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特開2024-168286スートブロワの異常検出装置、およびスートブロワの異常検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168286
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】スートブロワの異常検出装置、およびスートブロワの異常検出システム
(51)【国際特許分類】
   F23J 3/00 20060101AFI20241128BHJP
   F22B 37/56 20060101ALI20241128BHJP
   F28G 1/16 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F23J3/00 101A
F22B37/56 B
F28G1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084831
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中江 修二
(72)【発明者】
【氏名】沖本 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅幹
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】堀岡 竜治
【テーマコード(参考)】
3K261
【Fターム(参考)】
3K261GB05
3K261GB15
(57)【要約】
【課題】スートブロワの異常を高精度に検出することができるスートブロワの異常検出装置を提供する。
【解決手段】炉壁から炉内に向かって進退可能に構成されるチューブと、チューブの先端に設けられ高圧流体を噴射可能に構成されるノズルと、を含むスートブロワの異常検出装置は、炉壁の振動に関する物理量を検知するセンサから物理量を示す振動データを取得する振動データ取得部と、振動データ取得部によって取得された振動データのうち、チューブが炉内に向かって移動を開始してからチューブの移動開始位置に戻るまでの運転期間であって、ノズルが高圧流体を噴射している噴射期間を含む運転期間の振動データである運転期間データに基づいて、スートブロワの異常を検出する異常検出部と、を備える。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの内部空間に面する壁から前記内部空間に向かって進退可能に構成されるチューブと、前記チューブの先端に設けられ高圧流体を噴射可能に構成されるノズルと、を含むスートブロワの異常検出装置であって、
前記壁の振動に関する物理量を検知するセンサから前記物理量を示す振動データを取得する振動データ取得部と、
前記振動データ取得部によって取得された前記振動データのうち、前記チューブが前記内部空間に向かって移動を開始してから前記チューブの移動開始位置に戻るまでの運転期間であって、前記ノズルが前記高圧流体を噴射している噴射期間を含む運転期間の前記振動データである運転期間データに基づいて、前記スートブロワの異常を検出する異常検出部と、を備える、
スートブロワの異常検出装置。
【請求項2】
前記異常検出部によって前記スートブロワの異常が検出されると、前記スートブロワの点検を促すための報知情報を報知装置に出力する出力部を、さらに備える、
請求項1に記載のスートブロワの異常検出装置。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記振動データ取得部によって取得された前記振動データが閾値を超過した場合に、前記スートブロワの異常を検出する、
請求項1又は2に記載のスートブロワの異常検出装置。
【請求項4】
前記振動データ取得部によって取得された前記運転期間データについて周波数解析を行い、前記運転期間データにおける所定の周波数帯の振動加速度レベルを算出する周波数解析部をさらに備え、
前記異常検出部は、前記周波数解析部によって算出された前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが閾値を超過した場合に、前記スートブロワの異常を検出する、
請求項1又は2に記載のスートブロワの異常検出装置。
【請求項5】
前記スートブロワが正常状態であるときの前記運転期間データを記憶する記憶部をさらに備える、
請求項1又は2に記載のスートブロワの異常検出装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のスートブロワの異常検出装置と、
前記センサと、を備える、
スートブロワの異常検出システム。
【請求項7】
前記センサは、前記ボイラ外に設けられている、
