(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168220
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】放熱部材、その放熱部材の製造方法、およびその放熱部材を含む半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084705
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青島 正貴
(72)【発明者】
【氏名】岩重 朝仁
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC03
5F136BC06
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA23
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】放熱部材を挟んだ第1部材と第2部材との間の熱抵抗が放熱部材に対する圧縮荷重の増大に伴って増大する現象を回避する。
【解決手段】放熱部材14は、第1方向D1に並んだ第1部材11と第2部材12との間に挟まれ、その第1部材11と第2部材12とに圧縮される。そして、その放熱部材14は、第1部材11に伝熱可能に接続された一端部161と第2部材12に伝熱可能に接続された他端部162とを有する複数の熱伝導材16を有する。その複数の熱伝導材16は第2方向D2へ並んで配置され、一端部161と他端部162との間で熱を伝導し、第1方向D1と第2方向D2とに沿った熱伝導材横断面において屈曲または湾曲した曲がり形状を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向(D1)に並んだ第1部材(11)と第2部材(12)との間に挟まれると共に前記第1部材と前記第2部材とに圧縮され、前記第1部材と前記第2部材との間で熱を伝導する放熱部材(14)であって、
前記第1方向の一方側に設けられ前記第1部材に伝熱可能に接続される一端部(161)と前記第1方向の他方側に設けられ前記第2部材に伝熱可能に接続される他端部(162)とを有し、前記第1方向に垂直な第2方向(D2)へ並んで配置され、前記一端部と前記他端部との間で熱を伝導する複数の熱伝導材(16)を備え、
前記複数の熱伝導材はそれぞれ、前記第1方向と前記第2方向とに沿った断面において屈曲または湾曲した曲がり形状を有している、放熱部材。
【請求項2】
前記曲がり形状は、前記第1方向での前記一端部と前記他端部との間の範囲内で前記一端部と前記他端部とから離れた途中位置にて前記第2方向の一方側または他方側へ凸状になるように屈曲した形状である、請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
前記複数の熱伝導材はグラファイトを含んで構成されている、請求項1または2に記載の放熱部材。
【請求項4】
前記複数の熱伝導材はアルミニウムを含んで構成されている、請求項1または2に記載の放熱部材。
【請求項5】
前記複数の熱伝導材は銀を含んで構成されている、請求項1または2に記載の放熱部材。
【請求項6】
半導体装置であって、
半導体素子(111)を含み発熱する第1部材(11)と、
前記第1部材に対して第1方向(D1)に並んだ第2部材(12)と、
前記第1部材と前記第2部材との間に挟まれると共に前記第1部材と前記第2部材とに圧縮された放熱部材(14)とを備え、
前記放熱部材は、前記第1方向の前記第1部材側である一方側に設けられ前記第1部材に伝熱可能に接続された一端部(161)と前記第1方向の他方側に設けられ前記第2部材に伝熱可能に接続された他端部(162)とを有する複数の熱伝導材(16)を有し、
前記複数の熱伝導材は、前記第1方向に垂直な第2方向(D2)へ並んで配置され、前記一端部と前記他端部との間で熱を伝導し、前記第1方向と前記第2方向とに沿った断面において屈曲または湾曲した曲がり形状を有している、半導体装置。
【請求項7】
第1部材(11)と第2部材(12)との間に挟まれると共に前記第1部材と前記第2部材とに圧縮され、前記第1部材と前記第2部材との間で熱を伝導する放熱部材(14)の製造方法であって、
熱伝導性を備えたシート状の熱伝導シート(30)を、軸方向(Da)に延びる芯材(42)に複数回巻き付けると共に前記熱伝導シートを前記芯材の径方向(Dr)に接合することによって、前記径方向に積層された前記熱伝導シートを含むロール材(44)を生成すること(S02)と、
前記ロール材を前記芯材の周方向(Dc)に分割するように複数の切断位置(A2)で切断することで、前記放熱部材を得ること(S04)とを含み、
前記芯材は、該芯材の外周面(421a)において前記径方向の外側へ突き出るように設けられ前記軸方向に延伸した突設部(422)を有し、
前記ロール材を生成することでは、前記熱伝導シートを前記芯材の外周面に対して押し付けることにより、前記熱伝導シートが前記突設部の配置箇所で屈曲した屈曲部(301)を形成し、
前記放熱部材を得ることでは、複数の前記切断位置を、前記熱伝導シートの前記屈曲部を前記周方向に挟んだ位置として、前記ロール材を切断する、放熱部材の製造方法。
【請求項8】
第1部材(11)と第2部材(12)との間に挟まれると共に前記第1部材と前記第2部材とに圧縮され、前記第1部材と前記第2部材との間で熱を伝導する放熱部材(14)の製造方法であって、
熱伝導性を備えたシート状の熱伝導シート(30)を、軸方向(Da)に延びる芯材(42)に複数回巻き付けると共に前記熱伝導シートを前記芯材の径方向(Dr)に接合することによって、前記径方向に積層された前記熱伝導シートを含むロール材(44)を生成すること(S02)と、
前記ロール材を前記芯材の周方向(Dc)の所定位置(A3)で切断し前記芯材から外して展開すること(S041)と、
前記ロール材を展開した展開材(48)を、該展開材において前記周方向に対応する対応周方向(Dcx)に分割するように複数の切断位置(A2x)で切断することで、前記放熱部材を得ること(S042)とを含み、
前記芯材は、該芯材の外周面(421a)において前記径方向の外側へ突き出るように設けられ前記軸方向に延伸した突設部(422)を有し、
