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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168279
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】電空レギュレータ
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/30 20060101AFI20241128BHJP
   G05D 16/00 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F16K17/30 Z
G05D16/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084820
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 柊平
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 治彦
(72)【発明者】
【氏名】加茂 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】長崎 功
【テーマコード(参考)】
3H060
5H316
【Fターム(参考)】
3H060AA02
3H060BB08
3H060CC02
3H060CC06
3H060CC22
3H060DC05
3H060DC13
3H060HH06
5H316BB01
5H316DD03
5H316EE04
5H316EE08
5H316FF01
5H316GG01
(57)【要約】
【課題】給気用電磁弁と排気用電磁弁とを開閉することによりエアの圧力を制御する電空レギュレータにおいて、装置サイズを抑制しつつ、大流量制御や高圧制御に対応でき、出力先の容積の大小にかかわらず、良好な応答性を確保できる技術を実現すること。
【解決手段】電空レギュレータ1は、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13が、ソレノイド部4A,4Bへの通電に応じて弁体組立31A,31Bを第1弁座219および第2弁座239に当接または離間させる。給気用電磁弁12および排気用電磁弁13は、弁体組立31A,31Bの二次側に空間S1をそれぞれ備え、弁閉時に一次側を空間S1に連通させる第1連通流路36を弁体組立31A,31Bに設け、弁閉時に、一次側のエアが第1連通流路36を介して空間S1へ流れ、弁体組立31A,31Bに弁閉方向の力を付与する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象となるエアが流れる流路上に給気用電磁弁と排気用電磁弁とが配設され、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁とを開閉することによって前記エアの圧力を設定圧力に制御する電空レギュレータにおいて、
前記給気用電磁弁および前記排気用電磁弁は、それぞれ、
弁座と、
前記弁座に当接又は離間する弁体と、
前記弁体に駆動力を付与するソレノイド部と、
前記弁体が前記弁座に当接する当接部より二次側に設けられ、前記弁体を前記弁座に当接する方向に加圧可能な第1空間部と、
を有し、
前記弁体は、弁閉時に一次側を前記第1空間部に連通させる第1連通流路が形成されている、
ように構成されている電空レギュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載する電空レギュレータにおいて、
前記第1空間部は、前記弁体が前記弁座に当接又は離間する方向に対して直交する方向に切断した空間断面積が、前記弁座の弁座開口面積と、同程度である、
ように構成されている電空レギュレータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する電空レギュレータにおいて、
前記ソレノイド部は、前記弁座側に開口し、前記弁体を移動可能に収容する弁体収容部を有し、
前記弁体は、前記ソレノイド部側に開口して前記弁体収容部との間に前記第1空間部を形成する有底孔を有し、前記有底孔の周壁が前記弁体収容部の内壁と常時重なる状態で前記弁体収容部に進退可能に装填されており、
前記第1空間部は、前記弁体収容部と前記有底孔とによって形成されている、
ように構成されている電空レギュレータ。
【請求項4】
請求項3に記載する電空レギュレータにおいて、
前記ソレノイド部は、通電に応じて直線往復運動する可動部を有し、
前記弁体は、弁座当接部材と、連結ロッドと、を有する弁体組立であり、
前記弁座当接部材は、前記有底孔を有し、前記弁体収容部に移動可能に装填され、
前記連結ロッドは、前記弁座当接部材と前記可動部とに結合し、前記第1連通流路が形成されている、
ように構成されている電空レギュレータ。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載する電空レギュレータにおいて、
前記ソレノイド部は、前記弁体に連結し、前記ソレノイド部への通電に応じて可動する可動部を有し、前記可動部の一部が配置される第2空間部を有し、
前記第2空間部が前記第1空間部と連通している、
ように構成されている電空レギュレータ。
【請求項6】
請求項5に記載する電空レギュレータにおいて、
前記ソレノイド部は、
中空穴部を備えるコイル組立と、
前記中空穴部の一端開口部に固定され、前記コイル組立への通電に応じて励磁される固定鉄心と、
前記中空穴部に往復直線運動可能に挿入され、前記弁体に連結する可動部と、
を有し、
前記可動部と前記固定鉄心との間に第3空間部が形成されており、
前記可動部は、前記第2空間部と前記第3空間部とを連通させる第2連通流路が形成されている、
ように構成されている電空レギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電空レギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
電空レギュレータは、電気信号によりエアの圧力を設定圧力に制御する装置である。電空レギュレータには、パイロット式電空レギュレータと、直動式電空レギュレータと、がある。
【0003】
パイロット式電空レギュレータは、例えば、特許文献1に開示されている。この電空レギュレータは、制御圧力と設定圧力との差に基づいてパイロット室にパイロットエアを給排気することにより、主弁部が開閉し、エアの圧力を設定圧力に制御する。
【0004】
直動式電空レギュレータは、例えば、特許文献2に開示されている。この電空レギュレータは、制御圧力と設定圧力との差に基づいて給気用電磁弁と排気用電磁弁とが開閉し、エアの圧力を設定圧力に制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-170219号公報
