(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168281
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ドリップバッグ
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20241128BHJP
B65D 85/804 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
A47J31/06 160
B65D85/804 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084823
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】396015057
【氏名又は名称】大紀商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 充範
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA07
4B104BA43
4B104BA77
4B104EA20
(57)【要約】
【課題】通水濾過性シートで形成された袋本体、袋本体の表裏に設けられた掛止部材、及び袋本体に充填されている抽出材料を備え、袋本体に易開裂線が形成されているドリップバッグにおいて、易開裂線を極めて容易に開裂させる。
【解決手段】ドリップバッグ1Aが、通水濾過性シートで形成された袋本体11、袋本体11の対向する2面の外表面に設けられた薄板状材料からなる掛止部材20、及び袋本体11に充填されている抽出材料を備える。袋本体11は、その上辺に沿って易開裂線12を有し、前記2面の掛止部材20は、夫々、袋本体の上辺に沿う帯状のフラップ21を有する。フラップ21はその上辺部が袋本体に固定され、下辺部が袋本体11から引き起こし可能であり、その幅の中心線L0fを挟んで、フラップ21の上辺21aと下辺21bとを結ぶ方向の第1折れ線Lpと第2折れ線Lqを有する。第1折れ線Lpと第2折れ線Lqはハ字型を形成している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水濾過性シートで形成された袋本体、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状材料で形成された掛止部材、及び袋本体に充填されている抽出材料を備えたドリップバッグであって、
袋本体は、その上辺に沿って易開裂線を有し、
前記2面の掛止部材は、夫々、袋本体の上辺に沿って設けられた帯状のフラップを有し、該フラップはその上辺部が袋本体に固定され、下辺部が袋本体から引き起こし可能であり、
該フラップは、その幅の中心線を挟んで、フラップの下辺から上辺方向に延びた第1折れ線と第2折れ線を有し、
第1折れ線と第2折れ線とのフラップ上辺における間隔が、フラップ下辺における間隔よりも狭いドリップバッグ。
【請求項2】
ドリップバッグの一方の側辺が、袋本体を形成する通水濾過性シートの折山と、掛止部材を形成する薄板状材料の折山で形成され、前記2面の各掛止部材が、フラップの下方に掛止片を有し、該掛止片は掛止部材の折山寄り部分が固定され、掛止部材の折山と反対側の端部から引き起こし可能であり、掛止片の掛止部材の折山寄りの上端部から該折山に向かう第1の掛止部折れ線、該上端部から掛止部材の上辺に向かう第2の掛止部折れ線が形成され、ドリップバッグは、袋本体の開口後に第1の掛止部折れ線をドリップバッグの幅方向に押し込むことにより開口形状がロックされるものであり、
前記フラップの折れ線を前記折山に近い方から第1折れ線、第2折れ線とした場合に、
フラップを袋本体から引き起こし、上下を反転させた状態で第2の掛止部折れ線の延長線上にフラップの第1折れ線がある請求項1記載のドリップバッグ。
【請求項3】
前記2面の各掛止部材に、前記掛止片と袋本体の幅方向に並んだ第2の掛止片が形成され、
第2の掛止片の、掛止部材の折山寄りの上端部からフラップの幅の中心線に近づきつつフラップに向かう第3bの掛止部折れ線と、該第3bの掛止部折れ線のフラップ寄りの端点又はその近傍から、フラップの幅の中心線から離れつつフラップに向かう第3aの掛止部折れ線が形成され、
