(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168299
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】ブラインド用回転伝達装置及びブラインド
(51)【国際特許分類】
E06B 9/322 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
E06B9/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084848
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】大膳 正明
【テーマコード(参考)】
2E043
【Fターム(参考)】
2E043AA01
2E043AA04
2E043BB02
2E043BB12
2E043BB15
2E043BC02
2E043BD02
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成で、部品強度の低下を抑制できるブラインド用回転伝達装置を提供する。
【解決手段】ブラインド用回転伝達装置1は、入力部21が所定量回転した後に入力部21と出力部22とを連結する空転機構23を備える。空転機構23は、回転方向に対して入力部21側と係合可能な入出力用第1爪部49と、伝達用第1爪部50とを内周面に有する第1空転部材47と、回転方向に対して出力部22側と係合可能な入出力用第2爪部53と、伝達用第2爪部54とを外周面に有する第2空転部材48とを備える。第1空転部材47と第2空転部材48とは、所定量相対回転した後に伝達用第1爪部50と伝達用第2爪部54とが回転方向に対して係合するように、回転軸の軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力が入力される入力部と、前記回転力が出力される出力部と、前記入力部と前記出力部との間に介在され、前記入力部が所定量回転した後に前記入力部と前記出力部とを連結する空転機構とを備えるブラインド用回転伝達装置であって、
前記空転機構は、
前記入力部の回転方向に対して前記入力部側及び前記出力部側の何れか一方と係合可能な入出力用第1爪部と、伝達用第1爪部とを内周面に有し、前記入出力用第1爪部及び前記伝達用第1爪部が前記内周面から径内方に突出した1つ以上の第1空転部材と、
前記回転方向に対して前記入力部側及び前記出力部側の何れか他方と係合可能な入出力用第2爪部と、伝達用第2爪部とを外周面に有し、前記入出力用第2爪部及び前記伝達用第2爪部が前記外周面から径外方に突出した1つ以上の第2空転部材と、を備え、
前記第1空転部材と前記第2空転部材とは、所定量相対回転した後に前記伝達用第1爪部と前記伝達用第2爪部とが前記回転方向に対して係合するように、回転軸の軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置される、ブラインド用回転伝達装置。
【請求項2】
前記入力部及び前記出力部の何れか一方は、前記軸方向に対して少なくとも一部が前記第1空転部材と重複するように配置され、前記回転方向に対して前記第1空転部材の前記入出力用第1爪部と係合可能な第1係合爪部を外周面に径外方に突出して有し、
前記入力部及び前記出力部の何れか他方は、前記軸方向に対して少なくとも一部が前記第2空転部材と重複するように配置され、前記回転方向に対して前記第2空転部材の前記入出力用第2爪部と係合可能な第2係合爪部を内周面に径内方に突出して有する、請求項1に記載のブラインド用回転伝達装置。
【請求項3】
前記第1空転部材と前記第2空転部材とは、交互に重複して配置されるように各々複数である、請求項1又は2に記載のブラインド用回転伝達装置。
【請求項4】
前記入出力用第1爪部は、前記軸方向一方側において、前記内周面に複数配置され、
前記伝達用第1爪部は、前記軸方向他方側において、前記内周面に複数配置され、
前記入出力用第1爪部と前記伝達用第1爪部とは、前記内周面の周方向に対して重複しないように、前記内周面の周方向に等間隔に前記内周面に配置される、請求項3に記載のブラインド用回転伝達装置。
【請求項5】
隣接する前記第1空転部材のうち、一方の前記第1空転部材は、前記軸方向一端側において、内縁部に前記軸方向の他端側に凹んだ円環状の段部を有し、
隣接する前記第1空転部材のうち、他方の前記第1空転部材は、前記軸方向他端側において、内縁部に前記軸方向の一端側に凹んだ円環状の段部を有し、
一方の前記第1空転部材と他方の前記第1空転部材とが接触した状態において、一方の前記第1空転部材の段部と他方の前記第1空転部材の段部とによって凹部が形成されており、
前記第2空転部材は、前記凹部に沿って摺動可能な凸部を有する、請求項3に記載のブラインド用回転伝達装置。
【請求項6】
回転力が入力される入力部と、前記回転力が出力される出力部と、前記入力部と前記出力部との間に介在され、前記入力部が所定量回転した後に前記入力部と前記出力部とを連結する空転機構とを備えるブラインド用回転伝達装置であって、
前記空転機構は、前記入力部が所定量回転した後に該回転を前記出力部に伝達するように前記入力部及び前記出力部に係合可能な爪部を有し、前記爪部は、前記入力部の回転方向に対して前記入力部と係合可能な入力部側爪部と、前記回転方向に対して前記出力部と係合可能な出力部側爪部とを有する空転部材を備え、
前記入力部と前記空転部材とは、回転軸の軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置されるとともに、前記出力部と前記空転部材とは、前記軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置される、ブラインド用回転伝達装置。