【特許文献2】特開2017-111653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記パイロット式電空レギュレータは、パイロットエアによって主弁部を開閉するため、装置サイズを抑制して、大流量のエアや高圧エアを制御することが可能である。しかし、パイロット式電空レギュレータは、パイロット室にパイロットエアを給排気するため、応答遅れが生じていた。その応答遅れは、出力先の容積が小さいほど、顕著であった。その理由は、出力先の容積が大きい場合より出力先の容積が小さい場合の方が、設定圧力に到達する応答時間が短いため、応答遅れが全応答時間に占める割合が大きくなるからである。
【0007】
これに対して、直動式電空レギュレータは、給気用電磁弁と排気用電磁弁とが開閉してエアを制御するため、応答遅れが小さく、出力先の容積の大小にかかわらず、パイロット式電空レギュレータよりも応答性が良い。しかし、直動式電空レギュレータは、給気用電磁弁および排気用電磁弁の弁座開口面積により、制御流量が決定される。給気用電磁弁および排気用電磁弁は、弁座開口面積が大きくなると、弁閉時に弁体に作用する流体圧力荷重が大きくなる。また、電空レギュレータがエアを高圧制御する場合、給気用電磁弁および排気用電磁弁の弁体に作用する流体圧荷重が大きくなる。弁体に作用する流体圧荷重が大きくなるのに伴い、給気用電磁弁および排気用電磁弁は、ソレノイド部が肥大化し、バルブサイズが大きくなる。よって、直動式電空レギュレータは、制御流量を増加させる場合や、エアを高圧力に制御する場合に、装置サイズが大きくなってしまっていた。
【0008】
例えば、電空レギュレータは、ディスペンサ装置のシリンジの近くに配設され、小型化が望まれている。また、ディスペンサ装置が吐出する液体は多様化している。シリンジから粘度の高い液体を吐出する場合、電空レギュレータは、エアを高圧力(例えば0.9MPa)に制御する必要がある。また、出力先の容積が大きい場合の応答時間を短くするため、電空レギュレータは大流量に対応することも望まれていた。また、電空レギュレータは、出力先の容積の大小にかかわらず、応答性が良いことが望ましい。従来のパイロット式電空レギュレータおよび直動式電空レギュレータはこれらの要望に全て応えることができず、電空レギュレータには改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書にて開示する技術の一態様は、(1)制御対象となるエアが流れる流路上に給気用電磁弁と排気用電磁弁とが配設され、前記給気用電磁弁と前記排気用電磁弁とを開閉することによって前記エアの圧力を設定圧力に制御する電空レギュレータにおいて、前記給気用電磁弁および前記排気用電磁弁は、それぞれ、弁座と、前記弁座に当接又は離間する弁体と、前記弁体に駆動力を付与するソレノイド部と、前記弁体が前記弁座に当接する当接部より二次側に設けられ、前記弁体を前記弁座に当接する方向に加圧可能な第1空間部と、を有し、前記弁体は、弁閉時に一次側を前記第1空間部に連通させる第1連通流路が形成されている、ように構成されている。
【0010】
上記構成を有する電空レギュレータは、給気用電磁弁と排気用電磁弁とが開閉してエアの圧力を設定圧力に制御する直動式電空レギュレータであるので、応答遅れが小さく、出力先の容積の大小にかかわらず、良好な応答性を確保できる。給気用電磁弁および排気用電磁弁は、弁閉時、一次側のエアが第1連通流路を介して第1空間部に流入することにより、弁座に当接する方向(以下「弁閉方向」とする)の力が弁体に作用する。給気用電磁弁および排気用電磁弁の各弁体は、弁閉時、弁座から離間する方向(以下「弁開方向」とする)に作用する力が弁閉方向の力によって相殺されて小さくなる。ソレノイド部は、相殺後の弁開方向の力に応じたサイズにすれば良く、給気用電磁弁および排気用電磁弁のサイズアップが抑制される。これは、弁座開口面積を拡大して大流量制御可能にした場合や、電空レギュレータがエアを高圧制御する場合も、同様である。よって、電空レギュレータは、装置サイズを抑制しつつ、大流量制御や高圧制御に対応できる。
【0011】
(2)(1)に記載する電空レギュレータにおいて、前記第1空間部は、前記弁体が前記弁座に当接又は離間する方向に対して直交する方向に切断した空間断面積が、前記弁座の弁座開口面積と、同程度である、ことが好ましい。
【0012】
上記構成の電空レギュレータによれば、給気用電磁弁および排気用電磁弁は、弁座開口面積を拡大しても、弁閉時に弁体に作用する弁開方向の力と弁閉方向の力との差が小さくなって、給気用電磁弁および排気用電磁弁のサイズアップが抑制される。これによれば、電空レギュレータは、装置サイズを抑制しつつ、制御流量を増加させることができる。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載する電空レギュレータにおいて、前記ソレノイド部は、前記弁座側に開口し、前記弁体を移動可能に収容する弁体収容部を有し、前記弁体は、前記ソレノイド部側に開口して前記弁体収容部との間に前記第1空間部を形成する有底孔を有し、前記有底孔の周壁が前記弁体収容部の内壁と常時重なる状態で前記弁体収容部に進退可能に装填されており、前記第1空間部は、前記弁体収容部と前記有底孔とによって形成されている、ことが好ましい。
【0014】
上記構成の電空レギュレータによれば、給気用電磁弁および排気用電磁弁は、ソレノイド部の弁体収容部に進退可能に収容される弁体に有底孔を設け、弁体収容部と有底孔とによって第1空間部を形成することで、バルブサイズを抑制しつつ、第1空間部の容積を広く確保できる。これにより、弁閉時に、第1空間部に流入したエアが弁体を弁閉方向に過剰に加圧することを回避し、給気用電磁弁および排気用電磁弁が電気信号に応じて応答性良く開閉することが可能になる。よって、上記電空レギュレータによれば、応答性良くエアを設定圧力に制御できる。
【0015】
(4)(3)に記載する電空レギュレータにおいて、前記ソレノイド部は、通電に応じて直線往復運動する可動部を有し、前記弁体は、弁座当接部材と、連結ロッドと、を有する弁体組立であり、前記弁座当接部材は、前記有底孔を有し、前記弁体収容部に移動可能に装填され、前記連結ロッドは、前記弁座当接部材と前記可動部とに結合し、前記第1連通流路が形成されている、ことが好ましい。
【0016】
上記構成を有する電空レギュレータによれば、弁座開口面積が異なるモデルの給気用電磁弁および排気用電磁弁について、弁座当接部材を交換すれば、ソレノイド部と連結ロッドとを共用できる。
【0017】