フラップを袋本体から引き起こし、上下を反転させた状態で、第3aの掛止部折れ線の延長線上にフラップの第2折れ線がある請求項2記載のドリップバッグ。
【請求項4】
ドリップバッグの開口形状の上面視において、表裏の掛止部材が前記側辺を頂点としてV字型に開く請求項2又は3記載のドリップバッグ。
【請求項5】
フラップの幅が、袋本体の1/2幅以上である請求項1又は2記載のドリップバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ等の容器に掛止することにより、容易にドリップ式でコーヒー、紅茶、緑茶、漢方薬等の抽出液を得られるようにするドリップバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
一杯分のコーヒーの抽出を手軽に行えるようにすることを目的として、コーヒー粉を充填した通水性の袋本体と、その袋本体をカップに掛けられるようにするための薄板状材料で形成された掛止部材とを備えた使い捨てのドリップバッグが種々の製品形態で市場に出回っている。
【0003】
例えば、袋本体の対向する2面の外表面(以下、袋本体の表裏ともいう)に引き起こし可能な掛止部を形成した掛止部材を備えるドリップバッグであって、袋本体には該袋本体の上辺に沿って易開裂線を設けると共に、袋本体の表裏の掛止部材には易開裂線の近傍から袋本体底辺方向に延びたフラップを、該フラップの下辺部が引き起こされるように設け、袋本体の開封時に袋本体の表裏のフラップを該フラップの下辺部から摘まみ上げ、互いに反対方向に引っ張ることにより易開裂線を開裂させるものが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-6490号公報
【特許文献2】特開2019-48169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載されているように、表裏の袋本体の掛止部材に易開裂線の近傍から袋本体底辺方向に延びたフラップを設け、これらフラップを互いに反対方向に引っ張ると、フラップよりも袋本体底辺寄りにある掛止部を袋本体から引き起こして互いに反対方向に引っ張るよりも易開裂線が開裂しやすくなる。
【0006】
しかしながら、この場合にも表裏のフラップを引っ張る力のかけ具合によっては内容物が飛び散る虞がある。そのため、開封時に内容物が飛び散らないようにするには、フラップを互いに反対方向に引っ張る力を加減しなくてはならないという煩雑さがある。
【0007】
このような従来技術の課題に対し、本発明は、ドリップバッグの袋本体の上辺に沿って形成された易開裂線を極めて容易に、かつ内容物を飛び散らせることなく開裂させることができるドリップバッグの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、袋本体の上辺に沿って易開裂線を形成すると共に、袋本体の表裏の掛止部材には袋本体の上辺に沿ってフラップを形成し、フラップの袋本体底辺側に袋本体をカップに掛止させる掛止部を形成する場合に、(i)袋本体の表裏のフラップを帯状とし、表裏のフラップのそれぞれにハ字型に第1折れ線と第2折れ線を形成すると、フラップを袋本体から引き起こし、次いでフラップの幅方向の中央部でフラップの上辺近傍を袋本体の内側に押し込むことが容易となり、さらに、この押し込みにより袋本体の内容物が飛び散ることなく易開裂線が極めて容易に開裂すること、(ii)この押し込みによりフラップは上下が反転してフラップが袋本体の内向きの開口部壁となり、フラップによる開口部壁は、袋本体の表裏の掛止部材の間隔が広げられることで前記第1折れ線と第2折れ線で屈曲し、開口形状が安定すること、(iii)このフラップによるドリップバッグの開口状態は開口面が多角形の漏斗状に錐形に広がることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、通水濾過性シートで形成された袋本体、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状材料からなる掛止部材、及び袋本体に充填されている抽出材料を備えたドリップバッグであって、
袋本体は、その上辺に沿って易開裂線を有し、
