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特開2024-168224素材加熱装置、プログラム、及びフローフォーミングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168224
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】素材加熱装置、プログラム、及びフローフォーミングシステム
(51)【国際特許分類】
   C21D 11/00 20060101AFI20241128BHJP
   B21D 22/14 20060101ALI20241128BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20241128BHJP
   C22F 1/04 20060101ALN20241128BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20241128BHJP
   G05D 23/19 20060101ALN20241128BHJP
   G05B 11/36 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
C21D11/00 102
B21D22/14 Z
C21D9/00 A
C22F1/04 M
C22F1/00 630A
C22F1/00 682
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 683
C22F1/00 691A
C22F1/00 630K
G05D23/19 J
G05B11/36 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084712
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000229047
【氏名又は名称】日本スピンドル製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 孝二
【テーマコード(参考)】
4E137
4K038
4K042
5H004
5H323
【Fターム(参考)】
4E137AA13
4E137BA01
4E137BA05
4E137CA06
4E137DA02
4E137EA18
4E137EA26
4E137EA29
4E137FA10
4E137FA15
4E137FA25
4E137FA26
4E137FA27
4E137GA02
4E137GB04
4K038BA02
4K038CA01
4K038CA02
4K038DA01
4K038DA02
4K038DA03
4K038EA01
4K038EA02
4K038EA03
4K038FA02
4K042AA14
4K042AA23
4K042AA25
4K042BA01
4K042DA03
4K042DA06
4K042DB01
4K042DB04
4K042DB06
4K042DB07
4K042DB08
4K042DC01
4K042DC02
4K042DC03
4K042DC05
4K042DF01
4K042EA01
4K042EA03
5H004GA02
5H004GA34
5H004GB03
5H004HA01
5H004HB01
5H004JA03
5H004JB01
5H004KA54
5H004KC04
5H004KC25
5H004KD62
5H004LB06
5H004MA38
5H004MA49
5H323AA27
5H323BB04
5H323BB12
5H323CA06
5H323CB04
5H323DA01
5H323DB01
5H323EE05
5H323FF01
5H323FF06
5H323GG01
5H323HH02
5H323KK07
5H323LL13
5H323LL24
5H323MM06
5H323NN04
5H323PP01
5H323PP08
5H323QQ06
5H323RR04
5H323SS01
5H323TT20
(57)【要約】
【課題】熱伝導のみによる従来の加熱よりも短時間に加熱対象を加熱する。
【解決手段】素材加熱装置は、加熱炉に収容された素材の温度を検出する素材温度検出部と、前記加熱炉内と共に前記素材を加熱する素材加熱部と、前記素材温度検出部により検出された前記素材の温度に基づいて、前記素材の温度が予め定められた時間内に目標温度となるための前記加熱の強さを算出し、算出された強さで前記素材を加熱するように前記素材加熱部を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉に収容された素材の温度を検出する素材温度検出部と、
前記加熱炉内と共に前記素材を加熱する素材加熱部と、
前記素材温度検出部により検出された前記素材の温度に基づいて、前記素材の温度が予め定められた時間内に目標温度となるための前記加熱の強さを算出し、算出された強さで前記素材を加熱するように前記素材加熱部を制御する制御部と、
を備える素材加熱装置。
【請求項2】
前記予め定められた時間は、フローフォーミング装置のサイクルタイムであることを特徴とする請求項1に記載の素材加熱装置。
【請求項3】
前記加熱炉の炉内の温度を検出する炉内温度検出部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の素材加熱装置。
【請求項4】
前記素材加熱部は、前記素材に光を照射する光加熱部である、請求項1又は請求項2に記載の素材加熱装置。
【請求項5】
前記加熱炉内又は前記素材加熱部の温度を検出する加熱炉内又は素材加熱部温度検出部を更に備え、
前記制御部は、
前記加熱炉内又は素材加熱部温度検出部により検出された前記加熱炉内又は前記素材加熱部の温度に基づいて、前記加熱炉内又は前記素材加熱部の温度が、前記素材加熱部が壊れる温度よりも所定値小さい限界温度になる時が、前記予め定められた時間が経過する時よりも早く到来するか否かを判断し、
前記判断が肯定判定の場合、前記予め定められた時間が経過する時よりも後に、前記加熱炉内又は前記素材加熱部の温度が前記限界温度になるように、前記素材加熱部を制御する、
請求項1又は請求項2に記載の素材加熱装置。
【請求項6】
前記加熱炉に外気を取り入れる外気取り入れ装置と、
前記加熱炉内又は前記素材加熱部の温度を検出する加熱炉内又は素材加熱部温度検出部と、
を更に備え、
前記制御部は、前記加熱炉内又は素材加熱部温度検出部により検出された前記加熱炉内又は前記素材加熱部の温度が、前記素材加熱部が壊れる温度よりも所定値小さい限界温度より大きい場合、前記外気の取り入れにより前記加熱炉内又は前記素材加熱部の温度が前記限界温度以下となるように前記外気取り入れ装置を制御する、
請求項1又は請求項2に記載の素材加熱装置。
【請求項7】
