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2024-168214画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、画像形成方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168214
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法、画像形成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20241128BHJP
   B41J 2/52 20060101ALI20241128BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G03G15/00 303
B41J2/52
H04N1/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084697
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 愛典
【テーマコード(参考)】
2H270
5C077
【Fターム(参考)】
2H270LA24
2H270LA28
2H270LA39
2H270LA64
2H270LA79
2H270LA81
2H270LA87
2H270LB01
2H270LB08
2H270MA07
2H270MA08
2H270MA11
2H270MB25
2H270MB28
2H270MB32
2H270MB43
2H270MH18
2H270ZC03
2H270ZC04
5C077LL04
5C077PP05
5C077PP58
5C077PQ08
5C077SS02
5C077TT03
(57)【要約】
【課題】
画像形成においてゴーストが発生する場合に、ゴーストを視認しづらくする。
【解決手段】
本開示に係る画像処理装置は、電子写真方式の画像形成に用いるビットマップ画像のデータに基づいて、前記画像形成においてゴーストが発生すると予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における第1領域、及び前記第1領域と前記第1領域の周囲の領域である前記ビットマップ画像における第2領域との境界の位置を特定し、前記ゴーストが発生する際の前記ゴーストの濃度の予測値と、前記ビットマップ画像のデータが示す前記第2領域の濃度値とに基づいて、前記第2領域における前記境界の位置の周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正する。
【選択図】 図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成に用いるビットマップ画像のデータに基づいて、前記画像形成においてゴーストが発生すると予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における第1領域、及び前記第1領域と前記第1領域の周囲の領域である前記ビットマップ画像における第2領域との境界の位置を特定する特定手段と、
前記ゴーストが発生する際の前記ゴーストの濃度の予測値と、前記ビットマップ画像のデータが示す前記第2領域の濃度値とに基づいて、前記第2領域における前記境界の位置の周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正する補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記第2領域において前記境界の位置から離れるにつれて、濃度値が前記予測値に対応する濃度値から前記第2領域の濃度値に向かってに徐々に変化するように前記ビットマップ画像のデータを補正すること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記ゴーストが、前記ゴーストの濃度が所望の濃度より薄いポジゴーストであると予測される場合に、前記第2領域において前記境界の位置から離れるにつれて、濃度値が徐々に高くなるように前記ビットマップ画像のデータを補正すること
を特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記ゴーストが、前記ゴーストの濃度が所望の濃度より濃いネガゴーストであると予測される場合に、前記第2領域において前記境界の位置から離れるにつれて、濃度値が徐々に低くなるように前記ビットマップ画像のデータを補正すること
を特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第2領域は、前記ゴーストが発生しないと予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における領域であること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記第2領域における前記境界の位置に対する副走査方向における周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正すること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記特定手段は、前記ビットマップ画像のデータと、像露光により像担持体の表面に形成される静電潜像に付着させる現像剤を担持する、副走査方向に回転可能な現像剤担持体の1回転分に相当する長さを示す情報とに基づいて、前記ゴーストが発生する領域を予測することにより、前記第1領域及び前記境界の位置を特定すること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記像担持体及び前記現像剤担持体が配設される画像形成装置が有する、前記現像剤を保持するカートリッジにおける前記現像剤の残量に基づいて、前記ビットマップ画像のデータを補正する際の濃度値の補正量を決定すること
を特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記補正手段は、所定の条件からの前記現像剤担持体の回転数又は走行距離に基づいて、前記ビットマップ画像のデータを補正する際の濃度値の補正量を決定すること
を特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記補正手段は、所定の条件からの前記像担持体の回転数又は走行距離に基づいて、前記ビットマップ画像のデータを補正する際の濃度値の補正量を決定すること
を特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記補正手段は、前記像担持体及び前記現像剤担持体が配設される画像形成装置における、前記画像形成の際の環境温度及び環境湿度の少なくともいずれかに基づいて、前記ビットマップ画像のデータを補正する際の濃度値の補正量を変更すること
を特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記特定手段は、前記ビットマップ画像のデータと、副走査方向に回転可能な像担持体の1回転分に相当する長さを示す情報とに基づいて、前記ゴーストが発生する領域を予測することにより、前記第1領域及び前記境界の位置を特定すること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記特定手段は、前記ビットマップ画像のデータと、像担持体に形成された現像剤像を転写材に転写して、転写した前記現像剤像を前記転写材に定着させる副走査方向に回転可能な定着手段の1回転分に相当する長さを示す情報とに基づいて、前記ゴーストが発生する領域を予測することにより、前記第1領域及び前記境界の位置を特定すること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
像担持体と、
前記像担持体の回転方向に配置される、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記像担持体の表面を像露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、
前記像担持体の表面に形成される前記静電潜像に付着させる現像剤を担持して、前記像担持体の表面に前記現像剤による現像剤像を形成する現像剤担持体と、
前記像担持体の表面に形成される前記現像剤像を転写材に転写して、転写した前記現像剤像を前記転写材に定着させる定着手段と、
を有する現像手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
電子写真方式の画像形成に用いるビットマップ画像のデータに基づいて、前記画像形成においてゴーストが発生すると予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における第1領域、及び前記第1領域と前記第1領域の周囲の領域である前記ビットマップ画像における第2領域との境界の位置を特定する特定工程と、
前記ゴーストが発生する際の前記ゴーストの濃度の予測値と、前記ビットマップ画像のデータが示す前記第2領域の濃度値とに基づいて、前記第2領域における前記境界の位置の周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正する補正工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
電子写真方式の画像形成に用いるビットマップ画像のデータに基づいて、前記画像形成においてゴーストが発生すると予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における第1領域、及び前記第1領域と前記第1領域の周囲の領域である前記ビットマップ画像における第2領域との境界の位置を特定する特定工程と、