前記2面の掛止部材は、夫々、袋本体の上辺に沿って設けられた帯状のフラップを有し、該フラップはその上辺部が袋本体に固定され、下辺部が袋本体から引き起こし可能であり、
該フラップは、その幅の中心線を挟んで、フラップの下辺から上辺方向に延びた第1折れ線と第2折れ線を有し、
第1折れ線と第2折れ線とのフラップ上辺における間隔が、フラップ下辺における間隔よりも狭いドリップバッグを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フラップを摘まんで袋本体から引き起こし、そのままフラップの上辺近傍を袋本体の内側に押し込むことにより、極めて容易に、袋本体の内容物を飛び散らせることなく易開裂線を開裂させることができる。この場合、押し込み力を格別に加減することは不要であり、単に押し込めばよい。
【0011】
さらに、この押し込みによりフラップの上下が反転し、フラップは袋本体の内向きの開口部壁となる。そして、ドリップバッグをカップに掛止させるに際して袋本体の表裏の掛止部材の間隔が広げられることでフラップは第1折れ線と第2折れ線が屈曲し、開口面が多角形の漏斗型となり、ドリップバッグの開口面積が広がる。したがって、袋本体が開口したドリップバッグへの注湯が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例のドリップバッグ1Aの平面図である。
【
図2】
図2は、実施例のドリップバッグ1Aの袋本体と掛止部材の展開図である。
【
図3】
図3は、フラップを引き起こし始めた状態の実施例のドリップバッグ1Aの斜視図である。
【
図4】
図4は、フラップをさらに引き起こした状態の実施例のドリップバッグ1Aの斜視図である。
【
図5】
図5は、引き起こしたフラップの上辺近傍を袋本体内へ押し込んだ状態のドリップバッグ1Aの斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、袋本体の開口後にカップに掛けたドリップバッグ1Aの斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、袋本体の開口後にカップに掛けたドリップバッグ1Aの側面図である。
【
図7】
図7は、ドリップバッグ製造用シート30Aの斜視図である。
【
図8】
図8は、ドリップバッグ製造用シート30Bの斜視図である。
【
図9】
図9は、実施例のドリップバッグ1Bの平面図である。
【
図10】
図10は、袋本体の開口後にカップに掛けたドリップバッグ1Bの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0014】
(ドリップバッグの全体構成)
図1は、本発明の一実施例のドリップバッグ1Aの未開封状態の平面図であり、
図2はこのドリップバッグ1Aの袋本体11と掛止部材20の展開図である。図中、ドットのハッチングを付した部分は袋本体11の通水濾過性シート10を表す。また、
図1及び
図2において、粗い斜めハッチングを付した部分は通水濾過性シート10と掛止部材20との貼着領域を表し、細かい斜めハッチングを付した部分は袋本体11の表面11xと背面11yとの貼着領域を表している。以降の図の細かい斜めハッチングと粗い斜めハッチングも同様の意味を有する。なお、通水濾過性シート10と掛止部材20との貼着領域は、掛止部材20を構成する薄板状材料の不透明性により、通常は掛止部材側からは視認することができない。
【0015】
図3はこのドリップバッグ1Aのフラップ21を袋本体11から引き起こし始めた状態、
図4はフラップ21をさらに引き起こした状態、
図5は、フラップ21の上辺近傍を袋本体11の内側に押し込み、易開裂線12を開裂させている状態の斜視図である。
図6Aは、易開裂線12で開口したドリップバッグ1Aをカップ100に掛止した状態の斜視図であり、
図6Bはその側面図である。
【0016】
このドリップバッグ1Aは、通水濾過性シート10から形成された袋本体11、袋本体11の対向する2面の外表面(表面11x、背面11y)に設けられた掛止部材20、及び袋本体11に充填された抽出材料を有する。掛止部材20は薄板状材料で形成されている。また、袋本体11の表面11x上の掛止部材と背面11y上の掛止部材20は連続しており、袋本体11の一方の側辺11b1上で折山20aを形成している。表裏の掛止部材20は折山20aに対して対称に形成されている。