前記素材加熱部は、前記素材を囲むように配置された複数の素材加熱器を備える、請求項1又は請求項2に記載の素材加熱装置。
【請求項8】
前記複数の素材加熱器の各々を移動させる移動機構を更に備え、
前記制御部は、前記素材の大きさに基づいて、前記複数の素材加熱器の各々が、前記素材から所定距離以内に移動するように、前記移動機構を制御する、請求項7に記載の素材加熱装置。
【請求項9】
前記素材の大きさを入力する入力部を更に備える、請求項8に記載の素材加熱装置。
【請求項10】
前記素材の温度を表示する表示部を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の素材加熱装置。
【請求項11】
前記加熱炉は、断熱材で密閉される、請求項1又は請求項2に記載の素材加熱装置。
【請求項12】
前記加熱炉内を加熱する加熱炉内加熱部を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の素材加熱装置。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1又は請求項2の制御部として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項1又は請求項2に記載の素材加熱装置と、
フローフォーミング装置と、
備えるフローフォーミングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、素材加熱装置、プログラム、及びフローフォーミングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヒータにより加熱炉内を加熱することで、加熱炉内の温度を所定の最終目標時間で所定の最終目標温度まで上昇させる温度制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-015545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に代表される素材加熱装置は、加熱炉内の空気温度を制御することで、加熱対象の素材を、加熱炉内の空気からの熱伝導により、加熱炉内の空気と同程度の温度に加熱する。加熱炉内の空気からの熱伝導による素材の加熱には、一定以上の時間を必要とする。
【0005】
ところで、加熱炉で加熱された素材に対しては、後工程で塑性加工などを実施することがある。塑性加工される素材を、加熱炉において短時間で加熱し、塑性加工システムに搬入することが要請される。
【0006】
本開示の技術は、上記事実に鑑み成されたもので、熱伝導のみによる従来の加熱よりも短時間に加熱対象を加熱することができる素材加熱装置、プログラム、及びフローフォーミングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的達成するため本開示の技術の第1の態様の素材加熱装置は、加熱炉に収容された素材の温度を検出する素材温度検出部と、前記加熱炉内と共に前記素材を加熱する素材加熱部と、前記素材温度検出部により検出された前記素材の温度に基づいて、前記素材の温度が予め定められた時間内に目標温度となるための前記加熱の強さを算出し、算出された強さで前記素材を加熱するように前記素材加熱部を制御する制御部と、を備える。
本開示の技術の第2の態様のプログラムは、コンピュータを、第1の態様の制御部として機能させる。
本開示の技術の第3の態様のフローフォーミングシステムは、第1の態様の素材加熱装置と、フローフォーミング装置と、備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術は、熱伝導のみによる従来の加熱よりも短時間に加熱対象を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】フローフォーミングシステムの一例の概略構成図である。
図2】光加熱器の配置位置の一例を示す図である。
図3】制御装置の一例のブロック図である。
図4】素材温度制御プログラムの一例のフローチャートである。
図5】素材の温度と加熱炉の温度のグラフと、光強度のグラフである。
図6】開口蓋開閉モータにより開口蓋を、開口を覆った状態から開放させた様子を示す図である。
図7】温度制御された素材が加熱炉から取り出される様子の一例を示す図である。
図8】第1の変形例の加熱炉の断面図である。
図9】第2の変形例の温度制御された素材の温度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示の技術の実施の形態を説明する。
【0011】
(構成)
図1は、本実施の態様のフローフォーミングシステム100の概略説明図である。図1に示すように、フローフォーミングシステム100は、素材10を加熱する素材加熱装置20と、加熱された素材10を成形するフローフォーミング装置30と、を備える。フローフォーミングシステム100により成形品が製造される。以下、各構成について詳細に説明する。
フローフォーミングとは、板材又はカップ形状の金属を回転させ、それにローラーを押し当てて変形させる事で、金属を薄く伸ばしたり、一箇所に集めて厚くしたり、あるいは裂いて拡げたりして所望の形状に変形させる加工方法で金属の塑性加工の一例である。
フローフォーミングシステム100は、本開示の技術の「フローフォーミングシステム」の一例である。素材加熱装置20は、本開示の技術の「素材加熱装置」の一例である。
【0012】
<素材>
素材10は、後述する素材加熱装置20によって加熱された後、フローフォーミング装置30によって成形品へと成形される。素材10は、鋳造加工等により所定の形状に仮成型されたものであることが好ましく、フローフォーミング加工により素材の一部が部分的に成形される。
【0013】
素材10の材質は、押圧により変形可能であり、フローフォーミング加工に適した材質が好ましい。例えば、鉄又はアルミニウム等の金属が挙げられる。焼鈍された鉄又は鋳造または鍛造されたアルミニウム等の金属が好ましい。鋳造加工により仮成型された素材10は、金属組織中に鋳巣が存在し低強度の要因となるが、素材10を押圧することにより、素材10内の金属組織が密になるため、素材10の強度が向上する。よって、フローフォーミング加工により成形品を薄い形状とすることが可能となり、軽量かつ高強度な成形品を得ることができる。
成形品としては、アルミホイールがある。なお、成形品は、アルミホイールに限定されない。例えば、鉄の材料(シャフト又は円盤)でもよい。
【0014】
<素材加熱装置>
素材加熱装置20は、断熱材で密封された加熱炉12に収容された素材10の温度を検出する素材温度検出部15と、加熱炉12内と共に素材10を加熱する素材加熱部16Nと、を備える。素材加熱装置20は、素材温度検出部15により検出された素材10の温度に基づいて、素材10の温度が予め定められた時間内に目標温度となるための加熱の強さを算出し、算出された強さで素材10を加熱するように素材加熱部16Nを制御する制御装置50を備える。予め定められた時間は、例えば、後述するフローフォーミング装置30のサイクルタイムである。