前記ロール材を生成することでは、前記熱伝導シートを前記芯材の外周面に対して押し付けることにより、前記熱伝導シートが前記突設部の配置箇所で屈曲した屈曲部(301)を形成し、
前記放熱部材を得ることでは、複数の前記切断位置を、前記熱伝導シートの前記屈曲部を前記対応周方向に挟んだ位置として、前記展開材を切断する、放熱部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部材間で熱を伝導する放熱部材、その放熱部材の製造方法、およびその放熱部材を含む半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の基材層と複数のダイヤモンド層とを有する放熱シートが開示されている。この特許文献1の放熱シートでは、その放熱シートの厚み方向に垂直な積層方向へ基材層と高い熱伝導性を備えた熱伝導材であるダイヤモンド層とが交互に積層されている。そして、複数のダイヤモンド層はそれぞれ、放熱シートの厚み方向と上記積層方向とに沿った断面において、その厚み方向の一方側から他方側へ直線的に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の放熱シートのような放熱部材は、その放熱部材の厚み方向の一方側に配置された第1部材と、その厚み方向の他方側に配置された第2部材とに挟まれ、第1部材と第2部材とに圧縮された状態で保持される。これにより、放熱部材は、その第1部材と第2部材との間で熱を伝導する。
【0005】
ここで、放熱部材において上記積層方向へ並んだ複数の熱伝導材が、特許文献1の放熱シートが有するダイヤモンド層と同様の形状である場合を想定する。すなわち、その複数の熱伝導材が、放熱部材の厚み方向と上記積層方向とに沿った断面において、放熱部材の厚み方向の一方側から他方側へ直線的に延びた形状を成している場合を想定する。
【0006】
熱伝導材がそのように直線的に延びた形状である場合、放熱部材を厚み方向に圧縮する圧縮力が放熱部材に加わると、複数の熱伝導材はそれぞれ放熱部材の厚み方向に対し倒れるように傾斜する。そして、その圧縮力が大きくなるほど、厚み方向に対する熱伝導材の傾斜角度は大きくなる。
【0007】
また、放熱部材に対する圧縮力が或る大きさ以上になると、放熱部材を挟んだ第1部材と第2部材との間の熱抵抗が大幅に増大することが、発明者らによって確認された。これは、複数の熱伝導材のそれぞれが傾斜することに起因して、熱伝導材の端部とその端部に対向する第1部材または第2部材である接触相手部材との接触面積が減少し、或いは、その端部が接触相手部材から離れることが原因になっている。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、放熱部材を挟んだ第1部材と第2部材との間の熱抵抗が放熱部材に対する圧縮力の増大に伴って増大する現象を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の放熱部材は、
第1方向(D1)に並んだ第1部材(11)と第2部材(12)との間に挟まれると共に第1部材と第2部材とに圧縮され、第1部材と第2部材との間で熱を伝導する放熱部材(14)であって、
第1方向の一方側に設けられ第1部材に伝熱可能に接続される一端部(161)と第1方向の他方側に設けられ第2部材に伝熱可能に接続される他端部(162)とを有し、第1方向に垂直な第2方向(D2)へ並んで配置され、一端部と他端部との間で熱を伝導する複数の熱伝導材(16)を備え、
複数の熱伝導材はそれぞれ、第1方向と第2方向とに沿った断面において屈曲または湾曲した曲がり形状を有している。
【0010】
このようにすれば、放熱部材を第1方向に圧縮する圧縮力が大きくなるほど、熱伝導材の曲がり形状において屈曲または湾曲の度合いが大きくなり、それによって、熱伝導材は圧縮力に対抗する反力を発生する。そして、熱伝導材が曲がり形状を有するので、放熱部材に対する圧縮力が大きくなっても、熱伝導材の一端部が他端部に対し第2方向へ位置ズレしようとする作用が生じにくい。そのため、熱伝導材の一端部は、その一端部が接触する第1部材の表面に対して滑りにくく、熱伝導材の他端部は、その他端部が接触する第2部材の表面に対して滑りにくい。
【0011】
このようなことから、例えば熱伝導材が曲がり形状を有さず直線的な断面形状である場合と比べて、放熱部材に対する圧縮力が大きくなっても、熱伝導材の一端部と第1部材との接触面積および熱伝導材の他端部と第2部材との接触面積は減少しにくい。従って、放熱部材を挟んだ第1部材と第2部材との間の熱抵抗が放熱部材に対する圧縮力の増大に伴って増大する現象を回避することが可能である。
【0012】
また、請求項6に記載の半導体装置は、
半導体素子(111)を含み発熱する第1部材(11)と、
第1部材に対して第1方向(D1)に並んだ第2部材(12)と、
第1部材と第2部材との間に挟まれると共に第1部材と第2部材とに圧縮された放熱部材(14)とを備え、
放熱部材は、第1方向の第1部材側である一方側に設けられ第1部材に伝熱可能に接続された一端部(161)と第1方向の他方側に設けられ第2部材に伝熱可能に接続された他端部(162)とを有する複数の熱伝導材(16)を有し、
複数の熱伝導材は、第1方向に垂直な第2方向(D2)へ並んで配置され、一端部と他端部との間で熱を伝導し、第1方向と第2方向とに沿った断面において屈曲または湾曲した曲がり形状を有している。
【0013】
このようにすれば、放熱部材の曲がり形状によって、放熱部材を挟んだ第1部材と第2部材との間の熱抵抗を低く保つことが容易になる。
【0014】
また、請求項7に記載の放熱部材の製造方法は、
第1部材(11)と第2部材(12)との間に挟まれると共に第1部材と第2部材とに圧縮され、第1部材と第2部材との間で熱を伝導する放熱部材(14)の製造方法であって、
熱伝導性を備えたシート状の熱伝導シート(30)を、軸方向(Da)に延びる芯材(42)に複数回巻き付けると共に熱伝導シートを芯材の径方向(Dr)に接合することによって、径方向に積層された熱伝導シートを含むロール材(44)を生成すること(S02)と、
ロール材を芯材の周方向(Dc)に分割するように複数の切断位置(A2)で切断することで、放熱部材を得ること(S04)とを含み、
