像光を活用する装置であってもよい。
【0090】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)基板と、前記基板に配置される第1画素電極と、前記第1画素電極と並んで前記基板に配置される第2画素電極と、平面視で前記第1画素電極と前記第2画素電極との間に配置され、前記基板の厚み方向において、前記第1画素電極と前記基板との間、且つ、前記第2画素電極と前記基板との間に設けられる配線層と、前記基板の厚み方向において、前記第1画素電極と前記配線層との間、且つ、前記第2画素電極と前記配線層との間に配置されるとともに、平面視で前記配線層と前記第1画素電極の周辺領域と前記第2画素電極の周辺領域とに重なる絶縁層と、を備え、前記絶縁層は、前記配線層から高屈折率である第1絶縁層と低屈折率な第2絶縁層とが順番で積層されている、液晶装置。
【0091】
付記1の構成によれば、平面視で第1画素電極及び第2画素電極と重なる各々の画素の開口領域において、入射する光の利用効率を高めることができる。付記1の構成によれば、平面視で第1画素電極と第2画素電極との間の周辺領域に重なって配置されている液晶層に含まれる液晶分子の劣化を抑えることができる。
【0092】
(付記2)前記第1絶縁層の厚みは前記配線層の厚みの1/3以下であり、前記第2絶縁層の厚みは前記配線層の厚みの1/3以下である、付記1の液晶装置。
【0093】
付記2の構成では、配線層の厚み等を考慮して第1絶縁層及び第2絶縁層の各々の厚みが適切に設定され、平面視で画素電極間の周辺領域において配線層での反射光の位相が互いに反転し、反射光同士が良好に打ち消される。付記2の構成によれば、画素電極間の周辺領域に重なって配置されている液晶層の液晶分子への反射光の照射を極力抑え、画素電極間の周辺領域に配置されている液晶分子の劣化を抑えることができる。
【0094】
(付記3)前記第1絶縁層の厚みは30nmであり、前記第2絶縁層の厚みは30nmである、付記1又は付記2の液晶装置。
【0095】
付記3の構成では、平面視で画素電極間の周辺領域において配線層での反射光の位相が互いに反転し、反射光同士が良好に打ち消される。付記3の構成によれば、画素電極間の周辺領域に重なって配置されている液晶層の液晶分子への反射光の照射を極力抑え、画素電極間の周辺領域に配置されている液晶分子の劣化を抑えることができる。
【0096】
(付記4)前記絶縁層は、平面視したときに、前記第1画素電極において、前記配線層と前記第1画素電極とが互いに重ならない領域に配置されず、前記第2画素電極において、前記配線層と前記第2画素電極とが互いに重ならない領域には配置されていない、付記1から付記3の何れかの液晶装置。
【0097】
付記4の構成によれば、第1画素電極及び第2画素電極の各々の画素電極において平面視で配線層と重ならない領域に絶縁層が配置されないため、各々の画素電極において平面視で配線層と重ならない領域での絶縁層とZ軸で隣接する層間絶縁層との界面での反射光を想定する必要がなく、入射する光の利用効率を高めることができる。
【0098】
(付記5)付記1から付記4の何れか液晶装置を備える、電子機器。
【0099】
付記5の構成によれば、光変調装置として用いられる液晶装置の画素の開口領域での光の利用効率を高め、画素の開口領域の周辺領域での液晶の劣化を抑えることができる。
【符号の説明】
【0100】
11A…画素電極(第1画素電極)、11B…画素電極(第2画素電極)、100…液晶装置、111…素子基板(基板)、150…絶縁層、151…第1絶縁層、152…第2絶縁層、1000…プロジェクター(電子機器)、P…画素。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10