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特開2024-168287バーナの異常燃焼検出装置、およびバーナの異常燃焼検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168287
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】バーナの異常燃焼検出装置、およびバーナの異常燃焼検出システム
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20241128BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F23N5/24 106Z
F22B37/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084834
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中江 修二
(72)【発明者】
【氏名】沖本 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅幹
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】堀岡 竜治
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003SA00
3K003SB08
3K003SC00
(57)【要約】
【課題】バーナの異常燃焼を速やかに検出することが可能なバーナの異常燃焼検出装置を提供する。
【解決手段】ボイラの炉壁に設けられたバーナの異常燃焼検出装置は、炉壁の振動に関する物理量を検知するセンサから物理量を示す振動データを取得する振動データ取得部と、振動データ取得部によって取得された振動データに基づいて、バーナの異常燃焼を検出するように構成された異常燃焼検出部と、を備える。
【選択図】図8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの炉壁に設けられたバーナの異常燃焼検出装置であって、
前記炉壁の振動に関する物理量を検知するセンサから前記物理量を示す振動データを取得する振動データ取得部と、
前記振動データ取得部によって取得された前記振動データに基づいて、前記バーナの異常燃焼を検出するように構成された異常燃焼検出部と、を備える、
バーナの異常燃焼検出装置。
【請求項2】
前記異常燃焼検出部は、前記振動データ取得部によって取得された前記振動データが閾値を超過した場合に、前記バーナの異常燃焼を検出する、
請求項1に記載のバーナの異常燃焼検出装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記バーナが正常状態であるときに前記ボイラの運転負荷に対応付けて取得された前記振動データに基づいて設定される、
請求項2に記載の異常燃焼検出装置。
【請求項4】
前記閾値は、前記バーナの出口の閉塞率に基づいて設定される、
請求項2又は3に記載のバーナの異常燃焼検出装置。
【請求項5】
前記バーナから噴射される流体の流量および流速のうちの少なくとも一方を含む流体情報を取得する流体情報取得部をさらに備え、
前記異常燃焼検出部は、前記振動データ取得部によって取得された前記振動データ、前記閾値、および前記流体情報取得部によって取得された前記流体情報の変化量に基づいて、前記バーナの異常燃焼を検出する、
請求項4に記載のバーナの異常燃焼検出装置。
【請求項6】
前記異常燃焼検出部によって前記バーナの異常燃焼が検出されると、前記バーナの点検を促すための報知情報を報知装置に出力する出力部を、さらに備える、
請求項1から3の何れか一項に記載のバーナの異常燃焼検出装置。
【請求項7】
前記振動データ取得部によって取得された前記振動データについて周波数解析を行い、前記振動データにおける所定の周波数帯の振動加速度レベルを算出する周波数解析部をさらに備え、
前記異常燃焼検出部は、前記周波数解析部によって算出された前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが閾値を超過した場合に、前記バーナの異常燃焼を検出する、
請求項1から3の何れか一項に記載のバーナの異常燃焼検出装置。
【請求項8】
請求項1から3の何れか一項に記載のバーナの異常燃焼検出装置と、
