(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168217
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】インプリント装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241128BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084702
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 博之
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AR06
4F209AR12
4F209PA02
4F209PB01
4F209PN03
4F209PN13
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】アライメント精度を向上させるために有利な技術を提供する。
【解決手段】インプリント装置は、基板の上のインプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部と、光照射部を制御する制御部とを有する。制御部は、型と基板とのアライメントを行うアライメント工程において、インプリント材の粘弾性および基板の変形量に基づいて、第1の光照射と第2の光照射との切り替えを行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と型とのアライメントを行うアライメント工程と、前記アライメント工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部と、
前記光照射部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記インプリント材の粘弾性および前記基板の変形量に基づいて、前記第1の光照射と前記第2の光照射との切り替えを行う、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記第1の光照射の実行中に得られる前記粘弾性が第1閾値を超えたことに応じて、前記第1の光照射から前記第2の光照射への切り替えを行う、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記第2の光照射の実行中に得られる前記変形量が第2閾値を超えたことに応じて、前記第2の光照射から前記第1の光照射への切り替えを行う、ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記切り替えを複数回繰り返し行う、ことを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第1閾値および前記第2閾値について、各回の前記切り替えのために独立した値が設定される、ことを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記基板または前記基板を保持して搬送する基板ステージの振動量を計測する計測器を更に有し、
前記制御部は、前記計測器による計測で得られた振動量に基づいて前記粘弾性を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記基板の上の前記インプリント材を撮像する撮像部を更に有し、
前記制御部は、前記撮像部による撮像で得られた前記インプリント材の画像に基づいて前記粘弾性を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記基板に設けられたマークと前記型に設けられたマークとの相対位置を検出する検出器を更に有し、
前記制御部は、前記検出器により検出された前記相対位置に基づいて前記変形量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項9】
基板の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と型とのアライメントを行うアライメント工程と、前記アライメント工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部と、
前記光照射部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記第1の光照射の継続時間に基づいて、前記第1の光照射から前記第2の光照射への切り替えを行い、前記第2の光照射の継続時間に基づいて、前記第2の光照射から前記第1の光照射への切り替えを行う、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項10】
前記光照射部は、
前記インプリント材を部分的に硬化させる第1光を発生する第1光源と、
前記アライメントのために前記基板を変形させる第2光を発生する第2光源と、
前記第1光を変調した第1変調光および前記第2光を変調した第2変調光を発生する空間光変調器と、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記空間光変調器は、デジタルミラーデバイスを含む、ことを特徴とする請求項10に記載のインプリント装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載のインプリント装置により基板の上にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された前記基板を加工する工程と、
を含み、前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の上のインプリント材に型を接触させ、該インプリント材を硬化させることによって、該インプリント材の硬化物からなるパターンを該基板の上に形成するインプリント装置がある。特許文献1には、型と基板とのアライメント精度を向上させるため、アライメント時に基板の上のインプリント材の少なくとも一部に光を照射してインプリント材の粘弾性を高めること(予備露光工程)が記載されている。特許文献2には、型のパターン領域と基板のパターン領域との形状の差を低減するように基板のパターン領域を加熱すること(加熱工程)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-058735号公報
