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特開2024-168248放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168248
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/16 20060101AFI20241128BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20241128BHJP
   G21C 17/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G01T1/16 B
G01T1/17 A
G21C17/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084752
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】上野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】畠山 修一
(72)【発明者】
【氏名】上野 克宜
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡
(72)【発明者】
【氏名】村本 武司
【テーマコード(参考)】
2G075
2G188
【Fターム(参考)】
2G075DA08
2G075FA05
2G075FC14
2G188AA19
2G188AA23
2G188BB04
2G188CC32
2G188DD05
2G188EE12
2G188EE35
2G188FF28
(57)【要約】
【課題】撮像素子を利用する放射線モニタにおいて、計測線量率のダイナミックレンジが広く高線量率まで計測可能で、小型で可搬性に優れた低コストの放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法を提供する。
【解決手段】撮像素子型放射線モニタ1は、放射線を検知する撮像素子10と、撮像素子10からの画像データを収集する画像収集装置20と、画像収集装置20が取得した画像データを取り込んで、輝度値の加算値(輝度値相関パラメータ)を算出する画素値演算装置30と、画素値演算装置30が算出した輝度値相関パラメータから線量率を算出する線量率演算装置40と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検知する撮像素子と、
前記撮像素子からの画像データを収集する画像収集装置と、
前記画像収集装置が取得した前記画像データを取り込んで、輝度値の加算値、予め設定した輝度値ウインドウ内の画素数或いは輝度値、所定閾値以上の輝度値と画素数とのヒストグラムから求めたピーク輝度値或いはピーク画素数、のうちいずれかからなる輝度値相関パラメータを算出する画素値演算装置と、
前記画素値演算装置が算出した前記輝度値相関パラメータから線量率を算出する線量率演算装置と、を備える
放射線モニタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線モニタ装置において、
前記画素値演算装置は、前記輝度値相関パラメータとして前記輝度値の加算値、予め設定した輝度値ウインドウ内の画素数或いは輝度値を算出する場合に、更に前記ヒストグラムを算出し、
前記線量率演算装置は、前記ヒストグラムを用いて前記線量率を補正する
放射線モニタ装置。
【請求項3】
放射線を検知する撮像素子と、
前記撮像素子からの画像データを収集する画像収集装置と、
前記画像収集装置が取得した前記画像データを取り込んで、所定閾値以上の輝度値の画素数、及び前記輝度値と前記画素数とのヒストグラムを算出する画素値演算装置と、
前記画素値演算装置が算出した前記画素数及び前記ヒストグラムから線量率を算出する線量率演算装置と、を備える
放射線モニタ装置。
【請求項4】
放射線を検知する検知ステップと、
前記検知ステップで検知した画像データを収集する画像収集ステップと、
前記画像収集ステップにおいて取得した前記画像データを取り込んで、所定閾値以上の輝度値と画素数とのヒストグラムから求めたピーク輝度値或いはピーク画素数、のうちいずれかからなる輝度値相関パラメータを算出する画素値演算ステップと、
前記画素値演算ステップにおいて算出した前記輝度値相関パラメータから線量率を算出する線量率演算ステップと、を有する
放射線のモニタ方法。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線のモニタ方法において、
前記画素値演算ステップでは、前記輝度値相関パラメータとして前記輝度値の加算値、予め設定した輝度値ウインドウ内の画素数或いは輝度値を算出する場合に、更に前記ヒストグラムを算出し、
前記線量率演算ステップでは、前記ヒストグラムを用いて前記線量率を補正する
放射線のモニタ方法。