(5)(1)から(4)の何れか1つに記載する電空レギュレータにおいて前記ソレノイド部は、前記弁体に連結し、前記ソレノイド部への通電に応じて可動する可動部を有し、前記可動部の一部が配置される第2空間部を有し、前記第2空間部が前記第1空間部と連通している、ことが好ましい。
【0018】
上記構成を有する電空レギュレータによれば、給気用電磁弁および排気用電磁弁は、可動部の一部が配置される第2空間部に第1空間部が連通していることで、弁体の移動に応じて、第1空間部にあるエアが第2空間部へ流動できる。このような電空レギュレータによれば、第1空間部にあるエアが弁開時にエアクッションのようにならず、給気用電磁弁と排気用電磁弁とが応答性良く弁を開くことができる。
【0019】
(6)(5)に記載する電空レギュレータにおいて、前記ソレノイド部は、中空穴部を備えるコイル組立と、前記中空穴部の一端開口部に固定され、前記コイル組立への通電に応じて励磁される固定鉄心と、前記中空穴部に往復直線運動可能に挿入され、前記弁体に連結する可動部と、を有し、前記可動部と前記固定鉄心との間に第3空間部が形成されており、前記可動部は、前記第2空間部と前記第3空間部とを連通させる第2連通流路が形成されている、ことが好ましい。
【0020】
上記構成を有する電空レギュレータによれば、第1空間部に流入したエアが第2空間部、第2連通流路を介して第3空間部に流入し、可動鉄心を介して弁体に弁閉方向の力を付与する。これにより、弁体に作用する弁開方向の力が、弁体および可動鉄心に作用する弁閉方向の力全体と釣り合う。そのため、給気用電磁弁および排気用電磁弁は、大流量制御や高圧制御する場合でも、ソレノイド部の肥大化が抑制される。よって、電空レギュレータは、大流量制御する場合や設定圧力が高い場合でも、装置サイズを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本明細書に開示される技術によれば、給気用電磁弁と排気用電磁弁とを開閉することによりエアの圧力を設定圧力に制御する電空レギュレータにおいて、装置サイズを抑制しつつ、大流量制御や高圧制御に対応でき、出力先の容積の大小にかかわらず、良好な応答性を確保できる技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電空レギュレータの回路図である。
図2】電空レギュレータの外観斜視図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5】排気用電磁弁の要部断面図である。
図6図5のD部拡大図である。
図7】排気用電磁弁の弁閉状態を説明する図である。
図8】排気用電磁弁の弁開動作を説明する図である。
図9】排気用電磁弁の弁閉動作を説明する図である。
図10】比較例の電空レギュレータの外観斜視図である。
図11】実施例と比較例との圧力応答比較を示すグラフである。
図12】実施例と比較例との圧力応答比較を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書にて開示する電空レギュレータの一実施形態について図面を参照しながら説明する。本明細書では、入力されたエアを設定圧力に調整して出力する電空レギュレータを開示する。
【0024】
図1に示すように、本形態の電空レギュレータ1は、給気用電磁弁12と、排気用電磁弁13と、圧力センサ14と、を備え、これらがコントローラ20に接続されている。電空レギュレータ1は、入力ポート11と、排気ポート15と、出力ポート17とを備えている。
【0025】
第1流路18は、入力ポート11と出力ポート17とを接続する流路である。第1流路18は、上流側から給気用電磁弁12と圧力センサ14とが配設されている。給気用電磁弁12は、電空レギュレータ1に入力するエアを制御する。圧力センサ14は、出力ポート17から出力されるエアの圧力、すなわち、電空レギュレータ1によって制御されたエアの圧力(以下「制御圧力」とする)を検出する。第2流路19は、給気用電磁弁12と圧力センサ14との間で第1流路18から分岐し、排気ポート15に接続している。排気用電磁弁13は、第2流路19に配設され、排気ポート15から排気するエアを制御する。第1流路18および第2流路19は、「制御対象となるエアが流れる流路」の一例である。
【0026】
コントローラ20には、設定圧力が設定されている。本形態のコントローラ20は、制御圧力を含む圧力センサ信号を圧力センサ14から受信し、設定圧力と制御圧力との差に応じて給気用電磁弁12と排気用電磁弁13とをPWM制御する。
【0027】
電空レギュレータ1は、例えば、シリンジ105からシール剤を一定量ずつ吐出するディスペンサ装置100に使用される。電空レギュレータ1は、入力ポート11がエア供給源102に接続され、出力ポート17がシリンジ105に接続される。排気ポート15は大気に開放されている。本形態のコントローラ20は、ディスペンサ装置100を制御する上位コントローラ110に接続されている。コントローラ20は、設定圧力を含む入力信号を上位コントローラ110から受信することによって設定圧力が設定される。シリンジ105は、電空レギュレータ1からエアが供給されると、そのエアの圧力によってシール剤を吐出する。
【0028】
なお、シリンジ105から吐出する液体は、シール剤に限らない。液体は、例えば、薬品や液晶でもよい。また、設定圧力は、液体の種類や特性などに応じて任意に設定できる。例えば、設定圧力は、粘度の高い液体の方が粘度の低い液体より高い値に設定される。本形態では、設定圧力は、電空レギュレータ1が操作部を備える場合には、その操作部を用いて電空レギュレータ1側で設定圧力を設定してもよい。
【0029】
電空レギュレータ1の構成を具体的に説明する。図2に示すように、電空レギュレータ1は、給気用電磁弁12と、排気用電磁弁13と、が連結ブロック22を介して連結されている。給気用電磁弁12は、給気ブロック21にソレノイド部4Aが取り付けられている。排気用電磁弁13は、排気ブロック23にソレノイド部4Bが取り付けられている。
【0030】
給気ブロック21と、連結ブロック22と、排気ブロック23とは、それぞれ、直方体形状に形成され、複数本のボルト24を用いて一体的に連結されている。給気ブロック21の側面には、第1流入ポート211が開口している。第1流入ポート211は、図1に示す入力ポート11を構成する。排気ブロック23の側面には、出力用流出ポート233と、排気用流出ポート238と、が設けられている。出力用流出ポート233は、図1に示す出力ポート17を構成する。排気用流出ポート238は、図1に示す排気ポート15を構成する。
【0031】
なお、図1に示す圧力センサ14は、出力用流出ポート233に内設されてもよいし、出力用流出ポート233をシリンジ105に接続する流路などに外付けされてもよい。また、コントローラ20は、電空レギュレータ1に搭載されていてもよいし、電空レギュレータ1と別の位置に設置されていてもよい。コントローラ20は、上位コントローラ110に組み込まれていてもよい。
