(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168247
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】マットレス
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A47C27/15 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084750
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】390039985
【氏名又は名称】パラマウントベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】萩原 智美
(72)【発明者】
【氏名】有松 崇行
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB08
3B096AB09
3B096AC05
3B096AD04
3B096AD07
(57)【要約】
【課題】コストの増加を抑制しつつ、電動ベッドが背上げしたときに使用者の腹部等の圧迫を軽減できるマットレスを提供する。
【解決手段】マットレスは、使用者の臀部に対向する第1部材と、前記使用者の背部及び下肢に対向する第2部材と、を備える。前記第2部材は前記第1部材よりも滑りやすい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の臀部に対向する第1部材と、
前記使用者の背部及び下肢に対向する第2部材と、
を備え、
前記第2部材は前記第1部材よりも滑りやすいマットレス。
【請求項2】
前記第2部材は、
前記背部に対向する第1部分と、
前記第1部分から離隔し、前記下肢に対向する第2部分と、
を有する請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記第1部材は、前記第1部分を3方向から囲むと共に前記第2部分を3方向から囲む請求項2に記載のマットレス。
【請求項4】
前記第2部材には開口部が形成されており、
前記第1部材は前記開口部内に配置された請求項1に記載のマットレス。
【請求項5】
前記第1部材は、
第1基体部と、
前記第1基体部の下面上に配置され、前記第1基体部と一体的に結合された第1生地と、
を有し、
前記第2部材は、
第2基体部と、
前記第2基体部の上面上に配置され、前記第2基体部と一体的に結合された第2生地と、
を有し、
前記第2生地は前記第1基体部よりも滑りやすい請求項1に記載のマットレス。
【請求項6】
前記第2部材は、
基体部と、
前記基体部の上面上に配置され、前記基体部と一体的に結合された生地と、
を有し、
前記生地は前記基体部よりも滑りやすい請求項1に記載のマットレス。
【請求項7】
前記生地は前記第1部材の端部上に延出している請求項6に記載のマットレス。
【請求項8】
前記基体部はウレタン又はシリコーンを含み、
前記生地はポリエステル、ポリウレタン又はナイロンを含む請求項6に記載のマットレス。
【請求項9】
前記第1部材はウレタン又はシリコーンを含み、
前記第2部材はポリエステル、ポリウレタン又はナイロンを含む請求項1に記載のマットレス。
【請求項10】
前記第1部材及び前記第2部材を覆う側地をさらに備え、
前記第2部材と前記側地は、前記第1部材と前記側地よりも滑りやすい請求項1~9のいずれか1つに記載のマットレス。
【請求項11】
マットレス本体部と、
前記マットレス本体部を覆う側地と、
を備え、
前記側地における使用者の臀部に対向する第1領域と前記マットレス本体部は、前記側地における前記使用者の背部及び下肢に対向する第2領域と前記マットレス本体部よりも滑りにくいマットレス。
【請求項12】
前記第1領域の裏面には柔軟性材料からなるドットパターンが形成されている請求項11に記載のマットレス。
【請求項13】
マットレス本体部と、
少なくとも一部が前記マットレス本体部上に配置され、使用者の臀部に対向する第1シートと、
少なくとも一部が前記マットレス本体部上に配置され、前記使用者の背部及び下肢に対向する第2シートと、
を備え、
前記第2シートは前記第1シートよりも滑りやすいマットレス。
【請求項14】
前記第1シートは、前記マットレス本体部の長手方向中央部に、前記マットレス本体部の短手方向に沿って巻回されており、
前記第2シートは、前記マットレス本体部の短手方向中央部に、前記マットレス本体部の長手方向に沿って巻回されており、
前記第2シートの一部は、前記マットレス本体部と前記第1シートの間に配置されている請求項13に記載のマットレス。
【請求項15】
前記マットレス本体部、前記第1シート及び前記第2シートを覆う側地をさらに備え、
前記第2シートと前記側地は、前記第1シートと前記側地よりも滑りやすい請求項13または14に記載のマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療施設及び介護施設において、電動ベッドが用いられている。電動ベッド上にマットレスを配置し、マットレス上で使用者が仰臥位をとった状態で、電動ベッドが背上げすると、使用者の上体を起こすことができる。電動ベッドにおいては、背上げするときに、使用者の腹部、胸部及び首部等(以下、「腹部等」という)が圧迫されるという問題がある。
【0003】
特許文献1においては、背上げするときに、電動ベッドの背ボトムを上方にスライドさせることにより、この問題の解決を図っている。また、特許文献2においては、マットレスを複数のマット層を積層させて構成し、背上げするときにマット層同士をスライドさせることにより、この問題の解決を図っている。しかしながら、特許文献1に開示された方法では、電動ベッドの構成が複雑になり、電動ベッドのコストが増加する。また、特許文献2に開示された方法では、マットレスの構成が複雑になり、マットレスのコストが増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3012781号公報
【特許文献2】特開2010-115440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、コストの増加を抑制しつつ、電動ベッドが背上げしたときに使用者の腹部等の圧迫を軽減できるマットレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るマットレスは、使用者の臀部に対向する第1部材と、前記使用者の背部及び下肢に対向する第2部材と、を備える。前記第2部材は前記第1部材よりも滑りやすい。