【請求項6】
放射線を検知する検知ステップと、
前記検知ステップで検知した画像データを収集する画像収集ステップと、
前記画像収集ステップにおいて取得した前記画像データを取り込んで、所定閾値以上の輝度値の画素数、及び前記輝度値と前記画素数とのヒストグラムを算出する画素値演算ステップと、
前記画素値演算ステップにおいて算出した前記画素数及び前記ヒストグラムから線量率を算出する線量率演算ステップと、を有する
放射線のモニタ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を用いた放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、CCDカメラと、CCDカメラの出力信号を記録する記録装置と、記録装置により記録媒体に記録された画像信号を再生する再生装置と、画像解析装置と、を備え、画像解析装置は再生装置から出力される再生画像信号から所定の信号レベルを有する1又は複数の画素から成る画素群を識別し、これを放射線光子として計数する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-311271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線モニタは、原子力発電プラント、医療用の放射線検査や放射線治療などの用途において、必須の計測装置である。
【0005】
これらの用途において、放射線量の計測には、安定性や再現性が良好な電離箱が広く使用されている。
【0006】
ここで、原子力発電プラントの過酷環境下で放射線量を計測する場合には、高線量環境での測定及び広いダイナミックレンジが必要であると共に、計測場所の制限などから、センサの小型化や可搬性に優れることが重要となる。
【0007】
近年、電離箱に代わり放射線量の計測に小型化が比較的容易な半導体検出器が使用されている。しかし、半導体検出器であっても信号処理系までを含めると小型化には限界があり、また、半導体検出器は電圧の印加が必要であり、使用条件の制限が大きい。
【0008】
また、センサにシンチレータ素子を使用し、シンチレータ素子から発生する光子を光ファイバにより伝送し、遠隔にて放射線量を計測する光ファイバ型放射線モニタが開発されている。光ファイバ型放射線モニタは、センサが小型で耐放射線性や耐熱性等の耐環境性にも優れているが、光ファイバでの伝送が必須であり可搬性等の使用条件に課題がある。
【0009】
小型で可搬性に優れたセンサの候補の一つに撮像素子があげられる。高線量場でのカメラ映像にはノイズが乗ることが知られているが、このノイズ画素を数えることで放射線量を特定することが可能である。
【0010】
撮像素子は近年のスマートデバイスの急速な進化によりその性能は大幅に向上しており、高画素で小型な撮像素子が登場している。更に周辺のインターフェースも充実しており、ビデオ信号やイーサーネット等の有線通信はもちろん無線通信にも簡易に対応可能であることから、小型で可搬性に優れるセンサであるとともにそれを低コストで簡易に製作可能で、放射線モニタ用のセンサとして非常に有望である。
【0011】
一方、撮像素子による放射線計測においては、その定量性に課題がある。特に高線量環境になるとノイズ画素数が飽和してしまい放射線量を計測することが出来なくなる。撮像素子を用いた放射線モニタの課題は、より高線量環境への対応、つまりは線量率のダイナミックレンジを広げることである。
【0012】
こうした本技術分野の背景技術の1つとして特許文献1がある。特許文献1は、Co-60等の高エネルギーガンマ線を測定することを目的として、放射線がCCDカメラに入射時の画面上に生じる白く光る点を識別し、これを放射線イベントとして計数する等の画像処理を施すものである。
【0013】
しかし、特許文献1においては、高線量場にて計測した発光画素数が飽和する問題が考慮されていない。この場合、高線量率では発光画素数と線量率の対応が取れなくなるので、線量率が計測できなくなる。従って、特許文献1においては、計測線量率のダイナミックレンジが狭く高線量率の計測が困難である。
【0014】
そこで、本発明は、撮像素子を利用する放射線モニタにおいて、計測線量率のダイナミックレンジが広く高線量率まで計測可能で、小型で可搬性に優れた低コストの放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、放射線を検知する撮像素子と、前記撮像素子からの画像データを収集する画像収集装置と、前記画像収集装置が取得した前記画像データを取り込んで、輝度値の加算値、予め設定した輝度値ウインドウ内の画素数或いは輝度値、所定閾値以上の輝度値と画素数とのヒストグラムから求めたピーク輝度値或いはピーク画素数、のうちいずれかからなる輝度値相関パラメータを算出する画素値演算装置と、前記画素値演算装置が算出した前記輝度値相関パラメータから線量率を算出する線量率演算装置と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮像素子を利用する放射線モニタにおいて、計測線量率のダイナミックレンジが広く高線量率まで計測可能で、小型で可搬性に優れた低コストの放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法を提供することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に記載する撮像素子型放射線モニタの構成を説明する説明図である。