【請求項7】
請求項1又は6に記載のブラインド用回転伝達装置を備える、ブラインド。
【請求項8】
遮蔽材を昇降動作させる第1駆動系と、前記遮蔽材を回転動作させる第2駆動系とを備え、前記第1駆動系に前記ブラインド用回転伝達装置が含まれる、請求項7に記載のブラインド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインド用回転伝達装置及びブラインドに関する。特に、空転機構を有するブラインド用回転伝達装置、及びその回転伝達装置を備えるブラインドに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、スラットの昇降及び傾動を行うために回転駆動するシャフトと、スラットを昇降させるための昇降ドラムと、スラットを傾動させるための傾動ドラムと、シャフトが一定の空転をした後にシャフトと昇降ドラムとを連結する空転装置とを備えたブラインドが開示されている。このようなブラインドによれば、スラットを昇降させずに傾動させることができるため、例えば、スラットを最下限位置まで下降させて傾動させる際に、スラットが僅かに上昇してスラット下端と床面との間に隙間が生じてしまうことを解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のブラインドが備える空転装置は、シャフトの軸方向に順次に配列される第1の空転ドラム、第2の空転ドラム及び第3の空転ドラムを有している。各空転ドラムには、シャフトの軸方向に突出する突起が形成されている。これらの突起が互いに係合することにより、第1の空転ドラムが所定量回転すると第2の空転ドラムが回転を開始し、第2の空転ドラムが所定量回転すると第3の空転ドラムが回転を開始する。
【0005】
しかしながら、従来の空転装置のように互いに係合する突起が空転ドラムから軸方向に突出する構成とした場合、空転ドラムの数を増やして多段にする程、軸方向であるスラスト方向において、ドラム間のクリアランスが大きくなりやすい。その結果、ドラムの回転時に突起にかかる荷重の荷重中心点と突起の付け根との間の距離が大きくなることで、突起の付け根に加わる曲げ応力が増加することになる。これにより、部品の破損が起こりやすくなって、伝達可能トルクに耐えられる部品強度が低下するため、必要な伝達可能トルクを確保することが難しく、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、コンパクトな構成で、部品強度の低下を抑制できるブラインド用回転伝達装置及びブラインドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、隣接する空転ドラム同士が重なる構成とすることで、上記の課題を解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たなブラインド用回転伝達装置及びブラインドを発明するに至った。
【0008】
(1)本発明によるブラインド用回転伝達装置は、回転力が入力される入力部と、前記回転力が出力される出力部と、前記入力部と前記出力部との間に介在され、前記入力部が所定量回転した後に前記入力部と前記出力部とを連結する空転機構とを備えるブラインド用回転伝達装置であって、前記空転機構は、前記入力部の回転方向に対して前記入力部側及び前記出力部側の何れか一方と係合可能な入出力用第1爪部と、伝達用第1爪部とを内周面に有し、前記入出力用第1爪部及び前記伝達用第1爪部が前記内周面から径内方に突出した1つ以上の第1空転部材と、前記回転方向に対して前記入力部側及び前記出力部側の何れか他方と係合可能な入出力用第2爪部と、伝達用第2爪部とを外周面に有し、前記入出力用第2爪部及び前記伝達用第2爪部が前記外周面から径外方に突出した1つ以上の第2空転部材と、を備え、前記第1空転部材と前記第2空転部材とは、所定量相対回転した後に前記伝達用第1爪部と前記伝達用第2爪部とが前記回転方向に対して係合するように、回転軸の軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置される。
【0009】
(2)上記(1)において、前記入力部及び前記出力部の何れか一方は、前記軸方向に対して少なくとも一部が前記第1空転部材と重複するように配置され、前記回転方向に対して前記第1空転部材の前記入出力用第1爪部と係合可能な第1係合爪部を外周面に径外方に突出して有し、前記入力部及び前記出力部の何れか他方は、前記軸方向に対して少なくとも一部が前記第2空転部材と重複するように配置され、前記回転方向に対して前記第2空転部材の前記入出力用第2爪部と係合可能な第2係合爪部を内周面に径内方に突出して有するのが好ましい。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)において、前記第1空転部材と前記第2空転部材とは、交互に重複して配置されるように各々複数であるのが好ましい。
【0011】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記入出力用第1爪部は、前記軸方向一方側において、前記内周面に複数配置され、前記伝達用第1爪部は、前記軸方向他方側において、前記内周面に複数配置され、前記入出力用第1爪部と前記伝達用第1爪部とは、前記内周面の周方向に対して重複しないように、前記内周面の周方向に等間隔に前記内周面に配置されるのが好ましい。
【0012】
