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特開2024-168306シミュレーションシステム、作業判定装置、作業判定方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168306
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】シミュレーションシステム、作業判定装置、作業判定方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241128BHJP
   G06Q 10/0639 20230101ALI20241128BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20241128BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q10/0639
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084856
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 良幸
【テーマコード(参考)】
3C100
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA05
3C100AA23
3C100AA29
3C100AA43
3C100AA57
3C100BB15
3C100BB17
3C100BB33
3C100DD07
3C100DD14
3C100DD22
3C100DD33
5L010AA04
5L010AA06
5L049AA04
5L049AA06
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】生産ラインの工程において行われた作業が定常作業であるか非定常作業あるかを効率的に判断可能にする。
【解決手段】シミュレーションシステム100は、生産ラインのモデルを生成する操作入力部12と、生産ラインの挙動をシミュレーションし、シミュレーション結果情報を生成するシミュレーション実行部13と、教本データ生成条件情報とシミュレーション結果情報とに基づいて、教本データを生成する教本データ生成部24と、各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データを取得する測定データ取得部25と、各リソースの座標を示す座標データを生成する座標推定部26と、実績データ生成条件情報および座標データに基づいて、実績データを生成する実績データ生成部27と、教本データと実績データとを照合して実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果情報を出力する照合判定部28とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ラインのモデリング操作を受け付け、前記生産ラインのモデルを生成する第1操作入力部と、
前記生産ラインのモデルに基づいて、前記生産ラインの挙動をシミュレーションし、シミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報を生成するシミュレーション実行部と、
前記生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点を示す情報、ならびに、各工程のワーク1つ分の作業に必要なエリアであるゾーンを示す情報を含む教本データ生成条件情報と前記シミュレーション結果情報とに基づいて、各工程の定常作業の教本とする1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す教本データを生成する教本データ生成部と、
リソースを有する生産現場に配置されたタグリーダが各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データを取得する測定データ取得部と、
前記測定データに基づいて各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する座標推定部と、
各工程におけるワーク1つ分の作業の開始から終了までを規定する条件を示す実績データ生成条件情報および前記座標データに基づいて、各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す実績データを生成する実績データ生成部と、
前記教本データと前記実績データとを照合して前記実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果を示す判定結果情報を出力する照合判定部と、
を備えるシミュレーションシステム。
【請求項2】
前記生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点と各工程の前記ゾーンとを設定する設定操作を受け付け、前記教本データ生成条件情報を生成する第2操作入力部をさらに備える、
請求項1に記載のシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記照合判定部は、前記教本データの前記ゾーン内の各リソースの有無と前記実績データの前記ゾーン内の各リソースの有無とを照合して合致するか否かを判定し、合致する場合、前記実績データが示す作業が定常作業であると判定し、合致しない場合、前記実績データが示す作業が非定常作業であると判定する、
請求項1または2に記載のシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記実績データ生成部は、前記座標データに基づいて、前記タグリーダの測定時間の各工程の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す測定タイムチャートを生成し、前記教本データ生成条件情報に基づいて、前記測定タイムチャートからワーク1つ分の作業時間を切り出して前記実績データを生成し、
前記照合判定部は、前記実績データが示す作業が定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力し、前記実績データが示す作業が非定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、前記測定タイムチャートと共に出力する、
請求項1または2に記載のシミュレーションシステム。
【請求項5】
前記実績データ生成部は、前記座標データに基づいて、前記タグリーダの測定時間の各工程の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す測定タイムチャートを生成し、前記教本データ生成条件情報に基づいて、前記測定タイムチャートからワーク1つ分の作業時間を切り出して前記実績データを生成し、
前記照合判定部は、前記実績データが示す作業が定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力し、前記実績データが示す作業が非定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、前記測定タイムチャートと共に出力する、
請求項3に記載のシミュレーションシステム。
【請求項6】
前記実績データ生成部は、前記座標データに基づいて、前記タグリーダの測定時間の各工程の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す測定タイムチャートを生成し、前記教本データ生成条件情報に基づいて、前記測定タイムチャートからワーク1つ分の作業時間を切り出して前記実績データを生成し、
前記シミュレーション実行部は、前記生産ラインのモデルの各工程のワーク1つ分の作業の作業時間を示す作業時間情報を含むシミュレーション条件情報に基づいて、前記生産ラインの挙動をシミュレーションし、
前記照合判定部は、前記実績データが示す1つ分の作業が定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートの1つ分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力し、前記実績データが示す1つ分の作業が非定常作業であると判定した場合、前記測定タイムチャートの時間のうち、前記実績データのタイムチャートと同じリソースが連続して存在する時間を非定常作業の作業時間とする非定常判定結果情報を出力し、
前記定常判定結果情報が出力されると、前記定常判定結果情報を累積記憶し、前記定常判定結果情報に含まれる実績データのタイムチャートの1つ分の作業時間の平均値を示す情報を定常作業の作業時間情報として前記作業時間情報を更新し、前記非定常判定結果情報が出力されると、前記作業時間情報に、前記非定常判定結果情報に含まれる非定常作業の作業時間を示す情報を非定常作業の作業時間情報として追加する更新部をさらに備える、
請求項1または2に記載のシミュレーションシステム。
【請求項7】
前記実績データ生成部は、前記座標データに基づいて、前記タグリーダの測定時間の各工程の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す測定タイムチャートを生成し、前記教本データ生成条件情報に基づいて、前記測定タイムチャートからワーク1つ分の作業時間を切り出して前記実績データを生成し、
