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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168318
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】エアトラップチャンバの濾過部材
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20241128BHJP
【FI】
A61M1/36 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084877
(22)【出願日】2023-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】小越 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 文彦
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD13
4C077EE01
4C077KK02
4C077KK19
(57)【要約】
【課題】エアトラップチャンバ内でプライミング液と血液との流れる方向が異なることを利用して気泡の残留を抑制することができるエアトラップチャンバの濾過部材を提供する。
【解決手段】血液浄化治療時に患者の血液を流動させる血液回路に接続されたエアトラップチャンバ7内に取り付けられ、エアトラップチャンバ7内にて順方向に流れる血液を通過させて血液中の異物を捕捉する濾過孔hを有するエアトラップチャンバの濾過部材8であって、順方向αに対して逆方向βに流れるプライミング液が濾過孔hを通過するのを規制する非濾過状態と、順方向αに流れる血液が濾過孔hを通過するのを許容する濾過状態とで切り替え可能とされるとともに、順方向αに流れる血液により非濾過状態から濾過状態に切り替えられるものである。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化治療時に患者の血液を流動させる血液回路に接続されたエアトラップチャンバ内に取り付けられ、前記エアトラップチャンバ内にて順方向に流れる血液を通過させて血液中の異物を捕捉する濾過孔を有するエアトラップチャンバの濾過部材であって、
前記順方向に対して逆方向に流れるプライミング液が前記濾過孔を通過するのを規制する非濾過状態と、前記順方向に流れる血液が前記濾過孔を通過するのを許容する濾過状態とで切り替え可能とされるとともに、前記順方向に流れるプライミング液又は血液により前記非濾過状態から前記濾過状態に切り替えられるエアトラップチャンバの濾過部材。
【請求項2】
前記エアトラップチャンバ内に固定され、前記非濾過状態及び濾過状態のときプライミング液及び血液を流通させる固定部と、
前記濾過孔が形成され、前記非濾過状態のとき前記固定部と離間して前記逆方向に流れるプライミング液を離間部を介して流通させるとともに、前記順方向に流れるプライミング液又は血液により変位して前記固定部を覆うことにより前記非濾過状態から前記濾過状態に切り替える切替本体部と、
前記切替本体部による前記固定部を覆った状態をロックして前記濾過状態を保持するロック部と、
を具備した請求項1記載のエアトラップチャンバの濾過部材。
【請求項3】
前記非濾過状態は、前記切替本体部と前記固定部とが一部重なり合った状態とされるとともに、前記濾過状態は、前記切替本体部と前記固定部とが完全に重なり合った状態とされる請求項2記載のエアトラップチャンバの濾過部材。
【請求項4】
上部が開口しつつ側面に前記濾過孔が形成されるとともに、前記エアトラップチャンバ内で固定された固定本体部と、
前記開口を開閉可能に取り付けられ、前記非濾過状態のとき前記開口を開放状態として前記逆方向に流れるプライイング液を前記開口を介して流通させるとともに、前記順方向に流れるプライミング液又は血液により変位して前記開口を閉止状態とすることにより前記非濾過状態から前記濾過状態に切り替える切替蓋部と、
前記切替蓋部による前記開口の閉止状態をロックして前記濾過状態を保持するロック部と、
を具備した請求項1記載のエアトラップチャンバの濾過部材。
【請求項5】
前記濾過孔が形成された第1部材及び第2部材から成り、前記非濾過状態のとき前記第1部材及び第2部材が離間して配設され、前記逆方向に流れるプライミング液を離間した部位を介して流通させるとともに、前記順方向に流れるプライミング液又は血液により前記第1部材及び第2部材が揺動して合致することにより前記非濾過状態から前記濾過状態に切り替える揺動本体部と、
前記第1部材及び第2部材が合致した状態をロックして前記濾過状態を保持するロック部と、
を具備した請求項1記載のエアトラップチャンバの濾過部材。
【請求項6】
第1の開口部が形成されるともに、前記エアトラップチャンバ内で固定された第1本体部と、
第2の開口部が形成されるとともに、第1本体部と重ね合わせた状態で配設され、前記非濾過状態のとき前記第1の開口部と第2の開口部とが離間して前記逆方向に流れるプライミング液を前記第1の開口部を介して流通させるとともに、前記順方向に流れるプライミング液又は血液により変位して前記第1本体部を覆うことにより前記第1の開口部及び前記第2の開口部が一部合致して前記濾過孔が形成され、前記非濾過状態から前記濾過状態に切り替える第2本体部と、
