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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168308
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】生成装置、生成方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16C 60/00 20190101AFI20241128BHJP
   G16C 20/70 20190101ALI20241128BHJP
【FI】
G16C60/00
G16C20/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084859
(22)【出願日】2023-05-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.ウェブサイトの掲載日 令和4年5月24日 2.ウェブサイトのアドレス https://confit.atlas.jp/guide/event/jsceam2022/proceedings/list 3.開催日 令和4年6月3日 4.集会名、開催場所 第27回計算工学講演会 にぎわい交流館AU、カレッジプラザ(秋田市中通一丁目4番1号) 5.開催日 令和4年6月27日 6.集会名、ウェブサイトのアドレス 2022年度解析モデリング分科会・非線形CAE協会(オンライン開催) https://www.jancae.org/annex/annex2022/01.html 7.ウェブサイトの掲載日 令和4年7月24日 8.ウェブサイトのアドレス https://www.wccm2022.org/dl/index/book_of_abstracts.pdf 9.開催日 令和4年11月25日 10.集会名、ウェブサイトのアドレス CAE Solutions conference 2022 秋(オンライン開催) https://www.cae-sc.com/conference2022/
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(74)【代理人】
【識別番号】100166176
【弁理士】
【氏名又は名称】加美山 豊
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 賢二郎
(72)【発明者】
【氏名】山中 耀介
(72)【発明者】
【氏名】平山 紀夫
(57)【要約】
【課題】代理均質化型に着目し、分離型のマルチスケール解析の実現を可能とする均質化構成則の代理モデルの生成を実現する。
【解決手段】分離型マルチスケール解析を実現可能とする均質化構成則の代理モデルを生成する生成装置は、試験片に対して複数回の数値材料試験を行った結果に基づいて、マクロひずみおよびマクロ累積ひずみに対するマクロ応力の関係を表す代理モデルを生成する生成部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離型マルチスケール解析を実現可能とする均質化構成則の代理モデルを生成する生成装置であって、
試験片に対して複数回の数値材料試験を行った結果に基づいて、マクロひずみおよびマクロ累積ひずみに対するマクロ応力の関係を表す代理モデルを生成する生成部を備える生成装置。
【請求項2】
前記生成部は、試験片に対して複数回の数値材料試験を行って得られるマクロ応力と、数値材料試験の条件として保存しておくマクロひずみおよびマクロ累積ひずみとに基づいて、前記代理モデルを生成する、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項3】
前記生成部は、数値材料試験の条件としたマクロひずみに基づいてマクロ累積ひずみを算出する算出部を有する、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項4】
前記生成部は、異なる複数のマクロひずみのパターンを条件として数値材料試験を行った結果に基づいて、前記代理モデルを生成する、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項5】
前記生成部は、複数回の数値材料試験を行って得られるマクロ応力に基づく第1データと、複数回の数値材料試験の条件として保存しておくマクロひずみおよびマクロ累積ひずみに基づく第2データとに基づいて、前記代理モデルを生成する、
請求項1に記載の生成装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記第2データを説明変数データとし、前記第1データを目的変数データとする機械学習によって前記代理モデルを生成する、
請求項5に記載の生成装置。
【請求項7】
前記生成部は、正則化パラメータを含むモデルパラメータを最適化する最適化部を有する、
請求項6に記載の生成装置。
【請求項8】
前記代理モデルは、放射基底関数に基づくモデルであり、
前記モデルパラメータは、前記放射基底関数に関するパラメータを含む、
請求項7に記載の生成装置。
【請求項9】
前記放射基底関数に関するパラメータは、あらかじめ定められた複数の放射基底関数の各々を識別するための識別パラメータを含む、
請求項8に記載の生成装置。
【請求項10】
分離型マルチスケール解析を実現可能とする均質化構成則の代理モデルを生成する生成方法であって、
試験片に対して複数回の数値材料試験を行った結果に基づいて、マクロひずみおよびマクロ累積ひずみに対するマクロ応力の関係を表す代理モデルを生成することを含む生成方法。