芯材は、その芯材の外周面(421a)において径方向の外側へ突き出るように設けられ軸方向に延伸した突設部(422)を有し、
ロール材を生成することでは、熱伝導シートを芯材の外周面に対して押し付けることにより、熱伝導シートが突設部の配置箇所で屈曲した屈曲部(301)を形成し、
放熱部材を得ることでは、複数の切断位置を、熱伝導シートの屈曲部を周方向に挟んだ位置として、ロール材を切断する。
このようにすれば、上記した請求項1に記載の放熱部材を容易に生産することが可能である。このとき、切断後の熱伝導シートが、放熱部材に含まれる複数の熱伝導材になる。そして、ロール材が生成される際に屈曲部が形成されることによって熱伝導材の曲がり形状が形成され、その屈曲部は熱伝導材の曲がり形状に含まれる。
【0015】
また、請求項8に記載の放熱部材の製造方法は、
第1部材(11)と第2部材(12)との間に挟まれると共に第1部材と第2部材とに圧縮され、第1部材と第2部材との間で熱を伝導する放熱部材(14)の製造方法であって、
熱伝導性を備えたシート状の熱伝導シート(30)を、軸方向(Da)に延びる芯材(42)に複数回巻き付けると共に熱伝導シートを芯材の径方向(Dr)に接合することによって、径方向に積層された熱伝導シートを含むロール材(44)を生成すること(S02)と、
ロール材を芯材の周方向(Dc)の所定位置(A3)で切断し芯材から外して展開すること(S041)と、
ロール材を展開した展開材(48)を、その展開材において周方向に対応する対応周方向(Dcx)に分割するように複数の切断位置(A2x)で切断することで、放熱部材を得ること(S042)とを含み、
芯材は、その芯材の外周面(421a)において径方向の外側へ突き出るように設けられ軸方向に延伸した突設部(422)を有し、
ロール材を生成することでは、熱伝導シートを芯材の外周面に対して押し付けることにより、熱伝導シートが突設部の配置箇所で屈曲した屈曲部(301)を形成し、
放熱部材を得ることでは、複数の切断位置を、熱伝導シートの屈曲部を対応周方向に挟んだ位置として、展開材を切断する。
このようにしても、上記した請求項1に記載の放熱部材を容易に生産することが可能である。
【0016】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものであるにすぎない。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における半導体装置の概略構成を模式的に示した断面図である。
【
図2】
図1のII-II断面を示した断面図である。
【
図3】
図1のIII部分における放熱部材の拡大図であって、放熱部材を圧縮する圧縮力が作用していない無負荷状態で放熱部材を模式的に表した断面図である。
【
図4】第1実施形態において、放熱部材の熱伝導材を構成するグラフェンの高熱伝導方向と低熱伝導方向とを示した図である。
【
図5】比較例の半導体装置の概略構成を模式的に示した断面図であって、
図1に相当する図である。
【
図6】比較例において
図5のVI部分を拡大した放熱部材の拡大図であって、
図3に相当し、放熱部材が第1方向に弾性圧縮された圧縮状態で放熱部材を模式的に表した断面図である。
【
図7】比較例において
図6に相当する模式的な断面図であって、無負荷状態の放熱部材を表示した図である。
【
図8】第1実施形態および比較例の放熱部材の製造工程を示したフローチャートである。
【
図9A】第1実施形態および比較例において、
図8のステップS02で芯材に巻き付けられる熱伝導シートを模式的に示した斜視図である。
【
図9B】比較例において、
図8のステップS02で熱伝導シートが芯材に複数回巻き付けられることによって得られるロール材を模式的に示した斜視図である。
【
図9C】比較例において、
図8のステップS03でロール材が軸方向に分割されることによって得られる複数の分割ロール材のうちの1つを模式的に示した斜視図である。
【
図9D】比較例における
図9Bおよび
図9CのIXd方向の矢視図であって、
図8のステップS04で分割ロール材を切断する際の切断位置である複数の周方向切断位置を示した図である。
【
図10】第1実施形態において、
図8のステップS02で熱伝導シートが芯材に複数回巻き付けられることによって得られるロール材を模式的に示した斜視図であって、
図9Bに相当する図である。
【
図11】第1実施形態における
図10のXI方向の矢視図であり
図9Dに相当する図であって、
図8のステップS04で分割ロール材を切断する際の切断位置である複数の周方向切断位置を示した図である。
【
図12】モジュール熱抵抗と放熱部材に対する圧縮荷重との関係である圧縮時熱抵抗特性を本実施形態と比較例とのそれぞれで測定した測定結果を示した図である。
【
図13】第2実施形態において、無負荷状態の放熱部材の一部分を拡大して模式的に表した部分断面図であって、
図3に相当する図である。
【
図14】第3実施形態において、無負荷状態の放熱部材の一部分を拡大して模式的に表した部分断面図であって、
図3に相当する図である。
【
図15】第3実施形態の放熱部材の製造工程において放熱部材を刃具によって切り出す切出し作業を模式的に示した図である。
【
図16】第3実施形態において、
図15のXVI部分を拡大して示した部分拡大図である。
【
図17】第6実施形態の放熱部材の製造工程を示したフローチャートであって、
図8に相当する図である。
【
図18】第6実施形態において、分割ロール材を展開した展開材の一部分を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の半導体装置10は、第1部材11と第2部材12と放熱部材14とを備えている。その第1部材11と放熱部材14と第2部材12は、一方向としての第1方向D1の一方側から、第1部材11、放熱部材14、第2部材12の順に積層されている。すなわち、放熱部材14は第1部材11と第2部材12との間に挟まれている。なお、本実施形態および後述の実施形態の説明で用いられる各図は、半導体装置10の構成要素を判りやすく示すために適宜デフォルメされている。
【0020】
