(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168273
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】作業台船昇降監視システム及び作業台船昇降監視方法
(51)【国際特許分類】
E02B 17/04 20060101AFI20241128BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20241128BHJP
B63B 79/10 20200101ALI20241128BHJP
E02B 17/08 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
E02B17/04 Z
B63B35/44 Z
B63B79/10
E02B17/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084802
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 遼矢都
(57)【要約】
【課題】作業台船の昇降時に船体構造とレグが干渉しないように作業者を支援する。
【解決手段】レグ12が挿入される穴部11の延伸方向と、レグ12の長手方向とが完全に一致せずに傾いた状態となることがある。そこで、複数のレグ12が昇降するときに、穴部11の内周面と当該穴部11に挿入されたレグ12の外周面との間隙値を計測し、その間隙値を用いて、船体10を目標位置まで上昇又は下降させる場合におけるレグ12及び穴部11の接触の状態を予測して、その予測結果に応じた情報を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の穴部と、前記穴部にそれぞれ挿入される複数の脚と、前記複数の脚を昇降させる昇降部とを有する自己昇降式作業台船の昇降作業において、
前記複数の脚が昇降するときに、前記穴部内周面の前記脚の昇降方向における複数の異なる位置、及び、前記穴部の周方向における複数の異なる位置で、前記穴部の内周面と当該穴部に挿入された前記脚の外周面との間隙値を計測する計測部と、
前記計測部により計測された間隙値を用いて、自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させる場合における前記脚及び前記穴部の接触の状態を予測する予測部と、
前記予測部による予測結果に応じた情報を出力する出力部と
を備える作業台船昇降監視システム。
【請求項2】
前記予測部は、前記脚を水底に向け下降させたときから前記脚が水底に着底し水底の支持基盤に荷重をかけて支持力が得られるまでの間、又は前記自己昇降式作業台船を所定の位置まで上昇させるまでの期間に、所定の時間間隔で計測される前記間隙値の変化を用いて、前記予測を行う請求項1記載の作業台船昇降監視システム。
【請求項3】
前記計測部は、光学センサを含む請求項1記載の作業台船昇降監視システム。
【請求項4】
前記計測部は、前記穴部の水平面の周方向に等しい間隔となるように、少なくとも3か所以上の位置に設けられている請求項1記載の作業台船昇降監視システム。
【請求項5】
前記出力部は、前記脚と前記穴部との接触の度合いに関する情報を出力する請求項1記載の作業台船昇降監視システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記脚と前記穴部との接触の度合いに関する情報に基づいて前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることが可能か否かを予測した結果を含む情報を出力する請求項1記載の作業台船昇降監視システム。
【請求項7】
前記出力部は、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇させることができないと予測された場合に、前記複数の脚の着底又は荷重から再度やり直す指示を含む情報を出力する請求項1記載の作業台船昇降監視システム。
【請求項8】
前記予測部が、複数の前記穴部及び複数の前記脚のうち、少なくともいずれか1つの前記穴部と当該穴部に挿入された前記脚との間隙値を用いて、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した場合、
前記出力部は、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることできないことを含む情報を出力する請求項1記載の作業台船昇降監視システム。
【請求項9】
前記予測部が、複数の前記穴部及び複数の前記脚のうち、少なくともいずれか1つの前記穴部と当該穴部に挿入された前記脚との間隙値を用いて、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した場合、
前記出力部は、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した前記穴部及び前記脚の識別子を含む情報を出力する請求項1記載の作業台船昇降監視システム。
【請求項10】
前記自己昇降式作業台船の傾斜状態を検出する検出部を備え、
前記出力部は、前記検出部による傾斜状態に応じた情報を出力する請求項1記載の作業台船昇降監視システム。
【請求項11】
複数の穴部と、前記穴部にそれぞれ挿入される複数の脚と、前記複数の脚を昇降させる昇降部とが設けられた自己昇降式作業台船の昇降作業において、
前記複数の脚が昇降するときに、前記穴部内周面の前記脚の昇降方向における複数の異なる位置、及び、前記穴部の周方向における複数の異なる位置で、前記穴部の内周面と当該穴部に挿入された前記脚の外周面との間隙値を計測する計測ステップと、