図2】発光画素数と線量率の相関図である。
図3】実施例1における輝度加算値と線量率の相関図である。
図4】実施例1における線量率をパラメータとした時の輝度値に対する画素数をプロットした輝度値ヒストグラムである。
図5】実施例2におけるウインドウ内画素数と線量率の相関図である。
図6】実施例3におけるピーク輝度値と線量率の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0019】
<実施例1>
本発明の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法の実施例1について図1乃至図4を用いて説明する。図1は実施例1に記載する撮像素子型放射線モニタの構成を説明する説明図、図2は発光画素数と線量率の相関図であり、従来の撮像素子型放射線モニタの課題を示している。図3は実施例1における輝度加算値と線量率の相関図、図4は実施例1における線量率をパラメータとした時の輝度値に対する画素数をプロットした輝度値ヒストグラムである。
【0020】
最初に、撮像素子型放射線モニタの全体構成について図1を用いて説明する。図1に示す本実施例の撮像素子型放射線モニタ1は、撮像素子10、画像収集装置20、画素値演算装置30、線量率演算装置40を有する。
【0021】
撮像素子10は、本来は可視光を画像化するための素子であるが、可視光と同様に放射線にも有感であり、撮像素子10を用いれば可視光撮像とともに放射線計測を実施可能であることから、本発明ではその特性を利用する。この撮像素子10が、好適には放射線を検知する検知ステップの実行主体となる。
【0022】
撮像素子10は図示の都合で省略しているが複数の画素で構成されており、それぞれの画素の発光状態(以下「輝度」と呼称する。)により画像を取得するものである。
【0023】
放射線モニタとして使用する際は、可視光がノイズとなるので、シャッター機構(図示省略)にて可視光入射を遮断することが望ましい。ただし、放射線による撮像素子10内の画素の発光は以下で記述するように特徴的であり、可視光と分離収集可能なので、シャッター無しでの運用も可能である。また、撮像素子10にて可視光撮像を行うためには、レンズが必要であり、また、モノクロ撮像とカラー撮像の選択も重要であるが、放射線モニタとして使用するためにはレンズは不要で、カラー識別(フィルタ識別)はされないのでカラー対応である必要もない。従ってレンズやカラー対応に関しては、撮像素子型放射線モニタ1に可視光撮像のニーズがあるか否かや、製造の際の様々な諸条件等を鑑みて適宜選定することができる。
【0024】
可視光と放射線との大きな違いはその波長つまりエネルギーであり、放射線のエネルギーは可視光よりも大きく、また可視光よりも放射線の方が透過能力が高い、との特徴がある。例えばCo-60が放出する1MeVを超えるガンマ線の場合、その透過能力が高いので撮像素子10に入射してもほとんどは通過するが、一旦相互作用すると光電効果により高速の電子が放出され一つの画素にとどまらずに複数の画素で電子・正孔のペアを生成し電荷を発生させる。つまり1本のガンマ線が撮像素子10と相互作用すると、複数の画素を同時に発光させることになる。この特徴を利用し、同時に複数画素が発光した場合にガンマ線イベントと識別して可視光と分離することが可能である。
【0025】
また、ガンマ線は上述のように可視光よりエネルギーが高いので、ガンマ線が撮像素子10と相互作用し発光した画素は最大の電荷つまり最大輝度を出力するものと従来は考えられていた。
【0026】
しかしながら、以下で詳細を説明するように、本発明者らは、ガンマ線入射により発光した画素の輝度値には特有の分布があることを見出し、その特徴を利用することによりダイナミックレンジの広い放射線計測を実現することを発想した。
【0027】
画像収集装置20は、撮像素子10からの画像データを取得し保持する装置であり、可視光撮像と放射線モニタ用に併用することが可能である。そのハード構成としては、専用の画像処理装置でも汎用のPCと画像処理用のアプリケーションを用いるもの等でも良い。上述のように、撮像素子10にシャッター機構を設けて可視光撮像と、シャッターを閉じて放射線計測するタイミングを分けてもよいし、ガンマ線イベントの特徴を利用して画像処理によりガンマ線を検出することで、可視光撮像と同時に放射線モニタを実施することも可能である。
【0028】