【0032】
図3に示すように、給気ブロック21は、ソレノイド部4Aが取り付けられる図中上面21aに、第1開口部214が円柱形状に設けられている。給気ブロック21は、第1開口部214と同軸上に第1弁孔213が形成されている。第1開口部214の底面には、第1弁孔213が開口する開口部の外周に沿って、第1弁座219が突設されている。
【0033】
図4に示すように、給気ブロック21は、第1流入ポート211が第1流入流路212を介して第1弁孔213に連通している。給気ブロック21は、第1弁孔213の径方向外側に、第1縦連通孔215が設けられている。給気ブロック21は、第1流入ポート211が設けられた側面に隣接する側面に、第1流出ポート217が設けられている。第1流出ポート217は、第1流出流路216を介して第1縦連通孔215に連通している。
【0034】
図3に示すように、排気ブロック23は、ソレノイド部4Bが取り付けられる図中上面23aに、第2開口部235が円柱形状に設けられている。排気ブロック23は、第2開口部235と同軸上に第2弁孔234が形成されている。第2開口部235の底面には、第2弁孔234が開口する開口部の外周に沿って、第2弁座239が突設されている。
【0035】
図4に示すように、排気ブロック23には、出力用流出ポート233と同軸上に出力流路232が形成されている。出力流路232は、排気ブロック23に貫通して設けられている。出力流路232は、第2弁孔234に重なって形成されており、出力流路232に流入したエアが第2弁孔234側へ流れることができる。排気ブロック23は、第2弁孔234を挟んで出力流路232と反対側であって、第2弁孔234の径方向外側に、第2縦連通孔236が設けられている。排気用流出ポート238は、排気流路237を介して第2縦連通孔236に連通している。
【0036】
給気用電磁弁12の第1流出ポート217と、排気用電磁弁13の出力流路232とは、連結ブロック22の内部流路221に接続されている。電空レギュレータ1は、第1流入流路212と、第1弁孔213と、第1開口部214と、第1縦連通孔215と、第1流出流路216と、第1流出ポート217と、内部流路221と、出力流路232と、によって、図1に示す第1流路18が構成されている。また、電空レギュレータ1は、第2弁孔234と、第2開口部235と、第2縦連通孔236と、排気流路237と、によって、図1に示す第2流路19が構成されている。
【0037】
図3に示すように、給気用電磁弁12のソレノイド部4Aには、弁体組立31Aが一体的に取り付けられている。ソレノイド部4Aは、弁体組立31Aを第1開口部214に配置した状態で給気ブロック21に固定され、弁体組立31Aを第1弁座219に当接または離間させる駆動力を弁体組立31Aに付与する。ソレノイド部4Aと給気ブロック21との間には第1弁室210が形成されている。第3環状シール部材63は、第1開口部214の径方向外側に沿ってソレノイド部4Aと給気ブロック21との間に配設され、第1弁室210を外気から遮断している。
【0038】
排気用電磁弁13のソレノイド部4Bには、弁体組立31Bが一体的に取り付けられている。ソレノイド部4Bは、弁体組立31Bを第2開口部235に配置した状態で排気ブロック23に固定され、弁体組立31Bを第2弁座239に当接または離間させる駆動力を弁体組立31Bに付与する。ソレノイド部4Bと排気ブロック23との間には第2弁室230が形成されている。第3環状シール部材63は、第2開口部235の径方向外側に沿ってソレノイド部4Bと排気ブロック23との間に配設され、第2弁室230を外気から遮断している。ソレノイド部4Aおよびソレノイド部4Bは、それぞれ、「ソレノイド部」の一例である。弁体組立31Aおよび弁体組立31Bは、それぞれ、「弁体」の一例である。第1弁座219および第2弁座239は、それぞれ、「弁座」の一例である。
【0039】
ソレノイド部4A,4Bおよび弁体組立31A,31Bの構成を説明する。ソレノイド部4Aとソレノイド部4Bとは、同様に構成されている。また、弁体組立31Aと弁体組立31Bとは、同様に構成されている。ここでは、ソレノイド部4Bおよび弁体組立31Bの構成を図5に基づいて説明し、ソレノイド部4Aおよび弁体組立31Aについては説明を省略する。
【0040】
ソレノイド部4Bは、コイル組立41と、固定鉄心44と、可動鉄心45と、スプリング47と、取付ブロック51と、を有する。可動鉄心45は「可動部」の一例である。
【0041】
コイル組立41は、中空穴部42aを備えるコイルボビン42の外周面に、コイル43が巻回されている。コイルボビン42の中空穴部42aは、弁座側に位置する図中下端開口部からパイプ46が装填されている。固定鉄心44は、中空穴部42aの図中上端開口部に固定され、下端部外周面がパイプ46に接している。可動鉄心45は、固定鉄心44と反対側からパイプ46に直線往復運動可能に装填されている。可動鉄心45は、弁体組立31Bと結合され、スプリング47によって第2弁座239側に向かって常時付勢されている。ソレノイド部4Bは、コイル組立41への通電によって固定鉄心44が励磁され、スプリング47に抗して可動鉄心45を吸引し、弁体組立31Bを第2弁座239から離間させることができる。
【0042】
取付ブロック51は、直方体形状に形成され、コイル組立41と排気ブロック23との間に配置されている。取付ブロック51には、可動鉄心収容凹部51aと、接続穴51bと、弁体収容凹部51cと、が同軸上に形成されている。弁体収容凹部51cは「弁体収容部」の一例である。
【0043】
可動鉄心収容凹部51aは、取付ブロック51のコイル組立41側に位置する図中上面51dに形成されている。可動鉄心収容凹部51aは、コイル組立41に塞がれて、可動鉄心45の下端部が配置される空間S3を形成している。可動鉄心45の下端部は、「可動部の一部」の一例である。空間S3は「第2空間部」の一例である。空間S3は、可動鉄心45の下端部直径より大径に設けられ、また、可動鉄心45が軸線方向に移動できる深さで形成されている。第1環状シール部材61は、可動鉄心収容凹部51aの径方向外側に沿ってコイル組立41と取付ブロック51との間に配置され、空間S3を外気から遮断している。
【0044】
固定鉄心44と可動鉄心45との間には空間S4が設けられている。空間S4は「第3空間部」の一例である。可動鉄心45には、空間S3と空間S4とを連通させる第2連通流路45cが形成されている。第2連通流路45cは、横流路45aと縦流路45bとを含む。縦流路45bは、可動鉄心45の軸線に沿って形成されている。横流路45aは、縦流路45bに対して直交する方向に沿って可動鉄心45に貫通して設けられている。横流路45aは、後述する雌ネジ孔45e上に形成されており、雌ネジ孔45eと後述する連結ロッド33との間に形成される空間S5に連通している。可動鉄心45の外周面には、摩擦抵抗を小さくするための摩擦低減部材49が配置されている。横流路45aは、摩擦低減部材49よりも空間S3側に開口し、可動鉄心45とパイプ46との間の隙間S6を介して空間S5と空間S3とを常時連通させている。
