(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168232
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】排気室、蒸気タービン及び排気室の改造方法
(51)【国際特許分類】
F01D 25/30 20060101AFI20241128BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20241128BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F01D25/30 A
F01D25/30 B
F01D25/24 C
F01D25/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084725
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】田畑 創一朗
(57)【要約】
【課題】低コストで蒸気の圧力損失を低減させて圧力回復量を大きくすることができる排気室を提供する。
【解決手段】軸線回りに回転するタービンロータの出口から軸線方向下流側に流出する蒸気を外部に導く排気室であって、排気ケーシング内における排気口側とは軸線を挟んで反対側の反排気側のみに設けられて、軸線を中心とした円弧状をなす軸線方向上流側の端部が内側ディフューザの外周面に接続されているとともに、軸線方向下流側に向かうに従って円弧が拡径するように延びる内貼り部材を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転するタービンロータの出口から軸線方向下流側に流出する蒸気を外部に導く排気室であって、
前記出口の外周縁部に連なる環状をなして前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径する外側ディフューザ、及び、前記出口の内周縁部に連なる環状をなして前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径するとともに前記外側ディフューザとの間にディフューザ空間を区画する内側ディフューザを有するディフューザと、
前記内側ディフューザの前記軸線方向下流側の端部から径方向外側に向かって広がるように延びる端板、前記端板とともに前記ディフューザ空間を外周側から囲う排気空間を区画するとともに径方向外側の一方向に向かって開口する排気口が形成された外周板を有する排気ケーシングと、
前記排気ケーシング内における前記排気口側とは前記軸線を挟んで反対側に位置する反排気側のみに設けられて、前記軸線方向上流側の端部が前記内側ディフューザの外周面に接続されているとともに、前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径するように延びる板状をなす内貼り部材と、
を備える排気室。
【請求項2】
前記内貼り部材の前記軸線方向下流側の端部が、前記端板に対して周方向にわたって接続されている請求項1に記載の排気室。
【請求項3】
前記内貼り部材の前記軸線方向下流側の端部が、前記端板に対して周方向にわたって隙間を介して離間して請求項1に記載の排気室。
【請求項4】
前記排気口は、下方に向かって開口しており、
前記排気ケーシングは、水平分割面を介して上半部と下半部とに分割可能とされている請求項1に記載の排気室。
【請求項5】
前記内貼り部材は、
前記軸線方向視で前記軸線から前記反排気側に向かう基準線を中心とした前記軸線の周方向の90°~180°の領域に設けられている請求項1に記載の排気室。
【請求項6】
前記内貼り部材は、
前記軸線方向視で前記軸線から前記反排気側に向かう基準線を中心とした前記軸線の周方向の120°~180°の範囲に設けられている請求項1に記載の排気室。
【請求項7】
前記内貼り部材は、
前記軸線方向視で前記軸線から前記反排気側に向かう基準線を中心とした前記軸線の周方向の150°~180°の範囲に設けられている請求項1に記載の排気室。
【請求項8】
前記内貼り部材の裏面を前記軸線方向下流側から支持する支持部材をさらに備える請求項1に記載の排気室。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の排気室と、
前記タービンロータを有する蒸気タービン本体と、
を備える蒸気タービン。
【請求項10】
軸線回りに回転するタービンロータの出口から軸線方向下流側に流出する蒸気を外部に導く排気室の改造方法であって
前記排気室は、
前記出口の外周部に連なる環状をなして前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径する外側ディフューザ、及び、前記出口の内周部に連なる環状をなして前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径するとともに前記外側ディフューザとの間にディフューザ空間を区画する内側ディフューザを有するディフューザと、
前記内側ディフューザの前記軸線方向下流側の端部から軸線に直交する面に沿って径方向外側に向かって広がるように延びる端板、前記端板とともに前記ディフューザ空間を外外周側から囲う排気空間を画成するとともに径方向外側の一方向に向かって開口する排気口が形成された外周板を有する排気ケーシングと、