前記シミュレーション実行部は、前記生産ラインのモデルの各工程のワーク1つ分の作業の作業時間を示す作業時間情報を含むシミュレーション条件情報に基づいて、前記生産ラインの挙動をシミュレーションし、
前記照合判定部は、前記実績データが示す1つ分の作業が定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートの1つ分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力し、前記実績データが示す1つ分の作業が非定常作業であると判定した場合、前記測定タイムチャートの時間のうち、前記実績データのタイムチャートと同じリソースが連続して存在する時間を非定常作業の作業時間とする非定常判定結果情報を出力し、
前記定常判定結果情報が出力されると、前記定常判定結果情報を累積記憶し、前記定常判定結果情報に含まれる実績データのタイムチャートの1つ分の作業時間の平均値を示す情報を定常作業の作業時間情報として前記作業時間情報を更新し、前記非定常判定結果情報が出力されると、前記作業時間情報に、前記非定常判定結果情報に含まれる非定常作業の作業時間を示す情報を非定常作業の作業時間情報として追加する更新部をさらに備える、
請求項3に記載のシミュレーションシステム。
【請求項8】
前記実績データ生成部は、前記座標データに基づいて、前記タグリーダの測定時間の各工程の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す測定タイムチャートを生成し、前記教本データ生成条件情報に基づいて、前記測定タイムチャートからワーク1つ分の作業時間を切り出して前記実績データを生成し、
前記照合判定部は、前記実績データが示す作業が定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力し、前記実績データが示す作業が非定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、前記測定タイムチャートと、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間の前記ゾーンを撮影した動画データと共に出力する、
請求項1または2に記載のシミュレーションシステム。
【請求項9】
前記実績データ生成部は、前記座標データに基づいて、前記タグリーダの測定時間の各工程の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す測定タイムチャートを生成し、前記教本データ生成条件情報に基づいて、前記測定タイムチャートからワーク1つ分の作業時間を切り出して前記実績データを生成し、
前記照合判定部は、前記実績データが示す作業が定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力し、前記実績データが示す作業が非定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、前記測定タイムチャートと、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間の前記ゾーンを撮影した動画データと共に出力する、
請求項3に記載のシミュレーションシステム。
【請求項10】
生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点を示す情報、ならびに、各工程のワーク1つ分の作業に必要なエリアであるゾーンを示す情報を含む教本データ生成条件情報と、前記生産ラインのモデルに基づいて前記生産ラインの挙動をシミュレーションしたシミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報とに基づいて、各工程の定常作業の教本とする1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す教本データを生成する教本データ生成部と、
リソースを有する生産現場に配置されたタグリーダが各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データを取得する測定データ取得部と、
前記測定データに基づいて各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する座標推定部と、
各工程におけるワーク1つ分の作業の開始から終了までを規定する条件を示す実績データ生成条件情報および前記座標データに基づいて、各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す実績データを生成する実績データ生成部と、
前記教本データと前記実績データとを照合して前記実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果を示す判定結果情報を出力する照合判定部と、
を備える作業判定装置。
【請求項11】
シミュレーションシステムが実行する、
生産ラインのモデリング操作を受け付け、前記生産ラインのモデルを生成するステップと、
前記生産ラインのモデルに基づいて、前記生産ラインの挙動をシミュレーションし、シミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報を生成するステップと、
前記生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点を示す情報、ならびに、各工程のワーク1つ分の作業に必要なエリアであるゾーンを示す情報を含む教本データ生成条件情報と前記シミュレーション結果情報とに基づいて、各工程の定常作業の教本とする1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す教本データを生成するステップと、
リソースを有する生産現場に配置されたタグリーダが各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データに基づいて、各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成するステップと、
各工程におけるワーク1つ分の作業の開始から終了までを規定する条件を示す実績データ生成条件情報および前記座標データに基づいて、各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す実績データを生成するステップと、
前記教本データと前記実績データとを照合して前記実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果を示す判定結果情報を出力するステップと、
を備える作業判定方法。
【請求項12】
コンピュータを、
生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点を示す情報、ならびに、各工程のワーク1つ分の作業に必要なエリアであるゾーンを示す情報を含む教本データ生成条件情報と、前記生産ラインのモデルに基づいて前記生産ラインの挙動をシミュレーションしたシミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報とに基づいて、各工程の定常作業の教本とする1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す教本データを生成する教本データ生成部、
リソースを有する生産現場に配置されたタグリーダが各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データに基づいて各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する座標推定部、
各工程におけるワーク1つ分の作業の開始から終了までを規定する条件を示す実績データ生成条件情報および前記座標データに基づいて、各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す実績データを生成する実績データ生成部、ならびに、
前記教本データと前記実績データとを照合して前記実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果を示す判定結果情報を出力する照合判定部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シミュレーションシステム、作業判定装置、作業判定方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造業における生産ライン設計では、生産ラインの立ち上げ前に、生産ラインの挙動をシミュレーションし、出来高、稼働率などを算出する。人手では、製造の複雑な条件、分岐などを想定しきれない問題があり、製造の条件、分岐などを登録して演算するシミュレータが近年登場している。シミュレータでは、生産ラインを構成する工程に対して作業の特徴を設定してシミュレーションを実行する。作業の特徴の一つが作業時間である。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定の作業間で予定された順序に関する作業制約に整合させて、作業を順に配列した作業順序候補を生成する作業順序候補生成手段と、作業順序候補に沿って分割した作業群からなり作業群の所要時間を予定されたタクトタイム内に収めた工程を、順に配列した工程群からなる工程候補を生成する工程候補生成手段と、工程候補を所定の指標で評価した評価値を算出する工程評価手段と、評価値が所定範囲内にある工程候補を適正工程候補として表出する工程表出手段とを備える工程編成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-170240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、工程を評価する際に、工程で毎回発生する必須の定常作業と特定の条件下で発生する非定常作業との作業時間を分別していない。工程における定常作業および非定常作業のそれぞれの作業時間を設定しないと生産ラインのシミュレーションの予測精度が落ちる。作業の実績に基づいて定常作業および非定常作業のそれぞれの作業時間を設定する場合、例えば工程において行われた作業が定常作業であるか非定常作業であるかを製造現場を撮影した動画を見て人が分別すると膨大な時間が掛かる。このため、作業時間の設定に用いるデータの母数が小さくなり、真値に対して誤差が生まれるという問題がある。