【特許文献2】特開2013-102132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アライメント工程において、上記したような予備露光工程と加熱工程を順次に行うことが考えられる。
【0005】
しかし、予備露光工程においてインプリント材の粘弾性を最大限に高めてしまうと、基板と型との結合力が高まる。そうすると、その後に実行される加熱工程において基板のパターン領域を目標通りに変形させることができず、所望のアライメント精度を達成することが困難になりうる。
【0006】
本発明は、アライメント精度を向上させるために有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、基板の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と型とのアライメントを行うアライメント工程と、前記アライメント工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部と、前記光照射部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記アライメント工程において、前記インプリント材の粘弾性および前記基板の変形量に基づいて、前記第1の光照射と前記第2の光照射との切り替えを行う、ことを特徴とするインプリント装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アライメント精度を向上させるために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】従来のインプリント処理を説明するための図。
【
図4】実施形態におけるインプリント処理を説明するための図。
【
図5】インプリント材の粘弾性と基板ステージの振動量との関係を示す図。
【
図6】検出器によるアライメントマーク測定方法を説明するための図。
【
図7】予備露光工程におけるインプリント材の粘弾性の変化を示す図。
【
図8】加熱工程における基板のパターン形成領域の熱変形量の変化を示す図。
【
図9】実施形態におけるインプリント処理を説明するための図。
【
図10】実施形態におけるインプリント処理を説明するための図。
【
図11】実施形態における物品製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1には、一実施形態におけるインプリント装置1の構成が示されている。インプリント装置1は、インプリント処理を実行し、これにより基板Sの上にインプリント材IMの硬化物からなるパターンを形成する。インプリント処理は、接触工程と、アライメント工程と、硬化工程とを含みうる。接触工程は、基板Sの上のインプリント材IMと型Mとを接触させる工程である。アライメント工程は、接触工程の後に基板Sと型Mとのアライメントを行う工程である。硬化工程は、アライメント工程の後にインプリント材IMを光照射によって硬化させる工程である。
【0012】
インプリント材は、光が照射されることによって硬化する光硬化性組成物である。光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0013】
本明細書および添付図面では、基板Sの表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。基板Sまたはその領域と型Mまたはその領域とのアライメントは、基板Sおよび型Mの少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。また、アライメントは、基板Sおよび型Mの少なくとも一方の形状を補正あるいは変更するための制御を含みうる。
【0014】
インプリント装置1は、基板Sを保持し駆動する基板駆動機構SD、および、基板駆動機構SDを支持するベースフレームBF、型Mを保持し駆動する型駆動機構MDを備えうる。基板駆動機構SDおよび型駆動機構MDは、基板Sと型Mとの相対位置が調整されるように基板駆動機構SDおよび型駆動機構MDの少なくとも一方を駆動する駆動機構DRVを構成する。駆動機構DRVによる相対位置の調整は、基板Sの上のインプリント材IMに対する型Mの接触、および、硬化したインプリント材IM(硬化物のパターン)からの型Mの分離のための駆動を含む。
【0015】
基板駆動機構SDは、基板Sを保持する基板保持部SH、基板保持部SHを支持する基板ステージSS、および、基板ステージSSを駆動することによって基板Sを駆動する基板駆動アクチュエータSMを含みうる。基板駆動機構SDは、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。基板Sの位置および姿勢の制御は、計測器29によって基板Sの位置および姿勢を計測し、その計測の結果に基づいてなされうる。
【0016】
型駆動機構MDは、型Mを保持する型保持部MH、および、型保持部MHを駆動することによって型Mを駆動する型駆動アクチュエータMMを含みうる。型保持部MHは、型Mを変形させる型変形機構を含みうる。該型変形機構は、例えば、型Mの側面に力を加えることによって型Mを変形させうる。型駆動機構MDは、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。型Mは、インプリント処理によって基板Sの上のインプリント材IMに転写すべきパターンが形成されたパターン領域を有する。型駆動機構MDは、型Mの裏面側(パターン領域PRの反対側)の空間SPの圧力を調整することによって、型M(のパターン領域PR)を基板Sに向かって凸形状に変形させたり、平坦にしたりする圧力調整器PCを含みうる。型Mを基板Sに向かって凸形状に変形させた状態で、基板Sの上のインプリント材IMとパターン領域PRとの接触が開始され、その後、インプリント材IMとパターン領域PRとの接触領域が徐々に拡大するように圧力調整器PCが空間SPの圧力を調整しうる。
【0017】