第1部材11は、半導体素子111を含んだ半導体部品であり、例えば第1部材11の外殻は、半導体素子111を覆う樹脂で構成されている。第1部材11は、半導体素子111が通電されることにより発熱する。例えば、第1部材11は、第1方向D1に厚みを有する扁平形状を成している。また、第1部材11は、第1部材11のうち第1方向D1の一方側とは反対側の他方側に設けられた接触面11aを有し、その接触面11aで放熱部材14に対して接触している。
【0021】
第2部材12は、例えば、第1部材11を冷却するための冷却器の一部を構成する部材である。その冷却器は、複数の放熱フィンを有する構造によって熱を放散するものであってもよいし、冷却液が冷却器の内部に循環しその冷却液を介して熱を放散するものであってもよい。
【0022】
第2部材12は、アルミニウム合金などの高い熱伝導性を有する金属で構成されている。また、第2部材12は、第2部材12のうち第1方向D1の一方側に設けられた接触面12aを有し、その接触面12aで放熱部材14に対して接触している。
【0023】
放熱部材14は、柔軟性を備えたシート状の物であり、第1方向D1を厚み方向として設けられている。また、放熱部材14は、第1方向D1に弾性圧縮可能な弾力性を備えている。
【0024】
放熱部材14は、第1部材11と第2部材12との間に配置され、第1部材11と第2部材12とによって第1方向D1に弾性圧縮された圧縮状態で保持されている。このように圧縮状態で保持された放熱部材14は、第1部材11と第2部材12との間で良好に熱を伝導する。例えば、放熱部材14の圧縮状態の保持は、不図示のクランプ機構などよって実現されている。なお、後述の図では、放熱部材14は、その放熱部材14が圧縮されていない無負荷状態で表示されることもあるが、
図1では、放熱部材14は圧縮状態で表示されている。
【0025】
図1、
図2に示すように、放熱部材14は、複数の熱伝導材16と複数の接合材18とを有している。その熱伝導材16と複数の接合材18はそれぞれ層状に形成され、第1方向D1に垂直な第2方向D2へ交互に並ぶように積層されている。また、複数の熱伝導材16はそれぞれ、第1方向D1および第2方向D2に垂直な第3方向D3に延伸し、複数の接合材18もそれぞれ第3方向D3に延伸している。
【0026】
複数の熱伝導材16はそれぞれ、放熱部材14に高い熱伝導性を備えさせるために設けられており、接合材18よりも高い熱伝導性を備えている。
図1、
図3に示すように、複数の熱伝導材16はそれぞれ、第1方向D1の一方側に設けられた一端部161と、第1方向D1の他方側に設けられた他端部162とを有している。
【0027】
なお、
図3は
図1のIII部分の拡大図であるが、
図3では、放熱部材14のうち熱伝導材16だけが抜粋して表示されている。この表示方法は、
図3に相当する後述の図でも同様である。
【0028】
複数の熱伝導材16はそれぞれ、一端部161で第1部材11に伝熱可能に接続され、他端部162で第2部材12に伝熱可能に接続されている。詳細に言うと、熱伝導材16の一端部161が第1部材11の接触面11aに接触し、熱伝導材16の他端部162が第2部材12の接触面12aに接触している。そして、複数の熱伝導材16はそれぞれ、一端部161と他端部162との間で熱を伝導する。
【0029】
また、
図1、
図3に示すように、複数の熱伝導材16はそれぞれ、第1方向D1と第2方向D2とに沿った断面である熱伝導材横断面において屈曲または湾曲した曲がり形状を有している。例えば
図3の熱伝導材横断面では、その熱伝導材16の曲がり形状は全体として、第2方向D2の一方側が凸状になり且つ第2方向D2の他方側が凹状になる形状となっている。
【0030】
詳細に言うと、複数の熱伝導材16はそれぞれ、第1方向D1での一端部161と他端部162との間の範囲内で一端部161と他端部162との両方から離れた途中位置に、屈曲部163を有している。そして、その屈曲部163は、第2方向D2の一方側へ凸状になるように屈曲した形状を成している。すなわち、熱伝導材16の上記曲がり形状は、第1方向D1での上記途中位置にて第2方向D2の一方側へ凸状になるように屈曲した形状となっている。
【0031】
なお、
図3に示された熱伝導材16の形状は、放熱部材14が圧縮されていない無負荷状態の形状である。確認的に述べるが、熱伝導材16は、その放熱部材14の無負荷状態でも、圧縮荷重Pcが放熱部材14に作用し放熱部材14が弾性圧縮された圧縮状態でも、上記曲がり形状を有していることに変わりはない。なぜなら、放熱部材14の無負荷状態と比較して圧縮状態では、熱伝導材16は矢印Acのように撓み、屈曲部163における屈曲の程度が大きくなるだけだからである。
【0032】
熱伝導材16の構成材料について言及すると、熱伝導材16は、一端部161と他端部162との間での熱伝導における熱伝導率が錫(すなわち、Sn)の熱伝導率よりも高い材料で構成されている。具体的に、本実施形態の熱伝導材16は、炭素原子により構成された炭素材料、要するにグラファイトで構成されている。詳細には、熱伝導材16は複数のシート形状のグラフェンGPを有し、その複数のグラフェンGPが
図3の熱伝導材横断面における熱伝導材16の厚み方向に積層されることによって構成されている。その熱伝導材16の厚み方向は、例えば
図3では、第2方向D2または略第2方向D2になる。
【0033】
ここで、
図4に示すようにグラフェンGPの熱伝導率には異方性があり、グラフェンGPは、高熱伝導方向aと、その高熱伝導方向aに対し熱伝導率が小さい低熱伝導方向cとを有している。その高熱伝導方向aは、グラフェンGPのシート形状に沿った方向すなわちグラフェンGPの面方向であり、低熱伝導方向cは、グラフェンGPのシート形状に垂直な方向すなわちグラフェンGPの法線方向である。
【0034】
図3、
図4に示すように、熱伝導材16を構成する複数のグラフェンGPは、熱伝導材16の曲がり形状に沿って熱伝導材16の一端部161と他端部162とを結ぶ熱伝導経路に対しグラフェンGPの高熱伝導方向aが沿うように配置されている。
【0035】
図1、
図2に示すように、複数の接合材18はそれぞれ、第2方向D2に並んだ複数の熱伝導材16を互いに接合するバインダ樹脂であり、その複数の熱伝導材16の相互間に充填されている。例えば、接合材18は固化することにより、隣り合った熱伝導材16同士を接合する。
【0036】
ここで、本実施形態と比較される比較例の半導体装置70について説明する。