【請求項11】
コンピュータに、分離型マルチスケール解析を実現可能とする均質化構成則の代理モデルを生成させるためのプログラムであって、
試験片に対して複数回の数値材料試験を行った結果に基づいて、マクロひずみおよびマクロ累積ひずみに対するマクロ応力の関係を表す代理モデルを生成する生成部として前記コンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代理モデルを生成する生成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全性や環境負荷低減の観点から複合材料が様々な構造物に使用されている。複合材料のマクロな力学特性はミクロ構造に依存するため、このような構造物の力学的な振る舞いを予測するために、均質化理論に基づくマルチスケール解析によるシミュレーションが用いられている(例えば、非特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】D. Huang et al., Comput. Methods Appl. Mech. Eng., 2020
【非特許文献2】Y.Fish & Y.Yu, Int. J. Num. Mech. Eng., 2022
【非特許文献3】F. Fritzen et al., Eur. J. Mech. A/Solids, 2018
【非特許文献4】F.Ghavamian & A.simone, Comput. Methods Appl. Mech. Eng., 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチスケール解析の中核は、構造物の状態に応じて決定された諸条件を用いてミクロ境界値問題を解く局所化と、ミクロ境界値問題の解からマクロ応力やマクロな力学特性を算出する均質化とにあり、従来提案されている非線形問題に対するマルチスケール解析手法は、この局所化と均質化の方法によって大きく2種類に分けられる。
【0005】
1つは連成型(FE2型)と呼ばれる手法であり、この手法は、マクロ解析における各計算点において実際にミクロ解析を行う手法であり、マルチスケール問題の解を正確に得ることができる点で優れている。この手法の課題は計算コストであり、非線形問題に対して連成型を用いて実際の構造物の計算を行うことは非現実的であるという問題がある。
もう1つは分離型と呼ばれる手法であり、この手法は、マクロひずみとマクロ内部変数とからマクロ応力を直接算出する均質化構成則を用いる手法であり、連成型よりも大幅に低い計算コストでマクロ解析が可能な点で優れている。しかし、均質化構成則(数理モデル)の定式化が困難であるという問題がある。
このように、従来のマルチスケール解析手法は課題を抱えていることから、近年、データサイエンス技術を用いてこれらの課題を克服するデータ駆動型マルチスケール解析の研究が進められている。
【0006】
データ駆動型マルチスケール解析の1つの手法として、従来の連成型におけるミクロ境界値問題を、主成分分析などを用いて次元削減することで全体の計算コストを下げてマルチスケール解析を行う手法(以下、この手法を便宜的に「次元削減型」と称する。)が考えられる。しかし、この次元削減型は従来の連成型と同様にマクロ計算の各計算点でミクロ問題を解く必要があるため、実務における一般的な力学計算に広く用いられている商用ソフトウェアへの実装ができないという問題がある。
【0007】
データ駆動型マルチスケール解析の別の手法として、分離型における均質化構成則の代理モデルを生成し、マクロ変位に関する情報からマクロ応力を直接算出する手法(以下、この手法を便宜的に「代理均質化型」と称する。)が考えられる。この手法では、マクロ境界値問題を解く際にミクロ解析を実施する必要がなく、ユーザーサブルーチンとして一般的な商用ソフトにも実装可能である。
しかし、この手法に関する既存の研究の多くが弾性体を対象としており、非弾性材料の代理均質化モデルの応答については物質点レベルの材料応答を検証するに留まっており、非常に簡単な問題を除いてマクロ解析に未対応であるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、代理均質化型に着目し、分離型のマルチスケール解析の実現を可能とする均質化構成則の代理モデルの生成を実現することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によると、分離型マルチスケール解析を実現可能とする均質化構成則の代理モデルを生成する生成装置は、試験片に対して複数回の数値材料試験を行った結果に基づいて、マクロひずみおよびマクロ累積ひずみに対するマクロ応力の関係を表す代理モデルを生成する生成部を備える。
本発明の第2の態様によると、分離型マルチスケール解析を実現可能とする均質化構成則の代理モデルを生成する生成方法は、試験片に対して複数回の数値材料試験を行った結果に基づいて、マクロひずみおよびマクロ累積ひずみに対するマクロ応力の関係を表す代理モデルを生成することを含む。
本発明の第3の態様によると、コンピュータに、分離型マルチスケール解析を実現可能とする均質化構成則の代理モデルを生成させるためのプログラムは、試験片に対して複数回の数値材料試験を行った結果に基づいて、マクロひずみおよびマクロ累積ひずみに対するマクロ応力の関係を表す代理モデルを生成する生成部としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分離型マルチスケール解析の実現を可能とする均質化構成則の代理モデルを生成可能となる。また、そればかりでなく、その商用ソフトウェアへの実装が可能となり、実務における複合材料のマルチスケール解析の取り扱い範囲が格段に拡充される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】情報処理装置の機能構成の一例を示す図。