【0007】
実施形態に係るマットレスは、マットレス本体部と、少なくとも一部が前記マットレス本体部上に配置され、使用者の臀部に対向する第1シートと、少なくとも一部が前記マットレス本体部上に配置され、前記使用者の背部及び下肢に対向する第2シートと、を備える。前記第2シートは前記第1シートよりも滑りやすい。
【0008】
実施形態に係るマットレスは、マットレス本体部と、前記マットレス本体部を覆う側地と、を備える。前記側地における使用者の臀部に対向する第1領域と前記マットレス本体部は、前記側地における前記使用者の背部及び下肢に対向する第2領域と前記マットレス本体部よりも滑りにくい。
【発明の効果】
【0009】
実施形態によれば、コストの増加を抑制しつつ、電動ベッドが背上げしたときに使用者の腹部等の圧迫を軽減できるマットレスを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るマットレスを示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は第1の実施形態に係るマットレスを示す断面図であり、
図2(b)はマットレスの上層部を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、第1の実施形態に係るマットレスの製造方法を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係るマットレスの動作を説明する図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の第1の変形例に係るマットレスの上層部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の第2の変形例に係るマットレスの上層部を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の第3の変形例に係るマットレス本体部を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の第4の変形例に係るマットレス本体部を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の第5の変形例に係るマットレス本体部を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態の第6の変形例に係るマットレスの上層部を示す断面図である。
【
図11】
図11(a)は第2の実施形態に係るマットレスを示す斜視図であり、
図11(b)は第2の実施形態に係るマットレスの上層部を示す断面図である。
【
図12】
図12(a)~(c)は、第2の実施形態に係るマットレスの製造方法を示す図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態に係るマットレスを示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第4の実施形態に係るマットレスを示す斜視図である。
【
図15】
図15(a)は第4の実施形態に係るマットレスを示す斜視図であり、
図15(b)は第4の実施形態に係るマットレスを示す断面図である。
【
図16】
図16は、第5の実施形態の変形例に係る側地を示す斜視図である。
【
図17】
図17(a)及び(b)は、滑性と防滑性を区別する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係るマットレスを示す斜視図である。
図2(a)は本実施形態に係るマットレスを示す断面図であり、
図2(b)はマットレスの上層部を示す断面図である。
【0012】
図1及び
図2(a)に示すように、本実施形態に係るマットレス1においては、マットレス本体部10及び側地30が設けられている。マットレス本体部10は所定の厚みを有し、マットレス1に要求される弾力性及び保温性を担保する。側地30はマットレス本体部10を覆うカバーであり、布又はシートによって形成されている。
【0013】
側地30はマットレス本体部10に接しているが、マットレス本体部10に対して固定されてはいない。例えば、側地30にはギャザーが形成されており、ギャザーが吸収可能な範囲内で側地30はマットレス本体部10に対して移動可能である。なお、
図1及び
図2(a)においては、図を見やすくするために、側地30はマットレス本体部10に対して大きめに描かれており、マットレス本体部10から離隔して描かれている。
【0014】
マットレス本体部10においては、下層部11、中層部12及び上層部13が設けられている。下層部11には、マットレス1の短手方向又は長手方向に延びる複数本のスリット11aが形成されていてもよい。中層部12は下層部11上に配置されている。中層部12には行列状に配列された複数の凸部12aが形成されていてもよい。上層部13は中層部12上に配置されている。
【0015】
上層部13においては、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16が設けられており、マットレス1の長手方向に沿ってこの順に配列されている。使用者がマットレス1上に仰向けに寝たときに、使用者の背部は側地30を介して滑性部材14に対向し、使用者の臀部は側地30を介して防滑性部材15に対向し、使用者の下肢は側地30を介して滑性部材16に対向する。
【0016】
図2(b)に示すように、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16においては、基体部21及び生地22が設けられている。滑性部材14及び滑性部材16においては、生地22は基体部21上に配置されている。このため、滑性部材14及び滑性部材16の上面は、生地22によって構成されている。防滑性部材15においては、生地22は基体部21の下に配置されている。このため、防滑性部材15の上面は基体部21によって構成されている。
【0017】
生地22は基体部21に一体的に結合されている。「一体的に結合されている」とは、結合面の強度が基体部21自体又は生地22自体の強度よりも高いことを意味する。例えば、基体部21と生地22に相互に離れる方向に力を印加した場合、生地22は基体部21から分離されずに、基体部21の内部で破断が生じるか、生地22が破れる。
【0018】
