(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168261
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】観察光学系ならびにそれを用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241128BHJP
G02B 27/28 20060101ALI20241128BHJP
G02C 11/00 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/28 Z
G02C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084771
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】猪口 和隆
【テーマコード(参考)】
2H006
2H199
【Fターム(参考)】
2H006CA00
2H199AB12
2H199AB47
2H199AB52
2H199AB62
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA42
2H199CA47
2H199CA63
2H199CA64
2H199CA65
2H199CA70
2H199CA85
2H199CA86
2H199CA87
(57)【要約】
【課題】 広画角、小型でありながら、外光によるゴースト光を低減する点で有利な観察光学系を提供すること。
【解決手段】 画像を表示する表示素子からの光を観察者に導く観察光学系であって、
表示側から観察側へ順に配置された、第1の半透過反射面、第1のλ/4板、第2の半透過反射面、第2のλ/4板、直線偏光板を有し、表示側から第1の直線偏光が第1の半透過反射面に入射し、前記第1の直線偏光の偏光方向と前記直線偏光板を透過する光の偏光方向が平行の場合、前記第1のλ/4板の遅相軸の方向と前記第2のλ/4板の遅相軸の方向は平行であり、前記第1の直線偏光の偏光方向と前記直線偏光板を透過する光の偏光方向が垂直の場合、前記第1のλ/4板の遅相軸の方向と前記第2のλ/4板の遅相軸の方向は垂直であり、所定の条件式を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示素子からの光を観察者に導く観察光学系であって、
表示側から観察側へ順に配置された、第1の半透過反射面、第1のλ/4板、第2の半透過反射面、第2のλ/4板、直線偏光板を有し、
前記第1の半透過反射面と、前記第2の半透過反射面のうち、焦点距離の絶対値が小さい反射面を反射面Aとし、該反射面Aの焦点距離をfA、射出瞳位置から前記反射面Aまでの光軸上の空気換算距離をLaAとするとき、
1.0<LaA/|fA|<3.0
なる条件式を満足することを特徴とする観察光学系。
【請求項2】
前記観察光学系の焦点距離をfとするとき、
0.60<|fA|/f<1.50
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項3】
前記第1ならびに第2の半透過反射面は、ハーフミラーであることを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項4】
前記第1の半透過反射面は、偏光ビームスプリッタであり、
前記第2の半透過反射面は、ハーフミラーであることを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項5】
前記反射面Aは、観察側に向かって凹面であることを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項6】
前記観察光学系は、最も観察側に配置された遮光部材を有することを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項7】
前記遮光部材は短冊形であり、光軸と垂直方向に配置されたルーバー素子であることを特徴とする請求項6に記載の観察光学系。
【請求項8】
表示側から第1の直線偏光が前記第1の半透過反射面に入射し、
前記第1の直線偏光の偏光方向と前記直線偏光板を透過する光の偏光方向が平行であり、前記第1のλ/4板の遅相軸の方向と前記第2のλ/4板の遅相軸の方向は平行であることを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項9】
表示側から第1の直線偏光が前記第1の半透過反射面に入射し、