【0045】
弁体収容凹部51cは、取付ブロック51の排気ブロック23側に位置する図中下面51eに形成されている。弁体収容凹部51cは、第2弁座239側に開口している。弁体収容凹部51cには、弁体組立31Bが移動可能に収容されている。
【0046】
図6に示すように、弁体組立31Bは、摺動部材32と、連結ロッド33と、を含む。摺動部材32は「弁座当接部材」の一例である。摺動部材32は、一方に開口する有底孔32cを有するコップ形状をなす。摺動部材32は、有底孔32cの開口部をソレノイド部4B側に向けた姿勢で、弁体収容凹部51cに摺動可能に装填されている。摺動部材32は、有底孔32cの周壁と弁体収容凹部51cの内壁とが常時重なる状態で弁体収容凹部51cに進退可能に装填されている。
【0047】
有底孔32cと弁体収容凹部51cとの間には空間S1が形成されている。空間S1は「第1空間部」の一例である。第2環状シール部材62は、摺動部材32の外周面と弁体収容凹部51cの内壁との間に配設され、空間S1を第1弁室210から遮断している。摺動部材32の閉鎖面中央には、連結ロッド33を挿通するための貫通穴32aが形成されている。
【0048】
連結ロッド33は、棒形状をなす。連結ロッド33の外周面には、鍔部33aが径方向外向きに突出して環状に設けられている。連結ロッド33は、有底孔32c側から貫通穴32aに挿通され、鍔部33aが有底孔32cの底面に突き当てられている。この状態において、連結ロッド33は、下端部が摺動部材32の外側に突出しており、その突出部分に止め輪35が装着されることにより、軸方向にがたつかないように摺動部材32に連結されている。
【0049】
連結ロッド33は、第2弁座239と反対側に位置する図中上端部の外周面に、雄ねじ部33eが設けられている。可動鉄心45は、第2弁座239側に位置する端面に、雌ネジ孔45eが形成されている。弁体組立31Bは、連結ロッド33を弁体収容凹部51cから、接続穴51b、可動鉄心収容凹部51aへと挿通し、連結ロッド33の雄ねじ部33eを可動鉄心45の雌ネジ孔45eに締結することにより、可動鉄心45に結合されている。
【0050】
連結ロッド33は、接続穴51bに遊嵌され、連結ロッド33と接続穴51bの内周面との間に空間S2が形成されている。弁閉時、可動鉄心45が接続穴51bの開口部を開放する位置で停止し、空間S1が空間S2を介して空間S3と連通している。
【0051】
弁体組立31Bには、弁閉時に、一次側(第2弁孔234)を空間S1に連通させる第1連通流路36が形成されている。第1連通流路36は、弁体組立31Bが第2弁座239に当接する当接部より内側に開口している。本形態の第1連通流路36は、連結ロッド33に形成されている。
【0052】
第1連通流路36は、縦流路37と横流路38とを備える。縦流路37は、連結ロッド33の第2弁座239側に位置する端面から連結ロッド33の軸線方向に沿って形成されている。縦流路37は、摺動部材32の有底孔32cに対応する位置まで形成されている。横流路38は、連結ロッド33の軸線方向に対して直交する方向に沿って連結ロッド33に貫通して形成され、空間S1と常時連通している。
【0053】
摺動部材32は、第2弁座239側に位置する端部外周面に沿って、弁シート取付部32dが径方向外向きに突出して設けられている。弁シート取付部32dは、第2弁座239側に位置する面の外縁部に沿って段差部32eが形成され、環状の弁シート34が装着されている。ソレノイド部4Bのスプリング47は、空間S1に圧縮した状態で配置され、第2弁座239にシールするシール荷重を弁体組立31Bに付与している。
【0054】
ソレノイド部4Bは、コイル組立41に通電されると、固定鉄心44がスプリング47に抗して可動鉄心45を吸引し、弁体組立31Bを第2弁座239から離間させる。この際、弁体組立31Bが取付ブロック51に衝突する衝突音や衝突荷重を抑制するため、取付ブロック51は、弁シート取付部32dに対応する位置に緩衝部材65が配設されている。なお、緩衝部材65は、第2環状シール部材62の脱落を防止する機能も有する。
【0055】
続いて、電空レギュレータ1の動作を説明する。例えば、電空レギュレータ1のコントローラ20は、上位コントローラ110から入力信号を受信しない場合、給気用電磁弁12を非通電にして弁を閉じ、排気用電磁弁13に通電して弁を開く。これにより、電空レギュレータ1は、入力ポート11(第1流入ポート211)に供給されるエアが給気用電磁弁12によって遮断され、出力ポート17(出力用流出ポート233)からエアを出力しない。
【0056】
例えば、電空レギュレータ1のコントローラ20は、上位コントローラ110から入力信号を受信すると、給気用電磁弁12に通電して弁を開き、排気用電磁弁13を非通電にして弁を閉じる。これにより、電空レギュレータ1は、入力ポート11(第1流入ポート211)に供給されたエアが、給気用電磁弁12を介して入力する。入力したエアは、出力流路232を流れ、出力ポート17(出力用流出ポート233)から出力される。
【0057】
コントローラ20は、圧力センサ14から圧力センサ信号を受信し、圧力センサ信号に含まれる制御圧力と、入力信号に含まれる設定圧力と、の差に基づいて、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13をPWM制御する。
【0058】
例えば、制御圧力が設定圧力より小さい場合、コントローラ20は、給気用電磁弁12の弁開時間を排気用電磁弁13の弁開時間より長くする。給気用電磁弁12が供給するエアが、排気ポート15(排気用流出ポート238)から排出されるエアより多いことで、出力ポート17(出力用流出ポート233))へ流れるエアが増え、出力するエアの圧力が上昇する。一方、例えば、制御圧力が設定圧力より大きい場合、コントローラ20は、給気用電磁弁12の弁開時間を排気用電磁弁13の弁開時間より短くする。給気用電磁弁12が供給するエアが、排気ポート15(排気用流出ポート238)から排出されるエアより少ないことで、出力ポート17へ流れるエアが減り、出力するエアの圧力が低下する。
【0059】
このように、電空レギュレータ1は、ソレノイド部4A,4Bへの通電に応じて給気用電磁弁12と排気用電磁弁13とが開閉してエアの圧力を設定圧力に直接制御している。そのため、電空レギュレータ1は、パイロット室にパイロットエアを給排気することによって主弁部の弁開度を調整し、エアの圧力を設定圧力に制御するパイロット式電空レギュレータよりも応答遅れが小さく、エアの圧力を設定圧力に応答性良く制御できる。