基体部21は相対的に摩擦係数が高い材料により形成されており、例えば、少なくとも表面はウレタン又はシリコーンを含んでいる。例えば、基体部21全体がウレタンにより形成されていてもよく、適当な材料からなるベース材にウレタン又はシリコーン等がコーティングされていてもよい。ベース材は、例えば、ポリエステル又はナイロンを含んでいてもよい。
【0019】
生地22は相対的に摩擦係数が低い材料により形成されており、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、若しくはナイロン又はこれらを混合した生地により形成されている。生地22の摩擦係数は基体部21の摩擦係数よりも低いため、生地22は基体部21よりも滑りやすい。したがって、滑性部材14及び滑性部材16は、防滑性部材15よりも滑りやすい。より具体的には、滑性部材14と側地30は、防滑性部材15と側地30よりも滑りやすく、滑性部材16と側地30は、防滑性部材15と側地30よりも滑りやすい。
【0020】
以下、本明細書においては、滑りやすい性質を「滑性」と表現し、滑りにくい性質を「防滑性」と表現するが、これらの表現は相対的なものである。また、
図1、
図11(a)、
図13、
図14においては、図を見やすくするために、滑性を有する領域を灰色で表している。
【0021】
側地30には、例えば、清拭性を重視したものと、通気性を重視したものがある。清拭性を重視したものは、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、若しくはナイロン又はこれらを混合した生地により形成されているか、綿等の天然繊維により形成された布にポリエステル等の樹脂がコーティングされている。通気性を重視したものは、綿又はウレタン等により形成されている。但し、側地30の材料はこれらには限定されない。
【0022】
次に、本実施形態に係るマットレスの製造方法について説明する。
図3(a)~(c)は、本実施形態に係るマットレスの製造方法を示す図である。
図3(a)に示すように、ラミネート装置200においては、駆動ローラ201~203と、従動ローラ204及び205と、バーナー206が設けられている。駆動ローラ201には、帯状の基体部21がコイル状に巻回されている。駆動ローラ202には、帯状の生地22がコイル状に巻回されている。
【0023】
基体部21は駆動ローラ201から従動ローラ204に向けて移動し、従動ローラ204付近でバーナー206によって片面が加熱される。バーナー206は基体部21の幅方向に沿って複数配列されている。生地22は駆動ローラ202から従動ローラ205に向けて移動する。そして、従動ローラ204と従動ローラ205の間で生地22が基体部21における加熱された面に押し付けられることにより、生地22が基体部21に結合されて、複合材23が形成される。複合材23は駆動ローラ203によって巻き取られる。このようにして、
図3(b)に示すように、帯状の複合材23が形成される。複合材23においては、基体部21の上面に生地22が一体的に結合されている。
【0024】
次に、
図3(c)に示すように、複合材23を所定のサイズに切断し、滑性部材14及び滑性部材16を形成する。一方、切断された複合材23を裏返すことにより、防滑性部材15を準備する。そして、滑性部材14と防滑性部材15を接着材24によって接着すると共に、防滑性部材15と滑性部材16を接着材25によって接着する。これにより、上層部13が作製される。滑性部材14及び滑性部材16においては上面に生地22が配置され、防滑性部材15においては下面に生地22が配置される。
【0025】
次に、
図1及び
図2(a)に示すように、下層部11及び中層部12を準備し、下層部11、中層部12及び上層部13をこの順に積層する。これにより、マットレス本体部10が作製される。次に、マットレス本体部10に側地30を装着する。これにより、マットレス1が製造される。
【0026】
次に、本実施形態に係るマットレス1の動作について説明する。
図4は、本実施形態に係るマットレスの動作を説明する図である。
図4に示すように、マットレス1を電動ベッド(図示せず)上に配置し、マットレス1上に使用者100が仰向けに寝ると、使用者100の背部101は側地30(
図1参照)を介して滑性部材14に当接し、臀部102は側地30を介して防滑性部材15に当接し、下肢103は側地30を介して滑性部材16に当接する。
【0027】
この状態で、電動ベッドが背上げすると、側地30は防滑性部材15に対して滑りにくいため、使用者100の臀部102はマットレス1に対して移動しにくい。これにより、マットレス1に対する使用者100の位置が安定する。一方、側地30は滑性部材14及び16に対して滑りやすいため、使用者100の背部101は側地30と共に頭側に移動し、使用者100の下肢103は側地30と共に足側に移動する。これにより、使用者100の腹部等の圧迫が軽減される。
【0028】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、マットレス1の上層部13を製造する際に、基体部21及び生地22を準備し、基体部21上に生地22を配置するか否かによって、マットレス1の上面に滑性を付与するか防滑性を付与するかを選択できる。このため、マットレス1の製造コストが低い。また、本実施形態によれば、上層部13のサイズに切断された1枚の複合材23から上層部13を作製できるため、マットレス1の製造コストを低減できる。このように、本実施形態によれば、コストの増加を抑制しつつ、電動ベッドが背上げしたときに使用者の腹部等の圧迫を軽減できるマットレス1を実現できる。
【0029】
<第1の実施形態の第1の変形例>
図5は、本変形例に係るマットレスの上層部を示す断面図である。
図5に示すように、本変形例に係るマットレスの上層部13aにおいては、滑性部材14の生地22が防滑性部材15における滑性部材14側の端部上に延出しており、滑性部材16の生地22が防滑性部材15における滑性部材16側の端部上に延出している。これにより、接着材24及び25が生地22によって覆われている。防滑性部材15における滑性部材14側の端部及び滑性部材16側の端部を除く部分の上面には、生地22が配置されておらず、基体部21が露出している。
【0030】
通常、固化した接着材24及び25は、基体部21よりも固い。このため、接着材24及び25が使用者に違和感を与えることがある。本変形例によれば、接着材24及び25が生地22によって覆われていることにより、接着材24及び25が使用者に与える違和感を軽減できる。本変形例における上記以外の構成、製造方法、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0031】
