(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168245
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電力需給調整装置、電力需給調整方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/14 20060101AFI20241128BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241128BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20241128BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
H02J3/14
H02J3/32
H02J3/46
H02J13/00 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084746
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 直也
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 早紀
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064CB21
5G064DA03
5G066HA15
5G066HB04
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G066KA01
5G066KA12
5G066KB03
5G066KD04
(57)【要約】
【課題】一定の電力指令値による複数のリソースを連続稼働させる場合と比べて、電力を削減又は増加させる要請に対して柔軟な制御が可能であり、また、ハンチング回避も可能な電力需給調整装置を提供する。
【解決手段】電力需給調整装置は、需要家において電力の供給を受ける負荷設備と、電力を放電又は充電可能な電源設備または電力消費を増減可能な負荷設備を含む複数のリソースを備えた需給調整部と、受電電力を削減又は増加させる要請を受け取った場合、過去の受電電力実績値に基づく基準値を用いて定められる増減電力指令値に応じて、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定し、前記負荷設備の現時点の受電電力実績値を用いて定められる増減電力目標値に応じて、電力の放電又は充電、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定する制御部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家において電力の供給を受ける負荷設備と、
前記需要家に設置されると共に、電力を放電又は充電可能な電源設備または電力消費を増減可能な負荷設備を含む複数のリソースを備えた需給調整部と、
前記負荷設備で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、前記受電電力を削減又は増加させる要請である要請削減電力値を受け取った場合、
過去の受電電力実績値に基づく基準値と前記要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定し、
前記増減電力指令値と、前記第1リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定し、
前記負荷設備で消費される電力に応じて前記需給調整部を制御する制御部と、
を備えた電力需給調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記増減電力指令値が、予め定めた閾値を超えた場合、前記閾値に対して予め定めた前記第1リソースを、稼働させる前記第1リソースとして設定し、設定された前記第1リソースの稼働を開始するように前記需給調整部の制御を行う
請求項1に記載の電力需給調整装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記要請削減電力値に応じて前記第1リソースの稼働を開始する際に、前記要請削減電力値の開始時刻から、前記第1リソースによる電力の放電又は充電が安定するまでの時間だけ前の時点から、前記第1リソースの稼働を開始させる請求項1に記載の電力需給調整装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記複数の第1リソースを稼働させる際に、環境情報に応じて定められた順に、稼働させる前記第1リソースを設定する
請求項1に記載の電力需給調整装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2リソースは、複数の第2リソースを含み、
前記複数の第2リソースを稼働させる際に、放電又は充電可能な出力に対して放電又は充電可能な容量の比率が大きいリソースから順に、稼働させる前記第2リソースを設定する
請求項1に記載の電力需給調整装置。
【請求項6】