図5に示すように、比較例の半導体装置70は、本実施形態の半導体装置10に対し、本実施形態の放熱部材14が、その本実施形態の放熱部材14に相当する放熱部材72に置き換えられたものである。そして、比較例の半導体装置70では、その半導体装置70が有する放熱部材72を構成する複数の熱伝導材73の形状が、本実施形態の半導体装置10に対して異なっている。
【0037】
具体的には
図6、
図7に示すように、比較例の複数の熱伝導材73はそれぞれ、本実施形態の一端部161に相当する一端部731と、本実施形態の他端部162に相当する他端部732とを有している。その
図6は放熱部材72の圧縮状態の形状を表し、
図7は放熱部材72の無負荷状態の形状を表している。そして、比較例の複数の熱伝導材73はそれぞれ、熱伝導材横断面において上記曲がり形状を有さず、一端部731と他端部732との間で直線的に延伸した形状を成している。
【0038】
本実施形態の半導体装置10に対し比較例の半導体装置70が異なる点は上記したとおりであり、それ以外の点においては比較例の半導体装置70は本実施形態の半導体装置10と同様である。
【0039】
次に、本実施形態の放熱部材14と比較例の放熱部材72とのそれぞれの製造方法について説明する。本実施形態の放熱部材14の製造方法は、比較例の放熱部材72の製造方法を変形させたものであるので、先ず、比較例の放熱部材72の製造方法について説明する。
【0040】
比較例の放熱部材72の製造では、
図8のステップS01において、先ず、
図9Aに示すように、熱伝導性を備えたシート状の熱伝導シート30が用意される。この熱伝導シート30は、比較例の熱伝導材73や本実施形態の熱伝導材16の基になる部材であるので、グラファイトで構成されている。
【0041】
続く
図8のステップS02では、
図9A、
図9Bに示すように、熱伝導シート30が、軸方向Daに延びる芯材32に複数回巻き付けられる。このとき、例えばバインダ34が熱伝導シート30に塗布されながら、熱伝導シート30は芯材32に巻き付けられる。その芯材32に巻き付けられた熱伝導シート30は、塗布されたバインダ34の固化によって芯材32の径方向Drに接合される。
【0042】
例えば、芯材32は、軸方向Daに平行なロール軸心Crを中心とした円柱形状または円筒形状を成し、ロール軸心Crを中心に回転可能に支持されている。そして、芯材32は、熱伝導シート30を芯材32に巻き付けるために、ロール軸心Crを中心に回転させられる。なお、熱伝導シート30に塗布されたバインダ34は、放熱部材72、14の完成後には接合材18になる。
【0043】
そして、ステップS02では、上記した熱伝導シート30の巻き付けおよび接合によって、熱伝導シート30とバインダ34とが径方向Drに積層されたロール材36が生成される。
図8のステップS02の次はステップS03へ進む。
【0044】
ステップS03では、
図9B、
図9Cに示すように、ロール材36と芯材32とが、軸方向Daにおける複数の軸方向切断位置A1で切断され、複数個に分割される。このロール材36が分割されたものは分割ロール材37と称され、芯材32が分割されたものは分割芯材38と称される。
【0045】
続くステップS04では、
図9C、
図9Dに示すように、分割ロール材37が、芯材32の周方向Dcにおける複数の周方向切断位置A2で切断され、複数個に分割される。これにより、周方向Dcを厚み方向としたシート状の放熱部材72が得られる。
【0046】
なお、放熱部材72の厚み方向は
図5の第1方向D1であるので、放熱部材72は、使用時においては、周方向Dcに沿った向きに圧縮されて用いられることとなる。
図9C、
図9D、および後述の
図11では、複数の周方向切断位置A2の全部は表示されておらず、複数の周方向切断位置A2のうち幾つかが表示されている。
【0047】
比較例の放熱部材72の製造方法は上記したとおりであり、本実施形態の放熱部材14の製造方法も、上記した
図8のフローチャートに沿ったものになる。但し、次に述べるように、本実施形態の放熱部材14の製造方法は、上記した比較例の放熱部材72の製造方法に対し異なる点を幾つか有している。
【0048】
本実施形態の放熱部材14の製造では、
図8のステップS02において熱伝導シート30が巻き付けられる芯材42が、比較例の芯材32と異なっている。具体的には
図10に示すように、本実施形態の芯材42は、芯材本体部421と複数の芯材突設部422とを有している。本実施形態の芯材本体部421は、比較例の芯材32と同様の形状、すなわち、ロール軸心Crを中心とした円柱形状または円筒形状を成している。要するに、本実施形態の芯材42は、比較例の芯材32に複数の芯材突設部422を付加した構成になっている。
【0049】
図10、
図11に示すように、複数の芯材突設部422はそれぞれ、芯材42の外周面である芯材本体部421の外周面421aにおいて径方向Drの外側へ突き出るように設けられ、軸方向Daに延伸している。そして、複数の芯材突設部422は、周方向Dcに相互間隔をあけて等ピッチ配置されている。例えば、複数の芯材突設部422は、芯材本体部421の外周面421a上に固定され軸方向Daに延伸したワイヤで構成されている。
【0050】
なお、本実施形態と比較例との混同した説明を避けるため、上記した比較例のロール材36に相当するものが本実施形態ではロール材44と称され、比較例の分割ロール材37に相当するものが本実施形態では分割ロール材45と称される。また、比較例の分割芯材38に相当するものが本実施形態では分割芯材46と称される。
図11に示すように、この本実施形態の分割芯材46は、上記した本実施形態の芯材42と比較例の芯材32との差異と同様に、比較例の分割芯材38に分割後の複数の芯材突設部422を付加した構成になっている。
【0051】
また、本実施形態における
図8のステップS02では、芯材42に巻かれた熱伝導シート30が芯材本体部421の外周面421aに対して押し付けられ、これにより、熱伝導シート30が芯材突設部422の配置箇所で屈曲した屈曲部301が複数形成される。
【0052】
従って、本実施形態のロール材44は、比較例のロール材36に対し複数の屈曲部301を有する点で異なるが、それ以外の点では比較例のロール材36と同様である。そして、本実施形態の分割ロール材45は、比較例の分割ロール材37に対し複数の屈曲部301を有する点で異なるが、それ以外の点では比較例の分割ロール材37と同様である。本実施形態の熱伝導シート30の屈曲部301は、完成した放熱部材14では、