【0017】
このドリップバッグ1Aの掛止部材20は、後述するように本発明に特徴的なフラップ21を有する。
【0018】
(袋本体)
袋本体11は通水濾過性シートから形成される。
袋本体11内には、コーヒー粉、茶葉、又は漢方薬等の抽出材料が充填されている。
【0019】
本実施例のドリップバッグ1Aの袋本体11は、平面視が矩形の3方シール袋であり、一方の側辺11b1が通水濾過性シート10の折山となり、もう一方の側辺11b2と上辺11aと底辺11cとが表面11xと背面11yのシール辺になっている。本発明においては袋本体11の上辺11aが通水濾過性シートの折山になっていてもよい。シール辺におけるシール幅は適宜設定することができ、例えば超音波によるシールであれば、0.3~0.6mmとすることができる。
【0020】
袋本体11の平面寸法はドリップバッグを掛止するカップ又は容器の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、市販のコーヒーカップで使用できる大きさにすればよい。袋本体11の底部や側部には、必要に応じてマチを設けても良い。
【0021】
本発明において袋本体11は、その上辺11aに沿って易開裂線12を有する。易開裂線12の態様としては、例えば、袋本体11の上辺11aで袋本体11の表面11xと背面11yがシールされている場合、そのシールを容易に剥離可能な弱シールとしたものを挙げることができ、また、袋本体11の表面11xと背面11yの少なくとも一方の上辺11a近傍で該上辺11aに沿って形成したミシン目等を易開裂線としてもよい。袋本体の上辺が通水濾過性シートの折山である場合、その折り山に形成したミシン目等を易開裂線としてもよい。
【0022】
本実施例のドリップバッグ1Aでは、袋本体11の上辺11aに沿った易開裂線12が袋本体11の一方の表面11xのみに形成されている。袋本体11の表裏双方の面に易開裂線を形成した場合に対し、一方の表面のみに易開裂線12を形成することにより、袋本体11の表裏のフラップ21を互いに反対方向に引っ張ったときの引張力を一方の表面の易開裂線12に集中させることができるので、袋本体11を開口させるために要する引張強度を低下させることができるので好ましい。
【0023】
また、本実施例のドリップバッグ1Aにおいて易開裂線12としてはミシン目を形成することが好ましく、特に開封を容易にする点からマイクロミシン目を設けることが好ましい。
【0024】
袋本体11の上辺11aと易開裂線12との距離d1は、掛止部材20の上辺と易開裂線12との距離d2より小さいことが好ましく、距離d1と距離d2の合計は3~8mmが好ましい。距離d2は1.5~5.0mmが好ましい。距離d2が小さすぎると、掛止部材20の上端部を袋本体11に固定する貼着領域と易開裂線12とが重なって易開裂線12の機能が損なわれる虞があり、反対に大きすぎると、易開裂線12の開裂に要する引張力が大きくなるので好ましくない。なお、掛止部材20と袋本体11との貼着領域が易開裂線12と重ならない限り、易開裂線12と掛止部材20とは重なっても良い。
【0025】
袋本体11を形成する通水濾過性シート10としては、例えば所定量のコーヒー粉、茶葉、漢方薬等の抽出材料を充填し、注湯した場合に抽出材料の浸出が可能であるものを種々使用することができる。一般に、浸出用シートとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、コウゾ、ミツマタ等の天然繊維の単独又は複合繊維からなる織布あるいは不織布、マニラ麻、木材パルプ、ポリプロピレン繊維等からなる混抄紙等、ティーバッグ原紙等の紙類が知られており、本発明においてもこれらを使用することができるが、ドリップバッグの使用後の廃棄性の点から、通水濾過性シート材料には生分解性繊維を含有させることが好ましい。生分解性繊維としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等をあげることができる。また、ドリップ時にコーヒー粉に適度な蒸らし効果も付与できるようにするため、これらの繊維材料から通水濾過性シートを製造するに際しては、繊維層の空隙率を調整することによりコーヒー粉に直接接することとなる層を「疎」とし、直接には接しない層を「密」とする疎密の複層構造とし、かつコーヒー粉に直接接することとなる層では疎水性繊維の含有率を高め、コーヒー粉に直接接しない層では疎水性繊維の含有率を下げることが好ましい(特許第3674486号)。