需要家において電力の供給を受ける負荷設備と、
前記需要家に設置されると共に、電力を放電又は充電可能な電源設備または電力消費を増減可能な負荷設備を含む複数のリソースを備えた需給調整部と、を備えた電力需給調整装置の電力需給調整方法であって、
前記負荷設備で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、前記受電電力を削減又は増加させる要請である要請削減電力値を受け取った場合、
過去の受電電力実績値に基づく基準値と前記要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定し、
前記増減電力指令値と、前記第1リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定し、
前記負荷設備で消費される電力に応じて前記需給調整部を制御する
電力需給調整方法。
【請求項7】
需要家において電力の供給を受ける負荷設備と、
前記需要家に設置されると共に、電力を放電又は充電可能な電源設備または電力消費を増減可能な負荷設備を含む複数のリソースを備えた需給調整部と、を備えた電力需給調整装置において電力需給を調整するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記負荷設備で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、前記受電電力を削減又は増加させる要請である要請削減電力値を受け取った場合、
過去の受電電力実績値に基づく基準値と前記要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定し、
前記増減電力指令値と、前記第1リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定し、
前記負荷設備で消費される電力に応じて前記需給調整部を制御する
ことを含む処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需給調整装置、電力需給調整方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、分散型電源を負荷変動に対する追従性能に応じて応答性が早い機器を稼働することで、最適な分散型電源を用いて負荷変動に対して追従運転を可能にするシステムが提案されている。
また、電力会社からの節電要請への対応として、分散型エネルギーリソースをつなげて電気を供給するバーチャルパワープラントが知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「バーチャルパワープラント」、資源エネルギー庁HP掲載のリーフレット、インターネット検索<URL:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/files/vpp_leaflet.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に示されるバーチャルパワープラントでは、電力需要家は、過去の電力消費実績を元に算出された予想電力量から、要請された削減電力を差し引いた目標電力量に対して、受電電力量を一致させることが求められる。
【0006】
バーチャルパワープラントに対応する需要家側の対策としては、要請された削減電力に相当するリソース(負荷制御または分散電源)を、予め設定された出力で稼働する方法が挙げられる。しかし、この方法では、需要家側の負荷が予想電力量から外れた場合、または対象となるリソースによる出力が設定値と乖離した場合、目標電力量を達成することができない。
【0007】
また、複数のリソースに優先順位を付け、建物全体の電力負荷の変動に合わせて優先順位に従って稼働台数を制御する方法も考え得る。しかし、この場合、実際の受電電力量と目標電力量の差分をリソース群の制御によって調整する際、応答性の速い第1リソースと応答性の遅い第2リソースを組み合わせると、第2リソースの出力が指令値に達する前に電力量の差分が再計算され、不足分を第1リソースが出力を増加し、その後に第2リソースの出力が遅れて指令値に達することで、制御がオーバーシュートし、リソース群の出力低減を指令することとなり、制御がハンチングする恐れがある。これを防ぐためには、各リソースの出力をリアルタイムに計測して指令値との乖離を補正し続ける必要があり、通信頻度・計測点の増加、制御プログラムの複雑化などの課題が生じる。
【0008】
また、特許文献1に示す方法を用いてバーチャルパワープラントに対応する場合、各リソースの対象電力負荷に対し、実績電力量と目標電力量の差分を按分し、対象となる電力負荷毎に目標電力量を達成するよう、各リソースを制御することとなる。この場合、ある対象電力負荷の変動に対し、割り当てられたリソースの出力範囲を超過して差分を解消できないとき、他のリソースの出力に余裕があっても、建物全体で目標電力量を達成することができない。
【0009】