前記第1の直線偏光の偏光方向と前記直線偏光板を透過する光の偏光方向が垂直であり、前記第1のλ/4板の遅相軸の方向と前記第2のλ/4板の遅相軸の方向は垂直であることを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項10】
前記表示素子からの光は、表示側から順に、前記第1の半透過反射面を透過し、前記第1のλ/4板を透過し、前記第2の半透過反射面で反射し、前記第1のλ/4板を透過し、前記第1の半透過反射面で反射し、前記第1のλ/4板、前記第2の半透過反射面、前記第1の半透過反射面、前記第2のλ/4板、前記直線偏光板で透過することを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項11】
観察側から前記観察光学系に入射する外光の光軸に対する角度の絶対値をωとするとき、
0°<ω<45°
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項12】
前記観察光学系の焦点距離をf、該反射面Aの曲率半径をRとするとき、
-6.0<R/f<-1.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項13】
前記観察光学系の焦点距離をfとするとき、
0.60<|fA|/f<1.50
なる条件式を満足することを特徴とする請求項3乃至12の何れか一項に記載の観察光学系。
【請求項14】
前記第1ならびに第2の半透過反射面は、ハーフミラーであり、
前記観察光学系の焦点距離をfとするとき、
0.60<|fA|/f<1.50
なる条件式を満足することを特徴とする請求項5乃至12の何れか一項に記載の観察光学系。
【請求項15】
前記第1の半透過反射面は、偏光ビームスプリッタであり、
前記第2の半透過反射面は、ハーフミラーであり、
前記観察光学系の焦点距離をfとするとき、
0.60<|fA|/f<1.50
なる条件式を満足することを特徴とする請求項5乃至12の何れか一項に記載の観察光学系。
【請求項16】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の観察光学系と、前記表示素子とを有することを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察光学系ならびにそれを用いた画像表示装置に関し、HMD(Head Mounted Display)等の装着型画像表示装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、HMD等の画像表示装置に用いられる観察光学系に対して、広画角でありながら、小型化することが求められている。
【0003】
そのために、特許文献1には偏光を利用して光路を折りたたむ構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の一つの構成は、偏光を利用して光路を折りたたむために、観察側から表示側へ順番に配置された、偏光ビームスプリッタ、ハーフミラーを有している。その結果、観察側から観察光学系に入射した外光がハーフミラーで反射し、偏光ビームスプリッタで反射し、さらにハーフミラーで反射した後に、偏光ビームスプリッタを透過したゴースト光として観察者の眼に入射してしまう。
【0006】
また、特許文献1の別の構成は、偏光を利用して光路を折りたたむために、観察側から表示側へ順番に配置された、ハーフミラー、偏光ビームスプリッタを有している。しかしながら、偏光ビームスプリッタが平面であり、観察側から観察光学系に入射した外光がハーフミラーを透過し、偏光ビームスプリッタで反射し、さらにハーフミラーを透過してゴースト光として観察者の眼に入射してしまう。
【0007】
また、結像の主パワーを担うハーフミラーが表示側に凹面鏡となる構成であり、径が大型化しやすいものであった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、広画角、小型でありながら、外光によるゴースト光を低減する点で有利な観察光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の観察光学系は、画像を表示する表示素子からの光を観察者に導く観察光学系であって、表示側から観察側へ順に配置された、第1の半透過反射面、第1のλ/4板、第2の半透過反射面、第2のλ/4板、直線偏光板を有し、前記第1の半透過反射面と、前記第2の半透過反射面のうち、焦点距離の絶対値が小さい反射面を反射面Aとし、該反射面Aの焦点距離をfA、射出瞳位置から前記反射面Aまでの光軸上の空気換算距離をLaAとするとき、