前記第2本体部が前記第1本体部を覆った状態をロックして前記濾過状態を保持するロック部と、
を具備した請求項1記載のエアトラップチャンバの濾過部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液を体外循環させるための血液回路に接続されて体外循環中の血液の除泡を図るためのエアトラップチャンバの濾過部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療時においては、採取した患者の血液を体外循環させて再び体内に戻すための血液回路が用いられている。かかる血液回路は、血液浄化器としてのダイアライザと接続される動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有して構成されており、その流路の途中には、血液ポンプが配設されるとともに、体外循環中の血液の除泡を図るためのエアトラップチャンバが接続されている。
【0003】
従来のエアトラップチャンバは、例えば特許文献1で開示されているように、内部に所定容量の収容空間を有するとともに、当該収容空間内に血液を導入する導入口及び当該収容空間から血液を導出する導出口がそれぞれ形成されて構成されていた。また、エアトラップチャンバ内には、血液を通過させつつ血栓等の異物を捕捉し得る濾過部材が取り付けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-309975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のエアトラップチャンバの濾過部材は、血液回路内にてプライミング液を流動させて洗浄するプライミング時(特にオーバーフロー工程時)において、
プライミング液に含まれる気泡が付着して残留する虞があった。一方、通常、プライミング時のプライミング液と血液浄化治療時の血液とでは、エアトラップチャンバ内を流れる方向が逆(血液浄化治療時の順方向に対してプライミング時には逆方向)になることが多いことから、本出願人は、これを利用してプライミング時に残留する気泡を抑制することを鋭意検討した。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、エアトラップチャンバ内でプライミング液と血液との流れる方向が異なることを利用して気泡の残留を抑制することができるエアトラップチャンバの濾過部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一実施形態のエアトラップチャンバの濾過部材は、血液浄化治療時に患者の血液を流動させる血液回路に接続されたエアトラップチャンバ内に取り付けられ、前記エアトラップチャンバ内にて順方向に流れる血液を通過させて血液中の異物を捕捉する濾過孔を有するエアトラップチャンバの濾過部材であって、前記順方向に対して逆方向に流れるプライミング液が前記濾過孔を通過するのを規制する非濾過状態と、前記順方向に流れる血液が前記濾過孔を通過するのを許容する濾過状態とで切り替え可能とされるとともに、前記順方向に流れるプライミング液又は血液により前記非濾過状態から前記濾過状態に切り替えられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、順方向に対して逆方向に流れるプライミング液が濾過孔を通過するのを規制する非濾過状態と、順方向に流れる血液が濾過孔を通過するのを許容する濾過状態とで切り替え可能とされるとともに、順方向に流れるプライミング液又は血液により非濾過状態から濾過状態に切り替えられるので、エアトラップチャンバ内でプライミング液と血液との流れる方向が異なることを利用して気泡の残留を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態(第1~4の実施形態)に係るエアトラップチャンバの濾過部材が適用される血液回路(血液浄化治療時)を示す模式図
図2】本実施形態に適用される血液回路(プライミング時)を示す模式図
図3】本発明の第1の実施形態に適用されるエアトラップチャンバ(プライミング時)及び濾過部材(非濾過状態)を示す模式図
図4】本実施形態に適用されるエアトラップチャンバ(血液浄化治療時)及び濾過部材(濾過状態)を示す模式図
図5】本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材における固定部を示す正面図
図6】本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材における切替本体部を示す正面図
図7】本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材が非濾過状態にあるときを示す模式図
図8】本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材が濾過状態にあるときを示す模式図
