(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168297
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】フライヤー
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A47J37/12 391
A47J37/12 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084845
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】木内 直樹
【テーマコード(参考)】
4B059
【Fターム(参考)】
4B059AA01
4B059AB02
4B059BF07
(57)【要約】
【課題】複数の油槽の並設型であって、フィルタリングタンクが油槽の真下から左右にずれる位置に配置されても、こし器での油跳ねを抑制して開口からの調理油の飛び出しを防止する。
【解決手段】フィルタリングタンク20は、タンク本体30と、こし器32と、排油口17と対応する開口47を備えた蓋31とを有し、開口47は、排油口17の真下に位置するように、蓋31の左右方向の中央よりもバーナコントローラ寄り(右寄り)に配置される。そして、こし器32における右壁部54は、開口47の右端縁48よりもさらにバーナコントローラ寄り(右寄り)に配置されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に並設されてそれぞれ調理油を収容可能で、下部に排油管をそれぞれ有する複数の油槽と、
各前記油槽にそれぞれ設けられ、調理油を加熱する複数の加熱手段と、
各前記油槽の下方にそれぞれ配置されて各前記加熱手段を制御する複数のコントロールボックスと、
各前記油槽と各前記コントロールボックスとの間で左右方向に延び、各前記排油管にそれぞれ接続されて各前記排油管から排出される調理油を受けると共に、何れか1つの前記油槽の下方スペースにおける左右方向の中央部で下面に排油口を有する集合管と、
前記排油口がある前記下方スペースで前記コントロールボックスと左右方向に並べて配置され、前記排油口から排出される調理油を貯留して濾過可能なフィルタリングタンクと、を含むフライヤーであって、
前記フィルタリングタンクは、有底箱状のタンク本体と、前記タンク本体内で底面を浮かせた状態で支持される有底箱状のこし器と、前記タンク本体を上方から閉塞し、前記排油口と対応する開口を備えた蓋と、を有し、
前記開口は、前記排油口の真下に位置するように、前記蓋の左右方向の中央よりも前記コントロールボックス寄りに配置される一方、
前記こし器における前記コントロールボックス側の側壁部は、左右方向で前記開口における前記コントロールボックス側の端縁よりもさらに前記コントロールボックス寄りに配置されていることを特徴とするフライヤー。
【請求項2】
前記側壁部の上端は、上方へ向かうに従って前記コントロールボックスと反対側へ向かう傾斜部となっていることを特徴とする請求項1に記載のフライヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調理油を油槽内で加熱し、当該油槽に被調理物を投入して加熱調理する業務用のフライヤーで、特に油槽を左右方向に複数配置した油槽並設型のフライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
フライヤーは、油槽に収容した調理油をバーナやパルス燃焼器等の加熱手段によって所定の調理温度まで加熱することで、油槽に投入されたポテト等の被調理物を加熱調理する。特に、特許文献1に開示されるように、複数の油槽を左右方向に配置して、各油槽ごとにコントローラを設けて、各油槽それぞれ単独で調理可能とした油槽並設型のフライヤーも知られている。