1.0<LaA/|fA|<3.0
なる条件式を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、広画角、小型でありながら、外光によるゴースト光を低減する点で有利な観察光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図15】実施例1~4の観察光学系を用いたHMDを示した図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本発明の各実施例を説明するにあたり、光の偏光状態を示す直線偏光、円偏光、λ/4の位相差などの概念が表す状態は、ある一定の範囲を持つ広い状態を意味する。このため、それらの誤差によって本発明の本質的な効果が妨げられるものではない。また、各光学素子で生じる位相差は、波長λの光に関する位相差であり、波長λとしては可視光域の任意の波長を選択することができ、例えばλ=580nmであるが、これに限定されるものではない。
【0014】
[実施例1]
以下、
図1、3を参照して、実施例1について説明する。
図1は、実施例1の要部構成図であり、1000は観察光学系である。観察光学系1000は、平凹レンズ101と平凸レンズ102より成るレンズ要素100を有している。また、40は表示素子であり、例えば液晶パネルや有機ELパネルである。表示素子40は、表示面41とカバーガラス等を含んだ光学平板部42とを有している。
【0015】
光学平板部42には直線偏光板が含まれ、表示面41に表示された画像からの光は光学平板部42を介して所定の直線偏光となり、観察光学系1000を介して、射出瞳Sに導かれる。なお、射出瞳Sの位置は、表示面41における最大物高から射出瞳Sに導かれる光束の中心光線と、光軸が交わる位置を表している。
【0016】
観察光学系1000は、光路を折りたたむために、表示素子40側から射出瞳S側へ順に、第1の半透過反射面21、第1のλ/4板31、第2の半透過反射面22、第2のλ/4板32、直線偏光板11を有している。ここで、第1の半透過反射面21、および第2の半透過反射面22はハーフミラーである。ハーフミラーは、偏光によらず光の一部を透過し、一部の光を反射する素子である。ハーフミラーに入射する光の透過と反射の割合は50対50でなくても良く、例えば30対70や70対30でも良い。
【0017】
λ/4板は、直交する2つの偏光成分にλ/4の位相差を与える波長板である。直線偏光板は、所定の直線偏光が透過し、該所定の直線偏光と直交する直線偏光が吸収される偏光板である。
【0018】
第1の半透過反射面21は、平凹レンズ101と平凸レンズ102の間に形成されている。また、第1のλ/4板31と、第2のλ/4板32の間に第2の半透過反射面22が形成されている。このように構成することで、表示素子40から出射した光の偏光方向を適切に調整し、光路を折りたたむことを可能としている。その理由を、
図3(A)を用いて説明する。
【0019】
図3(A)は、観察光学系1000における偏光の光路を示している。表示素子40は紙面平行方向に振動する第1の直線偏光の光を出射する液晶表示素子である。図の下方において、第1、第2のλ/4板に対して射出瞳S側から見たときの遅相軸の傾きを示しており、それぞれ第1の直線偏光の振動方向に対して+45°、-45°の傾きで配置されている。
【0020】
そのため、第1、第2のλ/4板31、32は、互いに遅相軸が直交した方向に配置されている。また、直線偏光板11に対しては、図の下方に光が透過する軸の方向を示している。直線偏光板11は、第1の直線偏光の光に対して直交する方向に振動する光を透過させる構成となっている。
【0021】
図3(A)において、表示素子40の表示面41から出射した光は、光学平板部42を透過し、紙面平行方向に振動する直線偏光となり、第1のλ/4板31で右回りの円偏光となる。右回りの円偏光となった光は第2の半透過反射面22で反射し、第1のλ/4板31で紙面垂直方向に振動する直線偏光となり、第1の半透過反射面21で反射し、第1のλ/4板31で左回り円偏光となる。
【0022】
左回り円偏光となった光は第2のλ/4板32で紙面垂直方向に振動する直線偏光となり、直線偏光板11を透過し、射出瞳Sに導かれる。半透過反射面において、反射光と透過光とが発生するが、反射光と透過光いずれか不要な光については、偏光板11等で遮光され射出瞳Sに導かれないか、多数回半透過反射面を通過することによって減衰され認識されにくい構成となっている。
【0023】
以上の構成により、光路を折りたたむことを可能としている。
【0024】
また、本発明の観察光学系1000は、以下の条件式を満足するように構成している。
