(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168243
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20241128BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20241128BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20241128BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20241128BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20241128BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/14
C08L101/12
C08L23/00
C08L27/12
C08L71/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084741
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長畑 聡記
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA012
4J002BB002
4J002BB052
4J002BB212
4J002BD122
4J002BD152
4J002BD162
4J002CH072
4J002CL031
4J002CL051
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】耐熱性、機械的特性、誘電特性に優れ、吸湿下であっても、優れた機械的特性、誘電特性を維持することができるポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)100質量部と、比誘電率が5.5以下のガラスからなるガラス繊維(B)10~250質量部と、(A)とは異なる、比誘電率が3.0以下の熱可塑性樹脂(C)1~45質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)100質量部と、比誘電率が5.5以下のガラスからなるガラス繊維(B)10~250質量部と、(A)とは異なる、比誘電率が3.0以下の熱可塑性樹脂(C)1~45質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(C)が、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂から選ばれる1種以上の樹脂である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミド樹脂組成物から得られる成形体を、温度70℃、相対湿度62%で平衡状態になるまで吸湿処理をおこなった後の比誘電率が4.0以下である請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアミド樹脂組成物から得られる成形体を、温度70℃、相対湿度62%で平衡状態になるまで吸湿処理をおこなった後の曲げ弾性率が3.0GPa以上である請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、機械的特性、誘電特性に優れ、吸湿下であっても、優れた機械的特性、誘電特性を維持することができるポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、耐熱性や機械的特性が優れていることから、成形材料として広く用いられている。近年、ポリアミドは、通信時にメガヘルツ帯やギガヘルツ帯の電波を利用するパソコン、タブレット、携帯電話等の電気電子通信装置の筐体の用途への適用が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、半芳香族ポリアミドとガラス繊維とからなる低誘電率のポリアミド樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のポリアミド樹脂組成物は、実際の使用環境下における吸湿状態での比誘電率が、成形直後と比較して高くなるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであって、耐熱性、機械的特性、誘電特性に優れ、吸湿下であっても、優れた機械的特性、誘電特性を維持することができるポリアミド樹脂組成物ポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、融点が280~350℃である半芳香族ポリアミドに、比誘電率が5.5以下のガラスからなるガラス繊維と、融点が280~350℃である半芳香族ポリアミドとは異なる比誘電率が3.0以下の熱可塑性樹脂を特定量配合することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)100質量部と、比誘電率が5.5以下のガラスからなるガラス繊維(B)10~250質量部と、(A)とは異なる、比誘電率が3.0以下の熱可塑性樹脂(C)1~45質量部とを含有するポリアミド樹脂組成物。
