(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016830
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】半導体加工用粘着シート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240131BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240131BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240131BHJP
C09J 157/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01L21/02 C
C09J7/38
C09J201/00
C09J157/00
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023120073
(22)【出願日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2022119112
(32)【優先日】2022-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100193172
【弁理士】
【氏名又は名称】上川 智子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 淳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友二
(72)【発明者】
【氏名】植野 大樹
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AB01
4J004CA04
4J004CA06
4J004EA06
4J004FA05
4J040DF021
4J040EF282
4J040JA09
4J040JB08
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA32
4J040KA35
4J040KA38
4J040KA42
4J040LA07
4J040NA20
(57)【要約】
【課題】耐溶剤性に優れた半導体加工用粘着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態の半導体加工用粘着シートは、ベースポリマーを含む粘着剤組成物から形成される粘着剤層と、基材と、を含む。この粘着剤組成物を23℃で1時間、N,N-ジメチルプロピオンアミド溶液に浸漬させた膨潤度S
Aは、2.1倍以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマーを含む粘着剤組成物から形成される粘着剤層と、基材と、を含み
該粘着剤組成物を23℃で1時間、N,N-ジメチルプロピオンアミド溶液に浸漬させた膨潤度SAが、2.1倍以下である、半導体加工用粘着シート。
【請求項2】
前記ベースポリマーを構成する全モノマー成分中、炭素数8以上のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの含有割合が50重量%以上である、請求項1に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項3】
前記ベースポリマーが炭素-炭素二重結合が導入されたポリマーである、請求項1に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項4】
前記基材が、ポリエステル系樹脂、または、ポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤組成物が、リン酸エステル系界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項6】
前記リン酸エステル系界面活性剤の含有量が、前記ベースポリマー100重量部に対して0.03重量部以上である、請求項5に記載の半導体加工用粘着シート。
【請求項7】
溶剤洗浄工程を含む半導体加工工程に用いられる、請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体加工用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体加工用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、パーソナルコンピューター、スマートフォン、自動車等、様々な用途に用いられている。半導体ウエハの加工工程では、加工時に表面を保護するために粘着テープが用いられている。近年、大規模集積回路(LSI)の微細化、および、高機能化が進んでおり、2次元だけでなく、3次元にICを集積させることが行われている。これらの技術ではウエハを薄く研削することが行われている。薄く研削されたウエハは脆いため、搬送時にウエハを保護するために接着剤を用いてウエハを仮止め(Temporary Bonding)することが行われている。仮止めに用いる接着剤は、次の工程に搬送後は不要となるため、例えば、溶剤洗浄により除去される。しかしながら、溶剤による除去工程により半導体の保護に用いられた粘着テープの性能が低下し、十分にウエハを保護できない場合がある。特許文献1および2には、耐溶剤性に優れる半導体加工用粘着テープが開示されている。しかしながら、これらの粘着テープではより薄型(例えば、50μm程度)に研削したウエハを十分に保護できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 2018/083987
【特許文献2】特許第5607847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは耐溶剤性に優れた半導体加工用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態の半導体加工用粘着シートは、ベースポリマーを含む粘着剤組成物から形成される粘着剤層と、基材と、を含む。この粘着剤組成物を23℃で1時間、N,N-ジメチルプロピオンアミド溶液に浸漬させた膨潤度SAは、2.1倍以下である。
2.上記1.に記載の半導体加工用粘着シートにおいて、上記ベースポリマーを構成する全モノマー成分中、炭素数8以上のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの含有割合は50重量%以上であってもよい。
3.上記1.または2.に記載の半導体加工用粘着シートにおいて、上記ベースポリマーは炭素-炭素二重結合が導入されたポリマーであってもよい。