図3に示すように熱伝導材16の屈曲部163になる。なお、
図11では、屈曲部301の形状を判りやすく示すために、熱伝導シート30の屈曲した形状が極端な表示とされている。
【0053】
また、本実施形態における
図8のステップS04では、分割ロール材45が、芯材42の周方向Dcにおける複数の周方向切断位置A2で切断され、複数個に分割される。この点では本実施形態は比較例と同様であるが、比較例とは異なり、
図11に示すように、複数の周方向切断位置A2がそれぞれ熱伝導シート30の屈曲部301を周方向Dcに挟んだ位置とされて、分割ロール材45は切断される。
【0054】
本実施形態の放熱部材14の製造方法のうち比較例の放熱部材72の製造方法に対し異なる点は上記したとおりである。そして、上記したことを除き、本実施形態の放熱部材14の製造方法は比較例の放熱部材72の製造方法と同様である。
【0055】
上述したように、本実施形態によれば、放熱部材14は、第1方向D1に並んだ第1部材11と第2部材12との間に挟まれ、その第1部材11と第2部材12とに圧縮される。そして、その放熱部材14は、第1部材11に伝熱可能に接続された一端部161と第2部材12に伝熱可能に接続された他端部162とを有する複数の熱伝導材16を有する。その複数の熱伝導材16は第2方向D2へ並んで配置され、一端部161と他端部162との間で熱を伝導し、第1方向D1と第2方向D2とに沿った熱伝導材横断面において屈曲または湾曲した曲がり形状を有している。
【0056】
従って、
図3に示すように、本実施形態では放熱部材14を第1方向D1に圧縮する圧縮荷重Pcが大きくなるほど、熱伝導材16の曲がり形状において屈曲または湾曲の度合いが矢印Acのように大きくなる。これによって、熱伝導材16は圧縮荷重Pcに対抗する反力を発生する。
【0057】
ここで、本実施形態と比較例とのそれぞれで、モジュール熱抵抗Rhと放熱部材14、72に対する圧縮荷重Pcとの関係である圧縮時熱抵抗特性B1、B2を測定した測定結果を、
図12を用いて説明する。そのモジュール熱抵抗Rhとは、放熱部材14、72を挟んだ第1部材11の所定位置と第2部材12の所定位置との間の熱抵抗である。
【0058】
なお、
図12の中に示された放熱部材14、72は、圧縮荷重Pcの変化に伴って変化する熱伝導材16、73の形状を模式的に表している。また、
図12では、本実施形態の圧縮時熱抵抗特性B1は実線で示され、比較例の圧縮時熱抵抗特性B2は破線で示されている。
【0059】
比較例の圧縮時熱抵抗特性B2に示されるように、比較例では、放熱部材72に対する圧縮荷重Pcが或る大きさ以上になると、モジュール熱抵抗Rhが大幅に増大することが確認された。このモジュール熱抵抗Rhの大幅増大、言い換えるとモジュール熱抵抗Rhの大幅悪化は、
図6に示すように圧縮荷重Pcが大きくなるほど、放熱部材72の厚み方向である第1方向D1対する熱伝導材73の傾斜角度が大きくなることが原因になっている。
【0060】
詳細に言うと、圧縮荷重Pcが熱伝導材73を傾斜させると共に、熱伝導材73の一端部731および他端部732とを矢印SLのように第2方向D2へ位置ズレさせるように作用する。これにより、一端部731および他端部732のそれぞれとその接触相手である接触面11a、12aとの接触面積が減少することが、モジュール熱抵抗Rhの大幅悪化の原因となっている。或いは、熱伝導材73の傾斜に伴って、複数の熱伝導材73の一部で一端部731または他端部732がその接触相手である接触面11a、12aから離れることも、モジュール熱抵抗Rhの大幅悪化の原因となっている。
【0061】
これに対し、
図12の本実施形態の圧縮時熱抵抗特性B1に示されるように、本実施形態では、比較例の圧縮時熱抵抗特性B2にあるモジュール熱抵抗Rhの大幅悪化が回避されている。これは、
図3に示すように熱伝導材16が上記曲がり形状を有するので、圧縮荷重Pcが大きくなっても、熱伝導材16の一端部161が他端部162に対し第2方向D2へ位置ズレしようとする作用が生じにくいからである。
【0062】
つまり、熱伝導材16の一端部161は、その一端部161が接触する第1部材11の接触面11aに対して滑りにくく、熱伝導材16の他端部162は、その他端部162が接触する第2部材12の接触面12aに対して滑りにくいからである。そして、圧縮荷重Pcが増減しても一端部161と他端部162とが位置ズレせずに、一端部161が第1部材11の接触面11aに接触する接触面積と他端部162が第2部材12の接触面12aに接触する接触面積とがそれぞれ維持されやすいからである。
【0063】
このように、本実施形態では、例えば上記比較例と比べて、放熱部材14に対する圧縮荷重Pcが大きくなっても、熱伝導材16の一端部161と第1部材11との接触面積および熱伝導材16の他端部162と第2部材12との接触面積は減少しにくい。従って、モジュール熱抵抗Rhが圧縮荷重Pcの増大に伴って増大する現象を回避することが可能である。
【0064】
また、本実施形態によれば、
図8のステップS02で熱伝導シート30が巻き付けられる芯材42は、芯材本体部421の外周面421aにおいて径方向Drの外側へ突き出るように設けられ軸方向Daに延伸した芯材突設部422を有している。そして、そのステップS02では、芯材42に巻かれた熱伝導シート30が芯材本体部421の外周面421aに対して押し付けられ、これにより、熱伝導シート30が芯材突設部422の配置箇所で屈曲した屈曲部301が形成される。
【0065】
更に、ステップS03では、屈曲部301を含むロール材44が軸方向Daに分割された分割ロール材45が得られ、続くステップS04では、その分割ロール材45が、芯材42の周方向Dcにおける複数の周方向切断位置A2で切断され、複数個に分割される。このとき、複数の周方向切断位置A2がそれぞれ熱伝導シート30の屈曲部301を周方向Dcに挟んだ位置とされて、分割ロール材45は切断される。このステップS04を経ることで放熱部材14が得られる。
【0066】