1.0<LaA/|fA|<3.0・・・(1)
【0025】
ここで、第1の半透過反射面21と、第2の半透過反射面22のうち、焦点距離の絶対値が小さい反射面を反射面Aとしたとき、fAは、反射面Aの焦点距離、LAは、射出瞳Sの位置から前記反射面Aまでの光軸上の空気換算距離とする。
【0026】
ただし、射出瞳Sの位置から反射面Aまでの光軸上の空気換算距離とは、光が通過する各要素の厚みを前記各要素の屈折率で割って足し合わせたものである。
【0027】
外光によるゴースト光において、第1の半透過反射面21で2回以上反射する光を偏光素子の配置で低減し、第1の半透過反射面21で1回反射する光を条件式(1)で主に低減することができる。その理由について説明する。
【0028】
図3(B)は、観察光学系1000における外光の光路を示している。射出瞳S側から観察光学系1000に入射する外光において、紙面平行方向に振動する直線偏光は直線偏光板11で吸収され、紙面垂直方向に振動する直線偏光は直線偏光板11を透過する。直線偏光板11を透過した光は第2のλ/4板32で左回りの円偏光となって透過し、第1のλ/4板31で紙面垂直方向に振動する直線偏光となって透過する。透過した光は、第1の半透過反射面21で反射し、第1のλ/4板31で左回りの円偏光となる。
【0029】
左回りの円偏光となった光は、第2の半透過反射面22で透過する左回りの円偏光である第1のゴースト光と、第2の半透過反射面22で反射する右回りの円偏光である第2のゴースト光に分岐する。第1のゴースト光は第2のλ/4板32で紙面垂直方向に振動する直線偏光となって透過し、直線偏光板11を透過して瞳S側に射出する。第2のゴースト光は、第1のλ/4板31で紙面平行方向に振動する直線偏光となって透過し、第1の半透過反射面21で反射し、第1のλ/4板31で右回りの円偏光となる。
【0030】
右回りの円偏光となった光は、第2の半透過反射面22で透過する右回りの円偏光である第3のゴースト光と、第2の半透過反射面22で反射する左回りの円偏光である第4のゴースト光に分岐する。第3のゴースト光は第2のλ/4板32で紙面平行方向に振動する直線偏光となって透過し、直線偏光板11で吸収される。
【0031】
また、射出瞳S側に導かれる第4のゴースト光は、第3のゴースト光に対してさらに第1の半透過反射面21と第2の半透過反射面22とで、それぞれ1度ずつ反射するため、光の強度が弱くなり、観察者は第4のゴースト光を視認しにくい構成となっている。第4のゴースト光に対して、第1の半透過反射面21での反射回数が多いゴースト光は、第4のゴースト光よりさらに光の強度が弱くなり、観察者はより視認しにくい。
【0032】
以上より、外光によるゴースト光において、第1の半透過反射面21で2回以上反射する光を偏光素子の配置で低減している。
【0033】
また、射出瞳S側に導かれる第1のゴースト光、すなわち第1の半透過反射面21で1回反射する光に対して、第1の半透過反射面21の焦点距離を適切に設定することにより低減できることを
図7、8により説明する。なお、
図7、8において、Z軸を光軸方向、X軸を光軸と垂直且つ紙面平行方向、Y軸を紙面垂直方向と定義する。
【0034】
図7は、射出瞳S側から右眼用観察光学系1000Rに入射する外光が第1の半透過反射面21Rに入射したときの様子を示した図である。外光である光線Ri,Rc,Roは顔の右眼側の近傍を通り、半透過反射面21Rの最も内側,中心,最も外側にそれぞれ入射する光線である。Ri,Rc,Roはそれぞれ、交点が顔の近傍の所定位置付近に集まっている。外光において、顔の右眼側の近傍を通り半透過反射面21Rで反射する光は、光軸に対して角度が小さいため、比較的観察者の目に導かれやすい。
【0035】
図8は、ゴースト光が生じる様子を示した図である。
図6で示した光線Ri,Rc,Roが観察光学系1000Rに入射し、半透過反射面21Rで反射する様子を簡易的に示すため、半透過反射面21Rの凹面鏡を平面である理想レンズAとして扱い、光線Ri,Rc,Roは交点PAで交わるとしている。すなわち、交点PAをゴースト光の物点としたときの様子を表す。破線は理想レンズAで屈折する光を表し、理想レンズAによって反射する光は、前述の破線を理想レンズAに対して反転させて表している。
【0036】
図8(A)は、観察光学系1000の射出瞳Sから理想レンズAまでの距離をfAとするときの図を示している。すなわち、LaAと|fA|とが等しい場合を表している。光線Ri,Rc,Roの交点PAが射出瞳Sの中心からZ軸に対して負の方向にdXだけ離れた位置に設けられているとする。LaAと|fA|とが等しい場合、反射面Aと光軸との交点PAと瞳Sの中心とを結んだ光線の反射光に平行に反射される。