請求項6に記載のスートブロワの異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スートブロワの異常検出装置、およびスートブロワの異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ボイラには、燃焼ガスから熱回収を行うために、燃焼ガスと接触する伝熱面を有する伝熱管が設けられている。燃焼ガスにダストが含まれていると、伝熱面にダストが付着・堆積し、伝熱効率の低下を招く虞がある。また、燃焼ガスの流路が閉塞し、安定したボイラの運転を阻害する虞がある。そこで、ボイラには、伝熱面に付着したダストを除去するスートブロワが設けられていることが多い。特許文献1に記載されているように、スートブロワは、往復動させることで伝熱管が設置された炉内へ抜き差しされる管本体を備え、管本体の先端部から噴射媒体を伝熱面に付着したダストに向けて噴射するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-047349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、スートブロワの動作状況の監視はあまり行われていない。例えば、特許文献1には、スートブロワにリミットスイッチが設けられていることが記載されている。しかしながら、リミットスイッチでは管本体が所定位置に達したか否かを監視する程度に留まってしまい、スートブロワの異常を検出する精度が低い。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、スートブロワの異常を高精度に検出可能なスートブロワの異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るスートブロワの異常検出装置は、炉壁から炉内に向かって進退可能に構成されるチューブと、前記チューブの先端に設けられ高圧流体を噴射可能に構成されるノズルと、を含むスートブロワの異常検出装置であって、前記炉壁の振動に関する物理量を検知するセンサから前記物理量を示す振動データを取得する振動データ取得部と、前記振動データ取得部によって取得された前記振動データのうち、前記チューブが炉内に向かって移動を開始してから前記チューブの移動開始位置に戻るまでの運転期間であって、前記ノズルが前記高圧流体を噴射している噴射期間を含む運転期間の前記振動データである運転期間データに基づいて、前記スートブロワの異常を検出する異常検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のスートブロワの異常検出装置によれば、スートブロワの異常を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るボイラの概略構成を模式的に示す図である。
図2】一実施形態に係るスートブロワの概略構成を模式的に示す図である。
図3】一実施形態に係るセンサの構成を示す模式的な断面図である。
図4】一実施形態に係るセンサから取得した振動データにおける所定の周波数の振動加速度レベルの時系列データの一例を示す図である。
図5】一実施形態に係る異常検出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】一実施形態に係る異常検出装置の機能的な構成の一例を説明するための図である。
図7】一実施形態に係る異常検出装置による異常検出フローの一例を示す図である。
図8】振動加速度レベルと周波数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態によるスートブロワの異常検出装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
図1は、一実施形態に係るボイラ100の概略構成を模式的に示す図である。図1に示すように、ボイラ100は、火炉102と、火炉102の側壁104に設けられたバーナー106と、火炉102内に設けられた熱交換器としての過熱器108と、火炉102の上部に接続する煙道110と、煙道110内に設けられた熱交換器としての節炭器112と、火炉102内又は煙道110内に設けられた熱交換器としての再熱器114と、スートブロワ20と、スートブロワの異常検出システム(以下、異常検出システム30と記載する)と、を備える。ボイラ100は、例えば石炭を燃料として用いる石炭炊きボイラであってもよい。
【0011】
