(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168290
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ボイラ流体漏洩検出装置及びボイラ流体漏洩検出システム
(51)【国際特許分類】
F22B 37/38 20060101AFI20241128BHJP
F22B 37/42 20060101ALI20241128BHJP
G01M 3/24 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
F22B37/38 D
F22B37/42 D
G01M3/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084837
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中江 修二
(72)【発明者】
【氏名】沖本 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅幹
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】堀岡 竜治
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA01
2G067BB11
2G067BB22
2G067CC02
2G067DD04
2G067DD13
2G067EE12
2G067EE13
(57)【要約】
【課題】ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を精度良く検出することが可能なボイラ流体漏洩検出装置を提供する。
【解決手段】ボイラ流体漏洩検出装置であって、ボイラに設けられたセンサからボイラで発生する振動に関する物理量を示す振動データを取得し、ボイラの給水流量を検出する流量計から給水流量を取得するように構成されたデータ取得部と、データ取得部によって取得した振動データ及び給水流量に基づいて、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出するように構成された漏洩検出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラに設けられたセンサから前記ボイラで発生する振動に関する物理量を示す振動データを取得し、前記ボイラの給水流量を検出する流量計から前記給水流量を取得するように構成されたデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得した前記振動データ及び前記給水流量に基づいて、前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出するように構成された漏洩検出部と、
を備える、ボイラ流体漏洩検出装置。
【請求項2】
前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を前記漏洩検出部が検出した場合に前記ボイラの伝熱管から流体が漏洩していることを報知するための報知情報を出力するように構成された報知情報出力部を更に備える、請求項1に記載のボイラ流体漏洩検出装置。
【請求項3】
前記漏洩検出部は、前記振動データが示す前記物理量が第1閾値を超え、且つ、前記給水流量が第2閾値を超えた場合に、前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出するように構成された、請求項1に記載の蒸気漏洩検出装置。
【請求項4】
前記漏洩検出部は、前記振動データが示す前記物理量が前記第1閾値を超えていても前記給水流量が前記第2閾値を超えていない場合には、前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩が発生していないと判定するように構成された、請求項3に記載のボイラ流体漏洩検出装置。
【請求項5】
前記データ取得部によって取得した前記振動データについて周波数解析を行い、前記振動データにおける所定の周波数帯の振動加速度レベルを算出する周波数解析部を更に備え、
前記漏洩検出部は、前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが第1閾値を超え且つ前記給水流量が第2閾値を超えた場合に、前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出するように構成された、請求項1に記載の蒸気漏洩検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のボイラ流体漏洩検出装置と、前記センサと、を備える、ボイラ流体漏洩検出システム。
【請求項7】