【0026】
(掛止部材の全体構成)
掛止部材20は、板紙、プラスチックシート等の薄板状材料で形成される。薄板状材料としても、ドリップバッグ1Aの使用後の廃棄性の点から、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性材料を使用することが好ましい。
【0027】
図1に示したように、本実施例のドリップバッグ1Aにおいて袋本体11の表裏(表面11x、背面11y)に設けられた掛止部材20は連続しており、通水濾過性シート10の折山となっている袋本体11の一方の側辺11b1上で掛止部材20が折山20aを形成している。
【0028】
表裏の掛止部材20は、それぞれ上端部に、袋本体11の上辺11aに沿って帯状に設けられたフラップ21を有し、フラップ21の下方に、カップ100に掛止される掛止部として、袋本体11から引き起こされる2つの掛止片26、27が袋本体の幅方向に並設されている。各掛止片26、27は、該掛止片26、27をカップ100の開口部壁に載置した場合に(
図6A)、カップの開口部壁と掛止する切欠部26a、27aを有する。
【0029】
2つの掛止片26、27は、特許文献2の
図1に記載のドリップバッグの掛止片と同様の形状を有し、双方の掛止片26、27とも掛止部材20の折山20a寄りに引き起こしの軸を有し、掛止部材20の側辺20b寄りから引き起こされる。なお、2つの掛止片26、27のうち、掛止部材20の折山20aに近い方から第1の掛止片、第2の掛止片とした場合に、特許文献2の
図7に記載のように、第1の掛止片26の引き起こしの軸は掛止部材の折山20a寄りとするが、第2の掛止片27の引き起こしの軸は掛止部材の側辺20b寄りとしてもよい。
【0030】
本実施例のドリップバッグ1Aでは掛止片26、27とフラップ21との間に設けられた横切れ線28や掛止部折れ線L1、L2、L3,L4も、特許文献2の
図1に記載のドリップバッグと同様に形成されている。即ち、第1の掛止片26とフラップ21との間には、袋本体幅方向に延びた横切れ線28が形成されている。また、第1の掛止片26の、掛止部材の折山20a寄りの上端部からは、折山20aに向かう第1の掛止部折れ線L1と、該上端部と横切れ線28との間で掛止部材20の上辺に向かう第2の掛止部折れ線L2が形成されている。第2の掛止片27の、掛止部材の折山20a寄りの上端部からは屈曲した第3の掛止部折れ線L3が形成されている。この第3の掛止部折れ線L3は、フラップの幅の中心線L0fに近づきつつフラップ21に向かう第3bの掛止部折れ線L3bと、該第3bの掛止部折れ線L3bのフラップ21寄りの端点又はその近傍から、前記中心線L0fと離れつつフラップ21に向かう第3aの掛止部折れ線L3aからなる。屈曲した第3の掛止部折れ線L3よりも掛止部材20の側辺20b寄りにおいて、第2の掛止片27とフラップ21との間には第4の掛止部折れ線L4が形成されている。
【0031】
これらの横切れ線28と掛止部折れ線L1、L2、L3、L4により、本実施例のドリップバッグ1Aは、袋本体11の開口後、後述するように第1の掛止部折れ線L1をドリップバッグの幅方向に押し込むことで、開口形状がロックされ、安定する。この場合、折れ線L2は角部を形成するが、横切れ線28が形成されていることにより開口縁の形状は円に近づく(
図6A)。
【0032】
(フラップ)
本実施例のドリップバッグ1Aにおいて、袋本体11の上辺11aに沿う帯状のフラップ21は、易開裂線12よりも袋本体底辺側に設けられている。本発明においてフラップ21の上辺21aは易開裂線12と重なっていても良い。
【0033】
フラップ21はその上辺部が袋本体11に固定され、その下辺部が袋本体11から引き起こし可能となっている。
【0034】
フラップ21が帯状であるとは、フラップの幅の中心線L0fにおける上辺21aと下辺21bとの距離よりもフラップの幅w1が大きいことをいい、フラップの幅w1は、好ましくは袋本体11の幅w2の1/2以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。本発明においては、ドリップバッグ1Aをカップに掛けた状態では、
