IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-放射線撮像装置 図1
  • 特開-放射線撮像装置 図2
  • 特開-放射線撮像装置 図3
  • 特開-放射線撮像装置 図4
  • 特開-放射線撮像装置 図5
  • 特開-放射線撮像装置 図6
  • 特開-放射線撮像装置 図7
  • 特開-放射線撮像装置 図8
  • 特開-放射線撮像装置 図9
  • 特開-放射線撮像装置 図10
  • 特開-放射線撮像装置 図11
  • 特開-放射線撮像装置 図12
  • 特開-放射線撮像装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168218
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】放射線撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20241128BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20241128BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61B6/00 300S
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084703
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上畠 海斗
(72)【発明者】
【氏名】福島 隆史
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188CC28
2G188DD11
2G188DD12
2G188DD42
2G188DD47
4C093AA01
4C093CA15
4C093CA50
4C093EB13
4C093EB17
4C093EB20
(57)【要約】
【課題】
放射線撮像装置を被検体の下に挿入する際の挿入性を良好に保ち、かつ撮像時における被検体の負担を軽減するのに有利な放射線撮像装置を提供すること。
【解決手段】
被検体を通過した放射線を検出するための放射線検出パネルと、前記放射線検出パネルを内包する筐体と、前記筐体の剛性を変更するための第一部材とを有し、前記第一部材が操作されることにより前記筐体の剛性が変更される。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を通過した放射線を検出するための放射線検出パネルと、前記放射線検出パネルを内包する筐体と、前記筐体の剛性を変更するための第一部材と、を有する放射線撮像装置であって、
前記第一部材が操作されることにより前記筐体の剛性が変更されることを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記被検体を通過した放射線が入射する入射面と、前記入射面の反対側の背面と、前記入射面の縁部と前記背面の縁部との間の側面と、を有し、
前記第一部材は棒状部材であり、少なくとも前記側面と前記放射線検出パネルとの間に前記棒状部材が前記側面に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する互いに異なる2方向について剛性が異なる部分を有する請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する断面において異なる断面2次モーメントを有することを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記棒状部材は、剛性の異なる少なくとも2つの部材を含むことを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する断面において長辺と短辺とを有することを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記放射線撮像装置は前記第一部材を操作するための操作部を有し、前記第一部材は前記操作部により回転させられることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記操作部がアクチュエータを含むことを特徴とする請求項7に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記筐体は、前記被検体を通過した放射線が入射する入射面と、前記入射面の反対側の背面と、前記入射面の縁部と前記背面の縁部との間の側面と、を有し、