本発明の目的は、一定の電力指令値による複数のリソースを連続稼働させる場合と比べて、電力を削減又は増加させる要請に対して柔軟な制御が可能であり、また、ハンチング回避も可能な電力需給調整装置、電力需給調整方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の態様の電力需給調整装置は、需要家において電力の供給を受ける負荷設備と、前記需要家に設置されると共に、電力を放電又は充電可能な電源設備または電力消費を増減可能な負荷設備を含む複数のリソースを備えた需給調整部と、前記負荷設備で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、前記受電電力を削減又は増加させる要請である要請削減電力値を受け取った場合、過去の受電電力実績値に基づく基準値と前記要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定し、前記増減電力指令値と、前記第1リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定し、前記負荷設備で消費される電力に応じて前記需給調整部を制御する制御部と、を含む。
【0011】
第1の態様の電力需給調整装置では、制御部が、前記負荷設備で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、前記受電電力を削減又は増加させる要請である要請削減電力値を受け取った場合、過去の受電電力実績値に基づく基準値と前記要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定する。また、制御部が、前記増減電力指令値と、前記第1リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定する。そして、制御部が、前記負荷設備で消費される電力に応じて前記需給調整部を制御する。これにより、一定の電力指令値による複数のリソースを連続稼働させる場合と比べて、電力を削減又は増加させる要請に対して柔軟な制御が可能であり、また、ハンチング回避も可能である。
【0012】
第2の態様の電力需給調整装置は、第1の態様の電力需給調整装置において、前記制御部は、前記増減電力指令値が、予め定めた閾値を超えた場合、前記閾値に対して予め定めた前記第1リソースを、稼働させる前記第1リソースとして設定し、設定された前記第1リソースの稼働を開始するように前記需給調整部の制御を行う。これにより、一定時間変化しない増減電力指令値に対して閾値を設けることで、リソースを一定の値で設定し、安定した制御をすることが可能である。
【0013】
第3の態様の電力需給調整装置は、第1の態様の電力需給調整装置において、前記制御部は、前記要請削減電力値に応じて前記第1リソースの稼働を開始する際に、前記要請削減電力値の開始時刻から、前記第1リソースによる電力の放電又は充電が安定するまでの時間だけ前の時点から、前記第1リソースの稼働を開始させる。これにより、要請の開始時刻において、第1リソースを安定して稼働させることができる。
【0014】
第4の態様の電力需給調整装置は、第1の態様の電力需給調整装置において、前記制御部は、前記複数の第1リソースを稼働させる際に、環境情報に応じて定められた順に、稼働させる前記第1リソースを設定する。
【0015】
第5の態様の電力需給調整装置は、第1の態様の電力需給調整装置において、前記制御部は、前記第2リソースは、複数の第2リソースを含み、前記複数の第2リソースを稼働させる際に、放電又は充電可能な出力に対して放電又は充電可能な容量の比率が大きいリソースから順に、稼働させる前記第2リソースを設定する。これにより、放電又は充電可能な出力に対して放電又は充電可能な容量の比率が大きいリソースを優先的に設定することで、放電又は充電可能な出力に対して放電又は充電可能な容量の比率が小さいリソースによる供給電力の集中を低減可能であり、リソースの分散化を図ることが可能である。
【0016】
上記目的を達成するために、第6の態様の電力需給調整方法は、需要家において電力の供給を受ける負荷設備と、前記需要家に設置されると共に、電力を放電又は充電可能な電源設備または電力消費を増減可能な負荷設備を含む複数のリソースを備えた需給調整部と、を備えた電力需給調整装置の電力需給調整方法であって、前記負荷設備で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、前記受電電力を削減又は増加させる要請である要請削減電力値を受け取った場合、過去の受電電力実績値に基づく基準値と前記要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定し、前記増減電力指令値と、前記第1リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定し、前記負荷設備で消費される電力に応じて前記需給調整部を制御する。
【0017】