加熱炉12は、本開示の技術の「加熱炉」の一例である。素材温度検出部15は、本開示の技術の「素材温度検出部」の一例である。素材加熱部16Nは、本開示の技術の「素材加熱部」の一例である。制御装置50は、本開示の技術の「制御部」の一例である。
素材温度検出部15は温度センサであっても良いし、モデルなどで推定した値であっても良い。
【0015】
素材加熱部16Nは、加熱炉12内と共に素材10を加熱することができれば、どのようなものであっても良い。素材加熱部16Nとしては、様々な熱源が考えられる。加熱用熱源は、好ましくは工場等で二酸化炭素を排出しない加熱部であり、例えば、電気エネルギー又は蒸気エネルギーを利用して加熱する加熱手段であり、具体的には、電磁誘導加熱、高周波加熱、蒸気加熱、流動層加熱、光加熱などが挙げられる。これらの加熱用熱源によれば、フローフォーミング加工時における二酸化炭素排出量を低減することができる。また、これらの加熱用熱源は、工場等で二酸化炭素排出量をほぼゼロまで低減することが可能であり、ガスバーナー等による炎を使用する加熱部と比較しても、二酸化炭素の排出量を抑えたフローフォーミングシステムを提供することができる。
【0016】
電磁誘導加熱、高周波加熱、蒸気加熱、流動層加熱、及び、光加熱等の加熱用熱源は、素材10の一部を局所的に加熱する。このように素材10の一部のみを加熱するので、加熱時間を短縮できつつ、二酸化炭素を排出しないという利点がある。さらに、非加熱部分の変形を抑えることができる。
【0017】
ところで、アルミニウムは鉄等と比較して融点が低く、比較的低温でヤング率が小さくなるため、素材10がアルミニウムの場合、ガス炉又は高周波加熱、電磁誘導加熱だけでなく、蒸気加熱又は流動砂加熱、光加熱などの手段でも比較的短時間での加熱が可能となる。
【0018】
以下、素材加熱部16Nの一例として、素材10に光を照射する光加熱部、より具体的には、複数の素材加熱器16N1~16N12を例にとり説明する。図2は、光加熱器16N1~16N12の配置位置の一例を示す図である。図2に示すように、複数の素材加熱器16N1~16N12は、素材10を囲むように、円弧状に配置される。複数の素材加熱器16N1~16N12の各々は、素材10の側面に局所的に光を照射する。加熱したい部分に光を照射するので、加熱不要の部分の温度上昇を相対的に低くすることができる。
素材加熱器16N1~16N12は、本開示の技術の「光加熱部」及び「素材加熱器」の一例である。
【0019】
素材加熱装置20は、素材10を、目標温度に加熱する。目標温度は、例えば、鋳造アルミニウムの場合は、350℃から400℃程度である。これによると、素材10が柔らかくなるため圧延しやすく、フローフォーミング加工後の成形品の成形不良を減少させることができるため、歩留まりを向上させることができる。以下、目標温度の一例として、400℃を例にとり説明する。この場合、後述するように、目標温度の上限値は、例えば、410℃であり、目標温度の下限値は、例えば、390℃である。
【0020】
素材加熱装置20は、加熱炉12の内部に1個の素材10を設置するステージ23と、ステージを昇降する昇降装置22と、を備える。素材温度検出部15は、ステージ23上で、素材10が設置される領域から外れた位置に配置される。
【0021】
素材加熱装置20は、ステージ23上で、素材10が設置される領域に配置される素材入替検知部19(図3参照)を備える。素材10がステージ23から離脱すると、素材入替検知部19からの検知信号は、例えば、立ち下がる。素材10がステージ23に載置されると、素材入替検知部19の検知信号は、例えば、立ち上がる。このように素材入替検知部19の検知信号が立ち下がった後、素材入替検知部19の検知信号が立ち上がった場合、ステージ23に、新たな素材10が載置されたこと、つまり、素材10の入れ替えが検知される。
【0022】
素材加熱装置20は、1つの加熱炉12では、1個の素材10を加熱する。フローフォーミング加工の塑性加工のサイクルタイム(1つ目の素材がフローフォーミング装置に入って、加工後、次の素材がフローフォーミング装置に入るまでの時間)に合わせて1つの素材10を都度加熱する。
従来の大型の加熱炉では、数十個の素材を一度に加熱することから、フローフォーミング装置30にトラブルが生じて停止した場合には、トラブルが解消した後、数十個の素材を再加熱することになる。また、その加熱時間も数十個の素材の加熱を行う必要から長時間に及ぶ。よって、エネルギーロスが大きく、不要な二酸化炭素の消費が生じる。
しかし、上記のように、素材加熱装置20は、1つの加熱炉12では、1個の素材10を加熱するので、フローフォーミング装置30にトラブルが生じ、素材10を再加熱する場合、加熱時間を比較的短くすることができ、エネルギーロスをかなり少なくすることができ、不要な二酸化炭素の消費を抑制することができる。なお、本実施例では1個の素材10を加熱することとしたが、フローフォーミング加工の塑性加工のサイクルタイムや、フローフォーミング加工の数によっては、1つの加熱炉に2個或いは3個の素材を加熱しても良い。この場合でも、従来の十数個の素材を毛熱する場合と比較してエネルギーロスを小さく、不要な二酸化炭素の消費を抑えることができる。
【0023】
素材加熱装置20は、加熱炉12の炉内の温度を検出する炉内温度検出部17を備える。素材加熱装置20は、炉内温度検出部17により検出された加熱炉内の温度が、素材加熱器16N1~16N12が壊れる温度よりも所定値小さい限界温度以上の場合、加熱炉12内の温度が限界温度以下となるように素材加熱器16N1~16N12を制御する。これにより、素材加熱器16N1~16N12が加熱炉12の炉内の温度により壊れることを防止することができる。加熱炉12内の温度が限界温度以下となるように素材加熱器16N1~16N12を制御しても、加熱炉12内の温度は、直ちに低くならず、上昇する場合もある。所定値は、この上昇温度を考慮して、加熱炉内の温度が、素材加熱器16N1~16N12が壊れる温度に到達しないように、予め実験等により定められる。限界温度は、例えば、700℃である。
炉内温度検出部17に代えて、素材加熱器16N1~16N12の温度を検出する素材加熱部温度検出部を備えて、同様に制御してもよい。
炉内温度検出部17は、本開示の技術の「炉内温度検出部」の一例である。炉内温度検出部17は温度センサであっても良いし、モデルなどで推定した値であっても良い。
【0024】
素材加熱装置20は、加熱炉12の上部に設けられる、蓋開閉装置25(図3も参照)と、素材加熱装置20からフローフォーミング装置30に素材10を搬送する搬送部24(図2も参照)と、を備える。
【0025】