前記計測ステップにより計測された間隙値を用いて、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させる場合における前記脚及び前記穴部の接触の状態を予測する予測ステップと、
前記予測ステップによる予測結果に応じた情報を出力する出力ステップと
を備える作業台船昇降監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業台船の昇降状態を監視するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自己昇降式作業台船(SEP船:Self Elevating Platform)は、船体に取り付けられたジャッキとそのジャッキに接続されたレグを備え、ジャッキでレグを駆動することで、水面より上に船体を持ち上げてその状態を保持したり(ジャッキアップ)、逆に海面へ船体を下げたり(ジャッキダウン)する。例えば特許文献1には、自己昇降式作業台船において、操作用制御装置に入力されるセンサによる検出データとして、脚繰り出し長さ、船体傾斜、船体下面・海面間距離等を用いて、着底時での各脚の昇降・保持荷重、脚の海底への貫入長さ等を算出し、海洋構造物の現在の態や操作を必要とする事項等が把握できるようにグラフや画像で表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自己昇降式作業台船において、ジャッキアップは、まずアフロート状態でレグを水底に向けて下ろしはじめ、レグが水底に着底すると、レグを介して水底地盤に荷重をかけ、その後、所定の目標高さまで船体を持ち上げるという手順で行われる。このようなジャッキアップの過程で、風や波等の外力による船体の動揺や、レグの着底及び水底への貫入の具合により、レグが船体構造に対して垂直ではなく傾いた状態となってしまう可能性がある。このような状態のまま船体を上又は下に動かすと船体構造とレグが干渉して損傷の恐れがあるほか、船体を目標高さまで動かすことができなくなる可能性もある。
【0005】
そこで、本発明は、作業台船の昇降時に船体構造とレグ(脚)が干渉しないように作業者を支援するための仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業台船昇降監視システムは、複数の穴部と、前記穴部にそれぞれ挿入される複数の脚と、前記複数の脚を昇降させる昇降部とを有する自己昇降式作業台船の昇降作業において、前記複数の脚が昇降するときに、前記穴部内周面の前記脚の昇降方向における複数の異なる位置、及び、前記穴部の周方向における複数の異なる位置で、前記穴部の内周面と当該穴部に挿入された前記脚の外周面との間隙値を計測する計測部と、前記計測部により計測された間隙値を用いて、自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させる場合における前記脚及び前記穴部の接触の状態を予測する予測部と、前記予測部による予測結果に応じた情報を出力する出力部とを備える。
【0007】
前記予測部は、前記脚を水底に向け下降させたときから前記脚が水底に着底し水底の支持基盤に荷重をかけて支持力が得られるまでの間、又は前記自己昇降式作業台船を所定の位置まで上昇させるまでの期間に、所定の時間間隔で計測される前記間隙値の変化を用いて、前記予測を行うようにしてもよい。
【0008】
前記計測部は、光学センサを含むようにしてもよい。
【0009】
前記計測部は、前記穴部の水平面の周方向に等しい間隔となるように、少なくとも3か所以上の位置に設けられているようにしてもよい。
【0010】
前記出力部は、前記脚と前記穴部との接触の度合いに関する情報を出力するようにしてもよい。
【0011】
前記出力部は、前記脚と前記穴部との接触の度合いに関する情報に基づいて前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることが可能か否かを予測した結果を含む情報を出力するようにしてもよい。
【0012】
前記出力部は、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇させることができないと予測された場合に、前記複数の脚の着底又は荷重から再度やり直す指示を含む情報を出力するようにしてもよい。
【0013】
前記予測部が、複数の前記穴部及び複数の前記脚のうち、少なくともいずれか1つの前記穴部と当該穴部に挿入された前記脚との間隙値を用いて、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した場合、前記出力部は、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることできないことを含む情報を出力するようにしてもよい。
【0014】
前記予測部が、複数の前記穴部及び複数の前記脚のうち、少なくともいずれか1つの前記穴部と当該穴部に挿入された前記脚との間隙値を用いて、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した場合、前記出力部は、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した前記穴部及び前記脚の識別子を含む情報を出力するようにしてもよい。
【0015】
前記自己昇降式作業台船の傾斜状態を検出する検出部を備え、前記出力部は、前記検出部による傾斜状態に応じた情報を出力するようにしてもよい。
【0016】