火炉102は、鉛直方向に沿って延在する側壁104と、側壁104の下端に接続する炉底部116と、側壁104の上端に接続する天井壁118とを含む。炉底部116は、漏斗状に形成されており、炉底部116の下端には燃料の燃焼によって生成された燃焼灰を排出するための灰排出口119が形成されている。灰排出口119は、平面視において炉底部116の中央に形成されていてもよい。炉底部116は、側壁104の下端から下方に向かうにつれて灰排出口119に近づくように、鉛直方向及び水平方向の各々に対して傾斜した傾斜方向に沿って延在する。灰排出口119の下方には、灰排出口119から落下した灰が流入する灰処理装置120が配置されている。
【0012】
バーナー106は、火炉102内で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する。煙道110は、管形状を有しており、火炉102から排出される排ガス(火炉102内で生成された燃焼ガス)を不図示の煙突に導くように構成される。この煙道110は、火炉102の上部から煙突まで延在する外周壁122を含んでいる。過熱器108は、火炉102内に配置される伝熱管を含み、この伝熱管内を流れる蒸気を火炉108内で生成した燃焼ガスによって加熱して過熱蒸気を生成する。節炭器112は、煙道110内に配置される伝熱管を含み、この伝熱管内を流れる蒸気を排ガスによって加熱する(ボイラ100の給水を加熱する)。再熱器114は、火炉102内又は煙道110内に配置される伝熱管を含み、この伝熱管内を流れる蒸気を燃焼ガスまたは排ガスによって加熱する。
【0013】
一実施形態では、ボイラ100の内部空間101は、火炉102の側壁104の内周面121に面している燃焼空間101a、および煙道110の外周壁122の内周面123に面している流通空間101bを含んでいる。
【0014】
図1に例示する形態では、過熱器108は、火炉102内に位置する1次過熱器108A(108)、1次過熱器108Aよりも火炉102内の煙道110側に位置する2次過熱器108B(108)、および2次過熱器108Bよりも火炉102内の煙道110側に位置する3次過熱器108C(108)を含む。節炭器112は、煙道110内に位置する1次節炭器112A(112)、および1次節炭器112Aよりも煙道110内の出口側(煙突側)に位置する2次節炭器112B(112)を含む。再熱器114は、煙道110内に設けられる1次再熱器114A(114)および火炉102内に設けられる2次再熱器114B(114)を含む。1次再熱器114Aは、1次節炭器112Aよりも煙道110内の入口側に位置している。2次再熱器114Bは、2次過熱器108Bと3次過熱器108Cとの間に位置している。
【0015】
スートブロワ20は、ボイラ100内の煤を除去する。一実施形態では、図1に示すように、ボイラ100は、複数のスートブロワ20を備えている。複数のスートブロワ20のそれぞれの設置位置は、特に限定されないが、例えば、1次過熱器108Aと2次過熱器108Bとの間、2次再熱器114Bと3次過熱器108Cとの間、1次再熱器114Aと1次節炭器112Aとの間、および1次節炭器112Aと2次節炭器112Bとの間などである。図1において、点線の矩形が複数のスートブロワ20のそれぞれの設置位置を示す。以下、火炉102に設置されているスートブロワ20を例にして、スートブロワ20の構成について説明する。
【0016】
図2は、一実施形態に係るスートブロワ20の概略構成を模式的に示す図である。図2に示すように、スートブロワ20は、燃焼空間101aに面する側壁104から燃焼空間101aに向かって進退可能に構成されるチューブ22と、チューブ22の先端に設けられるノズル24と、を含む。ノズル24は、蒸気のような高圧流体Sを噴射可能に構成される。
【0017】
チューブ22が進退可能に構成されているスートブロワ20の構成の一例について説明する。チューブ22は、菅形状を有しており、一端側(燃焼空間101a側)にノズル24が設けられ、他端側にヘッドバルブ26が設けられている。ヘッドバルブ26は、不図示の蒸気供給源とチューブ22とを接続する蒸気供給ライン27に設けられている。ヘッドバルブ26を開弁することで、高圧流体Sが蒸気供給源からチューブ22に向かって蒸気供給ライン27を流通し、チューブ22内に送り込まれる。
【0018】
スートブロワ20は、トラベリングキャレッジ28およびラック29を含んでいる。トラベリングキャレッジ28は、チューブ22に設けられており、不図示のモータやこのモータに連結されているピニオンを含む。ラック29は、火炉102の外部をチューブ22の延在方向に沿って延びており、一端が側壁104に固定されている。ラック29は、チューブ22の延在方向に沿って配列された歯を有しており、ピニオンと噛み合わされている。ピニオンは、モータの駆動力が伝達されることによって回転する。ピニオンが回転すると、ラック29に対するピニオンの噛み合わせ位置が変化する。このため、トラベリングキャレッジ28がラック29に沿って移動し、このトラベリングキャレッジ28の移動によってチューブ22の位置が変化する。チューブ22は、スートブロワ20の起動時に燃焼空間101aに挿入され、スートブロワ20の非起動時に燃焼空間101aから退避される。