【0006】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、生産ラインの工程において行われた作業が定常作業であるか非定常作業あるかを効率的に判断可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るシミュレーションシステムは、第1操作入力部と、シミュレーション実行部と、教本データ生成部と、測定データ取得部と、座標推定部と、実績データ生成部と、照合判定部とを備える。第1操作入力部は、生産ラインのモデリング操作を受け付け、生産ラインのモデルを生成する。シミュレーション実行部は、生産ラインのモデルに基づいて、生産ラインの挙動をシミュレーションし、シミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報を生成する。教本データ生成部は、生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点を示す情報、ならびに、各工程のワーク1つ分の作業に必要なエリアであるゾーンを示す情報を含む教本データ生成条件情報とシミュレーション結果情報とに基づいて、各工程の定常作業の教本とする1つ分の作業の開始から終了までの時間のゾーン内の各リソースの有無を示す教本データを生成する。測定データ取得部は、リソースを有する生産現場に配置されたタグリーダが各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データを取得する。座標推定部は、測定データに基づいて各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する。実績データ生成部は、各工程におけるワーク1つ分の作業の開始から終了までを規定する条件を示す実績データ生成条件情報および座標データに基づいて、各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間のゾーン内の各リソースの有無を示す実績データを生成する。照合判定部は、教本データと実績データとを照合して実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果を示す判定結果情報を出力する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、シミュレーション結果に基づく生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間のゾーン内の各リソースの有無を示す教本データと、生産現場における各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間のゾーン内の各リソースの有無を示す実績データとを照合して、実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを自動で判定して、判定結果を示す判定結果情報を出力することで、各工程において行われた作業が定常作業であるか非定常作業あるかを効率的に判断可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るシミュレーションシステムの構成例を示す図
図2】実施の形態1に係る作業結果情報の例を示す図
図3】実施の形態1に係る3次元データの例を示す図
図4】実施の形態1に係るリソースにタグを付与した製造現場の例を示す図
図5】実施の形態1に係る定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始および終了の時点を設定する設定画面の例を示す図
図6】実施の形態1に係るワーク1台分の作業に必要なエリアを設定する設定画面の例を示す図
図7】実施の形態1に係る教本データの一例を示す図
図8】実施の形態1に係る測定タイムチャートの一例を示す図
図9】実施の形態1に係る実績データの一例を示す図
図10】実施の形態1に係る教本データ生成処理の動作の一例を示すフローチャート
図11】実施の形態1に係る作業判定処理の動作の一例を示すフローチャート
図12】実施の形態2に係るシミュレーションシステムの構成例を示す図
図13】実施の形態1および2に係るシミュレーション装置および作業判定装置のハードウェア構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本実施の形態に係るシミュレーションシステム、作業判定装置、作業判定方法、および、プログラムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一または相当する部分には同じ符号を付す。以下の実施の形態では、製品の生産ラインの各工程の作業時間を定常作業の作業時間と非定常作業の作業時間とに分別する例について説明する。以下、製品の生産ラインにおける作業者、工程の作業の対象となる仕掛品、工具、部材、AGV(Automatic Guided Vehicle)などを総称してリソースという。
【0011】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るシミュレーションシステム100の構成について図1を用いて説明する。シミュレーションシステム100は、生産ラインの挙動をシミュレーションするシミュレーション装置1と、生産ラインの各工程における定常作業の教本データに基づいて、実際に各工程で行われた作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定する作業判定装置2とを備える。
【0012】
シミュレーション装置1は、各種情報を記憶する記憶部11と、生産ラインのモデリング操作を受け付ける操作入力部12と、生産ラインの挙動をシミュレーションするシミュレーション実行部13と、作業判定装置2と情報の送受信を行う通信部14とを備える。操作入力部12は、第1操作入力部の例である。
【0013】
記憶部11は、シミュレーションを実行するための条件を示すシミュレーション条件情報を記憶するシミュレーション条件記憶部111、および、シミュレーションの結果を示すシミュレーション結果情報を記憶するシミュレーション結果記憶部112を備える。
【0014】
操作入力部12は、シミュレーション条件記憶部111が記憶するシミュレーション条件情報に含まれる作業者、ワーク、工具、部材、AGVなどのオブジェクト、生産ラインを構成する工程、各工程における作業などのライブラリに基づいて、生産ラインのモデリング操作を受け付ける操作画面を生成する。ワークは、工程における加工対象または組立対象である。生産ラインのモデリング操作は、生産ライン上へのオブジェクトの配置、ワーク、部材などの工程経路の設定、各工程における作業の設定などである。操作入力部12は、生成した操作画面を出力する。操作画面の出力方法は、画面表示でもよいし、ユーザが使用するユーザ端末に送信してもよい。後者の場合、ユーザ端末が操作画面を出力し、操作入力部12は、操作画面に入力されたモデリング操作を示す情報をユーザ端末から受信する。
【0015】
操作入力部12は、操作画面に入力されたモデリング操作に従って、生産ラインのモデルを生成する。操作入力部12は、生成した生産ラインのモデルをシミュレーション実行部13に送る。
【0016】
シミュレーション実行部13は、操作入力部12から受け取った生産ラインのモデルに基づいて、生産ラインの挙動をシミュレーションする。具体的には、シミュレーション実行部13は、シミュレーション条件記憶部111が記憶するシミュレーション条件情報に含まれる各工程のワーク1台分の作業の作業時間を示す作業時間情報、工程間の移動時間を示す移動時間情報などに基づいて、生産ラインの挙動をシミュレーションし、作業ごとの出来高、人・物の移動経路、稼働率などをシミュレーション結果として出力する。シミュレーション実行部13は、シミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報と生産ラインのモデルとをシミュレーション結果記憶部112に記憶する。
【0017】