従って、本実施形態の放熱部材14を容易に生産することが可能である。このとき、ステップS04にて切断された切断後の熱伝導シート30が、放熱部材14に含まれる複数の熱伝導材16になる。そして、ステップS02でロール材44が生成される際に屈曲部301が形成されることによって熱伝導材16の曲がり形状が形成される。すなわち、熱伝導シート30の屈曲部301は、完成後の放熱部材14では熱伝導材16の屈曲部163になり、熱伝導材16の曲がり形状に含まれる。
【0067】
(1)また、本実施形態によれば、
図3に示すように、熱伝導材16の曲がり形状は、第1方向D1での一端部161と他端部162との間の範囲内で一端部161と他端部162とから離れた途中位置にて第2方向D2の一方側へ凸状になるように屈曲した形状である。従って、例えば熱伝導材16の曲がり形状が屈曲せずに緩やかに湾曲している場合と比較して、熱伝導材16に対し曲がり形状を明確に形成することが可能である。
【0068】
(2)また、本実施形態によれば、熱伝導材16は、グラファイトを含んで構成されている。従って、放熱部材14の厚み方向である第1方向D1への熱伝導において高い熱伝導率を得ることが可能である。例えば第1部材11と第2部材12とがハンダにより接合されそのハンダを介して第1部材11と第2部材12との間で熱が伝導される場合よりも、第1部材11と第2部材12との間での熱伝導において高い熱伝導率を得ることが可能である。
【0069】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
【0070】
図13に示すように、本実施形態でも第1実施形態と同様に、放熱部材14が有する複数の熱伝導材16はそれぞれ、上記した曲がり形状を有している。但し、
図13に示す熱伝導材横断面において、本実施形態の熱伝導材16の曲がり形状は、複数の屈曲部163を含むジグザグ形状になっている。
【0071】
具体的に、本実施形態の熱伝導材16は、第1方向D1に並んだ2つの屈曲部163を含む。その2つの屈曲部163のうち第1方向D1の一方側に配置された屈曲部163は、第2方向D2の他方側へ凸状になるように屈曲した形状を成している。そして、2つの屈曲部163のうち第1方向D1の他方側に配置された屈曲部163は、第2方向D2の一方側へ凸状になるように屈曲した形状を成している。なお、
図13に示された熱伝導材16の形状は、放熱部材14が圧縮されていない無負荷状態の形状である。
【0072】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0073】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0074】
図14に示すように、本実施形態でも第1実施形態と同様に、放熱部材14が有する複数の熱伝導材16はそれぞれ、上記した曲がり形状を有している。但し、
図14に示す熱伝導材横断面において、本実施形態の熱伝導材16の曲がり形状は屈曲部163を含んでいない。なお、
図14に示された熱伝導材16の形状は、放熱部材14が圧縮されていない無負荷状態の形状である。
【0075】
具体的に、本実施形態の熱伝導材16は、熱伝導材16のうち一端部161と他端部162との間の部位である端部間部位164を有し、その端部間部位164は、第1方向D1に直線的に延伸するように形成されている。そして、熱伝導材16の一端部161と他端部162はそれぞれ、端部間部位164に対し第2方向D2の一方側へズレるように変形している。
【0076】
これにより、
図14の熱伝導材横断面において、熱伝導材16は、一端部161から他端部162までの全体として、第2方向D2の一方側が凹状になり且つ第2方向D2の他方側が凸状になった湾曲形状となっている。すなわち、複数の熱伝導材16はそれぞれ、上記した曲がり形状を有することとなっている。
【0077】
本実施形態の熱伝導材16が有するこの曲がり形状は、
図15、
図16に示される製造方法によって形成することができる。すなわち、放熱部材14を刃具50、51によって切り出す切出し作業に先立って、まず、放熱部材14の素材141が用意される。その放熱部材14の素材141では、複数の熱伝導材16は第1方向D1に沿って直線的に延伸した形状になっている。
【0078】
そして、放熱部材14の切出し作業では、矢印CT1で示されるように、放熱部材14の素材141を第2方向D2の他方側から一方側へ刃具50で切断し、これにより、熱伝導材16の一端部161を形成する。このとき、
図16に示すように、熱伝導材16の一端部161は刃具50によって第2方向D2の他方側から一方側へ押されながら形成されるので、上記したように端部間部位164に対し第2方向D2の一方側へズレるように変形した形状になる。
【0079】
これと同様に、放熱部材14の切出し作業では、矢印CT2で示されるように、放熱部材14の素材141を第2方向D2の他方側から一方側へ刃具51でも切断し、これにより、熱伝導材16の他端部162を形成する。このとき、熱伝導材16の一端部161と同様に、熱伝導材16の他端部162は刃具51によって第2方向D2の他方側から一方側へ押されながら形成されるので、上記したように端部間部位164に対し第2方向D2の一方側へズレるように変形した形状になる。
【0080】
以上のようにして、本実施形態の熱伝導材16の曲がり形状を形成することができる。
【0081】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0082】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0083】
本実施形態の放熱部材14が有する全ての熱伝導材16は、グラファイトではなく、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されている。要するに、本実施形態の全ての熱伝導材16は、アルミニウムを含んで構成されている。
【0084】
このようにしても、第1実施形態と同様に、第1部材11と第2部材12との間での熱伝導において高い熱伝導率を得ることが可能である。
【0085】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0086】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2実施形態または第3実施形態と組み合わせることも可能である。