本発明に係る作業台船昇降監視方法は、複数の穴部と、前記穴部にそれぞれ挿入される複数の脚と、前記複数の脚を昇降させる昇降部とが設けられた自己昇降式作業台船の昇降作業において、前記複数の脚が昇降するときに、前記穴部内周面の前記脚部の昇降方向における複数の異なる位置、及び、前記穴部の周方向における複数の異なる位置で、前記穴部の内周面と当該穴部に挿入された前記脚の外周面との間隙値を計測する計測ステップと、前記計測ステップにより計測された間隙値を用いて、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させる場合における前記脚及び前記穴部の接触の状態を予測する予測ステップと、前記予測ステップによる予測結果に応じた情報を出力する出力ステップとを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業台船の昇降時に船体構造と脚(レグ)が干渉しないように作業者を支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るSEP船1の主要部を例示する側面図(アフロート時)。
【
図2】本発明の一実施形態に係るSEP船1の主要部を例示する側面図(着底時)。
【
図3】本発明の一実施形態に係るSEP船1の主要部を例示する側面図(ジャッキアップ時)。
【
図4】同実施形態においてレグと穴部とが干渉する様子を説明する側面図。
【
図5】同実施形態においてレグと穴部とが干渉する様子を説明する平面図。
【
図6】同実施形態に係る作業台船昇降監視システム100のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
【
図7】同実施形態に係る光学センサの位置を例示する側面図。
【
図8】同実施形態に係る光学センサの位置を例示する平面図。
【
図9】同実施形態に係るコンピュータ110のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
【
図10】同実施形態に係るコンピュータ110の動作の一例を示すフローチャート。
【
図11】同実施形態に係るコンピュータ110による予測処理を説明する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[構成]
本発明を実施するための形態の一例について説明する。
図1~3は、本発明の一実施形態に係る自己昇降式作業台船1(以下、SEP船1という)の主要部を例示する側面図である。
図1~3はSEP船1の昇降状態が異なっており、
図1はSEP船1がアフロート時、
図2はSEP船1のレグが着底時、
図3はSEP船1が水面より上にジャッキアップされた時の様子を例示している。SEP船1は、船体10において甲板及び船底間を鉛直方向に貫通する複数の穴部11と、複数の穴部11のそれぞれに挿入されたレグ12(脚)と、複数のレグ12をそれぞれ船体10に対して昇降させる油圧式ジャッキ等の昇降機構とを有する。
【0020】
SEP船1がジャッキアップを行う場合、まずアフロート状態でレグ12を水底Gに向けて下ろしはじめ(
図1)、レグ12が水底Gに着底すると、レグ12を介して水底地盤に荷重をかけ(
図2)、さらに、レグ12を船体10に対して下方に移動させることで、船体10を水面Sより上の所定の目標高さまで持ち上げる(
図3)。一方、SEP船1がジャッキダウンを行う場合には、船体10に対してレグ12を上げることで、
図3から
図2の状態を経て
図1の状態へと遷移する。
【0021】
このようなジャッキアップ又はジャッキダウンの過程で、風や波等の外力による船体10の動揺や、レグ12の着底及び水底Gへの貫入の具合により、レグ12が船体10に対して垂直ではなく傾いた状態となってしまうことがある。
【0022】
ここで、
図4は、レグ12と穴部11とが干渉する様子を説明する側面図である。
図5はその平面図であり、特に
図5(a)は、レグ12と穴部11を上方(
図4の矢印a)から見たときの平面図であり、
図5(b)は、レグ12と穴部11を下方(
図4の矢印b)から見たときの平面図である。なお、
図4,5は、船体10と穴部11とレグ12の位置関係を簡潔に表現したものであり、これら以外の構造の図示を省略している。
【0023】
上述した様々な要因により、
図4に例示するように、穴部11の延伸方向(つまり船体10の甲板に対して鉛直な方向)と、レグ12の長手方向とが完全に一致せずに傾いた状態となることがある。このとき穴部11の延伸方向から穴部11及びレグ12を観察すると、穴部11の内周面とレグ12の外周面との間隙が一定の値とはならない。
【0024】
例えばレグ12と穴部11を上方から見たときの
図5(a)では、矢印pで示した位置における穴部11及びレグ12の間隙は他の位置よりも小さく、矢印qで示した位置における穴部11及びレグ12の間隙は他の位置よりも大きい。また、レグ12と穴部11を下方から見たときの
図5(b)では、矢印sで示した位置における穴部11及びレグ12の間隙は他の位置よりも小さく、矢印rで示した位置における穴部11及びレグ12の間隙は他の位置よりも大きい。このような状態のまま、さらにジャッキアップ又はジャッキダウンを継続すると、穴部11の内周面とレグ12の外周面との間隙のうち、矢印p、sの位置における間隙がさらに小さくなり、穴部11の内周面とレグ12の外周面とが接触してしまうケースがある。
【0025】
そこで、本実施形態では、複数のレグ12のそれぞれが昇降するときに、穴部11の内周面とその穴部11に挿入されたレグ12の外周面との間隙値を計測し、その間隙値を用いて、船体10を目標位置まで上昇又は下降させる場合におけるレグ12及び穴部11の接触の状態を予測して、その予測結果に応じた情報を出力する。作業者はこの情報を見ることで、穴部11とレグ12が干渉しないように昇降作業を行うことが可能となる。