インプリント装置1は、基板Sの上にインプリント材IMを供給、塗布あるいは配置するディスペンサ5を備えうる。しかし、インプリント材IMは、インプリント装置1の外部装置において基板Sの上に供給、塗布あるいは配置されてもよい。
【0018】
インプリント装置1は、硬化工程において、基板Sと型M(のパターン領域PR)との間のインプリント材IMに対してインプリント材IMを硬化させるための光9(硬化光)を光路LPに照射するための光源(硬化光源)2を備えうる。光路LPは、型Mおよびインプリント材IMを介して基板Sに至る光路である。インプリント装置1は、更に、基板Sに設けられたアライメントマークおよび型Mに設けられたアライメントマークとの相対位置を検出する検出器12を備えうる。検出器12は、基板Sに設けられたアライメントマークおよび型Mに設けられたアライメントマークを検出光15で照明し、これらのアライメントマークによって形成される像を撮像しうる。検出光15も、光路LPに照射される光として理解される。
【0019】
インプリント装置1は、更に、基板Sの上のインプリント材IMと型M(のパターン領域PR)との接触状態、あるいは、基板Sとの型M(のパターン領域PR)との間の空間へのインプリント材IMの充填状態を検出するための撮像部6を備えうる。撮像部6は、その他、基板Sと型Mとの間の異物を検出するためにも使用されうる。撮像部6は、基板S、インプリント材IMおよび型Mで構成される積層構造を観測光18で照明し、この積層構造によって形成される像を撮像しうる。観測光18も、光路LPに照射される光として理解される。
【0020】
インプリント装置1は、更に、変調光21を光路LPに照射する光源ユニット20(光照射部)を備えうる。後述のように、光源ユニット20は、空間光変調器を含み、この空間光変調器によって変調された光である変調光21を光路LPに照射する。変調光21は、インプリント材IMを部分的に硬化させる第1変調光および基板Sと型Mとのアライメントのために基板Sを変形させる第2変調光を含みうる。光路LPに第1変調光が照射されるときは、光路LPに第2変調光が照射されず、光路LPに第2変調光が照射されるときは、光路LPに第1変調光が照射されないことが好ましい。ただし、変調光21が光路LPに照射される期間における十分に短い期間であれば、第1変調光および第2変調光の双方が光路LPに照射されてもよい。第1変調光および第2変調光は、波長域が互いに重複しない光である。あるいは、第1変調光および第2変調光は、互いに異なる波長にピークを有する光でありうる。
【0021】
第1変調光は、インプリント材IMを硬化させる波長、換言すると、インプリント材IMの粘性(粘弾性)を高める波長を有する。第1変調光は、基板Sのパターン形成領域の任意の箇所におけるインプリント材IMの粘性を高め、これによってインプリンント材IMによる基板Sと型Mとの結合力を高めるように変調された光でありうる。このような第1変調光の照射(第1光照射)は、制振露光と呼ぶことができ、アライメント工程において実行され、アライメント精度を向上させうる。インプリント材IMによる基板Sと型Mとの結合力が弱い状態(第1変調光の照射前)では、基板Sおよび型Mは、外乱等によって個別に振動しうる(つまり、基板Sと型Mとの間に相対的な振動が大きい)。インプリント材IMへの第1変調光の照射によりインプリント材IMの粘性を部分的に高め、基板Sと型Mとの結合力を高めることによって、基板Sと型Mとの間の相対的な振動を低減し、アライメントの収束性を向上させることができる。一例において、基板Sと型Mと間の相対移動によって発生するせん断力の大きさが0.5~1.0Nの範囲内になるように第1変調光の照射によってインプリント材IMの粘性(粘弾性)を高めることが、アライメントの収束性を向上させるために効果的である。
【0022】
第2変調光は、基板S、より詳しくは基板Sのパターン形成領域(ショット領域)を目標形状に変形させる光強度分布(照度分布)が基板Sの形成されるように変調された光でありうる。基板Sに対する第2変調光の照射(第2光照射)によって、基板Sに温度分布が形成され、この温度分布によって基板Sのパターン形成領域が目標形状に近づくように変形する。基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとのアライメントが完了した時点で硬化工程(硬化光源2によってインプリント材IMに硬化光が照射され、インプリント材IMが硬化される工程)が実行される。第2変調光は、インプリント材IMを硬化させない波長を有する光である。
【0023】
硬化光源2、検出器12、撮像部6および光源ユニット20のそれぞれの光軸は、光路LPを共有する。これを実現するために、合成ミラー22、ダイクロイックミラー23、24が設けられている。合成ミラー22は、観測光18を透過し、変調光21を反射する。ダイクロイックミラー23は、観測光18および変調光21を透過し、検出光15を反射する。ダイクロイックミラー24は、観測光18、変調光21および検出光15を透過し、硬化光9を反射する。
【0024】
インプリント装置1は、更に、上記の基板駆動機構SD、型駆動機構MD、圧力調整器PC、ディスペンサ5、計測器29、硬化光源2、検出器12、撮像部6および光源ユニット20等を制御する制御部7を備えうる。制御部7は、例えば、FPGA(FieldProgrammable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用又は専用のコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0025】
図2には、光源ユニット20の構成例が示されている。光源ユニット20は、第1変調光を生成するための第1波長域を有する第1光を発生する第1光源121と、第2変調光を生成するための第2波長域を有する第2光を発生する第2光源122とを含みうる。また、光源ユニット20は、第1光を変調した第1変調光および第2光を変調した第2変調光を発生する空間光変調器としてのDMD(デジタルミラーデバイス)133を含みうる。また、光源ユニット20は、第1光源121からの第1光および第2光源122からの第2光を空間光変調器としてのDMD133の入射させる光学系(125、126、111、132)を含みうる。
【0026】