図2】情報処理装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャート。
図3】マクロ累積ひずみの説明図。
図4】代理モデル生成の説明図。
図5】代理モデル生成の説明図。
図6】実験結果の一例を示す図。
図7】実験結果の一例を示す図。
図8】実験結果の一例を示す図。
図9】実験結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の一例について図面を参照して説明する。
本実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。
【0013】
本実施形態では、前述したように、分離型マルチスケール解析の一連の計算が実現可能な均質化構成則の代理モデルを生成する手法等について説明する。
【0014】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る情報処理装置1の構成の一例を示す図である。
情報処理装置1は、例えば、マクロ構造取得部110と、均質化解析部120と、マクロ構造解析部130と、局所化解析部140とを機能部として含む。
【0015】
これらは、例えば、情報処理装置1の制御部(処理部)が有する機能部(機能ブロック)とすることができ、制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路を有して構成されるようにしてもよい。
また、本実施形態の情報処理装置1は、不図示の記憶部に格納された処理プログラムを含んでもよい。処理プログラムが実行されることによって、各機能部の機能が実現されるようにしてもよい。
また、情報処理装置1は、計算装置等のように称してもよい。
【0016】
マクロ構造取得部110は、不図示の入力部等を介して、解析対象とする材料(以下、「解析対象材料」と称する。)のマクロ構造情報を取得する。マクロ構造情報には、材料のサイズの情報等が含まれてよい。
一例として、マクロ構造取得部110は、解析対象材料としての複合材料(例えば、後述する片持ち梁)のマクロ構造情報(複合材料マクロ構造情報)を取得する。
【0017】
均質化解析部120は、マクロ構造取得部110によって取得されたマクロ構造情報に基づく均質化解析を行う機能部であり、例えば、ミクロ構造数値モデル生成部121と、数値材料試験部123と、代理モデル生成部125とを機能部として有する。
【0018】
ミクロ構造数値モデル生成部121は、例えば、マクロ構造取得部110によって取得されたマクロ構造情報から、解析対象材料の最小の周期構造を有限要素法(FEM)で離散化し、一般的にはその周期性を仮定する。具体的には、例えば、非均質性を代表するミクロ構造(以下、「代表体積要素」と称する。)の数値解析モデルである数値供試体(以下、「試験片」と称する。)を設定(生成)する。なお、「試験片」は「ユニットセル」と称してもよい。
【0019】
数値材料試験部123は、ミクロ構造数値モデル生成121によって設定された試験片(数値供試体)に対する数値材料試験を行う。数値材料試験のプロセスを均質化と称する場合があるため、この機能部は均質化部や均質化処理部と称してもよい。
数値材料試験は、均質化法に基づくマルチスケール解析において、試験片のFEMモデルを数値供試体とみたて、マクロひずみおよびマクロ応力の応答データを得る試験としてよく、この詳細については後述する。
【0020】
代理モデル生成部125は、数値材料試験部123による数値材料試験の結果に基づいて、マクロひずみおよびマクロ累積ひずみに対するマクロ応力の関係を表すモデルであって、均質化構成則を代理する代理モデル(以下、「代理モデル」や「代理均質化モデル」と称する。)を生成(推定)する。
【0021】
マクロ構造解析部130は、マクロ構造取得部110によって取得されたマクロ構造情報と、代理モデル生成部125によって生成された代理モデルとに基づき、解析対象材料からなるマクロ構造を解析する。例えば、後述する片持ち梁の自由端における荷重-変位関係や、注目領域におけるマクロ応力-マクロひずみ関係を取得する。
【0022】
局所化解析部140は、マクロ構造解析部130によるマクロ構造の解析結果に基づき、解析対象材料の局所化解析を行う。例えば、後述する片持ち梁内の任意の点における変形履歴を入力データとして数値材料試験を再度実施して試験片(ユニットセル)内の応力分布(最大主応力分布と最小主応力分布)を取得する。
【0023】
<処理>
図2は、本実施形態において情報処理装置1の制御部が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、マクロ構造取得部110が、不図示の入力部による入力に基づいて、解析対象材料のマクロ構造情報を取得するマクロ構成取得処理を行う(S110)。
なお、情報処理装置1が、不図示の通信部によって外部装置からマクロ構造情報を受信することによって取得するようにしてもよい。
【0024】
次いで、ミクロ構造数値モデル生成部121が、ミクロ構造数値モデル生成処理を行う(S120)。具体的には、S110のステップで取得されたマクロ構造情報に基づき、例えば、数値材料試験で用いる試験片を設定する。
【0025】
次いで、均質化解析部120が、設定した試験片に対するマクロひずみ設定処理を行う(S130)。具体的には、数値材料試験において試験片に条件として与えるマクロひずみのパターン(以下、「負荷パターン」と称する。)を設定する。