を備えており、
前記排気ケーシング内における前記排気口側とは前記軸線を挟んで反対側の反排気側のみに、前記軸線方向上流側の端部が前記内側ディフューザの外周面に接続されているとともに、前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径するように延びる板状をなす内貼り部材を設ける追設工程を含む排気室の改造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気室、蒸気タービン及び排気室の改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気室を有する蒸気タービンが開示されている。排気室は、タービンロータの最終動翼列から流出した蒸気を外部に導く役割を有している。
この排気室は、ディフューザ及び排気ケーシングを有する。ディフューザは、軸線に対して環状をなし、軸線方向下流側に向うに連れて次第に径方向外側に向かうディフューザ空間を形成する。ディフューザは、径方向外側の外側ディフューザ及び径方向外側の内側ディフューザによって構成されている。
ディフューザ空間内には、タービンロータの最終動翼列から流出した蒸気が流入する。排気ケーシングは、ディフューザに連通し、ディフューザの外周を軸線に対する周方向に広がって、ディフューザ空間から流入した蒸気を外部に導く排気空間を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気室内では、最終動翼列から流出した蒸気の圧力回復が図られる。この圧力回復量が大きいほど、最終動翼列から流出した直後の蒸気の圧力が低くなり、タービン効率が向上する。
また、近年火力発電プラントでは負荷変動吸収のためのフレキシブルな運転が求められている。このようなフレキシブルな運転を実行する場合、設計点での運転、つまり定格運転以外での部分負荷での運転を実行する必要がある。部分負荷での運転を実行すると、排気室内で剥離や逆流が発生し、排気室内で圧力損失が大きくなり、圧力回復量が低下する。
【0005】
さらに、圧力回復量の増大を図るために何等かの施工をする際には、低コストで実施できることが好ましい。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、低コストで蒸気の圧力損失を低減させて圧力回復量を大きくすることができる排気室、蒸気タービン、及び、蒸気タービンの改造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る排気室は、軸線回りに回転するタービンロータの出口から軸線方向下流側に流出する蒸気を外部に導く排気室であって、前記出口の外周部に連なる環状をなして前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径する外側ディフューザ、及び、前記出口の内周部に連なる環状をなして前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径するとともに前記外側ディフューザとの間にディフューザ空間を区画する内側ディフューザを有するディフューザと、前記内側ディフューザの前記軸線方向下流側の端部から軸線に直交する面に沿って径方向外側に向かって広がるように延びる端板、前記端板とともに前記ディフューザ空間を外外周側から囲う排気空間を画成するとともに径方向外側の一方向に向かって開口する排気口が形成された外周板を有する排気ケーシングと、前記排気ケーシング内における前記排気口側とは前記軸線を挟んで反対側の反排気側のみに設けられて、前記軸線を中心とした円弧状をなす前記軸線方向上流側の端部が前記内側ディフューザの外周面に接続されているとともに、前記軸線方向下流側に向かうに従って前記円弧が拡径するように延びる内貼り部材と、を備える。
【0008】
本開示に係る蒸気タービンは、上記の排気室と、前記タービンロータを有する蒸気タービン本体と、を備える。
【0009】
本開示に係る排気室の改造方法は、軸線回りに回転するタービンロータの出口から軸線方向下流側に流出する蒸気を外部に導く排気室の改造方法であって前記排気室は、前記出口の外周部に連なる環状をなして前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径する外側ディフューザ、及び、前記出口の内周部に連なる環状をなして前記軸線方向下流側に向かうに従って拡径するとともに前記外側ディフューザとの間にディフューザ空間を区画する内側ディフューザを有するディフューザと、前記内側ディフューザの前記軸線方向下流側の端部から径方向外側に向かって広がるように延びる端板、前記端板とともに前記ディフューザ空間を外外周側から囲う排気空間を画成するとともに径方向外側の一方向に向かって開口する排気口が形成された外周板を有する排気ケーシングと、
を備えており、前記排気ケーシング内における前記排気口側とは前記軸線を挟んで反対側の反排気側のみに、前記軸線を中心とした円弧状をなす前記軸線方向上流側の端部が前記内側ディフューザの外周面に接続されているとともに、前記軸線方向下流側に向かうに従って前記円弧が拡径するように延びる内貼り部材を設ける追設工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の排気室、蒸気タービン及び排気室の改造方法によれば、低コストで蒸気の圧力損失を低減させて圧力回復量を大きくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る蒸気タービンの模式的な斜視図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係る蒸気タービンの軸線を含む縦断面図である。