前記ゴーストが発生する際の前記ゴーストの濃度の予測値と、前記ビットマップ画像のデータが示す前記第2領域の濃度値とに基づいて、前記第2領域における前記境界の位置の周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正する補正工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成の際に生じるゴーストの対処技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式又は静電記録方式による画像形成(以下「印刷」とも呼ぶ。)を行った場合に生じる現像ゴースト等のゴーストに対処する技術がある。特許文献1には、画像形成における現像ゴーストの発生を抑制する技術が開示されている。具体的には、特許文献1に開示された画像形成装置は、画像データに基づいてドットごとの潜像データを生成し、副走査方向の現像ローラの1回転分前に相当する位置の潜像データに基づいて感光ドラムへの露光量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-200758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仮に、特許文献1に開示の技術のように露光量の調整によりゴーストの発生を抑制したとしても、ゴーストの発生を抑制しきれずにゴーストが視認されてしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る画像処理装置は、電子写真方式の画像形成に用いるビットマップ画像のデータに基づいて、前記画像形成においてゴーストが発生すると予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における第1領域、及び前記第1領域と前記第1領域の周囲の領域である前記ビットマップ画像における第2領域との境界の位置を特定する特定手段と、前記ゴーストが発生する際の前記ゴーストの濃度の予測値と、前記ビットマップ画像のデータが示す前記第2領域の濃度値とに基づいて、前記第2領域における前記境界の位置の周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正する補正手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、画像形成においてゴーストが発生する場合に、ゴーストを視認しづらくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ベタ画像が形成された転写材の一例を示す図である。
図2】ゴーストが生じている場合の転写材の一例を示す図である。
図3】ゴーストが生じている場合の転写材の一例を示す図である。
図4】白色領域を含むベタ画像が形成された転写材の一例を示す図である。
図5】ポジゴーストが生じている場合の転写材の一例を示す図である。
図6】画像形成装置の構成の一例を示す図である。
図7】白色領域を含むベタ画像が形成された用紙の一例を示す図である。
図8】白色領域を含むベタ画像が形成された用紙の一例を拡大した拡大図である。
図9】主走査方向における輝度値の変化の一例を示す図である。
図10】ゴーストの境界付近における主走査方向の位置に対する輝度値の一例を示す図である。
図11】コントローラの構成の一例を示すブロック図である。
図12】画像処理部における処理フローの一例を示すフローチャートである。
図13】画像補正部における判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図14】画像補正部における補正処理を説明するための図である。
図15】ゴーストの境界付近における主走査方向の位置に対する輝度値の一例を示す図である。
図16】ゴーストの境界付近における主走査方向の位置に対する輝度値の一例を示す図である。
図17】ゴーストの境界付近における主走査方向の位置に対する輝度値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本開示の好適な実施形態について例示的に詳しく説明する。ただし、実施形態として記載する構成要素の相対配置及び数値等は、特に特定的な記載がない限りは、本開示の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0009】
<ゴーストの発生>
図1乃至5を参照して、画像形成の際に生じるゴースト、特に現像ゴーストについて説明する。以下、実施形態の説明において、現像ゴーストを単に「ゴースト」と表記する。画像形成装置における画像形成方式の1つとして、電子写真技術を応用したものがある。電子写真技術を応用した画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」と表記する。)は、例えば、像担持体、帯電部、露光部、現像部、転写部、及び定着部等から構成されている。以下、像担持体は、感光ドラムにより構成されるものとして説明する。帯電部、露光部、現像部、転写部、及び定着部は、感光ドラムの回転方向において順に配置され、帯電部は、感光ドラムの表面を所定の極性の電位に帯電させる。露光部は、印刷用のビットマップ画像データに基づいて生成された潜像データに基づいて像露光の発光を制御し、帯電された感光ドラムの表面を像露光して静電潜像を形成する。現像部は、静電潜像を現像ローラ等の現像剤担持体を用いて感光ドラムの表面にトナー等の現像剤を付着させて、感光ドラムの表面にトナー像を形成する。転写部は、感光ドラムの表面に形成されたトナー像を紙等の転写材上に転写する。定着部は、転写材上の現像剤像を定着させる。
【0010】
図1は、ベタ画像が形成された転写材の一例を示す図である。図2及び3は、ベタ画像が形成された転写材の一例であって、ゴーストが生じている場合の転写材の一例を示す図である。画像形成装置によりベタ画像を転写材に形成する場合、図1に示すように、一様な印刷濃度のベタ画像が転写材に形成されることが望ましいが、図2又は3に示すように、印刷濃度が一様でないベタ画像が転写材に形成されることある。図2に示す転写材では、印刷開始位置から現像ローラの1回転分の長さLに相当する位置(以下「1回転相当位置」と呼ぶ。)までの領域201における印刷濃度が濃く、領域201に続く領域202における印刷濃度が領域201の印刷濃度より薄くなっている。以下、領域201のように、所望の印刷濃度より濃く形成されるタイプのゴーストを「ネガゴースト」と表記する。また、図3に示す転写材では、印刷開始位置から1回転相当位置までの領域301における印刷濃度が薄く、領域301に続く領域302における印刷濃度が領域301の印刷濃度よりも濃くなっている。以下、領域301のように、所望の印刷濃度より薄く形成されるタイプのゴーストを「ポジゴースト」と表記する。
【0011】
なお、図1乃至3に示す白抜きの矢印は、転写材の画像形成装置における搬送方向を示している。また、現像ローラの周速度と感光ドラムの周速度とは互いに異なるため、現像ローラの周長とそれに対応する転写材における長さとは、寸法的に互いに一致しない。このため、実施形態1では、適宜、「転写材上の1回転相当位置」を、「現像ローラの1回転相当位置」、又は単に「1回転相当位置」と表記して説明する。
【0012】
図2又は3に示す転写材のように、ベタ画像の形成において、印刷濃度に濃淡が生じる原因の1つに、現像ローラが感光ドラムに供給するトナー(現像剤)における帯電量の過不足がある。本来、トナーは、現像ローラが1回転する間にチャージアップされて、その帯電量が飽和されていることが望ましい。しかしながら、実際には、帯電量の飽和は困難であり、現像ローラの1回転目と2回転目以降とにおけるトナーの帯電量は、僅かではあるが互いに異なる場合が多い。この1回転目と2回転目以降とにおけるトナーの帯電量の過不足により、ネガゴースト又はポジゴーストが顕在化してしまう。
【0013】
この問題を解決するために、速い帯電立ち上がり特性を有するトナー、又はトナーの過帯電防止方法についての検討がなされているが、未だ十分な解決には至っていない。また、トナー自体の改良の他に、現像ローラが1回転した後に現像ローラの表面に残存するトナーを現像ローラから全部剥ぎ取った後に、即ち、現像ローラをリセットした後に、現像ローラに新しいトナーを供給する方法についての検討もなされている。しかしながら、実際には、現像ローラをリセットした後においても一部のトナーが現像ローラの表面に残存してしまうため、ベタ画像を形成した転写材にゴーストが発生してしまう。
【0014】
ネガゴースト及びポジゴーストの発生は、同一の転写材にベタ画像のみを形成する場合に限定されるものではない。例えば、ネガゴースト又はポジゴーストは、ベタ画像が形成されない領域(以下「白色領域」と呼ぶ。)と、ベタ画像が形成される領域(以下「ベタ領域」と呼ぶ。)とを有するベタ画像を転写材に形成する場合においても発生する。図4は、白色領域401とベタ領域402とを含むベタ画像が形成された転写材の一例を示す図である。図5は、白色領域401とベタ領域402とを含むベタ画像が形成された転写材の一例であって、ポジゴーストが生じている場合の転写材の一例を示す図である。画像形成装置により、白色領域401を含むベタ画像を転写材に形成する場合、図4に一例として示すように、ベタ領域402には、一様なベタ画像が転写材に形成されることが望ましい。しかしながら、図5に示すように、白色領域401から1回転相当位置だけ離れた領域503の印刷濃度が、領域503の周囲のベタ領域402の印刷濃度と比較して薄くなること、すなわち、領域503にポジゴーストが発生することがある。
【0015】