この設定は、情報処理装置1を使用するユーザによる入力に基づいて行うようにしてもよいし、均質化解析部120が自動で設定するようにしてもよい。
【0026】
次いで、数値材料試験部123が、S130のステップで設定された負荷パターンに基づいて数値材料試験処理を行う(S140)。詳細は後述する。
【0027】
次いで、均質化解析部120が、マクロ累積ひずみ算出処理を行う(S150)。
【0028】
本実施形態では、マクロひずみの履歴に依存する履歴パラメータとして「マクロ累積ひずみ」と称する変数を導入する。
マクロ累積ひずみは、本願発明者が、材料の変形の履歴が反映されたマクロ的な荷重の状態を特徴付けるべく新たに導入した変数であり、次式(1)のように定式化することができる。
【数1】
【0029】
ここで、「チルダεacc」はマクロ累積ひずみを示し、「チルダε」はマクロひずみを示す。
また、右辺におけるドット付きの「チルダε」は、マクロひずみの時間微分、つまりマクロひずみ速度を示す。
【0030】
また、「H」は、次式(2)で与えられるヘヴィサイド関数である。
【数2】
【0031】
「チルダεmin」および「チルダεmax」は、それぞれ過去におけるマクロひずみの最小値および最大値であり、それぞれ次式(3),(4)のように表される。
【数3】
【数4】
【0032】
ここで、式(1)を時間離散化することで、マクロ累積ひずみを、次式(5)のように算出することができる。
【数5】
【0033】
なお、下付きの添え字「j」はマクロ累積ひずみの成分を示し、下付きの添え字「n」は時間を示す。
また、右辺の「Δチルダε」は、時間刻み幅「Δt=tn+1-tn」間におけるマクロひずみの増分を示す。
【0034】
このようにして算出されるマクロ累積ひずみは、マクロひずみの現在の値が、過去に条件として与えたマクロひずみの最大値より大きい、または過去に条件として与えたマクロひずみの最小値より小さい場合、マクロひずみ速度の時間積分を累積することによって算出される値と捉えることができる。
【0035】
本発明の代理モデルの生成にあたり、マクロ累積ひずみを導入する意味の1つとして、代理モデルを生成する過程(学習を行う過程)において、マクロひずみの過去の履歴を考慮・加味することによって、マクロひずみの過去の履歴に依存する挙動の補間の精度向上(学習における回帰精度の向上)を図ることがある。
【0036】
図3は、マクロひずみの履歴であるマクロひずみ履歴(前述した負荷パターンに対応)と、マクロ累積ひずみの履歴であるマクロ累積ひずみ履歴との関係を説明するための図である。
ここでは、試供体に対して単調載荷試験を行った場合における、マクロひずみの成分(例えばε11、ε22、2ε12)ごとの、式(5)に従って算出されるマクロ累積ひずみの履歴の一例を示す。図中上下に示されるグラフにおいて、横軸は時間tを示し、縦軸はそれぞれマクロひずみ、マクロ累積ひずみを示す。
この結果を見ると、単調載荷では、マクロ累積ひずみは、マクロひずみの各成分における最大値/最小値を記録するかのように振る舞うことがわかる。
【0037】
このようにして算出されるマクロ累積ひずみを変数として導入することによって、荷重によって累積されるマクロひずみの影響を考慮した代理モデルの生成が可能となる。
【0038】
次いで、均質化解析部120は、代理モデルを生成するためのデータの収集(代理モデルパラメータの最適化用のデータの収集)が終了したか否かを判定する(S160)。
データの収集が終了していないと判定したならば(S160:NO)、均質化解析部120は、S130のステップに処理を戻す。そして、均質化解析部120が、負荷パターンを再設定する(S130)。
【0039】
なお、S130のステップにおいて、複数の負荷パターンを1回で設定するようにしてもよい。そして、S160:NOである場合に、S140のステップに戻るようにしてもよい。
【0040】
データの収集が終了したと判定したならば(S160:YES)、代理モデル生成部125が、代理モデルパラメータ最適化処理を行う(S170)。
【0041】
ここで、代理モデルの生成手法(代理モデルパラメータの最適化手法)について詳細に説明する。
前述したように、分離型マルチスケール解析手法では均質化構成則を必要とするが、その定式化が困難な場合がある。
そこで、本実施形態では、以下説明する手法によって教師データ(学習用データ)を生成し、未学習の部分を、一例としてRBF(Radial Basis Function)補間により近似するような代理モデル(代理均質化モデル)を生成する。
【0042】
本実施形態では、代理モデルを、例えば次式(6)~(9)のように定義する。
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【0043】
ここで、「チルダσ」はマクロ応力を示す。
RBF補間は、RBFを用いて既知の入出力データを大域補間する手法であり、入力データを「f」、応答データを「φ」で表す。「φ」はベクトル値関数(2次元問題では3要素、3次元問題では6要素の関数)である。
「Nc」はデータ点の数(総数)を示し、「i」(添え字ではカッコ付き)はデータ点の番号を示す。
「ψ」は任意の入力と既知のデータ点(i)とのユークリッドノルムを独立変数とするRBFであり、「ω」は重み係数ベクトルである。
「Ni」は、入力データ「f」の次元を示す。
【0044】
データ点は、補間に用いるデータセット(詳細後述する教師データ)のうち、入力データ「f」の内の任意の1つを示す。より具体的には、入力データ「f」を、教師データ全体の「f」が張る空間内に存在する離散的な点に見立て、これをデータ点と表現する。例えばRBF補間では、データ点の座標を「f」とし、二点間のユークリッド距離を算出して大域補間を行う。