シミュレーション結果情報には、工程毎の作業結果を示す作業結果情報が含まれる。作業結果情報は、例えば、図2に示すような、工程毎の作業結果を示すガントチャートである。図2の例は、工程Aにおける作業者W09およびAGV01の作業結果、工程Bにおける作業者W10およびAGV02の作業結果、工程Cにおける作業者W11およびAGV03の作業結果、ならびに、工程Dにおける作業者W12およびAGV04の作業結果を示すガントチャートである。作業結果情報は作業者およびAGVの作業結果を示す情報に限らず、作業者のみの作業結果を示す情報でもよいし、他のリソースの作業結果を含む情報でもよい。
【0018】
生産ラインのモデルには、生産ラインを3次元で表す3次元データが含まれる。3次元データは、例えば、図3に示すような、デジタル空間上にオブジェクトが配置された生産ラインの3次元モデルである。
【0019】
通信部14は、シミュレーション結果記憶部112が記憶するシミュレーション結果情報および生産ラインのモデルを作業判定装置2に送信する。
【0020】
ここで、実際の生産ラインが存在する製造現場について、図4を用いて説明する。製造現場では、各リソースにタグが付与されており、タグが発する電波を受信するタグリーダが配置されている。タグは、例えば、RF(Radio Frequency)タグである。図4の例では、AGV、工具および作業者にタグが付与されており、タグリーダが、各タグが発する電波を受信している。タグリーダは複数であってもよい。また、AGV、工具および作業者に限らず、製造現場のすべてのリソースにダグが付与される。タグリーダは、各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データを作業判定装置2に送信する。測定データには、例えば、電波の受信強度、入射角度、位相、受信時刻などが含まれる。
【0021】
図1に戻り、作業判定装置2は、各種情報を記憶する記憶部21と、シミュレーション装置1と情報の送受信を行う通信部22と、各工程における1台分の定常作業の教本データを生成する条件を設定する設定操作を受け付ける操作入力部23と、教本データを生成する教本データ生成部24と、測定データを取得する測定データ取得部25と、測定データに基づいて各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する座標推定部26と、座標データに基づいて各工程におけるワーク1台分の作業の実績を示す実績データを生成する実績データ生成部27と、教本データと実績データとを照合して実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定する照合判定部28とを備える。操作入力部23は、第2操作入力部の例である。
【0022】
記憶部21は、教本データを生成する条件を示す教本データ生成条件情報および実績データを生成する条件を示す実績データ生成条件情報を記憶するデータ生成条件記憶部211、教本データを記憶する教本データ記憶部212、座標データを記憶する座標データ記憶部213、および、実績データを記憶する実績データ記憶部214を備える。
【0023】
通信部22は、シミュレーション装置1から受信したシミュレーション結果情報および生産ラインのモデルを記憶部21のデータ生成条件記憶部211に記憶する。
【0024】
操作入力部23は、データ生成条件記憶部211が記憶するシミュレーション結果情報に含まれる作業結果情報および生産ラインのモデルに含まれる3次元データを表示し、教本データを生成する条件を設定する設定操作を受け付ける設定画面を生成する。操作入力部23は、生成した設定画面を出力する。設定画面の出力方法は、画面表示でもよいし、ユーザが使用するユーザ端末に送信してもよい。後者の場合、ユーザ端末が設定画面を出力し、操作入力部23は、設定画面に入力された設定操作を示す情報をユーザ端末から受信する。
【0025】
操作入力部23は、設定画面に入力された設定操作に従って、教本データを生成する条件を示す教本データ生成条件情報を生成する。操作入力部23は、教本データ生成条件情報をデータ生成条件記憶部211に記憶する。教本データ生成条件情報は、各工程の定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始および終了の時点を示す情報と各工程のワーク1台分の作業に必要なエリアを示す情報とを含む。以下、ワーク1台分の作業に必要なエリアをゾーンといいう。
【0026】
ここで、操作入力部23が出力する設定画面について、図5および図6を用いて説明する。図5に示す設定画面の例では、図2に示した作業結果情報の例である工程毎の作業結果を示すガントチャートが表示されており、工程Aの作業について、区間(1)~(4)の定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始および終了の時点を設定している。開始および終了の時点の設定方法は、例えば、設定画面に表示されたガントチャート上でワンクリックすると開始の時点が設定され、ダブルクリックすると終了の時点が設定される。操作入力部23は、設定画面に入力された設定操作に従って、定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始および終了の時点を示す教本データ生成条件情報を生成し、データ生成条件記憶部211に記憶する。なお、設定画面は、図5の例に限らず、定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始および終了の時点をユーザが設定可能な画面であればよい。また、定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始および終了の時点を設定する区間は4つに限らず、1つ以上であればよい。
【0027】
図6に示す設定画面の例では、図3に示した3次元データの例である生産ラインの3次元モデルが表示されており、工程AのゾーンZを設定している。ゾーンの設定方法は、例えば、設定画面に表示された生産ラインの3次元モデル上でオブジェクトをクリックすると、当該オブジェクトを中心とした予め決められたサイズの直方体のゾーンが設定される。あるいは、直方体の頂点をドラッグして変形することでユーザがゾーンのサイズを設定可能にしてもよい。操作入力部23は、設定画面に入力された設定操作に従って、生産ラインの3次元モデル上のゾーンの座標を示す教本データ生成条件情報を生成し、データ生成条件記憶部211に記憶する。なお、設定画面は、図6の例に限らず、各工程のゾーンをユーザが設定可能な画面であればよい。
【0028】
図1に戻り、教本データ生成部24は、データ生成条件記憶部211が記憶するシミュレーション結果情報と教本データ生成条件情報とに基づいて、教本データを生成する。教本データは、工程ごとの定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始から終了までの時間のゾーン内の各リソースの有無を示す。以下、ワーク1台分の作業の開始から終了までの時間を、ワーク1台分の作業時間といい、ゾーン内の各リソースの有無を示すデータをリソース有無データという。
【0029】
教本データについて、図7を用いて説明する。図7は、図5の区間(3)で設定された定常作業の教本とするワーク1台分の作業時間の工程Aのゾーン内の各リソースの有無を示している。図7の例では、工程Aにおいて、ワーク1台分の作業時間にゾーン内に作業者W09、ワーク、工具T1、部材P1およびAGV01が存在している。教本データ生成部24は、図7に示すリソース有無データを工程Aの区間(3)における1台分の定常作業を示す教本データとして、データ生成条件記憶部211に記憶する。
【0030】
図1に戻り、測定データ取得部25は、実際の生産ラインが存在する製造現場に配置されたタグリーダ(図示せず)から前述の測定データを取得する。測定データ取得部25は、取得した測定データを座標推定部26に送る。
【0031】
座標推定部26は、測定データ取得部25から受け取った測定データに基づいて、各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する。各リソースの座標の推定方法は、例えば、測定データに含まれるタグからの電波の受信強度、入射角度、位相、受信時刻などを用いて、前後関係を推測して各リソースの座標を推定する。座標データは、タグリーダの測定開始から測定終了までの各リソースの座標を示すデータである。タグリーダの測定開始から測定終了までの時間は、例えば、1日のうち生産ラインが稼働している時間である。以下、測定開始から測定終了までの時間を、測定時間という。座標推定部26は、生成した座標データを実績データ生成部27に送る。
【0032】
実績データ生成部27は、座標推定部26から受け取った座標データに基づいて、各工程のゾーンの座標空間内に各リソースの座標を含むか否かを判定し、タグリーダの測定時間の各工程のゾーン内の各リソースの有無を示すタイムチャートを生成する。以下、タグリーダの測定時間の各工程のゾーン内の各リソースの有無を示すタイムチャートを測定タイムチャートという。実績データ生成部27は、データ生成条件記憶部211が記憶する実績データ生成条件情報に基づいて、測定タイムチャートからワーク1台分の作業時間を切り出し、各工程におけるワーク1台分の作業の実績を示す実績データを生成する。実績データ生成条件情報が示す実績データを生成する条件は例えば、ワークがゾーンに入ると作業開始とし、ワークがゾーンを出ると作業終了とするといった各工程におけるワーク1台分の作業の開始から終了までを規定する条件である。
【0033】