第6の態様の電力需給調整方法では、前記負荷設備で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、前記受電電力を削減又は増加させる要請である要請削減電力値を受け取った場合、過去の受電電力実績値に基づく基準値と前記要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定し、前記増減電力指令値と、前記第1リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定し、前記負荷設備で消費される電力に応じて前記需給調整部を制御する。これにより、定格電力による複数のリソースを連続稼働させる場合と比べて、電力を削減又は増加させる要請に対して柔軟な制御が可能であり、また、ハンチング回避も可能である。
【0018】
上記目的を達成するために、第7の態様のプログラムは、需要家において電力の供給を受ける負荷設備と、前記需要家に設置されると共に、電力を放電又は充電可能な電源設備または電力消費を増減可能な負荷設備を含む複数のリソースを備えた需給調整部と、を備えた電力需給調整装置において電力需給を調整するためのプログラムであって、コンピュータに、前記負荷設備で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、前記受電電力を削減又は増加させる要請である要請削減電力値を受け取った場合、過去の受電電力実績値に基づく基準値と前記要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定し、前記増減電力指令値と、前記第1リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定し、前記負荷設備で消費される電力に応じて前記需給調整部を制御することを含む処理を実行させる。
【0019】
第7の態様のプログラムでは、コンピュータに、前記負荷設備で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、前記受電電力を削減又は増加させる要請である要請削減電力値を受け取った場合、過去の受電電力実績値に基づく基準値と前記要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、予め定めた電力を放電又は充電可能な複数の第1リソースのうち、稼働させる前記第1リソースを設定し、前記増減電力指令値と、前記第1リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、前記需給調整部の複数のリソースに含まれる、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が前記第1リソースより速い第2リソースを稼働させるように設定し、前記負荷設備で消費される電力に応じて前記需給調整部を制御することを含む処理を実行させる。これにより、定格電力による複数のリソースを連続稼働させる場合と比べて、電力を削減又は増加させる要請に対して柔軟な制御が可能であり、また、ハンチング回避も可能である。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、定格電力による複数のリソースを連続稼働させる場合と比べて、電力を削減又は増加させる要請に対して柔軟な制御が可能であり、また、ハンチング回避も可能な電力需給調整装置、電力需給調整方法、及びプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施の形態に係る電力需給調整システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】制御部として機能するコンピュータの一例の概略ブロック図である。
【
図3】指令値リソースに対する閾値を説明するための図である。
【
図4】(A)は、受電電力、蓄電池出力、発電機出力、及び受電電力目標値の推移の例を示すグラフであり、(B)は、蓄電池出力及び発電機出力の推移の例を示すグラフである。
【
図5】本実施の形態に係る電力需給調整システムの制御部による指令値リソース制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本実施の形態に係る電力需給調整システムの制御部による調整リソース制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0023】
<本実施の形態の概要>
近年、バーチャルパワープラント(以下、「VPP」)の検討が精力的に進められている。VPPとは、電力の需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流を含む)することで、発電所と同等の機能を提供することをいう。
【0024】
VPPにおいては、需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させる必要があるが、このことをデマンドレスポンス(以下、「DR」)という。DRには、需要制御のパターンによって、需要を減らす(抑制する)「下げDR」、および需要を増やす(創出する)「上げDR」がある。
【0025】
デマンドレスポンスに対応する場合、電力需要家は、過去の電力消費実績を元に算出された予想電力量(ベースライン)から、要請された削減電力を差し引いた目標電力量に対して、受電電力量を一致させることが求められる。この際、建物の電力負荷は逐次変動するため、受電電力量を目標電力量と一致させるためには、分散電源を含むリソースを細かく制御する必要があるが、応答性の異なる分散型電源であるリソースを用いて受電点制御を行う場合、機器同士のハンチングにより運転及び停止指示の切替の頻発が課題となる。