前記第一部材は棒状部材であり、少なくとも前記背面と前記放射線検出パネルとの間に前記棒状部材が複数配置されたことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する互いに異なる2方向について剛性が異なる部分を有する請求項9に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する断面において異なる断面2次モーメントを有することを特徴とする請求項10に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記棒状部材は、剛性の異なる少なくとも2つの部材を含むことを特徴とする請求項10に記載の放射線撮像装置。
【請求項13】
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する断面において長辺と短辺とを有することを特徴とする請求項10に記載の放射線撮像装置。
【請求項14】
前記放射線撮像装置は前記第一部材を操作するための操作部を有し、前記第一部材は前記操作部により回転させられることを特徴とする請求項10に記載の放射線撮像装置。
【請求項15】
前記操作部がアクチュエータを含むことを特徴とする請求項14に記載の放射線撮像装置。
【請求項16】
前記第一部材は、前記側面を有する壁部の前記側面の長さに沿って設けられた挿入孔又は溝部に配置されることを特徴とする請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項17】
前記第一部材は、着脱可能であることを特徴とする請求項16に記載の放射線撮像装置。
【請求項18】
前記筐体は、前記被検体を通過した放射線が入射する入射面と、前記入射面の反対側の背面と、前記入射面の縁部と前記背面の縁部との間の側面と、を有し、
前記第一部材は、装着したときに前記背面又は前記側面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項19】
前記第一部材は前記筐体に対して、前記筐体に設けられた溝部へスライドさせる機構、磁力を用いて吸着させる機構又は前記筐体の取り付け部へはめ込む機構のうちの少なくとも一つの機構により着脱可能に固定されることを特徴とする請求項18に記載の放射線撮像装置。
【請求項20】
前記第一部材は、金属材料または炭素繊維を含む材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項21】
前記筐体は、前記被検体を通過した放射線が入射する入射面と、前記入射面の反対側の背面と、前記入射面の縁部と前記背面の縁部との間の側面と、を有し、
前記入射面及び前記背面の剛性は、前記側面の剛性より低いことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項22】
前記放射線検出パネルが可撓性を有することを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体センサを使用した放射線撮像装置がある。放射線撮像装置は主に、被検体を通過した放射線を検出し、電気信号へ変換する放射線検出パネルと、前記放射線検出パネルを内包する筐体とで構成されている。
【0003】
放射線検出パネルを内包する筐体には、筐体の撓みを許容できるような設計がなされる場合がある(特許文献1、2、4)。また放射線検出パネルの筐体により放射線検出パネルの撓みの影響を抑制するような設計がなされていたものもある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-217769
【特許文献2】特開2016-142635
【特許文献3】特開2019-184262
【特許文献4】CN109887941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射線撮像をする場合に、患者の下に放射線撮像装置を挿入して撮像を行うことがある。このような撮像時において放射線撮像装置の挿入後から撮像を行い、放射線撮像装置を引き抜くまでの間、患者は放射線撮像装置の上に載っている状態になる。そのため、放射線撮像装置の剛性が高いと患者は身体的苦痛を感じることがある。このような撮像を行う場合に、放射線撮像装置に可撓性を持たせることで、患者の身体的苦痛軽減を図ることができ患者の負担を軽減しうる。しかし可撓性のある放射線撮像装置は患者の下への挿入性が良好ではないことがある。本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、放射線撮像装置を被検体の下に挿入する際の挿入性を良好に保ち、かつ撮像時における被検体の負担を軽減するのに有利な放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放射線撮像装置は、被検体を通過した放射線を検出するための放射線検出パネルと、前記放射線検出パネルを内包する筐体と、前記筐体の剛性を変更するための第一部材と、を有し、前記第一部材が操作されることにより前記筐体の剛性が変更されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、放射線撮像装置を被検体の下に挿入する際の挿入性を良好に保ち、かつ撮像時における被検体の負担を軽減するのに有利な放射線撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】放射線撮像装置の構成を示す外観図。