【
図3】本開示の第一実施形態に係る蒸気タービンの要部断面図であって、排気室内での蒸気の流れを説明する図である。
【
図4】本開示の第一実施形態に係る蒸気タービンにおける内貼り部材の斜視図である。
【
図5】本開示の第二実施形態に係る蒸気タービンの要部断面図であって、排気室内での蒸気の流れを説明する図である。
【
図6】本開示の第三実施形態に係る蒸気タービンの軸線に直交する断面図であって、内貼り部材の設置領域を示す図である。
【
図7】本開示の排気室の改造方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について
図1~
図6を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の蒸気タービンシステム1は、復水器2と蒸気タービン3と備えている。
【0013】
<復水器>
復水器2は、上方に向かって開口している。復水器2には、当該開口を介して蒸気タービン3から排出される蒸気が上方から供給される。復水器2は蒸気を冷却して凝縮させる。復水器2内は低圧に維持されており、これにより蒸気タービン3からの蒸気を吸い込み可能とされている。
【0014】
<蒸気タービン>
蒸気タービン3は復水器2の上方に該復水器2と一体に設けられている。蒸気タービン3は外部から供給される蒸気によって仕事をし、当該仕事をした蒸気を復水器2に排出する。
詳しくは
図2に示すように、蒸気タービン3は、蒸気タービン本体10及び排気室20を備えている。
【0015】
<蒸気タービン本体>
蒸気タービン本体10は、外部から供給される蒸気によって駆動される。蒸気タービン3は、タービンロータ11、ステータ16及び蒸気流入管19を有している。
【0016】
タービンロータ11は、ロータ軸12及び動翼列13を有している。
ロータ軸12は、水平方向に延びる軸線Oを中心として軸線O方向に延びている。ロータ軸12は軸線O方向の両端部がそれぞれ軸受14によって軸線O回りに回転可能に支持されている。
【0017】
動翼列13は、ロータ軸12の外周部に取り付けられている。動翼列13は軸線O方向に間隔をあけて複数が設けられている。動翼列13は、それぞれタービンロータ11から軸線Oの径方向外側に向かって延びる動翼を有している。動翼列13は、動翼がロータ軸12の周方向に複数配列されることで構成されている。
【0018】
ステータ16は、タービンケーシング17及び静翼列18を有している。
タービンケーシング17は、軸線Oを中心として軸線O方向に延びる筒状をなしている。タービンケーシング17は、タービンロータ11の軸線O方向における動翼列13が存在する部分を外周がから囲んでいる。
【0019】
静翼列18はタービンケーシング17の内周面に設けられている。静翼列18は、軸線O方向に間隔をあけて複数が設けられている。静翼列18は、隣り合う動翼列13同士の間に入り込むように、軸線O方向に動翼列13と交互に配置されている。静翼列18は、それぞれタービンロータ11から軸線Oの径方向内側に延びる静翼を有している。静翼列18は静翼がロータ軸12の周方向に複数配列されることで構成されている。
【0020】
蒸気流入管19は、タービンケーシング17の軸線O方向の中央部に固定されている。蒸気流入管19は、上下方向に延びる管であって、上端開口から蒸気が導入される。蒸気流入管19はタービンケーシング17を径方向に貫通している蒸気流入管19の下端開口は、蒸気タービン本体10の軸線O方向の中央部にてタービンケーシング17とロータ軸12との間の空間に開口している。蒸気流入管19の下端開口から見て、軸線O方向両側には、それぞれ静翼列18と動翼列13とが順次並んだ構成とされている。
【0021】
蒸気導入管の下端開口から排出された蒸気は、軸線O方向両側に分岐して流通する。この際、蒸気は、ロータ軸12とタービンケーシング17との間の軸線Oを中心とした環状の空間を主流路として、静翼列18と動翼列13との間を順次通過する。この過程で動翼列13が蒸気からの運動エネルギーを受けることでタービンロータ11が回転駆動される。全ての静翼列18と動翼列13とを通過した蒸気は、蒸気タービン本体10の軸線O方向両側の端部における軸線Oを中心とした環状の出口から排出される。当該環状の出口には、複数の動翼列13のうち最下流側となる最終段の動翼列13が存在している。
このように本実施形態の蒸気タービン本体10は、いわゆる二分排気型の構成とされている。
【0022】
<排気室>
排気室20は、蒸気タービン本体10の出口から排出される蒸気を復水器2に導くための流路を形成する。
排気室20は、ディフューザ21、排気ケーシング30、内貼り部材40及び支持部材50を備えている。
【0023】
<ディフューザ>
ディフューザ21は、蒸気タービン本体10の環状の出口から軸線O方向に排出される蒸気を案内する。以下では、蒸気タービン本体10から排出される蒸気が進行する軸線O方向を軸線O方向下流側と称し、その反対側の軸線O方向を軸線O方向上流側(蒸気流入管19側)と称する。