【0026】
特に、デマンドレスポンスの市場の一つである需給調整市場においては、目標電力量と受電電力量の一致を1分毎に評価する市場商品もあり、細かい制御が求められる。
【0027】
本実施の形態では、多様な分散型電源であるリソースを2種類に分類し、それぞれを別の制御プログラムで稼働させることにより、発電機のような応答性の遅い機器への頻繁な稼働停止を抑制し、かつ需給調整市場で求められるような1分毎の成功判定でも精度の高い制御に対応することができるようにする。
【0028】
応答性の異なるリソースを、増減電力指令値に基づき稼働又は停止する指令値リソースと、現時点の受電電力と受電電力目標値との差分を調整する調整リソースの2種類に分類する。指令値リソースとしては、水素システムや発電機など、応答に一定の時間を要する機器や、頻繁な発停が望ましくない機器を想定している。増減電力指令値によって機器の増段又は減段を行うため、増減電力指令値の変更時以外で稼働もしくは停止の指示が変更されることはない。
【0029】
発電機や水素システムなど優先的に稼働させたい機器を指令値リソースとして登録することで、機器の安定稼働を実現し、頻繁な稼働停止による故障の要因を抑制する。また、調整リソースとしては、蓄電池や電気自動車など、比較的応答の速いリソースを想定している。フィードバック制御で現時点の受電電力と受電電力目標値との差分を一定時間毎に演算し、調整リソースの出力を調整することにより高精度かつ応答性の早い制御が可能となる。
【0030】
<システム構成>
図1を参照して、本実施の形態に係る電力需給調整システムについて説明する。
図1に示すように、VPP(バーチャルパワープラント)1は、アグリゲータ3、及び需要家4を含んで構成されている。これらの内容については上述したので、詳細な説明を省略する。
図1では需要家4が1つの場合を例示しているが、複数の場合もある。
【0031】
図1に示すように、アグリゲータ3、及び需要家4の各々は、インターネット回線等の通信回線CLによって接続されている。DR(デマンドレスポンス)要請に応じて、アグリゲータ3から需要家4へ各電力設備に対する制御信号Contが送信される。むろん、アグリゲータ3と需要家4における通信は双方向通信であり、例えば需要家4からアグリゲータ3へ各電力設備の状態等を示す信号が送信される。また、後述するように、需要家4の内部における各電力設備は電力系統PLに接続されている。
【0032】
<需要家設備>
図1に示すように、需要家4の例えば建屋内には、本実施の形態に係る電力需給調整システム10が設置されている。ただし、電力需給調整システム10の設置個所は建屋内に限られず、屋外に設置してもよい。電力需給調整システム10は、水素システム12、負荷設備40、蓄電池14、発電機16、電気自動車18、及び制御部22を含んで構成されている。水素システム12、負荷設備40、蓄電池14、発電機16、及び電気自動車18の各々は、受電点34から延伸された構内配線ILによって接続されている。負荷設備40は、需要家の建屋内における各種電力消費設備である。
【0033】
蓄電池14、発電機16、及び電気自動車18は、需要家が保有する電力需給設備である。なお、太陽電池等、他の電力需給設備を備えていてもよい。電力需給設備として、機能、性能とも様々な形態が存在するので、需要家4ごとに適切な組み合わせが選択される。
【0034】
水素システム12は、水素製造装置、水素貯蔵装置、及び水素発電装置を備えている。水素製造装置は、主として電力系統PL等から供給された電力を消費して水素を製造する装置である。本開示では、水素製造装置の一例として、PEM(Polymer Electrolyte Membrane:固体高分子膜)水電解による水素発生装置を用いている。ただし、PEMに限られずアルカリ水電解型の水素発生装置等を用いる場合もある。なお、水素製造装置は、電力系統PLから供給された電力だけでなく、例えば太陽光発電による電力を消費して水素を製造する場合もある。水素貯蔵装置は、水素製造装置で製造された水素を貯蔵する設備であり、本開示では、水素貯蔵装置として、水素タンク、及び水素吸蔵合金の少なくとも一方を用いている。一方、水素発電装置は、水素を用いて発電する装置であり、本開示では水素発電装置の一例として、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell)を用いている。ただし、PEFCに限られず個体酸化物型燃料電池(SOFC)やリン酸型燃料電池等を用いる場合もある。
【0035】
制御部22は、一例として、
図2に示すコンピュータ50によって実現される。コンピュータ50は、CPU50A、RAM50B、ROM50C、記憶部50D、入出力ポート(I/O)50E及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス50Fを含んで構成されている。記憶部50Dには、本実施の形態に係る指令値リソース制御プログラム、調整リソース制御プログラム、受電電力データベースが記憶されており、CPU50Aが当該指令値リソース制御プログラムに従って動作することで、指令値リソース制御が実行される。また、CPU50Aが当該調整リソース制御プログラムに従って動作することで、調整リソース制御が実行される。受電電力データベースには、過去の受電電力実績値が格納されている。