【0019】
異常検出システム30は、ボイラ100の内部空間101に面する壁の振動に関する物理量を検知するセンサ40と、センサ40によって検出したボイラ100の壁の振動に関する物理量を示す振動データDに基づいて、スートブロワ20の異常を検出するように構成されたスートブロワの異常検出装置(以下、異常検出装置1と記載する)と、を含む。図1に例示する形態では、異常検出システム30は、複数のセンサ40を備えている。複数のセンサ40のそれぞれの設置位置は、特に限定されないが、スートブロワ20の異常を精度良く検出する観点から検出対象のスートブロワ20の近傍である。図1において、点線の円形が複数のセンサ40のそれぞれの設置位置を示す。以下、センサ40が火炉102に設置されている場合を例にして、センサ40の構成について説明する。
【0020】
センサ40は、側壁104の振動に関する物理量(例えば、側壁104の振動時の側壁104の変位、振動速度又は振動加速度等のように、振動の程度を定量的に特徴づけることのできる物理量)を検知する。この目的によれば、センサ40は、例えばAEセンサ、加速度センサ又はレーザ振動センサ等であってもよい。以下では、センサ40が、側壁104の振動に関する物理量として側壁104の振動加速度レベルLaを計測する振動加速度センサである場合を例に説明する。
【0021】
図3は、一実施形態に係るセンサ40の構成を示す模式的な断面図である。図3に例示する形態では、火炉102の側壁104は、交互に配置された炉壁管124及びフィン126と、炉壁管124とフィン126における火炉102の外側を向く面を覆う保温材128と、保温材128における火炉102の外側を向く面を覆う外装板130とを含む。また、保温材128と外装板130とをそれらの厚さ方向に貫通する導波棒132の一端がフィン126に固定されており、側壁104の外側(火炉102の外側)に配置されたセンサ40が導波棒132の他端に固定されている。このように、センサ40を火炉102の外側に配置することにより、火炉102の内部の高温に起因してセンサ40の各々が破損することを抑制することができる。尚、図3に例示する形態では、センサ40は側壁104の振動を検知する振動式センサであったが、本開示はこの形態に限定されない。センサ40は、内部空間101内の音の振動を検知する音響式センサであってもよい。
【0022】
図4は、一実施形態に係るセンサ40から取得した振動データDにおける所定の周波数の振動加速度レベルLaの時系列データの一例を示す図である。図4に示す例では、時刻t1において、スートブロワ20が起動して、チューブ22が燃焼空間101aに向かって進出し、ノズル24が燃焼空間101a内に侵入する。そして、時刻t2において、チューブ22の進出が終了し、チューブ22は進出方向とは反対方向に後退し始める。つまり、時刻t2において、燃焼空間101aにおけるノズル24と側壁104との間の距離が最も大きくなっている。時刻t3において、ノズル24が火炉102(側壁104)の外部まで後退し、スートブロワ20が停止する。つまり、時刻t1から時刻t3までの期間は、チューブ22が燃焼空間101aに向かって移動を開始してからチューブ22の移動開始位置に戻るまでの運転期間Tである。この運転期間Tは、ノズル24が高圧流体Sを噴射している噴射期間Taを含む。
【0023】
一実施形態では、運転期間Tの全体が噴射期間Taとなっている。このため、図4に示すように、時刻t1において、振動加速度レベルLaが急激に大きくなり、時刻t2に向かうにつれて振動加速度レベルLaが低下している。これは、時刻t1から時刻t2に向かうにつれて、高圧流体Sを噴射しているノズル24が側壁104から離れるためである。同様に、時刻t2から時刻t3に向かうにつれて振動加速度レベルLaが上昇している。これは、時刻t2から時刻t3に向かうにつれて、高圧流体Sを噴射しているノズル24が側壁104に近づくためである。
【0024】
尚、センサ40は、ボイラ100の内部における蒸気の漏洩を検出するためにボイラ100に設けられたセンサ(チューブリークディテクタ)が流用されてもよい。すなわち、異常検出装置1は、センサ40から取得した振動データDに基づいて、スートブロワ20の異常を検出するだけでなく、ボイラ100の内部における蒸気の漏洩を検出してもよい。
【0025】
図5は、一実施形態に係る異常検出装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。図6は、一実施形態に係る異常検出装置1の機能的な構成の一例を説明するための図である。図7は、一実施形態に係る異常検出装置1による異常検出フローの一例を示す図である。