<第1の実施形態の第2の変形例>
図6は、本変形例に係るマットレスの上層部を示す断面図である。
図6に示すように、本変形例に係るマットレスの上層部13bは、第1の実施形態の第1の変形例に係る上層部13aと比較して、接着材24及び25が設けられておらず、接着材26a及び26bが設けられている点が異なっている。
【0032】
接着材26aは、滑性部材14の生地22における防滑性部材15の端部上に延出した部分と防滑性部材15の基体部21との間に配置されている。これにより、接着材26aは、滑性部材14の生地22と防滑性部材15の基体部21とを接着する。接着材26bは、滑性部材16の生地22における防滑性部材15の端部上に延出した部分と防滑性部材15の基体部21との間に配置されている。これにより、接着材26bは、滑性部材16の生地22と防滑性部材15の基体部21とを接着する。
【0033】
接着材26a及び26bは、防滑性部材15の基体部21の上面に沿って配置されるため、水平方向に拡がる平面状になる。これに対して、第1の実施形態の第1の変形例における接着材24及び25は、垂直方向に拡がる立面状である。本変形例によれば、立面状の接着材24及び25に替えて平面状の接着材26a及び26bを設けることにより、使用者の違和感を軽減できる。本変形例における上記以外の構成、製造方法、動作及び効果は、第1の実施形態の第1の変形例と同様である。
【0034】
<第1の実施形態の第3の変形例>
図7は、本変形例に係るマットレス本体部を示す断面図である。
図7に示すように、本変形例に係るマットレス本体部10aにおいては、下層部11、中層部12、接着材26及び上層部13cが設けられている。上層部13cには、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16が設けられている。滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16の構成は、第1の実施形態と同様である。接着材26は中層部12と上層部13cとの間の略全体に配置されている。これにより、接着材26は、中層部12と滑性部材14を接着し、中層部12と防滑性部材15を接着し、中層部12と滑性部材16を接着する。接着材26は、例えば、上層部13cの下面にスプレーにより塗布され、中層部12と張り合わされた後、固化されることにより形成される。
【0035】
本変形例によれば、中層部12と上層部13cとの間に平面状の接着材26を設けることにより、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16をそれぞれ中層部12に接着している。このため、滑性部材14と防滑性部材15の間に接着材24(
図3(c)参照)を設ける必要が無く、防滑性部材15と滑性部材16の間に接着材25(
図3(c)参照)を設ける必要が無い。立面状の接着材24及び25を設けないことにより、使用者の違和感を軽減できる。本変形例における上記以外の構成、製造方法、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0036】
<第1の実施形態の第4の変形例>
図8は、本変形例に係るマットレス本体部を示す断面図である。
図8に示すように、本変形例に係るマットレス本体部10bにおいては、下層部11、中層部12、接着材26、テープ29a及び29b、並びに、上層部13cが設けられている。上層部13cの構成は、第1の実施形態の第3の変形例と同様である。
【0037】
テープ29aは、滑性部材14の下面から防滑性部材15の下面にわたって貼付されている。テープ29bは、滑性部材16の下面から防滑性部材15の下面にわたって貼付されている。接着材26は、上層部13cの下面をテープ29a及び29bごと覆っている。これにより、接着材26は、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16をそれぞれ中層部12に接着すると共に、テープ29a及び29bも中層部12に接着している。
【0038】
マットレス本体部10bは、例えば、以下の方法により作製される。先ず、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16を、下面を上方に向けて配置する。次に、テープ29a及び29bを貼付して、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16を相互に仮止めする。これにより、上層部13cが形成される。次に、上層部13cの下面に、テープ29a及び29bの上から接着材26をスプレーにより塗布する。次に、接着材26を介して中層部12の上面を上層部13cの下面に当接させる。次に、接着材26を固化させる。このようにして、マットレス本体部10bが作製される。
【0039】
本変形例によれば、テープ29aによって滑性部材14と防滑性部材15とを固定し、テープ29bによって防滑性部材15と滑性部材16とを固定することにより、マットレス本体部10bの製造過程において、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16が相互にずれることを防止できる。この結果、マットレス本体部10bの生産性が向上する。本変形例における上記以外の構成、製造方法、動作及び効果は、第1の実施形態の第3の変形例と同様である。
【0040】
<第1の実施形態の第5の変形例>
図9は、本変形例に係るマットレス本体部を示す断面図である。
図9に示すように、本変形例に係るマットレス本体部10cにおいては、下層部11、中層部12、上層部13c、並びに、接着材27a及び27bが設けられている。上層部13cの構成は、第1の実施形態の第3の変形例と同様である。
【0041】
接着材27aは、滑性部材14の下側かつ防滑性部材15側の角部14aと、防滑性部材15の下側かつ滑性部材14側の角部15aにわたって配置されている。接着材27aは角部14a及び角部15aにしみ込んでいる。接着材27aにより、滑性部材14と防滑性部材15が接着されている。
【0042】
接着材27bは、滑性部材16の下側かつ防滑性部材15側の角部16aと、防滑性部材15の下側かつ滑性部材16側の角部15bにわたって配置されている。接着材27bは角部16a及び角部15bにしみ込んでいる。接着材27bにより、滑性部材16と防滑性部材15が接着されている。
【0043】