【0026】
図6は、SEP船1が備える作業台船昇降監視システム100のハードウェア構成を示す図である。作業台船昇降監視システム100は、コンピュータ110と、と、表示装置120と、操作装置130と、計測装置140とが通信可能に接続されたシステムである。
【0027】
表示装置120は、例えばディスプレイやLEDランプなどであり、各種の情報を表示する表示部として機能する。
【0028】
操作装置130は、例えばキーボード、マウス、スイッチ、ボタンなどであり、作業者の操作を受け付ける操作部として機能する。
【0029】
計測装置140は、穴部11の内周面とその穴部11に挿入されたレグ12の外周面との間隙値を計測する計測部として機能する光学センサ141と、船体10の傾斜状態を検知する検出部として機能するモーションセンサ142を含む。
【0030】
図7は光学センサ141の位置を例示する側面図であり、
図8はその平面図である。光学センサ141は、
図7に例示するように、穴部11の内周面において、レグ12の昇降方向における複数の異なる位置に設けられている。光学センサ141は、所定の時間間隔で、レグ12に対して光を照射してその反射光を受光するまでの時間を計測することで、光学センサ141(つまり穴部11の内周面)とレグ12の外周面との間隙値を計測する。なお、レグ12の昇降方向において、光学センサ141は、少なくとも2か所以上の位置に設けられていればよい。
【0031】
また、光学センサ141は、
図8に例示するように、穴部11の周方向における複数の異なる位置、より具体的には、穴部11の水平面の周方向に等しい間隔となる位置に設けられている。なお、穴部11の周方向において、光学センサ141は、少なくとも3か所以上の位置に設けられていればよい。
【0032】
図9は、コンピュータ110のハードウェア構成を示す図である。コンピュータ110は、物理的には、プロセッサ1101、メモリ1102、ストレージ1103、通信装置1104及びこれらを接続するバスなどを含む。これらの各装置は図示せぬ電源から供給される電力によって動作する。
【0033】
プロセッサ1101は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1101は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。
【0034】
プロセッサ1101は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ1103からメモリ1102に読
み出し、これらに従って各種の処理を実行する。
【0035】
メモリ1102は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ1102は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1102は、本実施形態に係る方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0036】
ストレージ1103は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスクなどの光ディスク、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フレキシブルディスク、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。
【0037】
通信装置1104は、他の装置と通信を行うためのハードウェアであり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0038】
コンピュータ110における各機能は、プロセッサ1101、メモリ1102などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1101が演算を行い、通信装置1104による通信を制御したり、他の装置から送信されてきたデータを取得したり、メモリ1102及びストレージ1103におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。より具体的には、プロセッサ1101は、光学センサ141により計測された間隙値を用いて船体10を目標位置まで上昇又は下降させる場合におけるレグ12及び穴部11の接触の状態を予測する予測部101と、予測部101による予測結果に応じた情報を出力する出力部102として機能する。
【0039】
予測部101は、レグ12を水底に向け下降させたときからレグ12が水底に着底し水底の支持基盤に荷重をかけて支持力が得られるまでの間、又は、船体10を所定の位置まで上昇させるまでの期間に、光学センサ141により所定の間隔で計測される間隙値の変化を用いて、レグ12及び穴部11の接触の状態を予測する。
【0040】
出力部102は、レグ12と穴部11との接触の度合いに関する情報を出力する。また、出力部102は、レグ12と穴部11との接触の度合いに関する情報に基づいて船体10を目標位置まで上昇又は下降させることが可能か否かを予測した結果を含む情報を出力する。出力部102は、船体10を目標位置まで上昇させることができないと予測された場合には、複数のレグ12の着底又は荷重から再度やり直す指示を含む情報を出力する。
【0041】
また、予測部101が、複数の穴部11及び複数のレグ12のうち、少なくともいずれか1つの穴部11とその穴部11に挿入されたレグ12との間隙値を用いて、船体10を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した場合、出力部102は、船体10を目標位置まで上昇又は下降させることできないことを含む情報を出力する。