【0036】
また、I/O50Eには、通信インターフェイス(I/F)54を介して水素システム12、蓄電池14、発電機16、電気自動車18、受電点34がそれぞれ接続されている。さらに、I/O50Eには、キーボードやマウスを含む入力部56及びモニタを含む表示部58が接続されている。
【0037】
ところで、上述したように、電力需給調整システム10では、需要家の負荷設備40に安定的に電力を供給し、さらにDRの要請に応じて、電力の消費または供給を即応性、継続性をもって実行する必要がある。
【0038】
このとき、定格出力となるリソースである複数の指令値リソースが連続して稼働すると、稼働/停止の頻繁な切替が生じることによる不具合や、無駄な電力の供給を招くなどの課題がある。この課題を解消するため、本実施形態では、複数の指令値リソースを連続稼働することに代えて、指令値リソースの不足分を、応答性が速いリソースである調整リソースで賄うように稼働する。
【0039】
具体的には、制御部22は、負荷設備40で消費される電力として外部から受電電力を受電する際に、受電電力を削減又は増加させるDR要請を受け取った場合、過去の受電電力実績値に基づく基準値と要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、予め定めた電力を放電又は充電可能な指令値リソースである水素システム12及び発電機16のうち、稼働する指令値リソースを設定する。なお、指令値リソースは、第1リソースの一例である。
【0040】
また、制御部22は、増減電力指令値と、指令値リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、電力の放電又は充電、電力負荷の消費増減、及び停止に関する応答性が速い調整リソースである蓄電池14及び電気自動車18のうち、稼働する調整リソースを設定する。なお、調整リソースは、第2リソースの一例である。
【0041】
制御部22は、負荷設備40で消費される電力に応じて、稼働するように設定された指令値リソース又は調整リソースを制御する。
【0042】
より具体的には、制御部22は、増減電力指令値が、予め定めた閾値を超えた場合、当該閾値に対して予め定めた指令値リソースを、稼働する指令値リソースとして設定し、設定された指令値リソースの稼働を開始するように指令値リソースの制御を行う(
図3参照)。
【0043】
ここで、過去の受電電力実績値をもとに基準値が作成され、基準値(ベースライン)に、要請削減電力値である削減率を乗算した値を、基準値から差し引いた値が受電電力目標値となる。ベースラインと実際の受電電力実績値はズレているため、増減電力指令値と受電電力目標値は異なる。
【0044】
図3では、増減電力指令値が、1つ目の指令値リソースに対する閾値を超えているときに、1つ目の指令値リソースである発電機16が稼働し、増減電力指令値が、2つ目の指令値リソースに対する閾値を超えているときに、1つ目の指令値リソースである発電機16と、2つ目の指令値リソースである水素システム12とが稼働する例を示している。また、増減電力目標値に対する不足分だけ、調整リソースである蓄電池14が稼働している。また、1つ目の指令値リソースに対する閾値と、2つ目の指令値リソースに対する閾値との間隔を大きく空けておくことが好ましい。例えば、1つ目の指令値リソースに対する閾値と、2つ目の指令値リソースに対する閾値との間隔を、2つ目の指令値リソースである水素システム12による出力可能電力より大きく設定する。これにより、2つ目の指令値リソースよりも調整リソースを優先的に動かすことが可能となる。
【0045】
複数の指令値リソースの優先順位は、環境情報に応じて定められている。環境情報は、指令値リソースの稼働に関する環境情報であり、例えば、稼働にかかる費用が安価な指令値リソースであるほど、優先順位が高く定められる。容量が大きい、または容量に制限がない指令値リソース(例:蓄電容量が大きい蓄電池、ガスが供給される発電機)であるほど、優先順位が高く定められる。二酸化炭素の排出が少ない指令値リソースほど、優先順位が高く定められる。
【0046】
また、予め定めた電力の供給が安定するまでの時間が短い指令値リソースであるほど、優先順位が高く定められてもよい。
【0047】
また、制御部22は、DR要請に応じて指令値リソースの稼働を開始する際に、DR要請の開始時刻から、当該指令値リソースによる電力の放電又は充電が安定するまでの時間だけ前の時点から、当該指令値リソースの稼働を開始させる。
【0048】
また、制御部22は、複数の調整リソースを稼働させる際には、放電又は充電可能な出力に対して放電又は充電可能な容量の比率が大きいリソースから順に、稼働する調整リソースを設定する。
【0049】
例えば、電気自動車18の蓄電池が50kW120kWhであり、蓄電池14が10kW30kWhである場合、出力に対する容量の比率が大きい蓄電池14を優先して稼働させる。