(2)熱可塑性樹脂(C)が、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂から選ばれる1種以上の樹脂である(1)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)ポリアミド樹脂組成物から得られる成形体を、温度70℃、相対湿度62%で平衡状態になるまで吸湿処理をおこなった後の比誘電率が4.0以下である(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4)ポリアミド樹脂組成物から得られる成形体を、温度70℃、相対湿度62%で平衡状態になるまで吸湿処理をおこなった後の曲げ弾性率が3.0GPa以上である(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(5)(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性、機械的特性、誘電特性に優れ、吸湿下であっても、優れた機械的特性、誘電特性を維持することができるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)とガラス繊維(B)と熱可塑性樹脂(C)とを含有する。
【0011】
半芳香族ポリアミド(A)は、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジアミン成分から構成される。半芳香族ポリアミド(A)は、共重合成分を含んでもよいが、耐熱性が向上し、比誘電率が低くなることから、共重合していない、単一の芳香族ジカルボン酸成分と単一の脂肪族ジアミン成分から構成されることが好ましい。
【0012】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。中でも、耐熱性が向上することから、テレフタル酸が好ましい。
【0013】
本発明の半芳香族ポリアミド(A)には、芳香族ジカルボン酸成分以外の酸成分を共重合していてもよい。芳香族ジカルボン酸成分以外の酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等のジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸や脂環式ジカルボン酸の共重合量は、耐熱性を低下させないため、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まれないことがより好ましい。
【0014】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)を構成する脂肪族ジアミン成分としては、例えば、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミンが挙げられる。脂肪族ジアミン成分は、吸水による誘電率の上昇を抑制することができることから、炭素数の多い脂肪族ジアミン1種を単独で用いることが好ましく、1,10-デカンジアミンまたは1,12-ドデカンジアミンを単独で用いることがより好ましい。
【0015】
本発明の半芳香族ポリアミド(A)には、脂肪族ジアミン成分以外のジアミン成分を含有させてもよい。脂肪族ジアミン成分以外のジアミン成分としては、例えば、シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミンや、キシリレンジアミン、ベンゼンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。脂肪族ジアミン成分以外のジアミン成分の共重合量は、耐熱性を低下させないため、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まれないことがより好ましい。
【0016】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)を構成する上記以外の共重合成分として、カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸等のω-アミノカルボン酸が挙げられる。これらの共重合量は、耐熱性を低下させないため、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まれないことがより好ましい。
【0017】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、単独で用いてもよいし、構成モノマー成分が異なる半芳香族ポリアミド(A)を2種以上含有してもよいが、耐熱性が向上し、比誘電率が低くなることから、単独で用いることが好ましい
【0018】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、溶融加工時の流動性や成形時の離型性が向上するため、構成成分としてモノカルボン酸成分を含有することが好ましい。モノカルボン酸成分の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)を構成する全モノマー成分に対して0.3~4.0モル%であることが好ましく、0.3~3.0モル%であることがより好ましく、0.3~2.5モル%であることがさらに好ましい。
【0019】
モノカルボン酸の分子量は、140以上であることが好ましく、170以上であることがさらに好ましい。モノカルボン酸の分子量が140以上であると、半芳香族ポリアミド(A)は、溶融加工時の流動性や成形時の離型性がより向上する。さらに、溶融加工時の流動性が向上することにより、加工温度を下げることも可能となり、溶融加工時の熱劣化を抑制できる。
【0020】
モノカルボン酸成分としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸が挙げられ、溶融加工時の流動性や成形時の離型性が向上するため、脂肪族モノカルボン酸が好ましい。
【0021】
分子量が140以上の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。中でも、汎用性が高いことから、ステアリン酸が好ましい。分子量が140以上の脂環族モノカルボン酸としては、例えば、4-エチルシクロヘキサンカルボン酸、4-へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4-ラウリルシクロヘキサンカルボン酸が挙げられる。分子量が140以上の芳香族モノカルボン酸としては、例えば、4-エチル安息香酸、4-へキシル安息香酸、4-ラウリル安息香酸、アルキル安息香酸類、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0022】