ここで、測定タイムチャートおよび実績データについて、図8および図9を用いて説明する。図8は、工程Aの測定タイムチャートを示している。図8の例では、実績データ生成部27は、実績データ生成条件情報に基づいて、工程Aの測定タイムチャートから区間(5)~(8)のワーク1台分の作業時間を切り出して、それぞれ工程Aにおけるワーク1台分の作業の実績を示す実績データを生成する。図9は、工程Aの実績データを示している。図9の例は、図8の区間(7)で切り出されたワーク1台分の作業時間の工程Aのゾーン内の各リソースの有無を示している。
【0034】
図1に戻り、照合判定部28は、教本データと実績データとを照合して実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定する。このとき、教本データの区間と実績データの区間とが複数ある場合には、対応する区間の教本データと実績データとを照合してもよい。照合判定部28は、教本データのリソース有無データと実績データのリソース有無データとを照合して、合致するか否かを判定する。合致する場合、照合判定部28は、実績データが示すワーク1台分の作業が定常作業であると判定する。合致しない場合、照合判定部28は、実績データが示すワーク1台分の作業が非定常作業であると判定する。
【0035】
照合判定部28は、定常作業であると判定した場合、実績データのワーク1台分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力する。定常判定結果情報の出力方法は、画面表示でもよいし、ユーザ端末に送信してもよいし、プリントアウトしてもよい。定常判定結果情報が出力されると、ユーザは、定常判定結果情報を蓄積し、定常判定結果情報に含まれる実績データのワーク1台分の作業時間の平均値を示す情報を定常作業の作業時間情報とし、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報を更新する。これより、定常判定結果情報が増えるほど、シミュレーションに使用される定常作業の作業時間の精度が上がる。照合判定部28は、非定常作業であると判定した場合、実績データのワーク1台分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、測定タイムチャートと共に出力する。ユーザは、出力された測定タイムチャートと非定常判定結果情報が示す非定常作業が行われた作業時間に基づいて非定常作業の作業時間を判断し、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報に、非定常作業の作業時間を示す非定常作業の作業時間情報を追加する。定常判定結果情報および非定常判定結果情報は、判定結果情報の例である。
【0036】
例えば、照合判定部28は、図7に示す教本データのリソース有無データと図9に示す教本データのリソース有無データとを照合すると、合致しないため、非定常作業であると判定する。照合判定部28は、図7および図9に示すワーク1台分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、図8に示す測定タイムチャートと共に出力する。ユーザは、図8に示す測定タイムチャートと非定常判定結果情報が示す図7および図9に示すワーク1台分の作業時間とに基づいて、例えば、非定常作業の作業時間を図8に示す区間(9)の時間であると判断し、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報に、区間(9)の時間を示す非定常作業の作業時間情報を追加する。
【0037】
ここで、作業判定装置2が実行する教本データ生成処理の流れについて、図10を用いて説明する。図10に示す教本データ生成処理は、作業判定装置2に電源が投入された時に開始する。
【0038】
作業判定装置2の通信部22がシミュレーション装置1からシミュレーション結果情報および生産ラインのモデルを受信しない場合(ステップS11;NO)、処理はステップS16に移行する、シミュレーション装置1からシミュレーション結果情報および生産ラインのモデルを受信した場合(ステップS11;YES)、通信部22は、シミュレーション結果情報および生産ラインのモデルを記憶部21のデータ生成条件記憶部211に記憶する。
【0039】
操作入力部23は、データ生成条件記憶部211に記憶するシミュレーション結果情報に含まれる作業結果情報および生産ラインのモデルに含まれる3次元データを表示し、教本データを生成する条件を設定する設定操作を受け付ける設定画面を生成する(ステップS12)。操作入力部23は、生成した設定画面を出力する(ステップS13)。操作入力部23は、設定画面に入力された設定操作に従って、教本データを生成する条件を示す教本データ生成条件情報を生成する(ステップS14)。操作入力部23は、教本データ生成条件情報をデータ生成条件記憶部211に記憶する。教本データ生成条件情報は、各工程の定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始および終了の時点を示す情報と各工程のゾーンを示す情報とを含む。
【0040】
図5に示す設定画面の例では、図2に示した作業結果情報の例である工程毎の作業結果を示すガントチャートが表示されており、工程Aの作業について、区間(1)~(4)の定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始および終了の時点を設定している。
【0041】
図6に示す設定画面の例では、図3に示した3次元データの例である生産ラインの3次元モデルが表示されており、工程AのゾーンZを設定している。
【0042】
図10に戻り、教本データ生成部24は、データ生成条件記憶部211が記憶するシミュレーション結果情報と教本データ生成条件情報とに基づいて、教本データを生成する(ステップS15)。教本データは、工程ごとの定常作業の教本とするワーク1台分の作業時間のゾーン内の各リソースの有無を示すリソース有無データである。
【0043】
図7に示す教本データの例は、図5の区間(3)で設定された定常作業の教本とするワーク1台分の作業時間の工程Aのゾーン内の各リソースの有無を示している。図7の例では、工程Aにおいて、ワーク1台分の作業時間にゾーン内に作業者W09、ワーク、工具T1、部材P1およびAGV01が存在している。
【0044】
図10に戻り、作業判定装置2の電源がOFFになっていなければ(ステップS16;NO)、処理はステップS11に戻り、ステップS11~ステップS16を繰り返す。電源がOFFになると(ステップS16;YES)、処理は終了する。
【0045】
続いて、作業判定装置2が実行する作業判定処理の流れについて、図11を用いて説明する。図11に示す作業判定処理は、作業判定装置2に電源が投入された時に開始する。作業判定装置2の測定データ取得部25が実際の生産ラインが存在する製造現場に配置されたタグリーダから測定データを取得しない場合(ステップS21;NO)、処理はステップS30に移行する。測定データを取得した場合(ステップS21:YES)、測定データ取得部25は、取得した測定データを座標推定部26に送る。座標推定部26は、測定データ取得部25から受け取った測定データに基づいて、各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する(ステップS22)。座標推定部26は、生成した座標データを実績データ生成部27に送る。
【0046】
実績データ生成部27は、座標推定部26から受け取った座標データに基づいて、各工程のゾーンの座標空間内に各リソースの座標を含むか否かを判定し、測定タイムチャートを生成する(ステップS23)。実績データ生成部27は、実績データ生成条件情報に基づいて、測定タイムチャートからワーク1台分の作業時間を切り出し、各工程におけるワーク1台分の作業の実績を示す実績データを生成する(ステップS24)。実績データは、各工程におけるワーク1台分の作業時間のゾーン内の各リソースの有無を示すリソース有無データである。
【0047】
図8に示す測定タイムチャートの例では、実績データ生成部27は、実績データ生成条件情報に基づいて、測定タイムチャートから区間(5)~(8)のワーク1台分の作業時間を切り出して、それぞれ工程Aにおけるワーク1台分の作業の実績を示す実績データを生成する。図9に示す実績データの例は、図8の区間(7)で切り出されたワーク1台分の作業時間の工程Aのゾーン内の各リソースの有無を示している。
【0048】
図11に戻り、照合判定部28は、教本データのリソース有無データと実績データのリソース有無データとを照合して、合致するか否かを判定する(ステップS25)。合致する場合(ステップS25;YES)、照合判定部28は、実績データが示すワーク1台分の作業が定常作業であると判定する(ステップS26)。合致しない場合(ステップS25;NO)、照合判定部28は、実績データが示すワーク1台分の作業が非定常作業であると判定する(ステップS27)。
【0049】
照合判定部28は、定常作業であると判定した場合、実績データのワーク1台分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力する(ステップS28)。ユーザは、定常判定結果情報を蓄積し、定常判定結果情報に含まれる実績データのワーク1台分の作業時間の平均値を示す情報を定常作業の作業時間情報とし、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報を更新する。
【0050】