一方、油槽内の調理油は、加熱調理の回数が増加すると、揚げカス等の異物が残り、調理油の劣化に繋がる。そこで、油槽の下方には、油槽から排出される調理油を濾過するフィルタリングタンクを設けて、このフィルタリングタンクで濾過した調理油をポンプを含む循環路によって油槽に戻すようにしたフライヤーが知られている。このフィルタリングタンクとして、例えば特許文献2には、底面に網体を備えたタンク内の上側に、一回り小さい籠状の漉し網(こし器)を吊り下げ係止して、漉し網と網体との間にろ剤及び濾紙を介在させたものが開示されている。ここでは油槽から排出される調理油を、漉し網に通過させて大きい揚げカス等を除去した後、ろ剤及び濾紙によって細かい揚げカス等を除去して再生し、油槽に戻すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-13772号公報
【特許文献2】特開2013-13588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油槽並設型のフライヤーにおいて、フィルタリングタンクは、特許文献1に開示されているように、1つの油槽の下方スペースに1つ配置されている。全ての油槽は、フィルタリングタンクの上方で左右方向に配設される集合管に接続されて、集合管に集められた調理油は、フィルタリングタンクの蓋に設けた開口からこし器に落下するようになっている。
しかし、各油槽の下方スペースには、コントロールボックスも配置されるため、油槽の下方スペースでコントロールボックスと隣接配置されるフィルタリングタンクは、油槽の真下から左右何れか片側へずれた位置となる。よって、フィルタリングタンクの開口の位置を、調理油の落下位置に合わせて左右の反対側へずらせる必要がある。この場合、開口がこし器の左右一方の壁部寄りに位置することになる。
すると、フィルタリングタンクがずれる左右片側に配置される油槽から集められる調理油は、集合管を流れる勢いで開口を通ってこし器内へ斜めに落下するため、開口に近い壁部にぶつかって跳ね返りやすくなる。よって、油跳ねが開口から飛び出して蓋やフィルタリングタンクの周囲を汚してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、複数の油槽の並設型であって、フィルタリングタンクが油槽の真下から左右にずれる位置に配置されても、こし器での油跳ねを抑制して開口からの調理油の飛び出しを防止することができるフライヤーを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、左右方向に並設されてそれぞれ調理油を収容可能で、下部に排油管をそれぞれ有する複数の油槽と、
各油槽にそれぞれ設けられ、調理油を加熱する複数の加熱手段と、
各油槽の下方にそれぞれ配置されて各加熱手段を制御する複数のコントロールボックスと、
各油槽と各コントロールボックスとの間で左右方向に延び、各排油管にそれぞれ接続されて各排油管から排出される調理油を受けると共に、何れか1つの油槽の下方スペースにおける左右方向の中央部で下面に排油口を有する集合管と、
排油口がある下方スペースでコントロールボックスと左右方向に並べて配置され、排油口から排出される調理油を貯留して濾過可能なフィルタリングタンクと、を含むフライヤーであって、
フィルタリングタンクは、有底箱状のタンク本体と、タンク本体内で底面を浮かせた状態で支持される有底箱状のこし器と、タンク本体を上方から閉塞し、排油口と対応する開口を備えた蓋と、を有し、
開口は、排油口の真下に位置するように、蓋の左右方向の中央よりもコントロールボックス寄りに配置される一方、
こし器におけるコントロールボックス側の側壁部は、左右方向で開口におけるコントロールボックス側の端縁よりもさらにコントロールボックス寄りに配置されていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、側壁部の上端は、上方へ向かうに従ってコントロールボックスと反対側へ向かう傾斜部となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の油槽の並設型であって、フィルタリングタンクとコントロールボックスとが油槽の下方スペースで左右方向に並べて配置されることで、蓋に設ける開口がコントロールボックス寄りに配置されても、こし器の側壁部は、左右方向で開口におけるコントロールボックス側の端縁よりもさらにコントロールボックス寄りに配置されている。