【0060】
出力先の容積が小さいほど、応答時間が短くなる。しかし、電空レギュレータ1は、応答遅れが小さいので、応答遅れが全応答時間に占める割合が小さい。そのため、出力先の容積の大小にかかわらず、電空レギュレータ1は、応答性が良い。
【0061】
電空レギュレータ1は、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13に設けられた第1弁座219の弁座開口部219aおよび第2弁座239の弁座開口部239aの開口面積(以下「弁座開口面積」とする)を拡大することで、制御流量を増加させることができる。
【0062】
図3に示すように、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13は、弁閉時、一次側(第1弁孔213,第2弁孔234)のエアによって、第1弁座219および第2弁座239から離間する方向(以下「弁開方向」とする)の力が弁体組立31Aおよび弁体組立31Bに作用する。本形態の給気用電磁弁12および排気用電磁弁13は、その弁開方向の力と反対向きの力が弁体組立31A,31Bに作用するように、構成されている。給気用電磁弁12および排気用電磁弁13は、同様の機能を有するので、以下では排気用電磁弁13について説明し、給気用電磁弁12の説明は適宜割愛する。
【0063】
例えば図7に示すように、排気用電磁弁13の弁体組立31Bは、弁閉時、第2弁座239側に位置する面(以下「弁座側端面」とする)のうち、第2弁座239に当接する当接部より内側の領域に、第2弁孔234に流入したエアによって弁開方向の力N1,N2,N3が作用する。また、弁体組立31Bは、弁閉時、弁座側端面のうち、第2弁座239に当接する当接部より外側の領域に、第2弁室230のエアによって弁開方向の力N101が作用する。
【0064】
弁シート取付部32dは、弁体組立31Bの下端外周面から外向きに突出しており、第2弁室230のエアによって弁閉方向の力L101が付与される。弁体組立31Bは、弁体収容凹部51cに摺動可能に挿入される部分の外径寸法Kが、弁座開口部239aの開口径Eとほぼ同じである。そのため、弁体組立31Bは、弁シート取付部32dの第2弁座239と反対側に位置する面の面積が、弁座側端面のうち第2弁座239に当接する当接部より外側に位置する部分の面積と、同程度になる。よって、弁体組立31Bは、弁閉時、弁閉方向の力L101が弁開方向の力N101と釣り合い、弁開方向の力N101が弁閉方向の力N101に相殺されてゼロになる。
【0065】
また、図中M1に示すように、排気用電磁弁13は、弁閉時、第2弁孔234に流入したエアが、第1連通流路36を介して、弁体組立31Bが第2弁座239に当接する当接部より二次側に設けられた空間S1へ流れ込む。これにより、空間S1の内圧が上昇し、弁体組立31Bには、弁閉方向の力L1,L2が作用する。
【0066】
弁体組立31Bは、有底孔32cの底部に作用する弁閉方向の力L1によって、弁座側端面のうち、有底孔32cに対応する部分に作用する弁開方向の力N1が相殺される。また、弁体組立31Bは、有底孔32cの開口部外周に設けられた端面に作用する弁閉方向の力L2によって、弁座側端面のうち、有底孔32cに対応する部分と第2弁座239に当接する当接部との間の部分に作用する弁開方向の力N2が、相殺される。
【0067】
このように、排気用電磁弁13は、弁閉時、弁体組立31Bの第2弁座239に当接する当接部より内側に作用する弁開方向の力が、空間S1に流入したエアにより弁体組立31Bに付与される弁閉方向の力L1,L2によって相殺され、小さくなる。そのため、排気用電磁弁13は、弁座開口面積が拡大されても、スプリング47のバネ力の増加が抑制され、コイル組立41の肥大化が抑制される。つまり、排気用電磁弁13は、弁座開口面積を拡大しても、サイズアップが抑制される。
【0068】
特に、本形態の排気用電磁弁13は、有底孔32cの周壁の外径寸法Fが、弁座開口部239aの開口径Eと同程度に設定されている。つまり、空間S1は、弁体組立31Bが第2弁座239に当接または離間する方向に対して直交する方向に切断した空間断面積が、弁座開口面積と同程度である。そのため、弁閉時に、弁体組立31Bに作用する弁閉方向の力L1,L2が、弁体組立31Bに作用する弁開方向の力と同程度になり、弁体組立31Bに対して弁開方向に作用する力が小さくなる。よって、排気用電磁弁13は、弁座開口面積が拡大されても、ソレノイド部4Bの肥大化が抑制される。つまり、排気用電磁弁13は、弁座開口面積の拡大によるサイズアップが抑制される。
【0069】
排気用電磁弁13の弁体組立31Bは、弁閉時、弁座開口部239aに位置する連結ロッド33の先端部に、弁開方向の力N3が作用する。また、弁体組立31Bは、第1連通流路36に流通するエアによって、横流路38の流路壁に弁開方向の力N5が作用する。連結ロッド33は、空間S1に貫き通されて可動鉄心45に連結されている。そのため、弁体組立31Bには、空間S1に流入したエアによって、弁開方向の力N3,N5に対応する弁閉方向の力が作用しない。
【0070】
しかし、空間S1は、空間S2と空間S3と隙間S6と第2連通流路45cの横流路45aとを介して、雌ネジ孔45eと連結ロッド33との間に形成された空間S5に連通している。そのため、空間S1に流入したエアは、空間S2と空間S3と横流路45aとを介して空間S5に流入する。連結ロッド33には、空間S5に流入したエアによって、弁閉方向の力L3,L5が作用する。これにより、弁体組立31Bは、弁開方向の力N3,N5と弁閉方向の力L3,L5とが釣り合い、弁開方向の力N3,N5が弁閉方向の力L3,L5によって相殺される。
【0071】
弁体組立31Bは、可動鉄心45に結合され、可動鉄心45と一体的に移動する。そのため、可動鉄心45に作用する力が弁体組立31Bにも作用する。
【0072】
可動鉄心45には、空間S1から空間S2を介して空間S3に流入したエアによって、弁開方向の力N7が作用する。また、第2連通流路45cの流路径Hは、雌ネジ孔45eの孔径Iより小さい。そのため、可動鉄心45は、第2連通流路45cの縦流路45bと雌ネジ孔45eとの間の段差部分に、弁開方向の力N6が作用する。
【0073】
しかし、空間S3は、第2連通流路45cを介して、可動鉄心45と固定鉄心44との間の空間S4と連通している。また、空間S3は、可動鉄心45とパイプ46との間に形成される隙間S6を介して空間S4と連通している。そのため、空間S3のエアは、隙間S6と第2連通流路45cとを介して空間S4に流れ、可動鉄心45に対して弁閉方向の力L6,L7を付与する。
【0074】