図6Aに示すように、袋本体11から引き起こしたフラップ21を上下反転状態とするが、フラップ21を袋本体11の1/2幅以上とすることでフラップ21の上下反転状態を安定させることができる。これに対し、フラップ21の幅が短すぎるとドリップバッグをカップに掛けた状態でフラップ21の上下反転状態を維持させることが難しくなる。
【0035】
フラップ21は、フラップの幅の中心線L0fを挟んで、フラップ21の下辺21bから上辺21aに向かう第1折れ線Lpと第2折れ線Lqを有する(
図1)。ここで、第1折れ線Lpと第2折れ線Lqは、それぞれフラップ21の下辺21bと上辺21aに達していることが好ましい。第1折れ線Lp又はその延長線と第2折れ線Lq又はその延長線とのフラップ上辺21aにおける間隔d3は、フラップ下辺21bにおける間隔d4よりも狭く、第1折れ線Lpと第2折れ線Lqとがハ字型を形成している。これにより、フラップ21を袋本体11から引き起こし(
図4)、フラップ21の上下を反転させ、フラップ21の上辺21a近傍を軽く押し込み(
図5)、袋本体11の易開裂線12を開裂させるときに、フラップ21の押し込みが容易となり、フラップ21によるドリップバッグ1Aの開口形状は、開口面が多角形の漏斗型の錐形となる。この場合、開口面の多角形の一辺の長さd4が、フラップ上辺21aにおける折れ線Lp、Lqの間隔d3よりも長くなり、ドリップバッグの1Aの開口面積が広がる(
図6A,
図6B)。
【0036】
特に本実施例のドリップバッグ1Aのように折れ線L1、L2が形成されており、袋本体11の開封後、折れ線L1をドリップバッグの幅方向に押し込むことで開口形状をロックさせるものでは、
図6A、
図6Bに示すように、フラップ21の上下を反転させた状態で第2の掛止部折れ線L2の延長線Lx上にフラップ21の第1折れ線Lpがあることがドリップバッグ1Aの開口形状をより安定させる点から好ましく、これにより開口形状のデザインも向上させることができる。したがって、折れ線L2の延長線Lx上に折れ線Lpがあるように折れ線L2、Lpの位置と傾きを調整することが好ましい。
【0037】
また開口形状を安定させ、開口形状のデザインを向上させる点から、第3aの掛止部折れ線L3aの延長線Ly上にフラップ21の第2折れ線Lqがあることも好ましい。
【0038】
なお、このドリップバッグ1Aではフラップ21における第1折れ線Lpと第2折れ線Lqの形成位置と傾きを上述のように調整しているため、第1折れ線Lpと第2折れ線Lqはフラップの幅の中心線L0fに対して対称の位置にはなく、第1折れ線Lpとフラップの幅の中心線L0fとの距離d5が、第2折れ線Lqとフラップの幅の中心線L0fとの距離d6よりも大きくなっている(
図1)。
【0039】
第1折れ線Lp、第2折れ線Lqとしては、ミシン目、切れ込み、ハーフカットなどを設けることができる。なお、折れ線として切れ込みやミシン目を設ける場合には、その両端はアンカット部とすることが好ましい。また、このドリップバッグ1Aの掛止部材20が有する他の折れ線も同様にミシン目等から形成することができる。
【0040】
本発明のドリップバッグでは上述した態様に限られず、例えば、フラップ21の幅の中心線L0fよりも折山20a側の領域に、第1の折れ線Lpに加えて、第3の折れ線を形成してもよく、中心線L0fよりも折山と反対側の領域に、第2の折れ線Lqに加えて、第4の折れ線を形成してもよい。第3の折れ線、第4の折れ線は、第1の折れ線Lp、第2の折れ線Lqと同様に、フラップ21の上辺21aに近いほど中心線L0fに近づくようにすることが好ましい。フラップ21の下辺から上辺方向に延びた折れ線をフラップ21にさらに追加することにより、上面視のドリップバッグの開口形状を円に近づけ、開口面積を拡大しても良い。
【0041】
(使用方法)
このドリップバッグ1Aの使用方法としては、まずフラップ21を摘まみ、
図3及び
図4に示すようにフラップ21を引き起こし、
図5に示すようにフラップ21を摘まんだ親指の指先でフラップ21の上辺21a近傍を袋本体11の内側に押し込む。このとき、図示したように第1の折れ線Lpと第2の折れ線Lqによりフラップ21が湾曲するので、この押し込みが容易となる。
【0042】