素材10を加熱する場合、蓋開閉装置25により蓋(即ち、加熱炉12の天井)12Fが開放され、昇降装置22により上昇した位置に位置するステージ23に素材10が載置され、ステージ23が昇降装置22により下降し、素材10は、複数の素材加熱器16N1~16N12に囲まれる位置に位置する。素材10は、複数の素材加熱器16N1~16N12により光が照射され、加熱される。
蓋12Fは、図1に示す左右の側板に、当該各側板の上を紙面手前側及び紙面奥側の各方向に移動可能に取り付けられる。蓋開閉装置25は、例えば、ラックアンドピニオン機構で構成される。具体的には、図1に示す左右の側板の上部に設けられた図示しないラックと、蓋12Fに設けられた図示しないピニオンと、ピニオンに駆動力を発生させる図示しないモータと、を備える。モータが回転するとピニオンは、回転しながらラック上を移動する。これにより、蓋12Fは、図1に示す左右の側板の上を紙面手前側又は紙面奥側の各方向に移動する。
【0026】
素材10の加熱が終了すると、蓋開閉装置25により蓋12Fが移動して加熱炉12が開放され、ステージ23が昇降装置22により上昇し、ステージ23に載置された素材10は、搬送部24(図2も参照)により、素材加熱装置20からフローフォーミング装置30に素材10が搬送される。搬送部24は、例えば、ベルトコンベア、搬送レール、ロボットアームなどである。
【0027】
加熱炉20の蓋12Fには開口12Kが形成される。加熱炉20は、加熱炉20に開口12Kを介して外気を取り入れる外気取り入れ装置20FMを備える。外気取り入れ装置20FMは、開口12Kを開放及び閉鎖する開口蓋20Fと、開口蓋20Fの一端に接続され、開口蓋20Fを開口12Kに対して近づけたり遠ざけたりする開口蓋開閉モータ20Mと、を備える。開口蓋開閉モータ20Mにより開口蓋20Fが開口12Kを覆うと、開口12Kが閉鎖する。開口蓋開閉モータ20Mにより開口蓋20Fが開口12Kを覆った状態から徐々に遠ざけられると、開口12Kが閉鎖状態から徐々に開放され、加熱炉20に取り込まれる外気の量が多くなる。
【0028】
<フローフォーミング装置>
フローフォーミング装置30は、素材加熱装置20によって加熱された素材10を、フローフォーミング加工により圧延し成形する。フローフォーミング装置30は、素材加熱装置20から搬送された素材10を成形するための金型31と、金型31に素材を固定するための押え具33と、を備える。フローフォーミング装置30は、金型31と金型31を回転するための駆動部(不図示)を連結する主軸32と、回転する素材10を金型31に押圧して成形する加工用治工具34と、を備える。なお、素材10を押圧するための加工用治工具34は、例えば、加工ローラー又はへら等を使用することができる。
【0029】
素材10のフローフォーミング加工について説明する。
【0030】
素材加熱装置20で局所的に加熱された素材10は、金型31に設置され、次いで、押え具33が下降し、素材10を金型31に固定する。
【0031】
駆動部により、金型31及び素材10を、主軸32の軸心を回転軸として回転させ、加工用治工具34でリム部10Aを金型31に押圧して成形する。なお、加工用治工具34における押圧操作は、単数回でも複数回でもよい。
【0032】
<フローフォーミングシステム>
図1に示すように、フローフォーミングシステム100では、フローフォーミング装置30と、素材加熱装置20と、が一体として構成される。「一体」とは、図1に示すように、一つの装置にフローフォーミング装置30と素材加熱装置20とが組み込まれたことを意味し、また、フローフォーミング装置30と素材加熱装置20との位置関係が固定されたことを意味する。
【0033】
これにより、加熱後の素材10の温度を高く保った状態で直ちにフローフォーミング加工を行うことが可能となる。また、素材10の加熱時間を必要最低限に短縮することができるため、エネルギー効率を高めることが可能となり、ひいては、二酸化炭素の排出量を削減可能なフローフォーミングシステムを提供することができる。
【0034】
ただし、フローフォーミング装置30と素材加熱装置20とを別体としてもよい。フローフォーミング装置と素材加熱装置とを別体とすれば、一体とする場合と比較してスペース上の配置自由度を高めることができる。
【0035】
<制御装置>
図3は、制御装置50の一例のブロック図である。図3に示すように、制御装置50は、コンピュータで構成され、プロセッサ54、NVM(Non-volatile memory)56、及びRAM(Random Access Memory)58を備えている。プロセッサ54、NVM56、及びRAM58は、バス60に接続されている。
【0036】
プロセッサ54は、DSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)、及びGPU(Graphics Processing Unit)を含む処理装置であり、DSP及びGPUは、CPUの制御下で動作し、素材温度制御処理の実行を担う。ここでは、プロセッサ54の一例として、DSP、CPU、及びGPUを含む処理装置を挙げているが、これはあくまでも一例に過ぎず、プロセッサ54は、GPU機能を統合した1つ以上のCPU及びDSPであってもよいし、GPU機能を統合していない1つ以上のCPU及びDSPであってもよいし、TPU(Tensor Processing Unit)が搭載されていてもよい。
【0037】
NVM56は、各種プログラム及び各種パラメータ等を記憶する不揮発性の記憶装置である。NVM56としては、例えば、フラッシュメモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory))が挙げられる。
【0038】
RAM58は、一時的に情報が記憶されるメモリであり、プロセッサ54によってワークメモリとして用いられる。RAM58としては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等が挙げられる。
【0039】
バス60には、入力部70、表示部72、素材温度検出部15,炉内温度検出部17、素材入替検知部19、開口蓋開閉モータ20M、蓋開閉装置25、素材加熱部16N(素材加熱器16N1~16N12)、及び搬送部24が接続される。
入力部70は、本開示の技術の「入力部」の一例である。表示部72は、本開示の技術の「表示部」の一例である。
【0040】
入力部70は、キーボード及びマウスであり、ユーザからの指示を受け付け、受け付けた指示を示す信号をプロセッサ54に出力する。
【0041】
表示部72は、プロセッサ54の制御下で、各種情報をユーザに提示する。
【0042】
NVM56には、素材温度制御プログラム56Pが記憶されている。プロセッサ54は、NVM56から素材温度制御プログラム56Pを読み出し、読み出した素材温度制御プログラム56PをRAM58上で実行することにより素材温度制御処理を行う。プロセッサ54が、RAM58上で実行する素材温度制御プログラム56Pに従って、発光処理部54A、蓋開閉処理部54B、素材温度制御部54C、及び炉内温度制御部54Dとして動作することによって、素材温度制御処理が実現される。