【0045】
本実施形態において特徴的であるのは、マクロひずみに加えて、前述したマクロ累積ひずみが、入力データ「f」に含まれる点である。
本実施形態では、例えば、入力データ「f」を、マクロひずみ6成分とマクロ累積ひずみ6成分とからなる12次元のベクトル(Ni=12)とし、応答データ「φ」を、マクロCauchy応力6成分からなる6次元ベクトルとする。
【0046】
この代理モデルの応答が適切な値となるように、RBFの具体形と重み係数ベクトル「ω」を決定する必要がある。
そこで、本実施形態では、代理モデル生成部125が、数値材料試験部123による数値材料試験の結果に基づいて、代理モデルの生成(機械学習)において教師データとして用いる、例えば次式(10)で表される説明変数行列(説明変数データ)と、例えば次式(11)で表される目的変数行列(目的変数データ)とを生成する。
【数10】
【数11】
【0047】
式(10)および式(11)において、「n」は前述したデータ点の数を示す。
右辺において{}で囲ったデータが、負荷パターン1つ1つ(以下、これを便宜的に「ケース」と称する。)のデータを示しており、下付きの添え字「a,b,・・・,z」(括弧付き)は、ケースの番号(以下、「ケ―ス番号」と称する。)を示している。
また、各々のケースのデータにおける下付きの添え字「1,2,・・,n」(括弧付き)は、負荷パターンにおける解析ステップを示している。
【0048】
数値材料試験では、例えば、設定したマクロひずみ履歴(負荷パターン)を試験片に対して与え、試験片内のミクロ応力分布を計算するシミュレーションを行う。この際、ステップワイズに設定したマクロひずみを試験片に与えるようにしてミクロ応力分布の履歴を算出するようにすると好適である。これは、本願発明では、例えば非線形(弾塑性)材料を解析対象とすることを想定しており、代理モデルの応答の精度の観点からは、負荷または除荷中の応答履歴が教師データに含まれていることが肝要になるためである。また,例えばマクロ解析を陰解法で解く場合に必要な接線係数の算出精度の観点からも、履歴データは非常に重要である。
【0049】
数値材料試験において解く問題は、式(12)~式(14)でそれぞれ表される支配方程式、ミクロ変位、周期境界条件とすることができ、有限要素法を用いて計算を行うようにすることができる。
【数12】
【数13】
【数14】
【0050】
支配方程式を解くことで得られたミクロ応力分布を体積平均することでマクロ応力が得られる。これを各解析ステップで行うことで、マクロ応力ーひずみ関係の履歴データを得ることができる。また,得られた履歴データから各解析ステップにおけるマクロ累積ひずみを前述したように算出することで、数値材料試験1ケース分の説明変数行列および目的変数行列が得られる。
このような数値材料試験を、試験片に与えるマクロひずみ履歴(負荷パターン)を、例えば重複のないように変更しながら繰り返し行い(上記のケース番号「a,b,・・・,z」に対応)、各ケースで得られた説明変数行列と目的変数行列とを順に並べることで、教師データとして使用する、上記のような説明変数行列および目的変数行列を生成する。
【0051】
このようにして生成した教師データを用いることで、重み係数ベクトル「ω」を、以下のように求めることができる。
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
【0052】
ここで、「η」は正則化パラメータ(平滑化パラメータ)である。過学習が起きる可能性を考慮し、本実施形態では、L2正則化の正則化パラメータ「η」を導入している。
【0053】
ここで、放射基底関数「ψ」には種々の関数形が存在し、上記のように生成した教師データに応じて最適な関数形を選択する必要がある。
そこで、本実施形態では、放射基底関数「ψ」を識別パラメータ「nψ」によって場合分けされる以下の関数であると仮定する。
【数21】
【0054】
ここで、上記の式における「β」,「η」は、「nψ」と同様にハイパーパラメータであり、「nψ」と同様に教師データに応じて最適な値を用いる必要がある。
便宜的に、これらのパラメータを包括して「代理モデルパラメータ」と称する場合がある。
【0055】
しかし、これらの代理モデルパラメータを理論的に決定することは困難であるため、本実施形態では、これらの代理モデルパラメータを、一例として、差分進化(DE:Differential Evolution)を用いて最適化する。
ただし、これに限定されるものではなく、遺伝的アルゴリズム等を用いてもよい。
【0056】
なお、この場合、計算の効率化のため、一例として、代理モデルパラメータ「β」,「η」を実数「aβ」、「aη」を用いて、それぞれ「β=10aβ」、「η=10aη」と表し、これを最適化するようにしてもよい。
【0057】
また、最適化には、一例として、上記の教師データを分割して教師データの再現精度を検証する交差検証(CV(Cross Validation))を用いる。
ただし、これもあくまで一例であり、これに限定されるものではない。
【0058】
また、最小化する損失関数は、例えば次式(22)、(23)に示すような関数とすることができ、代理モデルの応答と教師データとの応答の差が最小となるように代理モデルパラメータを最適化する。
【数22】
【数23】
【0059】
識別パラメータ「nψ」が定まれば、放射基底関数が一意に定まる。また、実数「aβ」、「aη」が定まれば、パラメータ「β」、「η」が定まる。
これにより、前述した重み係数ベクトル「ω」が定まるため、代理モデル(学習済みモデル)が生成される。