可動鉄心45の固定鉄心44側に位置する端面には、第2連通流路45cの縦流路45bと同軸上に、凹孔45gが形成されている。凹孔45gの孔径Jは、雌ネジ孔45eの孔径Iと同じである。そのため、凹孔45gと縦流路45bとの間の段差部分の面積は、雌ネジ孔45eと縦流路45bとの間の段差部分の面積と同程度となる。よって、凹孔45gと縦流路45bとの間の段差部分に作用する弁閉方向の力L6が、雌ネジ孔45eと縦流路45bとの間の段差部分に作用する弁開方向の力N6と釣り合う。これにより、可動鉄心45は、弁開方向の力L6が弁閉方向の力L6によって相殺される。
【0075】
また、可動鉄心45の固定鉄心44側に位置する端面は、凹孔45gの外側の部分に、空間S4に流入したエアによって、弁閉方向の力L7が作用する。弁閉方向の力L7は、空間S3のエアによって可動鉄心45に付与される弁開方向の力N7と釣り合う。そのため、可動鉄心45は、弁開方向の力N7が弁閉方向の力L7によって相殺される。
【0076】
このように、排気用電磁弁13は、可動鉄心45を介して弁体組立31Bに作用する弁開方向の力N6,N7が、空間S4に流れたエアによって可動鉄心45に付与される弁閉方向の力L6,L7によって相殺されるので、弁体組立31Bおよび可動鉄心45の全体として弁開方向の力がゼロになる。よって、排気用電磁弁13は、エアを大流量制御できるように弁座開口面積が拡大されても、スプリング47に抗して可動鉄心45を吸引可能なサイズのソレノイド部4Bを使用すればよく、バルブサイズが抑制される。
【0077】
また例えば、シリンジ105が吐出する液体の粘性が高く、電空レギュレータ1が高圧エアを制御する場合、排気用電磁弁13は、高圧エアに抗して弁閉できるように、スプリング47のバネ力が大きくされる。この場合でも、排気用電磁弁13は、弁閉時、弁体組立31Bおよび可動鉄心45に作用する弁開方向の力と弁閉方向の力とが釣り合うので、高圧エア対応のスプリング47に抗して可動鉄心45を吸引できるサイズのソレノイド部4Bを使用すればよい。よって、排気用電磁弁13は、バルブサイズを抑制しつつ、高圧エアに対応できる。
【0078】
給気用電磁弁12も、排気用電磁弁13と同様に、弁座開口面積が拡大されたり、高圧エアを制御したりしても、バルブサイズが抑制される。よって、電空レギュレータ1は、装置サイズを抑制しつつ、大流量制御および高圧制御に対応できる。
【0079】
なお、例えば、排気用電磁弁13は、第2環状シール部材62によって弁体組立31Bと取付ブロック51との間がシールされている。そのため、弁閉時に、空間S1から第2弁室230へエアが漏れない。給気用電磁弁12も同様である。よって、電空レギュレータ1は、給気用電磁弁12と排気用電磁弁13とを開閉して、エアの圧力を設定圧力にフィードバック制御することができる。
【0080】
例えば、排気用電磁弁13は、弁閉時に空間S1にエアが流入している状態で、ソレノイド部4Bに通電された場合、図8のX1に示すように、可動鉄心45が固定鉄心44に吸引されて上昇する。
【0081】
この際、空間S4のエアが可動鉄心45によって加圧される。この場合、図8のM14に示すように、空間S4のエアは、第2連通流路45cと空間S5を介して空間S3へ流動する。また、空間S4のエアは、隙間S6を介して空間S3へ流動する。空間S3の容積は、可動鉄心45の弁開方向への移動に応じて拡大される。そのため、空間S3は、空間S4から第2連通流路45cを介して流入するエア、および、隙間S6を介して流入するエアを、受け入れることができる。よって、排気用電磁弁13は、コイル組立41への通電に応じて可動鉄心45が応答性良く弁開方向に動き出すことが可能である。
【0082】
弁体組立31Bが可動鉄心45と一体的に弁開方向に動き出すと、空間S1の容積が小さくなり、空間S1のエアが加圧される。空間S1は、第2環状シール部材62によって第2弁室230から遮断されているが、空間S2を介して空間S3に連通している。また、空間S1は、第1連通流路36を介して弁体組立31Bの外部に連通している。そのため、図8のM12、M11に示すように、空間S1のエアは、加圧に応じて、空間S3へ逃げたり、第1連通流路36を介して弁体組立31Bの外部に排出されたりすることにより、エアクッションのようになることが回避される。よって、弁体組立31Bは、ソレノイド部4Bへの通電時に応答性良く弁開方向に動き出すことができる。
【0083】
弁開状態の排気用電磁弁13は、ソレノイド部4Bへの通電が停止されると、図9のX2に示すように、可動鉄心45がスプリング47に付勢されて弁体組立31Bと一体的に弁閉方向に下降する。この際、空間S3の容積が可動鉄心45の下降に応じて縮小され、図9のM24に示すように、空間S3のエアが第2連通流路45cを介して空間S4へ流動する。また、空間S3のエアは、隙間S6を介して空間S4へ流動する。なお、空間S3から空間S4に流動しきれなかったエアは、図9のM22に示すように、空間S2を介して空間S1へ流動できる。よって、可動鉄心45が応答性良く弁閉方向に動き出すことが可能である。
【0084】
弁体組立31Bが可動鉄心45と一体的に弁閉方向に動き出すと、図9のM21に示すように、空間S1の容積拡大に応じて、エアが第1連通流路36を介して空間S1に流入する。よって、弁体組立31Bは、ソレノイド部4Bが非通電にされた場合にも、応答性良く弁閉方向に動き出すことができる。
【0085】
このように、排気用電磁弁13は、弁体組立31Bに第1連通流路36を形成し、弁体組立31Bに弁閉方向の力が作用するようにしても、電気信号に応じて応答性良く開閉してエアの排気を制御できる。給気用電磁弁12も同様に電気信号に応じて応答性良く開閉してエアの供給を制御できる。よって、電空レギュレータ1は、応答遅れが小さく、出力先の容積の大小にかかわらず、エアの圧力を設定圧力に短時間で制御できる。
【0086】
次に、圧力応答試験について説明する。圧力応答試験では、図2に示す実施例の電空レギュレータ1と、図10に示す比較例の電空レギュレータ1001と、を使用した。電空レギュレータ1001は、パイロット式電空レギュレータである。実施例の電空レギュレータ1は、比較例の電空レギュレータ1001と同じ流量を制御できるように、給気用電磁弁12と排気用電磁弁13との弁座開口面積が設定されている。実施例の電空レギュレータ1は、比較例の電空レギュレータ1001と装置サイズが同程度である。具体的には、実施例の電空レギュレータ1は、縦幅X11が48mm、横幅X12が93mm、高さX13が73mmに設定されている。比較例の電空レギュレータ1001は、縦幅X21が50mm、横幅X22が94mm、高さX23が72mmに設定されている。
【0087】