マットレス本体部10cは、例えば、以下の方法により作製される。先ず、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16を、下面を上方に向けて配置する。次に、滑性部材14と防滑性部材15の境界部に接着材27aを塗布し、滑性部材14の角部14aと防滑性部材15の角部15aに馴染ませる。また、滑性部材16と防滑性部材15の境界部に接着材27bを塗布し、滑性部材16の角部16aと防滑性部材15の角部15bに馴染ませる。その後、接着材27a及び27bを固化させる。次に、下層部11、中層部12及び上層部13cを積層する。このようにして、マットレス本体部10cが作製される。
【0044】
本変形例によれば、接着材27a及び27bを上層部13cの下部に配置することにより、使用者の違和感を軽減できる。本変形例における上記以外の構成、製造方法、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0045】
<第1の実施形態の第6の変形例>
図10は、本変形例に係るマットレスの上層部を示す断面図である。
図10に示すように、本変形例に係るマットレスの上層部13dにおいては、滑性部材14、防滑性部材15及び滑性部材16に共通する基体部21が設けられている。そして、滑性部材14及び滑性部材16においては、基体部21上に生地22が設けられており、防滑性部材15においては、基体部21上に生地22が設けられていない。
【0046】
本変形例の上層部13dを作製する際には、
図3(a)に示すラミネート装置200を用いて複合材23を作製する際に、基体部21のうち滑性部材14を形成する予定の部分がバーナー206の正面を通過するときはバーナー206を点火し、防滑性部材15を形成する予定の部分がバーナー206の正面を通過するときはバーナー206を消火し、滑性部材16を形成する予定の部分がバーナー206の正面を通過するときはバーナー206を再び点火する。
【0047】
これにより、
図10に示すように、滑性部材14及び16においては基体部21に生地22が結合され、防滑性部材15においては基体部21上に生地22が存在するものの基体部21に結合されていない状態が実現できる。そして、滑性部材14と防滑性部材15との界面、及び、滑性部材16と防滑性部材15との界面において生地22を切断し、除去する。このようにして、上層部13dが作製される。
【0048】
本変形例によれば、上層部13d全体で基体部21が一体的に形成されており、接着材24及び25が不要となるため、接着材24及び25が使用者に違和感を与えることがない。また、接着材24及び25を設けないため、コストをより低減できる。本変形例における上記以外の構成、製造方法、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
<第2の実施形態>
図11(a)は本実施形態に係るマットレスを示す斜視図であり、
図11(b)は本実施形態に係るマットレスの上層部を示す断面図である。
【0050】
図11(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係るマットレス2は、第1の実施形態に係るマットレス1と比較して、マットレス本体部10の上層部13eの構成が異なっている。上層部13eにおいては、滑性部材17及び防滑性部材18が設けられている。上方から見て、滑性部材17の外縁は上層部13eの外縁と一致している。滑性部材17の中央部には開口部17aが形成されており、開口部17a内に防滑性部材18が配置されている。防滑性部材18の形状は面対称であり、例えば、角部が丸められた矩形の板状である。滑性部材17と防滑性部材18との間には、接着材28が設けられている。接着材28の形状は防滑性部材18を囲む枠状である。
【0051】
滑性部材17においては、基体部21の上面上に生地22が配置されており、基体部21と一体的に結合している。防滑性部材18においては、基体部21の下面上に生地22が配置されており、基体部21と一体的に結合している。マットレス2上に使用者が仰向けに寝たときに、使用者の臀部は側地30を介して防滑性部材18に対向し、使用者の背部及び下肢は側地30を介して滑性部材17に対向する。
【0052】
次に、本実施形態に係るマットレスの製造方法について説明する。
図12(a)~(c)は、本実施形態に係るマットレスの製造方法を示す図である。
【0053】
先ず、
図12(a)に示すように、第1の実施形態と同様な方法により、複合材23を作製し、上層部13eのサイズに切断する。複合材23においては、基体部21及び生地22が積層されている。
【0054】
次に、
図12(b)に示すように、複合材23の中央部を切り出す。このとき、切り出された部分が防滑性部材18となり、残留した部分が滑性部材17となる。滑性部材17における防滑性部材18を切り出したあとの領域が、開口部17aとなる。
【0055】
次に、
図12(c)及び
図11(b)に示すように、防滑性部材18の表裏を逆転させて、開口部17a内にはめ込む。そして、接着材28により、防滑性部材18を滑性部材17に接着する。このようにして、上層部13eが作製される。
【0056】
本実施形態によれば、上層部13eのサイズに切断された1枚の複合材23から上層部13eを作製できるため、マットレス2の製造コストをより低減できる。また、滑性部材17における防滑性部材18を切り出したあとの開口部17a内に、表裏反転させた防滑性部材18をはめ込めば上層部13eを作製できるため、製造が容易である。本実施形態における上記以外の構成、製造方法、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
なお、本実施形態において、接着材28を用いずに防滑性部材18を滑性部材17の開口部17a内に固定できる場合には、接着材28を設けなくてもよい。これにより、接着材28が使用者に違和感を与えることを回避できると共に、コストをより低減できる。
【0058】
また、本実施形態は第1の実施形態の各変形例と組み合わせることができる。すなわち、第1の実施形態の第1の変形例と同様に、滑性部材17の生地22を防滑性部材18の基体部21上に延出させて、接着材28を覆ってもよい。また、第1の実施形態の第2の変形例と同様に、滑性部材17の生地22と防滑性部材18の基体部21との間に、平面状の接着材を設けてもよい。また、第1の実施形態の第3の変形例と同様に、中層部12と上層部13cの間の略全体に平面状の接着材を設けてもよい。また、第1の実施形態の第4の変形例と同様に、滑性部材17の下面と防滑性部材18の下面にテープを貼付してもよい。また、第1の実施形態の第5の変形例と同様に、滑性部材17の下側かつ防滑性部材18側の角部と、防滑性部材18の下側かつ滑性部材17側の角部にわたって接着材をしみ込ませてもよい。