照合判定部28は、非定常作業であると判定した場合、実績データのワーク1台分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、測定タイムチャートと共に出力する(ステップS29)。ユーザは、出力された測定タイムチャートと非定常判定結果情報が示す非定常作業が行われた作業時間に基づいて非定常作業の作業時間を判断し、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報に、非定常作業の作業時間を示す非定常作業の作業時間情報を追加する。
【0051】
ステップS25で、照合判定部28が、図7に示す教本データのリソース有無データと図9に示す教本データのリソース有無データとを照合すると、ステップS25で合致しないため、ステップS27で非定常作業であると判定する。照合判定部28は、ステップS29で図7および図9に示すワーク1台分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、図8に示す測定タイムチャートと共に出力する。ユーザは、図8に示す測定タイムチャートと非定常判定結果情報が示す図7および図9に示すワーク1台分の作業時間とに基づいて、例えば、非定常作業の作業時間を図8に示す区間(9)の時間であると判断し、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報に、区間(9)の時間を示す情報を非定常作業の作業時間情報として追加する。
【0052】
図11に戻り、作業判定装置2の電源がOFFになっていなければ(ステップS30;NO)、処理はステップS21に戻り、ステップS21~ステップS30を繰り返す。電源がOFFになると(ステップS30;YES)、処理は終了する。
【0053】
実施の形態1に係るシミュレーションシステム100によれば、シミュレーション結果に基づく生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1台分の作業時間のゾーン内の各リソースの有無を示す教本データと、生産現場における各工程のワーク1台分の作業時間のゾーン内の各リソースの有無を示す実績データとを照合して実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを自動で判定して、判定結果を示す判定結果情報を出力することで、各工程において行われた作業が定常作業であるか非定常作業あるかを効率的に判断可能になる。
【0054】
(実施の形態2)
実施の形態1のシミュレーションシステム100では、実績データが示すワーク1台分の作業が定常作業であると判定された場合、ユーザが、定常判定結果情報を蓄積し、定常判定結果情報に含まれる実績データのワーク1台分の作業時間の平均値を示す情報を定常作業の作業時間情報とし、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報を更新する。一方、実績データが示すワーク1台分の作業が非定常作業であると判定された場合、ユーザが、出力された測定タイムチャートと非定常判定結果情報が示す非定常作業が行われた作業時間に基づいて非定常作業の作業時間を判断し、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報に非定常作業の作業時間を示す非定常作業の作業時間情報を追加する。実施の形態2では、これらの処理をシミュレーションシステム100内で行う。
【0055】
実施の形態2に係るシミュレーションシステム100について、図12を用いて説明する。実施の形態2のシミュレーションシステム100では、シミュレーション装置1に更新部15が追加されており、シミュレーション装置1の通信部14、ならびに、作業判定装置2の通信部22および照合判定部28の機能が異なる。
【0056】
作業判定装置2の照合判定部28は、実績データが示すワーク1台分の作業が定常作業であると判定した場合、実績データのワーク1台分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を、通信部22を介してシミュレーション装置1に出力する。照合判定部28は、非定常作業であると判定した場合、測定タイムチャートの時間のうち、実績データのリソース有無データと同じリソースが連続して存在する時間を非定常作業の作業時間とする非定常判定結果情報を、通信部22を介してシミュレーション装置1に出力する。
【0057】
シミュレーション装置1の通信部14は、作業判定装置2から定常判定結果情報を受信すると、更新部15に送る。更新部15は、通信部14から受け取った定常判定結果情報を累積記憶し、定常判定結果情報に含まれる実績データのワーク1台分の作業時間の平均値を示す情報を定常作業の作業時間情報としてシミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報を更新する。通信部14は、作業判定装置2から非定常判定結果情報を受信すると、更新部15に送る。更新部15は、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報に、非定常判定結果情報に含まれる非定常作業の作業時間を示す情報を非定常作業の作業時間情報として追加する。シミュレーション装置1および作業判定装置2のその他の機能は、実施の形態1と同様である。
【0058】
実施の形態2に係るシミュレーションシステム100によれば、生産ラインのシミュレーションに用いる作業時間情報を、定常作業の作業時間情報と非定常作業の作業時間情報とに自動で分別することができ、より効率が向上する。
【0059】
シミュレーション装置1および作業判定装置2のハードウェア構成について図13を用いて説明する。図13に示すように、シミュレーション装置1および作業判定装置2は、一時記憶部101、記憶部102、計算部103、入力部104、送受信部105および表示部106を備える。一時記憶部101、記憶部102、入力部104、送受信部105および表示部106はいずれもBUSを介して計算部103に接続されている。
【0060】
計算部103は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。計算部103は、記憶部102に記憶されている制御プログラムに従って、シミュレーション装置1の操作入力部12、シミュレーション実行部13および更新部15、ならびに、作業判定装置2の操作入力部23、教本データ生成部24,測定データ取得部25、座標推定部26、実績データ生成部27および照合判定部28の処理を実行する。
【0061】
一時記憶部101は、例えばRAM(Random-Access Memory)である。一時記憶部101は、記憶部102に記憶されている制御プログラムをロードし、計算部103の作業領域として用いられる。
【0062】
記憶部102は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc - Random Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc - ReWritable)などの不揮発性メモリである。記憶部102は、シミュレーション装置1および作業判定装置2の処理を計算部103に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、計算部103の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを計算部103に供給し、計算部103から供給されたデータを記憶する。シミュレーション装置1の記憶部11および作業判定装置2の記憶部21は、記憶部102に構成される。
【0063】
入力部104は、キーボード、ポインティングデバイス、音声入力機器などの入力装置と、入力装置をBUSに接続するインターフェース装置である。入力部104を介して、ユーザが入力した情報が計算部103に供給される。シミュレーション装置1の操作入力部12および作業判定装置2の操作入力部23がユーザから直接操作入力を受け付ける構成の場合、入力部104は、シミュレーション装置1の操作入力部12および作業判定装置2の操作入力部23として機能する。
【0064】
送受信部105は、ネットワークに接続する網終端装置または無線通信装置、およびそれらと接続するシリアルインターフェースまたはLAN(Local Area Network)インターフェースである。送受信部105は、シミュレーション装置1の通信部14および作業判定装置2の通信部22として機能する。シミュレーション装置1の操作入力部12および作業判定装置2の操作入力部23がそれぞれ、ユーザ端末からモデリング操作および設定操作を示す情報を受信する構成の場合、送受信部105は、シミュレーション装置1の操作入力部12および作業判定装置2の操作入力部23として機能する。また、作業判定装置2の照合判定部28が定常判定結果情報および非定常判定結果情報をユーザ端末に送信する構成の場合、送受信部105は、照合判定部28として機能する。
【0065】
表示部106は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(electroluminescence)ディスプレイなどの表示装置である。シミュレーション装置1の操作入力部12および作業判定装置2の操作入力部23がそれぞれ、操作画面および設定画面を表示する構成の場合、表示部106は、シミュレーション装置1の操作入力部12および作業判定装置2の操作入力部23として機能する。また、作業判定装置2の照合判定部28が定常判定結果情報および非定常判定結果情報を画面表示する構成の場合、表示部106は、照合判定部28として機能する。