【0037】
そのため、観察光学系1000による表示画角が広画角の場合、つまり理想レンズAの径が大きい場合には射出瞳SにA面で1回反射されたゴースト光の少なくとも一部が入ることになり好ましくない。LaAに対して|fA|が小さい場合も同様である。
【0038】
図8(B)は、LaA=2×|fA|を満たす場合を示している。交点PAから出射した光は、Z軸に対して正の方向にdXの位置にある点に集光することになり、射出瞳Sには入射しない。すなわち、ゴースト光を抑制することができる。
【0039】
図8(C)は、LaA=3×|fA|を満たす場合を示している。交点PAから出射した光は、Z軸方向において、射出瞳Sの位置に対して反射面Aに比較的近い位置で集光する。そのため、観察光学系1000による表示画角が広画角の場合、つまり半透過反射面21の径が大きい場合には射出瞳SにA面で1回反射されたゴースト光の少なくとも一部が入ることになり好ましくない。LaA>3×|fA|の場合も同様である。
【0040】
以上の構成により、広画角、小型でありながら、外光によるゴースト光を低減する点で有利な観察光学系を得ることができる。
【0041】
なお、条件式(1)の数値範囲の上限または下限の少なくとも一方を以下の条件式(1a)の数値とすることが好ましい。
1.1<LaA/|fA|<2.5・・・(1a)
【0042】
さらに、条件式(1)の数値範囲の上限または下限の少なくとも一方を、以下の条件式(1b)範囲とすることがより好ましい。
1.2<LaA/|fA|<2.3・・・(1b)
【0043】
次に、観察光学系1000の好ましい構成について述べる。
【0044】
反射面Aは、射出瞳S側に向かって凹面であることが好ましい。射出瞳S側に向かって凹面であることにより、射出瞳S側に対してコンセントリックな形状となり、軸外の諸収差を補正しやすい。また、径の小型化にも有利である。
【0045】
次に、観察光学系1000において満足することが好ましい条件式について述べる。
【0046】
観察光学系1000は、以下の条件式の少なくとも1つを満足することが好ましい。
0.60<|fA|/f<1.50・・・(2)
0°<ω<45° ・・・(3)
-6.0<R/f<-1.0 ・・・(4)
【0047】
ここで、fは観察光学系1000の焦点距離、ωは観察光学系1000に入射する外光の光軸に対する角度の絶対値、Rは反射面Aの曲率半径である。
【0048】
条件式(2)の上限を上回って、反射面Aの焦点距離が長すぎると、光路長が長くなるため小型化が困難となり好ましくない。条件式(2)の下限を下回って、反射面Aの焦点距離が短すぎると、反射面Aで発生する軸外の諸収差が大きくなり好ましくない。
【0049】
条件式(3)の上限を上回ると、観察光学系1000に入射する外光の光軸に対する角度が大きくなりすぎるため、外光の入射する目と反対側の眼にゴースト光が入射しやすく好ましくない。
【0050】
条件式(4)の上限を上回って、反射面Aの曲率半径の絶対値が小さくなりすぎると、反射面Aで発生する軸外の諸収差が大きくなり好ましくない。条件式(2)の下限を下回って、反射面Aの曲率半径の絶対値が大きくなりすぎると、光路長が長くなるため小型化が困難となり好ましくない。
【0051】
なお、条件式(2)乃至(4)の数値範囲の上限または下限の少なくとも一方を以下の条件式(2a)の数値とすることが好ましい。
0.63<|fA|/f<1.40・・・(2a)
5°<ω<35° ・・・(3a)
-5.0<R/f<-1.5 ・・・(4a)
【0052】
さらに、条件式(2)の数値範囲の上限または下限の少なくとも一方を、以下の条件式(2b)範囲とすることがより好ましい。
0.66<|fA|/f<1.30・・・(2b)
10°<ω<25° ・・・(3a)
-4.0<R/f<-2.0 ・・・(4a)
【0053】
[実施例2]
以下、
図2、4を参照して、実施例2について説明する。主に実施例1と異なる点について説明する。
図2において、観察光学系1000は、実施例1に対して、表示素子40に直線偏光板が含まれておらず、特定の方向に偏光していない無偏光の光が観察光学系1000に入射する。そのため、第1の半透過反射面21と表示素子40との間に、紙面平行方向に振動する光を透過する直線偏光板12を配置している。
【0054】
また、
図4(A)のように、第2のλ/4板32に対しては射出瞳S側から見たときの遅相軸の傾きを+45°とし、直線偏光板11は、第1の直線偏光の光に対して平行な方向に振動する光を透過させる構成となっている。この構成によっても、実施例1と同様に適切に偏光方向を変え、光路を折りたたむことを可能としている。