一例において、光源ユニット20は、照明部120と、変調部130とを光ファイバ110で接続して構成されうる。照明部120は、第1光源121、第2光源122、第1コントローラ123、第2コントローラ124、ミラー125、126を含みうる。第1光源121が発生する第1光の光路と第2光源122が発生する第2光の光路とはミラー125、126によって共通化され、光ファイバ110の入射部111に接続されている。光ファイバ110の射出部112は、変調部130に接続されている。
【0027】
第1コントローラ123は、制御部7からの指令に従って第1光源121を制御する。第1光源121の制御は、第1光源121の点灯および消灯の制御を含みうる。第1光源121の制御は、更に、第1光源121が発生する第1光の強度の制御を含んでもよい。例えば、第1コントローラ123は、制御部7からの指令値に従った電流値を有する電流を第1光源121に供給する定電流回路を含みうる。あるいは、第1コントローラ123は、指令値に従って第1光源121を駆動する駆動回路と、第1光源121が発生する第1光の一部を受光する光電変換センサとを含み、該光電変換センサの出力を該駆動回路にフィードバックする構成を有しうる。
【0028】
第2コントローラ124は、制御部7からの指令に従って第2光源122を制御する。第2光源122の制御は、第2光源122の点灯および消灯の制御を含みうる。第2光源122の制御は、更に、第2光源122が発生する第2光の強度の制御を含んでもよい。例えば、第2コントローラ124は、制御部7からの指令値に従った電流値を有する電流を第2光源122に供給する定電流回路を含みうる。あるいは、第2コントローラ124は、指令値に従って第2光源122を駆動する駆動回路と、第2光源122が発生する第2光の一部を受光する光電変換センサとを含み、該光電変換センサの出力を該駆動回路にフィードバックする構成を有しうる。
【0029】
制御部7は、第1光源121および第2光源122を個別に制御しうる。制御部7は、例えば、第1光源121および第2光源122の一方を点灯させるときは他方を消灯させるように第1光源121および第2光源122を制御しうる。他の観点において、第1光源121からの第1光および第2光源122からの第2光の一方が空間光変調器(DMD133)に入射しているときは、第1光および第2光の他方は該空間光変調器に入射しない構成が採用されうる。これは、例えば、第1、第2コントローラ123、124による第1、第2光源121、122の制御、または、第1光および第2光の一方を選択的に遮断する機構によって実現されうる。
【0030】
ここで、硬化光9、検出光15、観測光18、変調光21(第1変調光、第2変調光)に対する波長の割り当ての一例を説明する。硬化光9は、インプリント材IMを硬化させる光であり、一例において、300nm~380nmの範囲内に任意の波長域を有しうるが、300nm以下の波長域を有してもよい。検出光15は、アライメントマークを検出するための光であり、一例において、550nm~750nmの波長域を有する。観測光18は、インプリント材IMと型Mとの接触状態および基板Sと型Mとの間の空間へのインプリント材IMの充填状態等を観察するための光である。観測光18は、例えば、400nm~480nmの波長域から、硬化光9および検出光15の波長域と重複しない波長域が選択されうる。変調光21は、インプリント材IMを硬化させる波長域を有する第1変調光と、インプリント材IMを硬化させない波長域を有する第2変調光を含む。
【0031】
変調光21は、観測光18と同様の波長域、例えば、400nm~480nmの波長域から硬化光9および検出光15の波長域と重複しないように選択されうる。第1変調光は、第1光源121が発生した第1光を変調部130(DMD133)が変調することによって生成される。第2変調光は、第2光源122が発生した第2光を変調部130(DMD133)が変調することによって生成される。インプリント材IMが硬化する波長域の上限から、第1光源121が発生する第1光および第2光源122が発生する第2光の波長を決定することができる。例えば、インプリント材IMが硬化する波長域の上限が440nmであれば、第1光源121が発生する第1光の波長を410nm程度とし、第2光源122が発生する第2光の波長を460nm程度とすることができる。第1光源121および第2光源122は、波長幅が狭い単波長光を発生する光源であることが好ましく、例えば、レーザーダイオードが適している。また、レーザーダイオードは、高速に点灯、消灯を切り替えることができる点で優れている。
【0032】
光ファイバ110を介して変調部130に伝送された光は、光学系132を介して、空間光変調器としてのDMD133に入射する。光学系132は、例えば、集光光学系、および、該集光光学系からの光を均一化してDMD133を照明する照明系(例えば、マイクロレンズアレイ)を含みうる。DMD133は、光を反射する複数のマイクロミラー(不図示)と、該複数のマイクロミラーをそれぞれ駆動するアクチュエータとを含む。各アクチュエータは、制御部7からの指令に従って、対応するマイクロミラーを複数のマイクロミラーの配列面に対して-12度(ON状態)または+12度(OFF状態)の角度に制御する。ON状態のマイクロミラーで反射された光は、変調光として、DMD133と基板Sとを光学系に共役関係にする光学系134(投影光学系)を介して基板Sの上に像を形成する。OFF状態のマイクロミラーで反射された光は、基板Sに到達しない方向に反射される。全てのマイクロミラーをON状態にしたときに基板Sに投影される領域(最大照射領域)は、基板Sの最大パターン形成領域のサイズより大きい。DMD133に代えて、他の空間光変調器、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)が採用されてもよい。
【0033】
変調部130を構成している光学系は、インプリント材IMを硬化させる波長の第1光(第1変調光)およびインプリント材IMを硬化させない波長の第2光(第2変調光)の双方を透過させる必要がある。また、一般的なDMDでは、420nm以下の波長では、マイクロミラーアレイに照射可能な最大光強度が低下し、更に、紫外光と可視光との境界である400nm付近では、マイクロミラーアレイに照射可能な最大光強度が1/1000程度に極端に低下する。そこで、波長幅が短いレーザーダイオード等を使って、インプリント材IMが硬化する波長域の上限付近に第1光源121の波長および第2光源122の波長を近づけることが望ましい。