ディフューザ21は、外側ディフューザ22と内側ディフューザ23とを有している。
【0024】
<外側ディフューザ22>
外側ディフューザ22は、蒸気タービン本体10の出口の外周縁部に連なる部材であって、軸線Oを中心とした環状をなしている。外側ディフューザ22は、軸線O方向上流側の端部が最終段の動翼列13を外周側から囲うように配置されている。外側ディフューザ22は、軸線O方向下流側に向かうにしたがって軸線Oの径方向外側に向かうように徐々に拡径している。外側ディフューザ22の軸線O方向下流側の端部は、排気ケーシング30の軸線O方向下流側の端部に接続されている。
外側ディフューザ22の径方向内側を向く面である内周面は、外側ディフューザ22の形状にしたがって、軸線O方向下流側に向かうにしたがって径方向外側に拡径するように湾曲する凸曲面とされている。
【0025】
<内側ディフューザ23>
内側ディフューザ23は、蒸気タービン本体10の出口の内周縁部に連なる部材であって、軸線Oを中心とした環状をなしている。内側ディフューザ23は、軸線O方向上流側の端部が最終段の動翼列13の基端となるロータ軸12の外周面に連なるように配置されている。内側ディフューザ23は、軸線O方向下流側に向かうに従って径方向外側に向かうように徐々に拡径している。外側ディフューザ22の軸線O方向下流側の端部は、外側ディフューザ22の軸線O方向下流側の端部よりもさらに軸線O方向下流側に位置している。外側ディフューザ22の下流側の端部は、内側ディフューザ23の上流側の端部及び下流側の端部よりも径方向内側に位置している。
内側ディフューザ23の径方向外側を向く面である外周面は、内側ディフューザ23の形状にしたがって、軸線O方向下流側に向かうにしたがって径方向外側に拡径するように湾曲する凹曲面とされている。
【0026】
<ディフューザ空間>
このような外側ディフューザ22と内側ディフューザ23とによって、ディフューザ空間Dが区画形成されている。即ち、凸曲面状をなす外側ディフューザ22の内周面と凹曲面状をなす内側ディフューザ23の内周面とによって、ディフューザ空間Dが区画形成されている。
【0027】
ディフューザ空間Dは、軸線O方向下流側に向かうに従って次第に径方向外側に向かう空間である。ディフューザ空間Dは、軸線Oを中心とした環状をなしている。ディフューザ空間Dの軸線O方向上流側の端部は、蒸気タービン本体10の出口に合わせて環状をなしている。ディフューザ空間Dには、蒸気タービン3の出口から排出される蒸気が導入される。ディフューザ空間Dの流路断面積は、ディフューザ空間Dにおける蒸気の流れの下流側に向かうほど拡大している。
【0028】
<排気ケーシング30>
図1及び
図2に示すように、排気ケーシング30は、蒸気タービン3の外形をなしている。排気ケーシング30は、ディフューザ空間Dを通過した蒸気が導かれる排気空間Eを区画形成する。
排気ケーシング30は、端板31、外周板32及び仕切板34を有している。
【0029】
<端板>
端板31は、蒸気タービン3の外形における軸線O方向の両端部を形成している。端板31は、軸線Oに直交する仮想面に沿って延びる平板状をなしている。端板31は、内側ディフューザ23の軸線O方向下流側の端部から軸線Oの径方向外側に向かって広がるように延びている。即ち、端板31には軸線Oを中心として軸線O方向に貫通する孔部が形成されており、当該孔部の内周縁部が周方向全域にわたって内側ディフューザ23の軸線O方向下流側の端部に接続されている。端板31における軸線Oよりも上方の上部は、上縁が上方に向かって凸となる半円状をなしている。端板31における軸線Oよりも下方の下部は、半円状の上部に連なり下方に延びる矩形状をなしている。
なお、端板31は、必ずしも軸線Oに直交する仮想面に沿って延びていなくともよく、例えば、軸線Oに対して任意の角度で交差する仮想面に沿った平板状であってよい。また、端板31は、軸線O径方向外側に広がるように延びていればよく、例えば曲面状や曲面と平面との組み合わせた形状であってもよい。
【0030】
<外周板32>
外周板32は、蒸気タービン本体10を外周側から取り囲むように設けられている。外周板32における軸線Oよりも上方の上部は、軸線Oを中心とするとともに上方に向かって凸となる半円筒面状をなしている。外周板32における軸線Oよりも下方の下部は、半円筒面状の両下端に連なり下方に延びる矩形状をなしている。
【0031】
外周板32における軸線O方向下流側の端部は、端板31の外周縁部に接続されている。外周板32と端板31とによって、ディフューザ空間Dを軸線Oの径方向外側から全周にわたって囲う排気空間Eが区画形成されている。ディフューザ空間Dの出口は、その全域が排気空間Eに連通している。
【0032】
外周板32の最下部は下方に向かって開口している。当該開口箇所は、軸線Oの径方向外側の一方向に開口する蒸気の排気口33とされている。即ち、外周板32の下部に排気口33が形成されている。外周板32及び端板31は、復水器2のケーシングに接続されている。これにより、排気空間Eは、排気口33を介して復水器2の内部に連通している。したがって、本実施形態は、下方排気型の蒸気タービン3となる。
【0033】
<仕切板34>
図2に示すように、仕切板34は、軸線Oに直交する方向に延びるとともに軸線Oを中心とする環状なす平板状の部材である。仕切板34は外周板32の内側で該外周板32と蒸気タービン本体10とに挟まれるように設けられている。仕切板34は、蒸気流入管19を軸線O方向両側から挟み込むように一対が設けられている。