【0026】
図5に示すように、異常検出装置1は、例えばプロセッサ72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、HDD(Hard Disk Drive)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。なお、異常検出装置1のハードウェア構成は上記に限定されず、制御回路と記憶装置との組み合わせにより構成されてもよい。また、異常検出装置1は、異常検出装置1の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明する異常検出装置1における各部の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてプロセッサ72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。異常検出装置1を構成するハードウェアは、1つの場所に集約されていてもよいし、複数の場所に分散して設けられていてもよい。幾つかの実施形態では、異常検出装置1は、クラウド環境に設けられたクラウドサーバである。
【0027】
図1に示すように、異常検出装置1は、センサ40と電気的に接続されており、この電気的に接続されているセンサ40から振動データDを取得可能となっている。そして、図6に示すように、異常検出装置1は、振動データ取得部2と、異常検出部4と、出力部6と、周波数解析部8と、を含む。尚、異常検出装置1は、複数のセンサ40の全てと電気的に接続されていてもよいし、複数のセンサ40のうちの一部と電気的に接続されていてもよい。
【0028】
図7に示すように、取得ステップS1において、振動データ取得部2は、センサ40から振動データDを取得する。一実施形態では、振動データ取得部2は、センサ40から側壁104の振動に関する物理量を示す振動データDとして、側壁104の振動加速度レベルLaを示す振動データD(図4に例示する振動加速度レベルLaの時系列データ)をセンサ40から取得する。
【0029】
解析ステップS2において、周波数解析部8は、センサ40から取得した振動データDについて周波数解析(FFT解析)を行い、該振動データDにおける所定の周波数帯の振動加速度レベルLaを算出する。なお、ここでの「所定の周波数帯」とは、ボイラ100の運転に伴う側壁104の定常振動の周波数(火炉102内の燃焼音やバーナー106の噴霧音等の喧騒音(背景音)の周波数)よりもある程度高い周波数帯であってもよい。図8は、振動加速度レベルLaと周波数との関係を示すグラフである。図8において、実線で示す振動加速度レベルLa1はスートブロワ20が異常状態であるときの振動加速度レベルLaを示し、点線で示す振動加速度レベルLa2はスートブロワ20が正常状態であるときの振動加速度レベルLaを示している。図8に示すように、スートブロワ20が正常状態であるときに発生する音は小さい周波数帯に偏っている。一方で、スートブロワ20が異常状態であると、大きい周波数成分の振動加速度レベルLaが増加している。
【0030】
検出ステップS3において、異常検出部4は、振動データ取得部2によって取得された振動データDのうち、運転期間Tの振動データDである運転期間データTDに基づいて、スートブロワ20の異常を検出する。一実施形態では、異常検出部4は、運転期間Tにおける振動加速度レベルLaが予め設定された閾値Xを超過した場合に(検出ステップS3:Yes)、スートブロワ20の異常を検出する。スートブロワ20の異常が検出されると、出力ステップS4に進む。異常検出部4は、運転期間Tにおける振動加速度レベルLaが閾値Xを超過しない場合には(検出ステップS3:No)、取得ステップS1に戻る。
【0031】
出力ステップS4において、出力部6は、ボイラ100の運転操作を行うオペレータ-にスートブロワ20の点検を促すための報知情報Iを報知装置50に出力する。例えば報知装置50がディスプレイ等の表示装置である場合には、出力部6は、上記報知情報Iを報知装置50に表示させるための信号を報知装置50に出力し、報知装置50(表示装置)は、スートブロワ20の点検を促すための報知情報Iを表示してもよい。また、例えば報知装置50が警報器等である場合には、出力部6は、上記報知情報Iを報知装置50から音声として出力させるための信号を報知装置50に出力し、報知装置50(警報器等)は、スートブロワ20の点検を促すための報知情報Iを音声として出力してもよい。
【0032】