いずれにしろ画像収集装置20は撮像素子10からの画像データを収集し保持するものである。この画像収集装置20が、好適には、検知ステップで検知した画像データを収集する画像収集ステップの実行主体となる。
【0029】
画素値演算装置30は、画像収集装置20が収集し保持している画像データを取り込んで、各画素の輝度値を加算演算することで輝度加算値(輝度値相関パラメータ)を算出する装置であり、好適には、画像収集ステップにおいて取得した画像データを取り込んで、輝度値の加算値(輝度値相関パラメータ)を算出する画素値演算ステップの実行主体となる。そのハード構成としては、専用の処理装置でも汎用のPCと画像処理用のアプリケーションを用いるもの等でも良く、上述の画像収集装置20や後述の線量率演算装置40とハード的に一体化していても別体であってもよい。
【0030】
線量率演算装置40は、画素値演算装置30が算出した輝度加算値を取得して線量率を算出する装置であり、好適には、画素値演算ステップにおいて算出した輝度値相関パラメータから線量率を算出する線量率演算ステップの実行主体となる。そのハード構成は、画像収集装置20や画素値演算装置30と同様に、専用の画像処理装置でも汎用のPCと画像処理用のアプリケーションを用いるもの等でも良い。
【0031】
線量率演算装置40においては、予め図3に示すような輝度加算値の線量率特性を取得して保持し、実測時には画素値演算装置30から取得した輝度加算値から、保持している輝度加算値の線量率特性を参照して線量率を算出する。
【0032】
図2に示す発光画素数の線量率依存性と、図3の輝度加算値の線量率依存性は同一の撮像素子での実測値である。図2より、従来の構成とその処理では、数十Sv/h以上で発光画素数は飽和して線量計測が出来なかったが、図3に示すように、輝度値加算値は数十Sv/h以上でも飽和することなく線量率と相関性があり、輝度値加算値を用いることで1000Sv/hまで線量率を測定可能である。
【0033】
次に、本実施例1において線量率のダイナミックレンジが拡大した理由について、図4を用いて考察する。図4は、各線量率で得られた画像データの8ビット(256諧調)の輝度値に対する画素数をプロットした輝度値ヒストグラムである。
【0034】
図4に示すように、線量率が低い場合(0.08Sv/h)では、輝度ゼロの画素がほとんどで、線量率が上昇すると、42Sv/hまでは低輝度の画素数が増加している。42Sv/h以上では画素数のピークが現れ、線量率の増加に伴い画素数ピークの輝度値が大きくなっている。
【0035】
従来では上述したように、ガンマ線のエネルギーは可視光よりも大きく、ガンマ線が撮像素子10と相互作用した際は最大輝度を出力するものと考えられていた。つまり輝度値ヒストグラムは、最大輝度(255)で画素数ピークを持つ分布となり線量率の増加でそのピーク画素数が増加するものと考えられていた。
【0036】
図4に示した輝度値ヒストグラムとなる理由は、ガンマ線の相互作用で発生した高速電子は一つの画素では少量のエネルギーしか落とさずに突き抜けていくためと考えられる。近年の撮像素子の高画素化による微細化が一つの要因と推定される。
【0037】
図4に示す画素数ピークが出現する線量率は図2の飽和点の線量率と一致しており、発光する画素数が飽和した状態で線量率が上がると、画素値ピークが現れそのピークの輝度値及び画素数が上昇している。従って、発光画素が飽和した状態でも、輝度加算値を用いることで飽和することなく線量率が計測できると考えられる。
【0038】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0039】
上述した本発明の実施例1の撮像素子型放射線モニタ1は、放射線を検知する撮像素子10と、撮像素子10からの画像データを収集する画像収集装置20と、画像収集装置20が取得した画像データを取り込んで、輝度値の加算値(輝度値相関パラメータ)を算出する画素値演算装置30と、画素値演算装置30が算出した輝度値相関パラメータから線量率を算出する線量率演算装置40と、を備える。
【0040】
このような本実施例1の撮像素子型放射線モニタ1は、小型軽量な撮像素子10を用い高線量率での計測が可能となるので、原子力プラントなどにおいて移動体を用いた線量測定が可能となり、線量分布の把握が進み作業被ばくの低減等に貢献できる。
【0041】
また、撮像素子10を用いるので、汎用として広く使用されている撮像素子10、及び周辺デバイスやアプリケーションも使用可能であることから、放射線モニタを低コストで迅速に開発可能となり、放射線モニタ自体も安価に製作できる。例えば、各構成部品間を無線や有線のイーサーネット通信を利用したり、光フィバ通信を行うことも可能であり、様々な計測場所やニーズに対応した放射線モニタを比較的容易(低コスト、短期開発)に実現可能となる。
【0042】
更に、既存の監視カメラ画像を用いることが可能で、設備の増強無しに放射線計測が可能となる。また、移動体のカメラ画像を使用して、移動しながらの計測が可能となり、広範囲の線量率分布が計測可能となる。
【0043】