前記センサと、を備える、
バーナの異常燃焼検出システム。
【請求項9】
前記センサは、前記ボイラ外に設けられている、
請求項8に記載のバーナの異常燃焼検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラの炉壁に設けられたバーナの異常燃焼検出装置、およびバーナの異常燃焼検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されるように石炭炊きボイラの火炉では、石炭の燃焼によって生成される燃焼灰がバーナスロート部の周囲に位置する耐火材に付着し、燃焼灰の大きな塊であるクリンカが生成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-271001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記クリンカは、バーナ内部に堆積してバーナ内部を閉塞させる場合がある。バーナ内部が閉塞すると、バーナ内部に微粉炭が滞留し、この滞留した微粉炭が着火する虞がある。しかしながら、バーナ内部にクリンカが堆積したことをボイラの運転データから検知することは困難である。運転員が火炎の状況を目視確認することでバーナ内部のクリンカの有無をある程度の精度で検知できるが、目視確認はボイラが低負荷で運転している期間に限定され、且つボイラに設けられているのぞき窓から目視できる範囲に限定される。
【0005】
バーナ内部が閉塞されると、バーナ内部を流通する流体(例えば、燃焼用空気)の流速が局所的に変化するので、バーナの燃焼状態が変化し(バーナの異常燃焼が発生し)、炉内圧力の変動が大きくなる。このため、炉内圧力の変動からバーナの異常燃焼を検出することで、ボイラの運転期間や運転員の目視が可能な範囲に限定されずにバーナ内部のクリンカの有無を検知できる。そして、バーナ内部のクリンカに対して必要な対策を行えるように、バーナの異常燃焼を速やかに検出することが望ましい。
【0006】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、バーナの異常燃焼を速やかに検出することが可能なバーナの異常燃焼検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るバーナの異常燃焼検出装置は、ボイラの炉壁に設けられたバーナの異常燃焼検出装置であって、前記炉壁の振動に関する物理量を検知するセンサから前記物理量を示す振動データを取得する振動データ取得部と、前記振動データ取得部によって取得された前記振動データに基づいて、前記バーナの異常燃焼を検出するように構成された異常燃焼検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示のバーナの異常燃焼検出装置によれば、バーナの異常燃焼を速やかに検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るボイラの概略構成を模式的に示す図である。
図2】一実施形態に係るバーナの構成を示す模式的な断面図である。
図3】一実施形態に係るセンサの構成を示す模式的な断面図である。
図4】一実施形態に係るセンサの位置を説明するための図である。
図5】一実施形態に係る閉塞率を説明するための図である。
図6A】一実施形態に係る閉塞率の時系列データの一例を示す図である。
図6B】一実施形態に係るセンサから取得した振動データにおける所定の周波数の振動加速度レベルの時系列データの一例を示す図である。
図7】一実施形態に係る異常燃焼検出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8】一実施形態に係る異常燃焼検出装置の機能的な構成の一例を説明するための図である。
図9】一実施形態に係る異常燃焼検出装置による異常燃焼検出フローの一例を示す図である。
図10】振動加速度レベルと周波数との関係を示すグラフである。
図11】振動加速度レベルの増加量と混合気の流速の時間変動幅(増加量)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態によるバーナの異常燃焼検出装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