図2】放射線撮像装置の構成を示す断面図。
図3】放射線撮像作業の手順を説明するフローチャート。
図4】実施形態1に係る放射線撮像装置の構成例を示す図。
図5】実施形態1に係る剛性を切り替えるための部材の構成例を示す図。
図6】実施形態1に係る放射線撮像装置の構成例を示す図。
図7】実施形態2に係る放射線撮像装置の構成例を示す図。
図8】実施形態3に係る放射線撮像装置の構成例を示す図。
図9】実施形態4に係る放射線撮像装置の構成例を示す図。
図10】実施形態5に係る放射線撮像装置の構成例を示す図。
図11】実施形態6に係る放射線撮像装置の構成例を示す図。
図12】実施形態6に係る剛性を持つ部材の構成例を示す図。
図13】実施形態6に係る剛性を持つ部材の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、本明細書では、X線だけでなく、α線、β線、γ線、粒子線、宇宙線なども、放射線に含まれるものとする。
【0011】
まず、図1及び図2により放射線撮像装置の構成例を説明する。ここでは放射線としてX線を例に説明する。図1に示すように、放射線撮像装置100では、放射線発生装置(図示外)からX線が放射され、被検体を透過したX線に基づいて放射線画像データを得ることができる。放射線撮像装置100からの放射線画像データは、外部の出力装置などに転送され、診断などに使用される。
【0012】
放射線撮像装置100の筐体は内部に放射線検出パネルを内包している。筐体は被検体を通過したX線が入射する入射面101と、入射面101とは反対側の背面102と、入射面の縁部と背面の縁部とを接続する側面103とを有する。なお、筐体を構成する部材は一体化されていても、複数部材に分かれていても構わない。
【0013】
側面103には、電源スイッチを含む各種スイッチ、バッテリ残量を示すLED、撮像準備状態を示すインジケータなどで構成されるユーザインターフェース104が設置されている。放射線撮像装置100は、後に説明する筐体の剛性を切り替えるための剛性切り替え部材を備えている。また筐体に、剛性切り替え部材を操作する操作部が備えられていてもよい。操作部が操作されることにより筐体の剛性を切り替えることができる。
【0014】
図2図1のA-A’における断面を示す。放射線撮像装置100の入射面101にはフロントカバー201が設置されており、背面102にはリアカバー202が設置されている。また、フロントカバー201とリアカバー202はフレーム203と防水構造204を介して結合されており、フレーム203は側面103を形成している。防水構造204は、接着剤による結合、防水ゴムとビス締結、またはフレーム203と共に防水性の高い一体部品として成形することによって形成することができる。
【0015】
フレーム203は複数部品に分割されていても構わない。放射線撮像装置100の内部には、衝撃吸収シート205、放射線検出パネル206、支持基台207、電気回路基板208などが設置されている。放射線検出パネル206の基材は、一定の変形(具体的には撓み)を許容できるようフィルムで構成するとよいが、薄肉ガラスを基材にすることにより変形を許容できるような構成にしても構わない。放射線検出パネル206に可撓性を持たせることにより、放射線検出パネル206が筐体の変形に対して壊れにくくなる。
【0016】
放射線検出パネル206は、その撓みに追従可能な部材で構成された支持基台207に貼り合わせられる。さらに、放射線検出パネル206とフロントカバー201の間には、放射線検出パネル206を衝撃から保護するために衝撃吸収シート205を配置している。また、支持基台207において、放射線検出パネル206を貼り付けた面と反対の面には、電気回路基板208やバッテリ(不図示)などが配置されうる。
【0017】
放射線撮像時において、被検体を通過したX線は、フロントカバー201を通過して放射線検出パネル206へ到達する。フロントカバー201を構成する材料を原子量の大きな物質で形成するとX線の透過量が低下してしまい、画質の低下につながったり、X線の線量を上げたりする必要が出てくる。従って、フロントカバー201を形成する材料は基本的に樹脂材料であるとよい。特に、重量や堅牢性の観点から炭素繊維(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)で構成されるとよい。フロントカバー201のCFRPの厚みは1.5mm以下がよい。1.0mm以下であるとさらによい。
【0018】
リアカバー202はX線透過量への影響が少ないため必ずしも樹脂材料である必要はないが、放射線検出パネル206および支持基台207の変形に追従できる材料がよい。具体的には、フロントカバー201と同様にCFRPを用いるとよい。
【0019】