【0059】
また、本実施形態と第1の実施形態の第6の変形例を組み合わせることもできる。すなわち、
図3(a)に示すラミネート装置200を用いて複合材23を作製する際に、基体部21の幅方向に沿って配列された複数のバーナー206の正面を、防滑性部材18を形成する予定の部分が通過するときに、幅方向中央部に配置されたバーナー206のみを停止することにより、生地22を基体部21に結合しないことができる。その後、この部分の生地22を切除することにより、防滑性部材18を形成できる。これにより、上層部全体で基体部21を一体的に形成でき、接着材が不要となる。
【0060】
<第3の実施形態>
図13は、本実施形態に係るマットレスを示す斜視図である。
図13に示すように、本実施形態に係るマットレス3は、第2の実施形態に係るマットレス2と比較して、マットレス本体部の上層部13fの構成が異なっている。上層部13fにおいては、滑性部材19a及び19b、並びに、防滑性部材20が設けられている。
【0061】
上方から見て、防滑性部材20の形状はH字状である。防滑性部材20の長手方向両端部における短手方向中央部には、略矩形の凹部20a及び20bが形成されている。滑性部材19aは防滑性部材20の凹部20a内に配置されており、滑性部材19bは防滑性部材20の凹部20b内に配置されている。上方から見て、滑性部材19a及び19b、並びに、凹部20a及び20bの形状は2つの角部が丸められた矩形である。このため、防滑性部材20は滑性部材19aを3方向から囲むと共に、滑性部材19bを3方向から囲む。
【0062】
滑性部材19aと防滑性部材20との間には、接着材28aが設けられている。上方から見て、接着材28aの形状は滑性部材19aと防滑性部材20の境界面に沿ったC字状である。滑性部材19bと防滑性部材20との間には、接着材28bが設けられている。上方から見て、接着材28bの形状は滑性部材19bと防滑性部材20の境界面に沿ったC字状である。
【0063】
滑性部材19a及び19bにおいては、基体部21の上面上に生地22が配置されており、基体部21と一体的に結合している。防滑性部材20においては、基体部21の下面上に生地22が配置されており、基体部21と一体的に結合している。マットレス3上に使用者が仰向けに寝たときに、使用者の臀部は側地30を介して防滑性部材20に対向し、使用者の背部は側地30を介して滑性部材19aに対向し、使用者の下肢は側地30を介して滑性部材19bに対向する。これにより、電動ベッドが背上げしても、使用者の腹部等の圧迫が軽減される。
【0064】
また、使用者がマットレス3の短手方向の端部上で端座位をとったときに、使用者の臀部は側地30を介して防滑性部材20に対向する。これにより、使用者の臀部がマットレス3に対して滑りにくくなり、使用者がマットレス3から滑り落ちることを防止できる。本実施形態における上記以外の構成、製造方法、動作及び効果は、第2の実施形態と同様である。
【0065】
本実施形態も、第1の実施形態の各変形例と組み合わせることができる。すなわち、第1の実施形態の第1の変形例と同様に、滑性部材19a及び19bの生地22を防滑性部材20の基体部21上に延出させて、接着材28a及び28bを覆ってもよい。また、第1の実施形態の第2の変形例と同様に、滑性部材19a及び19bの生地22と防滑性部材20の基体部21との間に、平面状の接着材を設けてもよい。また、第1の実施形態の第3の変形例と同様に、中層部12と上層部13fの間の略全体に平面状の接着材を設けてもよい。また、第1の実施形態の第4の変形例と同様に、滑性部材19a及び19bの下面と防滑性部材20の下面にテープを貼付してもよい。また、第1の実施形態の第5の変形例と同様に、滑性部材19aの下側かつ防滑性部材20側の角部と、防滑性部材20の下側かつ滑性部材19a側の角部にわたって接着材をしみ込ませ、滑性部材19bの下側かつ防滑性部材20側の角部と、防滑性部材20の下側かつ滑性部材19b側の角部にわたって接着材をしみ込ませてもよい。また、第1の実施形態の第6の変形例と同様に、滑性部材19a及び19bにおいては、生地22を設けなくてもよい。
【0066】
<第4の実施形態>
図14は、本実施形態に係るマットレスを示す斜視図である。
図14に示すように、本実施形態に係るマットレス4は、マットレス本体部40と、滑性シート41と、防滑性シート42と、側地30が設けられている。
【0067】
滑性シート41はマットレス本体部40の表面に巻き付けられており、防滑性シート42は、マットレス本体部40と滑性シート41からなる構造体の表面に巻き付けられており、側地30は、マットレス本体部40、滑性シート41及び防滑性シート42からなる構造体を覆っている。このため、滑性シート41の一部はマットレス本体部40と防滑性シート42の間に配置されている。滑性シート41及び防滑性シート42は、マットレス本体部40に対して固定されている。
【0068】
滑性シート41は、マットレス本体部40の短手方向中央部を、マットレス本体部40の長手方向に沿って巻回している。このため、滑性シート41は、マットレス本体部40の短手方向中央部上において、マットレス本体部40の長手方向全長にわたって配置されている。
【0069】
防滑性シート42は、マットレス本体部40の長手方向中央部を、マットレス本体部40の短手方向に沿って巻回している。このため、防滑性シート42は、前記マットレス本体部40の長手方向中央部上において、マットレス本体部40の短手方向全長にわたって配置されている。
【0070】
マットレス本体部40は通常のものでよく、第1の実施形態に係るマットレス1のように、滑性部材と防滑性部材を有している必要はない。滑性シート41は防滑性シート42よりも滑りやすい。より具体的には、滑性シート41と側地30は、防滑性シート42と側地30よりも滑りやすい。例えば、滑性シート41はポリエステル、ポリウレタン、若しくはナイロン又はこれらを混合した生地からなり、防滑性シート42はウレタン又はウレタン若しくはシリコーン等を適当なベース材にコーティングした生地からなる。
【0071】
次に、本実施形態の動作及び効果について説明する。
マットレス4は電動ベッド(図示せず)上に配置される。使用者がマットレス4上に仰向けに寝ると、使用者の臀部は側地30を介して防滑性シート42に対向し、使用者の背部及び下肢は側地30を介して滑性シート41に対向する。