4.上記1.から3.のいずれかに記載の半導体加工用粘着シートにおいて、上記基材は、ポリエステル系樹脂、または、ポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。
5.上記1.から4.のいずれかに記載の半導体加工用粘着シートにおいて、上記粘着剤組成物は、リン酸エステル系界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
6.上記5.に記載の半導体加工用粘着シートにおいて、上記リン酸エステル系界面活性剤の含有量は、上記ベースポリマー100重量部に対して0.03重量部以上であってもよい。
7.上記1.から6のいずれかに記載の半導体加工用粘着シートは、溶剤洗浄工程を含む半導体加工工程に用いられてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、耐溶剤性に優れた半導体加工用粘着シートを提供することができる。本発明の実施形態の半導体加工用粘着シートは、被着体(例えば、ウエハ)に貼り付けられた状態で溶剤洗浄を行った場合であっても、被着体と粘着剤層との間に溶剤の進入がなく、良好な接着性が維持され得る。さらに、溶剤洗浄工程を経た後であっても、半導体加工用粘着シートの基材と粘着剤層との剥離も抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態による半導体加工用粘着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.半導体加工用粘着シートの全体構成
図1は、本発明の実施形態による半導体加工用粘着シートの概略断面図である。図示例において、半導体加工用粘着シート100は、基材10と基材の一方の面に配置された粘着剤層20とを有する。半導体加工用粘着シートは任意の適切なその他の層を備え得る(図示せず)。例えば、基材と粘着剤層との間に、任意の適切な層(例えば、中間層)が形成されていてもよい。図示例では基材10は単一の層であるが、2以上の積層体であってもよい。半導体加工用粘着シートは、使用に供するまでの間、粘着剤層を保護する目的で、粘着剤層の外側にはく離ライナーが設けられていてもよい。
【0009】
粘着剤層20はベースポリマーを含む粘着剤組成物から形成される。この粘着剤組成物を23℃で1時間、N,N-ジメチルプロピオンアミド溶液に浸漬させた膨潤度SAは、2.1倍以下である。膨潤度SAが2.1倍以下であれば、耐溶剤性に優れた半導体加工用粘着シートを提供することができる。膨潤度SAは好ましくは2.0倍以下、より好ましくは1.9倍以下、さらに好ましくは1.8倍以下である。膨潤度SAは1倍に近いほど好ましい。本明細書において、膨潤度SAは以下の方法により測定した膨潤度をいう。0.1重量部の粘着剤サンプルを、平均孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で巾着状に包み、次いで口をタコ糸で縛り、評価サンプルとする。多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜としては、例えば、商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(日東電工社製、平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)を用いることができる。評価サンプルをN,N-ジメチルプロピオンアミド溶液50mLに、23℃で1時間浸漬させた後、評価サンプルをN,N-ジメチルプロピオンアミド溶液から取り出す。次いで、外表面に付着しているN,N-ジメチルプロピオンアミド溶液を拭き取り、評価サンプルの重量を測定する。測定した重量から下記式により膨潤度SAを算出する。
膨潤度SA(倍)=(W4-W2-W3)/(W1)
(式中、W1は0.1重量部の粘着剤組成物の重量、W2は粘着剤組成物を包むのに用いた多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の重量、W3はタコ糸の重量、W4は浸漬後の評価サンプルの重量をそれぞれ表す)
【0010】
本発明の実施形態の半導体加工用粘着シートの厚みは、任意の適切な厚みに設定され得る。半導体加工用粘着シートの厚みは、例えば、好ましくは20μm~1000μmであり、より好ましくは50μm~300μmであり、さらに好ましくは100μm~300μmである。
【0011】
B.基材
基材10は、任意の適切な樹脂から構成され得る。基材を構成する樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース類、フッ素系樹脂、ポリエーテル、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系樹脂、および、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂が用いられる。これらの樹脂を用いることにより、耐溶剤性に優れた半導体加工用粘着シートが得られ得る。基材は単一の層であってもよく、2以上の積層体であってもよい。
【0012】
基材は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらにその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤等が挙げられる。その他の成分の種類および使用量は、目的に応じて任意の適切な量で用いることができる。
【0013】
基材の厚みは、好ましくは10μm~200μmであり、より好ましくは20μm~150μmである。
【0014】
C.粘着剤層
粘着剤層20はベースポリマーを含む粘着剤組成物から形成される。粘着剤組成物は、23℃で1時間、N,N-ジメチルプロピオンアミド溶液に浸漬させた膨潤度SAが、2.1倍以下である。粘着剤組成物の膨潤度SAが2.1倍以下であれば、耐溶剤性に優れた半導体加工用粘着シートが得られる。膨潤度SAが2.1倍以下である粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は、被着体(例えば、ウエハ)に貼り付けた状態で溶剤洗浄を行った場合であっても、被着体と粘着剤層との間に溶剤の進入がなく、良好な接着性が維持され得る。したがって、本発明の実施形態の半導体加工用粘着シートは、溶剤洗浄工程を含む半導体加工工程にも好適に用いることができる。
【0015】
C-1.ベースポリマー
ベースポリマーは任意の適切なモノマー成分を含むモノマー組成物を重合することにより得られる。ベースポリマーとしては、例えば、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルアルキルエーテル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン-ジエンブロック共重合体等の樹脂が挙げられる。好ましくは(メタ)アクリル系樹脂が用いられる。(メタ)アクリル系樹脂を用いることにより、粘着剤層の貯蔵弾性率および引っ張り弾性率の調整がしやすく、また、粘着力と剥離性とのバランスに優れた粘着シートを得ることができる。さらに、粘着剤由来の成分による被着体の汚染が低減され得る。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。