その上、撮像素子10を用いるので、光学画像を見ながら同時に線量率を把握することが可能となり、現場状況を正確にかつ迅速に把握することが可能となる。
【0044】
なお、実施例1では有線あるいは無線により電気的に接続されたオンラインで画素値演算装置30や線量率演算装置40を組込んで線量率を計測する構成としているが、画素値演算装置30や線量率演算装置40をオフラインとして、撮像素子10からの画像データを画像収集装置20で保持しておいて、測定後に、画像収集装置20から画像データを取出して画素値演算装置30と線量率演算装置40を用いて線量率を求めることも可能である。この場合は、画像データと共に撮像時間や位置情報を保持しておいて、線量率の計測時刻や場所を特定することが望ましい。
【0045】
なお、本実施例の画素値演算装置30及び線量率演算装置40は上述の形態に限られない。以下変形例について説明する。
【0046】
画素値演算装置30は、輝度値の加算値を算出するとともに、更に予め設定しておいた輝度値閾値以上の画素数(発光画素数)と図4に示すような輝度値ヒストグラムを算出する。線量率演算装置40は、算出されたヒストグラムを用いて線量率を補正することができる。補正方法の詳細は後述する実施例3で説明するが、好適には補助的に高線量率時の補正に使用することができる。これにより、複数計測データの線量率依存性を活用することで計測誤差の更なる低減が可能となる。
【0047】
<実施例2>
本発明の実施例2の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法について図5を用いて説明する。図5は実施例2におけるウインドウ内画素数と線量率の相関図である。
【0048】
実施例2に記載する撮像素子型放射線モニタ1の構成は、実施例1に記載の撮像素子型放射線モニタ1と基本的に同様であり、装置構成の詳細は説明しない。実施例1との相違点は、画素値演算装置30及び線量率演算装置40の演算処理なので、以下では画素値演算装置30及び線量率演算装置40に関して詳細を説明する。
【0049】
本実施例の画素値演算装置30は、画像収集装置20が収集し保持している画像データを取り込んで、予め設定した輝度値のウインドウ(下限と上限との範囲)内の画素数(ウインドウ内画素数、輝度値相関パラメータ)或いは輝度値(ウインドウ内輝度値、輝度値相関パラメータ)を算出するもので、ハード構成は実施例1と同様に専用の画像処理装置でも汎用のPCと画像処理用のアプリケーションを用いるもの等でも良い。
【0050】
本実施例の線量率演算装置40は、画素値演算装置30が算出したウインドウ内画素数或いはウインドウ内輝度値を取得し線量率を算出するもので、ハード構成は実施例1と同様に専用の画像処理装置でも汎用のPCと画像処理用のアプリケーションを用いるもの等でも良い。
【0051】
線量率演算装置40においては、事前に図5に示すようなウインドウ内画素数の線量率特性を取得し保持し、実測時には画素値演算装置30から取得したウインドウ内画素数から、保持しているウインドウ内画素数の線量率特性を参照して線量率を算出する。
【0052】
図5に示すウインドウ内画素数の線量率依存性と、図3の輝度加算値の線量率依存性及び図2の発光画素数の線量率依存性は同一の撮像素子での実測値である。図3と比較して図5のウインドウ内画素数は高線量(1000Sv/h近傍)での飽和傾向が緩和されていることが分かる。
【0053】
つまり、本実施例2におけるウインドウ内画素数を用いることで、高線量率での計測誤差が低減されるので計測精度が向上し、これ以上の線量率での実測はしていないが、線量率ダイナミックレンジが更に拡大することが期待される。
【0054】
図5のウインドウ内画素数を算出した輝度値ウインドウは、110から180である。この輝度値ウインドウは、図4に示す輝度値ヒストグラムにおいて、線量率の上昇に伴って画素数が増加する輝度値領域である。つまり、輝度値ウインドウの設定は、予め図4に示す輝度値ヒストグラムを線量率をパラメータにして計測しておき、線量率が増加した場合に画素数が増加する輝度値領域を特定し、それを輝度値ウインドウに設定すればよい。
【0055】
なお、ウインドウ内輝度値を用いる場合も同様であるため詳細は省略する。
【0056】
その他の構成・動作は前述した実施例1の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0057】
本発明の実施例2の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法においても、前述した実施例1の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0058】
また、本実施例2によれば、ウインドウ内画素数を用いることで、より高線量率での計測が可能となり線量率ダイナミックレンジが更に拡大する。また、本実施例2で輝度値を加算する場合は、実施例1において輝度値を利用した効果があったように、輝度値を使用することにより線量率ダイナミックレンジを広げることが可能である。