【0055】
外光によるゴースト光において、第1の半透過反射面21で2回以上反射する光を実施例2の偏光素子の配置で低減できる理由について説明する。
【0056】
図4(B)は、観察光学系1000における外光の光路を示している。射出瞳S側から観察光学系1000に入射する外光において、紙面垂直方向に振動する直線偏光は直線偏光板11で吸収され、紙面平行方向に振動する直線偏光は直線偏光板11を透過する。直線偏光板11を透過した光は第2のλ/4板32で左回りの円偏光となって透過し、第1のλ/4板31で紙面垂直方向に振動する直線偏光となって透過する。透過した光は、第1の半透過反射面21で反射し、第1のλ/4板31で左回りの円偏光となる。
【0057】
左回りの円偏光となった光は、第2の半透過反射面22で透過する左回りの円偏光である第1のゴースト光と、第2の半透過反射面22で反射する右回りの円偏光である第2のゴースト光に分岐する。第2のゴースト光は、第1のλ/4板31で紙面平行方向に振動する直線偏光となって透過し、第1の半透過反射面21で反射し、第1のλ/4板31で右回りの円偏光となる。
【0058】
右回りの円偏光となった光は、第2の半透過反射面22で透過する右回りの円偏光である第3のゴースト光と、第2の半透過反射面22で反射する左回りの円偏光である第4のゴースト光に分岐する。第3のゴースト光は第2のλ/4板32で紙面垂直方向に振動する直線偏光となって透過し、直線偏光板11で吸収される。
【0059】
また、射出瞳S側に導かれる第4のゴースト光は、第3のゴースト光に対してさらに第1の半透過反射面21と第2の半透過反射面22とで、それぞれ1度ずつ反射するため、光の強度が弱くなり、観察者は第4のゴースト光を視認しにくい構成となっている。第4のゴースト光に対して、第1の半透過反射面21での反射回数が多いゴースト光は、第4のゴースト光よりさらに光の強度が弱くなり、観察者はより視認しにくい。
【0060】
[実施例3]
以下、
図5(A)、(B)を参照して、実施例3について説明する。主に実施例1と異なる点について説明する。第1の半透過反射面21Pを紙面平行方向に振動する光を透過し、紙面垂直方向に振動する光を反射する偏光ビームスプリッタとしている。ここで偏光ビームスプリッタは、第1の直線偏光を透過し、該第1の直線偏光に対して偏光方向が直交する第2の直線偏光を反射する素子である。
【0061】
実施例1の構成であるハーフミラーを偏光ビームスプリッタに変更することで、
図5(A)の光路のように、偏光ビームスプリッタで反射する光路を減らすことができるため、不要な光が射出瞳S側に導かれにくい構成となる。
【0062】
外光によるゴースト光において、第1の半透過反射面21Pに到達する光を実施例3の偏光素子の配置で低減できる。その理由について説明する。
【0063】
図5(B)は、観察光学系1000における外光の光路を示している。射出瞳S側から観察光学系1000に入射する外光において、紙面平行方向に振動する直線偏光は直線偏光板11で吸収され、紙面垂直方向に振動する直線偏光は直線偏光板11を透過する。直線偏光板11を透過した光は第2のλ/4板32で左回りの円偏光となって透過し、第1のλ/4板31で紙面垂直方向に振動する直線偏光となって透過する。透過した光は、第1の半透過反射面21Pで反射し、第1のλ/4板31で左回りの円偏光となる。
【0064】
左回りの円偏光となった光は、第2の半透過反射面22で透過する左回りの円偏光である第1のゴースト光と、第2の半透過反射面22で反射する右回りの円偏光である第2のゴースト光に分岐する。第2のゴースト光は、第1のλ/4板31で紙面平行方向に振動する直線偏光となって透過し、第1の半透過反射面21を透過する。そのため、第1の半透過反射面21Pで2回以上反射する光を抑制し、ゴースト光を低減することができる。
【0065】
[実施例4]
以下、
図6を参照して、実施例4について説明する。主に実施例1と異なる点について説明する。実施例4は、実施例1に対して、さらに表示素子40で反射するゴースト光を抑制するためのものである。そのために、第1の半透過反射面21と表示素子40との間に、射出瞳S側から順に紙面平行方向に振動する光を透過する直線偏光第2の直線偏光板12と、遅相軸の傾きが第1の直線偏光の振動方向に対して-45°の第3のλ/4板33とを配置している。
【0066】