医療機関では、放射線撮像装置100の上に患者の身体を載せた状態で撮像することがある。この撮像方法では、横たわっている患者の身体の下へ放射線撮像装置100を挿し込む方法が取られる。患者の下へ放射線撮像装置100を挿し込む際には放射線撮像装置100の筐体の剛性は高い方が取り回しがし易い。一方で、患者の身体の下に放射線撮像装置100が設置されている間、放射線撮像装置100の筐体の剛性が高いと、患者は身体的苦痛を感じる場合があり、患者の身体への負担になりうる。そこで、撮像手順に応じて剛性を切り替えるための操作がなされて、放射線撮像装置100の筐体の剛性を切り替える。
【0020】
具体的な撮像手順について、図3を用いて説明する。まず、ステップS301において、放射線撮像装置100の筐体は、剛性が高い状態へ切り替えられる。この操作により挿入方向における剛性を高くすることができる。ステップS302では、放射線撮像装置100を被検体である患者の身体側面の挿入箇所へあてがい、大体の挿入位置を確認する。ステップS303では、患者の下に敷かれているシーツ、またはタオルごと患者の身体を浮かせて、一気に患者の身体の下へ放射線撮像装置100を挿入する。その後、ステップS304において、放射線撮像装置100の位置が微調整され、位置が定まったら剛性を切り替える操作が行われる。この操作により放射線撮像装置100の筐体の剛性を高い状態から低い状態へ切り替える。これにより、放射線撮像装置100は患者の体重によって撓むことが可能となり、患者の身体的苦痛を軽減することができる。
【0021】
ステップS305では、ガイド光と呼ばれる、X線の照射野を示す可視光を照射して撮像位置の最終確認を行うようにしてもよい。続いてX線を照射して撮像を行う。最後に、ステップS306にて、再びシーツ、またはタオルを用いて患者の身体を浮かせて、放射線撮像装置100を引き抜く。以上のように、放射線撮像装置100の筐体の剛性を撮像手順に応じて切り替えることで、患者の身体の下への挿入性を損なうことなく、患者の身体的苦痛を軽減することが可能となる。なお、上記の撮像手順はあくまで一例であり、撮像装置の種類や患者の体型などによって、剛性が高い状態のまま撮像したり、剛性が低い状態のまま撮像したりしてもよい。以下では、放射線撮像装置100の筐体の剛性を切り替えのための具体的な例を説明する。
【0022】
(実施形態1)
図4により、筐体に設けられた操作部401を操作することにより、筐体内に設置された第一部材(以下、剛性部材という。)402を回転させることにより、筐体の剛性を変更させることができる例を説明する。
【0023】
操作部401はツマミのような形状をしており、ユーザが手動で回転動作を与えることで、剛性部材402を回転させて、筐体の剛性を切り替えることができる。操作部401は放射線撮像装置100の内部で剛性部材402に連結されており、操作部401と剛性部材402とで剛性切り替え部105を構成している。剛性部材402は筐体の側面に沿って、撮像を邪魔しないように、側面と放射線検出パネル206との間に配置されるとよい。剛性部材402は、操作部401と連動して回転する棒状の部品であり、棒状であり、長軸と直交する少なくとも2方向に対して異なる曲げ剛性を有する。
【0024】
剛性部材402は、例えば、断面2次モーメントの違いを利用して長軸と直交する方向に対する曲げ剛性の差を実現している。剛性部材402の形状は、図5(a)に示したように断面が長辺と短辺を有する長方形、I字型、楕円形などが挙げられる。剛性部材402を構成する材料としては、軽量かつ剛性の高いものであることが好ましく、Mg、Al、またはCFRP引抜成形材などが考えられる。図5(a)のような形状の場合は、剛性部材402を構成する材料は1種類でもよい。
【0025】
剛性部材402は必ずしも一部材で構成されている必要はなく、図5(b)に示したように2種類以上の異なる剛性を持つ部材の組み合わせで構成されても良い。剛性部材402を回転させる場合、放射線撮像装置100を挿し入れる方向における剛性を高くするためには剛性部材402の剛性が高い方向が入射面101と直交する向きにするとよい。挿入後に操作部を操作して剛性部材402を回転して、入射面と直交する方向に対する剛性を低下させることにより、被検体の重量がかかる方向への剛性が低下して筐体が撓みやすくなる。
【0026】
図5(a)のI字形状の例では、入射面101に直交する向きにI字が並ぶと筐体の剛性が高くなり、I字が入射面101と平行に、横に向くと剛性が低くなる。図5(b)の例では剛性が高い部材が入射面に直交する方向で上下に位置するときに剛性を高くでき、剛性が低い部材が入射面に直交する方向で上下に位置するときに剛性を低くできる。
【0027】
なお、図4では一組の対辺に剛性切り替え部105を設置しているが、いずれか1辺のみに設置しても良いし、4辺全てに設置してあっても良い。患者の身体の下へ放射線撮像装置100を挿入することを考えると、少なくとも一組の向かい合った2辺に設置しておくとよい。このとき、横になっている被検体に対して、横から、すなわち身長に対して直交する方向から放射線撮像装置100を挿し入れる場合は矢印Dの方向で挿し入れるとよい。そうすると、操作部が被検体の身体の横に露出するような位置に置けるので、操作部を操作しやすい。