よって、開口の端縁から側壁部までの左右方向の距離を確保することができ、こし器での油跳ねを抑制して開口からの調理油の飛び出しを防止することができる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、側壁部の上端は、上方へ向かうに従ってバーナコントローラと反対側へ向かう傾斜部となっているので、側壁部側へ落下する調理油の油跳ねをより良好に抑えることができ、開口からの調理油の飛び出しをより効果的に防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図8】こし器の横断面を拡大して示す斜視図である。
【
図9】(A)~(C)は、タンク本体にこし器を上方から収容する状態を示す説明図である。
【
図10】各油槽から排出される調理油がこし器に入る状態を示す説明図で、(A)は左側の油槽から、(B)が中央の油槽から、(C)が右側の油槽からそれぞれ調理油が入る状態を示している。
【
図11】(A)~(D)は、タンク本体に変更例のこし器を上方から収容する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、フライヤーの一例を示す正面図、
図2は、フライヤーの側面図、
図3は、
図2のA-A線断面図である。
フライヤー1は、器体2内の上部に、左右方向に並ぶ3つの油槽3,3・・を備えた油槽並設型となっている。なお、3つの油槽3を区別する場合は、
図1左端の油槽3から順に「3A」「3B」「3C」と表記する。器体2には、器体2の骨組みを形成して各油槽3をそれぞれ支持する枠部材2a,2a・・が設けられている。
各油槽3内の底部には、左右一対のパルス燃焼器4,4が設けられている。各パルス燃焼器4は、油槽3の前側の内壁に設けられる燃焼室5と、燃焼室5に接続されて油槽3内を蛇行状に引き回されるテールパイプ6とを有している。パルス燃焼器4は、本開示の加熱手段の一例である。
各油槽3には、ポテト等の被調理物を収納したバスケットが投入可能となっている。パルス燃焼器4,4の上側には、バスケットを受ける網7が設けられている。
各油槽3には、図示しない油面温度センサが設けられている。各油槽3内の後壁には、調理用温度センサ8が設けられている。
【0010】
各油槽3の正面側外部には、エアチャンバ9が設けられている。各エアチャンバ9内には、各燃焼室5と連通する図示しない混合室が設けられている。各混合室には、ガス電磁弁11を備えたガス導管10がそれぞれ接続されて、各混合室に燃料ガスが供給可能となっている。また、各混合室には、給気管12が接続されている。各給気管12は、器体2の下部に設けられた図示しないファンに接続されて、混合室に燃焼用空気が供給可能となっている。
各パルス燃焼器4,4のテールパイプ6,6は、油槽3の下部で蛇行状に配設された後、エアチャンバ9から引き出される排気管13,13に接続されている。排気管13,13は、器体2の後部に配設された後、上向きに配設されて、燃焼排気を排出可能となっている。
【0011】
各油槽3の底部には、排油管14がそれぞれ下向きに接続されている。各排油管14は、各油槽3の下方で左右方向に配設された集合管15に接続されている。各排油管14には、正面からの排油レバー16の操作で開弁する図示しない常閉型の排油バルブが設けられている。中央の油槽3Bの排油管14の真下となる集合管15の左右方向の中央部には、排油口17が下向きに設けられている。排油口17の下方には、フィルタリングタンク20が前方へ出し入れ可能に配置されて、排油口17から排出される調理油を貯留及び濾過可能となっている。フィルタリングタンク20の底面は、フィルタリングポンプを有する図示しない吸込管と接続されている。フィルタリングポンプが作動すると、フィルタリングタンク20内の調理油が底面から吸い込まれて濾過された後、図示しない給油管を介して各油槽3に供給可能となる。フィルタリングタンク20の詳細については詳述する。
【0012】