前記センサは、前記ボイラの外側に設けられた、請求項6に記載のボイラ流体漏洩検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラ流体漏洩検出装置及びボイラ流体漏洩検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボイラの熱交換機器等からの流体の漏洩を検出することを可能とするチューブリーク検知装置が開示されている。この検知装置は、測定対象である熱交換機器内の流体配管が設置されている部分から発せられる音響を、指向性をもって集音する集音部と、集音部の出力である、集音された音響信号を受信して、各音響信号を、周波数帯域と音圧レベルとの関係を表す音響データに変換する音響データ変換部と、音響データ変換部の出力である各音響データを取得して、各音響データを相互に比較することができるように表示する音響データ表示部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の検知装置は、例えば何らかの原因によって音響信号の誤検知等が生じると、流体の漏洩を誤検知してしまう可能性があり、流体の漏洩の検出精度を高めることに限界があった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を精度良く検出することが可能なボイラ流体漏洩検出装置及びこれを備えるボイラ流体漏洩検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るボイラ流体漏洩検出装置は、
ボイラに設けられたセンサから前記ボイラで発生する振動に関する物理量を示す振動データを取得し、前記ボイラの給水流量を検出する流量計から前記給水流量を取得するように構成されたデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得した前記振動データ及び前記給水流量に基づいて、前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出するように構成された漏洩検出部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を精度良く検出することが可能なボイラ流体漏洩検出装置及びこれを備えるボイラ流体漏洩検出システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るボイラ流体漏洩システム2を備える発電プラント100の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】ボイラ4の壁19の振動加速度レベルを計測するセンサ40の各々の配置の一例を示す模式的な断面図である。
【
図3】制御装置46のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】制御装置46の機能的な構成の一例を説明するための図である。
【
図5】制御装置46による流体漏洩検出フローの一例を示す図である。
【
図6】
図5のS13及びS14の判定の一例をより具体的に説明するための図であり、2つのセンサ40a,40bから取得した振動データの各々における上記所定の周波数帯の振動加速度レベルをそれぞれLa,Lbとした場合における、振動加速度レベルLa,Lbの各々の時系列データの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
図1は、一実施形態に係るボイラ流体漏洩検出システム14を備える発電プラント100の概略構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、発電プラント100は、ボイラ4と、ボイラ4で生成した蒸気によって回転する蒸気タービン6と、蒸気タービン6によって駆動される発電機8と、蒸気タービン6を通過した蒸気を凝縮させる復水器10と、ボイラ4に給水するための給水ポンプ12と、ボイラ4が備える伝熱管(例えば後述の節炭器28を構成する伝熱管、過熱器30を構成する伝熱管又は炉壁管34等)における流体(水又は蒸気)の漏洩を検出するためのボイラ流体漏洩検出システム14と、発電機8の出力を計測する発電機出力計42とを備える。
【0011】
ボイラ4は、火炉20、煙道22、気水分離器24、水ドラム26、節炭器28、過熱器30及びボイラ循環ポンプ32を含む。火炉20及び煙道22の少なくとも一部は、ボイラ本体としての圧力容器15を構成する。ボイラ4は、図示しない再熱器等のその他の熱交換器を含んでいてもよい。
【0012】
火炉20は、不図示のバーナーによって燃料を燃焼させて火炉20の内部に燃焼ガスを生成するように構成されている。火炉20の内部で生成された燃焼ガスは、火炉20の上部に接続された煙道22を通って不図示の煙突から排出される。
【0013】
水ドラム26に供給された給水は、水ドラム26から火炉20の炉壁を構成する炉壁管34を通る過程で加熱されて蒸気となり、気水分離器24に導かれる。また、気水分離器24には、節炭器28で加熱された給水が導かれ、気水分離器24の内部は、蒸気と水(缶水)との2相状態にある。
【0014】
気水分離器24の内部の蒸気は、過熱器30に供給され、過熱器30で過熱されて過熱蒸気となる。過熱器30を出た過熱蒸気は、蒸気タービン6に供給されて蒸気タービン6で仕事をした後、復水器10で凝縮して凝縮水となり、給水ライン16に設けられた給水ポンプ12によって再びボイラ4に給水される。