図1は、一実施形態に係るボイラ100の概略構成を模式的に示す図である。図1に示すように、ボイラ100は、火炉102と、火炉102の炉壁104に設けられたバーナ106と、バーナの異常燃焼検出システム(以下、異常燃焼検出システム30と記載する)と、を備える。ボイラ100は、火炉2内に噴射された燃料Fを火炎Xを形成して燃焼することで高温の燃焼ガスGを生成し、この高温の燃焼ガスGから熱を回収することで蒸気を生成する。不図示であるが、燃焼ガスGの熱は、火炉102内に設けられる熱交換器によって回収されてもよいし、火炉102から排出された燃焼ガスGが流通する煙道内に設けられる熱交換器によって回収されてもよい。ボイラ100は、例えば石炭を燃料Fとして用いる石炭炊きボイラであってもよい。
【0012】
火炉102は、壁で周囲を囲うことで筒形状(円筒形状や四角筒形状)を有しており、内部にバーナ106から噴射される燃料Fを燃焼させるための燃焼空間103が形成されている。燃焼空間103は、炉壁104によって囲まれることで画定されている。炉壁104は、鉛直方向D1に沿って延在する側壁110と、側壁110の下端に接続し火炉102の床面105を含む炉底部112と、側壁110の上端に接続する天井壁113と、を含む。炉底部112は、漏斗状に形成されており、側壁110の下端から下方に向かうにつれて炉底部112の中央に近づくように、鉛直方向D1及び水平方向(鉛直方向D1と垂直に交差する方向)の各々に対して傾斜した傾斜方向に沿って延在する。尚、炉底部112の下端には燃料Fの燃焼によって生成された燃焼灰を排出するための灰排出口が形成されていてもよい。
【0013】
バーナ106は、燃焼空間103で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成する。図1に例示する形態では、バーナ106は、火炉102の側壁110に設けられている。バーナ106は、微粉炭供給管152を介して、粉砕機150に接続されている。粉砕機150は、石炭(燃料F)を粉砕して微粉炭を生成する。微粉炭供給管152は、微粉炭を粉砕機150からバーナ106に供給するように構成されており、例えば、微粉炭と搬送用空気(1次空気)とが混合した混合気FAがバーナ106に向かって流通するようになっている。
【0014】
図2は、一実施形態に係るバーナ106の概略構成を模式的に示す図である。図2に例示するように、バーナ106は、火炉102の側壁110を開口するバーナスロート部114に設けられている。バーナスロート部114は、耐火材によって形成されており、燃焼空間103に向かうにつれて開口116を拡げる傾斜面118を含む。バーナスロート部114の開口116は、燃焼空間103から視た場合に円形状を有していてもよいし、矩形状を有していてもよい。
【0015】
図2に例示するように、バーナ106は、ノズル120と、スリーブ140と、を含む。ノズル120は、矩形状あるいは円筒形状を有しており、一方向に沿って延びている。ノズル120は、上述した微粉炭供給管152と接続されており、内部に混合気FAが流通する混合気流路122が形成されている。ノズル120の一端部(ノズル120の軸線方向D2の前方側の前端部)には、混合気流路122の出口123が形成されている。混合気FAは、混合気流路122の出口123から燃焼空間103に向かって噴射される。
【0016】
以下、ノズル120の軸線Oが延びる方向を軸線方向D2とする。軸線方向D2のうち燃焼空間103に向かう方向を軸線方向D2の前方とし、燃焼空間103から離れる方向を軸線方向D2の後方とする。
【0017】
スリーブ140は、矩形状あるいは円筒形状を有しており、軸線方向D2に沿って延びている。スリーブ140は、ノズル120を外周側から囲っている。スリーブ140の内径は、ノズル120の外径よりも大きい。スリーブ140とノズル120との間には、二次空気が流通する二次空気流路が形成されていてもよい。スリーブ140は、ノズル120の出口123よりも軸線方向D2の前方側に位置する前端部142を含んでいる。
【0018】
図1に示すように、異常燃焼検出システム30は、炉壁104の振動に関する物理量を検知するセンサ40と、センサ40によって検出した炉壁104の振動に関する物理量を示す振動データAに基づいて、バーナ106の異常燃焼を検出するように構成されたバーナの異常燃焼検出装置(以下、異常燃焼検出装置1と記載する)と、を含む。センサ40の位置は、特に限定されないが、バーナ106の異常燃焼を精度良く検出する視点からバーナスロート部114の開口116の近傍である。
【0019】