このような領域503におけるポジゴーストの発生は、現像ローラにおける、白色領域401に対応する部位のトナーが感光ドラムに付着することなく現像ローラ上に残り、当該部位以外の部位のトナーが感光ドラムに付着することに起因する。現像ローラ上に残ったトナーは、供給ローラにて回収されるが、その一部は、供給ローラにより回収されずに現像ローラ上に残ってしまうことがある。その後、現像ローラには、新しいトナーが一様に供給される。そのため、現像ローラにおける領域503に対応する部位のトナーの量と、現像ローラにおけるベタ領域402に対応する部位のトナーの量とは、互いに異なることになる。結果として、領域503とベタ領域402とは、互いに異なる印刷濃度によりベタ画像が形成されることになる。
【0016】
[実施形態1]
<画像形成装置の構成>
図6乃至14を参照して、実施形態1に係る画像形成装置6について説明する。図6は、実施形態1に係る画像形成装置6の構成の一例を示す図であって、画像形成装置6の断面の一例を示す断面図である。画像形成装置6は、コントローラ600,給紙搬送部620、感光ドラム630、帯電ローラ640、露光部650、現像部660、転写ローラ670、ドラムクリーニング部680、及び定着排送部690を備える。なお、以下、画像形成装置6は、モノクロ画像の形成する装置であるものとして説明するが、画像形成装置6は、カラー画像を形成する装置であってもよい。画像形成装置6がカラー画像を形成する装置である場合、例えば、画像形成装置6は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の4色のそれぞれに対応する現像部660を備える。この場合、画像形成装置6は、各色に対応する現像部660にて現像されたトナー像を同一の転写材に転写することによりカラー画像を形成する。
【0017】
情報処理装置610は、パーソナルコンピュータ等により構成され、例えば、PDL(Page Description Language)形式のデータを印刷データとして生成し、生成した印刷データを画像形成装置6に送信する。画像形成装置6は、レーザビームプリンタ等により構成され、情報処理装置610から送信された印刷データを受信する。画像形成装置6は、受信した印刷データに基づいて、転写材である紙等の記録媒体(以下「用紙」と呼ぶ。)に画像を形成する。なお、画像形成装置6は、複写機、又は、スキャナ機能若しくはFAX機能等を有する複合機等であってもよい。
【0018】
コントローラ600は、印刷データに基づいてビットマップ画像データを生成し、トナーを用いた電子写真方式の画像形成処理の実行により、生成したビットマップ画像データに基づく画像を用紙に形成する。コントローラ600は、各種制御を行う制御部として機能し、入力された印刷データに含まれる、画像を示すデータ及び用紙情報等に基づいて、画像形成装置6内の各種構成を統括的に制御して、画像形成装置6に画像形成を行わせる。用紙の例としては、普通紙、厚紙、OHP用紙、コート紙、ラベル紙、及びミシン目紙等が挙げられる。
【0019】
給紙搬送部620は、用紙を給送するためのものであり、給紙搬送部620には、カセット621に配置された用紙Pからピックアップされた用紙を搬送する、図6において破線により示す用紙搬送路Qが配設されている。用紙搬送路Qには、上流から下流に向かって、給送ローラ622、レジストローラ対623、転写ローラ670、定着ユニット691、及び排出ローラ692が順に配設されている。用紙は、用紙搬送路Qを介して、カセット621から排出トレイ693まで搬送される。
【0020】
帯電ローラ640、露光部650、現像部660、及び転写ローラ670は、感光ドラム630の回転方向に順に配置され、帯電ローラ640は、感光ドラム630の表面を所定の電位に帯電させる。露光部650は、帯電された感光ドラム630の表面を像露光して、感光ドラム630の表面に静電潜像を形成する。具体的には、コントローラ600は、印刷データに基づいて生成したビットマップ画像データを用いて、潜像データを生成する。露光部650は、レーザを含み、コントローラ600により生成された潜像データに基づいてレーザの発光を制御して、感光ドラム630の表面に静電潜像を形成する。レーザの発光による感光ドラム630の表面の露光は、用紙の搬送方向と直交する方向では、走査ラインごとに、BD(Beam Detect)信号(「水平同期信号」ともいう。)と呼ばれるポリゴンスキャナ内の位置信号を用いて行われる。一方、用紙Pの搬送方向(以下「副走査方向」と呼ぶ。)の、レーザの発光による感光ドラム630の表面の露光は、用紙搬送路Qに配置された図6には不図示のスイッチを起点とするTOP信号(「垂直同期信号」ともいう。)から所定の時間だけ遅延させて行われる。以下、用紙Pの搬送方向を「副走査方向」と表記し、用紙の搬送方向と直交する方向、すなわち、副走査方向と直交する方向を主走査方向と表記する。
【0021】
現像部660は、現像ローラ661を含み、感光ドラム630の表面に形成された静電潜像に現像ローラ661上のトナーを付着させることより、感光ドラム630の表面にトナー像を形成する。現像ローラ661上のトナーは、所望の層厚及び帯電量を有するトナー層が得られるように現像ブレード662によって規制された後に、現像ローラ661の回転により感光ドラム630と対向する位置に搬送される。感光ドラム630と対向する位置に搬送された現像ローラ661上のトナーは、クーロン力により感光ドラム630の表面(外周面)に形成された静電潜像に付着する。静電潜像にトナーが付着することにより静電潜像が現像されて、感光ドラム630の表面にトナー像が形成される。
【0022】
また、現像部660には、現像ローラ661の周側面と対向するように、トナー供給体として供給ローラ663が配置されている。供給ローラ663は、現像ローラ661の周側面にトナーを供給する。現像ローラ661の周側面上を1回転したトナーは、供給ローラ663により剥ぎ取られる。供給ローラ663は、現像ローラ661の周側面上を1回転したトナーを理想的には全部剥ぎ取ってから、現像ローラ661に新しいトナーを供給する。また、現像部660には、現像ローラ661の周側面と対向するように、供給ローラ663よりも下流側に現像ブレード662が配置されている。現像ブレード662は、供給ローラ663により現像ローラ661に供給された現像ローラ661上のトナーを、所望の層厚及び帯電量を有するトナー層となるように規制する。
【0023】
転写ローラ670は、感光ドラム630の表面に形成されたトナー像を用紙上に転写する。トナー像が転写された用紙は、定着ユニット691に搬送される。ドラムクリーニング部680は、感光ドラム630の表面に残留したトナーを除去(クリーニング)する。転写ローラ670により用紙上に転写が行われた後の感光ドラム630には、用紙上に転写しきれなかったトナーが残留する。ドラムクリーニング部680は、クリーニングブレード681を含む、この残留したトナーは、クリーニングブレード681によって掻き取られて回収トナーとして捕集される。
【0024】
定着排送部690は、用紙上に転写されたトナー像を定着し、トナー像が定着された用紙を排出する。定着排送部690は、定着装置である定着ユニット691、排出ローラ692、及び排出トレイ693を含み、定着ユニット691は、用紙を押圧する一対のローラと、用紙を加熱するヒータとを備える。定着ユニット691は、用紙を押圧しながら加熱することにより、用紙上の未定着のトナーを用紙に溶融定着させて、用紙にトナー像を形成する。トナー像が形成された用紙は、排出ローラ692によりに搬送されて、排出トレイ693に排出される。排出トレイ693には、トナー像が形成された用紙、すなわち画像形成が完了した用紙が積載される。
【0025】
<ゴーストの発生のメカニズム>
ゴーストの発生のメカニズムについて説明する。具体的には、ゴーストの発生と、ゴーストと供給ローラ663による現像ローラ661に残るトナーの回収量との関係について説明する。なお、以下では、一例として、図4に示すような、白色領域401とベタ領域402とを含むベタ画像の形成において、図5に示す領域503のようにポジゴーストが生じる場合について説明する。ゴーストは、白色領域401を形成後のトナー帯電量と、ベタ画像を形成後のトナー帯電量との間の差により、感光ドラム630の表面に付着するトナー量に差が生じることに起因して発生する。
【0026】
ベタ画像の形成後では、現像ローラ661上のトナーの略全部が感光ドラム630の表面に付着して現像ローラ661上から消費されるために、現像ローラ661には、新たなトナーとして供給ローラ663から供給されるトナーのみが存在する。そのため、供給ローラ663から現像ローラ661に供給されたトナーは、現像ブレード662による摩擦帯電により所望の帯電量となる。一方、白色領域401の形成後では、現像ローラ661上のトナーは感光ドラム630の表面に付着せずに現像ローラ661上に残存する。現像ローラ661上に残存するトナー(以下「現像残トナー」と呼ぶ。)は、予め帯電されている。現像残トナーの帯電量は、供給ローラ663と現像ローラ661との間の摩擦帯電と、現像ブレード662による摩擦帯電により、ベタ画像の形成後のトナーの帯電量と比較して過剰に多くなりやすい。つまり、供給ローラ663にて現像残トナーの回収量を多くすることができれば、白色領域401を形成後のトナー帯電量を、ベタ画像を形成後のトナー帯電量に近づけることができ、結果として、ゴーストの発生を抑制できる。
【0027】
供給ローラ663による現像残トナーの回収量を多くするためには、現像ローラ661と供給ローラ663との間の電位差を、現像残トナーが供給ローラ663へ付勢される方向に設定することが有効である。しかし、画像形成時に、現像ローラ661と供給ローラ663との間の電位差を、トナーが供給ローラ663に付勢される方向に設定してしまうと、供給ローラ663から現像ローラ661へのトナー供給量が不十分になってしまう。つまり、ベタ画像のような印字率の高い画像の形成を行う際にトナーの供給量が不足し、均一な印刷濃度のベタ画像が形成できない等のベタ追従性の不良が発生してしまう。
【0028】
<画像後端での画像抜け>