素材温度制御プログラム56Pは、本開示の技術の「プログラム」の一例である。
【0043】
(作用)
次に、本実施の形態の素材加熱装置20の作用を説明する。
【0044】
図4は、素材温度制御プログラムの一例のフローチャートである。
【0045】
素材温度制御プログラムは、例えば、入力部70から、素材10の種類及び大きさと、素材10の目標温度と、素材10の温度を目標温度にするための時間と、が入力され、素材温度制御処理の開始命令が入力された時にスタートする。
【0046】
なお、素材10の種類及び大きさは、フローフォーミング装置30側の図示しない入力部から入力されてもよい。また、素材10の種類及び大きさは、素材10を撮像する撮像部から、素材10を撮像して得た画像データを入力部70が入力し、画像データに基づいて特定するようにしてもよい。
【0047】
素材温度制御処理は、素材温度制御処理の開始命令が入力された時t1(図5参照)、t11、t21から予め定められた時間Tが経過する加熱予定時間tn2(t2,t12、t22)までに、素材10の温度が目標温度Tmになるように、複数の素材加熱器16N1~16N12から光を素材10に照射することにより、素材10を加熱する処理である。
【0048】
ステップ100で、素材温度制御部54Cは、フローフォーミング装置30側から又は入力部70から、素材入替え指示の入力があったか否かを判断する。素材入替え指示の入力があったと判断されなかった場合、素材温度制御処理は、ステップ124に進む。素材入替え指示の入力があったと判断された場合、素材温度制御処理は、ステップ102に進む。
【0049】
ステップ102で、素材温度制御部54Cは、蓋開閉装置25を制御して蓋12Fを開放し、図7に示すように、昇降装置22を制御してステージ23を上昇させる。ステージ23に載置された素材10は、搬送部24により、素材加熱装置20からフローフォーミング装置30に搬送される。フローフォーミング装置30に搬送するため素材10がステージ23から離脱すると、素材入替検知部19の検知信号は、例えば、立ち下がる。
【0050】
上記のように素材10が、搬送部24により、素材加熱装置20からフローフォーミング装置30に搬送されると、搬送部24、例えば、ロボットアームが新たな素材10をステージ23に載置する。新たな素材10がステージ23に載置されると、素材入替検知部19の検知信号は、例えば、立ち上がる。このように素材入替検知部19の検知信号が立ち下がった後、素材入替検知部19の検知信号が立ち上がった場合、上昇したステージ23に、新たな素材10が載置されたこと、つまり、素材10の入れ替えが検知される。このように、素材温度制御部54Cは、素材10の入れ替えが検知された場合、素材10が複数の素材加熱器16N1~16N12に囲まれる位置に位置するように、昇降装置22を制御してステージ23を下降させ、蓋開閉装置25を制御して蓋12Fを閉鎖する。
【0051】
ステップ104で、発光処理部54Aは、予め定めた設定強度Liで光が素材10に照射されるように、複数の素材加熱器16N1~16N12を制御する。これにより、素材10の光加熱が開始される。
【0052】
ステップ106で、素材温度制御部54Cは、素材温度検出部15からの素材温度Tsを取り込む。
【0053】
ステップ108で、素材温度制御部54Cは、現状の素材温度Tsと設定上の素材温度(計測値)Tsとの差から、加熱予定時間tn2で目標温度Tmとなる光強度の増減(ΔLi1)を算出する。
【0054】
本実施の形態では、予め加熱テストによって素材10の最適な温度上昇曲線が設定される。設定上の素材温度(計測値)Tsは、当該温度上昇曲線上の、加熱開始からの経過時間における素材10の温度である。
加熱予定時間tn2で目標温度Tmとなる光強度の増減(ΔLi1)を算出する方法は、現状の素材温度Tsと設定上の素材温度(計測値)Tsとの差を利用する場合に限定されない。例えば、素材温度制御部54Cは、増減(ΔLi1)を、人工知能(Artificial Intelligence、AI)により算出する。例えば、予め定められた時間T、素材10の種類及び大きさ、及び目標温度Tmの各々毎に、予め定められた時間Tに目標温度Tmとなる増減(ΔLi1)を算出するように学習された学習モデルを用いて、計算する。学習モデルは、NVM56に記憶され、読み出されて利用される。
【0055】
ステップ110で、素材温度制御部54Cは、炉内温度検出部17から炉内温度Thを取り込む。
【0056】
ステップ112で、素材温度制御部54Cは、現状の炉内温度Thと設定上の炉内温度Thの差および光強度の増減(ΔLi1)から、現状の炉内温度Th=限界温度Trとなる時間txを予測する。限界温度Trは、上記のように、素材加熱器16N1~16N12が壊れる温度よりも所定値小さい温度である。
【0057】
本実施の形態では、予め加熱テストによって炉内の最適な温度上昇曲線が設定される。設定上の炉内温度Thは、当該温度上昇曲線上の、加熱開始からの経過時間における炉内の温度である。
【0058】
ステップ114で、素材温度制御部54Cは、tn2<txであるか否か、詳細には、加熱予定時間tn2が、現状の炉内温度Th=限界温度Trとなる時間txよりも早く到来するか否かを判断する。tn2<txであると判断された場合、素材温度制御処理は、ステップ118に進む。tn2<txであると判断されなかった場合、素材温度制御処理は、ステップ116に進む。
加熱予定時間tn2は、「予め定められた時間が経過する時」の一例である。現状の炉内温度Th=限界温度Trとなる時間txは、「加熱炉内の温度が、素材加熱部が壊れる温度よりも所定値小さい限界温度になる時」の一例である。
【0059】
ステップ116で、素材温度制御部54Cは、tn2<txとなる光強度の増減(ΔLi2)を算出する。この場合、素材温度制御処理は、ステップ118に進む。
【0060】
ステップ118で、発光処理部54Aは、複数の素材加熱器16N1~16N12の光強度を調整する。
ステップ118に進む場合には、第1に、ステップ114で、加熱予定時間tn2が、現状の炉内温度Th=限界温度Trとなる時間txよりも早く到来する(tn2<tx)と判断された場合である。この場合、ステップ118では、発光処理部54Aは、複数の素材加熱器16N1~16N12の光強度がΔLi1だけ増減するように複数の素材加熱器16N1~16N12を制御する。
【0061】
ステップ114が肯定判定されてステップ118の処理が実行されることにより、素材温度制御処理の開始命令が入力された時t1(図5参照)から予め定められた時間Tが経過する時t2(即ち、加熱予定時間tn2)までに、素材10の温度が目標温度Tmになるように、複数の素材加熱器16N1~16N12から光が素材10に照射される。