【0034】
仕切板34の内周縁部は、タービンケーシング17の外周面に全周にわたって接続されている。一対の仕切板34は、それぞれタービンケーシング17の軸線O方向の端部よりも蒸気流入管19側(軸線O方向上流側)に離間した位置に設けられている。仕切板34の外周縁部は、下部を除き外周板32の内周面に接続されている。
【0035】
各仕切板34における軸線O方向下流側を向く面は、端板31に対して軸線O方向に対向しており、排気空間Eに面している。即ち、仕切板34は、排気空間Eを蒸気タービン本体10の蒸気の出口に応じて軸線O方向に二つに分割している。これに伴って、一対の仕切板34は、排気口33も軸線O方向に二つに分割している。このように本実施形態では、蒸気タービン3における二つの蒸気の出口にそれぞれ対応するように、ディフューザ空間D、排気空間E及び排気口33が設けられている。
【0036】
ここで本実施形態の排気ケーシング30は、
図1に示すように、軸線Oを含む水平面を介して上方の上半部30aと下方の下半部30bとに分割可能とされている。上半部30aと下半部30bとは図示しないフランジ及びボルトを介して着脱可能に固定されている。
【0037】
<内貼り部材>
次に内貼り部材40について説明する。内貼り部材40は、
図1及び
図2に示すように、排気ケーシング30内に設けられた部材である。内貼り部材40は、排気ケーシング30内の空間における軸線Oよりも上方の領域のみに設けられている。
【0038】
図4に示すように、内貼り部材40は、軸線Oを中心とするとともに軸線O方向下流側(
図4における右側)に向かうに従って次第に拡径する円筒状の部材を、軸線Oを含む水平面で切断した形状をなしている。
【0039】
内貼り部材40の外周面41及び内周面42の双方は軸線O方向下流側に向かって同一の割合で拡径している。これにより内貼り部材40は軸線O方向にわたって一定の厚さを有している。内貼り部材40の軸線O方向上流側の端面となる上流端43は、軸線Oを中心とした円弧状に延びている。内貼り部材40の軸線O方向下流側の端面となる下流端44は、上流端43よりも径の大きい円弧状をなしている。内貼り部材40は、上流端43から下流端44に向かうに従って円弧の径が次第に大きくなるように延びる形状をなしている。内貼り部材40の周方向の端部となる一対の周方向端部45は、軸線Oに平行に延びている。これら一対の周方向端部45は、軸線Oを挟むように水平方向に対向している。一対の周方向端部45は、軸線Oを含む水平面に一致している。
【0040】
このような内貼り部材40は、
図1及び
図2に示すように、排気ケーシング30内の空間におけるディフューザ空間Dと排気空間Eとにわたって設けられている。
内貼り部材40の上流端43は、内側ディフューザ23の外周面における軸線Oを含む水平面よりも上方の部分に周方向にわたって接続されている。内側ディフューザ23の上流端43は、外側ディフューザ22の軸線O方向下流側の端部よりもさらに軸線O方向下流側に位置している。内貼り部材40の上流端43は、内側ディフューザ23の外周面に対して内貼り部材40の外周面41との境界に段部が形成されないように滑らかに接続されている。
【0041】
内貼り部材40の下流端44は、端板31の内面に全域にわたって接続されている。内貼り部材40の下流端44は、タービンケーシング17と外周板32との間の径方向位置に位置している。内貼り部材40の下流端44は、端板31の内面に対して内貼り部材40の外周面41との境界に段部が形成されないように滑らかに接続されている。内貼り部材40と端板31との間には、上半におけるディフューザ空間D及び排気空間Eのそれぞれの一部を侵食する非流通空間Nが区画形成されている。当該被流通空間には蒸気は流れ込まない。被流通空間の下端は開放されており、水平面において下半におけるディフューザ空間D及び排気空間Eに連通している。
【0042】
ここで
図3の右図に示すように、内貼り部材40は、上記形状をなしていることにより、軸線Oを含む水平面によって排気ケーシング30内の空間を排気側の領域、反排気側の領域に二分した場合に、反排気側の領域のみに存在している。
本実施形態の内貼り部材40は、軸線O方向視で軸線Oから排気口33とは反対側の反排気側(本実施形態では上方)に向かって延びる基準線Lを中心として、軸線Oの周方向の180度の領域に存在している。したがって内貼り部材40の一対の周方向端部45は、軸線Oを含む水平面に一致しながら、軸線Oを挟むように互いに水平方向に対向している。内貼り部材40は軸線O方向視にて基準線Lを対称線とした対称構造をなしている。
【0043】
<支持部材>
支持部材50は、内貼り部材40における軸線O方向下流側を向く裏面を支持している。支持部材50は、棒状をなしており、一端が内貼り部材40の裏面に固定されており、他端が内側ディフューザ23の外面に固定されている。支持部材50は周方向に間隔をあけて複数が配置されている。支持部材50は一のみが設けられていてもよい。支持部材50は、内貼り部材40同様、反排気側の領域のみに設けられている。
【0044】
<作用効果>