一実施形態では、図6に示すように、異常検出装置1は記憶部10をさらに含む。記憶部10は、スートブロワ20が正常状態であるときの運転期間データTDを記憶する。一実施形態では、閾値Xは、スートブロワ20が正常状態であるときの振動加速度レベルLaよりも大きくなるように設定されている。例えば、閾値Xは、スートブロワ20が正常状態であるときの振動加速度レベルLaに5dB以上15dB以下を加算することで設定されている。例えば、閾値Xは、スートブロワ20が正常状態であるときの振動加速度レベルLaに10dBを加算することで設定されている。尚、幾つかの実施形態では、閾値Xは、スートブロワ20が正常状態であるときの振動加速度レベルLaよりも小さくなるように設定されている。
【0033】
幾つかの実施形態では、閾値Xは、燃焼空間101a内におけるノズル24と側壁104との間の距離(ノズル24の位置)を考慮して設定される。例えば、閾値Xは、ノズル24が側壁104から離間しているほど閾値Xと正常状態の振動加速度レベルLaとの間の差が小さくなるように設定される。具体的には、閾値Xはスートブロワ20が正常状態であるときの振動加速度レベルLaに10dBが加算されているが、ノズル24と側壁104との間の距離に基づいて加算値が補正されるようになっており、ノズル24と側壁104との間の距離が最も大きいときには加算値が5dBに補正される。このような構成によれば、スートブロワ20の異常が発生しているか否かの誤検知の発生を抑制できる。特に、センサ40の感度はノズル24が側壁104から離間しているほど鈍くなるので、上述のように補正することで、誤検知の発生をさらに抑制できる。
【0034】
(作用・効果)
一実施形態に係る異常検出装置1の作用・効果について説明する。スートブロワ20が運転している際には、ノズル24から噴射される高圧流体Sによって側壁104の振動が促進される。一実施形態によれば、スートブロワ20の運転期間Tに、側壁104の振動に関する物理量を示す振動データDが取得される。そして、この運転期間Tの振動データDに基づいて、スートブロワ20の異常が検出されるので、スートブロワ20の異常を高精度に検出することができる。
【0035】
一実施形態によれば、スートブロワ20の異常が検出された場合に報知装置50が報知情報Iを報知することで、オペレータにスートブロワ20の点検を実行させ、必要な対策を速やかにとることが可能となる。
【0036】
一実施形態によれば、スートブロワ20が正常状態である場合の振動データDを想定して閾値Xが設定されるので、スートブロワ20の異常を精度良く検出することができる。また、一実施形態によれば、スートブロワ20が正常状態であるときの運転期間データTDと比較して、スートブロワ20の異常を検出することができる。
【0037】
スートブロワ20の運転によって生じる側壁104の振動の振動加速度レベルは、ボイラ100の運転に伴う定常振動と比較して、比較的高い周波数において大きな値をとるような周波数特性を有している。一実施形態によれば、その周波数特性を考慮して上記所定の周波数帯をボイラ100の運転に伴う定常振動よりも比較的高い周波数帯(側壁104の振動の振動加速度レベルLaの周波数分布において比較的振動加速度レベルLaが大きな周波数帯)に設定することにより、スートブロワ20の異常をさらに精度良く検出することができる。尚、一実施形態では、スートブロワ20の異常の検出精度を高めるために、周波数解析部8で所定の周波数帯について算出した振動加速度レベルLaを閾値Xと比較したが、周波数解析部8は必須ではなく、センサ40から取得した振動加速度レベルLaが閾値Xを超過した場合に、スートブロワ20の異常を検出してもよい。
【0038】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0039】
[1]本開示に係るスートブロワの異常検出装置(1)は、
ボイラ(100)の内部空間(101)に面する壁(104)から前記内部空間に向かって進退可能に構成されるチューブ(22)と、前記チューブの先端に設けられ高圧流体(S)を噴射可能に構成されるノズル(24)と、を含むスートブロワ(20)の異常検出装置であって、
前記壁の振動に関する物理量を検知するセンサ(40)から前記物理量を示す振動データ(D)を取得する振動データ取得部(2)と、
前記振動データ取得部によって取得された前記振動データのうち、前記チューブが前記内部空間に向かって移動を開始してから前記チューブの移動開始位置に戻るまでの運転期間(T)であって、前記ノズルが前記高圧流体を噴射している噴射期間(Ta)を含む運転期間の前記振動データである運転期間データ(TD)に基づいて、前記スートブロワの異常を検出する異常検出部(4)と、を備える。
【0040】
スートブロワが運転している際には、ノズルから噴射される高圧流体によって壁の振動が促進される。上記[1]に記載の構成によれば、スートブロワの運転期間に、壁の振動に関する物理量を示す振動データが取得される。そして、この運転期間の振動データに基づいて、スートブロワの異常が検出されるので、スートブロワの異常を高精度に検出することができる。