一実施形態では、センサ40は、側壁110の振動に関する物理量(例えば、側壁110の振動時の側壁110の変位、振動速度又は振動加速度等のように、振動の程度を定量的に特徴づけることのできる物理量)を検知する。この目的によれば、センサ40は、例えばAEセンサ、加速度センサ又はレーザ振動センサ等であってもよい。以下では、センサ40が、側壁110の振動に関する物理量として側壁110の振動加速度レベルLaを計測する振動加速度センサである場合を例に説明する。
【0020】
図3は、一実施形態に係るセンサ40の構成を示す模式的な断面図である。図3に例示する形態では、火炉102の側壁110は、交互に配置された炉壁管124及びフィン126と、炉壁管124とフィン126における火炉102の外側を向く面を覆う保温材128と、保温材128における火炉102の外側を向く面を覆う外装板130と、を含む。また、保温材128と外装板130とをそれらの厚さ方向に貫通する導波棒132の一端がフィン126に固定されており、側壁110の外側(火炉102の外側)に配置されたセンサ40が導波棒132の他端に固定されている。このように、センサ40を火炉102の外側に配置することにより、火炉102の内部の高温に起因してセンサ40の各々が破損することを抑制することができる。尚、図3に例示する形態では、センサ40は側壁110の振動を検知する振動式センサであったが、本開示はこの形態に限定されない。センサ40は、燃焼空間103内の音の振動を検知する音響式センサであってもよい。
【0021】
図4は、一実施形態に係るセンサ40の位置を説明するための図である。図4におけるセンサ40は、鉛直方向D1の位置を示している。図4に例示するように、センサ40は、バーナスロート部114の開口116よりも上方に位置している。バーナ106に二次空気を供給するための風箱を接続する場合、風箱は火炉102外を側壁110に沿って配置されることがある。このため、センサ40がバーナスロート部114の開口116よりも左方または右方に位置していると、センサ40へのアクセス性が低下する虞がある。図4に例示する構成によれば、センサ40は、開口116よりも上方に位置しているので、センサ40へのアクセス性を向上させることができる。また、バーナ段は高温雰囲気にさらされやすいが、センサ40を開口116よりも上方に位置させることで、センサ40の熱対策を容易化できる。尚、本開示は、センサ40を開口116よりも上方に位置させることに限定するものではない。センサ40は、開口116よりも下方に位置してもよいし、左方又は右方に位置していてもよい。
【0022】
図4に例示する形態では、仮想線Lがノズル120の軸線Oから鉛直方向D1の上方に直線状に延びている。この仮想線Lがバーナスロート部114の開口116の周縁と交差する点を第1交差点42とする。さらに、この仮想線Lがセンサ40と最初に交差する点を第2交差点44とする。第1交差点42とノズル120の軸線Oとの間の距離をrとし、第2交差点44とノズル120の軸線Oとの間の距離をdとすると、d-r<Kを満たす。Kは、センサ40が一定の精度を確保して検知可能な範囲を示す予め決められた値であって、例えば、5mである。
【0023】
図5は、一実施形態に係る閉塞率Yを説明するための図である。図6Aは、一実施形態に係る閉塞率Yの時系列データの一例を示す図である。図6Bは、一実施形態に係るセンサ40から取得した振動データAにおける所定の周波数の振動加速度レベルLaの時系列データの一例を示す図であって、図6Aに示す時系列に対応している。
【0024】
閉塞率Yは、燃焼空間103からバーナ106を視認した際に、クリンカCの占める面積B1をバーナ106の内部の面積で除算することで算出される値である。一実施形態では、図5に例示するように、閉塞率Yは、バーナ106の出口の閉塞率であって、クリンカCの占める面積B1をスリーブ140の内部空間の面積B2で除算することで算出される。ここで、スリーブ140の内部空間の面積B2とは、スリーブ140を鉛直方向D1に沿って切断した際のスリーブ140の内部空間が占める断面積である。
【0025】
図6Aに示すように、時間の経過とともにスリーブ140の前端部142に堆積するクリンカCの量が増加し、閉塞率Yが増加している。そして、図6Bに示すように、時間の経過とともに閉塞率Yが増加しているため、振動加速度レベルLaも増加している。
【0026】
図7は、一実施形態に係る異常燃焼検出装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。図8は、一実施形態に係る異常燃焼検出装置1の機能的な構成の一例を説明するための図である。図9は、一実施形態に係る異常燃焼検出装置1による異常燃焼検出フローの一例を示す図である。