押し込みにより易開裂線12が極めて容易に開裂し、引き続き袋本体11の全幅に開裂が広がり、フラップ21が上下反転状態となって袋本体11が開口する。このとき、押し込む力を格別に加減しなくても、袋本体11の内容物が飛び散ることはない。また、フラップ21の押し込みにより掛止片26、27が袋本体11から浮きあがる。
【0043】
袋本体11を開口させた後には
図6Aに示すように、ドリップバッグ1Aの両側辺を把持し、折れ線L1をドリップバッグ1Aの内側に押し込む。これによりドリップバッグの開口形状がロックされ、ドリップバッグ1Aをカップ100に掛けることができる。
【0044】
図6Bに示すように、ドリップバッグ1Aをカップ100に掛けた状態で、上下反転状態のフラップ21は当初のフラップの下辺21bが袋本体11の上辺から外側に突出し、袋本体11の表裏のフラップ21によりドリップバッグ1Aの開口形状は開口面が多角形の漏斗状の錐形となる。即ち、
図1に示したようにフラップ21の下辺21bにおける第1の折れ線Lpと第2の折れ線Lqの間隔d4は、上辺21aにおけるこれらの間隔d3よりも長いので、
図6Bに示すドリップバッグ1Aの開口形状では、開口縁において第1の折れ線Lpと第2の折れ線Lqで挟まれた一辺の長さd4は、フラップ21の上下反転状態での袋本体上辺11dにおいてこれらの折れ線Lp、Lqで挟まれた間隔d7よりも長く、ドリップバッグ1Aの開口面積が拡大し、ドリップバッグへの注湯が容易となる。
【0045】
(製造方法)
本実施例のドリップバッグ1Aを、充填包装機を用いて製造するためには、
図7に示すドリップバッグ製造用シート30Aのロールを用意することが好ましい。
【0046】
ドリップバッグ製造用シート30Aは、通水濾過性シート10にドリップバッグ1個分の掛止部材20を所定間隔で連続的に配置したものである。図中、二点鎖線で区切った間がドリップバッグ1Aの1個分の領域となる。
【0047】
ドリップバッグ製造用シート30Aを充填包装機にかけ、常法によりドリップバッグ製造用シート30Aの両側辺を合わせてシール(縦シール)することによりドリップバッグ製造用シート30Aを筒状とし、これに対して抽出物の充填と水平方向のシール(横シール)とを交互に行うことにより容易にドリップバッグ1Aを製造することができる。
【0048】
図7に示したドリップバッグ製造用シート30Aでは易開裂線12をドリップバッグ製造用シート30Aの一方の側辺寄りのみに形成しているが、
図8に示すドリップバッグ製造用シート30Bのように易開裂線12を一方の側辺寄りと他方の側辺寄りの交互に形成してもよい。これにより、ロールからドリップバッグ製造用シートを引き出していく際に該シートの一方の側辺がわが伸びてしまい、ドリップバッグ製造用シートを充填包装機にかけてドリップバッグを連続的に製造していく際にドリップバッグ製造用シートがよれたり、破損したりするというリスクを解消することができるので好ましい。
【0049】
(変形態様)
本発明のドリップバッグ1Aは、種々の変形態様をとることができる。
例えば、特許5019034号に記載されているドリップバッグのように掛止部材がV字型に開くドリップバッグに本発明のフラップを設けることができる。
【0050】
本発明のドリップバッグは、掛止部材がV字型に開くドリップバッグに限られない。例えば、
図9及び
図10に示すドリップバッグ1Bのように構成してもよい。このドリップバッグ1Bは、袋本体11の上辺が通水濾過性シート10の折山となっており、側辺11bはシール辺となっている。袋本体11の表裏の掛止部材20は連続しておらず、ドリップバッグ1Bの側辺に掛止部材20の折山がない。袋本体11の表裏の掛止部材20は、それぞれ袋本体11の上辺に沿って形成された帯状のフラップ21、フラップ21の袋本体底辺側で掛止部材20の幅の中央部に設けられた中央支持部22、及び中央支持部22の左右両側に設けられた掛止部23を有する。フラップ21は、該フラップ21の幅の中心線L0fを挟んでハ字型に形成された折れ線Lp、Lqを有する。中央支持部22は袋本体11に貼着されていることにより袋本体11から引き起こし不能となっている。
【0051】