次に、画像形成領域の後端部での画像抜けについて説明する。ここで、画像形成領域の後端部とは、用紙の搬送方向における下流側の領域を意味する。画像形成領域の後端部での画像抜けは、ベタ画像のような印字率の高い画像の画像形成中に、現像ローラ661と供給ローラ663との間の電位差を、現像ローラ661から供給ローラ663へ現像残トナーを付勢される方向に設定することに起因する。つまり、現像ローラ661から供給ローラ663へトナーが移動するように電位差を設定することによって、現像ローラ661上のトナーが著しく不足する。その結果、本来の画像形成に必要なトナーが不足して現像ローラ661に供給されずに、画像形成領域の後端部において画像抜けが発生してしまう。
【0029】
<ゴーストの視認評価>
本開示に係るゴーストの対処方法の説明の前に、ゴーストの視認評価の結果について説明する。図7は、ベタ画像が形成されない領域(白色領域)701とベタ画像が形成される領域(ベタ領域)702とを含むベタ画像が形成された用紙の一例であって、本評価に用いた、ベタ画像が形成された用紙を示す図である。本評価は、現像ローラ661と供給ローラ663との間の電位差を調整して画像形成を行った、図7に示すベタ画像が形成された用紙について、目視によりゴーストの視認性を評価したものである。具体的には、本評価では、現像ローラ661と供給ローラ663との間の電位差を段階的に変更した条件1乃至4の4つの条件のそれぞれついて画像形成を行い、各条件にてベタ画像が形成された用紙におけるゴーストの視認性を目視により評価した。表1は、ゴーストの視認による主観的な評価結果を示すものである。目視による評価結果は、AからEまでの5段階で示し、評価結果のAは、ゴーストが視認されずに画像形成の状態が最良であることを表し、評価結果のEは、ゴーストがはっきりと視認される、画像形成の状態が最悪であることを表している。表1に示す評価結果では、条件3及び4にてベタ画像が形成された用紙におけるゴーストは、比較的視認しづらく、良い結果となっており、条件1及び2にてベタ画像が形成された用紙におけるゴーストは、はっきりと視認される結果となった。
【0030】
【表1】

図8は、図7に一例として示す白色領域701とベタ領域702とを含むベタ画像が形成された用紙の拡大図であり、ゴーストがはっきりと視認される場合の用紙の拡大図である。以下、図8に示す白色領域701は、搬送方向において、現像ローラ661の1回転分に相当する長さL以上の長さを有するものとして説明する。また、図8に示す領域803は、ゴーストの発生領域であって、搬送方向において、白色領域701の直後から現像ローラ661の1回転分に相当する長さLを有する。
【0031】
図9は、図8に示す用紙の主走査方向における輝度値の変化の一例を示す図である。具体的には、図9は、一例として、図8において一点鎖線により囲んだ領域804の副走査方向(用紙の搬送方向)における互いに異なる位置であって主走査方向における同じ位置の複数の輝度値の平均値を、主走査方向の輝度値として示している。図9において、細い実線により示す曲線901は条件1での輝度値を、太い実線により示す曲線902は条件2での輝度値を、細い破線により示す曲線903は条件3での輝度値を、及び、太い破線による曲線904は条件4での輝度値を表している。なお、図9に示す輝度値は、例えば、図8に示す用紙に形成された画像を複写機又は複合機等のスキャナで読み込み、当該読み込みより得られた画像データにおける各画素値を輝度値に変換することにより得られる。
【0032】
図8に示す用紙は、主走査方向の左右両端部と比較して印刷濃度が薄いゴーストが中央部に発生しているため、図9に示す各曲線901乃至904は、いずれも、中央部が左右両端部と比較して輝度値が大きくなっている。各曲線901乃至904において中央部の輝度値と左右両端部の輝度値との差には大きな隔たりはなく、図8に示す用紙の主走査方向の輝度値の変化の結果と、表1に示す目視による評価結果とは、互いに異なる傾向を示している。
【0033】
図10は、図8に示す用紙のゴーストが発生している境界805の付近における主走査方向の位置に対する輝度値の一例を示す図であって、図9に示す位置128mm(ミリメートル)から140mmまでを拡大した図である。すなわち、図10は、図8の破線で示す領域806の主走査方向における輝度値の変化を示している。具体的には、図10は、一例として、領域806の副走査方向(用紙の搬送方向)における互いに異なる位置であって主走査方向における同じ位置の複数の輝度値の平均値を、主走査方向の輝度値として示している。図10に示す直線1000は、ゴーストが発生している境界の位置を示しており、図8に示す境界805に相当する位置を示している。
【0034】
図10に示すように、表1に示す目視によるゴーストの評価結果が悪いとされた条件1及び2に対応する曲線901及び902は、ゴーストが発生する境界805に対応する直線1000の位置で急激な変化(段差)を有している。これに対して、表1に示す目視によるゴーストの評価結果が良いとされた条件3及び4に対応する曲線903及び904は、境界805に対応する直線1000の付近で緩やかな変化(傾斜)を有している。
【0035】
以上のように、表1に示す目視による評価結果と、図9又は10に示す輝度値の変化とから、ゴーストの見え方を改善してゴーストを視認しづらくするためには、以下のようにすればよいことがわかる。具体的には、ゴーストを視認しづらくするためには、ゴーストの発生する領域803における全域の印刷濃度を補正するのではなく、ゴーストが発生する領域803とその周囲のベタ領域702との境界805付近の印刷濃度の変化を緩やかにすればよい。具体的には、条件1又は条件2での画像形成において、ゴーストの発生する領域803の境界805付近の画像(画素)の印刷濃度を徐々に(例えば、段階的に)変化させるように、画像を補正する処理を行えばよい。これにより、曲線901及び902を曲線903又は904のように境界805付近で輝度値を緩やかな変化にさせることができ、結果として、ゴーストを視認しづらくことができる。
【0036】
図11を参照して、コントローラ600の構成について説明する。図11(a)は、実施形態1に係るコントローラ600の機能構成の一例を示すブロック図である。コントローラ600は、画像処理部1100及び露光制御部1110を有する。画像処理部1100は、印刷データ取得部1101、画像生成部1102、色変換部1103、画像補正部1104、ガンマ処理部1105、中間調処理部1106、及びPWM処理部1107を有する。
【0037】
コントローラ600が機能構成として有する各部の処理は、コントローラ600に内蔵されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによってなされる。当該処理は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによってなされてもよい。また、当該処理は、CPU(Central Processor Unit)若しくはGPU(Graphic Processor Unit)等のプロセッサ、及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを用いたソフトウェアによってなされてもよい。コントローラ600が機能構成として有する各部の処理については後述する。
【0038】
図11(b)は、実施形態1に係るコントローラ600のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。コントローラ600は、CPU1120、ROM1130、RAM1150、及びホストI/F1140を有し、それぞれは、システムバス1180を介して互いに接続されている。ホストI/F140は、情報処理装置610とのデータのやり取りを行うインターフェース(I/F)である。
【0039】
CPU1120は、ROM1130又はRAM1150に格納されているプログラム及びデータを用いてコンピュータを制御することにより、当該コンピュータをコントローラ600が機能構成として備える各部として機能させる。また、CPU1120は、画像形成装置6の全体を統括的に制御する。なお、コントローラ600は、CPU1120とは異なる1又は複数の専用のハードウェアを有し、CPU1120による処理の少なくとも一部を専用のハードウェアが実行してもよい。専用のハードウェアの例としては、ASIC、FPGA、及びDSP(デジタルシグナルプロセッサ)等がある。ROM1130は、変更を必要としないプログラム等を格納する。RAM1150は、ROM1130から供給されるプログラム若しくはデータ、又はホストI/F140を介して外部から供給されるデータ等を一時記憶する。また、RAM1150は、CPU120のワークメモリとして機能し、その一部は、画像メモリ1151、イメージバッファ1152、及び転送用バッファ1153として機能する。
【0040】
画像処理部1100は、印刷データを取得して、取得した印刷データに対応するデータであって、露光部650における光源の発光時間を制御するための潜像データを出力する。露光制御部1110は、画像処理部1100が出力する潜像データに基づいて、露光部650におけるレーザの発光を制御するための信号を生成し、これを露光部650に送信する。露光部650は、露光制御部1110が送信する信号を受信して、この信号に基づいて感光ドラム630にレーザ光を照射する。露光部650の発光量は、露光制御部1110から受信する信号に基づいて調整される。これにより、感光ドラム630における電子写真感光体の露光量が調整されて、用紙に形成される画像の階調表現が実現される。具体的には、露光制御部1110は、露光部650の光源について自動光量制御(APC:Automotic Power Control)を実行して目標光量を設定する。また、露光制御部1110は、露光部650に対するパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御を行う。
【0041】