【0062】
ステップ118に進む場合には、第2に、ステップ116の処理が実行された場合がある。この場合、ステップ118では、発光処理部54Aは、複数の素材加熱器16N1~16N12の光強度がΔLi2だけ増減するように複数の素材加熱器16N1~16N12を制御する。
【0063】
ステップ116の処理後にステップ118の処理が実行されることにより、複数の素材加熱器16N1~16N12の光強度がΔLi2だけ増減するように複数の素材加熱器16N1~16N12を制御する。例えば、図5に示すように、時刻tx1において、光強度がΔLi2=L0だけ減少する。ステップ114の判断が肯定判定のため素材温度制御処理がステップ116に進む場合は、複数の素材加熱器16N1~16N12の光強度をこのままの光強度とすると、加熱予定時間tn2が到来する前に、炉内温度Thが限界温度Trとなる場合である。よって、炉内温度Thが限界温度Trに達したから光強度を下げるのではなく、本実施の形態では、このままの光強度で素材10に光を照射し続けると、素材10が目標温度Tmに到達する前に炉内温度Thが限界温度Trとなってしまうことを予測して、発光処理部54Aは、事前に(途中で)複数の素材加熱器16N1~16N12の光強度を下げる。
ステップ116の処理後にステップ118の処理が実行されると、第1に、素材温度制御処理の開始命令が入力された時t1(図5参照)から予め定められた時間Tが経過する時t2(即ち、加熱予定時間tn2)までに、素材10の温度が目標温度Tmになるように、複数の素材加熱器16N1~16N12から光が素材10に照射される。第2に、素材10の温度が目標温度Tmになる前に、現状の炉内温度Th=限界温度Trとならないように、複数の素材加熱器16N1~16N12から光が素材10に照射される。
【0064】
ステップ120で、素材温度制御部54Cは、素材温度検出部15からの素材温度Tsを取り込む。
【0065】
ステップ122で、素材温度制御部54CはTmL<Tsであるか否かを判断する。ここで、TmLは、素材10の目標温度の下限値であり、目標の加熱温度を400℃とした場合、下限値は、例えば390℃である。
【0066】
ステップ122はステップ104で光加熱開始直後から行われ、TmL<Tsと判定されるまで、何度もステップ106へ戻る。この間にステップ114と116の判定が何度も行われ、その都度ステップ118で光強度を調整する。
【0067】
ステップ122でTmL<Tsと判定されるとステップ123へ進む。ステップ123では素材制御部54CはTs<Tmuであるか否かを判断する。ここでTmuは、素材10の目標温度の上限値であり、目標の加熱温度を400℃とした場合、例えば上限値は410℃である。ステップ123でTs<Tmuと判断された場合、素材温度制御処理は、ステップ100に進むが、ステップ123でTs<Tmuでない場合、即ちTsがTmu以上であると判断された場合、素材温度制御処理はステップ124に進む。
【0068】
ステップ123でTs<Tmuと判断されステップ100へと進んだ場合でも、前述のようにステップ100で、素材入替え指示の入力があったと判断されなかった場合、素材温度制御処理は、ステップ124に進む。
【0069】
ステップ124で、炉内温度制御部54Dは、炉内温度検出部17から炉内温度Thを取り込む。
【0070】
ステップ126で、炉内温度制御部54Dは、Tr<Thであるか否かを判断する。
【0071】
Trは、上記のように、加熱炉内の空気の温度が、素材加熱器が壊れる温度よりも所定値小さい限界温度である。よって、ステップ126で、炉内温度制御部54Dは、炉内温度Thが限界温度Trより大きいか否かを判断する。Tr<Thであると判断された場合、素材温度制御処理は、ステップ134に進む。Tr<Thであると判断されなかった場合、素材温度制御処理は、ステップ128に進む。
【0072】
ステップ128で、炉内温度制御部54Dは、素材温度検出部15からの素材温度Tsを取り込む。
【0073】
ステップ130で、炉内温度制御部54Dは、Tmu<Tsであるか否か、即ち、素材10の目標温度の上限Tmuより素材温度Tsのほうが大きいか否かを判断する。Tmu<Tsであると判断された場合、素材温度制御処理は、ステップ134に進む。Tmu<Tsであると判断されなかった場合、素材温度制御処理は、ステップ132に進む。
【0074】
ステップ132で、炉内温度制御部54Dは、現状の炉内温度Thと現状の素材温度Tsから素材温度(計測値)Tsを許容範囲(TmL<Ts<Tmu)に保持する光強度の増減(ΔLi3)の算出が可能であるか否かを判断する。光強度の増減(ΔLi3)の算出が可能であると判断された場合、素材温度制御処理は、ステップ118に進む。光強度の増減(ΔLi3)の算出が可能であると判断されなかった場合、素材温度制御処理は、ステップ134に進む。
【0075】
ステップ134で、発光処理部54Aは、複数の素材加熱器16N1~16N12の稼働を停止することにより、素材10の光加熱を停止する。炉内温度制御部54Dは、図6に示すように、外気取り入れ装置20FMを作動、具体的には、開口蓋開閉モータ20Mを作動させて、開口蓋20Fを開口12Kから遠ざけることにより、加熱炉20に取り込まれる外気の量を多くする。
【0076】
ステップ126で、炉内温度Thが限界温度Trより大きいと判断されて、ステップ134に進んだ場合、ステップ134で、素材10の光加熱が停止され、炉内温度Thが限界温度Tr以下となるように、加熱炉20に取り込まれる外気の量を多くする。よって、素材加熱器16N1~16N12が壊れることを防止することができる。
【0077】
ステップ130で素材10の目標温度の上限Tmuより素材温度Tsのほうが大きいと判断された場合、ステップ134で、素材10の光加熱が停止され、加熱炉20に取り込まれる外気の量を多くする。これによって、素材10の温度が目標温度の上限Tmuより大きくなった場合でも、上限Tmu以下の温度まで迅速に下げることが可能である。
【0078】
ステップ132で、素材温度(計測値)Tsを許容範囲に保持する光強度の増減(ΔLi3)の算出が可能であると判断されて、ステップ118に進んだ場合、ステップ118で、発光処理部54Aは、複数の素材加熱器16N1~16N12の光強度がΔLi3だけ増減するように複数の素材加熱器16N1~16N12を制御する。よって、素材温度(計測値)Tsを許容範囲(TmL<Ts<Tmu)に保持することができる。
【0079】