その結果、表示素子40から出射した光において、第1の半透過反射面21で反射する光は第3のλ/4板33を透過して右回りの円偏光となり、表示素子40で反射し、左回りの円偏光となる。左回りの円偏光となった光は、第3のλ/4板33を透過して紙面垂直に振動する直線偏光となるため、第2の直線偏光板12で抑制される。すなわち、表示素子40で反射するゴースト光を抑制することができる。
【0067】
また、実施例4の派生例として、第1の半透過反射面21を偏光ビームスプリッター21Pとしても良い。特に、偏光ビームスプリッター21Pをワイヤーグリッドで形成した場合は、偏光ビームスプリッター21Pで紙面平行方向に振動する直線偏光の一部が反射されるため、表示素子40で反射する光が偏光ビームスプリッター21Pに戻る光を抑制し、不要光の発生を抑制できる。
【0068】
また、
図9は、光軸に対して角度の大きい方向から観察光学系1000に入射する外光すなわち、浅い外光によるゴースト光を低減する構成を示した図である。500は遮光壁、600は短冊形の遮光部が複数配置されたルーバー素子である。実施例1~3の構成によって、光軸に対して平行に近い方向から観察光学系1000に入射する外光によるゴースト光を抑制しているため、遮光壁500やルーバー素子600内の遮光部のZ軸方向の厚みを薄くすることができる。その結果、遮光壁500やルーバー素子600配置による煩わしさをあまり感じることなく、浅い外光によるゴースト光を抑制することができる。
【0069】
以下に、数値例1~5を示す。
図10~14はそれぞれ、数値例1~5に対応する光路図である。数値例1~5は実施例1~4いずれかの構成に対して、具体的な面データを示すものである。但し、実施例1~4における第2の半透過反射面22、第1のλ/4板31、第2のλ/4板32、直線偏光板11に関して、数値例1~5では1枚の平板とみなしている。
【0070】
各数値例の面データにおいて、rは各光学面の曲率半径、d(mm)は第m面と第(m+1)面との間の軸上間隔(光軸上の距離)を表わしている。ただし、面番号1は射出瞳Sの位置であり、mは射出瞳S側から数えた面の番号である。また、ndは各光学部材のd線に対する屈折率で表される。
図10~14におけるSの番号は数値例における面の番号mと対応している。
【0071】
非球面形状は光軸方向にX軸、光軸と垂直方向にH軸、光の進行方向を正としRを近軸曲率半径、A,B,C,Dを各々非球面係数としたとき、
X=(H2/R)/[1+{1-(H/R)2}1/2]+A×h4+B×h6+C×h8+D×h10
なる式で表している。*は非球面形状を有する面を意味している。「E-x」は10-xを意味している。
【0072】
[数値例1]
単位 mm
面番号 r d nd νd
1 ∞ 17.0
2 ∞ 1.0 1.5163 64.1
3 ∞ 10.0 1.5163 64.1
4 -50.000 2.0 1.5163 64.1
5 ∞ 2.026
表示面 ∞ 0
【0073】
[数値例2]
単位 mm
面番号 r d nd νd
1 ∞ 29.0
2 ∞ 1.0 1.5163 64.1
3 ∞ 10.0 1.5163 64.1
4* -50.000 2.0 1.5163 64.1
5 ∞ 2.285
表示面 ∞ 0
第4面 A= 2.376E-06 B= -8.480E-09 C= 1.367E-11 D= -6.993E-15
【0074】
[数値例3]
単位 mm
面番号 r d nd νd
1 ∞ 17.0
2 ∞ 1.0 1.5163 64.1
3 ∞ 8.0 1.5446 56.2
4* -52.338 2.0 1.6418 22.5
5* 69.472 5.585
表示面 ∞ 0
第4面 A= -5.3524E-07 B= -3.1573E-10 C= 1.9983E-12 D= -6.6842E-17
第5面 A= -3.1426E-05 B= 2.5264E-08 C= 2.6340E-11 D= -4.0278E-14
【0075】
[数値例4]
単位 mm
面番号 r d nd νd
1 ∞ 17.0
2 -94.522 1.0 1.5163 64.1
3* -94.522 8.0 1.5446 56.2
4* -37.697 2.0 1.6418 22.5
5* -848.438 4.1875
表示面 ∞ 0
第3面 A= 1.3125E-06 B= 3.7125E-10 C= -2.5851E-13 D= -3.4224E-16
第4面 A= -3.6185E-08 B= -1.7627E-09 C= 5.4487E-12 D= -5.8886E-16
第5面 A= -2.1211E-05 B= 1.5352E-08 C= 2.2357E-11 D= -2.0642E-14
【0076】
[数値例5]
単位 mm
面番号 r d nd νd
1 ∞ 15.0