モノカルボン酸成分は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。また、分子量が140以上のモノカルボン酸と分子量が140未満のモノカルボン酸を併用してもよい。なお、本発明において、モノカルボン酸の分子量は、原料のモノカルボン酸の分子量を指す。
【0023】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)は、融点が280~350℃であることが必要であり、300~350℃であることが好ましく、305~340℃であることがより好ましく、310~335℃であることがさらに好ましい。半芳香族ポリアミド(A)の融点が280℃未満であると、得られるポリアミド樹脂組成物は、結晶性が不十分となり、比誘電率が高くなるので好ましくない。一方、半芳香族ポリアミド(A)は、融点が350℃を超えると、ポリアミド結合の分解温度が約350℃であるため、溶融加工時に、炭化や分解が進行するので好ましくない。なお、本発明において、融点は、示差走査熱量計(DSC)にて、昇温速度20℃/分で昇温した際の吸熱ピークのトップとする。
【0024】
本発明において、半芳香族ポリアミド(A)の、96%硫酸中、25℃、濃度1g/dLで測定した場合の相対粘度は、機械的特性が向上することから、1.8以上であることが好ましく、1.8~3.5であることがより好ましく、2.2~3.1であることがさらに好ましい。半芳香族ポリアミド(A)は、相対粘度が3.5を超えると、溶融加工が困難となる場合がある。
【0025】
半芳香族ポリアミド(A)の製造方法は特に限定されないが、従来から知られている加熱重合法や溶液重合法の方法を用いることができる。中でも、工業的に有利であることから、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、芳香族ジカルボン酸成分と、脂肪族ジアミン成分とから反応生成物を得る工程(i)と、得られた反応生成物を重合する工程(ii)とからなる方法が挙げられる。
【0026】
工程(i)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸粉末を、予め脂肪族ジアミンの融点以上、かつ芳香族ジカルボン酸の融点以下の温度に加熱し、この温度の芳香族ジカルボン酸粉末に、芳香族ジカルボン酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、脂肪族ジアミンを添加する方法や、溶融状態の脂肪族ジアミンと固体の芳香族ジカルボン酸とからなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの反応による塩の生成反応と、生成した塩の重合による低重合物の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。この場合、反応をさせながら破砕をおこなってもよいし、反応後に一旦取り出してから破砕をおこなってもよい。工程(i)は、反応生成物の形状の制御が容易な前者の方が好ましい。
【0027】
工程(ii)としては、例えば、工程(i)で得られた反応生成物を、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、半芳香族ポリアミドを得る方法が挙げられる。固相重合は、重合温度180~270℃、反応時間0.5~10時間で、窒素等の不活性ガス気流中でおこなうことが好ましい。
【0028】
工程(i)および工程(ii)の反応装置は特に限定されないが、公知の装置を用いればよい。工程(i)と工程(ii)を同じ装置で実施してもよいし、異なる装置で実施してもよい。
【0029】
また、加熱重合法における加熱の方法は特に限定されないが、水、蒸気、熱媒油等の媒体にて反応容器を加熱する方法、電気ヒーターで反応容器を加熱する方法、攪拌により発生する攪拌熱等内容物の運動に伴う摩擦熱を利用する方法が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0030】
半芳香族ポリアミド(A)の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いてもよい。重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。重合触媒の添加量は、通常、半芳香族ポリアミド(A)を構成する全モノマー成分に対して、2モル%以下であることが好ましい。
【0031】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維(B)を含有させることが必要である。ガラス繊維(B)の比誘電率は5.5以下であることが必要であり、3.7~5.0であることが好ましい。比誘電率が5.5を超える比誘電率のガラス繊維を用いた場合、誘電特性が向上しないので好ましくない。下限値は低いほど好ましいが、実質的にはガラスを構成するSiO2単体の比誘電率である3.7となる。
【0032】
ガラスの組成は特に限定されないが、SiO2、Al2O3、B2O3、CaO、MgO、LiO2、Na2O、K2O、TiO2を含み、各成分の組成はSiO2が50~70重量%、Al2O3が1~20重量%、B2O3が15~30重量%、CaOが0.1~5重量%、MgOが0.1~5重量%、LiO2が0~1重量%、NaO2が0~1.5重量%、K2Oが0~1.5重量%、TiO2が0~5重量%であることが好ましい。比誘電率が5.5以下のガラスは、汎用的に用いられるEガラスの組成に比較して、B2O3が多く、CaOが少ない。なお、ガラスの比誘電率は、ガラスを白金坩堝に入れて、電気炉中にて約1580℃で4~15時間熔融し、続いて、この熔融ガラスをカーボン板上に流し出し、板状に成形した後、アニールすることにより歪みを除去し、LCRメータ等を用い、板状のガラス成形品の静電容量を評価することにより求めることができる。