素材温度(計測値)Tsを許容範囲(TmL<Ts<Tmu)に保持している状態で、フローフォーミング装置30が素材10を受け入れ可能になると、フローフォーミング装置30側から入力部70に、素材入替え指示が入力される。この場合、ステップ100が肯定判定となり、上記のように、蓋開閉装置25により蓋12Fが開放され(図5の時刻ty1参照)、図7に示すように、ステージ23が昇降装置22により上昇し、ステージ23に載置された素材10は、搬送部24(図2も参照)により、素材加熱装置20からフローフォーミング装置30に素材10が搬送される。その後、上記のように、例えば、ロボットアームによりステージ23に新たな素材10が載置され、ステージ23が昇降装置22により下降し、素材10は、複数の素材加熱器16N1~16N12に囲まれる位置に位置する。蓋開閉装置25により蓋が閉じられる。フローフォーミング装置30から、素材温度制御処理の開始命令が入力される(図5の時刻t11参照)。
【0080】
図5の時刻ty1から時刻t11までの時間E1は、素材10の入れ替え時間である。蓋12Fが開放されているので、炉内温度も下降する。
時刻t2と時刻t11との間、複数の素材加熱器16N1~16N12から光が、所定強度で照射される。なお、時刻t2と時刻t11との間、複数の素材加熱器16N1~16N12から光が照射されないようにしてもよい。
【0081】
上記のように素材温度制御処理の開始命令が入力される(図5の時刻t11参照)ので、図4の素材温度制御処理が再度実行される。例えば、時刻tx2で、tx≦tn2と判断される場合がある。この場合、ステップ116及びステップ118の処理により、素材加熱器16N1~16N12の光強度が、例えば、所定値L0(=ΔLi2)小さくなる。一方、フローフォーミング装置30では、フローフォーミング処理が行われる。
【0082】
時刻t11からの素材10の加熱が終了すると(図5の時刻t12)、素材10の入れ替えが行われ(時間E2参照)、素材温度制御処理の開始命令が入力される(図5の時刻t21参照)。図4の素材温度制御処理が再度実行される。一方、フローフォーミング装置30では、フローフォーミング処理が行われる。
【0083】
時刻t11から時刻t21までの間が、加熱された素材10の塑性加工のサイクルタイムSである。
【0084】
時刻t21からの素材10の加熱が終了すると(図5の時刻t22)、素材10の入れ替えが行われるが、図5に示す時間Wでは、フローフォーミング装置30から新たな素材10の受け入れ可の信号が入力されるまで、素材10がステージ23に載置されたままの状態で、搬送されるのを待っている状態であり、光加熱を抑制し、炉内温度を調整することで素材10の温度がTm付近で維持されている状態である。
図5に示す例では、フローフォーミング装置30から新たな素材10の受け入れ可の信号が入力されず、素材10の温度が許容範囲を超え、又は、炉内温度が限界値を超えたので、複数の素材加熱器16N1~16N12からの光の照射を停止し、強制換気により炉内温度を下げ、その結果、素材の温度も下げている例が示されている。
【0085】
(効果)
以上説明したように本実施の形態は、熱伝導のみによる従来の加熱よりも短時間に加熱対象を加熱することができる。具体的には、素材10が例えばアルミニウムの場合、熱伝導のみ加熱の場合、素材の温度を目標温度にするための時間として、数十分を必要とする。これに対し、本実施の形態では、熱伝導の加熱と光加熱とで素材を加熱するので、素材の温度を目標温度にするための時間は数分で足りる。よって、本実施の形態では、熱伝導のみによる従来の加熱よりも素材を短時間に加熱することができる。よって、素材の温度を目標温度とするための予め定められた時間をより短くすることできる。従って、フローフォーミング装置30に素材をより早く搬出することできる。従って、塑性加工のサイクルタイムに合わせた同時の加熱を行うことが可能となり、塑性加工装置の日常の停止や非常停止にも対応することができる。
【0086】
本実施の形態では、炉内温度検出部17により加熱炉内の空気の温度を検出し、加熱炉内の空気の温度が、素材加熱器が壊れる温度よりも所定値小さい限界温度以上の場合、加熱炉内の空気の温度が限界温度以下となるように、素材加熱器を制御する。よって、本実施の形態では、素材加熱器が壊れることを防止することができる。
【0087】
本実施の形態では、円弧状に配置される複数の素材加熱器から光を素材に照射することにより、素材を加熱する。短時間で加熱する方法には別に、コイルに高周波電流を流すことによりコイル内に配置した素材を加熱する高周波加熱も有るが、この方法では、コイルと素材の隙間が数mmでも変化すると数日間かけての調整が必要である。しかし、本実施の形態では、複数の素材加熱器が配置される円弧内に配置される素材であれば、素材加熱器と素材との間の距離が、素材が変わることにより、変化しても、すぐに加熱することができる。よって、本実施の形態では、複数の素材加熱器と素材との間の距離の調整を不要とすることができる。
【0088】
本実施の形態では、二酸化炭素を排出しない加熱部で素材を加熱する。よって、本実施の形態では、バーナー等による炎を使用する加熱部と比較して、二酸化炭素の排出を抑制することができる。本実施の形態では、光加熱を用いているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、電磁誘導加熱、高周波加熱、蒸気加熱、又は、流動層加熱を利用してもよい。
【0089】
本実施の形態では、複数の素材加熱器から光を素材に照射することにより、素材の一部を局所的に加熱する。よって、加熱不要部分の温度上昇を相対的に低くすることができる。また、本実施の形態では、本実施の形態の光加熱によるものとすると、アルミニウムを加熱した場合、二酸化炭素は全く発生しない。
【0090】
本実施の形態では、フローフォーミング装置と素材加熱装置とが、一つのユニットとして一体である。これにより、加熱後の素材の温度を高く保った状態で直ちにフローフォーミング加工を行うことが可能となる。これにより、金属素材の加熱時間が必要最低限に短縮され、エネルギー効率を高めることが可能となるため、二酸化炭素の排出量を削減可能なフローフォーミングシステムを提供することができる。
【0091】
本実施の形態の素材加熱装置は、1つの加熱炉では、1個の素材を加熱する。フローフォーミング加工の塑性加工のサイクルタイムに合わせて1つの素材10を都度加熱する。よって、フローフォーミング装置30にトラブルが生じ、素材10を素材加熱装置20で再加熱する場合、大型の加熱炉のように数十個の素材を再加熱する場合に比較して、加熱時間を的短くすることができ、エネルギーロスを無くすことができ、不要な二酸化炭素の消費を抑制することができる。また、本実施の形態は、素材加熱装置を設置する面積及びその費用を抑制することができる。
【0092】
また、本実施の形態では、素材加熱装置内でフローフォーミング加工のため温度維持しながら待っている素材の数を1個にすることができ、素材加熱装置の規模を小さくすることができる。よって、素材加熱装置の昇温にかかる時間を短縮でき、停止状態から短時間で起動することができる。そのため、休日中などに製造を停止する際に、素材加熱装置を稼働させ続ける必要がないため、フローフォーミングシステム全体のエネルギー効率を大幅に向上させることができる。