(5)上記(3)において、隣接する前記第1空転部材のうち、一方の前記第1空転部材は、前記軸方向一端側において、内縁部に前記軸方向の他端側に凹んだ円環状の段部を有し、隣接する前記第1空転部材のうち、他方の前記第1空転部材は、前記軸方向他端側において、内縁部に前記軸方向の一端側に凹んだ円環状の段部を有し、一方の前記第1空転部材と他方の前記第1空転部材とが接触した状態において、一方の前記第1空転部材の段部と他方の前記第1空転部材の段部とによって凹部が形成されており、前記第2空転部材は、前記凹部に沿って摺動可能な凸部を有するのが好ましい。
【0013】
(6)また、本発明によるブラインド用回転伝達装置は、回転力が入力される入力部と、前記回転力が出力される出力部と、前記入力部と前記出力部との間に介在され、前記入力部が所定量回転した後に前記入力部と前記出力部とを連結する空転機構とを備えるブラインド用回転伝達装置であって、前記空転機構は、前記入力部が所定量回転した後に該回転を前記出力部に伝達するように前記入力部及び前記出力部に係合可能な爪部を有し、前記爪部は、前記入力部の回転方向に対して前記入力部と係合可能な入力部側爪部と、前記回転方向に対して前記出力部と係合可能な出力部側爪部とを有する空転部材を備え、前記入力部と前記空転部材とは、回転軸の軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置されるとともに、前記出力部と前記空転部材とは、前記軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置される。
【0014】
(7)本発明によるブラインドは、上記(1)から(6)のいずれかに記載のブラインド用回転伝達装置を備える。
【0015】
(8)上記(7)において、遮蔽材を昇降動作させる第1駆動系と、前記遮蔽材を回転動作させる第2駆動系とを備え、前記第1駆動系に前記ブラインド用回転伝達装置が含まれるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるブラインド用回転伝達装置は、第1空転部材と第2空転部材とが重なる構成である。従って、コンパクトな構成で、部品強度の低下を抑制できるブラインド用回転伝達装置及びブラインドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態によるブラインド用回転伝達装置が適用されるブラインドの一例を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるブラインド用回転伝達装置を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるブラインド用回転伝達装置の第1空転部材を示す図であり、(a)は第1空転部材の軸方向一端側から見た斜視図、(b)は第1空転部材の軸方向他端側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるブラインド用回転伝達装置の縦断面図であり、一部を省略して示している。
【
図5】本発明の一実施形態によるブラインド用回転伝達装置を示す図であり、(a)は
図4のA-A断面図、(b)は
図4のB-B断面図である。
【
図6】従来のブラインド用回転伝達装置を簡易モデル化した図であり、(a)は組付状態を示す斜視図、(b)は分解斜視図、(c)は組付状態を示す正面図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるブラインド用回転伝達装置を簡易モデル化した図であり、(a)は組付状態を示す斜視図、(b)は分解斜視図、(c)は組付状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のブラインド用回転伝達装置1(
図2)が適用されるブラインド2は、例えば、建物の窓枠などの開口部の内部に設置される横型ブラインドである。ブラインド2は、建物の室外に対して、窓ガラスなどで仕切られた室内に設置される。ブラインド2は、遮蔽材3を昇降動作させる第1駆動系4と、遮蔽材3を回転動作させる第2駆動系5とを備える。第1駆動系4及び第2駆動系5は、ヘッドボックス6に設けられる。
本明細書において、ブラインド2が設置された状態において、ヘッドボックス6の長手方向を左右方向、上下方向及び左右方向に直交する方向を前後方向とする。また、前後方向について、室内の側を前方、室外の側を後方とする。
【0020】
ブラインド2の第1駆動系4は、昇降軸7及び巻取ドラム8を備える。ブラインド2の第2駆動系5は、回転軸9及び図示しない回転ドラムを備える。昇降軸7、巻取ドラム8、回転軸9、及び回転ドラムは、C形チャンネル状のヘッドボックス6内に設けられる。ヘッドボックス6には、複数のラダーコード10を介して、遮蔽材3が吊り下げられる。ブラインド2は、ヘッドボックス6がブラケット11を介して窓枠の上面又は天井に固定されることで、窓の内側に配置される。
【0021】
ヘッドボックス6内には、複数の回転ドラム及び複数の巻取ドラム8が回転自在に設けられる。各回転ドラム及び各巻取ドラム8は、ヘッドボックス6内に設けられるドラム受け12に回転自在に支持される。回転ドラム及び巻取ドラム8は、ドラム受け12に支持された状態において、同軸上に配置されている。
【0022】
回転ドラムには、ラダーコード10の一端部が前後方向から係留される。ラダーコード10には、複数の遮蔽材(スラット)3が支持されている。具体的には、遮蔽材3は、長手方向が左右方向に沿うようにして、ラダーコード10の各中段コードに支持されている。複数の遮蔽材3がラダーコード10に支持された状態において、複数の遮蔽材3は、上下方向に間隔をあけて配置されている。このようにして、複数の遮蔽材3は、ヘッドボックス6に吊り下げられる。
【0023】