【0027】
図7に示すように、異常燃焼検出装置1は、例えばプロセッサ72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、HDD(Hard Disk Drive)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。なお、異常燃焼検出装置1のハードウェア構成は上記に限定されず、制御回路と記憶装置との組み合わせにより構成されてもよい。また、異常燃焼検出装置1は、異常燃焼検出装置1の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明する異常燃焼検出装置1における各部の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてプロセッサ72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。異常燃焼検出装置1を構成するハードウェアは、1つの場所に集約されていてもよいし、複数の場所に分散して設けられていてもよい。幾つかの実施形態では、異常燃焼検出装置1は、クラウド環境に設けられたクラウドサーバである。
【0028】
図1に示すように、異常燃焼検出装置1は、センサ40と電気的に接続されており、このセンサ40から振動データAを取得可能となっている。そして、図8に示すように、異常燃焼検出装置1は、振動データ取得部2と、異常燃焼検出部4と、出力部6と、周波数解析部8と、流体情報取得部10と、を含む。
【0029】
図9に示すように、取得ステップS1において、振動データ取得部2は、センサ40から振動データAを取得する。一実施形態では、振動データ取得部2は、センサ40から側壁110の振動に関する物理量を示す振動データAとして、側壁110の振動加速度レベルLaを示す振動データA(図6Bに例示する振動加速度レベルLaの時系列データ)をセンサ40から取得する。
【0030】
解析ステップS2において、周波数解析部8は、センサ40から取得した振動データAについて周波数解析(FFT解析)を行い、該振動データAにおける所定の周波数帯の振動加速度レベルLaを算出する。なお、ここでの「所定の周波数帯」とは、ボイラ100の運転に伴う側壁110の定常振動の周波数(火炉102内の燃焼音やバーナ106の噴霧音等の喧騒音(背景音)の周波数)よりもある程度高い周波数帯であってもよい。図10は、振動加速度レベルLaと周波数との関係を示すグラフである。図10において、実線で示す振動加速度レベルLa1はバーナ106が異常燃焼しているときの振動加速度レベルLaを示し、点線で示す振動加速度レベルLa2はバーナ106が正常に燃焼しているときの振動加速度レベルLaを示している。図10に示すように、バーナ106が正常に燃焼しているときに発生する音は小さい周波数帯に偏っている。一方で、バーナ106が異常燃焼すると、大きい周波数成分の振動加速度レベルLaが増加している。
【0031】
検出ステップS3において、異常燃焼検出部4は、振動データ取得部2によって取得された振動データAに基づいて、バーナ106の異常燃焼を検出する。一実施形態では、異常燃焼検出部4は、振動加速度レベルLaが予め設定された閾値Zを超過した場合に(検出ステップS3:Yes)、バーナ106の異常を検出する。バーナ106の異常が検出されると、出力ステップS4に進む。異常燃焼検出部4は、振動加速度レベルLaが閾値Zを超過しない場合には(検出ステップS3:No)、取得ステップS1に戻る。
【0032】
閾値Zは、予め設定される値である。一実施形態に係る閾値Zの設定例について説明する。一実施形態では、異常燃焼検出装置1は、ボイラ100の運転負荷を取得可能に構成されている。例えば、異常燃焼検出装置1は、ボイラ100の運転制御装置(上位制御装置)からボイラ100の現在の運転状態を示す信号を受け取ることにより、現在のボイラ100の運転負荷を取得してもよい。閾値Zは、バーナ106が正常状態であるときにボイラ100の運転負荷に対応付けて取得された振動加速度レベルLaに基づいて設定される。つまり、閾値Zは、ボイラ100の運転負荷に応じて変化するようになっている。例えば、閾値Zは、ボイラ100の運転負荷とともに、正常値(バーナ106が正常状態であるときの振動加速度レベルLa)との差が大きくなるように設定されている。
【0033】