【0041】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記異常検出部によって前記スートブロワの異常が検出されると、前記スートブロワの点検を促すための報知情報(I)を報知装置(50)に出力する出力部(6)を、さらに備える。
【0042】
上記[2]に記載の構成によれば、スートブロワの異常が検出された場合に報知装置が報知情報を報知することで、オペレータにスートブロワの点検を実行させ、必要な対策を速やかにとることが可能となる。
【0043】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記異常検出部は、前記振動データ取得部によって取得された前記振動データが閾値(X)を超過した場合に、前記スートブロワの異常を検出する。
【0044】
上記[3]に記載の構成によれば、閾値を適切に設定することにより、スートブロワの異常を精度良く検出することができる。例えばスートブロワが正常状態である場合の振動データを想定して閾値を設定することにより、スートブロワの異常を精度良く検出することができる。
【0045】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記振動データ取得部によって取得された前記運転期間データについて周波数解析を行い、前記運転期間データにおける所定の周波数帯の振動加速度レベル(La)を算出する周波数解析部(8)をさらに備え、
前記異常検出部は、前記周波数解析部によって算出された前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが閾値を超過した場合に、前記スートブロワの異常を検出する。
【0046】
上記[4]に記載の構成によれば、スートブロワの運転によって生じる壁の振動の振動加速度レベルは、ボイラの運転に伴う定常振動と比較して、比較的高い周波数において大きな値をとるような周波数特性を有している。このため、その周波数特性を考慮して上記所定の周波数帯をボイラの運転に伴う定常振動よりも比較的高い周波数帯(壁の振動の振動加速度レベルの周波数分布において比較的振動加速度レベルが大きな周波数帯)に設定することにより、スートブロワの異常をさらに精度良く検出することができる。
【0047】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記スートブロワが正常状態であるときの前記運転期間データを記憶する記憶部(10)をさらに備える。
【0048】
上記[5]に記載の構成によれば、スートブロワが正常状態であるときの運転期間データと比較して、スートブロワの異常を検出することができる。
【0049】
[6]本開示に係るスートブロワの異常検出システム(30)は、
上記[1]から[5]の何れか1つに記載のスートブロワの異常検出装置と、
前記センサと、を備える。
【0050】
上記[6]に記載の構成によれば、スートブロワの異常検出システムは、上記[1]から[5]の何れか1つに記載のスートブロワの異常検出装置を備えるため、スートブロワの異常を高精度に検出することができる。
【0051】
[7]幾つかの実施形態では、上記[6]に記載の構成において、
前記センサは、前記ボイラ外に設けられている。
【0052】
上記[7]に記載の構成によれば、センサをボイラ外に配置することにより、ボイラの内部空間の高温に起因するセンサの損傷を抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 異常検出装置
2 振動データ取得部
4 異常検出部
6 出力部
8 周波数解析部
10 記憶部
20 スートブロワ
22 チューブ
24 ノズル
26 ヘッドバルブ
28 トラベリングキャレッジ
29 ラック
30 異常検出システム
40 センサ
50 報知装置
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
100 ボイラ
101 内部空間
101a 燃焼空間
101b 流通空間
102 火炉
104 側壁
106 バーナー
108 過熱器
110 煙道
112 節炭器
112 節炭器
114 再熱器
116 炉底部
118 天井壁
119 灰排出口
120 灰処理装置
122 外周壁
124 炉壁管
126 フィン
128 保温材
130 外装板
132 導波棒
D 振動データ
I 報知情報
La 振動加速度レベル
S 高圧流体
S1 取得ステップ
S2 解析ステップ
S3 検出ステップ
S4 出力ステップ
T 運転期間
Ta 噴射期間
TD 運転期間データ
X 閾値

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8