【0034】
制御部7は、例えば、基板Sの表面上に形成すべき光強度分布(照度分布)データに基づいて、DMD133の各マイクロミラーのON状態およびOFF状態の切り替えを制御する制御データを生成しうる。光強度分布データは、例えば、各マイクロミラーをON状態にする時間に関する情報および各マイクロミラーをOFF状態にする時間に関する情報を含みうる。ON状態のマイクロミラーが多いほど、また、ON状態が長いほど、基板Sのパターン形成領域に大きな露光量を与えることができる。
【0035】
制御部7は、第1光を変調して第1変調光を発生するための光強度分布データと、第2光を変調して第2変調光を発生するための光強度分布データとを格納するメモリを含みうる。第1光を変調して第1変調光を発生するための光強度分布データは、基板Sのパターン形成領域の任意の箇所におけるインプリント材IMの粘性を高めてインプリンント材IMを介した基板Sと型Mとの結合力を高めるための光強度分布データを含みうる。
【0036】
変調部130を第1光源121および第2光源122で共有する構成は、変調部130あるいは光源ユニット20を小型化すること、これによりインプリント装置1の構造を単純化するために有利である。これは、光路LPの付近に変調部130を配置することを容易にする。照明部120と変調部130とを相互に分離した構成は、熱源となる照明部120をインプリント装置1の光路LPから遠い位置に配置するために有利である。しかし、光ファイバ110を使用せず、照明部120と変調部130とを近接して配置してもよい。あるいは、変調部130に照明部120を組み込んでもよい。また、第1光源121と変調部130とを第1光ファイバで接続し、第2光源122と変調部130とを第2光ファイバで接続してもよく、この場合、第1光ファイバから出る第1光の光路と第2光ファイバから出る第2光の光路とが結合されうる。
【0037】
図3には、インプリント装置1によって実行されるインプリント処理における光源ユニット20の従来動作例が示されている。インプリント処理は、基板Sの上のインプリント材IMと型Mとを接触させる接触工程と、該接触工程の後に基板Sと型Mとのアライメントを行うアライメント工程とを含みうる。インプリント処理は、アライメント工程の後にインプリント材IMを硬化させる硬化工程と、硬化したインプリント材IMから型Mを分離させる分離工程とを更に含みうる。接触工程は、駆動機構DRVによって基板Sの上のインプリント材IMと型M(のパターン領域PR)とを接触させる工程である。この接触工程は、例えば、基板Sの上のインプリント材IMと凸形状に変形された型Mのパターン領域PRとの接触の開始によって開始し、パターン領域PRの全域が平坦にされることによって終了する期間でありうる。インプリント処理は、接触工程に付随する工程として、駆動機構DRVによって基板Sの上のインプリント材IMと型Mとを相互に近づける駆動工程を有する。
図3には、インプリント処理の各工程のタイミングが時間軸に沿って示されている。
【0038】
アライメント工程では、検出器12によって検出される結果に基づいて、基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとがアライメントされるように駆動機構DRVによって基板Sおよび型Mの少なくとも一方が駆動される。また、アライメント工程では、検出器12によって検出される結果に基づいて、基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとがアライメントされるように型駆動機構によって型Mが変形されうる。また、アライメント工程では、検出器12によって検出される結果に基づいて、基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとがアライメントされるように、後述の加熱工程が実行されうる。
【0039】
アライメント工程と並行して充填工程が進行する。充填工程では、基板Sと型Mのパターン領域PRとの間のインプリント材IMがパターン領域PRのパターンを構成する凹部に充填され、また、基板Sと型Mのパターン領域PRとの間に存在する空隙が消失する。一例において、充填工程がアライメント工程に先行して開始しうる。
図3には、更に、光源ユニット20のDMD133による光変調のタイミングが示されている。DMD133による光変調は、予備露光工程Aと加熱工程Bとにおいて異なる態様で行われる。予備露光工程Aでは、インプリント材IMを硬化させる波長域の光である第1光を変調して生成される第1変調光が光路LPに照射される。予備露光工程Aでは、基板Sのパターン形成領域の所定の箇所におけるインプリント材IMの粘性が高められる(制振露光)。インプリント材IMの粘性が部分的に高められることで基板Sと型Mとの結合力が増す。これにより基板Sと型Mとの間の相対的な振動が低減される。加熱工程Bでは、インプリント材IMを硬化させない波長域の光である第2光を変調して生成される第2変調光が光路LPに照射される。予備露光工程Aの期間(タイミング、時間長さ)は、所望の振動の低減度合いが得られるように適宜決定される。加熱工程Bでは、基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとのアライメントのために、基板Sのパターン形成領域に第2変調光を照射することで基板Sを加熱し、基板Sのパターン形成領域が変形される。加熱工程Bの期間(タイミング、時間長さ)は、硬化工程において硬化光源2からの硬化光9によってインプリント材IMを硬化させる時点において基板Sのパターン形成領域が目標形状になるように決定されうる。
【0040】
予備露光工程Aにおいて、インプリント材IMの粘弾性を最大限に高めてしまうと、基板Sと型Mとの結合力が過剰に高まるため、その後に実行される加熱工程Bにおいて、基板Sのパターン形成領域の変形が目標通り行われなくなる可能性がある。
【0041】
図3には、予備露光工程Aの区間におけるインプリント材IMの粘弾性の変化の例が示されている。この例では、予備露光工程Aにおいて、インプリント材IMの粘弾性が最大限まで高められるものとする。