枠部材2a,2a・・で仕切られる各油槽3の下方スペースにおいて、左端の油槽3Aの下方スペースには、足し油タンク21が設けられている。足し油タンク21は、器体2に設けた置き台22上に設置されている。足し油タンク21は、足し油ポンプを有する足し油管23を介して各油槽3に接続されている。
器体2の正面上部には、各油槽3に対応する3つのフライコントローラ25,25・・が設けられている。各フライコントローラ25は、操作パネル26を備えている。操作パネル26には、電源スイッチ、複数の操作ボタン、選択された調理モードやメンテナンスメニュー等の表示部が設けられている。
各油槽3の下方スペースには、各油槽3に対応する3つのバーナコントローラ27,27・・が設けられている。各バーナコントローラ27は、内部に制御基板28を有するボックス状で、制御基板28には、各センサの検出信号が入力される。バーナコントローラ27は、この検出信号や操作パネル26からの入力指示に基づいて、パルス燃焼器4、ガス電磁弁11、ファン、フィルタリングポンプ、足し油ポンプ等を制御する。各バーナコントローラ27は、油槽3Aの下方スペースでは左寄りに配置され、中央及び右端の油槽の3B,3Cの下方スペースでは右寄りに配置されている。
バーナコントローラ27は、本開示の制御手段又はコントロールボックスの一例である。
【0013】
フィルタリングタンク20は、
図4及び
図5に示すように、前後方向に延びる直方体の有底箱状となっている。フィルタリングタンク20は、上面を開口するタンク本体30と、タンク本体30の開口を閉塞する蓋31と、タンク本体30内に吊り下げ支持されるこし器32とを含んでいる。
タンク本体30は、平面視が長方形状の底板33と、底板33の四辺に立設されて外壁を形成する前板34、後板35と、左右の側板36,36とを備えている。タンク本体30は、3つの全ての油槽3内の調理油を貯留できる容量を有している。
図6に示すように、底板33には排出口37が形成されている。排出口37は、タンク本体30の底面に設けられる吸込口38と接続されている。吸込口38は、底板33を貫通してタンク本体30内に立設され、後板35から後方へ突出する接続管39に接続されている。接続管39がフィルタリングポンプの吸込管に接続される。
底板33上には、内側に金網41を張ったフレーム40が載置されている。フレーム40は、タンク本体30に出し入れ可能で、
図6に二点鎖線で示すように、金網41を上方から覆うフィルタ42(濾紙)が取付可能となっている。金網41及びフィルタ42の領域は、排出口37と重なっている。フィルタ42は、本開示の2次フィルタの一例である。
【0014】
前板34の上部で左右方向の中央と、左右の側板36,36の上部で前後方向の中央とには、取っ手43がそれぞれ設けられている。各取っ手43は、
図7にも示すように、前板34及び側板36からタンク本体30内へ凹んで上面が閉塞される凹形状となっている。この凹形状によりタンク本体30内へ突出する各取っ手43の突出面は、下縁から上方へ向かうに従ってタンク本体30内への張り出し量が大きくなる傾斜面44となっている。
蓋31は、タンク本体30の開口よりもやや大きい平面視長方形状で、四辺には、下向きに折り返される周壁部45が形成されている。蓋31の上面で前寄りには、上向きに突出するハンドル46が設けられている。ハンドル46の後方で右寄りには、平面視正方形状の開口47が形成されている。
【0015】
こし器32は、タンク本体30よりも一回り小さい平面視長方形状で前後方向に延びる有底箱状となっている。こし器32は、平面視が長方形状の底板部50と、底板部50の四辺に立設されて外壁を形成する前壁部51、後壁部52、左壁部53、右壁部54とを備えている。こし器32の左右幅は、タンク本体30の左右の取っ手43,43の上端同士の左右間隔よりも小さくなっている。前壁部51、後壁部52、左壁部53、右壁部54は、本開示の複数の壁部の一例である。右壁部54は、本開示のコントロールボックス側の側壁部の一例である。
底板部50の中央には、一回り小さい底開口部55が形成されている。底板部50の上面には、底開口部55よりも大きい下側パンチングメタル56が貼り付けられて底開口部55を上方から覆っている。下側パンチングメタル56は、φ1.5mmの透孔が開口率23%で形成される多孔板である。