蒸気タービン本体10の出口から排出された蒸気は、ディフューザ空間D、排気空間Eを経由し排気口33を介して復水器2へと導かれる。ディフューザ空間Dでは、下流側に向かう程、流路断面積が増加する。そのため、蒸気はディフューザ21空間を流通する過程でその運動エネルギーが圧力エネルギーに変換される。これによって、蒸気の圧力回復が行われる。この圧力回復量が大きい程、蒸気タービン本体10の出口から流出した直後の蒸気の圧力が低くなり、タービン効率が向上する。
【0045】
ディフューザ21空間の流路拡大率は、一般に定格運転時の蒸気量に応じて定められている。したがって、例えば蒸気の流量が少なくなる部分負荷運転時には、ディフューザ21空間の流路拡大率に蒸気の流れが耐えることができず、内側ディフューザ23の外面から蒸気の流れが剥離してしまう場合がある。剥離が発生すれば、十分な圧力回復を図ることができず、タービン効率が低下してしまう。
【0046】
ここで、排気ケーシング30内における排気側の領域では、復水器2により蒸気が引き込まれる。そのため、排気側の領域では蒸気の流速を確保することができ、蒸気の流れの剥離は発生しにくい。一方では、排気ケーシング30内における反排気側の領域では、復水器2から遠く、また、ディフューザ21空間を経た蒸気が排気側に転向して流通するため、流速を確保することが難しい。したがって、反排気側では蒸気の流れの剥離発生リスクが大きくなる。
【0047】
これに対して本実施形態では、排気ケーシング30内における剥離の発生し易い反排気側のみに内貼り部材40が設けられている。当該内貼り部材40によってディフューザ21空間の一部が侵食されることにより、内貼り部材40の設置領域に置けるディフューザ21空間の流路拡大率を低下させることができる。そのため、蒸気流量が少ない部分負荷時であっても、反排気側の領域での流れが剥離してしまうことを抑制できる。これによって、反排気側の領域でも圧力回復を適切に図ることができる。
【0048】
ここで、排気ケーシング30内における排気側の領域の直ぐ下方には蒸気の排気口33が形成されており、その先には復水器2が存在している。そのため、仮に内貼り部材40を設けようとすれば、作業の足場を別途設ける必要がある。また、排気ケーシング30内の下部は狭隘な箇所のため、設置難易度も高い。そのため、内貼り部材40の設置コストが増加してしまう。一方で、元々、排気側の領域では復水器2の吸い込みによって蒸気の流速が大きいため、剥離の発生リスクは低い。
【0049】
これに対して本実施形態では、排気ケーシング30内における反排気側となる上半のみに内貼り部材40を設ける構成のため、別途足場等の設備を設けなくとも、容易に取り付けることができる。したがって、設置コストの低減を図ることができる。
【0050】
さらに内貼り部材40を全周に設ける場合に比べて、反排気側の領域のみの半分のみに設ける構成のため、材料費・製作費を抑えることができる。また、剥離が発生し易い反排気側に設けることで、十分な圧力回復効果を得ることができる。
したがって、本実施形態によれば、コストを低減しながら、圧力回復効果を最大限に発揮することができる。
【0051】
<第二実施形態>
次に第二実施形態について
図5を参照して説明する。第二実施形態では第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
第二実施形態は内貼り部材40の構成について第一実施形態と相違する。第二実施形態の内貼り部材40は、第一実施形態の内貼り部材40に比べて、軸線O方向及び径方向の寸法が短い。内貼り部材40の上流端43は第一実施形態と同一の箇所で内側ディフューザ23に接続されている。一方で、内貼り部材40の下流端44は、端板31に接続されることなく、端板31と軸線O方向に間隔をあけて配置されている。
【0052】
本実施形態の内貼り部材40の下流端44の径方向位置は、内側ディフューザ23の軸線O方向下流側の端部よりも径方向外側であって、タービンケーシング17の外面よりも径方向内側とされている。
内貼り部材40の下流端44と端板31との間の隙間は、内貼り部材40の配置範囲で周方向全域にわたって延びる流入隙間Gとされている。
【0053】
内貼り部材40と該内貼り部材40の軸線O方向下流側に対向する内側ディフューザ23の外周面、端板31の内面とによって区画される空間は、補助排気空間Aとされている。補助排気空間Aの下端は、第一実施形態の非流通空間Nと同様、排気側のディフューザ21空間及び排気空間Eに連通している。補助排気空間Aは、流入隙間Gを介してケーシング内の反排気側のディフューザ21空間及び排気空間Eと連通している。
第二実施形態の内貼り部材40も第一実施形態同様、支持部(図示省略)を介して固定されている。
【0054】
本実施形態では、排気ケーシング30内の反排気側の領域では、内側ディフューザ23の外周面に沿って形成された蒸気の流れの境界層が流入隙間Gを介して補助排気空間Aに吸い込まれる。補助排気空間Aに吸い込まれた蒸気は、該補助排気空間Aを下方に向かって移動して該補助排気空間Aの下端を介して反排気側の領域に放出される。これによって、内側ディフューザ23の外周面での剥離発生リスクをより低減させることができる。
【0055】
また、このような補助排気空間Aが設けられることで、例えば端板31と外周板32との隅部に滞留する循環流れを、当該補助排気空間Aを介して排気口33側に排出することができる。
【0056】
<第三実施形態>
次に第三実施形態について