巻取ドラム8には、昇降コード13の一端部が係留される。昇降コード13は、ラダーコード10とは別のコードであって、ヘッドボックス6にボトムレール14を昇降可能に吊下支持するものである。ボトムレール14は、昇降コード13の他端部に設けられる。また、ボトムレール14は、ラダーコード10の他端部が前後方向から係留される。このようにして、ボトムレール14は、ヘッドボックス6に吊り下げられる。ヘッドボックス6に吊り下げられたボトムレール14は、最も下側に配置された遮蔽材3よりも下方に位置している。
【0024】
図1に示すように、ヘッドボックス6内には、昇降軸7が回転自在に設けられる。昇降軸7がヘッドボックス6内に設けられた状態において、昇降軸7の軸線方向は、ヘッドボックス6の長手方向に沿っている。昇降軸7は、ヘッドボックス6内に設けられた状態において、自身の軸線まわりに回転可能である。昇降軸7には、巻取ドラム8が一体回転可能に設けられる。巻取ドラム8は、昇降軸7が巻取ドラム8の軸線方向に貫通した状態で、昇降軸7に回転不能に固定される。
【0025】
昇降軸7の軸方向一端部は、後述する変速装置19に連結される。昇降軸7は、後述するクラッチユニット18及び変速装置19を介して、ヘッドボックス6に設けられる操作ユニット15の操作により入力される回転が伝達される。操作ユニット15は、操作者によって操作されることで、ボトムレール14とともに遮蔽材3を昇降動作させたり、遮蔽材3を回転させたりするものである。操作ユニット15には、昇降軸7の一端部側とは逆側に、プーリ16が回転可能に設けられる。プーリ16には、ループ状の操作部材17が巻回される。操作ユニット15は、操作部材17の操作によるプーリ16の回転を上述の通り昇降軸7に伝達できる。従って、ブラインド2は、操作部材17を操作することで、昇降軸7を自身の軸線まわりに回転させることができる。これにより、昇降軸7に固定された巻取ドラム8を回転させることができる。操作ユニット15の内部には、後述するブラインド用回転伝達装置1が配置される。
【0026】
図1に示すように、ヘッドボックス6内には、回転軸9が回転自在に設けられる。回転軸9がヘッドボックス6内に設けられた状態において、回転軸9の軸線方向は、ヘッドボックス6の長手方向に沿っている。回転軸9は、ヘッドボックス6内に設けられた状態において、自身の軸線まわりに回転可能である。回転軸9の軸方向一端部は、操作ユニット15に連結される。操作ユニット15は、内部に配置される歯車列を介して、操作部材17によるプーリ16の回転を回転軸9に伝達できる。従って、ブラインド2は、操作部材17を操作することで回転軸9を回転させて、回転軸9の回転を回転ドラムに伝達できる。このように、ブラインド2は、操作部材17を操作することで、回転ドラムを回転させることができる。
【0027】
このような構成であるので、ブラインド2は、遮蔽材3が例えば略水平に配置された状態から、操作部材17を操作することにより、回転ドラムを回転させて、複数の遮蔽材3を同時に傾動させることができる。ブラインド2は、複数の遮蔽材3が傾斜した状態から、操作部材17を操作することにより、回転ドラムを先ほどとは逆に回転させて、複数の遮蔽材3を同時に略水平に配置、又は逆方向に傾動された状態にすることができる。従って、ブラインド2は、操作部材17を操作することで、複数の遮蔽材3の傾斜角度を同時に調整することができる。
【0028】
ブラインド2は、操作部材17を操作することで、ヘッドボックス6内に設けられたクラッチユニット18が締結されるまでプーリ16を一方の方向に回転させると、昇降軸7を回転させることができる。昇降軸7が回転すると、昇降軸7に固定された巻取ドラム8が回転するので、複数の遮蔽材3を上昇させることができる。複数の遮蔽材3を上昇させることで、ブラインド2を開くことができる。遮蔽材3を上昇させる際、ヘッドボックス6内に設けられる変速装置19の作用によって、軽い力で操作することができる。
【0029】
ブラインド2は、複数の遮蔽材3が停止した状態から、操作部材17を操作することにより、クラッチユニット18の締結が解除されるまでプーリ16を他方の方向に回転させると、昇降軸7が自由回転可能な状態となる。従って、ボトムレール14の自重によって、複数の遮蔽材3を下降させることができる。複数の遮蔽材3を下降させることで、ブラインド2を閉じることができる。複数の遮蔽材3を下降させる際、ヘッドボックス6内に設けられるブレーキ20によって回転している昇降軸7を制動することで、遮蔽材3を低速で下降させることができる。
【0030】
前述したように、操作ユニット15には、
図2から
図5に示すようなブラインド用回転伝達装置1が内蔵される。ブラインド用回転伝達装置1は、回転力が入力される入力部21と、前記回転力が出力される出力部22と、入力部21が所定量回転した後に入力部21と出力部22とを連結する空転機構23とを備える。ブラインド用回転伝達装置1は、前述した第1駆動系4に含まれる。
【0031】
入力部21は、プーリ16からの回転力の入力を受け付ける。図示例では、入力部21は、入力軸24及び入力伝達部材25を有する。入力軸24は、プーリ16が配置される側から順に、軸部26、ギヤ部27及び連結部28を有する。軸部26は、軸方向に沿って延びる丸棒状である。ギヤ部27は、歯車状の部材である。軸部26とギヤ部27とは、同軸上に配置された状態において固定される。連結部28は、板状の円板片29と、筒状の係合片30とを有する。円板片29は、円板片29の一方の板面とギヤ部27の軸部26が位置する側とは逆側の端面とが当接した状態で、ギヤ部27に固定される。係合片30は、円板片29の他方の板面に設けられる。係合片30は、円板片29から突出している。係合片30の先端部には、一対の切欠き31,31が形成される。一対の切欠き31,31は、係合片30の径方向に対向している。係合片30、ギヤ部27及び軸部26は、同軸上に配置される。なお、軸部26、ギヤ部27及び連結部28は、一体形成してもよい。