【0087】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0088】
本実施形態の放熱部材14が有する全ての熱伝導材16は、グラファイトではなく、銀または銀合金で構成されている。要するに、本実施形態の全ての熱伝導材16は、銀を含んで構成されている。
【0089】
このようにしても、第1実施形態と同様に、第1部材11と第2部材12との間での熱伝導において高い熱伝導率を得ることが可能である。
【0090】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0091】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2実施形態または第3実施形態と組み合わせることも可能である。
【0092】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0093】
本実施形態の放熱部材14の製造では、
図8に替わる
図17のフローチャートに従って放熱部材14が製造される。その
図17のステップS01、S02、S03は
図8のステップS01、S02、S03と同じであるが、
図17では、
図8のステップS04がステップS041、S042に置き換わっている。
【0094】
具体的に、
図17のフローチャートでは、ステップS03の次はステップS041へ進む。そして、そのステップS041では、分割ロール材45が、周方向Dcの所定位置A3(
図11参照)で切断される。この所定位置A3は、周方向Dcにおける任意の1箇所であってよい。この所定位置A3での切断により、分割ロール材45が分割芯材46から取外し可能になる。
【0095】
その所定位置A3での切断後に、分割ロール材45は分割芯材46から取り外され、例えば平板状になるように展開される。その分割ロール材45を展開した展開材48の一部分が
図18に示されている。このように展開された展開材48においても、屈曲部301の屈曲した形状は維持される。
【0096】
そして、
図18に示すように展開材48の複数の屈曲部301は、展開材48において
図11の周方向Dcに対応する対応周方向Dcxに並ぶ。すなわち、
図11の分割ロール材45における複数の屈曲部301の並び方向は周方向Dcであり、
図18の展開材48における複数の屈曲部301の並び方向は対応周方向Dcxになる。
図17のステップS041の次はステップS042へ進む。
【0097】
図17のステップS042では、展開材48が、対応周方向Dcxにおける複数の対応周方向切断位置A2xで切断され、複数個に分割される。この対応周方向切断位置A2xは第1実施形態の周方向切断位置A2に対応した位置である。従って、
図18に示すように、複数の対応周方向切断位置A2xがそれぞれ熱伝導シート30の屈曲部301を対応周方向Dcxに挟んだ位置とされて、展開材48は切断される。
【0098】
このように
図17のフローチャートに従って放熱部材14の製造を行っても、第1実施形態と同様の放熱部材14を容易に生産することが可能である。
【0099】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0100】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2、第4、第5実施形態の何れかと組み合わせることも可能である。
【0101】
(他の実施形態)
(1)上述の第1実施形態では、
図3に示すように、熱伝導材16の上記曲がり形状は、熱伝導材16のうち一端部161と他端部162とのそれぞれから第1方向D1に離れた途中位置にて第2方向D2の一方側へ凸状になるように屈曲した形状である。しかしながら、これは一例である。例えば逆に、熱伝導材16の上記曲がり形状は、熱伝導材16のうちの上記途中位置にて第2方向D2の他方側へ凸状になるように屈曲した形状であっても差し支えない。
【0102】
(2)上述の第1実施形態において
図3に示された熱伝導材16の曲がり形状は、屈曲部163で局所的に屈曲した形状になっているが、これは一例である。例えば、その熱伝導材16の曲がり形状は、一端部161と他端部162との間で滑らかに湾曲した形状であっても差し支えない。
【0103】
(3)上述の第1、第6実施形態では、
図8、
図17に示すように、ステップS03でロール材44が軸方向Daに分割されるように切断されるが、このステップS03の工程は無いことも想定される。
【0104】
(4)上述の第1実施形態では、
図8に示すように、ロール材44は、軸方向Daに分割されてから周方向Dcに分割されるように切断されるが、例えば逆に、周方向Dcに分割されてから軸方向Daに分割されるように切断されてもよい。ロール材44を切断する手順は種々想定される。
【0105】
(5)上述の第6実施形態では、
図17に示すように、ロール材44が軸方向Daに分割されてから、その分割後の分割ロール材45が分割芯材46から取り外され、例えば平板状になるように展開されるが、これは一例である。例えば逆に、ロール材44が所定位置A3(
図11参照)で切断されると共に芯材42から取り外され、平板状になるように展開されてから、そのロール材44を展開した展開材48が、展開材48において軸方向Daに対応する対応軸方向に分割されてもよい。
【0106】
(6)上述の第1実施形態では、
図11に示すように、例えば複数の芯材突設部422は、芯材本体部421の外周面421a上に固定され軸方向Daに延伸したワイヤで構成されているが、これは一例である。例えば複数の芯材突設部422は、芯材本体部421と一体になっており、その芯材本体部421から径方向Drの外側へ突き出た凸部として構成されていてもよい。
【0107】
(7)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0108】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0109】
11 第1部材
12 第2部材
14 放熱部材
16 熱伝導材
161 一端部
162 他端部
D1 第1方向
D2 第2方向