【0059】
更に、本実施例2によれば、高線量率領域にてウインドウ内画素数の飽和傾向が低減され、線量率の計測誤差が低減される。これは、線量率に対するウインドウ内画素数曲線の傾きが大きくなるためで、計測されたウインドウ内画素数の計測誤差が線量率に変換した際に小さくなるためである。
【0060】
なお、本実施例の画素値演算装置30及び線量率演算装置40は上述の形態に限られない。以下変形例について説明する。
【0061】
画素値演算装置30は、予め設定した輝度値ウインドウ内の画素数或いは輝度値を算出するとともに、図4に示すような輝度値ヒストグラムを算出する。線量率演算装置40は、算出されたヒストグラムを用いて線量率を補正することができる。補正方法の詳細は後述する実施例3で説明するが、好適には補助的に高線量率時の補正に使用することができる。これにより、複数計測データの線量率依存性を活用することで計測誤差の更なる低減が可能となる。
【0062】
<実施例3>
本発明の実施例3の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法について図6を用いて説明する。図6は実施例3におけるピーク輝度値と線量率の相関図である。
【0063】
実施例3に記載する撮像素子型放射線モニタ1の構成は、実施例1や実施例2に記載の撮像素子型放射線モニタ1と同様であり、装置構成の詳細は説明しない。実施例1及び実施例2との相違点は画素値演算装置30及び線量率演算装置40の演算処理なので、以下では画素値演算装置30及び線量率演算装置40に関して詳細を説明する。
【0064】
本実施例の画素値演算装置30は、画像収集装置20が収集し保持している画像データを取得し、予め設定しておいた輝度値閾値以上の画素数(発光画素数)を算出する。更に図4に示す輝度値ヒストグラムを算出して、その画素数ピークとなる輝度値(ピーク輝度値、輝度値相関パラメータ)を算出する。ハード構成は実施例1及び実施例2と同様に専用の画像処理装置でも汎用のPCと画像処理用のアプリケーションを用いるもの等でも良い。
【0065】
本実施例の線量率演算装置40は、画素値演算装置30が算出した発光画素数のみ、あるいは発光画素数とピーク輝度値を取得し、線量率を算出するもので、ハード構成は実施例1と同様に専用の画像処理装置でも汎用のPCと画像処理用のアプリケーションを用いるもの等でも良い。
【0066】
具体的には、線量率演算装置40においては、予め図2に示すような発光画素数の線量率特性を取得し保持し、実測時には画素値演算装置30から取得した発光画素数から、保持している発光画素数の線量率特性を参照して線量率を算出する。
【0067】
ただし、本処理は発光画素数が飽和しない線量率領域での処理であり、飽和領域では好適には以下の処理を実施する。予め図6に示すようなピーク輝度値の線量率特性を取得し保持しておき、実測時には画素値演算装置30から取得したピーク輝度値から、保持しているピーク輝度値の線量率特性を参照して線量率を算出する。
【0068】
図6より図2において飽和して計測が不可能な数十Sv/h以上の線量率領域において、ピーク輝度値と線量率の相関がみられるので線量率の測定が可能である。
【0069】
ピーク輝度値の算出は、輝度値ヒストグラムの曲線からスムージングを施して、微分値がゼロとなるポイントを見つける方法でもよいし、輝度値ヒストグラムの曲線の重心を求めるのでも良くその方法はこれらに限定されるものではなく、広く一般的に使用されている手法を用いればよい。
【0070】
本実施例3においては、ピーク輝度値を使用したが、これに限定されない。たとえばピーク輝度値に類似な輝度値ヒストグラムの重心を用いてもよいし、輝度値ヒストグラムのピークの輝度値ではなくピーク画素数を用いてもよい。ピーク画素数は、高輝度側(輝度ゼロ近辺を除いた領域)での輝度値ヒストグラムの最大値から求まるので、演算が比較的簡易となる。
【0071】
その他の構成・動作は前述した実施例1の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0072】
本発明の実施例3の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法においても、前述した実施例1の放射線モニタ装置及び放射線モニタ方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0073】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0074】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…撮像素子型放射線モニタ(放射線モニタ装置)
10…撮像素子
20…画像収集装置
30…画素値演算装置
40…線量率演算装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6