入力伝達部材25は、円板状である。入力伝達部材25は、中央部に、軸方向に貫通する挿通孔32を有する。入力伝達部材25は、一方の板面に、入力部21の一対の切欠き31,31に差し込まれる一対の差込片33,33を有する。一対の差込片33,33は、入力伝達部材25から突出している。入力伝達部材25は、後述する空転機構23に係合可能な第1係合爪部34を有する。図示例では、第1係合爪部34は、入力伝達部材25の外周面に一対設けられる。一対の第1係合爪部34,34は、入力伝達部材25の径方向に対向している。一対の第1係合爪部34,34は、入力伝達部材25の外周面から径外方に突出している。このような構成の入力部21は、入力伝達部材25の一対の差込片33,33が入力軸24の一対の切欠き31,31に差し込まれた状態において、係合片30から差込片33に回転が伝達されることで入力軸24の軸線まわりに一体回転可能である。
【0032】
出力部22は、クラッチユニット18との間に設けられるシャフトに一体回転可能に連結され、クラッチユニット18及び変速装置19を介して前述した昇降軸7に回転を伝達する。図示例では、出力部22は、出力軸35及び出力伝達部材36を有する。出力軸35は、本体部37、軸部38及び一対の板状片39,39を有する。本体部37は、軸方向両端部に開口した円筒状である。軸部38は、軸方向に延びる丸棒状である。一対の板状片39,39は、軸部38の外周面から径外方に突出している。一対の板状片39,39は、軸部38の径方向に対向している。軸部38は、一対の板状片39,39を介して、本体部37の内面に保持される。軸部38が本体部37に保持された状態において、軸部38は、本体部37から入力部21の側に突出している。出力伝達部材36は、第1筒部40及び第2筒部41を有する。第1筒部40は、軸方向両端部に開口した円筒状である。第1筒部40は、後述する空転機構23に係合可能な第2係合爪部42を有する。図示例では、第2係合爪部42は、出力伝達部材36の内周面に一対設けられる。一対の第2係合爪部42,42は、出力伝達部材36の径方向に対向している。一対の第2係合爪部42,42は、出力伝達部材36の内周面から径内方に突出している。第1筒部40は、入力部21が配置される側において、内縁部に出力軸35が配置される側に凹んだ円環状の段部43を有する。段部43内には、第2係合爪部42が入り込んでいる。第2筒部41は、出力軸35が位置する側に開口した円筒状である。すなわち、第2筒部41は、出力軸35が位置する側とは逆側の開口部が板材44によって閉塞される。板材44は、円板状で、中央部に軸方向に貫通する挿通孔45を有する。第2筒部41は、出力軸35の板状片39に係合可能な係合部46を有する。係合部46は、第2筒部41の内周面に設けられる。係合部46は、第2筒部41から出力軸35の側に突出している。第1筒部40と第2筒部41とは、同軸上に配置された状態で固定される。第1筒部40と第2筒部41とが固定された状態において、第1筒部40は、入力部21の側に位置し、第2筒部41は、出力軸35の側に位置している。なお、出力軸35及び出力伝達部材36は、一体形成してもよい。
【0033】
空転機構23は、入力部21と出力部22との間に介在される。空転機構23は、1つ以上の第1空転部材47と、1つ以上の第2空転部材48とを備える。本実施形態では、空転機構23は、2つの第1空転部材47及び2つの第2空転部材48を備える。2つの第1空転部材47は、同様の構成であるので、以下では、2つの第1空転部材47のうち、一方の第1空転部材47についてのみ説明する。2つの第2空転部材48は、同様の構成であるので、以下では、2つの第2空転部材48のうち、一方の第2空転部材48についてのみ説明する。
【0034】
第1空転部材47は、軸方向両端部が開口した円筒状である。第1空転部材47は、内周面に入出力用第1爪部49及び伝達用第1爪部50を有する。入出力用第1爪部49は、入力部21の回転方向に対して入力部21又は入力部21側に配置される第2空転部材48と係合可能である。本実施形態では、入力部21の第1係合爪部34は、入力部21の回転方向に対して入出力用第1爪部49と係合可能である。伝達用第1爪部50は、入力部21の回転方向に対して後述する第2空転部材48と係合可能である。入出力用第1爪部49及び伝達用第1爪部50は、第1空転部材47の内周面から径内方に突出している。図示例では、入出力用第1爪部49は、第1空転部材47の内周面の軸方向一端側において、第1空転部材47の内周面に2つ位置している。すなわち、空転機構23は、2つの入出力用第1爪部49を有する。2つの入出力用第1爪部49は、第1空転部材47の内周面の入力部21が配置される側において、第1空転部材47の内周面の周方向に等間隔に配置される。伝達用第1爪部50は、第1空転部材47の内周面の軸方向他端側において、第1空転部材47の内周面に2つ位置している。すなわち、空転機構23は、2つの伝達用第1爪部50を有する。2つの伝達用第1爪部50は、第1空転部材47の内周面の出力部22が配置される側において、第1空転部材47の内周面の周方向に等間隔に配置される。2つの入出力用第1爪部49及び2つの伝達用第1爪部50は、第1空転部材47の内周面の軸方向に対して重複しないように、第1空転部材47の内周面の周方向に等間隔に、第1空転部材47の内周面に位置している。すなわち、隣接する入出力用第1爪部49と伝達用第1爪部50との間は、第1空転部材47の内周面の周方向において等間隔である。
【0035】