【0016】
図8にも示すように、前壁部51と後壁部52とのそれぞれの右側上端57,57は、左側上端よりも一段低くなっている。右壁部54も、右側上端57に合わせた高さで形成されて、横側上端58が左壁部53よりも低くなっている。各右側上端57には、内側へのヘミング加工が施されて、折り曲げ部59がそれぞれ形成されている。横側上端58にも、内側へのヘミング加工が施されて、全長に亘って折り曲げ部60が形成されている。
右壁部54の上部は、全長に亘って、上方へ向かうに従って左側へ傾く傾斜部61となっている。鉛直面に対する傾斜部61の傾斜角度は、鉛直面に対する取っ手43の傾斜面44の傾斜角度と略同じである。
右壁部54の下部と傾斜部61とには、前後方向へ延びる長方形状の下開口部62と上開口部63とが形成されている。折り曲げ部60の下端は、上開口部63の上端よりも上方に位置している。上開口部63は、本開示の開口部の一例である。
【0017】
そして、右壁部54の内面には、下端から横側上端58の近くまで延びる高さの横側パンチングメタル64が貼り付けられて、下開口部62及び上開口部63を内側から覆っている。横側パンチングメタル64も、下側パンチングメタル56と同様に、φ1.5mmの透孔が開口率23%で形成される多孔板である。
図7及び
図8に示すように、横側パンチングメタル64の上端は、横側上端58の折り曲げ部60の下端に下方から当接している。
下側パンチングメタル56及び横側パンチングメタル64は、本開示の1次フィルタの一例であり、横側パンチングメタル64は、本開示の多孔板の一例である。
前壁部51の左側上端には、前方へ延びる前係止片65が折り曲げ形成されている。前係止片65は、タンク本体30の前板34の上端に係止可能となっている。後壁部52の左側上端にも、後方へ延びた後、下方へ折曲される後係止片66が折り曲げ形成されている。後係止片66は、タンク本体30の後板35の上端に係止可能となっている。
左壁部53の上端には、左側へ延びて前後両端が下向きに折曲される横係止片67が形成されている。横係止片67は、タンク本体30の左側の取っ手43に係止可能となっている。
【0018】
このこし器32は、
図9(A)に示すように、タンク本体30の上方から左右の取っ手43,43の間に組み入れて、前係止片65を前板34の上端に、後係止片66を後板35の上端にそれぞれ上方から係止させる。このとき横係止片67は、
図9(B)に示すように、タンク本体30の左側の側板36よりも左側へ突出しているので、矢印で示すようにこし器32を右寄りに移動させながら横係止片67を左側の取っ手43に係止させる。
すると、
図9(C)に示すように、こし器32がタンク本体30内の右寄りとなる位置で上端から吊り下げ支持されて、底板部50がタンク本体30の底板33から浮いた状態となる。このときこし器32の右壁部54がタンク本体30の右側の側板36に近づくが、傾斜部61が右側の取っ手43との干渉を回避するため、こし器32の移動を妨げない。よって、吊り下げ状態のこし器32は、傾斜部61を除く右壁部54が右側の側板36に当接し、傾斜部61が右側の取っ手43の下方に位置する状態で位置決めされる。
この状態でタンク本体30に蓋31を被せると、
図7に示すように、開口47がこし器32に対して右壁部54寄りに位置する。このときの傾斜部61を含む右壁部54は、開口47の右端縁48よりも右側に位置している。
【0019】
以上の如く構成されたフライヤー1においては、油槽3に所定の定格油量の調理油を貯留した状態で、調理者がフライコントローラ25の操作パネル26の電源スイッチをONする。すると、バーナコントローラ27は、ファンを所定時間回転して給気した後、燃焼室5内で混合ガスを断続的に燃焼させてパルス燃焼器4をON/OFF動作させる。すなわち、燃焼室5内で混合ガスに点火して燃焼室5内で爆発燃焼させ、その燃焼に伴う燃焼室5内の圧力上昇によって燃焼排気をテールパイプ6へ強制的に排出する。そして、その燃焼排気の排出により負圧となる燃焼室5内に燃料ガスと燃焼用空気とを吸入する。このON/OFF動作が繰り返されることで、油槽3に貯留された調理油が加熱される。