一実施形態では、閾値Zは、閉塞率Yに基づいて設定される。閉塞率Yが大きくなると、バーナ106(スリーブ140)から噴射される混合気FAの流速が大きくなる。混合気FAの流速が大きくなると、振動加速度レベルLaが大きくなる。閉塞率Yの増加に対応する混合気FAの流速の増加量は既知であり、例えば、閉塞率Yが0%から5%になると混合気FAの流速が0.35m/s増加し、閉塞率Yが0%から10%になると混合気FAの流速が0.60m/s増加する。図11は、振動加速度レベルLaの増加量と混合気FAの流速の時間変動幅(増加量)との関係を示すグラフである。図11に例示するように、振動加速度レベルLaの増加量は、混合気FAの流速の時間変動幅とともに大きくなっている。閾値Zの設定手順の一例について説明すると、まずはバーナ106が異常燃焼しているとされる閉塞率Yを決定する。そして、この閉塞率Yに対応する振動加速度レベルLaの増加量を算出する。最後に、正常値にこの振動加速度レベルLaの増加量を加算して、閾値Zが設定される。
【0034】
一実施形態では、流体情報取得部10は、バーナ106から噴射される混合気FAの流量および流速のうちの少なくとも一方を含む流体情報FIを取得可能に構成されている。例えば、流体情報取得部10は、ボイラ100の運転負荷に基づいて、流体情報FIを算出してもよい。または、流体情報取得部10は、混合気FAの流量を調整するバルブの開度に基づいて、流体情報FIを算出してもよい。流体情報取得部10は、混合気FAの流量や流速を測定する測定装置から流体情報FIを取得してもよい。
【0035】
一実施形態では、検出ステップS3において、異常燃焼検出部4は、振動データ取得部2によって取得された振動データA、閾値Z、および流体情報取得部10によって取得された流体情報FIの変化量に基づいて、バーナ106の異常燃焼を検出する。
【0036】
出力ステップS4において、出力部6は、ボイラ100の運転操作を行うオペレータ-にバーナ106の点検を促すための報知情報Iを報知装置50に出力する。例えば報知装置50がディスプレイ等の表示装置である場合には、出力部6は、上記報知情報Iを報知装置50に表示させるための信号を報知装置50に出力し、報知装置50(表示装置)は、バーナ106の点検を促すための報知情報Iを表示してもよい。また、例えば報知装置50が警報器等である場合には、出力部6は、上記報知情報Iを報知装置50から音声として出力させるための信号を報知装置50に出力し、報知装置50(警報器等)は、バーナ106の点検を促すための報知情報Iを音声として出力してもよい。
【0037】
(作用・効果)
一実施形態に係る異常燃焼検出装置1の作用・効果について説明する。図6Aおよび図6Bに示して説明したように、バーナ106内部(スリーブ140の前端部142)が閉塞されると、バーナ106内部を流通する混合気FAの流速が局所的に変化するので、バーナ106の燃焼状態が変化する(バーナ106の異常燃焼が発生する)。そして、このようなバーナ106の異常燃焼が発生すると、側壁110の振動が促進される。
【0038】
一実施形態によれば、異常燃焼検出装置1は、側壁110の振動に関する物理量を示す振動データAを取得する。そして、異常燃焼検出装置1は、この振動データAに基づいてバーナ106の異常燃焼を検出するので、バーナ106の異常燃焼を速やかに検出することができる。
【0039】
一実施形態によれば、異常燃焼検出装置1は、バーナ106の異常燃焼が検出された場合に、報知装置50に報知情報Iを報知させることで、オペレータにバーナ106の点検を実行させ、必要な対策を速やかにとらせることが可能となる。
【0040】
一実施形態によれば、異常燃焼検出装置1は、バーナ106が正常燃焼している場合の振動データAを想定して閾値Zが設定されることにより、バーナ106の異常燃焼を精度良く検出することができる。
【0041】
ボイラ100の運転負荷が変化すると、振動データAも変化する。このため、例えば、ボイラ100の運転負荷が大きい場合に設定された閾値Zだけが用いられていると、ボイラ100の運転負荷が小さいときのバーナ106の異常燃焼の検出精度が低くなってしまう。これに対して、一実施形態によれば、閾値Zがボイラ100の運転負荷に対応付けられて設定されるので、ボイラ100の運転負荷が変化してもバーナ106の異常燃焼を精度良く検出することができる。一実施形態によれば、閾値Zが閉塞率Yに基づいて設定されているので、スリーブ140の前端部142に堆積したクリンカCによるバーナ106の異常燃焼を検出するのに適した閾値Zを設定することができる。