2つの隣接する第1空転部材47のうち、一方の第1空転部材47は、軸方向一端側において、内縁部に軸方向の他端側に凹んだ円環状の段部51を有する。2つの隣接する第1空転部材47のうち、他方の第1空転部材47は、軸方向他端側において、内縁部に軸方向の一端側に凹んだ円環状の段部51を有する。図示例では、2つの第1空転部材47は、同一の構成である。従って、2つの第1空転部材47はそれぞれ、軸方向両端部に段部51を有する。段部51は、第1空転部材47の軸方向外方に開口するとともに、第1空転部材47の径内方に開口している。入出力用第1爪部49が位置する側の段部51内には、入出力用第1爪部49の端部が重複するように設けられている。伝達用第1爪部50が位置する側の段部51内には、伝達用第1爪部50の端部が重複するように設けられている。
【0036】
第2空転部材48は、軸方向に延びる円柱状である。第2空転部材48は、中央部に軸方向に貫通する挿通孔52を有する。第2空転部材48は、外周面に入出力用第2爪部53及び伝達用第2爪部54を有する。入出力用第2爪部53は、入力部21の回転方向に対して出力部22又は出力部22側に配置される第1空転部材47と係合可能である。本実施形態では、出力部22の第2係合爪部42は、入力部21の回転方向に対して入出力用第2爪部53と係合可能である。伝達用第2爪部54は、入力部21の回転方向に対して前述した第1空転部材47の伝達用第1爪部50と係合可能である。入出力用第2爪部53及び伝達用第2爪部54は、第2空転部材48の外周面から径外方に突出している。図示例では、入出力用第2爪部53は、第2空転部材48の軸方向一端側において、第2空転部材48の外周面に2つ位置している。すなわち、空転機構23は、2つの入出力用第2爪部53を有する。2つの入出力用第2爪部53は、第2空転部材48の外周面の出力部22が配置される側において、第2空転部材48の外周面の周方向に等間隔に配置される。伝達用第2爪部54は、第2空転部材48の軸方向他端側において、第2空転部材48の外周面に2つ位置している。すなわち、空転機構23は、2つの伝達用第2爪部54を有する。2つの伝達用第2爪部54は、第2空転部材48の外周面の入力部21が配置される側において、第2空転部材48の外周面の周方向に等間隔に配置される。2つの入出力用第2爪部53及び2つの伝達用第2爪部54は、第2空転部材48の外周面の軸方向に対して重複しないように、第2空転部材48の外周面に位置している。この場合、入出力用第2爪部53と伝達用第2爪部54とは、第2空転部材48の軸方向に沿って連接される。
【0037】
図4に示すように、入力部21、空転機構23及び出力部22は、互いに組付けられる。具体的には、入力部21が配置される側から順に、2つの第1空転部材47及び出力伝達部材36が配置された状態において、隣接する2つの第1空転部材47が接触して配置されるとともに、隣接する第1空転部材47と出力伝達部材36とが接触して配置される。この際、2つの第1空転部材47と出力伝達部材36とは、同軸上に位置している。このようにして2つの第1空転部材47と出力伝達部材36とが配置されることで、中空部55が形成される。この中空部55内には、入力部21が配置される側から順に、入力伝達部材25及び2つの第2空転部材48が配置される。この際、入力伝達部材25と2つの第2空転部材48とは、同軸上に位置している。中空部55内に入力伝達部材25及び2つの第2空転部材48が配置された状態において、2つの第1空転部材47、出力伝達部材36、入力伝達部材25、及び2つの第2空転部材48は、同軸上に位置している。図示しないが、入力部21が配置される側から順に、出力伝達部材36及び出力軸35が配置される。この際、出力伝達部材36の係合部46は、出力軸35の内部に配置される。これにより、出力伝達部材36の係合部46は、入力部21の回転方向に対して板状片39と係合可能である。また、出力部22が配置される側から順に、入力伝達部材25及び入力軸24が配置される。この際、入力軸24の切欠き31に入力伝達部材25の差込片33が差し込まれた状態とされる。出力軸35の軸部38は、出力伝達部材36の挿通孔45、第2空転部材48の挿通孔52、第1空転部材47、入力伝達部材25の挿通孔32を貫通した状態とされる。
【0038】
入力部21、空転機構23及び出力部22が組み付けられて、一方の第1空転部材47と他方の第1空転部材47とが接触した状態において、一方の第1空転部材47の段部51と他方の第1空転部材47の段部51とによって凹部56が形成されてなる。凹部56は、中空部55内に開口している。また、第1空転部材47と出力伝達部材36とが接触した状態において、第1空転部材47の段部51と出力伝達部材36の段部43とによって凹部57が形成される。凹部57は、中空部55内に開口している。前述した第2空転部材48は、凹部56,57内に差し込まれた状態で、凹部56,57に沿って摺動可能な凸部58を有する。図示例では、凸部58は、入出力用第2爪部53と伝達用第2爪部54とが連接された部分上に設けられる。凸部58は、第2空転部材48の外周面の径外方に突出している。従って、入力部21、空転機構23及び出力部22が組み付けられた状態において、一方の第2空転部材48の凸部58は、2つの第1空転部材47の間の凹部56に差し込まれており、他方の第2空転部材48の凸部58は、出力伝達部材36と第1空転部材47との間の凹部57に差し込まれている。この状態において、第1空転部材47と第2空転部材48とは相対回転可能である。
【0039】