【0016】
ベースポリマーである(メタ)アクリル系樹脂は、ベースポリマーを構成する全モノマー成分中炭素数8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステルの含有割合が好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは50重量%~75重量%であり、さらに好ましくは60重量%~70重量%以上である。ベースポリマーを構成する全モノマー成分中の炭素数8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステルの含有割合が上記範囲であれば、耐溶剤性に優れた半導体加工用粘着シートを提供することができる。
【0017】
炭素数8以上のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状のアルキル基であってもよく、環状のアルキル基であってもよい。好ましくは直鎖状または分岐状のアルキル基を有する。アルキル基は好ましくは炭素数8以上のアルキル基であり、より好ましくは8~30のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数8~20のアルキル基である。アルキル基としては、具体的には、2-エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、イソステアリル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0018】
炭素数8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステルとしては、具体的には、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
モノマー組成物は、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、炭素数8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステルと共重合可能な他のモノマーを含んでいてもよい。このようなモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等の窒素含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;スクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。他のモノマーは上記炭素数8以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステルとの合計が100重量%となる含有割合で用いられる。
【0020】
好ましくは、ベースポリマーを構成する全モノマー成分中極性基含有モノマーの含有割合は好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは3重量%以下である。極性基含有モノマーはベースポリマーを構成するモノマー成分として含まれていない(0重量%であってもよい)。極性基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー等が挙げられる。
【0021】
ベースポリマーである(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは30万以上であり、より好ましくは50万以上であり、さらに好ましくは80万~300万である。このような範囲であれば、低分子量成分のブリードを防止し、低汚染性の粘着シートを得ることができる。ベースポリマーである(メタ)アクリル系樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは1~20であり、より好ましくは3~10である。分子量分布の狭いポリマーを用いることにより、低分子量成分のブリードを防止し、低汚染性の粘着シートを得ることができる。なお、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定(溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めることができる。
【0022】
好ましくは、ベースポリマーは炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーである。炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーは、主鎖に炭素-炭素二重結合を有していてもよく、側鎖に炭素-炭素二重結合を有していてもよく、末端に炭素-炭素二重結合を有していてもよい。
【0023】
炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、任意の適切な方法により得ることができる。例えば、任意の適切な重合方法により得られた樹脂と、炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応(例えば、縮合反応、付加反応)させることにより得られ得る。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂を用いる場合、任意の適切な官能基を有するモノマー由来の構成単位を有する(メタ)アクリル系樹脂(共重合体)を任意の適切な溶媒中で重合し、その後、該アクリル系樹脂の官能基と、該官能基と反応し得る炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応させることにより、上記樹脂を得ることができる。反応させる炭素-炭素二重結合を有する化合物の量は、上記樹脂100重量部に対して、好ましくは4重量部~30重量部であり、より好ましくは4重量部~20重量部である。溶媒としては任意の適切な溶媒を用いることができ、例えば、酢酸エチル、メチルチルケトン、トルエン等の各種有機溶剤が挙げられる。
【0024】
上記のようにして樹脂と炭素-炭素二重結合を有する化合物とを反応させる場合、樹脂および炭素-炭素二重結合を有する化合物はそれぞれ、互いに反応可能な官能基を有することが好ましい。官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基/エポキシ基、カルボキシル基/アジリジン基、ヒドロキシル基/イソシアネート基等が挙げられる。これらの官能基の組み合わせの中でも、反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組み合わせが好ましい。上記のとおり、本発明の1つの実施形態においては、ベースポリマーを構成する全モノマー成分中極性基含有モノマーの含有割合は好ましくは10重量%以下である。ベースポリマーが炭素-炭素二重結合を有する場合には、炭素-炭素二重結合を有する化合物とのモル比が等量となるよう用いることが好ましい。