2 200.000 1.0 1.5163 64.1
3 200.000 10.0 1.5446 56.2
4* -67.109 2.0 1.6418 22.5
5 1082.122 3.7612
表示面 ∞
第4面 A= -6.7130E-07 B= 1.7585E-09 C= -2.0854E-12 D= 1.4048E-15
【0077】
以下の表に各実施例における種々の値を示す。
【0078】
【0079】
図15は、実施例1~4の観察光学系を用いた画像表示装置としてのHMDを示している。HMDは、不図示の装着ギヤによって観察者の頭部に装着される。
【0080】
HMDは、右眼用と左眼用の画像表示素子RID、LIDと、右眼用画像表示素子RIDからの表示光を観察者の右眼に導く右眼用観察光学系ROSと、左眼用画像表示素子LIDからの表示光を観察者の左眼に導く左眼用観察光学系LOSとを有する。
【0081】
右眼用および左眼用観察光学系ROS、LOSとして実施例1~4に示した観察光学系を用いることで、広画角、小型でありながら、外光によるゴースト光を低減する点で有利なHMDを実現することができる。
【0082】
各実施例の開示は、以下の構成を含む。
【0083】
(構成1)
画像を表示する表示素子からの光を観察者に導く観察光学系であって、
表示側から観察側へ順に配置された、第1の半透過反射面、第1のλ/4板、第2の半透過反射面、第2のλ/4板、直線偏光板を有し、
表示側から第1の直線偏光が前記第1の半透過反射面に入射し、
前記第1の直線偏光の偏光方向と前記直線偏光板を透過する光の偏光方向が平行の場合、前記第1のλ/4板の遅相軸の方向と前記第2のλ/4板の遅相軸の方向は平行であり、
前記第1の直線偏光の偏光方向と前記直線偏光板を透過する光の偏光方向が垂直の場合、前記第1のλ/4板の遅相軸の方向と前記第2のλ/4板の遅相軸の方向は垂直であり、
前記第1の半透過反射面と、前記第2の半透過反射面のうち、焦点距離の絶対値が小さい反射面を反射面Aとし、該反射面Aの焦点距離をfA、射出瞳位置から前記反射面Aまでの光軸上の空気換算距離をLAとするとき、
1.0<LaA/|fA|<3.0
なる条件式を満足することを特徴とする観察光学系。
【0084】
(構成2)
前記観察光学系の焦点距離をfとするとき、
0.60<fA/f<1.50
なる条件式を満足することを特徴とする構成1に記載の観察光学系。
【0085】
(構成3)
前記第1ならびに第2の半透過反射面は、ハーフミラーであることを特徴とする構成1または2に記載の観察光学系。
【0086】
(構成4)
前記第1の半透過反射面は偏光ビームスプリッタであり、
前記第2の半透過反射面は、ハーフミラーであることを特徴とする構成1または2に記載の観察光学系。
【0087】
(構成5)
前記反射面Aは、観察側に向かって凹面であることを特徴とする構成1乃至4の何れか一構成に記載の観察光学系。
【0088】
(構成6)
前記観察光学系は、最も観察側に配置された遮光部材を有することを特徴とする構成1乃至5の何れか一構成に記載の観察光学系。
【0089】
(構成7)
前記遮光部材は短冊形であり、光軸と垂直方向に配置されたルーバー素子であることを特徴とする構成6に記載の観察光学系。
【0090】
(構成8)
観察側から前記観察光学系に入射する外光の光軸に対する角度の絶対値をωとするとき、
0°<ω<45°
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至7の何れか一構成に記載の観察光学系。
【0091】
(構成9)
前記観察光学系の焦点距離をf、該反射面Aの曲率半径をRとするとき、
-6.0<R/f<-1.0
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至8の何れか一構成に記載の観察光学系。
【0092】
(構成10)
前記観察光学系の焦点距離をfとするとき、
0.60<|fA|/f<1.50
なる条件式を満足することを特徴とする構成1乃至9の何れか一構成に記載の観察光学系。
【0093】
(構成11)
構成1乃至10の何れか一構成に記載の観察光学系と、前記表示素子とを有することを特徴とする画像表示装置。
【0094】
以上、本発明に好ましい実施形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の組合せ、変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1000 観察光学系
11 直線偏光板
21、22 第1、第2の半透過反射面
31、32 第1、第2のλ/4板
40 表示素子