入力部21、空転機構23及び出力部22が組み付けられた状態において、第1空転部材47と第2空転部材48とは、所定量相対回転した後に伝達用第1爪部50と伝達用第2爪部54とが入力部21の回転方向に対して係合するように配置される。前述したように、2つの第2空転部材48は、中空部55内に配置される。従って、第1空転部材47と第2空転部材48とは、第1空転部材47の軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置される。前述したように、入力伝達部材25の一部は、中空部55内に配置され、第2空転部材48は、中空部55内に配置される。従って、入力部21、空転機構23及び出力部22が組み付けられた状態において、入力部21は、第1空転部材47の軸方向に対して少なくとも一部が第1空転部材47と重複するように配置され、出力部22は、第2空転部材48の軸方向に対して少なくとも一部が第2空転部材48と重複するように配置される。
【0040】
入力部21、空転機構23及び出力部22が組み付けられた状態において、入力部21が配置される側から順に説明すると、入力伝達部材25の第1係合爪部34は、第1空転部材47の入出力用第1爪部49と係合可能であり、第1空転部材47の伝達用第1爪部50は、第2空転部材48の伝達用第2爪部54と係合可能であり、第2空転部材48の入出力用第2爪部53は、第1空転部材47の入出力用第1爪部49と係合可能であり、第1空転部材47の伝達用第1爪部50は、第2空転部材48の伝達用第2爪部54と係合可能であり、第2空転部材48の入出力用第2爪部53は、出力伝達部材36の第2係合爪部42と係合可能であり、出力伝達部材36の係合部46は、出力軸35の板状片39に係合可能である。
【0041】
ところで、
図2に示すように、出力軸59は、回転軸9に一体回転可能に連結される。出力軸59は、本体部60、軸部61及び一対の板状片62,62を有する。本体部60は、軸線方向両端部に開口した円筒状である。軸部61は、軸方向に延びる丸棒状である。一対の板状片62,62は、軸部61の外周面から径外方に突出している。一対の板状片62,62は、軸部61の径方向に対向している。軸部61は、一対の板状片62,62を介して、本体部60の内面に保持される。軸部61が本体部60に保持された状態において、軸部61は、本体部60を貫通している。出力軸59には、従動ギヤ63が係合される。従動ギヤ63は、歯車状で、一対の係合部64,64を有する。一対の係合部64,64は、従動ギヤ63から出力軸59の側に突出している。出力軸59と従動ギヤ63とが組み付けられた状態において、従動ギヤ63の一対の係合部64,64は、本体部60内に配置される。これにより、従動ギヤ63の一対の係合部64,64は、出力軸59の板状片62に係合可能である。従動ギヤ63は、中間ギヤ65と噛み合っている。中間ギヤ65は、入力部21のギヤ部27と噛み合っている。従動ギヤ63は、入力部21のギヤ部27と噛み合っていない。
【0042】
以上のような構成であるので、操作部材17を操作すると、プーリ16の回転力は、入力部21、中間ギヤ65、従動ギヤ63、出力軸59を介して、回転軸9に伝達される。これにより、遮蔽材3の回転動作が行われる。この際、入力部21は、空転機構23によって、出力部22と連結されていない。従って、昇降軸7は回転しないので、遮蔽材3が移動(昇降)することはない。そして、さらに操作部材17によってプーリ16を回転させると、入力部21は、空転機構23を介して、出力部22と連結される。これにより、昇降軸7が回転して、遮蔽材3を上昇させることができる。
【0043】
次に、
図6及び
図7を用いて、従来の回転伝達装置100と本実施形態の回転伝達装置1とを比較して説明する。
図6(a)、
図6(b)、及び
図6(c)に示すように、従来の回転伝達装置100は、入力部66、出力部67及び2つの空転部材68を備える。入力部66は、回転力が伝達される部材であり、入力部66にはプーリ16からの回転力が伝達される。入力部66は、一対の爪部69,69を有する。出力部67は、回転力が出力される部材であり、上述した通りクラッチユニット18及び変速装置19を介して遮蔽材3を昇降させる昇降軸7に回転を伝達する。出力部67は、一対の爪部70,70を有する。2つの空転部材68はそれぞれ、一対の爪部71,71を有する。入力部66、2つの空転部材68、出力部67は、組み付けられた状態において、ケース本体72とケース蓋73とからなるケース74内に収容される。入力部66、2つの空転部材68、出力部67が組み付けられた状態において、2つの空転部材68は、入力部66が所定量回転した後に入力部66と出力部67とを連結するように配置される。入力部66からの回転は、爪部69,70,71が係合することにより、出力部67に伝達される。
【0044】
従来の回転伝達装置100の場合、入力部66、2つの空転部材68、及び出力部67は、軸方向に連結される構成である。従って、各部材の爪部69,70,71は、軸方向に突出している。このような構成の場合、ケース74の軸方向の深さ、入力部66の厚さ、2つの空転部材68の厚さ、及び出力部67の厚さの合計の交差をスラスト方向クリアランス75の最大値とした際、例えば、入力部66と空転部材68との間の隙間がスラスト方向クリアランス75の最大値となったときを考える。このとき、回転時に爪部69にかかる荷重の荷重中心点76と爪部69の付け根との間の距離Aが大きくなり、入力部66の爪部69の付け根に加わる曲げモーメントが最大となる。スラスト方向クリアランス75及び距離Aは、空転部材68の数が増えるほど大きくなる。従って、爪部69の破損が起こりやすくなって、伝達可能トルクに耐えられる爪部69の強度が低下するため、必要な伝達可能トルクを確保することが難しくなる。
【0045】
これに対し、本実施形態の回転伝達装置1は、上述した構成で、簡易モデル化すると、
図7(a)、
図7(b)及び
図7(c)に示すような構成である。すなわち、本実施形態の回転伝達装置1は、第1空転部材47と第2空転部材48とが重複する構成である。従って、本実施形態の回転伝達装置1の場合、第1空転部材47及び第2空転部材48の数が増えたとしても、スラスト方向クリアランス75が大きくなるが、例えば、回転時に第1空転部材47の爪部にかかる荷重の荷重中心点77と爪部の付け根との間の距離Bが大きくなることがない。従って、従来のような問題が生じるおそれがない。