【0033】
本発明のガラス繊維(B)は、得られる成形体の機械的特性が向上することから、集束剤等の表面処理剤で処理されていることが好ましい。集束剤の主成分は、カップリング剤や被膜形成剤であることが好ましい。
【0034】
カップリング剤としては、例えば、ビニルシラン系、アクリルシラン系、エポキシシラン系、アミノシラン系、アミノチタン系等のカップリング剤が挙げられる。中でも、半芳香族ポリアミド(A)とガラス繊維との密着効果が高く、耐熱性に優れることから、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。
【0035】
被膜形成剤としては、例えば、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系の樹脂が挙げられる。中でも、ガラス繊維との密着効果が高く、耐熱性に優れることから、ウレタン系樹脂が好ましい。被膜形成剤は、樹脂組成物の耐加水分解性が向上することから、酸成分を含有することが好ましい。酸成分は、被膜形成剤の主成分である樹脂に共重合していることが好ましい。酸成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸や、無水マレイン酸が挙げられる。
【0036】
本発明のガラス繊維(B)の繊維長は、特に限定されないが、0.1~7mmであることが好ましく、0.5~6mmであることがより好ましい。本発明のガラス繊維(B)の繊維長が0.1~7mmであることにより、成形性に悪影響を及ぼすことなく、樹脂組成物を補強することができる。また、ガラス繊維(B)の繊維径は、特に限定されないが、3~20μmであることが好ましく、5~14μmであることがより好ましい。ガラス繊維(B)の繊維径が3~20μmであることにより、溶融混練時に折損することなく、樹脂組成物を補強することができる。ガラス繊維(B)の断面形状としては、例えば、円形、長方形、楕円、それ以外の異形断面が挙げられ、中でも、円形が好ましい。
【0037】
本発明のガラス繊維(B)の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対し、10~250質量部であることが必要であり、20~230質量部であることが好ましく、30~150質量部であることがより好ましい。ガラス繊維(B)の含有量が10質量部未満であると、機械的特性の向上効果が小さくなるので好ましくない。一方、含有量が250質量部を超えると、機械的特性の向上効果が飽和し、それ以上の向上効果が見込めないばかりでなく、溶融混練時の作業性が低下し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得ることが困難になるので好ましくない。また、溶融加工時の流動性が大幅に損なわれるために、せん断発熱により樹脂温度が高くなったり、流動性を向上させるために樹脂温度を高くせざるを得ない状況になったりするため、結果的に分子量低下や機械的特性の低下する場合がある。
【0038】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)とは異なる熱可塑性樹脂(C)を含有させることが必要である。熱可塑性樹脂(C)の比誘電率は3.0以下であることが必要であり、比誘電率の下限値は低いほど好ましい。
【0039】
熱可塑性樹脂(C)は比誘電率が3.0以下であれば特に限定されないが、例えばポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、(超高分子量)ポリエチレン、ポリプロピレン、(エチレンおよび/またはプロピレン)・α-オレフィン系共重合体、(エチレンおよび/またはプロピレン)・(α,β-不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)系共重合体;アイオノマー重合体等のオレフィン系重合体;スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、フッ素系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等のエラストマー;チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムが挙げられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン・ポリヘキサフルオロプロピレン共重合体が挙げられる。中でも、耐熱性、半芳香族ポリアミドとの相溶性に優れることから、超高分子量ポリエチレンオレフィン系重合体、(エチレンおよび/またはプロピレン)・α-オレフィン系共重合体、ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂(C)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(エチレンおよび/またはプロピレン)・α-オレフィン系共重合体とは、エチレンおよび/またはプロピレンと炭素数3以上のα-オレフィンを共重合した重合体である。炭素数3以上のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
ポリオレフィン樹脂は、カルボン酸および/またはその誘導体で変性されていてもよい。前記成分で変性することにより、半芳香族ポリアミドに対して親和性を有する官能基をその分子中に導入することができる。半芳香族ポリアミドに対して親和性を有する官能基としては、例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩基、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基が挙げられる。