【0072】
電動ベッドが背上げしたときに、側地30は防滑性シート42に対して滑りにくいため、使用者の臀部はマットレス本体部40に対して移動しにくい。一方、側地30は滑性シート41に対して滑りやすいため、使用者の背部及び下肢は臀部から離れる方向に移動可能である。この結果、背上げに伴う使用者の腹部等の圧迫が軽減される。また、本実施形態に係るマットレス4は、マットレス本体部40として従来の製品を利用できるため、コストが低い。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0073】
<第5の実施形態>
図15(a)は本実施形態に係るマットレスを示す斜視図であり、
図15(b)は本実施形態に係るマットレスを示す断面図である。
【0074】
図15(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係るマットレス5においては、マットレス本体部40と、側地50が設けられている。第4の実施形態と同様に、マットレス本体部40は通常のものでよく、第1の実施形態のように滑性部材と防滑性部材を有している必要はない。側地50はマットレス本体部40を覆っている。
【0075】
側地50には、マットレス5の長手方向中央部に、防滑性領域51が設定されている。防滑性領域51は、使用者がマットレス5上に仰向けに寝たときに、使用者の臀部が対向する領域である。防滑性領域51は、マットレス5の短手方向中央部のみに配置されていてもよく、短手方向全長にわたって配置されていてもよい。
【0076】
側地50における防滑性領域51を除く領域は、滑性領域52となっている。滑性領域52は、使用者がマットレス5上に仰向けに寝たときに、使用者の背部及び下肢が対向する領域である。なお、本実施形態においては、側地50における防滑性領域51を除く領域の全体が滑性領域52である例を示しているが、これには限定されず、少なくとも使用者の背部及び下肢が対向する領域が滑性領域52であればよい。このため、滑性領域52は、使用者の背部が対向する領域と下肢が対向する領域に分割されていてもよい。
【0077】
防滑性領域51は滑性領域52よりも滑りにくい。より具体的には、側地50における防滑性領域51とマットレス本体部40は、側地50における滑性領域52とマットレス本体部40よりも滑りにくい。例えば、側地50はポリエステル、ポリウレタン、若しくはナイロン又はこれらを混合した生地からなり、防滑性領域51の裏面には、柔軟性材料からなるドットパターン53が形成されている。柔軟性材料は、例えば、軟質な樹脂材料であり、例えば、シリコーン樹脂である。ドットパターン53においては、例えば、複数の半球状の突起が行列状に配列されている。
【0078】
本実施形態においても、電動ベッド上にマットレス5が配置され、マットレス5上に使用者が仰向けに寝た状態で、電動ベッドが背上げすると、使用者の臀部は防滑性領域51に当接するためマットレス本体部40に対して移動しにくく、使用者の背部及び下肢は滑性領域52に当接するため、側地50と共にマットレス本体部40に対して移動しやすい。これにより、マットレス5に対する使用者の位置を安定させつつ、腹部等の圧迫を軽減できる。また、本実施形態に係るマットレス5においては、マットレス本体部40として従来の製品を利用できるため、コストが低い。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0079】
<第5の実施形態の変形例>
図16は、本変形例に係る側地を示す斜視図である。
図16に示すように、本変形例に係る側地50aは、第5の実施形態に係る側地50と比較して、防滑性領域51a並びに滑性領域52a及び52bの形状が異なっている。第5の実施形態と同様に、本変形例に係る側地50aはマットレス本体部40を覆うものである。マットレス本体部40は通常のものでよい。
【0080】
上方から見て、防滑性領域51aの形状はH字状である。すなわち、防滑性領域51aは、側地50aの上面の短手方向両端部においては長手方向全長にわたって配置されており、側地50aの上面の短手方向中央部においては長手方向中央部にのみ配置されている。防滑性領域51aの裏面には、柔軟性材料からなるドットパターン53が形成されている。滑性領域52a及び52bは、側地50aの上面の短手方向中央部であって長手方向両端部にそれぞれ配置されている。
【0081】
使用者がマットレス上に仰向けに寝たときに、側地50aの防滑性領域51aは使用者の臀部に対向し、滑性領域52aは使用者の背部に対向し、滑性領域52bは使用者の下肢に対向する。また、使用者がマットレスの短手方向端部上で端座位をとったときに、使用者の臀部は側地50aの防滑性領域51aに対向する。
【0082】
本変形例によれば、使用者がマットレスの短手方向端部上で端座位をとったときに、使用者の臀部が防滑性領域51aに対向するため、使用者がマットレスから滑り落ちることを防止できる。本変形例における上記以外の構成、動作及び効果は、第5の実施形態と同様である。
【0083】
<滑性と防滑性を区別する方法>
上述の如く、第1の実施形態並びにその第1~第6の変形例、第2の実施形態、並びに、第3の実施形態においては、マットレス本体部に滑性部材と防滑性部材を設けている。第4の実施形態においては、マットレス本体部とは別に滑性シートと防滑性シートを設けている。第5の実施形態及びその変形例においては、側地に滑性領域と防滑性領域を設けている。上述の如く、滑性を有する物体は防滑性を有する物体よりも摩擦係数が低く滑りやすい。但し、摩擦係数の絶対値は測定方法に依存するため、滑性と防滑性を摩擦係数の絶対値を基準として区別することは困難である。そこで、本明細書においては、滑性と防滑性を相対的な概念として扱っている。以下、滑性と防滑性を区別する方法の一例を説明する。
【0084】
図17(a)及び(b)は、滑性と防滑性を区別する方法の一例を示す図である。
図17(a)に示すように、滑性を有すると推定される試験片301と、防滑性を有すると推定される試験片302を同数用意する。例えば、試験片301と試験片302をそれぞれ10個用意する。試験片301及び302の形状はなるべく同一とする。また、板303を用意する。板303の表面は、評価しようとする滑性及び防滑性の対象となる材料によって構成されていることが好ましい。すなわち、第1の実施形態並びにその第1~第6の変形例、第2の実施形態、第3の実施形態、並びに、第4の実施形態においては、板303の上面を側地30によって構成することが好ましい。第5の実施形態及びその変形例においては、板303の上面をマットレス本体部40の上面と同じ材料によって構成することが好ましい。