【0042】
さらに、予測部101が、複数の穴部11及び複数のレグ12のうち、少なくともいずれか1つの穴部11とその穴部11に挿入されたレグ12との間隙値を用いて、船体10を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した場合、出力部102は、船体10を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した穴部11及びレグ12の識別子を含む情報を出力する。また、出力部102は、モーションセンサ142による船体10の傾斜状態に応じた情報を出力する。
【0043】
[動作]
図10は、コンピュータ110の動作の一例を示すフローチャートである。
図10において、プロセッサ1101は、レグ12を水底に向け下降させたときからレグ12が水底に着底し水底の支持基盤に荷重をかけて支持力が得られるまでの間、又は、船体10を所定の位置まで上昇させるまでの期間に、複数の光学センサ141によって計測された間隙値をそれぞれ取得する(ステップS11)。
【0044】
次に、プロセッサ1101(予測部101)は、複数の光学センサ141によって計測された間隙値に基づいて、レグ12及び穴部11の接触の状態を予測する(ステップS12)。具体的には、プロセッサ1101(予測部101)は、
図11に示すように、船体10に対するレグ12の水平断面S1,S2の位置を鉛直方向の異なる高さh1,h2(つまり光学センサ141が設置されている高さ方向の位置)で特定し、それら水平断面S1,S2を高さ方向に結ぶことで各レグ12の傾きθを算出する。この傾きθに基づいてSEP船1がさらにどの程度上昇又は下降したときに穴部11の内周面とレグ12の外周面とが接触するか否かを判断することが可能である。そこで、プロセッサ1101(予測部101)は、算出した傾きθにより、高さ方向における船体10の現在位置から目標位置に至るまでに穴部11の内周面とレグ12の外周面とで接触する可能性がある箇所を予測する。
【0045】
次に、プロセッサ1101(予測部101)は、予測した結果に基づいて、レグ12と穴部11との接触の度合いに関する情報を生成する(ステップS13)。具体的には、プロセッサ1101(出力部102)は、レグ12と穴部11との接触の度合いに関する情報に基づいて船体10を目標位置まで上昇又は下降させることが可能か否かを予測した結果を含む情報(例えば上昇可能若しくは下降可能、又は、上昇不可若しくは下降不可というメッセージ)を生成する。ここで、例えば複数の穴部11及び複数のレグ12のうち、少なくともいずれか1つの穴部11とその穴部11に挿入されたレグ12との間隙値を用いて、船体10を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した場合には、プロセッサ1101(出力部102)は、複数のレグ12の着底又は荷重から再度やり直す指示を含む情報を生成する。また、プロセッサ1101(予測部101)は、複数の穴部11及び複数のレグ12のうち、少なくともいずれか1つの穴部11とその穴部11に挿入されたレグ12との間隙値を用いて、船体10を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した場合、船体10を目標位置まで上昇又は下降させることができないと予測した穴部11及びレグ12の識別子を含む情報(例えば穴部及びレグに付された番号やその位置)を生成する。
【0046】
プロセッサ1101(出力部102)は、生成された情報を例えば画像の表示や音声ガイダンス等の任意の方法で出力する(ステップS14)。このとき、プロセッサ1101(出力部102)は、モーションセンサ142による船体10の傾斜状態に応じて、レグ12を昇降させるタイミングやその昇降量として適切な情報を出力する。
【0047】
以上説明した実施形態によれば、作業台船の昇降時における穴部11とレグ12の状態を監視し、その状態に応じた情報を出力することで、作業者の作業を支援することができる。これにより、船体10を上下に動かすことができなくなる事象の発生や、レグ12、ジャッキ又は船体構造の損傷を未然に防ぐことが可能となる。
【0048】
なお、本発明を、複数の穴部と、前記穴部にそれぞれ挿入される複数の脚と、前記複数の脚を昇降させる昇降部とが設けられた自己昇降式作業台船の昇降作業において、前記複数の脚が昇降するときに、前記穴部内周面の前記脚部の昇降方向における複数の異なる位置、及び、前記穴部の周方向における複数の異なる位置で、前記穴部の内周面と当該穴部に挿入された前記脚の外周面との間隙値を計測する計測ステップと、前記計測ステップにより計測された間隙値を用いて、前記自己昇降式作業台船を目標位置まで上昇又は下降させる場合における前記脚及び前記穴部の接触の状態を予測する予測ステップと、前記予測ステップによる予測結果に応じた情報を出力する出力ステップとを備える作業台船昇降監視方法として実施することも可能である。また、本発明は上記方法を実行するためのプログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1:SEP船、10:船体、11:穴部、12:レグ、100:作業台船昇降監視システム、101:予測部、102:出力部、110:コンピュータ、120:表示装置、130:操作装置、140:計測装置、141:光学センサ、142:モーションセンサ、1101:プロセッサ、1102:メモリ、1103:ストレージ、1104:通信装置、S:水面、G:水底。