図12を参照して、画像処理部1100の動作、及び画像処理部1100が機能構成として有する各部の処理について説明する。図12は、実施形態1に係る画像処理部1100の処理フローの一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明において記号「S」はステップを意味する。まず、S1201にて、印刷データ取得部1101は、印刷データを取得する。例えば、印刷データ取得部1101は、情報処理装置610から送信される印刷データを受信することにより印刷データを取得する。印刷データの取得元は、情報処理装置610に限定されるものではなく、印刷データ取得部1101は、印刷データを予め記憶する図6及び図11には不図示の記憶装置から、ユーザからの指示等に基づいて印刷データを読み出すことにより取得してもよい。
【0042】
次に、S1202にて、画像生成部1102は、印刷データ取得部1101が取得する印刷データに基づいて、当該印刷データに対応するラスタイメージデータ(以下「ラスタデータ」と呼ぶ。)を生成する。ここで、ラスタデータとは、印刷処理が可能なビットマップ画像データである。印刷データは、通常、文字、グラフィックス、又はイメージ等のデータについての描画命令を含むデータである。印刷データは、一般に、PDL(Page Description Language)と称される、ビットマップ画像データを作成するためのプリンタ記述言語により構成される。画像生成部1102は、印刷データ取得部1101が取得した印刷データを解析してラスタライズ処理を行うことにより、ラスタデータとしてのビットマップ画像データを生成する。
【0043】
次に、S1203にて、色変換部1103は、画像生成部1102が生成したラスタデータに対して色変換処理を行い、当該ラスタデータをトナー色に合わせたラスタデータに変換する。以下、画像生成部1102が生成したラスタデータを第1ビットマップ画像データと表記し、色変換部1103による変換後のラスタデータを第2ビットマップ画像データと表記して説明する。色変換部1103は、第2ビットマップ画像データをイメージバッファ1152に一時的に格納する。例えば、イメージバッファ1152は、用紙の1ページ分のビットマップ画像データを格納するページメモリである。また、イメージバッファ1152は、後述する処理のために必要な複数ライン分の画像データを一時的に記憶するバンドメモリであってもよい。
【0044】
次に、S1204にて、画像補正部1104は、第2ビットマップ画像データに対して、ゴーストの発生する領域803の境界805付近の画像(画素)の印刷濃度を段階的に変化させるための補正処理を行うか否かを判定する。上述したゴーストの発生のメカニズムを考慮すると、第2ビットマップ画像データに基づいて、画像形成装置6により形成される画像にゴーストが発生するか否かを予測することができる。また、第2ビットマップ画像データと、現像ローラ661の1回転分に相当する長さLとに基づいて、ゴーストが発生する領域が、第2ビットマップ画像データが示す画像のうちのどこの領域に対応するかを予測することができる。そこで、画像補正部1104は、第2ビットマップ画像データに基づいて、画像形成装置6により形成される画像にゴーストが発生するか否かを予測する。
【0045】
また、ゴーストが発生すると予測される場合、画像補正部1104は、第2ビットマップ画像データと上述の長さLとに基づいて、ゴーストが発生する領域が、第2ビットマップ画像データが示す画像のうちのどの領域に対応するかを特定する。更に、この場合、画像補正部1104は、特定した領域に基づいて、第2ビットマップ画像データを補正する。例えば、図4に示すべ画像を形成する場合のように、100%濃度のベタ領域402と白色領域401とが互いに隣接して存在する場合、100%濃度のベタ領域402と白色領域401との境界が存在する。更に、用紙の搬送方向における、白色領域401の後方に100%濃度のベタ領域402が存在する場合、ベタ領域402内における白色領域401の後方における長さLだけ離れた領域に濃度の薄い領域503がゴーストとして発生すると予測される。
【0046】
図13を参照して、S1204の処理の詳細について説明する。図13は、実施形態1に係る画像補正部1104における判定処理の流れの一例を示すフローチャートであって、画像補正部1104におけるS1204の処理の流れの一例を示すフローチャートである。まず、S1301にて、画像補正部1104は、第2ビットマップ画像データが高濃度画像のデータであるか否かを判定する。具体的には、例えば、画像補正部1104は、第2ビットマップ画像データが示す画像(以下「第2ビットマップ画像」と呼ぶ。)において濃度値が所定の閾値以上である画像領域が存在するか否かを判定する。第2ビットマップ画像において濃度値が所定の閾値以上である画像領域が存在すると判定された場合、画像補正部1104は、第2ビットマップ画像データが高濃度画像のデータであると判定する。ここで、例えば、閾値は、第2ビットマップ画像データにおいて各画素の濃度値が8ビットで表される場合、8ビットを10進数で表記した場合の0から255までの範囲における250等の所定の値である。
【0047】
S1301にて第2ビットマップ画像データが高濃度画像のデータでないと判定された場合、画像補正部1104は、S1305にて、第2ビットマップ画像データに対して補正処理を行わないと判定する。一方、S1301にて第2ビットマップ画像データが高濃度画像のデータであると判定された場合、画像補正部1104は、S1302の処理を実行する。S1302にて、画像補正部1104は、第2ビットマップ画像において高濃度の画像領域(以下「高濃度領域」と呼ぶ。)と、高濃度でない画像領域(以下「白色領域」と呼ぶ。)とが互いに隣接して存在するか否かを判定する。
【0048】
S1302にて高濃度領域と白色領域とが互いに隣接して存在しないと判定された場合、画像補正部1104は、S1305にて、第2ビットマップ画像データに対して補正処理を行わないと判定する。一方、S1302にて高濃度領域と白色領域とが互いに隣接して存在すると判定された場合、画像補正部1104は、S1303の処理を実行する。S1303にて、画像補正部1104は、第2ビットマップ画像における高濃度領域と白色領域との境界が存在する位置から副走査方向の後端方向において所定の距離だけ離れた位置に高濃度領域が存在するか否かを判定する。ここで、所定の距離とは、現像ローラ661の1回転分の長さLに相当する第2ビットマップ画像上の距離である。以下、現像ローラ661の1回転分の長さLに相当する第2ビットマップ画像上の距離は、40mmであるものとして説明する。
【0049】
S1303にて所定の距離だけ離れた位置に高濃度領域が存在しないと判定された場合、画像補正部1104は、S1305にて、第2ビットマップ画像データに対して補正処理を行わないと判定する。一方、S1303にて所定の距離だけ離れた位置に高濃度領域が存在すると判定された場合、画像補正部1104は、S1304にて、第2ビットマップ画像データに対して補正処理を行うものと判定する。S1304又はS1305の後、画像補正部1104は、図13に示すフローチャートの処理を終了する。S1204にて第2ビットマップ画像データに対して補正処理を行うと判定された場合、S1205にて、画像補正部1104は、第2ビットマップ画像データに対して補正処理を行う。S1205における補正処理の詳細については後述する。
【0050】
S1205の後、又は、S1204にて第2ビットマップ画像データに対して補正処理を行わないと判定された場合、S1206にて、ガンマ処理部1105は、入力された画像データに対してガンマ処理を行う。これにより、ガンマ処理部1105は、入力された画像データにおける各画素の濃度値を画像形成装置6でその濃度を再現するための値に変換する。ここで、ガンマ処理部1105には、画像補正部1104によりS1205の処理が実行された場合には、画像補正部1104による補正処理後の第2ビットマップ画像データ(以下「第3ビットマップ画像データ」と呼ぶ)が入力される。また、画像補正部1104によりS1205の処理が実行されない場合には、ガンマ処理部1105には、第2ビットマップ画像データが入力される。
【0051】
例えば、ガンマ処理部1105は、画像形成装置6のガンマ特性に合わせて入出力信号を変換するために予め用意されたルックアップテーブル(以下「γLUT」と呼ぶ。)を用いて、入力された画像データにおける各画素の濃度値を変換する。ガンマ処理部1105による各画素の濃度値の変換は、γLUTを用いる方法に限定されるものではなく、既知の階調制御等により濃度値を変換してもよい。なお、実施形態1では、一例として、画像処理部1100はガンマ処理部1105を有するものとして説明するが、ガンマ処理部1105は必須の構成ではなく、画像処理部1100はガンマ処理部1105を有していなくてもよい。また、実施形態1では、一例として、画像処理部1100は、画像補正部1104とガンマ処理部1105とを有するものとして説明するが、画像補正部1104がガンマ処理部1105の機能を包含していてもよい。
【0052】
S1206の後、S1207にて、中間調処理部1106は、ガンマ処理部1105による変換後の画像データ(以下「第4ビットマップ画像データ」と呼ぶ。)に対して中間調処理を行う。第4ビットマップ画像データは、中間調処理部1106による中間調処理により各画素が2値(1ビット)で表現される2値画像データに変換される。中間調処理には、例えば、周知のディザ法又は誤差拡散法等を用いればよい。なお、中間調処理についてはディザ法又は誤差拡散法に限定されるものではなく、中間調処理には他の方法を用いても構わない。中間調処理部1106による中間調処理により生成された2値画像データは、転送用バッファ1153に一時的に格納される。
【0053】
次に、S1208にて、PWM処理部1107は、転送用バッファ1153に格納された2値画像データを、露光部650における光源の発光時間を制御するための潜像データに変換する。PWM処理部1107にて生成された潜像データは、画像形成装置6における画像形成のタイミングに同期して、露光制御部1110に送信される。S1208の後、画像処理部1100は、図12に示すフローチャートの処理を終了する。