【0028】
(実施形態1の変形例)
図6に示すように、この例では実施形態1における操作部401として、アクチュエータ403が剛性部材402に接続されている。アクチュエータ403は、電気回路基板208に接続されている。電気回路基板208は、ユーザインターフェース104と接続される。従って、ユーザはユーザインターフェース104に設置されたスイッチなどの操作部を操作することで、電気的にアクチュエータ403を作動させ、剛性部材402を回転させることができる。
【0029】
実施形態1では操作部401を直接操作するため、操作部401は内部の剛性部材402と連結されて設けられた。この場合、剛性切り替え部105における防水構造を回転に対応するようにする必要があった。また、剛性切り替え部105を設置する箇所を、防水構造204の必要がない防水領域外に設けることで、放射線撮像装置100の防水を担保することもできた。しかし、その場合は剛性切り替え部105の構造に制約が発生し得る。本実施形態では剛性切り替えアクチュエータ403が電気的に操作されるために、剛性切り替え部105を筐体内に格納することができる。これにより、剛性切り替え部105の設置箇所の自由度が高くなる。
【0030】
(実施形態2)
図7により、剛性部材402が、筐体の背面102であって、放射線検出パネル206と背面102との間に並べて配置された例を説明する。剛性切り替え部105には複数の剛性部材402が並んで配置されうる。複数配置された剛性部材402はアクチュエータ403に接続されており、アクチュエータ403により駆動される。アクチュエータ403は、剛性部材402それぞれに対応するように設置していてもよいし、アクチュエータ403を複数の剛性部材402で共有するように設置してもよい。ユーザインターフェース104の操作部を操作することにより、アクチュエータ403を動作させ、剛性部材402を回転させる。剛性部材402が回転することにより、筐体の剛性を変更させることができる。この例では特に、入射面に対する垂直な方向の剛性を変化させることができる。なお、つまみ状の操作部を設けて、手動で複数の剛性部材を一緒に回転させてもよい。
【0031】
本実施形態の剛性部材402は、剛性部材402を包むこむ包括部材701と共に構成されていてもよい。包括部材701で剛性部材402を包み込むことにより、剛性部材402が回転するときの変形や破損を低減できる。包括部材701の材料としては剛性部材402よりも剛性の低いものが用いられることが好ましい。具体的には、ゴムや発泡体などが挙げられる。また、本実施形態における剛性切り替え部105は、放射線パネルの支持基台207と一体に形成された部品であっても構わない。
【0032】
なお、剛性切り替え部105は入射面101と放射線検出パネル206との間に配置されていても構わない。しかし、入射してくるX線が放射線検出パネル206に到達するまでの間にはできるだけ、X線を減衰させる部材を設置しない方が撮像への影響を防ぐためによい。そのために、剛性切り替え部105は放射線検出パネル206とリアカバー202との間に配置するとよい。
【0033】
(実施形態3)
棒状の剛性部材802を筐体から着脱することにより、放射線撮像装置100の筐体の剛性を切り替えることができる放射線撮像装置100の例を図8により説明する。放射線撮像装置100の主な構成については説明を割愛する。
【0034】
本実施形態における剛性切り替え部は、剛性部材取り付け部804と剛性部材802と操作部801とから構成される。図8の例では、剛性部材取り付け部804は、放射線撮像装置の筐体に設けられた穴構造の挿入孔である。棒状部材である剛性部材802を剛性部材取り付け部804に挿し込むことで、筐体の剛性を高めることができる。
【0035】
剛性部材802には、操作部801が取り付けられている。操作部801には指を掛ける穴部または凹部が設けて、剛性部材802の取り外しを容易にしてもよい。剛性部材802は、筐体の側面を構成する壁部の部材よりも高い剛性を持つ部材で構成されると剛性を高めるのによい。具体的な材料には、金属材料としてはMg、Al等また炭素繊維なども挙げられる。材料を引き抜き加工により棒状に形成したものがよい。剛性部材802の断面形状は図8に示している丸形状と異なっていても構わない。剛性部材802が剛性部材取り付け部804に挿入されている場合は、側面の剛性が高く、また、入射面101と背面102との撓みも抑制される。このために剛性部材取り付け部804の配置された側面の剛性を特に高くできる。
【0036】