【0042】
前記半芳香族ポリアミドと親和性の高い官能基を有する化合物としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸およびこれらカルボン酸の金属塩;マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルが挙げられる。
【0043】
熱可塑性樹脂(C)の含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対し、1~45量部であることが必要であり、5~40質量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂(C)の含有量が5質量部未満であると、誘電特性が向上しないので好ましくない。一方、含有量が45質量部を超えると、溶融混練時の作業性が低下し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得ることが困難になるので好ましくない。
【0044】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)以外の他のポリアミドを含有してもよい。半芳香族ポリアミド(A)以外の他のポリアミド(以下、「他のポリアミド」と略称することがある。)は特に限定されないが、融点が280℃未満の半芳香族ポリアミドや脂肪族ポリアミドが挙げられる。
【0045】
融点が280℃未満の半芳香族ポリアミドとしては、例えば、テレフタル酸とイソフタル酸と脂肪族ジアミンとの共重合体が挙げられる。
【0046】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド410、ポリアミド412、ポリアミド510、ポリアミド512、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド6/66、ポリアミド66/1010、ポリアミド66/612、ポリアミド2Me5C、ポリアミド6C、ポリアミド8C、ポリアミド9C、ポリアミド10C、ポリアミド12Cが挙げられる。なお、Cは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を、2Me5は2-メチルペンタメチレンジアミンを意味する。
【0047】
他のポリアミドを含有する場合、その含有量は、融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対し、1~100質量部とすることが好ましく、3~80質量部とすることがより好ましく、3~50質量部であることがさらに好ましい。他のポリアミドの含有量を1~100質量部含有することにより、溶融加工時の流動性が向上するため成形性が向上し、得られる成形体の表面外観も向上する。さらには、高流動性のため溶融加工の温度を低下させることが可能となるので、溶融加工温度を低下させて、溶融加工時の熱劣化を抑制することができる。前記含有量が1質量部未満であると、前記効果が得られない場合がある。一方、前記含有量が100質量部を超えると、耐熱性や機械的特性が低下する場合がある。
【0048】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、ガラス繊維以外の充填材、着色剤、帯電防止剤等の添加剤をさらに加えてもよい。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。熱安定剤としては、例えば、銅系の熱安定剤、多価アルコール系の熱安定剤が挙げられる。ガラス繊維以外の充填材としては、例えば、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイトが挙げられる。着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、ニグロシン等の染料が挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。が挙げられる。酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤、帯電防止剤を用いる場合、その含有量は、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対し、0.01~5.0質量部とすることが好ましく、0.05~3.0質量部とすることがより好ましい。
【0049】
本発明において、融点が280~350℃である半芳香族ポリアミド(A)、ガラス繊維(B)、(A)とは異なる比誘電率が3.0以下の熱可塑性樹脂(C)および必要に応じて添加される添加剤等を配合して、本発明のポリアミド樹脂組成物を製造する方法は特に限定されないが、溶融混練法が好ましい。溶融混練法としては、例えば、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸押出機、二軸押出機等を用いる方法が挙げられる。溶融混練温度は、半芳香族ポリアミド(A)が溶融し、分解しない温度であれば特に限定されないが、高すぎると、半芳香族ポリアミド(A)が分解することから、(半芳香族ポリアミドの融点-20℃)以上、(半芳香族ポリアミドの融点+40℃)以下であることが好ましい。
【0050】
溶融された樹脂組成物は、ストランド状に押出してペレット形状にする方法や、ホットカット、アンダーウォーターカットしてペレット形状にする方法や、シート状に押出してカッティングする方法や、ブロック状に押出し粉砕してパウダー形状にする方法等により、様々な形状に加工することができる。
【0051】