【0093】
(変形例)
<第1の変形例>
図8は、第1の変形例の加熱炉の断面図である。図8に示すように、素材加熱装置は、素材加熱器16N1を移動させる移動機構(例えば、ラックアンドピニオン機構)116N1を更に備える。なお、他の素材加熱器16N2~16N12についても移動機構が設けられる。制御装置50は、素材10の大きさ及び形状に基づいて、複数の素材加熱器16N1~16N12の各々が、素材10から所定距離以内に移動するように、移動機構を制御する。よって、第1の変形例の素材加熱装置では、素材の大きさ及び形状が変化しても、素材加熱器を移動させて対処する。よって、第1の変形例の素材加熱装置素材の大きさ及び形状が変化しても、1つの素材加熱装置で対処することができる。
移動機構16N1等は、本開示の技術の「移動機構」の一例である。
【0094】
<第2の変形例>
図9は、第2の変形例の温度制御された素材の温度のグラフである。前述した実施の形態では、素材の加熱開始温度が略同じであるが、本開示の技術はこれに限定されない。図9に示すように、素材の加熱開始温度がA>B>Cでもよい。このように素材加熱開始温度が異なっても、制御装置50は、予め定められた時間T内に、素材10の温度を目標温度Tmになるための加熱の強さを算出し、算出された強さで素材を加熱するよう素材加熱部を制御する。よって、素材加熱開始温度が異なっても、予め定められた時間内に、素材の温度を目標温度Tmにすることができる。
【0095】
<第3の変形例>
第3の変形例では、前述した実施の形態における素材温度制御処理(図4)のステップ106、110、120、124、128で取り込まれた各温度を、表示部72に、図5に示すように、横軸に経過時間、縦軸に温度をとったグラフで表示する。これによって作業者は炉内の温度制御が上手く作動しているかの確認を行うことができる。
【0096】
<第4の変形例>
第4の変形例では、加熱炉20内の空気を加熱する加熱炉内加熱部を更に備える。加熱炉内加熱部は、二酸化炭素を排出しない加熱部(例えば、電磁誘導加熱、高周波加熱、蒸気加熱、流動層加熱、光加熱を利用する加熱部)でも、ガスバーナー等による炎を使用する加熱部でもよい。
第5の変形例の加熱炉内加熱部は、本開示の技術の「加熱炉内加熱部」の一例である。
【0097】
<その他の変形例>
上記実施形態では、NVM56に素材温度制御プログラム56Pが記憶されている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、素材温度制御プログラム56PがSSD、USBメモリ、又は磁気テープなどの可搬型のコンピュータ読取可能な非一時的記憶媒体に記憶されていてもよい。非一時的記憶媒体に記憶されている素材温度制御プログラム56Pは、制御装置50のコンピュータにインストールされる。プロセッサ54は、素材温度制御プログラム56Pに従って、素材温度制御処理を実行する。
【0098】
また、ネットワークを介して素材加熱装置20に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶装置に素材温度制御プログラム56Pを記憶させておき、素材加熱装置20の要求に応じて素材温度制御プログラム56Pがダウンロードされ、素材加熱装置20にインストールされるようにしてもよい。
【0099】
なお、素材加熱装置20に接続される他のコンピュータ又はサーバ装置等の記憶装置、又はNVM56に素材温度制御プログラム56Pの全てを記憶させておく必要はなく、素材温度制御プログラム56Pの一部を記憶させておいてもよい。
【0100】
上記実施形態では、本開示の技術がソフトウェア構成によって実現される形態例を挙げて説明しているが、本開示の技術はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はPLD(Programmable Logic Device)を含むデバイスを適用してもよい。また、ハードウェア構成及びソフトウェア構成の組み合わせを用いてもよい。
【0101】
上記実施形態で説明した素材温度制御処理を実行するハードウェア資源としては、次に示す各種のプロセッサを用いることができる。プロセッサとしては、例えば、ソフトウェア、すなわち、プログラムを実行することで、素材温度制御処理を実行するハードウェア資源として機能する汎用的なプロセッサであるCPUが挙げられる。また、プロセッサとしては、例えば、FPGA、PLD、又はASICなどの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電子回路が挙げられる。何れのプロセッサにもメモリが内蔵又は接続されており、何れのプロセッサもメモリを使用することで素材温度制御処理を実行する。
【0102】
素材温度制御処理を実行するハードウェア資源は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、又はCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、素材温度制御処理を実行するハードウェア資源は1つのプロセッサであってもよい。
【0103】
1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが、素材温度制御処理を実行するハードウェア資源として機能する形態がある。第2に、SoC(System-on-a-chip)などに代表されるように、素材温度制御処理を実行する複数のハードウェア資源を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、素材温度制御処理は、ハードウェア資源として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて実現される。
【0104】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電子回路を用いることができる。また、上記の素材温度制御処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0105】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0106】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0107】
10 素材
15 素材温度検出部
12 加熱炉
16N 素材加熱部
16N1~16N12 素材加熱器
20 素材加熱装置
20FM 外気取り入れ装置
22 昇降部
23 ステージ
24 搬送部
25 蓋開閉装置
30 フローフォーミング装置
50 制御装置
56P 素材温度制御プログラム
100 フローフォーミングシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9