バーナコントローラ27は、調理用温度センサ8から得られる検出温度を監視する。調理油の温度が所定の調理温度(例えば160℃)に到達したことを確認したら、フライコントローラ25は、操作パネル26の表示部に調理OKの表示を出力する等して報知する。
【0020】
次に、調理者が、被調理物を入れたバスケットを油槽3内に投入し、操作パネル26で定格油量に応じた調理モードを選択して、調理開始ボタンを押し操作する。すると、バーナコントローラ27は、定格油量に対応して予め設定された調理時間とパルス燃焼器4の熱量とで被調理物の加熱調理を行う。そして、タイマーによるカウントで調理時間がタイムアップしたら、フライコントローラ25は、アラームを鳴らして調理終了を報知する。よって、調理者はバスケットを油槽3から引き上げる。続けて調理を行う場合は、被調理物を投入して調理開始ボタンを押せば、同じ制御が繰り返される。
バーナコントローラ27は、油面温度センサの検出温度に基づいて、必要な調理油の減少を検知すると、足し油が必要な油槽3への足し油バルブを開いて足し油ポンプを駆動させ、足し油タンク21から足し油管23を介して該当する油槽3内へ足し油を行う。
【0021】
一方、調理油のフィルタリングを行う場合、調理者は、該当する油槽3(3つの油槽全てでもよい)の排油レバー16を操作して排油バルブを開弁させる。
すると、油槽3内の調理油が排油管14から集合管15を通って排油口17から排出され、フィルタリングタンク20の蓋31の開口47からこし器32内に落下する。
このとき、左端の油槽3Aから排出される調理油は、集合管15を左から右に流れる勢いで排油口17から排出されるため、
図10(A)に矢印で示すように、開口47から右斜め下方向でこし器32内に入る。すると、調理油は、底板部50の下側パンチングメタル56に衝突した勢いで上側へ跳ね返るが、開口47の右端縁48よりも右側に位置する右壁部54の傾斜部61及びその内側の横側パンチングメタル64によって中央側へ戻されて減勢される。よって、調理油が開口47を越えて蓋31の上面まで跳ね上がることがなくなる。
【0022】
次に、中央の油槽3Bから排出される調理油は、排油管14の真下に位置する排油口17から真下に排出されるため、
図10(B)に矢印で示すように、開口47から略真っ直ぐにこし器32に入る。すると、調理油は、下側パンチングメタル56に衝突した勢いで前後左右に分かれて上側へ跳ね返るが、左側では上方に位置する蓋31に当たって下方へ戻され、右側では傾斜部61及びその内側の横側パンチングメタル64によって中央側へ戻される。よって、調理油が開口47を越えて蓋31の上面まで跳ね上がることがなくなる。
次に、右端の油槽3Cから排出される調理油は、集合管15を右から左に流れる勢いで排油口17から排出されるため、
図10(C)に矢印で示すように、開口47から左斜め下方向でこし器32内に入る。すると、調理油は、下側パンチングメタル56に衝突した勢いで上側へ跳ね返るが、左側では上方に位置する蓋31に当たって下方へ戻される。よって、調理油が開口47を越えて蓋31の上面まで跳ね上がることがなくなる。
【0023】
こうしてこし器32に入った調理油は、下側パンチングメタル56及び/又は横側パンチングメタル64の透孔を通過してタンク本体30内に落下する。よって、透孔を通過できない大きさの揚げカス等はこし器32内に残される。
なお、調理油が両パンチングメタル56,64で濾過されて落下する量よりもこし器32に入る量の方が大きい場合、調理油はこし器32に貯まることになる。しかし、前壁部51及び後壁部52の右側上端57と、右壁部54の横側上端58とが他の壁部の上端よりも低くなっているため、ここがオーバーフロー部70となる。よって、貯留量が右側上端57及び横側上端58を越えると、調理油がオーバーフロー部70を通ってタンク本体30内に落下する。このためこし器32内に入った調理油が開口47から逆流することはない。
フィルタリングタンク20への調理油の排出と共に調理者が操作パネル26を操作してフィルタリングの指示を行うと、バーナコントローラ27は、フィルタリングポンプを駆動させる。よって、タンク本体30内の調理油が、フィルタ42を通過して濾過された後、吸込口38から接続管39に吸い込まれ、吸込管及び給油管を介して油槽3に戻される。