【0054】
以降、上述したように、露光制御部1110は、PWM処理部1107から送信された潜像データを受信し、露光部650におけるレーザの発光を制御するための信号を生成する。更に、露光部650は、当該信号に基づいて感光ドラム630にレーザ光を照射する。このようにして画像形成装置6は、用紙に対して画像形成を行う。
【0055】
以下、図14(a)乃至(d)を参照して、画像補正部1104におけるS1205の補正処理について説明する。図14(a)は、実施形態1に係る画像補正部1104に入力される第2ビットマップ画像データが示す画像500であって、高濃度領域と白色領域との境界を含む画像500の一例を示す図である。図14(a)に示す画像500は、一例として、16×16画素を有しており、図中において、格子状に並べられた複数の矩形のそれぞれは、画素1401を表している。また、各画素1401に対応する矩形内の色は、各画素の濃度を表しており、濃い灰色は、画素の濃度値が高いことを表し、白色は、画素の濃度値が低いことを表している。
【0056】
まず、画像補正部1104は、図14(a)に示す画像500に対して、例えば、2次微分フィルタを適用することにより、画像500における高濃度領域と白色領域との境界(以下、単に「境界」と呼ぶ。)を検出する。続いて、画像補正部1104は、検出した境界の特徴(以下「境界特徴」と呼ぶ。)を示す情報を含む属性フラグを生成する。図14(b)は、実施形態1に係る画像補正部1104が生成する属性フラグ1402の一例を示す図である。なお、図中における格子状に並べられた複数の矩形1404のそれぞれは、画素1401に対応する属性フラグを表している。図14(a)に示す画像500の場合、画像補正部1104は、図14(b)に示すような黒く塗りつぶされた矩形1404が連なった部分、すなわち、境界に相当する部分についての特徴を示す情報を含む属性フラグ1402を生成する。具体的には、画像補正部1104は、例えば、境界に相当する画素の値を1とし、境界に相当しない画素の値を0とする2値画像データを属性フラグ1402として生成する。以下、境界に相当する画素に対応する属性フラグを境界フラグ1403と表記する。なお、図14(b)では、境界フラグ1403を黒く塗りつぶされた矩形1404により表し、境界に相当しない画素に対応する属性フラグを中白の矩形1404により表している。
【0057】
続いて、画像補正部1104は、図14(b)に示す属性フラグ1402として生成された2値画像データを用いて、ゴーストが発生し得る領域に対応する画素を特定する。図14(c)は、実施形態1に係る画像補正部1104により特定される、ゴーストが発生し得る領域に対応する画素の一例を示す図である。例えば、画像補正部1104は、図14(b)に示す属性フラグ1402における境界フラグ1403の副走査方向における後端方向(図の下方向)において、現像ローラ661の一周分の範囲内に存在する高濃度の画素を特定する。このような特定により、画像補正部1104は、図14(c)に示す斜線のテクスチャにより塗られた各矩形が、ゴーストが発生し得る領域に対応する画素であるとして、ゴーストフラグ1405を生成する。続いて、画像補正部1104は、図14(c)に示す太線により表された矩形が連なった部分、すなわち、ゴーストの境界に対応する部分について、ゴーストの境界の特徴を示す情報を含むゴースト境界フラグ1406を生成する。
【0058】
続いて、画像補正部1104は、生成したゴースト境界フラグ1406に対応する画像500の位置から、画像500において高濃度領域が存在する方向に向かって、画像500における高濃度領域の画素の濃度値が段階的に変化するように濃度値を補正する。濃度値の補正量は、ゴースト境界フラグ1406に対応する画像500の位置が最も大きい。図14(d)は、実施形態1に係る画像補正部1104による補正処理後の画像データである第3ビットマップ画像データが示す画像1410の一例を示す図である。なお、図中における格子状に並べられた複数の矩形のそれぞれは、画像1410における画素を表している。また、各画素1401に対応する矩形内の色は、各画素の濃度を表しており、色が濃いほど画素の濃度値が高いことを表し、薄いほど画素の濃度値が低いことを表している。図14(d)に示す領域1407は、画像補正部1104による補正処理により濃度値が段階的に変化するように補正された領域である。領域1407において、矩形内の色が薄いほど、すなわち、画素の濃度値が低い画素ほど画像補正部1104による補正量が大きく、矩形内の色が濃くなるにつれて、すなわち、画素の濃度値が高くなるについて、段階的に補正量が小さくなっている。また、矩形内の色が最も濃い矩形に対応する画素の濃度値については、補正量が0となっている。
【0059】
ここで、ゴースト境界フラグ1406に対応する画像500の画素の濃度値の補正量は、画像形成後の用紙においてゴーストが発生する領域の濃度の予測値に基づいて算出することが可能である。当該予測値は、例えば、ゴーストが発生している用紙をスキャンする等の方法により予め取得し得る。なお、実施形態1では、図14(d)に示すように、画像補正部1104は、領域1407の角部1408の画素の濃度値を主走査方向及び副走査方向の2方向において段階的に変化させるように補正を行っている。また、実施形態1では、主に、副走査方向において濃度値を段階的に変化させる形態について説明したが、濃度値の補正の方法はこれに限定されるものではない。例えば、高濃度領域と白色領域との境界の伸びる方向が副走査方向である場合、画像補正部1104は、主走査方向において濃度値を段階的に変化させるように補正してもよい。
【0060】
<補正係数の設定>
画像補正部1104は、例えば、補正係数を用いて第2ビットマップ画像における各画素の濃度値の補正を行う。以下、画像補正部1104による補正係数を用いた濃度値の補正処理について説明する。なお、以下で説明する補正処理の方法は、あくまで一例であり、これに限定されるものではない。また、以下では、補正係数については、主走査方向のみに設定されるものとして説明するが、補正係数については、副走査方向においても設定することが可能である。また、補正係数については、主走査方向及び副走査方向の2方向だけでなく、4方向又は8方向等の多方向において設定してもよい。
【0061】
上述したように、ゴーストは、互いに濃度が異なる領域が生じることによる発生する。画像補正部1104は、第2ビットマップ画像データに補正係数を乗じることにより、ゴーストが発生し得る領域に対応する第2ビットマップ画像における領域の外側の画素の濃度値を段階的に変化させた第3ビットマップ画像データを生成する。ここで、入力画像データである第2ビットマップ画像データの各画素の濃度値をINPUT、補正係数をk、及び補正後の濃度値をOUTPUTとすると、補正後の濃度値は、次式(1)で表すことができる。
【0062】
OUTPUT=INPUT×k ・・・ 式(1)
次に、補正係数(k)の段階的な変化について説明する。実施形態1では、主走査方向において、第2ビットマップ画像におけるゴーストの境界に相当する位置から+3mmまでの領域において補正係数(k)を、例えば、線形に変化させる。表2は、ゴーストの境界からの位置と、当該位置における補正係数(k)との対応関係の一例を示している。画像補正部1104は、表2に示すような、ゴーストの境界からの位置に対して段階的に変化させた補正係数(k)を用いて、第2ビットマップ画像データを補正することにより、ゴーストの境界における濃度の急激な変化(段差)を軽減する。これにより、画像形成後の用紙にゴーストが発生する際に、ゴーストを目立たなくすることができる。ここで、表2の±0.0mmの位置は、図14(d)のゴースト境界フラグ1406の位置に相当する。また、マイナス符号(-)は、ゴースト境界フラグ1406の位置からゴーストフラグ1405の領域に向かう方向を表し、プラス符号(+)は、ゴースト境界フラグ1406の位置から、段階的に濃度値を変化させる領域である領域1407に向かう方向を表す。なお、表2の±0.0mmの位置に対応する補正係数(k)の値は、ゴーストが発生する領域の濃度の予測値に基づいて算出することが可能であり、当該予測値は、ゴーストが発生している用紙をスキャンする等の方法により予め取得し得る。
【0063】
【表2】

<濃度値の補正の効果>
画像補正部1104による濃度値の補正処理による効果について説明する。以下、一例として、現像ローラ661と供給ローラ663との間の電位差を、図7に示す画像が形成された用紙においてゴーストがはっきりと視認される条件に調整し、表2に示す補正係数(k)を用いて補正処理を行った場合に用紙に形成される画像を評価した。
【0064】
図15は、上述の場合における、図10と同様の、ゴーストの境界の付近における主走査方向の位置に対する輝度値の一例を示す図である。細い実線により示す曲線901は、図10に示す曲線901と同一のものであり、表1に示す目視によるゴーストの評価結果が悪いとされた条件1に対応する曲線である。破線により示す曲線903は、図10に示す曲線903と同一のものであり、表1に示す目視によるゴーストの評価結果が良いとされた条件3に対応する曲線である。太い実線により示す曲線1501は、表1に示す目視によるゴーストの評価結果が悪いとされた検討1と同じ条件において、表2に示す補正係数(k)を用いて補正処理を行った場合の用紙に形成された画像の輝度値を示す曲線である。なお、図15に示す直線1000は、図10に示す直線1000と同一のものであり、ゴーストが発生している境界の位置を示している。
【0065】
図15に示すように、画像補正部1104による補正処理を行うことにより、曲線1501は、ゴーストの評価結果が悪いとされた条件1に対応する曲線901と比較して、ゴーストの評価結果が良いとされた条件3に対応する曲線903に近づく。すなわち、画像補正部1104による補正処理を行った画像形成によれば、用紙に形成する全体の濃度を変えることなく、用紙に発生するゴーストを目立たなくすることができる。