【0015】
気水分離器24の内部の水は、降水管35に流入し、降水管35に設けられたボイラ循環ポンプ32によって水ドラム26に供給されてボイラ4内を循環する。
【0016】
ボイラ流体漏洩検出システム14は、ボイラ4で発生する振動に関する物理量を検知するための複数のセンサ40と、ボイラ4の給水流量を計測するための流量計44と、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩を検出するための流体漏洩検出装置として機能する制御装置46とを備える。
【0017】
複数のセンサ40の各々は、ボイラ4の圧力容器15を形成する壁19(火炉20の炉壁21又は煙道22の壁23等)に設けられており、圧力容器15の外側に配置されている。複数のセンサ40の各々は、例えばAEセンサ、加速度センサ又はレーザ振動センサ等であってもよい。図示する例示的形態では、複数のセンサ40は、火炉20の下部に設けられた複数のセンサ40a,40b、火炉20の上部における過熱器30の近傍に設けられた複数のセンサ40c,40d、火炉20の鉛直方向の中央部に設けられた複数のセンサ40e,40f、煙道22における節炭器28の近傍に設けられた複数のセンサ40g,40hを含む。
【0018】
複数のセンサ40の各々は、ボイラ4で発生する振動に関する物理量として、例えば、ボイラ4の壁19(火炉20の炉壁21又は煙道22の壁23等)の振動時におけるセンサ40の各々が設けられた位置での壁19の変位、振動速度又は振動加速度等のように、振動の程度を定量的に特徴づけることのできる物理量)を検知してもよい。以下では、複数のセンサ40の各々が、ボイラ4で発生する振動に関する物理量として、ボイラ4で発生する振動の振動加速度レベル(より詳細には壁19の振動加速度レベル)を計測する振動加速度センサである場合を例に説明する。
【0019】
流量計44は、ボイラ4の給水流量すなわちボイラ4に供給される水の流量を計測するように構成されており、図示する例示的形態では、水ドラム26に流入する水の流量を計測するように構成されている。
【0020】
図2は、ボイラ4の壁19の振動加速度レベルを計測するセンサ40の各々の配置の一例を示す模式的な断面図である。
図2に示す例示的な実施形態では、ボイラ4の壁19は、交互に配置された炉壁管34及びフィン52と、炉壁管34とフィン52における圧力容器15の外側を向く面を覆う保温材54と、保温材54における圧力容器15の外側を向く面を覆う外装板56とを含む。また、保温材54と外装板56とをそれらの厚さ方向に貫通する導波棒58の一端がフィン52に固定されており、壁19の外側に配置されたセンサ40が導波棒58の他端に固定されている。このように、センサ40の各々を圧力容器15の壁19の外側(ボイラ4の外側)に配置することにより、圧力容器15の内部の高温に起因してセンサ40の各々が破損することを抑制することができる。
【0021】
図3は、制御装置46のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4は、制御装置46の機能的な構成の一例を説明するための図である。
【0022】
図3に示すように、制御装置46は、例えばプロセッサ72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、HDD(Hard Disk Drive)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。なお、制御装置46のハードウェア構成は上記に限定されず、制御回路と記憶装置との組み合わせにより構成されてもよい。また制御装置46は、制御装置46の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明する制御装置46における各部の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてプロセッサ72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。制御装置46を構成するハードウェアは、1つの場所に集約されていてもよいし、複数の場所に分散して設けられていてもよい。
【0023】
図4に示すように、制御装置46は、データ取得部60、制御部62、周波数解析部64、漏洩検出部66及び報知情報出力部68を含む。
【0024】
データ取得部60は、発電機出力計42によって計測した発電機8の出力を取得する。データ取得部60のその他の機能については後述する。
【0025】
制御部62は、発電機8の目標出力と発電機出力計42によって計測した発電機8の出力との偏差に基づいて、発電機8の出力が一定となるようにボイラ4の給水流量を制御する発電機出力一定制御を実行可能に構成されている。例えば、発電機8の目標出力をPs、発電機出力計42によって計測した発電機8の出力をPmとすると、制御部62は、発電機出力一定制御において、上記偏差(=Ps-Pm)が正の値である場合にボイラ4の給水流量を増加させ、上記偏差(=Ps-Pm)が負の値である場合にボイラ4の給水流量を減少させる。