【0042】
バーナ106から噴射される混合気FAの流量または流速が変化すると、振動データAも変化する。このため、例えば、流量の変化が小さい、又は無いにも関わらず振動データAが閾値Zを超過する場合には、バーナ106が異常燃焼している可能性が高い。一方で、混合気FAの流量の変化が大きいときに振動データAが閾値Zを超過しても、バーナ106が異常燃焼していない可能性がある。一実施形態によれば、振動データA、閾値Z、および流体情報FIの変化量に基づいて、バーナ106の異常燃焼が検出されるので、バーナ106の異常燃焼の検出精度を高めることができる。
【0043】
バーナ106の異常燃焼によって生じる側壁110の振動の振動加速度レベルLaは、ボイラ100の運転に伴う定常振動と比較して、比較的高い周波数において大きな値をとるような周波数特性を有している。一実施形態によれば、その周波数特性を考慮して上記所定の周波数帯をボイラ100の運転に伴う定常振動よりも比較的高い周波数帯(側壁110の振動の振動加速度レベルLaの周波数分布において比較的振動加速度レベルLaが大きな周波数帯)に設定することにより、バーナ106の異常燃焼をさらに精度良く検出することができる。尚、一実施形態では、バーナ106の異常燃焼の検出精度を高めるために、周波数解析部8で所定の周波数帯について算出した振動加速度レベルLaを閾値Zと比較したが、周波数解析部8は必須ではなく、センサ40から取得した振動加速度レベルLaが閾値Zを超過した場合に、バーナ106の異常燃焼を検出してもよい。
【0044】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0045】
[1]本開示に係るバーナの異常燃焼検出装置(1)は、
ボイラ(100)の炉壁(104)に設けられたバーナ(106)の異常燃焼検出装置であって、
前記炉壁の振動に関する物理量を検知するセンサ(40)から前記物理量を示す振動データ(D)を取得する振動データ取得部(2)と、
前記振動データ取得部によって取得された前記振動データに基づいて、前記バーナの異常燃焼を検出するように構成された異常燃焼検出部(4)と、を備える。
【0046】
バーナ内部が閉塞されると、バーナ内部を流通する流体(例えば、燃焼用空気)の流速が局所的に変化するので、バーナの燃焼状態が変化する(バーナの異常燃焼が発生する)。そして、このようなバーナの異常燃焼が発生すると、炉壁の振動が促進される。上記[1]に記載の構成によれば、炉壁の振動に関する物理量を示す振動データを取得される。そして、この振動データに基づいて、バーナの異常燃焼を速やかに検出することができる。
【0047】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記異常燃焼検出部は、前記振動データ取得部によって取得された前記振動データが閾値(Z)を超過した場合に、前記バーナの異常燃焼を検出する。
【0048】
上記[2]に記載の構成によれば、閾値を適切に設定することにより、バーナの異常燃焼を精度良く検出することができる。例えばバーナが正常燃焼している場合の振動データを想定して閾値を設定することにより、バーナの異常燃焼を精度良く検出することができる。
【0049】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の構成において、
前記閾値は、前記バーナが正常状態であるときに前記ボイラの運転負荷に対応付けて取得された前記振動データに基づいて設定される。
【0050】
ボイラの運転負荷が変化すると、振動データも変化する。このため、例えば、ボイラの運転負荷が大きい場合に設定された閾値だけを用いていると、ボイラの運転負荷が小さいときのバーナの異常燃焼の検出精度が低くなってしまう。上記[3]に記載の構成によれば、閾値がボイラの運転負荷に対応付けられるので、ボイラの運転負荷が変化してもバーナの異常燃焼を精度良く検出することができる。
【0051】
[4]幾つかの実施形態では、上記[2]又は[3]に記載の構成において、
前記閾値は、前記バーナの出口の閉塞率(Y)に基づいて設定される。
【0052】
上記[4]に記載の構成によれば、バーナ内部に堆積したクリンカによるバーナの異常燃焼を検出するのに適した閾値を設定することができる。
【0053】
[5]幾つかの実施形態では、上記[4]に記載の構成において、
前記バーナから噴射される流体(FA)の流量および流速のうちの少なくとも一方を含む流体情報(FI)を取得する流体情報取得部(10)をさらに備え、