【0066】
図1に示すシミュレーション装置1の記憶部11、操作入力部12、シミュレーション実行部13、通信部14および更新部15、ならびに、作業判定装置2の記憶部21、通信部22、操作入力部23、教本データ生成部24、測定データ取得部25、座標推定部26、実績データ生成部27および照合判定部28の処理は、制御プログラムが、一時記憶部101、計算部103、記憶部102、入力部104、送受信部105および表示部106などを資源として用いて処理することによって実行する。
【0067】
その他、前記のハードウェア構成およびフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0068】
計算部103、一時記憶部101、記憶部102、入力部104、送受信部105、表示部106などのシミュレーション装置1および作業判定装置2の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc - Read Only Memory)などのコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行するシミュレーション装置1および作業判定装置2を構成してもよい。また、インターネットに代表される通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロードすることでシミュレーション装置1および作業判定装置2を構成してもよい。
【0069】
また、シミュレーション装置1および作業判定装置2の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体、記憶装置に格納してもよい。
【0070】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して提供することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、通信ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを提供してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できる構成にしてもよい。
【0071】
上記の実施の形態1および2では、シミュレーションシステム100は、シミュレーション装置1および作業判定装置2を別々に備えたが、これに限らず、シミュレーション装置1および作業判定装置2を1つの装置で実現してもよい。
【0072】
上記の実施の形態1では、作業判定装置2の照合判定部28は、実績データが示すワーク1台分の作業が非定常作業であると判定した場合、実績データのワーク1台分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、測定タイムチャートと共に出力するが、これに限らない。例えば、照合判定部28は、実績データが示すワーク1台分の作業が非定常作業であると判定した場合、実績データのワーク1台分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、実績データのワーク1台分の作業時間のゾーンを撮影した動画データと、測定タイムチャートと共に出力してもよい。
【0073】
この場合、製造現場にカメラを配置し、カメラは、各工程のゾーンを撮影した動画データを作業判定装置2に送信する。ユーザは、照合判定部28が出力した動画データを確認して定常作業であるか非定常作業であるかを判断する。定常作業であると判断した場合、ユーザは、定常判定結果情報に含まれる実績データのワーク1台分の作業時間の平均値を示す情報を定常作業の作業時間情報としてシミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報を更新する。非定常作業であると判定した場合、ユーザは、照合判定部28から出力された測定タイムチャートと実績データのワーク1台分の作業時間とに基づいて非定常作業の作業時間を判断し、シミュレーション条件記憶部111が記憶する作業時間情報に非定常作業の作業時間情報を追加する。
【0074】
上記の実施の形態1および2では、シミュレーション装置1は、記憶部11を備えたが、これに限らず、記憶部11を外部の装置またはシステムが備えてもよい。作業判定装置2は、記憶部21を備えたが、これに限らず、記憶部21を外部の装置またはシステムが備えてもよい。
【0075】
上記の実施の形態1および2では、作業判定装置2は、操作入力部23を備えたが、これに限らず、データ生成条件記憶部211が予め教本データ生成条件情報を記憶している場合には、操作入力部23を備えなくてもよい。この場合、教本データ生成条件情報は、例えば、各工程の定常作業の教本とするワーク1台分の作業の開始および終了の時点を規定する条件を示す情報と各工程のゾーンを規定する条件を示す情報とを含む。
【0076】
上記の実施の形態1および2では、作業判定装置2の測定データ取得部25は実際の生産ラインが存在する製造現場に配置されたタグリーダから測定データを取得したが、これに限らず、タグリーダ以外の装置またはシステムから測位データを取得してもよいし、ユーザからの測位データの入力を受け付けてもよい。
【0077】
上記の実施の形態1および2では、教本データを生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1台分の作業時間のゾーン内の各リソースの有無を示すリソース有無データとし、実績データを各工程のワーク1台分の作業時間のゾーン内の各リソースの有無を示すリソース有無データとし、各リソースの有無は「有」または「無」の2パターンであったが、各リソースの有無は2パターンに限らない。例えば、ワーク1台分の作業時間に「常時有る」、「有るが常時ではない」、「常時無い」の3パターンにしてもよいし、ワーク1台分の作業時間に「常時有る」、「前半に有る」、「後半に有る」、「常時無い」の4パターンにしてもよい。
【0078】
上記の実施の形態1および2では、製品の生産ラインにおける各工程の作業時間を定常作業の作業時間と非定常作業の作業時間とに分別する例について説明したが、これに限らず、複数のリソースを有する生産現場で物品を生産する工程を有する生産ラインであれば、工程の作業時間を定常作業の作業時間と非定常作業の作業時間とに分別することが可能である。
【0079】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0080】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0081】
(付記1)
生産ラインのモデリング操作を受け付け、前記生産ラインのモデルを生成する第1操作入力部と、
前記生産ラインのモデルに基づいて、前記生産ラインの挙動をシミュレーションし、シミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報を生成するシミュレーション実行部と、
前記生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点を示す情報、ならびに、各工程のワーク1つ分の作業に必要なエリアであるゾーンを示す情報を含む教本データ生成条件情報と前記シミュレーション結果情報とに基づいて、各工程の定常作業の教本とする1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す教本データを生成する教本データ生成部と、
リソースを有する生産現場に配置されたタグリーダが各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データを取得する測定データ取得部と、
前記測定データに基づいて各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する座標推定部と、
各工程におけるワーク1つ分の作業の開始から終了までを規定する条件を示す実績データ生成条件情報および前記座標データに基づいて、各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す実績データを生成する実績データ生成部と、
前記教本データと前記実績データとを照合して前記実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果を示す判定結果情報を出力する照合判定部と、
を備えるシミュレーションシステム。
(付記2)
前記生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点と各工程の前記ゾーンとを設定する設定操作を受け付け、前記教本データ生成条件情報を生成する第2操作入力部をさらに備える、
付記1に記載のシミュレーションシステム。
(付記3)
前記照合判定部は、前記教本データの前記ゾーン内の各リソースの有無と前記実績データの前記ゾーン内の各リソースの有無とを照合して合致するか否かを判定し、合致する場合、前記実績データが示す作業が定常作業であると判定し、合致しない場合、前記実績データが示す作業が非定常作業であると判定する、