【0024】
フィルタリングタンク20のフィルタ42の交換等のメンテナンスを行う場合、作業者は、前板34の取っ手43を介してフィルタリングタンク20を器体2の前方へ引き出す。すると、蓋31及びこし器32を取り外してメンテナンスを行うことができる。このときこし器32では、右壁部54の上端がヘミング加工による折り曲げ部60となって横側パンチングメタル64の上端が露出していない。よって、横側パンチングメタル64の上端が透孔の位置で切断されて透孔の部分で尖り部分が生じていても、こし器32を取り扱う作業者の手や衣服に引っかかるおそれがなく、注意を要する必要が無くなる。
【0025】
上記形態のフライヤー1は、調理油を収容可能な油槽3と、油槽3に設けられ、調理油を加熱するパルス燃焼器4と、パルス燃焼器4を制御するバーナコントローラ27と、油槽3の下方に配置され、油槽3から排出される調理油を濾過可能なフィルタリングタンク20と、を含む。フィルタリングタンク20は、フィルタ42を有するタンク本体30と、下側パンチングメタル56及び横側パンチングメタル64を有してタンク本体30の内側に収容され、油槽3から排出される調理油を受けるこし器32とを備えている。
こし器32は、平面視矩形状の底板部50と、底板部50の各辺から立設される前壁部51、後壁部52、左壁部53、右壁部54とを有して上面が開口する有底箱状で、右壁部54に、上開口部63が形成されていると共に、上開口部63を内側から塞ぐ横側パンチングメタル64が取り付けられている。
そして、右壁部54の上端には、全長に亘ってヘミング加工による内側への折り曲げ部60が形成されて、折り曲げ部60の下端は、上開口部63の上端よりも上方に位置しており、横側パンチングメタル64の上端は、折り曲げ部60の下端に下方から当接している。
この構成によれば、こし器32に横側パンチングメタル64を使用しても、横側パンチングメタル64の上端が外部に露出することがない。よって、横側パンチングメタル64の上端が作業者の手や衣服に引っかかることがなく、使い勝手に優れたものとなる。
【0026】
右壁部54の上端は、他の壁部の上端よりも低くなって、こし器32内に調理油が貯留した際のオーバーフロー部70となっている。
よって、こし器32内に入った調理油が貯留してもオーバーフロー部70からタンク本体30内へ落下させることができ、調理油が開口47から逆流することがなくなる。
【0027】
なお、折り曲げ部の下端と横側パンチングメタルの上端との当接に係る開示においては、以下の変更が可能である。
多孔板の透孔の径や開口率は、上記横側パンチングメタルに限らず、適宜変更できる。
右壁部は、上端に傾斜部を備えていなくてもよい。右壁部の上端高さを他の壁部と同じにしてオーバーフロー部を設けなくてもよい。この場合、オーバーフロー部は他の壁部に設けてもよい。
開口部は、上下に分けずに1つであってもよい。
多孔板は、右壁部のみに設ける場合に限らない。前壁部、後壁部、左壁部の少なくとも1つにも設けることができる。この場合も各壁部にヘミング加工による内側への折り曲げ部を設けて、折り曲げ部の下端と多孔板の上端とを当接させればよい。
タンク本体内でのこし器の支持構造も上記形態に限らない。こし器の平面視形状も矩形に限らない。
油槽の数は3つに限らず、適宜増減したものであってもよい。油槽が1つであっても本開示は適用可能である。
【0028】
上記形態のフライヤー1は、左右方向に並設されてそれぞれ調理油を収容可能で、下部に排油管14をそれぞれ有する複数の油槽3,3・・と、各油槽3にそれぞれ設けられ、調理油を加熱する複数のパルス燃焼器4と、各油槽3の下方にそれぞれ配置されて各パルス燃焼器4を制御する複数のバーナコントローラ27とを含む。また、フライヤー1は、各油槽3と各バーナコントローラ27との間で左右方向に延び、各排油管14にそれぞれ接続されて各排油管14から排出される調理油を受けると共に、1つの油槽3Bの下方スペースにおける左右方向の中央部で下面に排油口17を有する集合管15と、排油口17がある下方スペースでバーナコントローラ27と左右方向に並べて配置され、排油口17から排出される調理油を貯留して濾過可能なフィルタリングタンク20と、をさらに含む。