前記異常燃焼検出部は、前記振動データ取得部によって取得された前記振動データ、前記閾値、および前記流体情報取得部によって取得された前記流体情報の変化量に基づいて、前記バーナの異常燃焼を検出する。
【0054】
バーナから噴射される流体の流量または流速が変化すると、振動データも変化する。このため、例えば、流量の変化が小さい、又は無いにも関わらず振動データが閾値を超過する場合には、バーナが異常燃焼している可能性が高い。一方で、流量の変化が大きいときに振動データが閾値を超過しても、バーナが異常燃焼していない可能性がある。上記[5]に記載の構成によれば、振動データ、閾値、および流体情報の変化量に基づいて、バーナの異常燃焼が検出されるので、バーナの異常燃焼の検出精度を高めることができる。
【0055】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記異常燃焼検出部によって前記バーナの異常燃焼が検出されると、前記バーナの点検を促すための報知情報(I)を報知装置(50)に出力する出力部6を、さらに備える。
【0056】
上記[6]に記載の構成によれば、バーナの異常燃焼が検出された場合に報知装置が報知情報を報知することで、オペレータにバーナの点検を実行させ、必要な対策を速やかにとることが可能となる。
【0057】
[7]幾つかの実施形態では、上記[1]から[6]の何れか1つに記載の構成において、
前記振動データ取得部によって取得された前記振動データについて周波数解析を行い、前記振動データにおける所定の周波数帯の振動加速度レベル(La)を算出する周波数解析部(8)をさらに備え、
前記異常燃焼検出部は、前記周波数解析部によって算出された前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが閾値を超過した場合に、前記バーナの異常燃焼を検出する。
【0058】
上記[7]に記載の構成によれば、バーナの異常燃焼によって生じる炉壁の振動の振動加速度レベルは、ボイラの運転に伴う定常振動と比較して、比較的高い周波数において大きな値をとるような周波数特性を有している。このため、その周波数特性を考慮して上記所定の周波数帯をボイラの運転に伴う定常振動よりも比較的高い周波数帯(炉壁の振動の振動加速度レベルの周波数分布において比較的振動加速度レベルが大きな周波数帯)に設定することにより、バーナの異常燃焼をさらに精度良く検出することができる。
【0059】
[8]本開示に係るバーナの異常燃焼検出システム(30)は、
上記[1]から[7]の何れか1つに記載のバーナの異常燃焼検出装置と、
前記センサと、を備える。
【0060】
上記[8]に記載の構成によれば、バーナの異常燃焼検出システムは、上記[1]から[7]の何れか1つに記載のバーナの異常燃焼検出装置を備えるため、バーナの異常燃焼を高精度に検出することができる。
【0061】
[9]幾つかの実施形態では、上記[8]に記載の構成において、
前記センサは、前記ボイラ外に設けられている。
【0062】
上記[9]に記載の構成によれば、センサをボイラ外に配置することにより、ボイラの内部空間の高温に起因するセンサの損傷を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 異常燃焼検出装置
2 振動データ取得部
4 異常燃焼検出部
6 出力部
8 周波数解析部
10 流体情報取得部
30 異常燃焼検出システム
40 センサ
50 報知装置
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
100 ボイラ
102 火炉
103 燃焼空間
104 炉壁
106 バーナ
110 側壁
114 バーナスロート部
116 開口
120 ノズル
122 混合気流路
124 炉壁管
126 フィン
128 保温材
130 外装板
132 導波棒
140 スリーブ
142 前端部
150 粉砕機
152 微粉炭供給管
A 振動データ
B1 面積
B2 断面積
C クリンカ
D1 鉛直方向
D2 軸線方向
F 燃料
FA 混合気
FI 流体情報
G 燃焼ガス
I 報知情報
L 仮想線
La 振動加速度レベル
O 軸線
S1 取得ステップ
S2 解析ステップ
S3 検出ステップ
S4 出力ステップ
X 火炎
Y 閉塞率
Z 閾値

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11