図6を参照して説明する。第三実施形態では他の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
第一実施形態、第二実施形態においては、内貼り部材40は、排気ケーシング30内の反排気側の領域における基準線Lを中心とした180°の範囲に設けられていたがこれに限定されることはない。例えば第三実施形態のように、反排気側の領域において基準線Lを中心とした180°以下の範囲に内貼り部材40を設けてもよい。
【0057】
内貼り部材40を設ける周方向範囲θとしては、反排気側の領域における基準線Lを中心とした90°~180に設定することができる。
また、周方向範囲θは120°~180°であることが好ましい。
さらに、周方向範囲θとしては150°~180°であることが好ましい。
【0058】
このように剥離の発生リスクの高い最低限の範囲のみに内貼り部材40を設けることで、コストを低下させながら圧力回復を適切に図ることができ、タービン効率の向上を図ることができる。
【0059】
<第四実施形態>
次に本発明の実施形態に係る排気室20の改造方法について、
図7のフローチャートを用いて説明する。
内貼り部材40は、製造当時から蒸気タービン3に設けるのではなく、既存の蒸気タービン3の排気室20に追設してもよい。
実施形態の排気室20の改造方法では、まず準備工程を実施する(ステップS1)。即ち、既存の蒸気タービン3の排気ケーシング30における上半部30aを下半部30bと分離させる。
次いで、次いで分離した上半部30aに対して、第一~第三実施形態のいずれかの内貼り部材40を設置する追設工程を行う(ステップS2)。
【0060】
このような設置作業は別途足場等を設ける必要もなく、例えば下半部30bに内貼り部材40を設置する場合に比べて低コストで行うことができる。したがって、最低限のコストでタービン性能の向上を図ることができる。
【0061】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば実施形態では、下方排気の蒸気タービン3に内貼り部材40を設けた例について説明したが、これに限定されることはなく、側方排気の蒸気タービン3に内貼り部材40を設けてもよい。
【0062】
この場合、外周板32における軸線Oの径方向外側の水平方向一方側に排気口33が設けられることになる。よって、排気側の領域は軸線Oを含む鉛直面を境界とした水平方向一方側の領域となり、反排気側の領域は軸線Oを含む鉛直面を境界とした水平方向他方側の領域となる。
よって、このような場合であっても、蒸気が吸い込まれる排気側とは反対側であって剥離が生じやすい反排気側の領域に内貼り部材40を設けることで、最低限のコストで圧力回復を適切に図ることができる構造を実現することができる。
【0063】
また、実施形態では、内貼り部材40の一対の周方向端部45は同一の高さ位置とされ、即ち、内貼り部材40は基準線Lを対称線とした対称構造とされていたが、これに限定されることはない。基準線Lから一対の周方向端部45までの距離が異なっていてもよく、即ち、内貼り部材40が基準線Lに対して非対称な構造とされていてもよい。
【0064】
<付記>
各実施形態に排気室20、蒸気タービン3及び排気室20の改造方法は、例えば以下のように把握される。
【0065】
(1)第1の態様に係る排気室20は、軸線O回りに回転するタービンロータ11の出口から軸線O方向下流側に流出する蒸気を外部に導く排気室20であって、前記出口の外周縁部に連なる環状をなして前記軸線O方向下流側に向かうに従って拡径する外側ディフューザ22、及び、前記出口の内周縁部に連なる環状をなして前記軸線O方向下流側に向かうに従って拡径するとともに前記外側ディフューザ22との間にディフューザ21空間を区画する内側ディフューザ23を有するディフューザ21と、前記内側ディフューザ23の前記軸線O方向下流側の端部から径方向外側に向かって広がるように延びる端板31、前記端板31とともに前記ディフューザ21空間を外外周側から囲う排気空間Eを区画するとともに径方向外側の一方向に向かって開口する排気口33が形成された外周板32を有する排気ケーシング30と、前記排気ケーシング30内における前記排気口33側とは前記軸線Oを挟んで反対側に位置する反排気側のみに設けられて、前記軸線O方向上流側の端部が前記内側ディフューザ23の外周面に接続されているとともに、前記軸線O方向下流側に向かうに従って拡径するように延びる板状をなす内貼り部材40と、を備える。
【0066】
排気室20内における反排気側の領域では、排気口33側に比べて蒸気の流速が小さい。そのため、特に蒸気の流量が小さくなる部分負荷運転の場合には、ディフューザ21空間内の蒸気が内側ディフューザ23の外面から剥離してしまう場合がある。この場合、十分な圧力回復を図ることができない。
これに対して本態様では、排気室20内における反排気側にのみ内貼り部材40が設けられている。これにより、ディフューザ21空間の流路拡大率を小さくすることができ、内側ディフューザ23からの剥離を抑えることができる。また、内貼り部材40が反排気室側のみに設けられた構成のため、内貼り部材40の製作・設置コストを最小限に抑えることができる。
【0067】
(2)第2の態様に係る排気室20は、前記内貼り部材40の前記軸線O方向下流側の端部が、前記端板31に対して周方向にわたって接続されている(1)の排気室20である。
【0068】