【0046】
本実施形態のブラインド用回転伝達装置1の場合、第1空転部材47と第2空転部材48とは、所定量相対回転した後に伝達用第1爪部50と伝達用第2爪部54とが入力部21の回転方向に対して係合するように、第1空転部材47の軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置される。従って、本実施形態のブラインド用回転伝達装置1によれば、部材を重ね合わせる従来の場合と比較して、大型化することなく各部材の爪部の強度の低下を抑制できる。
【0047】
本実施形態のブラインド用回転伝達装置1の場合、入力部21は、第1空転部材47と重複して配置され、出力部22は、第2空転部材48と重複して配置される。従って、本実施形態のブラインド用回転伝達装置1によれば、上記同様に大型化することなく各部材の爪部の強度の低下を抑制できる。
【0048】
本実施形態のブラインド用回転伝達装置1の場合、第1空転部材47と第2空転部材48とは、交互に重複して配置されるように各々複数である。従って、本実施形態のブラインド用回転伝達装置1によれば、空転機構23を多段構成としても、各部材の爪部の付け根にかかる曲げ応力が増加しないため、各部材の爪部の強度の低下を抑制できる。
【0049】
本実施形態のブラインド用回転伝達装置1の場合、入出力用第1爪部49と伝達用第1爪部50とは、第1空転部材47の内周面の周方向に重複しないように、第1空転部材47の内周面の周方向に等間隔に、第1空転部材47の内周面に位置している。従って、本実施形態のブラインド用回転伝達装置1によれば、回転時に荷重が偏ることがないため、回転時にがたつきが生じるのを防止できる。
【0050】
本実施形態のブラインド用回転伝達装置1の場合、第2空転部材48は、凹部56に沿って摺動可能な凸部58を有する。従って、本実施形態のブラインド用回転伝達装置1によれば、第2空転部材48が軸方向にずれるのを防止できる。
【0051】
本実施形態のブラインド2の場合、ブラインド用回転伝達装置1の効果を奏するブラインドを実現することができる。特に、遮蔽材3を昇降動作させずに回転動作させることが可能なブラインド2に本実施形態のブラインド用回転伝達装置1を用いた場合、上述した効果を奏する。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範
囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【0053】
例えば、前記実施形態では、空転機構23は、第1空転部材47及び第2空転部材48を備えたが、1つの空転部材を備える構成であってもよい。この場合、空転部材は、入力部が所定量回転した後に該回転を出力部に伝達するように入力部及び出力部に係合可能な爪部を有する。典型的には、爪部は、入力部の回転方向に対して入力部と係合可能な入力部側爪部と、入力部の回転方向に対して出力部と係合可能な出力部側爪部とを有する。入力部、空転部材、及び出力部が組み付けられた状態において、入力部と空転部材とは、空転部材の軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置されるとともに、出力部と空転部材とは、空転部材の軸方向に対して少なくとも一部が重複するように配置される。このような構成の具体例としては、例えば、本実施形態のブラインド用回転伝達装置1において、2つの第1空転部材47のうち、出力部22の側に配置される第1空転部材47を前述した空転部材とする。この場合、2つの第1空転部材47のうち、入力部21の側に配置される第1空転部材47、2つの第2空転部材48のうち、入力部21の側に配置される第2空転部材48、入力伝達部材25、及び入力軸24は、一体的に形成されて、全体として入力部とされる。また、2つの第2空転部材48のうち、出力軸35の側に配置される第2空転部材48、出力伝達部材36、及び出力軸35は、一体的に形成されて、全体として出力部とされる。
【0054】
前記実施形態では、入力部21に第1空転部材47が係合可能とされるとともに、出力部22に第2空転部材48が係合可能とされたが、これとは逆であってもよい。すなわち、本実施形態のブラインド用回転伝達装置1は、入力部21に第2空転部材48が係合可能とされるとともに、出力部22に第1空転部材47が係合可能とされてもよい。この場合、入力部21は、第2空転部材48が係合できる構成とされ、出力部22は、第1空転部材47が係合できる構成とされる。
【0055】
前記実施形態では、空転機構23は、2つの第1空転部材47と2つの第2空転部材48とを備える構成とされたが、これに限定されるものではなく、3つ以上の第1空転部材47と3つ以上の第2空転部材48を備える構成であってもよい。すなわち、空転機構23は、複数の第1空転部材47及び複数の第2空転部材48を備える構成であればよい。空転機構23は、第1空転部材47及び第2空転部材48のうち、一方が複数で、他方が1つであってもよい。
【0056】
各爪部の数は、前記実施形態に示した数に限定されるものではなく、適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 ブラインド用回転伝達装置
2 ブラインド
3 遮蔽材
4 第1駆動系
5 第2駆動系
21 入力部
22 出力部
23 空転機構
34 第1係合爪部
42 第2係合爪部
47 第1空転部材
48 第2空転部材
49 入出力用第1爪部
50 伝達用第1爪部
51 段部
53 入出力用第2爪部
54 伝達用第2爪部
56 凹部
58 凸部