圧力応答試験の試験装置では、エア供給源と、エアの出力先となる容器との間に、試験対象となる電空レギュレータ1または電空レギュレータ1001を設置した。そして、試験対象と容器との間には、圧力センサを設置した。圧力応答試験は、容積が15ccの小容器を使用する場合と、容積が315ccの大容器を使用する場合のそれぞれについて行った。
【0088】
圧力応答試験では、設定圧力を「0.5MPa」に設定し、電空レギュレータ1,1001にエアの圧力を制御させ、制御圧力の変化を調べた。小容器を使用した場合の圧力応答試験の試験結果を図11に示す。大容器を使用した場合の圧力応答試験の試験結果を図12に示す。
【0089】
図11に示すように、小容器を使用した場合の圧力応答試験では、実施例は、エアを設定圧力に制御するのに約40msecかかった。一方、比較例は、図11の破線に示すように、エアを設定圧力に制御するのに約85msecかかった。よって、実施例は、比較例と同程度の装置サイズでも、比較例の半分以下の時間でエアを設定圧力に制御できる。
【0090】
また、図12に示すように、大容器を使用した場合の圧力応答試験では、実施例も比較例も、エアを設定圧力に制御するのに、約250msecかかった。よって、実施例は、比較例と同じ装置サイズになるように給気用電磁弁12のソレノイド部4Aと排気用電磁弁13のソレノイド部4Bとが小型化されていても、比較例と同様にエアの圧力を設定圧力に制御できる。
【0091】
ここで、図11および図12に示すように、比較例は、出力先の容積が小さい場合、実施例より応答遅れが顕著になる。実施例は、図11のP1に示すように、エアの出力先の容積が小さいと、オーバーシュートが発生する。しかし、実施例は、エアを制御する給気用電磁弁12と排気用電磁弁13とがPWM制御されることによって、オーバーシュートが短時間で改善されている。よって、実施例は、エアの出力先の容積が小さく、オーバーシュートが発生しやすい場合でも、比較例よりも応答性が良い。
【0092】
以上説明したように、本形態の電空レギュレータ1は、給気用電磁弁12と排気用電磁弁13とが開閉してエアの圧力を設定圧力に制御する直動式電空レギュレータであるので、応答遅れが小さく、出力先の容積の大小にかかわらず、良好な応答性を確保できる。給気用電磁弁12および排気用電磁弁13は、弁閉時、一次側のエアが第1連通流路36を介して空間S1に流入することにより、弁閉方向の力L1,L2が弁体組立31A,31Bに作用する。給気用電磁弁12および排気用電磁弁13の各弁体組立31A,31Bは、弁閉時、弁開方向に作用する力が弁閉方向の力によって相殺されて小さくなる。ソレノイド部4A,4Bは、相殺後の弁開方向の力に応じたサイズにすれば良く、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13のサイズアップが抑制される。これは、弁座開口面積を拡大して大流量制御可能にした場合や、電空レギュレータ1がエアを高圧制御する場合も、同様である。よって、電空レギュレータ1は、装置サイズを抑制しつつ、大流量制御や高圧制御に対応できる。
【0093】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。例えば、電空レギュレータ1は、ディスペンサ装置以外の空圧制御機器に使用されてもよい。
【0094】
例えば、空間S1の空間断面積は弁座開口面積と同程度でなくてもよい。ただし、空間S1の空間断面積が弁座開口面積と同程度であることで、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13は、弁座開口面積を拡大しても、弁閉時に弁体組立31A,31Bに作用する弁開方向の力と弁閉方向の力との差が小さくなって、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13のサイズアップが抑制される。これによれば、電空レギュレータ1は、装置サイズを抑制しつつ、制御流量を増加させることができる。
【0095】
例えば、摺動部材32は、有底孔32cを備えなくてもよい。ただし、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13は、ソレノイド部4A,4Bの弁体収容凹部51cに進退可能に収容される弁体組立31A,31Bに有底孔32cを設け、弁体収容部41cと有底孔32cとによって空間S1を形成することで、バルブサイズを抑制しつつ、空間S1の容積を広く確保できる。これにより、弁閉時に、空間S1に流入したエアが弁体組立31A,31Bを弁閉方向に過剰に加圧することを回避し、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13が電気信号に応じて応答性良く開閉することが可能になる。このような電空レギュレータ1によれば、応答性良くエアを設定圧力に制御できる。
【0096】
例えば、可動鉄心収容凹部51a、接続穴51b、弁体収容凹部51cの代わりに、可動鉄心45が挿通される挿通穴を取付ブロック51に形成し、可動鉄心45の下端部が弁室に配置されるようにしてもよい。この場合、可動鉄心45は、弁体が取り付けられ、その弁体の反弁座側に第1空間部が形成されてもよい。その第1空間部に連通する第1連通路を弁体が形成されていてもよい。ただし、例えば、弁体組立31Bが可動鉄心45に結合され、第2弁室230に配置されるようにすることで、弁座開口面積が異なるモデルの排気用電磁弁13について、摺動部材32を交換すれば、ソレノイド部4Bと連結ロッド33とを共用できるようになる。給気用電磁弁12も同様である。
【0097】
例えば、空間S1と空間S3は、接続穴51bと別に設けた穴を介して連通していてもよい。ただし、連結ロッド33が挿通される接続穴51bを介して空間S1と空間S3とが連通することで、ソレノイド部4A,4Bを加工する手間が抑制される。
【0098】
例えば、可動鉄心45は第2連通流路45cが形成されていなくてもよい。ただし、給気用電磁弁12および排気用電磁弁13は、空間S3と空間S4とを連通させる第2連通流路45cが可動鉄心45に形成されていることで、エアが空間S3と空間S4との間で行き来しやすくなり、応答性良く開閉できる。このような給気用電磁弁12と排気用電磁弁13とを使用する電空レギュレータ1によれば、良好な応答性を確保できる。
【0099】
給気ブロック21と、連結ブロック22と、排気ブロック23の代わりに、マニホールドブロックを使用してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 電空レギュレータ
4A,4B ソレノイド部
12 給気用電磁弁
13 排気用電磁弁
31A,31B 弁体組立
36 第1連通流路
219 第1弁座
239 第2弁座
S1 空間
図1
図2
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図12