図3には、更に、加熱工程Bの区間における基板Sのパターン形成領域の熱変形量の変化の例が示されている。この例では、基板Sのパターン形成領域の実際の熱変形量が、目標熱変形量の50%程度に留まることが示されている。この結果、基板Sのパターン形成領域と型Mのパターン領域PRとの正確なアライメントが阻害される。
【0042】
図4には、実施形態におけるインプリント処理の例が示されている。本実施形態においては、前述したように、光源ユニット20(光照射部)は、インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、基板を変形させるための第2の光照射とを行うことができる。本実施形態において、制御部7は、アライメント工程において、インプリント材IMの粘弾性および基板Sの変形量に基づいて、第1の光照射と第2の光照射との切り替えを行う。
【0043】
図4に示されるように、アライメント工程において、予備露光工程Aが実行される。予備露光工程Aの実行により第1変調光が照射され、インプリント材IMの粘弾性は徐々に増加する。予備露光工程Aにおいて、制御部7は、インプリント材IMの粘弾性の状態を監視している。前述した通り、予備露光工程Aで照射される第1変調光は、基板Sのパターン形成領域のインプリント材IMの粘弾性を高め、基板Sと型Mとの間の相対的な振動を低減する。粘弾性が高まるほど、基板Sの振動量は小さくなる。インプリント材IMの粘弾性と基板Sの振動量の関係の一例を
図5に示す。制御部7は、基板Sまたは基板Sを保持して搬送する基板ステージSSの位置(振動量)を計測する計測器29による計測の結果と、
図5に示される予め得られた関係とに基づき、インプリント材IMの粘弾性を算出しうる。あるいは、制御部7は、撮像部6による撮像で得られた基板S、インプリント材IMおよび型Mの積層構造の画像に基づいて、インプリント材IMの粘弾性を算出しうる。
【0044】
また、予備露光工程Aでは、予備露光工程Aを終了させるための判断基準として、インプリント材IMの粘弾性の閾値Sa(第1閾値)が設定される。閾値Saは、例えば、インプリント材IMの粘弾性が最大限に高まる直前の、基板Sと型Mとの結合力が比較的緩い状態の粘弾性の値に設定される。制御部7は、監視により得られたインプリント材IMの粘弾性が閾値Saを超えたタイミングで、予備露光工程Aを終了し、加熱工程Bを開始する。すなわち、制御部7は、第1の光照射の実行中に得られるインプリント材の粘弾性が閾値を超えたことに応じて、第1の光照射から第2の光照射への切り替えを行う。加熱工程Bの実行により第2変調光が照射され、基板Sのパターン形成領域の熱変形量は徐々に増加する。加熱工程Bでは、制御部7は、基板Sのパターン形成領域の熱変形量の状態を監視している。制御部7は、基板Sに設けられたアライメントマークおよび型Mに設けられたアライメントマークとの相対位置を検出する検出器12による計測結果に基づいて、基板Sのパターン形成領域の熱変形量を算出する。
【0045】
図6(a)には、型Mおよび基板Sのパターン形成領域それぞれの対応する四隅にアライメントマークを設けられた例が示されている。
図6(b)には、検出器12が基板Sに設けられたアライメントマークおよび型Mに設けられたアライメントマークを検出することが示されている。加熱工程Bの実行により基板Sのパターン形成領域が倍率方向に熱変形が発生した場合には、
図6(c)の状態が検出されうる。また、加熱工程Bの実行により基板Sのパターン形成領域がシフト方向に熱変形が発生した場合には、
図6(d)の状態が検出されうる。
図6(c)、
図6(d)では、Y方向の熱変形を測定する例を示したが、同時にX方向の熱変形も測定される。これらの結果に基づいて、パターン形成領域の熱変形量が算出されうる。
【0046】
加熱工程Bでは、加熱工程Bを終了させるための判断基準として、基板Sのパターン形成領域の熱変形量の閾値Sb(第2閾値)設定される。閾値Sbは、例えば、最大変形量の90%に設定されうる。制御部7は、基板Sのパターン形成領域の熱変形量が閾値Sbを超えたタイミングで、加熱工程Bを終了し、再び予備露光工程Aを開始する。すなわち、制御部7は、第2の光照射の実行中に得られる基板の変形量が閾値Sbを超えたことに応じて、第2の光照射から第1の光照射への切り替えを行う。
【0047】
再度実行される予備露光工程Aにおいて、インプリント材の粘弾性が最大限まで高められる。この予備露光工程中は加熱工程Bがオフにされるため、基板S熱変形量は減少しうる。
【0048】
2回目の予備露光工程Aにおいてインプリント材の粘弾性が最大限にまで高められた後、予備露光工程Aが終了し、再び加熱工程Bが実行される。予備露光工程Aから加熱工程Bに切り替えられた時点ではインプリント材の粘弾性が最大限まで高まっているため、基板Sのパターン形成領域の熱変形量は目標変形量よりは小さくなるものの、最終的に生成される熱変形量の誤差を最低限に抑えることができる。
【0049】
<第2実施形態>
図7には、予備露光工程Aにおける、経過時間に対するインプリント材IMの粘弾性の変化の例が示されている。このような関係が既知であれば、当該関係に基づいて、粘弾性が閾値Saに到達するタイミングTaを予め求めておくことができる。この場合、
図9に示すように、予備露光工程Aが開始されてからタイミングTaが経過した時点で予備露光工程Aを終了し加熱工程Bに移行するようにしてもよい。このように、第2実施形態では、制御部7は、アライメント工程において、第1の光照射の継続時間に基づいて第1の光照射から第2の光照射への切り替えを行う。
【0050】
図8には、加熱工程Bにおける、経過時間に対する基板Sのパターン形成領域の熱変形量の変化の例が示されている。このような関係が既知であれば、当該関係に基づいて、熱変形量が閾値Sbに到達するタイミングTbを予め求めておくことができる。この場合、
図9に示すように、加熱工程Bが開始されてからタイミングTbが経過した時点で加熱工程Bを終了し2回目の予備露光工程Aに移行するようにしてもよい。このように、第2実施形態では、制御部7は、アライメント工程において、第2の光照射の継続時間に基づいて、第2の光照射から第1の光照射への切り替えを行う。
【0051】
<第3実施形態>
予備露光工程Aと加熱工程Bの切り替え、すなわち第1の光照射と第2の光照射との切り替え、が繰り返し行われる回数は特定の回数に限定されない。制御部7は、アライメント工程において、予備露光工程Aと加熱工程Bとの切り替えを複数回繰り返し行うことができる。