【0025】
炭素-炭素二重結合を有する化合物としては、例えば、2-イソシアネートエチルメタクリレート、メタクリロイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナトエチルメタクリレート)、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
C-2.リン酸エステル系界面活性剤
粘着剤組成物は好ましくはリン酸エステル系界面活性剤をさらに含む。リン酸エステル系界面活性剤をさらに含む場合、耐溶剤性がさらに向上した半導体加工用粘着シートが得られる。リン酸エステル系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル、および、これらの塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸およびその塩を用いることができる。リン酸エステル系界面活性剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸は、高級アルコールに酸化エチレンを付加重合して得られるもののリン酸エステルである。高級アルコールの炭素数は好ましくは8~22であり、より好ましくは10~20あり、さらに好ましくは12~18である。酸化エチレンの付加モル数は好ましくは1~15であり、より好ましくは2~12であり、さらに好ましくは2~10である。このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸であれば、耐溶剤性に優れた半導体加工用粘着シートを提供することができる。
【0028】
リン酸エステル系界面活性剤の含有量は、上記ベースポリマー100重量部に対して好ましくは0.03重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部~1重量部であり、さらに好ましくは0.2重量部~0.5重量部である。リン酸エステル系界面活性剤の含有量が上記範囲であれば、耐溶剤性に優れた半導体加工用粘着シートを提供することができる。
【0029】
C-3.光重合開始剤
1つの実施形態において、本発明の粘着剤組成物は紫外線硬化型粘着剤である。紫外線硬化型である粘着剤組成物は光重合開始剤をさらに含む。光重合開始剤としては、任意の適切な開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、エチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフォナート、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1等のα―ヒドロキシアセトフェノン等が挙げられる。好ましくは、アセトフェノン系化合物を用いることができる。光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
光重合開始剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、IGM Resins社製の商品名:Omnirad 127、Omnirad 369およびOmnirad 651が挙げられる。
【0031】
光重合開始剤は任意の適切な量で用いられ得る。光重合開始剤の含有量は、上記紫外線硬化型粘着剤100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは0.5重量部~10重量部である。光重合開始剤の含有量が0.5重量部未満である場合、紫外線照射時に十分に硬化しないおそれがある。光重合開始剤の含有量が10重量部を超える場合、粘着剤の保存安定性が低下するおそれがある。
【0032】
C-4.添加剤
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、触媒(例えば、白金触媒)、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤(軽剥離剤)、軟化剤、リン酸エステル系界面活性剤以外の界面活性剤、難燃剤、溶剤オリゴマー等が挙げられる。
【0033】
1つの実施形態においては、上記紫外線硬化型粘着剤は、架橋剤をさらに含む。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤の含有割合は、紫外線硬化型粘着剤に含まれるベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~10重量部であり、より好ましくは0.02重量部~5重量部であり、さらに好ましくは0.025重量部~0.5重量部である。架橋剤の含有割合により、粘着剤層の柔軟性を制御することができる。架橋剤の含有量が0.01重量部未満である場合、粘着剤がゾル状となり、粘着剤層を形成できないおそれがある。架橋剤の含有量が10重量部を超える場合、被着体への密着性が低下するおそれがある。
【0034】
1つの実施形態においては、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。イソシアネート系架橋剤は、多種の官能基と反応し得る点で好ましい。特に好ましくは、イソシアネート基を3個以上有する架橋剤が用いられる。架橋剤として、イソシアネート系架橋剤を用い、かつ、架橋剤の含有割合を上記範囲とすることにより、被着体表面の凹凸への追従性、および、基材との投錨性に優れた紫外線硬化型粘着剤を提供することができる。
【0035】
粘着剤層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。粘着剤層の厚みは、好ましくは10μm~500μmであり、より好ましくは15μm~300μmであり、さらに好ましくは20μm~250μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲であることにより、被着体に対し十分な粘着力を発揮し得る。
【0036】
紫外線硬化型粘着剤のゲル分率は、好ましくは20%~90%であり、より好ましくは30%~85%であり、さらに好ましくは40%~80%である。ゲル分率は、酢酸エチル等の溶媒に対する不溶分として求めることができ、具体的には、紫外線硬化型粘着剤を酢酸エチル中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。一般に、ポリマーのゲル分率は架橋度に等しく、ポリマー中の架橋された部分が多いほど、ゲル分率が大きくなる。ゲル分率(架橋構造の導入量)は、架橋構造の導入方法や、架橋剤の種類および量等により所望の範囲に調整できる。