【0085】
次に、板303上に試験片301又は試験片302を載置し、板303を少しずつ傾斜させていく。そして、試験片301又は302が板303に対して滑り始めた角度θを記録する。角度θは、板303の上面と基準面304とがなす角度である。基準面304は例えば水平面である。
【0086】
図17(b)に示すように、試験片301の角度θの平均値をA
1とし、標準偏差をσ
1とする。また、試験片302の角度θの平均値をA
2とし、標準偏差をσ
2とする。そして、平均値A
1に標準偏差σ
1を加えた値(A
1+σ
1)が平均値A
2から標準偏差σ
2を減じた値(A
2-σ
2)よりも小さければ、相対的に、試験片301は滑性を有し、試験片302は防滑性を有すると判定できる。すなわち、A
1+σ
1<A
2-σ
2であれば、試験片301と試験片302の関係においては、試験片301が滑性を有し、試験片302が防滑性を有するといえる。
【0087】
前述の各実施形態及びその変形例は、本発明を具現化した例であり、本発明はこれらの実施形態及び変形例には限定されない。例えば、前述の各実施形態及び各変形例において、いくつかの構成要素を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。また、前述の各実施形態及び各変形例は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0088】
本発明は、以下の態様を含む。
【0089】
(付記1)
使用者の臀部に対向する第1部材と、
前記使用者の背部及び下肢に対向する第2部材と、
を備え、
前記第2部材は前記第1部材よりも滑りやすいマットレス。
【0090】
(付記2)
前記第2部材は、
前記背部に対向する第1部分と、
前記第1部分から離隔し、前記下肢に対向する第2部分と、
を有する付記1に記載のマットレス。
【0091】
(付記3)
前記第1部材は、前記第1部分を3方向から囲むと共に前記第2部分を3方向から囲む付記2に記載のマットレス。
【0092】
(付記4)
前記第2部材には開口部が形成されており、
前記第1部材は前記開口部内に配置された付記1に記載のマットレス。
【0093】
(付記5)
前記第1部材は、
第1基体部と、
前記第1基体部の下面上に配置され、前記第1基体部と一体的に結合された第1生地と、
を有し、
前記第2部材は、
第2基体部と、
前記第2基体部の上面上に配置され、前記第2基体部と一体的に結合された第2生地と、
を有し、
前記第2生地は前記第1基体部よりも滑りやすい付記1~4のいずれか1つに記載のマットレス。
【0094】
(付記6)
前記第2部材は、
基体部と、
前記基体部の上面上に配置され、前記基体部と一体的に結合された生地と、
を有し、
前記生地は前記基体部よりも滑りやすい付記1~4のいずれか1つに記載のマットレス。
【0095】
(付記7)
前記生地は前記第1部材の端部上に延出している付記6に記載のマットレス。
【0096】
(付記8)
前記基体部はウレタン又はシリコーンを含み、
前記生地はポリエステル、ポリウレタン又はナイロンを含む付記6または7に記載のマットレス。
【0097】
(付記9)
前記第1部材はウレタン又はシリコーンを含み、
前記第2部材はポリエステル、ポリウレタン又はナイロンを含む付記1~4のいずれか1つに記載のマットレス。
【0098】
(付記10)
前記第1部材及び前記第2部材を覆う側地をさらに備え、
前記第2部材と前記側地は、前記第1部材と前記側地よりも滑りやすい付記1~9のいずれか1つに記載のマットレス。
【0099】
(付記11)
マットレス本体部と、
前記マットレス本体部を覆う側地と、
を備え、
前記側地における使用者の臀部に対向する第1領域と前記マットレス本体部は、前記側地における前記使用者の背部及び下肢に対向する第2領域と前記マットレス本体部よりも滑りにくいマットレス。
【0100】
(付記12)
前記第1領域の裏面には柔軟性材料からなるドットパターンが形成されている付記11に記載のマットレス。
【0101】
(付記13)
マットレス本体部と、
少なくとも一部が前記マットレス本体部上に配置され、使用者の臀部に対向する第1シートと、
少なくとも一部が前記マットレス本体部上に配置され、前記使用者の背部及び下肢に対向する第2シートと、
を備え、
前記第2シートは前記第1シートよりも滑りやすいマットレス。
【0102】
(付記14)
前記第1シートは、前記マットレス本体部の長手方向中央部に、前記マットレス本体部の短手方向に沿って巻回されており、
前記第2シートは、前記マットレス本体部の短手方向中央部に、前記マットレス本体部の長手方向に沿って巻回されており、
前記第2シートの一部は、前記マットレス本体部と前記第1シートの間に配置されている付記13に記載のマットレス。
【0103】
(付記15)
前記マットレス本体部、前記第1シート及び前記第2シートを覆う側地をさらに備え、
前記第2シートと前記側地は、前記第1シートと前記側地よりも滑りやすい付記13または14に記載のマットレス。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、例えば、電動ベッド上に搭載するマットレスに利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1、2、3、4、5 マットレス
10、10a、10b、10c マットレス本体部
11 下層部
11a スリット
12 中層部
12a 凸部
13 上層部
13a、13b、13c、13d、13e、13f 上層部
14 滑性部材
14a 角部
15 防滑性部材
15a、15b 角部
16 滑性部材
16a 角部
17 滑性部材
17a 開口部
18 防滑性部材
19a、19b 滑性部材
20 防滑性部材
20a、20b 凹部
21 基体部
22 生地
23 複合材
24、25、26、26a、26b、27a、27b、28、28a、28b 接着材
29a、29b テープ
30 側地
40 マットレス本体部
41 滑性シート
42 防滑性シート
50、50a 側地
51、51a 防滑性領域
52、52a、52b 滑性領域
53 ドットパターン
100 使用者
101 背部
102 臀部
103 下肢
200 ラミネート装置
201、202、203 駆動ローラ
204、205 従動ローラ
206 バーナー
301、302 試験片
303 板
304 基準面
A1、A2 平均値
θ 角度
σ1、σ2 標準偏差