本発明の成形体は、上記ポリアミド樹脂組成物を成形してなるものである。その成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、焼結成形法が挙げられ、機械的特性や成形性の向上効果が大きいことから、射出成形法が好ましい。
【0052】
射出成形機は特に限定されないが、例えば、スクリューインライン式射出成形機またはプランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、(半芳香族ポリアミドの融点-20℃)以上、(半芳香族ポリアミドの融点+40℃)未満とすることがより好ましい。
【0053】
ポリアミド樹脂組成物を溶融加工する時には、十分に乾燥されたポリアミド樹脂組成物ペレットを用いることが好ましい。含有する水分量が多いポリアミド樹脂組成物を用いると、射出成形機のシリンダー内で樹脂が発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いるポリアミド樹脂組成物ペレットの水分量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、0.3質量部未満であることが好ましく、0.1質量部未満であることがより好ましい。
【0054】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、自動車部品、電気電子部品、通信装置、雑貨、産業機器部品、土木建築用品等の広範な用途に用いることができる。中でも、本発明のポリアミド樹脂組成物は、0.1~500GHzの周波数の電磁波で通信を行う装置の構成要素、ハウジングまたはハウジング部品等の通信装置に好適に用いることができる。
【0055】
通信装置としては、例えば、送受信装置、携帯電話、タブレット、ラップトップ、ナビゲーションデバイス、監視カメラ、写真撮影用カメラ、センサ、ダイビングコンピュータ、オーディオユニット、リモコン、ヘッドホン、ラジオ、テレビ、家電製品、キッチン用品、ドアオープナーまたはゲートオープナー、車両中央ロック用操作装置、キーレス自動車用キー、温度測定装置または温度表示装置、測定装置、制御装置の構成要素、ハウジング、ハウジング部品が挙げられる。
自動車部品、電気電子部品、雑貨、産業機器部品、土木建築用品としては、例えば、給湯器モーター、エアコンモーター、駆動モーター用等の電気絶縁材料、フィルムコンデンサー、スピーカ振動板、記録用の磁気テープ、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、コネクター、ソケット、リレーケース、プラグ、半導体パッケージ、半導体搬送トレイ、工程・離型フィルム、保護フィルム、自動車用フィルムセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、リチウムイオン電池内の絶縁ワッシャー、熱水や冷却水、化学薬品用のチューブ、自動車用の燃料チューブ、熱水配管、化学プラント等の薬品配管、超純水や超高純度溶媒用の配管、自動車配管、フロンや超臨界二酸化炭素冷媒用の配管パイプ、研磨装置用のワークピース保持リング等が例示できる。その他、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道、発電設備のモーターコイル用巻線の被覆成形体、家電用の耐熱電線ケーブル、自動車内の配線に用いられるフラットケーブル等のワイヤーハーネスやコントロールワイヤー、通信、伝送用、高周波用、オーディオ用、計測用等の信号用トランスまたは車載用トランスの巻線の被覆成形体が挙げられる。
【実施例0056】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0057】
1.測定方法
半芳香族ポリアミドおよびポリアミド樹脂組成物の物性測定は以下の方法によりおこなった。
(1)融点
示差走査熱量計DSC-7型(パーキンエルマー社製)用い、窒素雰囲気下にて昇温速度20℃/分で360℃まで昇温した後、360℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温測定した際の吸熱ピークのトップを融点とした。
【0058】
(2)吸水率
得られた樹脂組成物のペレットを十分に乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製 J35-AD)を用いて、シリンダー温度(融点+15℃)、金型温度140℃、成形サイクル25秒の条件で、20mm×20mm×2.0mmの試験片を成形した。
試験片を、ISO1110に準拠して、温度70℃、相対湿度62%の条件で平衡状態になるまで吸湿処理をおこない、吸湿処理前後の質量から、下記式を用いて吸水率を算出した。
吸水率[%]=(吸湿処理後の質量-吸湿前の質量)/(吸湿処理前の質量)×100
【0059】
(3)曲げ弾性率
得られた樹脂組成物のペレットを十分に乾燥した後、射出成形機(ファナック社製 S2000i-100B型)を用いて、シリンダー温度(融点+15℃)、金型温度130℃、成形サイクル35秒の条件で射出成形し、ダンベル試験片を作製した。
得られたダンベル試験片を、23℃雰囲気下、ISO178に準拠して曲げ弾性率を測定した。
また、ダンベル試験片を(2)記載の吸湿処理と同様の操作をおこなった後、23℃雰囲気下、ISO178に準拠して曲げ弾性率を測定した。
吸湿処理前の曲げ弾性率は3.0MPa以上を合格とした。
【0060】
(4)比誘電率
得られた樹脂組成物のペレットを十分に乾燥した後、射出成形機(ファナック社製 S2000i-100B型)を用いて、シリンダー温度(融点+15℃)、金型温度130℃、成形サイクル35秒の条件で射出成形し、ダンベル試験片を作製した。
得られたダンベル試験片を、インピーダンス・マテリアルアナライザ(アジレント・テクノロジー社製)を用いて、1GHzにおける比誘電率を測定した。
また、ダンベル試験片を(2)記載の吸湿処理と同様の操作をおこなった後、インピーダンス・マテリアルアナライザ(アジレント・テクノロジー社製)を用いて、1GHzにおける比誘電率を測定した。