図9】本発明の第2の実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材が非濾過状態にあるときを示す模式図
図10】本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材が濾過状態にあるときを示す模式図
図11】本発明の第3の実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材が非濾過状態にあるときを示す模式図
図12】本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材が濾過状態にあるときを示す模式図
図13】本発明の第4の実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材における第1本体部を示す模式図
図14】本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材における第2本体部を示す模式図
図15】本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材が非濾過状態にあるときを示す模式図
図16】本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材が濾過状態にあるときを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材は、血液回路に接続されたエアトラップチャンバ内に取り付けられて血栓等の異物を捕捉するもので、適用される血液回路は、図1に示すように、先端に動脈側穿刺針aが接続された動脈側血液回路1と、先端に静脈側穿刺針bが接続された静脈側血液回路2とから主に構成されている。
【0011】
これら動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2を有した血液回路は、プライミング液や血液等の液体を流動させ得る可撓性チューブで構成されているとともに、血液浄化器としてのダイアライザ3にそれぞれ接続されている。また、動脈側血液回路1には、血液ポンプ4が配設されるとともに、静脈側血液回路2には、エアトラップチャンバ7が接続されている。なお、動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2の先端部には、流路を開放又は閉止し得る電磁弁V1、V2がそれぞれ配設されている。
【0012】
さらに、動脈側血液回路1の所定部位(動脈側血液回路1の先端と血液ポンプ4が配設された位置の間)には、供給ラインLaを介して収容バッグ6が接続されている。かかる収容バッグ6は、生理食塩液(プライミング液)が収容されており、クランプV5を開状態として供給ラインLaを開放することにより、生理食塩液(プライミング液)を動脈側血液回路1に供給可能とされている。
【0013】
ダイアライザ3は、略円筒状の筒体における両端面に血液導入口3a及び血液導出口3bがそれぞれ形成されるとともに、側面に透析液導入口3c及び透析液導出口3dがそれぞれ形成されたものである。このダイアライザ3内には複数の中空糸膜(血液浄化膜)が配設されており、該中空糸膜内部が血液導入口3a及び血液導出口3bを連通して、血液回路(動脈側血液回路1及び静脈側血液回路2)中を流れる血液を流通させ得る血液流路を成している一方、中空糸膜の外周面と筐体の内周壁との間の空間が透析液導入口3c及び透析液導出口3dを連通して、透析装置本体5から供給された透析液を流通させ得る透析液流路を成している。
【0014】
ダイアライザ3内の中空糸膜には複数の微少孔が形成されているため、血液が血液流路を通過し、透析液が透析液流路を通過する際、中空糸膜を介して血液中の不要物(老廃物)が透析液側に透析除去することができるよう構成されている。なお、透析液導入口3c及び透析液導出口3dは、それぞれ透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2を介して透析装置本体5と接続されており、所望濃度に調製された透析液をダイアライザ3内に導入及びダイアライザ3からの排液を導出し得るようになっている。
【0015】
しかるに、血液浄化治療前のプライミング時において、図2に示すように、動脈側血液回路1の先端と静脈側血液回路2の先端とを接続して閉回路を構成するとともに、クランプV5を開状態としつつ血液ポンプ4を逆回転駆動(同図矢印方向の回転駆動)させることにより、収容バッグ6内の生理食塩液(プライミング液)が血液回路内を循環して流動するようになっている。
【0016】
またさらに、エアトラップチャンバ7の上部には、オーバーフローラインLbが接続されており、クランプV4を開状態としてオーバーフローラインLbを開放することにより、血液回路内を流動する生理食塩液(プライミング液)を血液回路の外部に排出可能とされている。そして、所定量のプライミング液がオーバーフローラインLbから排出された後、クランプV4を閉状態としてオーバーフローラインLbを閉止することにより、血液回路内にプライミング液が充填された状態とすることができる。
【0017】