【0026】
制御部62は、給水ポンプ12及びボイラ循環ポンプ32のうち一方又は両方を制御することによってボイラ4の給水流量を制御する。例えば、給水ポンプ12の回転数を制御することによってボイラ4の給水流量を制御してもよいし、ボイラ循環ポンプ32の回転数を制御することによってボイラ4の給水流量を制御してもよいし、給水ポンプ12の回転数及びボイラ循環ポンプ32の回転数を制御することによってボイラ4の給水流量を制御してもよい。
周波数解析部64、漏洩検出部66及び報知情報出力部68の各々の機能については後述する。
【0027】
図5は、制御装置46による流体漏洩検出フローの一例を示す図である。
図5に示すように、S11において、データ取得部60は、複数のセンサ40の各々から、上記発電機出力一定制御の実行中にボイラ4で発生する振動に関する物理量を示す振動データとして、センサ40の各々が設けられた位置での圧力容器15の壁19の振動加速度レベルを示す振動データを取得する。また、データ取得部60は、上記発電機出力一定制御の実行中に流量計44によって計測したボイラ4の給水流量を取得する。
【0028】
S12において、周波数解析部64は、S11で複数のセンサ40から取得した振動データの各々について周波数解析(FFT解析)を行い、該振動データの各々における所定の周波数帯の振動加速度レベルをセンサ40毎(振動データ毎)に算出する。なお、ここでの「所定の周波数帯」とは、例えば火炉20内の燃焼音やバーナーの噴霧音等の喧騒音(背景音)の周波数よりもある程度高い周波数帯であってもよい。
【0029】
S13において、漏洩検出部66は、S12でセンサ40毎(振動データ毎)に算出した所定の周波数帯の振動加速度レベルが閾値を超えているか否かをセンサ40毎(振動データ毎)に判定する。S13において、少なくとも1つのセンサに対応する振動加速度レベルが閾値を超えていると判定した場合にはS14に移行し、各センサ40に対応する振動加速度レベルが何れも閾値を超えていないと判定した場合には、漏洩検出部66は、ボイラ4の伝熱管からの流体(水又は蒸気)の漏洩が発生していないと判定し、S11に戻る。
【0030】
S14において、漏洩検出部66は、流量計44によって計測したボイラ4の給水流量が閾値を超えているか否かを判定する。S14において、流量計44によって計測したボイラ4の給水流量が閾値を超えていると判定した場合には、漏洩検出部66は、ボイラ4の伝熱管(例えば過熱器30を構成する伝熱管、節炭器28を構成する伝熱管又は炉壁管34等)からの流体(水又は蒸気)の漏洩を検出する(すなわち、ボイラ4の伝熱管から流体が漏洩していると判定する)。S14において、流量計44によって計測したボイラ4の給水流量が閾値を超えていないと判定した場合には、ボイラ4の伝熱管からの流体(水又は蒸気)の漏洩が発生していないと判定し、S11に戻る。なお、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩の精度良く検出する観点から、漏洩検出部66は、上記発電機出力一定制御が行われていない期間には、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩を検出しないように構成されていてもよい。すなわち、漏洩検出部66は、上記発電機出力一定制御が行われている期間のデータ(上記振動データ及びボイラ4の給水流量のデータ)のみに基づいて上記S13及びS14の判定を行ってもよい。
【0031】
S15において、報知情報出力部68は、ボイラ4の伝熱管から流体が漏洩していることを報知するための報知情報を報知装置70に出力する。例えば報知装置70がディスプレイ等の表示装置である場合には、報知情報出力部68は、上記報知情報を報知装置70に表示させるための信号を報知装置70に出力し、報知装置70(表示装置)は、ボイラ4の伝熱管から流体が漏洩していることを報知するための報知情報をディスプレイ等に表示してもよい。また、例えば報知装置70が警報器等である場合には、報知情報出力部68は、上記報知情報を報知装置70から音声等として出力させるための信号を報知装置70に出力し、報知装置70(警報器等)は、ボイラ4の伝熱管から流体が漏洩していることを報知するための報知情報を音声等によって出力してもよい。
【0032】
図6は、
図5のS13及びS14の判定の一例をより具体的に説明するための図であり、
図1に示した2つのセンサ40a,40bから取得した振動データの各々における上記所定の周波数帯の振動加速度レベルをそれぞれLa,Lbとした場合における、振動加速度レベルLa,Lbの各々の時系列データの一例を示している。
【0033】
図6に示す例では、時刻t0から時刻t3までの期間では、制御部62は、発電機出力一定制御を行っており、具体的には、発電機8の目標出力と発電機出力計42によって計測した発電機8の出力との偏差に基づいて、発電機8の出力が一定となるように、ボイラ4の給水流量を制御している。また、制御部62は、時刻t3から時刻t4までは、発電機出力を徐々に低下させ、時刻t4において発電機出力を0にしている。