剛性部材取り付け部804は、図8のような穴構造に限らない。例えば、剛性部材取り付け部904は、図9のように側面の壁部に形成された溝のような構造であってもよい。剛性部材取り付け部904が溝部を形成する場合には剛性部材902が、図9の矢印(a)方向へ着脱できるような構造としても構わない。ただし、図3のステップS304において、放射線撮像装置100が患者の身体の下に設置された状態で剛性部材802を引き抜くことができるよう、矢印(b)方向へ引き抜ける構造も確保しておくとよい。剛性部材902が矢印(a)にも矢印(b)にも引き抜けるようにすることにより、放射線撮像装置100を被検体に対して図8の矢印Dの方向に差しれることも、矢印Dと直交する方向で挿し入れることも可能になる。
【0037】
(実施形態4)
図10により、剛性部材1002が放射線撮像装置100の側面外部に装着される例を説明する。本実施形態では、放射線撮像装置100の側面に剛性部材取り付け部1004が設けられており、剛性部材取り付け部1004には剛性部材1002を固定するための磁石が設置されている。
【0038】
剛性部材1002の、剛性部材取り付け部1004に取り付けられる部分は磁石に吸着されるように磁性体で構成されており、剛性部材1002と剛性部材取り付け部1004とは磁力によって吸着し固定される。なお、剛性部材1002に磁石を設けておいて、剛性部材取り付け部1004に磁石が吸着するための磁性体を設けてもよい。剛性部材1002と剛性部材取り付け部1004が磁力により固定される領域は、剛性部材1002全域であっても良いし、部分的であっても良いが、部分的に固定する場合は、少なくとも3箇所以上の固定位置を設けることが好ましい。また、磁力による固定ではなく、スナップフィットを用いて剛性部材1002を剛性部材取り付け部1004にはめ込む構造としても構わない。筐体の側面の剛性部材取り付け部1004に溝部を設けて剛性部材1002を溝に嵌るようにスライドさせて取り付けるような機構でもよい。本実施形態では剛性部材1002に、取り外しを容易にするためのコの字状の操作部1001を設けてもよい。操作部1001には凹凸や波型の部分を形成して、取り外し操作を容易にしてもよい。
【0039】
(実施形態5)
図11により剛性部材1102をカバー状の形状として、着脱により放射線撮像装置100の筐体の剛性を切り替えることができる例を説明する。本実施形態では、剛性部材1102は放射線撮像装置100の背面102を覆うように装着される。覆い方については、図12(a)~(d)により説明する。図12(a)は剛性部材1102が背面102側のみを覆う例である。図12(b)は剛性部材1102が側面103の一部までを覆う例である。図12(c)は剛性部材1102が側面103の全体を覆う例である。図12(d)は剛性部材1102が背面102から側面103及び入射面101の一部までを覆う例である。これらのどの構成でもよく、側面を覆う形状についてはこれらの例を組み合わせて用いてもよい。本実施形態によれば、剛性部材1102を取り外したときに、入射面に直交する方向の剛性が低下し、被検体の重量による撓みを許容できる。
【0040】
本実施形態によれば、剛性部材1102を取り付けたときに主に入射面に垂直な方向の剛性を高めることができる。図12(a)のような場合も放射線撮像装置100を被検体の下に挿し入れるときに、剛性部材1102により筐体の変形を小さくできるので挿入性の低下を抑制できうる。
【0041】
被検体の下に放射線撮像装置100を挿し入れるときの剛性を確保する点からは、図12(b)~(d)の構造にしておくとよい。また。剛性部材1102が放射線撮像装置100から挿入時にずれるのを防ぐために、3辺が図12(b)~(d)のように側面103にかかる構造にしておくとよい。
【0042】
また、図3で説明したステップS304において、患者の身体の下から剛性部材1102を引き抜く構造とするため、少なくとも1辺は図12(a)のように側面103を覆わない構造としておくとよい。さらに本実施形態における剛性部材1102には、取り外し時の操作性向上のため、少なくとも1辺以上に操作部1101が設けられる。
【0043】
本実施形態の剛性部材1102の固定方法については、磁力によるものが考えられる。実施形態4と同様に筐体側、剛性部材802の側のどちらに磁石を設置してもよい。剛性部材1102を装着したまま放射線撮像装置100を持ち運ぶことも考えられるため、剛性部材1102はなるべく軽量であることが好ましい。従って、剛性部材1102の材料としては、強度を持ちかつ軽量なAl、Mg、CFRPなどを用いるとよい。さらに、図13に示すように、背面102に装着される面は、不要な部分を削除した肉抜き形状にして軽量化されていても良い。
【0044】
以上のように、筐体の内部に剛性部材を設けてもよいし、外部に剛性部材を着脱可能に設けてもよい。または上記の各実施形態を組み合わせてもよい。
【0045】
(その他の実施形態)
本明細書の開示は、以下の放射線撮像装置を含む。
(項目1)
被検体を通過した放射線を検出するための放射線検出パネルと、前記放射線検出パネルを内包する筐体と、前記筐体の剛性を変更するための第一部材と、を有する放射線撮像装置であって、
前記第一部材が操作されることにより前記筐体の剛性が変更されることを特徴とする放射線撮像装置。
(項目2)