図10には、予備露光工程Aと加熱工程Bが3回以上繰り返される工程図が示されている。また、
図10に示されるように、予備露光工程Aより先に加熱工程Bが実行されてもよい。さらに、粘弾性の閾値Sa(第1閾値)および熱変形量の閾値Sb(第2閾値)については、各回の予備露光工程Aおよび加熱工程Bの切り替えのために、独立した値が設定されてもよい。例えば、各回の予備露光工程Aから加熱工程Bへの切り替えのために閾値Sa1、Sa2、...、SaNが設定され、各回の加熱工程Bから予備露光工程Aへの切り替えのために閾値Sb1、Sb2、...、SbMが設定されうる(N,Mは、任意の自然数)。それらの閾値に基づいて、予備露光工程Aと加熱工程Bの切り替えが行われうる。
【0052】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0053】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0054】
次に、
図11を参照して、物品製造方法について説明する。工程SAでは、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0055】
工程SBでは、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。工程SCでは、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0056】
工程SDでは、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0057】
工程SEでは、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。工程SFでは、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0058】
本明細書の開示は、少なくとも以下のインプリント装置、および物品製造方法を含む。
(項目1)
基板の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と型とのアライメントを行うアライメント工程と、前記アライメント工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部と、
前記光照射部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記インプリント材の粘弾性および前記基板の変形量に基づいて、前記第1の光照射と前記第2の光照射との切り替えを行う、
ことを特徴とするインプリント装置。
(項目2)
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記第1の光照射の実行中に得られる前記粘弾性が第1閾値を超えたことに応じて、前記第1の光照射から前記第2の光照射への切り替えを行う、ことを特徴とする項目1に記載のインプリント装置。
(項目3)
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記第2の光照射の実行中に得られる前記変形量が第2閾値を超えたことに応じて、前記第2の光照射から前記第1の光照射への切り替えを行う、ことを特徴とする項目2に記載のインプリント装置。
(項目4)
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記切り替えを複数回繰り返し行う、ことを特徴とする項目3に記載のインプリント装置。
(項目5)
前記第1閾値および前記第2閾値について、各回の前記切り替えのために独立した値が設定される、ことを特徴とする項目4に記載のインプリント装置。
(項目6)
前記基板または前記基板を保持して搬送する基板ステージの振動量を計測する計測器を更に有し、
前記制御部は、前記計測器による計測で得られた振動量に基づいて前記粘弾性を算出する、
ことを特徴とする項目1から5のいずれか1項目に記載のインプリント装置。
(項目7)
前記基板の上の前記インプリント材を撮像する撮像部を更に有し、
前記制御部は、前記撮像部による撮像で得られた前記インプリント材の画像に基づいて前記粘弾性を算出する、
ことを特徴とする項目1から5のいずれか1項目に記載のインプリント装置。
(項目8)
前記基板に設けられたマークと前記型に設けられたマークとの相対位置を検出する検出器を更に有し、
前記制御部は、前記検出器により検出された前記相対位置に基づいて前記変形量を算出する、
ことを特徴とする項目1から7のいずれか1項目に記載のインプリント装置。
(項目9)
基板の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と型とのアライメントを行うアライメント工程と、前記アライメント工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させる硬化工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部と、
前記光照射部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記アライメント工程において、前記第1の光照射の継続時間に基づいて、前記第1の光照射から前記第2の光照射への切り替えを行い、前記第2の光照射の継続時間に基づいて、前記第2の光照射から前記第1の光照射への切り替えを行う、
ことを特徴とするインプリント装置。
(項目10)
前記光照射部は、
前記インプリント材を部分的に硬化させる第1光を発生する第1光源と、
前記アライメントのために前記基板を変形させる第2光を発生する第2光源と、
前記第1光を変調した第1変調光および前記第2光を変調した第2変調光を発生する空間光変調器と、
を含む、ことを特徴とする項目1から9のいずれか1項目に記載のインプリント装置。
(項目11)
前記空間光変調器は、デジタルミラーデバイスを含む、ことを特徴とする項目10に記載のインプリント装置。
(項目12)