なお、プライミングにおいては、オーバーフローラインLbからプライミング液をオーバーフローさせる工程が実行され、その後、血液ポンプ4を正回転駆動(同図矢印方向の回転駆動)させることにより、血液回路にプライミング液を充填させるガスパージ工程が行われることとなる。プライミング後及びガスパージ工程後の血液浄化治療時において、図1に示すように、動脈側血液回路1の先端と静脈側血液回路2の先端との接続を解いて動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bをそれぞれ接続し、これら動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺するとともに、血液ポンプ4を正回転駆動させることにより、患者の血液を血液回路にて体外循環させつつダイアライザ3にて血液浄化を行わせる。
【0018】
本実施形態に係る濾過部材8は、図3、4に示すように、静脈側血液回路2に接続されたエアトラップチャンバ7内に取り付けられている。このエアトラップチャンバ7は、側面の上部に導入口7aが突出形成されるとともに、底部に導出口7bが突出形成されており、これら導入口7a及び導出口7bに静脈側血液回路2がそれぞれ接続されている。なお、エアトラップチャンバ7の上面には、オーバーフローラインLbを接続する接続口7cが突出形成されている。
【0019】
そして、プライミング時においては、図3に示すように、導出口7bからプライミング液が導入され、そのプライミング液がオーバーフローラインLbから排出されることとなり、エアトラップチャンバ7内においてプライミング液が逆方向βに流れるようになっている。また、ガスパージ工程及び血液浄化治療時においては、図4に示すように、導入口7aからガスパージ工程のプライミング液又は血液浄化治療時の血液が導入され、そのプライミング液又は血液が導出口7bから排出されることとなり、エアトラップチャンバ7内においてプライミング液又は血液が順方向αに流れるようになっている。
【0020】
ここで、本発明に係る濾過部材8は、エアトラップチャンバ7内に取り付けられ、エアトラップチャンバ7内にて順方向αに流れる血液を通過させて血栓等の血液中の異物を捕捉する濾過孔hを有するもので、プライミング時、逆方向βに流れるプライミング液が濾過孔hを通過するのを規制する非濾過状態(図3参照)と、血液浄化治療時、順方向αに流れる血液が濾過孔hを通過するのを許容する濾過状態(図4参照)とで切り替え可能とされるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液により非濾過状態から濾過状態に切り替えられるよう構成されている。また、非濾過状態は、図3に示すように、切替本体部10と固定部9とが一部重なり合った状態(切替本体部10の下方において固定部9の下部が臨んだ状態)とされるとともに、濾過状態は、図4に示すように、切替本体部10と固定部9とが完全に重なり合った状態とされている。
【0021】
具体的には、第1の実施形態に係る濾過部材8は、図5~8に示すように、エアトラップチャンバ7の底部において導出口7bを覆った状態で固定された固定部9と、固定部9に重ねた状態で配設(図7、8参照)された切替本体部10と、固定部9に形成された凹部9a及び切替本体部10に形成された凸部10aで構成されたロック部とを具備して構成されている。
【0022】
固定部9は、非濾過状態及び濾過状態のときプライミング液及び血液を流通させるもので、図5に示すように、側面の全周領域に亘って複数の矩形状の開口部9bが形成されるとともに、天面に連結部11を挿通可能な挿通孔9cが形成された円錐台形状の樹脂成形部品から成る。開口部9bは、濾過孔hより開口寸法が大きな開口(上下方向に亘って延びる開口)から成り、プライミング時に逆方向βに流れるプライミング液、及び血液浄化時に順方向αに流れる血液を通過させ得るようになっている。
【0023】
切替本体部10は、図6に示すように、側面の全周領域に亘って複数の濾過孔hが形成されるとともに、上部が開口した円錐台形状の樹脂成形部品から成り、その開口上部には、連結部11を垂下させるための梁部10bが形成されている。連結部11は、一端が梁部10bに接続されるとともに、他端が固定部9の挿通孔9cに挿通された線状部材から成り、図7、8に示すように、切替本体部10を固定部9に連結するよう構成されている。なお、連結部11の下端は、大径部11aが形成されており、挿通孔9cに挿通された状態で抜け止め可能とされている。
【0024】
本実施形態に係る切替本体部10は、図7に示すように、非濾過状態のとき固定部9と離間して逆方向βに流れるプライミング液を離間部E(固定部9の外周面と切替本体部10の内周面との間の隙間)を介して流通させるとともに、図8に示すように、順方向αに流れるプライミング液又は血液により同図中下方に変位して固定部9を覆うことにより非濾過状態から濾過状態に切り替えるようになっている。
【0025】