中央支持部22の幅の中心線は、フラップ21の幅の中心線L0f及び掛止部材の幅の中心線L0hと重なっており、中央支持部22の幅の中心線には折れ線(以下、中央支持部縦折れ線ともいう)Lcが形成されている。この折れ線Lcがあることにより、袋本体11の開封時にフラップ21を引き起こし、フラップ21の上辺21a近傍を袋本体11の内側に押し込み、フラップ21の上下を反転させて袋本体11の易開裂線12を開裂させた後に、袋本体11の表裏の掛止部23が互いに反対方向に引っ張られているときだけでなく、引っ張られる前においても、袋本体11の開口が閉じず、開口形状が維持されやすくなる。
【0052】
中央支持部22の両側縁部と掛止部23とは折れ線Lbを介して連続しており、この折れ線Lbが掛止部23の引き起こしの軸となっている。この折れ線Lbは、該折れ線Lbと中央支持部縦折れ線Lcとの距離が、フラップ21に近いほど大きい。これにより、掛止部23を引き起こしてカップ100に掛けるときに、掛止部材20が折れ線Lbで屈曲すると、掛止部23の袋本体側辺に沿った部分23pが袋本体11から浮き上がり易くなる。
【0053】
中央支持部22の両側の掛止部23は、その中央支持部22寄り部分同士が中央支持部22の下部に隣接した部分23bで連続し、袋本体の側辺に沿った部分23pの下部同士が、中央支持部22の下方の連続部分23aで連続している。これにより袋本体の表裏の掛止部23を摘まみやすくなり、互いに反対方向に引っ張ってカップ100に掛けやすくなる。また、掛止部23の袋本体側辺に沿った部分23pの下端部と連続部分23aとの間には切込25が形成されている。
【0054】
中央支持部22の左右の掛止部23とその連続部分23aとで囲まれた領域29は袋本体11から引き起こし不能となっている。また、掛止部材20は、フラップ21及び掛止部23よりも袋本体の側辺11b寄り部分に、袋本体の側辺11bに沿って形成された側縁固定部24も有することが好ましい。側縁固定部24は袋本体11に貼着されている。
【0055】
前述のドリップバッグ1Aと同様に、このドリップバッグ1Bの掛止部材20も袋本体11の開封時にフラップ21を引き起こし、フラップ21の上辺21a近傍を袋本体11の内側に押し込み、フラップ21の上下を反転させて袋本体11の易開裂線12を開裂させる。このとき、このドリップバッグ1Bによれば、掛止部23の袋本体側辺に沿った部分23pが袋本体11から浮き上がり、掛止部23の連続部分23aも袋本体11から浮き上がる。したがって、易開裂線12を開裂させた後には袋本体11の表裏の掛止部23の連続部分23aを容易に摘まむことができ、摘まんだ掛止部の連続部分23aを互いに反対方向に引っ張り、掛止部23をカップ100に掛けることが可能となる(
図10)。
【0056】
また、連続部分23aを互いに反対方向に引っ張ることで掛止部23が切込25で折れて連続部分23aが撓むので、連続部分23aをしっかり摘まむことが容易となる。また、連続部分23aが撓むことで掛止部23の袋本体側辺に沿った部分23pよりも連続部分23aが外側に突出するので、袋本体側辺に沿った部分23pをカップ100の開口部壁に掛け易くなる。
【0057】
本発明のドリップバッグは、袋本体の上辺に沿って帯状のフラップを設け、そのフラップの上辺を袋本体に固定し、下辺から引き起こし可能としたものであれば、種々の変形態様を適宜組み合わせて構成することができる。
【符号の説明】
【0058】
1A、1B ドリップバッグ
10 通水濾過性シート
11 袋本体
11a 上辺
11b、11b1、11b2 側辺
11c 底辺
11d フラップの上下反転状態での袋本体の上辺
11x 表面
11y 背面
12 易開裂線
20 掛止部材
20a 掛止部材の折山
20b 掛止部材の側辺
21 フラップ
21a フラップの上辺
21b フラップの下辺
22 中央支持部
23 掛止部
23a 左右の掛止部の連続部分
23p 掛止部の袋本体側縁寄りの部分
24 側縁固定部
25 切込
26 掛止片
26a 切欠部
27 掛止片
27a 切欠部
28 横切れ線
30A、30B ドリップバッグ製造用シート
100 カップ
d1、d2、d5、d6 距離
d3、d4、d7 間隔
L0f フラップの幅の中心線
L0h 掛止部材の幅の中心線
L1、L2、L3、L3a、L3b、L4 掛止部折れ線
Lb 中央支持部の側縁折れ線
Lc 中央支持部縦折れ線
Lp 第1折れ線
Lq 第2折れ線
Lx L2の延長線
Ly L3aの延長線