項目1から10のいずれか1項目に記載のインプリント装置により基板の上にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された前記基板を加工する工程と、
を含み、前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【0059】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0060】
1:インプリント装置、20:光源ユニット、M:型、S:基板、IM:インプリント材、121:第1光源、122:第2光源、133:DMD、130:変調部
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と前記型とのアライメントを行った後に前記インプリント材を光照射によって硬化させるインプリント装置であって、
前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部と、
前記光照射部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記アライメントにおいて、前記インプリント材の粘弾性又は前記基板の変形量に基づいて前記第1の光照射と前記第2の光照射との切り替えを行う、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記アライメントにおいて、前記第1の光照射の実行中に得られる前記粘弾性が第1閾値を超えたことに応じて、前記第1の光照射から前記第2の光照射への切り替えを行う、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記アライメントにおいて、前記第2の光照射の実行中に得られる前記変形量が第2閾値を超えたことに応じて、前記第2の光照射から前記第1の光照射への切り替えを行う、ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記アライメントにおいて、前記切り替えを複数回行う、ことを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第1閾値と前記第2閾値は、各回の前記切り替え毎に値が設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記基板または前記基板を保持して搬送する基板ステージの振動量を計測する計測器を更に有し、
前記制御部は、前記振動量に基づいて前記粘弾性を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記インプリント材を撮像する撮像部を更に有し、
前記制御部は、前記撮像部による撮像で得られた前記インプリント材の画像に基づいて前記粘弾性を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記基板に設けられたマークと前記型に設けられたマークとの相対位置を検出する検出器を更に有し、
前記制御部は、前記検出器により検出された前記相対位置に基づいて前記変形量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項9】
基板上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と前記型とのアライメントを行った後に前記インプリント材を光照射によって硬化させるインプリント装置であって、
前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部と、
前記光照射部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記アライメントにおいて、前記第1の光照射の継続時間に基づいて、前記第1の光照射から前記第2の光照射への切り替えを行い、前記第2の光照射の継続時間に基づいて、前記第2の光照射から前記第1の光照射への切り替えを行う、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項10】
前記光照射部は、
前記インプリント材を部分的に硬化させる第1光を発生する第1光源と、
前記アライメントのために前記基板を変形させる第2光を発生する第2光源と、
前記第1光を変調した第1変調光および前記第2光を変調した第2変調光を発生する空間光変調器と、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記空間光変調器は、デジタルミラーデバイスを含む、ことを特徴とする請求項10に記載のインプリント装置。
【請求項12】
基板上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と前記型とのアライメントを行うアライメント工程と、
前記アライメント工程の後に前記インプリント材を光照射によって硬化させて前記基板にパターンを形成する形成工程と、
前記パターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、
を含み、
前記アライメント工程において、前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記基板を変形させるための第2の光照射とを行い、
前記第1の光照射の継続時間に基づいて前記第1の光照射から前記第2の光照射への切り替えを行い、前記第2の光照射の継続時間に基づいて前記第2の光照射から前記第1の光照射への切り替えを行う、ことを特徴とする物品製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一側面によれば、基板上のインプリント材に型を接触させた状態で前記基板と前記型とのアライメントを行った後に前記インプリント材を光照射によって硬化させるインプリント装置であって、前記インプリント材を部分的に硬化させるための第1の光照射と、前記基板を変形させるための第2の光照射とを行う光照射部と、前記光照射部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記アライメントにおいて、前記インプリント材の粘弾性又は前記基板の変形量に基づいて前記第1の光照射と前記第2の光照射との切り替えを行う、ことを特徴とするインプリント装置が提供される。