【0060】
S170のステップの後、マクロ構造解析部130が、マクロ構造解析処理を行う(S180)。具体的には、例えば、S110のステップで取得されたマクロ構造情報と、S170のステップで生成された代理モデルとに基づき、解析対象材料のマクロ構造を解析する。例えば、後述する片持ち梁の自由端における荷重-変位関係や、注目領域におけるマクロ応力-マクロひずみ関係を取得する。
【0061】
次いで、局所化解析部140が、局所化解析処理を行う(S190)。
具体的には、S180のマクロ構造の解析結果に基づき、解析対象材料の局所化解析を行う。例えば、後述する片持ち梁をマクロ構造として解析した場合、例えば生じる応力が大きい点のマクロひずみおよびマクロ累積ひずみを解析結果から抽出し、これを入力データとする数値材料試験を実施して、そのマクロの点に対応する試験片内部の応力分布(最大主応力分布と最小主応力分布)等を算出する。
【0062】
次いで、情報処理装置1の制御部は、処理を終了するか否かを判定する(S200)。
処理を継続すると判定したならば(S200:NO)、制御部は、例えば、S120のステップに処理を戻し、ミクロ構造数値モデル生成部121がミクロ構造数値モデル生成処理を行って、再度、試験片(例えば、別の種類の試験片)を設定し、代理モデルを生成するようにしてもよい。
一方、処理を終了すると判定したならば(S200:YES)、制御部は、処理を終了する。
【0063】
なお、S200のステップで処理を継続すると判定した場合(S200:NO)、制御部が、S110のステップに処理を戻し、マクロ構造取得部110がマクロ構造取得処理を行って、再度、マクロ構造情報(例えば、別の解析対象材料のマクロ構造情報)を取得し、代理モデルを生成するようにしてもよい。
【0064】
図4図5は、本実施形態における代理モデル生成の説明図である。
図4に示すように、取得されたマクロ構造情報に基づいて試験片が設定され数値材料試験が行われる。
図中では、数値材料試験の各々のケース「a,b,・・・,z」に対応するマクロひずみ、および、前述した式(5)に従って算出されるマクロ累積ひずみの組み合わせとして、
(a)ケースaにおけるマクロひずみおよびマクロ累積ひずみの組み合わせ
(b)ケースbにおけるマクロひずみおよびマクロ累積ひずみの組み合わせ



(z)ケースzにおけるマクロひずみおよびマクロ累積ひずみの組み合わせ
の一例が示されている。
また、その右には、これら各々のケースにおけるマクロ応力が示されている。
【0065】
図5に示すように、上記のようにして取得された各々のケースにおけるマクロひずみおよびマクロ累積ひずみの組み合わせから説明変数行列が生成され、上記のようにして取得された各々のケースにおけるマクロ応力から目的変数行列が生成される。つまり、上記の処理では、試験片(1種類の試験片)に対して複数の負荷パターンを設定し、これらを用いて上記のように数値材料試験を行うことで、式(10)に示した説明変数行列と式(11)に示した目的変数行列とが生成される。そして、このようにして生成される説明変数行列と目的変数行列とを教師データとして用いて、前述した代理モデルパラメータが最適化されることによって、代理モデルが生成される。
【0066】
<実験結果等>
図6は、解析対象とする複合材料のマクロ構造及びミクロ構造を示す図である。
図6(a)に示すように、解析対象とするマクロ構造は、長さ50mm,幅20mmの片持ち梁であり、その自由端に、長手方向と直交する垂直方向の強制変位を載荷する。
図6(b)のグラフには、載荷する強制変位の時間変化が示されている。強制変位は、垂直方向の変位が0から最大となるまで載荷された後、再度0となるまで除荷される。
なお、この計算例では、計算コスト削減のため、マクロ解析を平面ひずみ条件の2次元問題としている。
【0067】
一方、ミクロ構造に関しては、図6(c)に示すように、矩形の強化材が中心部分に埋め込まれた弾塑性材料のユニットセルとしている。
母材をy1-y2平面で見た場合の各辺の長さについては、母材を縦10,横10とすると、強化材は縦6,横4である。強化材が長方形であるため、母材はマクロスケールで直交異方性の材料となっている。また、母材と強化材の体積分率は76:24となる。
ミクロ材料構成則については、母材を非線形のVoce等方硬化則を用いた関連von Misesモデルで定義し、強化材を線形弾性体とする。
【0068】
図6(d)には、母材と強化材の材料パラメータを示す。この例では、母材の弾性率と強化材の弾性率に大きなギャップが存在するミクロ構造となっている。
また、ユニットセルの解析モデルは200個の20節点六面体要素のメッシュで作成しており、強化材と母材の要素は節点を共有する形で剛結されている。
【0069】
このユニットセルに対して数値材料試験を実施することで、代理均質化モデルの構築のための前述した教師データを生成した。この例では、与えるマクロひずみ履歴(負荷パターン)を変えながら1100ケースの数値材料試験を実施し、その中から、この非均質材料のマクロな力学特性を良好に表す結果の一つをグラフ化した(図7(a))。
【0070】
図7(a)は、1%のマクロせん断ひずみをy1-y2平面方向に与え、その後除荷した数値材料試験の結果を示している。このグラフから、最大までマクロひずみが載荷されたときのマクロ応力と、除荷中に再度降伏するときのマクロ応力が異なることが確認できる。
【0071】
このような挙動は、等方硬化モデルと移動硬化モデルを組み合わせた複合硬化と呼ばれるモデルで表される挙動であるが、前述したように本例のミクロ構造では、等方硬化モデルを母材に使用しており、移動硬化や複合硬化のモデルは使用していない。