【0066】
なお、特開2016-200758号公報には、画像形成におけるゴーストの発生を抑制する技術が開示されているが、仮に、当該技術のように露光部の光量の補正によりゴーストの発生を抑制したとしても、ゴーストの発生を抑制しきれない場合がある。このような場合においても、画像補正部1104により補正処理を行うことにより、ゴーストを目立たなくすることができる。
【0067】
また、特開2016-200758号公報に開示の技術では、1ドット当たりの露光部のレーザが4つのラインにより構成される場合、通常のベタ画像の形成の際には3つのラインによる発光によりベタ画像を形成する。更に、当該技術では、ゴーストが発生する位置のみに対して4つ目のラインによる発光により光量を補正して、ゴーストの発生を抑制する。したがって、当該技術では、通常のベタ画像の形成の際には、1ドット当たりの発光を3つのラインで行うため、4つのラインの発光によるベタ画像の形成と比較して、ベタ画像が所望の濃度より薄くなってしまうことがある。しかしながら、実施形態1に係る画像形成装置6は、通常のベタ画像の形成の際に、露光部650における全てのレーザを用いた画像形成が行えるため、所望の濃度のベタ画像を形成することができる。
【0068】
[実施形態2]
実施形態1では、境界からの距離に対して予め定められた補正係数(k)のみを用いて、第2ビットマップ画像データの補正を行う形態について説明した。ここで、用紙に発生するゴーストの濃度は、画像形成装置6の使用期間又は使用環境等により変動する。実施形態2では、一例として、画像形成装置6に配設される図6には不図示のカートリッジ内のトナー残量に応じて、用紙に発生するゴーストの濃度が変動するものとして、トナー残量に基づいて補正係数を決定する形態について説明する。なお、実施形態2の説明において、実施形態1と同様の構成又は処理については、その説明を省略する。
【0069】
上述したように、ポジゴーストは、白色領域を形成後のトナー帯電量とベタ画像を形成後のトナー帯電量との間の差により生じる。そのため、画像形成により画像形成装置6の使用が進み、トナー残量が少なくなるにつれて、ポジゴーストが良化する傾向となる。これは、画像形成装置6の使用をとおして、現像ローラ661近傍のトナーは、現像ブレード662による摩擦帯電と、供給ローラ663による回収との繰り返しにより、トナー帯電量が均一になることに起因する。トナー帯電量が均一になることにより、ベタ画像を形成後のトナー帯電量と白色領域を形成後のトナー帯電量との差が小さくなり、結果として、ポジゴーストが良化する。
【0070】
図16は、図10と同様の、ゴーストの境界の付近における主走査方向の位置に対する輝度値の一例を示す図であって、画像形成により画像形成装置6の使用が進み、トナー残量が変化した場合の主走査方向の位置に対する輝度値の一例を示す図である。なお、図16に示す直線1000は、図10に示す直線1000と同一のものであり、ゴーストが発生している境界の位置を示している。実線により示す曲線1601は、トナー残量が90%である場合に用紙に形成される画像の輝度値を示し、一点鎖線により示す曲線1611は、トナー残量が50%である場合に用紙に形成される画像の輝度値を示す。また、二点鎖線により示す曲線1621は、トナー残量が20%である場合に用紙に形成される画像の輝度値を示す。なお、実施形態2において、カートリッジ内のトナー残量は、カートリッジが新品の未使用である場合に100%であり、画像形成による画像形成装置6の使用によりトナーが消費され、トナーの全てを使い果たした場合に0%であるものとする。
【0071】
図16に示すように、用紙に発生したゴーストの境界近傍での曲線の傾きは、トナー残量が少なくなるにつれて小さくなっている。このため、トナー残量が90%である場合に適切な補正係数(k)を、トナー残量が20%である場合に適用してしまうと、ゴーストの境界近傍での曲線の傾きが逆になり、補正処理を行った領域において、ネガゴーストのような画像が用紙に形成されてしまう。
【0072】
そこで、実施形態2では、画像形成により画像形成装置6の使用が進み、トナー残量が変化する場合に、トナー残量の変化に合わせた補正係数を設定することにより、画像形成装置6の使用によって変化するゴーストの濃度に対応させる。ここで、入力画像データである第2ビットマップ画像データの各画素の濃度値をINPUT、補正係数をk、トナー残量に対応する係数をkt、及び補正後の濃度値をOUTPUTとすると、補正後の濃度値は、次式(2)で表すことができる。以下、トナー残量に対応する係数をトナー残量補正係数と表記する。
【0073】
OUTPUT=INPUT×k×kt ・・・ 式(2)
トナー残量補正係数(kt)について説明する。表3は、トナー残量に対応するトナー残量補正係数(kt)の一例を示している。表3に示すようなトナー残量補正係数(kt)を式(1)の両辺に対して乗ずることにより、画像形成により画像形成装置6の使用が進み、ゴーストの濃度が変化するような場合であっても、画像補正部1104は、適切な補正処理を行うことができる。
【0074】
【表3】

<トナー残量補正係数を用いた濃度値の補正の効果>
トナー残量補正係数(kt)を用いた画像補正部1104による濃度値の補正の効果について説明する。以下、一例として、トナー残量が90%、50%、20%である場合における、表2に示す補正係数(k)と表3に示すトナー残量補正係数(kt)とを用いて補正処理を行った際に用紙に形成される画像を評価した。
【0075】
図17は、図10と同様の、ゴーストの境界の付近における主走査方向の位置に対する輝度値を示す図であって、画像形成により画像形成装置6の使用が進み、トナー残量が変化した場合の主走査方向の位置に対する輝度値の一例を示す図である。なお、図16に示す直線1000は、図10に示す直線1000と同一のものであり、ゴーストが発生している境界の位置を示している。実線により示す曲線1701は、トナー残量が90%である場合の輝度値を、一点鎖線により示す曲線1711は、トナー残量が50%である場合の輝度値を、二点鎖線により示す曲線1721は、トナー残量が20%である場合の輝度値を示している。
【0076】
図17に示すように、トナー残量補正係数(kt)を用いた画像補正部1104による濃度値の補正により、トナー残量が変化しても、境界付近において、輝度値を単調に減少させ、且つ、曲線の傾きを小さくすることができる。したがって、画像補正部1104による、このような補正処理を行った画像形成によれば、トナー残量の変化、すなわち、画像形成による画像形成装置6の使用具合の変化に合せて、ゴーストを目立たなくすることができる。
【0077】
実施形態2では、画像形成による画像形成装置6の使用具合の変化として、トナー残量の変化を一例として説明したが、画像形成装置6の使用具合の変化は、これに限定されるものではない。例えば、画像形成装置6の使用具合の変化は、感光ドラム630又は現像ローラ661等の走行距離等であってもよく、この場合、走行距離に対応する補正係数を式(1)の両辺に乗じればよい。ここで、走行距離とは、工場出荷時、直近の部品交換時、又は、直近のメンテナンス時等の所定の条件からの、感光ドラム630又は現像ローラ661等の総回転数等である。また、ゴーストの濃度は、画像形成装置6を使用する周囲の温度又は湿度等の使用環境の影響によっても変化する。そのため、使用環境を示す値に対応する補正係数を設定してもよい。この場合、画像形成装置6に温度計又は湿度計等の環境センサを設けて、画像形成装置6の周囲の環境を示す値を取得して、取得した値に対応する補正係数を式(1)の両辺に乗じれば良い。
【0078】
[その他の実施形態]
上述の実施形態では、ポジゴーストが発生する場合の第2ビットマップ画像データの補正処理について説明したが、ネガゴーストが発生する場合についても同様の補正処理を適用することができる。例えば、発生したネガゴーストの周囲が白色領域である場合、画像補正部1104は、以下のような処理を行えばよい。画像補正部1104は、第2ビットマップ画像におけるネガゴーストと白色領域との境界の位置を特定し、白色領域における濃度が当該境界から段階的に薄くなるように第2ビットマップ画像データを補正する。
【0079】
また、上述の実施形態では、濃度値の補正の一例として、現像ローラ661上に存在するトナー量に差が生じることに起因して発生するゴースト(現像ゴースト)への適用について説明したが、本開示に係る濃度値の補正の適用はこれに限定されるものではない。例えば、電子写真方式の画像形成では、帯電ローラ640による感光ドラム630の帯電工程において、感光ドラム630における直前に露光を受けた部位と受けていない部位との間に電位差が生じることがある。この電位差により次に感光ドラム630の表面に形成される静電潜像が所望のものにならず、トナーの付着量が直前に露光を受けた部位と受けていない部位とで互いに異なってしまうことによりゴースト(以下「ドラムゴースト」と呼ぶ。)が発生することがある。また、例えば、定着ユニット691による加熱工程において、画像パターンと定着ユニット691の昇温状態によってはトナーが過剰に加熱されることにより定着ユニット691の部材表面にトナーがオフセットすることがある。このようなトナーのオフセットにより、部材表面にオフセットしたトナーが定着ユニット691における1回転後の用紙上にオフセットするゴースト(以下「定着ゴースト」と呼ぶ。)が発生することがある。
【0080】
ドラムゴースト及び定着ゴーストの発生は、第2ビットマップ画像データに基づいて予測することができる。具体的には、ドラムゴーストは、第2ビットマップ画像データと、感光ドラム630の1回転分に相当する長さとに基づいて予測できる。また、定着ゴーストは、第2ビットマップ画像データと、定着ユニット691の1回転分に相当する長さとに基づいて予測できる。そのため、本開示に係る濃度値の補正は、ドラムゴースト又は定着ゴースト等のゴーストについても適用することできる。なお、定着ゴーストは原理上、ネガゴーストである。