これによって、ディフューザ21空間の流路拡大率をディフューザ21の上流側から下流側にわたる全領域において小さくすることができる。
【0069】
(3)第3の態様に係る排気室20は、前記内貼り部材40の前記軸線O方向下流側の端部が、前記端板31に対して周方向にわたって隙間を介して離間している(1)の排気室20である。
【0070】
これにより、内貼り部材40と端板31との間の隙間にには、内側ディフューザ23の表面の境界層を吸い込まれる。よって、内側ディフューザ23での剥離をより一層抑えることができる。
【0071】
(4)第4の態様に係る排気室20は、前記排気口33は、下方に向かって開口しており、前記排気ケーシング30は、水平分割面を介して上半部30aと下半部30bとに分割可能とされている(1)から(3)のいずれかの排気室20である。
【0072】
排気口33が下方に向かって開口している場合、仮に排気室20内の排気口33側の領域にも内貼り部材40を設けようとすれば、別途足場を設置する必要がある他、下半部30b内の狭隘な空間で作業を行う必要があり、設置コストが増大する。本態様では、反排気側となる上半部30aのみに内貼り部材40が設けられているため、設置コストの増大を回避することができる。
【0073】
(5)第5の態様に係る排気室20は、前記内貼り部材40は、前記軸線O方向視で前記軸線Oから反排気側に向かう基準線Lを中心とした前記軸線Oの周方向の90°~180°の領域に設けられている(1)から(4)いずれかの排気室20である。
【0074】
これによって、設置コストの低減を図りながら、蒸気の圧力回復を適切に図ることができる。
【0075】
(6)第6の態様に係る排気室20は、前記内貼り部材40は、前記軸線O方向視で前記軸線Oから反排気側に向かう基準線Lを中心とした前記軸線Oの周方向の120°~180°の範囲に設けられている(1)から(5)のいずれかの排気室20である。
【0076】
これによって、設置コストの低減を図りながら、蒸気の圧力回復を適切に図ることができる。
【0077】
(7)第7の態様に係る排気室20は、前記内貼り部材40は、前記軸線O方向視で前記軸線Oから反排気側に向かう基準線Lを中心とした前記軸線Oの周方向の150°~180°の範囲に設けられている(1)から(6)のいずれかの排気室20である。
【0078】
これによって、設置コストの低減を図りながら、蒸気の圧力回復を適切に図ることができる。
【0079】
(8)第8の態様に係る排気室20は、前記内貼り部材40の裏面を前記軸線O方向下流側から支持する支持部材50をさらに備える請求項1から7のいずれか一項に記載の排気室20である。
【0080】
これによって、内貼り部材40を確実に固定できるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0081】
(9)第9の態様に係る蒸気タービン3は、(1)から(8)のいずれかの排気室20と、前記タービンロータ11を有する蒸気タービン本体10と、を備える蒸気タービン3である。
【0082】
これによって、低コストで蒸気の圧力損失を低減させて圧力回復量を大きくすることができる。
【0083】
(10)第10の態様に係る排気室20の改造方法は、軸線O回りに回転するタービンロータ11の出口から軸線O方向下流側に流出する蒸気を外部に導く排気室20の改造方法であって前記排気室20は、前記出口の外周部に連なる環状をなして前記軸線O方向下流側に向かうに従って拡径する外側ディフューザ22、及び、前記出口の内周部に連なる環状をなして前記軸線O方向下流側に向かうに従って拡径するとともに前記外側ディフューザ22との間にディフューザ21空間を区画する内側ディフューザ23を有するディフューザ21と、前記内側ディフューザ23の前記軸線O方向下流側の端部から軸線Oに直交する面に沿って径方向外側に向かって広がるように延びる端板31、前記端板31とともに前記ディフューザ21空間を外外周側から囲う排気空間Eを画成するとともに径方向外側の一方向に向かって開口する排気口33が形成された外周板32を有する排気ケーシング30と、を備えており、前記排気ケーシング30内における前記排気口33側とは前記軸線Oを挟んで反対側の反排気側のみに、前記軸線O方向上流側の端部が前記内側ディフューザ23の外周面に接続されているとともに、前記軸線O方向下流側に向かうに従って拡径するように延びる板状をなす内貼り部材40を設ける追設工程を含む排気室20の改造方法である。
【0084】
このように内貼り部材40を追設することによって、低コストで蒸気の圧力損失を低減させて圧力回復量を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 蒸気タービンシステム
2 復水器
3 蒸気タービン
10 蒸気タービン本体
11 タービンロータ
12 ロータ軸
13 動翼列
14 軸受
16 ステータ
17 タービンケーシング
18 静翼列
19 蒸気流入管
20 排気室
21 ディフューザ
22 外側ディフューザ
23 内側ディフューザ
30 排気ケーシング
30a 上半部
30b 下半部
31 端板
32 外周板
33 排気口
34 仕切板
40 内貼り部材
41 外周面
42 内周面
43 上流端
44 下流端
45 周方向端部
50 支持部材
D ディフューザ空間
E 排気空間
N 非流通空間
G 流入隙間
A 補助排気空間
O 軸線
L 基準線