【0050】
これは、増減電力指令値が50kW×3時間である場合、電気自動車18の蓄電池から優先的に稼働させると、最初の2時間は電気自動車18から50kW出力され、蓄電池14は稼働しないが、最後の1時間で電気自動車18の蓄電池が容量枯渇した後は蓄電池14が10kW出力するが、50kWの増減電力指令値を満たすことができなくなるからである。これに対して、本実施の形態では、蓄電池14から優先的に稼働させると、3時間通して蓄電池14から10kW出力し、電気自動車18の蓄電池から40kW出力し、3時間50kWの増減電力指令値を満たすことができる。
【0051】
ここで、具体的な制御例について
図4(A)、(B)を用いて説明する。
図4(A)は、受電電力、蓄電池出力、発電機出力、及び増減電力指令値の推移の例を示し、
図4(B)は、蓄電池出力、発電機出力、及びこれらの出力に関する合計指令値の推移の例を示している。
【0052】
50kWの削減指令となる要請削減電力値を含むイベント通知を受けた立ち上がり時<1>において、DR要請の開始時刻より、安定稼働までにかかる時間だけ前から、発電機16の稼働を開始させ、発電機16が安定稼働した後、現在の受電電力実績値に基づいて、増減電力指令値に対する不足分だけ、蓄電池14を稼働させる。このように、発電機16が安定稼働したあと蓄電池14が出力することで受電電力のハンチングを抑制することができる。
【0053】
また、20kWの削減指令となる要請削減電力値に変更する変更通知を受けた減段指示時<2>において、発電機16の稼働を停止させ、現在の受電電力実績値に基づいて、増減電力指令値に対する不足分だけ、蓄電池14を稼働させる。このように、減段指示時には発電機16の応答性が速く、かつ安定的に追従する。
【0054】
次に、50kWの削減指令となる要請削減電力値に変更する変更通知を受けた増段指示時<3>において、減段指示時<2>から引き続き、蓄電池14を稼働させる。また、変更後の要請削減電力値に関する開始時刻より、安定稼働までにかかる時間だけ前から、発電機16の稼働を開始させ、発電機16が安定稼働した後、現在の受電電力実績値に基づいて、増減電力指令値に対する不足分だけ、蓄電池14を稼働させる。このように、発電機16が安定稼働した後、蓄電池14が出力することで受電電力のハンチングを抑制することができる。
【0055】
また、建物負荷が大きく変動する建物負荷変動時<4>においては、引き続き発電機16を稼働させつつ、受電電力が一定となるように、蓄電池14を充電させる。このように、建物負荷変動時には、蓄電池14の充放電により発電機16を安定的に稼働させ、稼働停止による受電電力のハンチングを抑制する。
【0056】
<電力需給調整システムの基本動作>
次に、
図5、
図6を参照して、電力需給調整システム10の基本的な動作について説明する。
【0057】
まず、アグリゲータ3に要請削減電力値として所定割合(例えば、40%)の下げDRの要請があったとする。このとき、制御部22は本要請に対し、
図5に示す指令値リソース制御処理を実行する。
【0058】
まず、ステップS102において、制御部22は、過去の受電電力実績値から受電電力の基準値であるベースラインを作成する。
【0059】
ステップS104において、制御部22は、ベースラインに基づいて、増減電力指令値を決定する。例えば、ベースラインが100kWであり、要請削減電力値として40%の下げDRの要請がある場合には、100kW×40%=40kWを削減することから、60kWを受電電力目標値とし、受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分を増減電力指令値として決定する。
【0060】
ステップS106において、制御部22は、増減電力指令値が、1つ目の指令値リソースに対する閾値Q1以上であるか否かを判定する。増減電力指令値が、1つ目の指令値リソースに対する閾値Q1未満である場合には、指令値リソースを稼働させないと判断し、指令値リソース制御処理を終了する。一方、増減電力指令値が、1つ目の指令値リソースに対する閾値Q1以上である場合には、ステップS108へ移行する。
【0061】
ステップS108において、制御部22は、1つ目の指令値リソースである発電機16を、稼働する指令値リソースとして設定する。このとき、制御部22は、DR要請の開始時刻から、当該発電機16による電力の放電が安定するまでの時間だけ前の時点から、当該発電機16の稼働を開始させる。
【0062】
ステップS110において、制御部22は、増減電力指令値が、2つ目の指令値リソースに対する閾値Q2以上であるか否かを判定する。増減電力指令値が、2つ目の指令値リソースに対する閾値Q2未満である場合には、2つ目の指令値リソースを稼働させないと判断し、指令値リソース制御処理を終了する。一方、増減電力指令値が、2つ目の指令値リソースに対する閾値Q2以上である場合には、ステップS112へ移行する。
【0063】
ステップS112において、制御部22は、2つ目の指令値リソースである水素システム12を、稼働する指令値リソースとして設定し、指令値リソース制御処理を終了する。このとき、制御部22は、DR要請の開始時刻から、当該水素システム12による電力の放電が安定するまでの時間だけ前の時点から、当該水素システム12の稼働を開始させる。