付記1または2に記載のシミュレーションシステム。
(付記4)
前記実績データ生成部は、前記座標データに基づいて、前記タグリーダの測定時間の各工程の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す測定タイムチャートを生成し、前記教本データ生成条件情報に基づいて、前記測定タイムチャートからワーク1つ分の作業時間を切り出して前記実績データを生成し、
前記照合判定部は、前記実績データが示す作業が定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力し、前記実績データが示す作業が非定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、前記測定タイムチャートと共に出力する、
付記1から3のいずれかに記載のシミュレーションシステム。
(付記5)
前記実績データ生成部は、前記座標データに基づいて、前記タグリーダの測定時間の各工程の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す測定タイムチャートを生成し、前記教本データ生成条件情報に基づいて、前記測定タイムチャートからワーク1つ分の作業時間を切り出して前記実績データを生成し、
前記シミュレーション実行部は、前記生産ラインのモデルの各工程のワーク1つ分の作業の作業時間を示す作業時間情報を含むシミュレーション条件情報に基づいて、前記生産ラインの挙動をシミュレーションし、
前記照合判定部は、前記実績データが示す1つ分の作業が定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートの1つ分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力し、前記実績データが示す1つ分の作業が非定常作業であると判定した場合、前記測定タイムチャートの時間のうち、前記実績データのタイムチャートと同じリソースが連続して存在する時間を非定常作業の作業時間とする非定常判定結果情報を出力し、
前記定常判定結果情報が出力されると、前記定常判定結果情報を累積記憶し、前記定常判定結果情報に含まれる実績データのタイムチャートの1つ分の作業時間の平均値を示す情報を定常作業の作業時間情報として前記作業時間情報を更新し、前記非定常判定結果情報が出力されると、前記作業時間情報に、前記非定常判定結果情報に含まれる非定常作業の作業時間を示す情報を非定常作業の作業時間情報として追加する更新部をさらに備える、
付記1から3のいずれかに記載のシミュレーションシステム。
(付記6)
前記実績データ生成部は、前記座標データに基づいて、前記タグリーダの測定時間の各工程の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す測定タイムチャートを生成し、前記教本データ生成条件情報に基づいて、前記測定タイムチャートからワーク1つ分の作業時間を切り出して前記実績データを生成し、
前記照合判定部は、前記実績データが示す作業が定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を定常作業の作業時間とする定常判定結果情報を出力し、前記実績データが示す作業が非定常作業であると判定した場合、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間を非定常作業が行われた作業時間とする非定常判定結果情報を、前記測定タイムチャートと、前記実績データのタイムチャートのワーク1つ分の作業時間の前記ゾーンを撮影した動画データと共に出力する、
付記1から3のいずれかに記載のシミュレーションシステム。
(付記7)
生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点を示す情報、ならびに、各工程のワーク1つ分の作業に必要なエリアであるゾーンを示す情報を含む教本データ生成条件情報と、前記生産ラインのモデルに基づいて前記生産ラインの挙動をシミュレーションしたシミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報とに基づいて、各工程の定常作業の教本とする1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す教本データを生成する教本データ生成部と、
リソースを有する生産現場に配置されたタグリーダが各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データを取得する測定データ取得部と、
前記測定データに基づいて各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する座標推定部と、
各工程におけるワーク1つ分の作業の開始から終了までを規定する条件を示す実績データ生成条件情報および前記座標データに基づいて、各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す実績データを生成する実績データ生成部と、
前記教本データと前記実績データとを照合して前記実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果を示す判定結果情報を出力する照合判定部と、
を備える作業判定装置。
(付記8)
シミュレーションシステムが実行する、
生産ラインのモデリング操作を受け付け、前記生産ラインのモデルを生成するステップと、
前記生産ラインのモデルに基づいて、前記生産ラインの挙動をシミュレーションし、シミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報を生成するステップと、
前記生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点を示す情報、ならびに、各工程のワーク1つ分の作業に必要なエリアであるゾーンを示す情報を含む教本データ生成条件情報と前記シミュレーション結果情報とに基づいて、各工程の定常作業の教本とする1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す教本データを生成するステップと、
リソースを有する生産現場に配置されたタグリーダが各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データに基づいて、各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成するステップと、
各工程におけるワーク1つ分の作業の開始から終了までを規定する条件を示す実績データ生成条件情報および前記座標データに基づいて、各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す実績データを生成するステップと、
前記教本データと前記実績データとを照合して前記実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果を示す判定結果情報を出力するステップと、
を備える作業判定方法。
(付記9)
コンピュータを、
生産ラインの各工程の定常作業の教本とするワーク1つ分の作業の開始および終了の時点を示す情報、ならびに、各工程のワーク1つ分の作業に必要なエリアであるゾーンを示す情報を含む教本データ生成条件情報と、前記生産ラインのモデルに基づいて前記生産ラインの挙動をシミュレーションしたシミュレーション結果を示すシミュレーション結果情報とに基づいて、各工程の定常作業の教本とする1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す教本データを生成する教本データ生成部、
リソースを有する生産現場に配置されたタグリーダが各リソースに付与されたタグから受信した電波を測定した測定データに基づいて各リソースの座標を推定して各リソースの座標を示す座標データを生成する座標推定部、
各工程におけるワーク1つ分の作業の開始から終了までを規定する条件を示す実績データ生成条件情報および前記座標データに基づいて、各工程のワーク1つ分の作業の開始から終了までの時間の前記ゾーン内の各リソースの有無を示す実績データを生成する実績データ生成部、ならびに、
前記教本データと前記実績データとを照合して前記実績データが示す作業が定常作業であるか非定常作業であるかを判定し、判定結果を示す判定結果情報を出力する照合判定部、
として機能させるプログラム。
【符号の説明】
【0082】
1 シミュレーション装置、2 作業判定装置、11 記憶部、12 操作入力部、13 シミュレーション実行部、14 通信部、15 更新部、21 記憶部、22 通信部、23 操作入力部、24 教本データ生成部、25 測定データ取得部、26 座標推定部、27 実績データ生成部、28 照合判定部、100 シミュレーションシステム、101 一時記憶部、102 記憶部、103 計算部、104 入力部、105 送受信部、106 表示部、111 シミュレーション条件記憶部、112 シミュレーション結果記憶部、211 教本データ生成条件記憶部、212 教本データ記憶部、213 座標データ記憶部、214 実績データ記憶部、Z ゾーン。
図1
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図3
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