【0034】
図6に示す例では、時刻t1において、2つのセンサ40a,40bから取得した振動データの各々における上記所定の周波数帯の振動加速度レベルLa,Lbが同時に閾値Lthを超え、時刻t4よりも後のタイミングまで振動加速度レベルLa,Lbが閾値Lthを超えている状態が継続する。また、時刻t1の直後の時刻t2において、流量計44によって計測したボイラ4の給水流量が閾値Fthを超え、流量計44によって計測したボイラ4の給水流量が閾値Fthを超えている状態が時刻t3まで継続する。
【0035】
このように、発電機8の出力を一定にする制御が行われている期間(ボイラ4の負荷を一定に制御している期間)中の時刻t2に、上記振動加速度レベルLa,Lbの各々が閾値Lthよりも大きく且つボイラ4の給水流量が閾値Fthよりも大きい状態となる。このため、漏洩検出部66は、上記所定の周波数帯の振動加速度レベルLa,Lbの各々が閾値Lthを超え且つボイラ4の給水流量が閾値Fthを超えたと判定してボイラ4の伝熱管からの流体(水又は蒸気)の漏洩を検出し、ボイラ4の伝熱管から流体が漏洩していること報知するための報知情報を報知情報出力部68が報知装置70に出力する。
【0036】
以下、上述した制御装置46(ボイラ流体漏洩検出装置)が奏する効果について説明する。
上記発電プラント100では、発電機8の出力が一定となるようにボイラ4の給水流量を制御部62が制御している状態(例えばボイラ4を定格負荷で運転している状態)において、ボイラ4が備える伝熱管からボイラ4の内部に流体(水又は蒸気)が漏洩すると、ボイラ4の蒸気発生量が低下して発電機8の出力が低下するため、発電機8の出力を確保するためにボイラ4の給水流量を増加させるように制御部62が給水流量を制御する。
【0037】
したがって、上述の制御装置46(ボイラ流体漏洩検出装置)のように、ボイラ4で発生する振動に関する物理量を示す振動データと、ボイラ4の給水流量とに基づいて、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩を検出することによって、ボイラで発生する振動に関する物理量を示す振動データのみによってボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出する場合(例えば特許文献1に記載のチューブリーク検知装置を用いる場合)と比較して、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩を精度良く検出することができる。
【0038】
また、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩を漏洩検出部66が検出した場合に、ボイラ4の伝熱管から流体が漏洩していることを報知するための報知情報を報知情報出力部68が出力するため、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩が発生した場合にオペレータが報知情報に基づいて必要な対策を速やかにとることが可能となる。
【0039】
また、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩によって生じる振動の振動加速度レベルは、ボイラ4の運転に伴う定常振動(例えば火炉20内の燃焼音やバーナーの噴霧音等の喧騒音(背景音)の振動)と比較して、比較的高い周波数において大きな値をとるような周波数特性を有している。このため、その周波数特性を考慮して、周波数解析部64で振動加速度レベルを算出する周波数帯を、火炉20内の燃焼音の周波数やバーナーの噴霧音等の喧騒音(背景音)よりも高い周波数帯に設定することにより、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩を精度良く検出することができる。
【0040】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0041】
例えば、上述した実施形態では、制御装置46は、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩の検出精度を高めるために、周波数解析部64で上記所定の周波数帯について算出した振動加速度レベルを閾値と比較したが、周波数解析部64は必須ではなく、制御装置46は、センサ40によって検知した振動加速度レベルが閾値を超え且つ流量計44によって計測したボイラ4の給水流量が閾値を超えた場合に、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩を検出してもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、ボイラ流体漏洩検出システム14は複数のセンサ40を備えていたが、ボイラ流体漏洩検出システム14が備えるセンサ40の数は例えば1つであってもよく、1つ以上であればよい。ボイラ流体漏洩検出システム14が備えるセンサ40の数が1つである場合には、例えばそのセンサ40によって検知した振動加速度レベルが閾値を超え且つ流量計44によって計測したボイラ4の給水流量が閾値を超えた場合に、ボイラ4の伝熱管からの流体の漏洩を検出してもよい。