そうであるにもかかわらず、複合硬化と同様の挙動がマクロ応力-ひずみ関係に現れた原因は、母材と強化材の物性に大きなギャップがあるためにユニットセル内部の変形が一部に集中し、塑性ひずみが局所的に発生したためであると考えられる。
【0072】
また、図7(a)には、除荷直前、再降伏直後、除荷終了時それぞれにおけるユニットセルの変形状態を相当塑性ひずみ分布と共に示している。除荷直前の状態では、塑性変形がユニットセルの角に集中して発生していることを確認できる。除荷後においてもその分布傾向は一致しており、再降伏から除荷までの間に更に塑性変形が発展していることを確認できる。このように、ユニットセル内の一部の要素に変形が集中することで,マクロ応力ーひずみ関係に複合硬化の挙動が現れる。
【0073】
次いで、図7(b)に示すように、このようなマクロ応力-ひずみ関係を用いて代理モデルを構築した。実施した1100ケースの数値材料試験結果から14410個の応答データを使用して、モデルパラメータの最適化を実施した。図7(b)には、パラメータの値を示している。教師データを補間データとして用い、RBF補間を行うことで,図に示すような応答局面を持つ代理均質化モデルが得られた。
【0074】
3つの応答曲面のうち、左の曲面は、マクロ応力の水平方向成分に関する応答局面であり、中央の曲面は、マクロ応力の垂直方向成分に関する応答曲面であり、右の曲面は、マクロ応力のせん断方向成分に関する応答曲面である。
ミクロ構造の直交異方性を反映するように、水平方向の応答局面と、垂直方向の応答曲面とが、異なる形状を示していることを確認できる。
【0075】
この代理均質化モデルを用いて、前述した片持ち梁のマクロ応力解析を実施した(図6(e)を参照)。対象とする梁の解析モデルとして、1000個の8節点四角形要素で作成したメッシュを使用し、有限要素法による計算を実施した。マクロ支配方程式は、図7(c)に示す式を用いて、各計算点上においてマクロ応力を代理均質化モデルから算出した。なお、接線係数についても代理均質化モデルから解析的に導出可能であるが、応答曲面の振動による計算の不安定化を避ける目的で本例では数値接線を用いて計算した。
【0076】
また、代理均質化モデルによるマクロ応力解析と比較するため、4,000要素(ユニットセル40個)、25,000要素(ユニットセル250個)、100,000要素(ユニットセル1,000個)の、各メッシュを用いて直接解析を実施した。この直接解析とは、非均質材料のミクロ構造を直接反映させたメッシュを用いて解析を行う手法であり、ユニットセルが有限のサイズを持つ点がマルチスケール解析との違いである。
【0077】
マルチスケール解析におけるマクロ計算では、均質化理論に基づいてユニットセルのサイズが0に近似されているため、直接解析の結果はユニットセルのサイズが小さくなるほどマルチスケール解析の結果に漸近する。
【0078】
図8(a)には、それぞれの解析で得られた、梁の自由端における荷重-変位関係を示す。マーカー付きの実線は、代理均質化モデルにより得られた結果であり、変位ピーク点において、比較対象内で反力が最大を示している。次いで、変位ピーク点における反力が大きい順に、直接解析(100,000要素)、直接解析(25,000要素)、直接解析(4,000要素)となっている。
【0079】
また、実線の誤差曲線は、代理均質化モデルと直接解析(4,000要素)との誤差曲線であり、変位ピーク点において、比較対象内で最大誤差となっている。次いで、変位ピーク点における誤差が大きい順に、直接解析(25,000要素)、直接解析(100,000要素)となっている。
【0080】
このグラフより、4種類の解析によって得られた荷重-変位関係が、同じ傾向を示していることを確認できる。また、変位が最大の状態において、代理均質化モデルの反力の誤差は、4,000要素のものと比較して17%程度、25,000要素のものと比較して10%程度、100,000要素のものと比較して7%程度となっていることから、要素数(ユニットセルの数)の増加に応じて、直接解析と代理均質化モデルの誤差が減少していることを確認できる。
【0081】
この結果は、代理均質化モデルを用いて得られた解が、直接解析において要素数を無限大まで増やしたときの収束解であることを示唆しており、前述したように、直接解析の結果はユニットセルサイズが小さくなるほどマルチスケール解析に漸近するという均質化理論から導かれる原則とも一致している。従って、以上の結果から代理均質化モデルを用いて得られた解は妥当な解であると考えられる。
【0082】
図8(b)には、それぞれの解析で得られた、梁の注目領域(各解析間で共通の領域)におけるマクロ応力-マクロひずみ関係を示す。マーカー付きの実線は、代理均質化モデルにより得られた結果であり、マーカー無しの実線は、直接解析により得られた結果である。グラフに示す通り、代理均質化モデルの結果と直接解析の結果は近い傾向を示している。しかしながら、直接解析の値は、厳密なマクロ応力ではないため、定性的には、代理均質化モデルの結果と直接解析の結果は近い傾向を示しているといえるものの、定量的な比較を行う必要がある。
【0083】
定量的な比較として、ユニットセル内の応力を比較した。具体的には、グラフに示すマクロひずみ履歴を、ユニットセルに境界条件として与える局所化解析を行い、代理均質化モデルを用いた解析におけるユニットセル内の応力を算出した。局所化解析により得られた対象領域内の応力分布を直接解析と比較した結果、代理均質化モデル+局所化解析と、直接解析(100,000要素)とで、近い結果が得られた。
【0084】