【0037】
D.半導体加工用粘着シートの製造方法
半導体加工用粘着シートは、任意の適切な方法により製造され得る。例えば、はく離ライナーに粘着剤溶液(紫外線硬化型粘着剤)を塗布し、乾燥させて、はく離ライナー上に粘着剤層を形成した後、それを基材に貼り合せる方法により得られ得る。また、基材上に、紫外線硬化型粘着剤を塗布し、乾燥して、半導体加工用粘着シートを得てもよい。粘着剤組成物の塗布方法としては、バーコーター塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、グラビアリバース塗布、リバースロール塗布、リップ塗布、ダイ塗布、ディップ塗布、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など種々の方法を採用することができる。乾燥方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。
【0038】
E.半導体加工用粘着シートの用途
半導体加工用粘着シートは半導体製造プロセスに好適に用いることができる。上記のとおり、本発明の実施形態の半導体加工用粘着シートは、溶剤に接触した場合であっても基材と粘着剤層との投錨力の低下が抑制され得る。したがって、溶剤洗浄工程を含む半導体製造工程にも好適に用いることができる。溶剤洗浄工程に用いられる溶剤としては、例えば、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DBPA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MGMEA)、イソプロパノール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等の半導体の製造方法で通常用いられる溶媒が挙げられる。
【実施例0039】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0040】
[実施例1]
ラウリルメタクリレート(LMA)/2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/2-イソシアナトエチルメタクリレート(MOI)=100/22/18(モル比)(炭素数8以上のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの含有割合:82重量%)を重合し、アクリル系ポリマーを得た。具体的には、LMA、HEMA、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.1重量部、および、溶媒(酢酸エチル)を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、撹拌棒、撹拌羽が装備された重合用実験装置に投入した(固形分濃度36重量%)。次いで、撹拌しながら、窒素置換し、その後、窒素を流入下、撹拌しながら、65℃で重合し、樹脂溶液を得た。次いで、空気置換した後、得られた樹脂溶液にMOIを添加し、40℃で付加反応させ、アクリル系ポリマーを含む溶液を得た。
得られたアクリル系ポリマー100重量部、粘着性付与剤(荒川化学工業社製、商品名:タマノル526)5重量部、軽剥離剤(日油社製、商品名:ユニオールD-1200)3重量部、リン酸エステル系界面活性剤(東邦化学工業社製、商品名:フォスファノールRL-210)0.2重量部、重合開始剤(GM Resins B.V社製、商品名:Omnirad 379EG)3重量部、架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名:TETRAD-C)0.05重量部および架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)2.5重量部を、酢酸エチルと混合し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステル株式会社製、商品名:MRF)の剥離処理面に塗布し、120℃で2分間加熱して、厚み20μmの粘着剤層を形成した。次いで、当該粘着剤層面に、基材としてのポリエチレン系フィルム(日東電工株式会社製、厚み:80μm)に転写した後、50℃にて48時間保存し、粘着シートを得た。
【0041】
[実施例2]
粘着性付与剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成した以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0042】
[実施例3]
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)/2-イソシアナトエチルメタクリレート(MOI)=100/20/16(モル比)(炭素数8以上のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの含有割合:78重量%)を重合し、アクリル系ポリマーを得た。具体的には、2EHA、HEA、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.1重量部、および、溶媒(酢酸エチル)を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、撹拌棒、撹拌羽が装備された重合用実験装置に投入した(固形分濃度36重量%)。次いで、撹拌しながら、窒素置換し、その後、窒素を流入下、撹拌しながら、65℃で重合し、樹脂溶液を得た。次いで、空気置換した後、得られた樹脂溶液にMOIを添加し、40℃で付加反応させ、アクリル系ポリマーを含む溶液を得た。
得られたアクリル系ポリマー100重量部、重合開始剤(GM Resins B.V社製、商品名:Omnirad 651)2重量部、および、架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)0.75重量部と酢酸エチルとを混合し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0043】
[実施例4]