【0043】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0044】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るボイラ流体漏洩検出装置(例えば上述の制御装置46)は、
ボイラ(例えば上述のボイラ4)に設けられたセンサ(例えば上述のセンサ40)から前記ボイラで発生する振動に関する物理量(例えば上述の振動加速度レベル)を示す振動データを取得し、前記ボイラの給水流量を検出する流量計(例えば上述の流量計44)から前記給水流量を取得するように構成されたデータ取得部(例えば上述のデータ取得部60)と、
前記データ取得部によって取得した前記振動データ及び前記給水流量に基づいて、前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出するように構成された漏洩検出部(例えば上述の漏洩検出部66)と、
を備える。
【0045】
ボイラの伝熱管からボイラの内部に流体(水又は蒸気)が漏洩すると、その漏洩に起因してその漏洩位置の周囲に振動が発生する。また、ボイラの蒸気発生量を一定にするようにボイラの給水流量が制御される場合(例えばボイラが定格負荷で運転される場合)、ボイラが備える伝熱管からボイラの内部に流体(水又は蒸気)が漏洩すると、ボイラの蒸気発生量が低下するため、ボイラの給水流量を増加させるようにボイラが制御される。例えば、ボイラで発生した蒸気によって発電機に連結された蒸気タービンを回転させるように構成された発電プラントでは、発電機の出力が一定となるようにボイラの給水流量が制御される場合(例えばボイラが定格負荷で運転される場合)において、ボイラが備える伝熱管からボイラの内部に流体(水又は蒸気)が漏洩すると、ボイラの蒸気発生量が低下して発電機の出力が低下するため、発電機の出力を確保するためにボイラの給水流量を増加させるようにボイラが制御される。
【0046】
したがって、上記(1)に記載のように、ボイラで発生する振動に関する物理量を示す振動データと、ボイラの給水流量とに基づいて、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出することによって、ボイラで発生する振動に関する物理量を示す振動データのみによってボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出する場合(例えば特許文献1に記載のチューブリーク検知装置を用いる場合)と比較して、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を精度良く検出することができる。
【0047】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のボイラ流体漏洩検出装置において、
前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を前記漏洩検出部が検出した場合に前記ボイラの伝熱管から流体が漏洩していることを報知するための報知情報を出力するように構成された報知情報出力部(例えば上述の報知情報出力部68)を更に備える。
【0048】
上記(2)に記載のボイラ流体漏洩検出装置によれば、ボイラの伝熱管から流体が漏洩していることを報知するための報知情報を出力することにより、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩が発生した場合にオペレータが報知情報に基づいて必要な対策を速やかにとることが可能となる。
【0049】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のボイラ流体漏洩検出装置において、
前記漏洩検出部は、前記振動データが示す前記物理量が第1閾値(例えば上述の閾値Lth)を超え、且つ、前記給水流量が第2閾値(例えば上述の閾値Fth)を超えた場合に、前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出するように構成される。
【0050】
上記(3)に記載のボイラ流体漏洩検出装置によれば、ボイラで発生する振動に関する物理量を示す振動データのみによってボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出する場合(例えば特許文献1に記載のチューブリーク検知装置を用いる場合)と比較して、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を精度良く検出することができる。なお、第2閾値は、例えばボイラが定格負荷で正常に運転している場合(ボイラの伝熱管から流体の漏洩が発生していない場合)におけるボイラの給水流量よりも大きな値に設定してもよい。