【0064】
また、制御部22は本要請に対し、
図6に示す調整リソース制御処理を繰り返し実行する。
【0065】
ステップS120において、制御部22は、受電点34から現時点の受電電力実績値を取得する。
【0066】
ステップS122において、制御部22は、現時点の受電電力実績値に基づいて、増減電力指令値を決定する。例えば、現時点の受電電力実績値が、110kWであり、ベースラインが100kWであり、要請削減電力値として40%の下げDRの要請がある場合には、ベースライン100kWから、100kW×40%=40kWを差し引いた60kWを、受電電力目標値とし、現時点の受電電力実績値と受電電力目標値との差分(110kW-60kW=50kW)を、増減電力指令値として決定する。
【0067】
ステップS124において、制御部22は、増減電力指令値と、指令値リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、蓄電池14及び電気自動車18のうち、稼働する調整リソースを設定し、調整リソース制御処理を終了する。
【0068】
具体的には、増減電力指令値に対して、指令値リソースの稼働による増減電力の不足分だけ、調整リソースを稼働させるように、蓄電池14及び電気自動車18のうち、稼働する調整リソースを設定し、負荷設備40で消費される電力に応じて、稼働するように設定された調整リソースを制御する。例えば、増減電力指令値が50kWであり、指令値リソースの稼働による増減電力が40kWである場合には、不足分(50kW-40kW=10kW)だけ、調整リソースを稼働させる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態に係る電力需給調整システムによれば、過去の受電電力実績値に基づく基準値と要請削減電力値から定められる受電電力目標値と、現時点の受電電力実績値との差分から定められる増減電力指令値に応じて、複数の指令値リソースのうち、稼働させる指令値リソースを設定し、増減電力指令値と、指令値リソースの稼働による増減電力との差分に応じて、調整リソースを稼働させるように設定する。これにより、定格電力による複数のリソースを連続稼働させる場合と比べて、電力を削減又は増加させる要請に対して柔軟な制御が可能であり、また、ハンチング回避も可能である。
【0070】
また、定格電力による複数の指令値リソースを連続稼働させる場合、増減電力指令値が指令値リソースの定格電力に対して、超過・不足したときに起動・停止を繰り返してしまう等、機器が安定的に稼働せず、増減電力指令値を安定的に達成することができない。これに対して、本実施の形態では、指令値リソースと調整リソースとを組み合わせることで、調整リソースを柔軟に制御し指令値リソースを一定の制御で安定的に稼働させながら増減電力指令値を安定的に達成することができる。
【0071】
また、応答の遅い、または制御出力の粒度が粗いリソースを指令値リソースとして用いることで頻繁な稼働停止によるハンチングを減らし、故障を抑制することができる。
【0072】
また、応答の速いリソースを調整リソースとして用い、調整リソースの制御の演算周期を短くすることで、変動する建物負荷を受電電力目標値に高精度で追従させることができる。
【0073】
また、指令値リソースと調整リソースに分類することで、制御粒度が粗い指令値リソースの頻繁な稼働停止を抑制し、調整リソースへの急激な出力変動が抑制され、リソース機器の劣化を抑制することができる。
【0074】
また、蓄電池や電気自動車といった容量に限りのある調整リソースの容量を枯渇させることなく、長時間安定的に稼働させることができる。
【0075】
また、指令値リソースの稼働閾値の間隔をあけて登録することにより、指令値リソースよりも調整リソースを優先的に動かすことも可能である。稼働が遅く、かつ単価が高いなど、あまり優先的に動かしたくないリソースも指令値リソースとして用いることが可能である。
【0076】
また、指令値リソース、調整リソースとも多段制御が可能なため、汎用性が高い。
【0077】
また、変動する建物負荷に対して多様な電源を最大限活用し、安定した調整力を供給することが可能となる。
【0078】
また、多様な電源の組み合わせにより、よりインセンティブの高い商品メニューへの応札が可能である。
【0079】
なお、上記の実施の形態では、受電電力を削減することを要請する下げDRの要請を受けた場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。受電電力を増加させることを要請する上げDRの要請を受けてもよい。この場合には、予め定めた電力を充電可能な複数の指令値リソースと、電力の充電及び停止に関する応答性が指令値リソースより速い調整リソースとを用いればよい。
【符号の説明】
【0080】
1 VPP(バーチャルパワープラント)
3 アグリゲータ
4 需要家
10 電力需給調整システム
12 水素システム
14 蓄電池
16 発電機
18 電気自動車
22 制御部
34 受電点
40 負荷設備
50 コンピュータ