吸湿処理前の比誘電率は4.0以下を合格とした。
【0061】
実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。
(1)ポリアミド
・半芳香族ポリアミド(A-1)
ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)4.81kgと、モノカルボン酸成分としてステアリン酸(STA)0.15kgと、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物9.3gとを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分として100℃に加温した1,10-デカンジアミン(DDA)5.04kgを、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=49.3:49.8:0.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.5:50.0:0.5)であった。
続いて、得られた反応生成物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間加熱して重合し、半芳香族ポリアミドの粉末を作製した。
その後、得られた半芳香族ポリアミドの粉末を、二軸混練機を用いてストランド状とし、ストランドを水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして半芳香族ポリアミド(A-1)ペレットを得た。
【0062】
・半芳香族ポリアミド(A-2)~(A-5)
樹脂組成を表1に示すように変更した以外は、半芳香族ポリアミド(A-1)と同様にして、半芳香族ポリアミドペレットを得た。
【0063】
上記半芳香族ポリアミド(A-1)~(A-5)の樹脂組成と特性値を表1に示す。
【0064】
【0065】
・脂肪族ポリアミド(A-6):ポリアミド6(ユニチカ社製、A1030SR)、融点220℃
【0066】
(2)ガラス繊維
・B-1:低誘電ガラスからなるガラス繊維(日東紡績社製 CN 3J-256)
・B-2:Eガラスからなるガラス繊維(日東紡績社製 CSX 3J-451)
【0067】
(3)ポリアミドとは異なる比誘電率が3.0以下の樹脂
・C-1:無水マレイン酸変性エチレン・1-ブテン共重合体(三井化学社製 タフマーMH7510)
・C-2:ポリフェニレンエーテル樹脂(グローバルポリアセタール社製 ユピエース PX100F)
・C-3:酸変性超高分子量ポリエチレン(三井化学社製 リュブマーLY1040)
・C-4:ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業社製 ルブロンL-5)
【0068】
実施例1
半芳香族ポリアミド(A-1)100質量部と(C-1)1質量部を混合後、ロスインウェイト式連続定量供給装置CE-W-1型(クボタ社製)を用いて計量し、スクリュー径26mm、L/D50の同方向二軸押出機TEM26SS型(東芝機械社製)の主供給口に供給して、溶融混練をおこなった。途中、サイドフィーダーよりガラス繊維(B-1)10質量部を供給し、さらに混練をおこなった。ダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングしてポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。押出機のバレル温度設定は、(半芳香族ポリアミドの融点+5℃)~(半芳香族ポリアミドの融点+15℃)、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hとした。
【0069】
実施例2~18、比較例1~3、6、7
樹脂組成物の組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって樹脂組成物ペレットを得た。
【0070】
比較例4
樹脂組成物の組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって樹脂組成物ペレットを得ようとしたが、熱可塑性樹脂(C)の含有量が多かったため、溶融混練ができなかった。
【0071】
比較例5
樹脂組成物の組成を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって樹脂組成物ペレットを得ようとしたが、ガラス繊維の含有量が多かったため、溶融混練ができなかった。
【0072】
得られた樹脂組成物ペレットを用い、各種評価試験をおこなった。その結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
実施例1~18のポリアミド樹脂組成物は、本発明の要件を満足していたため、それから得られた成形体の曲げ弾性率、比誘電率が、それぞれ3.0GPa以上、4.0以下であって、それぞれの吸湿処理前後の変化率が吸湿処理前の値を維持していた。
【0075】
比較例1、3のポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を含有していなかったため、それから得られた成形体の曲げ弾性率が低かった。
比較例2のポリアミド樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(C)を含有していなかったため、それから得られた成形体の曲げ弾性率の変化率が大きかった。
比較例6のポリアミド樹脂組成物は、Eガラスを用いたため、それから得られた成形体の比誘電率が4.0超と高かった。
比較例7のポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミドを用いたため、吸水率が高く、それから得られた成形体の曲げ弾性率の変化率が大きく、比誘電率の変化率も大きかった。