前記筐体は、前記被検体を通過した放射線が入射する入射面と、前記入射面の反対側の背面と、前記入射面の縁部と前記背面の縁部との間の側面と、を有し、
前記第一部材は棒状部材であり、少なくとも前記側面と前記放射線検出パネルとの間に前記棒状部材が前記側面に沿って配置されていることを特徴とする項目1に記載の放射線撮像装置。
(項目3)
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する互いに異なる2方向について剛性が異なる部分を有する項目2に記載の放射線撮像装置。
(項目4)
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する断面において異なる断面2次モーメントを有することを特徴とする項目2又は3に記載の放射線撮像装置。
(項目5)
前記棒状部材は、剛性の異なる少なくとも2つの部材を含むことを特徴とする項目2乃至4のいずれか1項目に記載の放射線撮像装置。
(項目6)
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する断面において長辺と短辺とを有することを特徴とする項目2乃至4のいずれか1項目に記載の放射線撮像装置。
(項目7)
前記放射線撮像装置は前記第一部材を操作するための操作部を有し、前記第一部材は前記操作部により回転させられることを特徴とする項目2乃至6のいずれか1項目に記載の放射線撮像装置。
(項目8)
前記操作部がアクチュエータを含むことを特徴とする項目7に記載の放射線撮像装置。
(項目9)
前記筐体は、前記被検体を通過した放射線が入射する入射面と、前記入射面の反対側の背面と、前記入射面の縁部と前記背面の縁部との間の側面と、を有し、
前記第一部材は棒状部材であり、少なくとも前記背面と前記放射線検出パネルとの間に前記棒状部材が複数配置されたことを特徴とする項目1に記載の放射線撮像装置。
(項目10)
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する互いに異なる2方向について剛性が異なる部分を有する項目9に記載の放射線撮像装置。
(項目11)
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する断面において異なる断面2次モーメントを有することを特徴とする項目9又は10に記載の放射線撮像装置。
(項目12)
前記棒状部材は、剛性の異なる少なくとも2つの部材を含むことを特徴とする項目9乃至11のいずれか1項目に記載の放射線撮像装置。
(項目13)
前記棒状部材は、棒の長軸と直交する断面において長辺と短辺とを有することを特徴とする項目9乃至12のいずれか1項目に記載の放射線撮像装置。
(項目14)
前記放射線撮像装置は前記第一部材を操作するための操作部を有し、前記第一部材は前記操作部により回転させられることを特徴とする項目9乃至13のいずれか1項目に記載の放射線撮像装置。
(項目15)
前記操作部がアクチュエータを含むことを特徴とする項目14に記載の放射線撮像装置。
(項目16)
前記第一部材は、前記側面を有する壁部の前記側面の長さに沿って設けられた挿入孔又は溝部に配置されることを特徴とする項目2に記載の放射線撮像装置。
(項目17)
前記第一部材は、着脱可能であることを特徴とする項目16に記載の放射線撮像装置。
(項目18)
前記筐体は、前記被検体を通過した放射線が入射する入射面と、前記入射面の反対側の背面と、前記入射面の縁部と前記背面の縁部との間の側面と、を有し、
前記第一部材は、装着したときに前記背面又は前記側面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする項目1に記載の放射線撮像装置。
(項目19)
前記第一部材は前記筐体に対して、前記筐体に設けられた溝部へスライドさせる機構、磁力を用いて吸着させる機構又は前記筐体の取り付け部へはめ込む機構のうちの少なくとも一つの機構により着脱可能に固定されることを特徴とする項目18に記載の放射線撮像装置。
(項目20)
前記第一部材は、金属材料または炭素繊維を含む材料で構成されていることを特徴とする項目1乃至19のいずれか1項目に記載の放射線撮像装置。
(項目21)
前記筐体は、前記被検体を通過した放射線が入射する入射面と、前記入射面の反対側の背面と、前記入射面の縁部と前記背面の縁部との間の側面と、を有し、
前記入射面及び前記背面の剛性は、前記側面の剛性より低いことを特徴とする項目1乃至20のいずれか1項目に記載の放射線撮像装置。
(項目22)
前記放射線検出パネルが可撓性を有することを特徴とする項目1乃至21のいずれか1項目に記載の放射線撮像装置。
【0046】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0047】
100:放射線撮像装置、105:剛性切り替え部、401:操作部、402:剛性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13