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/アクリロイルモルフォリン(ACMO)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)/2-イソシアナトエチルメタクリレート(MOI)=75/25/20/11(モル比)(炭素数8以上のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの含有割合:64重量%)を重合し、アクリル系ポリマーを得た。具体的には、2EHA、ACMO、HEA、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.1重量部、および、溶媒(酢酸エチル)を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、撹拌棒、撹拌羽が装備された重合用実験装置に投入した(固形分濃度36重量%)。次いで、撹拌しながら、窒素置換し、その後、窒素を流入下、撹拌しながら、65℃で重合し、樹脂溶液を得た。次いで、空気置換した後、得られた樹脂溶液にMOIを添加し、40℃で付加反応させ、アクリル系ポリマーを含む溶液を得た。
得られたアクリル系ポリマー100重量部、リン酸エステル系界面活性剤(東邦化学工業社製、商品名:フォスファノールRL-210)0.3重量部、重合開始剤(GM Resins B.V社製、商品名:Omnirad 127)3重量部、および、架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)0.5重量部を、酢酸エチルと混合し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成した以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0044】
(比較例1)
ブチルアクリレート(BA)/エチルアクリレート(EA)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)/2-イソシアナトエチルメタクリレート(MOI)=50/50/22/18(モル比)(炭素数8以上のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの含有割合:0重量%)を重合し、アクリル系ポリマーを得た。具体的には、BA、EA、HEA、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.1重量部、および、溶媒(酢酸エチル)を、1L丸底セパラブルフラスコに、セパラブルカバー、分液ロート、温度計、窒素導入管、リービッヒ冷却器、バキュームシール、撹拌棒、撹拌羽が装備された重合用実験装置に投入した(固形分濃度36重量%)。次いで、撹拌しながら、窒素置換し、その後、窒素を流入下、撹拌しながら、重合し、樹脂溶液を得た。次いで、空気置換した後、得られた樹脂溶液にMOIを添加し、40℃で付加反応させ、アクリル系ポリマーを含む溶液を得た。
得られたアクリル系ポリマー100重量部、重合開始剤(GM Resins B.V社製、商品名:Omnirad 651)3重量部、および架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)0.2重量部を酢酸エチルと混合し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0045】
(比較例2)
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=80/15/2.5から構成されるモノマー組成物(炭素数8以上のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの含有割合:0重量%)を重合し、アクリル系ポリマーを得た。得られたアクリル系ポリマー100重量部、軽剥離剤(ADEKA社製、商品名:アデカサイザーD-810)60重量部、架橋剤(DIC社製、商品名:スーパーベッカミンSJ820-60N)7重量部および架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)2重量部を、酢酸エチルと混合し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0046】
(比較例3)
ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=80/15/2.5から構成されるモノマー組成物(炭素数8以上のアルキル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルの含有割合:0重量%)を重合し、アクリル系ポリマーを得た。得られたアクリル系ポリマー100重量部、軽剥離剤(ADEKA社製、商品名:アデカサイザーD-810)20重量部、および、架橋剤(DIC社製、商品名:スーパーベッカミンSJ820-60N)10重量部を、酢酸エチルと混合し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0047】
<評価>
実施例および比較例で得られた粘着シートを用いて下記評価を行った。結果を表1に示す。
1.膨潤度SA
実施例または比較例の粘着剤層形成に用いた粘着剤組成物0.1重量部を、平均孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で巾着状に包み、次いで口をタコ糸で縛り、これを評価サンプルとした。多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜としては、商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(日東電工社製、平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)を用いた。評価サンプルをN,N-ジメチルプロピオンアミド(東京化成製)溶液50mLに、23℃で1時間浸漬させた後、評価サンプルをN,N-ジメチルプロピオンアミド溶液から取り出した。次いで、外表面に付着しているN,N-ジメチルプロピオンアミド溶液を拭き取り、評価サンプルの重量を測定した。
膨潤度(倍)=(W4-W2-W3)/(W1)
(式中、W1は0.1重量部の粘着剤組成物の重量、W2は粘着剤組成物を包むのに用いた多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の重量、W3はタコ糸の重量、W4は浸漬後の評価サンプルの重量をそれぞれ表す)
【0048】
2.浸漬試験
各実施例及び比較例で得られた粘着シートを50×50mmの大きさに切断し、評価サンプルとした。N,N-ジメチルプロピオンアミド溶液とイソプロピルアルコールを準備した。粘着シートの剥離シート(剥離処理したポリエステルフィルム)を剥離し、評価サンプルを折り曲げないようにN,N-ジメチルプロピオンアミド溶液300mlへ24時間浸漬させた。浸漬後、評価サンプルを取り出し、次にイソプロピルアルコール(東京化成製)溶液300mlに10分浸漬させた。その後、評価サンプルを取り出し、23℃下で24時間乾燥させた。次いで、評価サンプルの状態を目視で観察し、粘着剤層が基材から剥がれている、または、粘着剤層が溶媒に溶出したものを×、基材上に粘着剤層が形成された状態が維持されたもの(粘着剤層が基材から剥離していないもの)を〇とした。
【0049】