図9(b)には、最大載荷時の最大主応力分布と最小主応力分布を示している。このときの最大主応力の最大値の相対誤差と、最小主応力の最小値の相対誤差を計算すると、図9(a)の表に示す結果が得られた。最大主応力に関する誤差は1.99%であり、最小主応力に関する誤差は4.78%であった。この誤差からも、代理均質化モデル+局所化解析と、直接解析(100,000要素)とで、近い結果が得られることが示された。
【0085】
以上の結果より、本実施例において示した方法によって,弾塑性材料の分離型マルチスケールを実行可能な代理均質化モデルを生成することができた。
【0086】
なお、本実施形態では、RBF補間を用いて代理モデルを生成したが、これに限定されない。RBF補間以外の手法を用いて代理モデルを生成するようにしてもよい。
例えば、ニューラルネットワークモデルを適用し、ニューラルネットワークモデルの重みを、上記と同様の手法によって最適化することによって代理モデルを生成するようにしてもよい。また、この場合、上記と同様に、コスト(例えばL2正則化項)をニューラルネットワークモデルの損失関数に追加して最適化を行うようにしてもよい。
【0087】
<実施形態の効果>
本実施形態は、情報処理装置1(例えば、生成装置の一例)は、試験片に対して複数回の数値材料試験を行う数値材料試験部123と、その結果に基づいてマクロひずみおよびマクロ累積ひずみ(マクロひずみおよびマクロ累積ひずみの組み合わせ)に対するマクロ応力の関係を表す代理モデルを生成する代理モデル生成部125(例えば、生成部の一例)を備える。
これにより、分離型マルチスケール解析を実現可能とする均質化構成則の代理モデルを生成したことなる。また、マクロ累積ひずみを用いることで、代理モデル生成の精度と汎用性を向上させることができる。
【0088】
また、この場合、代理モデル生成部125は、試験片に対して複数回の数値材料試験を行って得られるマクロ応力と、数値材料試験の条件として保存しておくマクロひずみおよびマクロ累積ひずみとに基づいて、代理モデルを生成するようにしてもよい。
これにより、試験片に対して複数回の数値材料試験を行って得られるマクロ応力と、数値材料試験の条件として保存しておくマクロひずみおよびマクロ累積ひずみとに基づいて、代理モデルを適切に生成することができる。
【0089】
また、この場合、代理モデル生成部125は、数値材料試験の条件としたマクロひずみに基づいてマクロ累積ひずみを算出するようにしてもよい。
これにより、数値材料試験の条件としたマクロひずみに基づいてマクロ累積ひずみを簡易・適切に算出することができる。
【0090】
また、本実施形態において、代理モデル生成部125は、異なる複数のマクロひずみのパターン(負荷パターン)を条件として数値材料試験を行った結果に基づいて、代理モデルを生成する構成を示している。
これにより、異なる複数のマクロひずみのパターンを条件として数値材料試験を行った結果に基づいて、代理モデルを適切に生成することができる。
【0091】
また、本実施形態において、代理モデル生成部125は、試験片に対して複数回の数値材料試験を行った結果として得られるマクロ応力の履歴データ(例えば、第1データの一例)と、複数回の数値材料試験におけるマクロひずみおよびマクロ累積ひずみとして保存される履歴データ(例えば、第2データの一例)とに基づいて、代理モデルを生成する。
これにより、複数回の数値材料試験を行って得られるマクロ応力に基づく第1データと、複数回の数値材料試験の条件として保存しておくマクロひずみおよびマクロ累積ひずみに基づく第2データとに基づいて、代理モデルを適切に生成することができる。
【0092】
また、この場合、代理モデル生成部125は、複数回の数値材料試験におけるマクロひずみおよびマクロ累積ひずみとして保存される履歴データ(例えば、第2データの一例)を説明変数データとし、上記の試験片に対して複数回の数値材料試験を行った結果として得られるマクロ応力の履歴データ(例えば、第1データの一例)を目的変数データとする機械学習によって代理モデルを生成するようにしてもよい。
これにより、第2データを説明変数データとし、第1データを目的変数データとする機械学習によって、代理モデルを適切に生成することができる。
【0093】
また、本実施形態において、代理モデル生成部125は、正則化パラメータ(正則化パラメータ「η」等)を含むモデルパラメータを最適化する。
これにより、過学習が発生する可能性を低減させつつ、代理モデルを適切に生成することができる。
【0094】
また、この場合、代理モデルは、放射基底関数(RBF)に基づくモデルであり、モデルパラメータは、放射基底関数に関するパラメータ(パラメータ「β」、識別パラメータ「nψ」等)を含むようにしてもよい。
これにより、放射基底関数に関するパラメータを含むモデルパラメータを最適化して、放射基底関数に基づく代理モデルを生成することができる。
【0095】
また、この場合、放射基底関数に関するパラメータは、識別パラメータ(識別パラメータ「nψ」等)(例えば、あらかじめ定められた複数の放射基底関数の各々を識別するための識別パラメータの一例)を含むようにしてもよい。
これにより、あらかじめ定められた複数の放射基底関数の各々を識別するための識別パラメータを含むモデルパラメータを最適化して、放射基底関数に基づく代理モデルを生成することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 情報処理装置
110 マクロ構造取得部
120 均質化解析部
121 ミクロ構造数値モデル生成部
123 数値材料試験部
125 代理モデル生成部
130 マクロ構造解析部
140 局所化解析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9