【0081】
更に、上述の実施形態では、画像処理部1100に含まれる全ての機能構成の処理が画像形成装置6において実行される形態について説明したが、当該機能構成のうちの一部又は全部の処理は、画像形成装置6以外の外部装置において実行されてもよい。この場合、画像形成装置6は、外部装置において実行された処理結果のデータを取得すればよい。具体的には、例えば、情報処理装置610が印刷データに基づいて第1ビットマップ画像データを生成し、画像形成装置6は、情報処理装置610が生成した第1ビットマップ画像データを情報処理装置610から取得してもよい。また、例えば、情報処理装置610にて、第2ビットマップ画像データを生成するまでの処理を行ってもよく、第3ビットマップ画像データを生成するまでの処理を行ってもよい。また、例えば、情報処理装置610にて、中間調処理までを行ってもよく、露光部650に対するパルス幅変調制御までを行ってもよい。
【0082】
本開示は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0083】
なお、本開示はその開示の範囲内において、各実施形態の自由な組み合わせ、各実施形態の任意の構成要素の変形、又は、各実施形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0084】
[本開示の構成]
本開示は、以下の構成、方法、及びプログラムを含む。
【0085】
<構成1>
電子写真方式の画像形成に用いるビットマップ画像のデータに基づいて、前記画像形成においてゴーストが発生すると予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における第1領域、及び前記第1領域と前記第1領域の周囲の領域である前記ビットマップ画像における第2領域との境界の位置を特定する特定手段と、
前記ゴーストが発生する際の前記ゴーストの濃度の予測値と、前記ビットマップ画像のデータが示す前記第2領域の濃度値とに基づいて、前記第2領域における前記境界の位置の周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正する補正手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【0086】
<構成2>
前記補正手段は、前記第2領域において前記境界の位置から離れるにつれて、濃度値が前記予測値に対応する濃度値から前記第2領域の濃度値に向かってに徐々に変化するように前記ビットマップ画像のデータを補正すること
を特徴とする構成1に記載の画像処理装置。
【0087】
<構成3>
前記補正手段は、前記ゴーストが、前記ゴーストの濃度が所望の濃度より薄いポジゴーストであると予測される場合に、前記第2領域において前記境界の位置から離れるにつれて、濃度値が徐々に高くなるように前記ビットマップ画像のデータを補正すること
を特徴とする構成2に記載の画像処理装置。
【0088】
<構成4>
前記補正手段は、前記ゴーストが、前記ゴーストの濃度が所望の濃度より濃いネガゴーストであると予測される場合に、前記第2領域において前記境界の位置から離れるにつれて、濃度値が徐々に低くなるように前記ビットマップ画像のデータを補正すること
を特徴とする構成2又は3に記載の画像処理装置。
【0089】
<構成5>
前記第2領域は、前記ゴーストが発生しないと予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における領域であること
を特徴とする構成1乃至4のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0090】
<構成6>
前記補正手段は、前記第2領域における前記境界の位置に対する副走査方向における周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正すること
を特徴とする構成1乃至5のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0091】
<構成7>
前記特定手段は、前記ビットマップ画像のデータと、像露光により像担持体の表面に形成される静電潜像に付着させる現像剤を担持する、副走査方向に回転可能な現像剤担持体の1回転分に相当する長さを示す情報とに基づいて、前記ゴーストが発生する領域を予測することにより、前記第1領域及び前記境界の位置を特定すること
を特徴とする構成1乃至6のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0092】
<構成8>
前記補正手段は、前記像担持体及び前記現像剤担持体が配設される画像形成装置が有する、前記現像剤を保持するカートリッジにおける前記現像剤の残量に基づいて、前記ビットマップ画像のデータを補正する際の濃度値の補正量を決定すること
を特徴とする構成7に記載の画像処理装置。
【0093】
<構成9>
前記補正手段は、所定の条件からの前記現像剤担持体の回転数又は走行距離に基づいて、前記ビットマップ画像のデータを補正する際の濃度値の補正量を決定すること
を特徴とする構成7又は8に記載の画像処理装置。
【0094】
<構成10>
前記補正手段は、所定の条件からの前記像担持体の回転数又は走行距離に基づいて、前記ビットマップ画像のデータを補正する際の濃度値の補正量を決定すること
を特徴とする構成7乃至9のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0095】
<構成11>
前記補正手段は、前記像担持体及び前記現像剤担持体が配設される画像形成装置における、前記画像形成の際の環境温度及び環境湿度の少なくともいずれかに基づいて、前記ビットマップ画像のデータを補正する際の濃度値の補正量を変更すること
を特徴とする構成7乃至10のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0096】
<構成12>
前記特定手段は、前記ビットマップ画像のデータと、副走査方向に回転可能な像担持体の1回転分に相当する長さを示す情報とに基づいて、前記ゴーストが発生する領域を予測することにより、前記第1領域及び前記境界の位置を特定すること
を特徴とする構成1乃至11のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0097】
<構成13>
前記特定手段は、前記ビットマップ画像のデータと、像担持体に形成された現像剤像を転写材に転写して、転写した前記現像剤像を前記転写材に定着させる副走査方向に回転可能な定着手段の1回転分に相当する長さを示す情報とに基づいて、前記ゴーストが発生する領域を予測することにより、前記第1領域及び前記境界の位置を特定すること
を特徴とする構成1乃至12のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0098】
<構成14>
構成1乃至13のいずれか1つに記載の画像処理装置と、
像担持体と、
前記像担持体の回転方向に配置される、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記像担持体の表面を像露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成する露光手段と、
前記像担持体の表面に形成される前記静電潜像に付着させる現像剤を担持して、前記像担持体の表面に前記現像剤による現像剤像を形成する現像剤担持体と、
前記像担持体の表面に形成される前記現像剤像を転写材に転写して、転写した前記現像剤像を前記転写材に定着させる定着手段と、
を有する現像手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【0099】
<方法1>
電子写真方式の画像形成に用いるビットマップ画像のデータに基づいて、前記画像形成においてゴーストが発生すると予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における第1領域、及び前記第1領域と前記第1領域の周囲の領域である前記ビットマップ画像における第2領域との境界の位置を特定する特定工程と、
前記ゴーストが発生する際の前記ゴーストの濃度の予測値と、前記ビットマップ画像のデータが示す前記第2領域の濃度値とに基づいて、前記第2領域における前記境界の位置の周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正する補正工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【0100】
<方法2>
電子写真方式の画像形成に用いるビットマップ画像のデータに基づいて、前記画像形成においてゴーストが発生すると予測される領域に対応する前記ビットマップ画像における第1領域、及び前記第1領域と前記第1領域の周囲の領域である前記ビットマップ画像における第2領域との境界の位置を特定する特定工程と、
前記ゴーストが発生する際の前記ゴーストの濃度の予測値と、前記ビットマップ画像のデータが示す前記第2領域の濃度値とに基づいて、前記第2領域における前記境界の位置の周辺の濃度値を変更することにより前記ビットマップ画像のデータを補正する補正工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【0101】
<プログラム>
コンピュータを、構成1乃至13のいずれか1つに記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0102】
1100 画像処理部
1104 画像補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17