フィルタリングタンク20は、有底箱状のタンク本体30と、タンク本体30内で底面を浮かせた状態で支持される有底箱状のこし器32と、タンク本体30を上方から閉塞し、排油口17と対応する開口47を備えた蓋31と、を有し、開口47は、排油口17の真下に位置するように、蓋の31左右方向の中央よりもバーナコントローラ27寄りに配置される。
そして、こし器32における右壁部54は、開口47の右端縁48よりもさらにバーナコントローラ27寄りに配置されている。
【0029】
この構成によれば、複数の油槽3の並設型であって、フィルタリングタンク20が油槽3Bの真下から左にずれる位置に配置されても、こし器32の右壁部54は、開口47の右端縁48よりもさらにバーナコントローラ27寄りに配置される。よって、開口47の右端縁48から右壁部54までの左右方向の距離を確保することができ、こし器32での油跳ねを抑制して開口47からの調理油の飛び出しを防止することができる。
【0030】
右壁部54の上端は、上方へ向かうに従ってバーナコントローラ27と反対側へ向かう傾斜部61となっている。
よって、右壁部54側へ落下する調理油の油跳ねをより良好に抑えることができ、開口47からの調理油の飛び出しをより効果的に防止可能となる。
【0031】
こし器の側壁部をバーナコントローラ寄りに配置する開示においては、以下の変更が可能である。
右壁部の上端は、平面状の傾斜部でなく円弧状にカーブする曲面部としてもよい。但し、傾斜部及び曲面部をなくして、右壁部は、他の壁部と同様に全体を平面状としてもよい。この場合も上端を開口の端縁よりもバーナコントローラ寄りに位置させればよい。
右壁部に設ける開口部は、1つであってもよい。
オーバーフロー部は、他の壁部に設けてもよい。この場合、オーバーフロー部は、切欠きや透孔で形成してもよい。
フィルタリングタンクは、中央の油槽の下方でなく、左右何れかの油槽の下方に配置されていてもよい。この場合、左側の油槽の下方であれば、開口は蓋の左寄りに配置されて、こし器の左壁部が開口の左端縁よりもバーナコントローラ寄りに配置されることになる。右側の油槽の下方であれば、開口及び右壁部が上記形態と同じ構造となる。
【0032】
図11(A)に示すように、こし器32の左壁部53の上部に、上方へ向かうに従って左側へ向かう左傾斜部71を設けてもよい。
この場合、こし器32を、タンク本体30の上方から左右の取っ手43,43の間に組み入れると、
図11(B)(C)に示すように、左壁部53の左傾斜部71が、タンク本体30の左側の取っ手43の内側端縁に当接してそのまま摺動しながら下降するため、こし器32は自然に右側へ移動する。
よって、横係止片67が左側の取っ手43に係止されると、
図11(D)に示すように、こし器32がタンク本体30内の右寄りとなる位置で上端から吊り下げ支持される。
【0033】
以下、各開示に共通する変更例を説明する。
フライヤーは、フライコントローラとバーナコントローラとが別々に設けられるものに限らず、制御手段又はコントロールボックスとして、フライコントローラとバーナコントローラとの両機能を有するコントローラを油槽の下方スペースに1つ備えるものであってもよい。
加熱手段は、パルス燃焼器のみに限らず、電気ヒータを併用してもよい。
加熱手段は、油槽の外部に設けたガスバーナのみで形成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・フライヤー、2・・器体、2a・・枠部材、3・・油槽、4・・パルス燃焼器、14・・排油管、15・・集合管、17・・排油口、20・・フィルタリングタンク、25・・フライコントローラ、27・・バーナコントローラ、30・・タンク本体、31・・蓋、32・・こし器、43・・取っ手、44・・傾斜面、47・・開口、50・・底板部、51・・前壁部、52・・後壁部、53・・左壁部、54・・右壁部、56・・下側パンチングメタル、58・・横側上端、59,60・・折り曲げ部、61・・傾斜部、62・・下開口部、63・・上開口部、64・・横側パンチングメタル、70・・オーバーフロー部。