【0051】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載のボイラ流体漏洩検出装置において、
前記漏洩検出部は、前記振動データが示す前記物理量が前記第1閾値(例えば上述の閾値Lth)を超えていても前記給水流量が前記第2閾値(例えば上述の閾値Fth)を超えていない場合には、前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩が発生していないと判定するように構成される。
【0052】
上記(4)に記載のボイラ流体漏洩検出装置によれば、振動データが示す物理量が第1閾値を超えていても給水流量が第2閾値を超えていない場合には、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩とは無関係な振動に起因して上記物理量が第1閾値を超えたと考えられるため、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩が発生していないと漏洩検出部が判定することにより、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩の有無を精度良く判定することができる。なお、漏洩検出部がボイラの伝熱管からの流体の漏洩が発生していないと判定した場合(すなわち振動データが示す物理量が第1閾値を超えていても給水流量が第2閾値を超えていない場合)には、上記(2)に記載の報知情報出力部は、ボイラの伝熱管から流体が漏洩していることを報知するための報知情報を出力しないように構成される。
【0053】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載のボイラ流体漏洩検出装置において、
前記データ取得部によって取得した前記振動データについて周波数解析を行い、前記振動データにおける所定の周波数帯の振動加速度レベルを算出する周波数解析部(例えば上述の周波数解析部64)を更に備え、
前記漏洩検出部は、前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが第1閾値(例えば上述の閾値Lth)を超え且つ前記給水流量が第2閾値(例えば上述の閾値Fth)を超えた場合に、前記ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を検出するように構成される。
【0054】
上記(5)に記載のボイラ流体漏洩検出装置によれば、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩に起因するボイラの振動の振動加速度レベルは、ボイラの運転に伴う定常振動と比較して、比較的高い周波数において大きな値をとるような周波数特性を有している。このため、その周波数特性を考慮して上記所定の周波数帯をボイラの運転に伴う定常振動よりも比較的高い周波数帯(例えば火炉内の燃焼音の周波数やバーナーの噴霧音等の喧騒音(背景音)よりも高い周波数帯)に設定することにより、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を精度良く検出することができる。
【0055】
(6)本開示の少なくとも一実施形態に係るボイラ流体漏洩検出システムは、
上記(1)乃至(5)の何れか1項に記載のボイラ流体漏洩検出装置と、前記センサと、を備える。
【0056】
上記(6)に記載のボイラ流体漏洩検出システムによれば、上記(1)乃至(5)の何れかに記載のボイラ流体漏洩検出装置を備えるため、ボイラの伝熱管からの流体の漏洩を精度良く検出することができる。
【0057】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載のボイラ流体漏洩検出システムにおいて、
前記センサは、前記ボイラの外側に設けられる。
【0058】
上記(7)に記載のボイラ流体漏洩検出システムによれば、センサをボイラの外側に配置することにより、ボイラの内部の高温に起因してセンサが破損することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0059】
2 ボイラ流体漏洩システム
4 ボイラ
6 蒸気タービン
8 発電機
10 復水器
12 給水ポンプ
14 ボイラ流体漏洩検出システム
15 圧力容器
16 給水ライン
19,23 壁
20 火炉
21 炉壁
22 煙道
24 気水分離器
26 水ドラム
28 節炭器
30 過熱器
32 ボイラ循環ポンプ
34 炉壁管
35 降水管
40,40a,40b,40c,40d,40e,40f,40g,40h センサ
42 発電機出力計
44 流量計
46 制御装置
52 フィン
54 保温材
56 外装板
58 導波棒
60 データ取得部
62 制御部
64 周波数解析部
66 漏洩検出部
68 報知情報出力部
70 報知装置
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
100 発電プラント