すなわち、非濾過状態においては、図7に示すように、カップ状の固定部9をカップ状の切替本体部10が覆って重なり合いつつ固定部9の下部が重なっていない状態とされるとともに、固定部9と切替本体部10との間には離間部Eが形成されており、エアトラップチャンバ7の導出口7bから固定部9の内部に流入したプライミング液は、固定部9の開口部9bから離間部Eに流れた後、切替本体部10の上部の開口から上方に向かって流出するので、濾過孔hの通過が規制されることとなる。これにより、プライミング液は、濾過孔hを介さず濾過部材8を通過することとなり、プライミング液に含有された気泡が濾過部材8内に残留してしまうのを抑制することができる。
【0026】
そして、濾過状態においては、順方向αに流れるプライミング液又は血液により切替本体部10が押圧されて下方に変位し、図8に示すように、カップ状の固定部9の下部までカップ状の切替本体部10が覆って重なり合い固定部9をほぼ完全に覆うことにより非濾過状態から濾過状態に切り替わることとなる。この濾過状態においては、固定部9の外周面と切替本体部10の内周面とが合致又は近接するので、血液浄化治療時にエアトラップチャンバ7の導入口7aから導入された血液は、濾過孔hを通過して濾過された後、開口部9bを通過して導出口7bから導出されることとなる。
【0027】
このように、血液浄化治療時においては、濾過部材8が濾過状態に切り替えられ、血液が濾過孔hを通過して濾過されるので、血液中の血栓等の異物を捕捉することができる。さらに、本実施形態においては、濾過状態に切り替わると、図8に示すように、切替本体部10の凸部10aが固定部9の凹部9aに係止するので、切替本体部10による固定部9を覆った状態をロックして濾過状態を保持することができる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材について説明する。
第2の実施形態に係る濾過部材12は、先の実施形態と同様、静脈側血液回路2に接続されたエアトラップチャンバ7内に取り付けられ、エアトラップチャンバ7内にて順方向αに流れる血液を通過させて血栓等の血液中の異物を捕捉する濾過孔hを有するもので、プライミング時、逆方向βに流れるプライミング液が濾過孔hを通過するのを規制する非濾過状態(図9参照)と、血液浄化治療時、順方向αに流れる血液が濾過孔hを通過するのを許容する濾過状態(図10参照)とで切り替え可能とされるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液を一対の切替蓋部14で受ける(図9中の矢印参照)により非濾過状態から濾過状態に切り替えられるよう構成されている。
【0029】
具体的には、第2の実施形態に係る濾過部材12は、図9、10に示すように、エアトラップチャンバ7の底部において導出口7bを覆った状態で固定された固定本体部13と、固定本体部13の上部において開閉可能に形成された一対の切替蓋部14と、固定本体部13の開口縁部に形成された爪部13bで構成されたロック部とを具備して構成されている。
【0030】
固定本体部13は、上部に開口13aが形成されるとともに、側面の全周領域に亘って複数の濾過孔hが形成された円錐台形状の樹脂成形部品から成る。開口13aは、濾過孔hより大きな寸法の開口から成り、プライミング時に逆方向βに流れるプライミング液、及び血液浄化時に順方向αに流れる血液を通過させ得るようになっている。また、開口13aの縁部には、内側に向かって爪部13bが突出形成されており、閉状態の切替蓋部14を係止してロックし得るようになっている。
【0031】
切替蓋部14は、固定本体部13の開口13aの縁部に形成された揺動軸Lを中心として揺動自在に形成されることにより開口13aを開閉可能とされ、図9に示すように、非濾過状態のとき開口13aを開放状態として逆方向βに流れるプライイング液を開口13aを介して流通させるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液により押圧されて、図10に示すように、同図中下方に変位(揺動)して開口13aを閉止状態とすることにより非濾過状態から濾過状態に切り替えるようになっている。
【0032】
このように、血液浄化治療時においては、濾過部材12が濾過状態に切り替えられ、血液が濾過孔hを通過して濾過されるので、血液中の血栓等の異物を捕捉することができる。さらに、本実施形態においては、濾過状態に切り替わると、図10に示すように、切替蓋部14の縁部が爪部13bを通過して係止されるので、切替蓋部14による開口13aの閉止状態をロックして濾過状態を保持することができる。
【0033】
次に、本発明の第3の実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材について説明する。
第3の実施形態に係る濾過部材12は、先の実施形態と同様、静脈側血液回路2に接続されたエアトラップチャンバ7内に取り付けられ、エアトラップチャンバ7内にて順方向αに流れる血液を通過させて血栓等の血液中の異物を捕捉する濾過孔hを有するもので、プライミング時、逆方向βに流れるプライミング液が濾過孔hを通過するのを規制する非濾過状態(図11参照)と、血液浄化治療時、順方向αに流れる血液が濾過孔hを通過するのを許容する濾過状態(図12参照)とで切り替え可能とされるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液を第1部材16a及び第2部材16bで受ける(図11中の矢印参照)により非濾過状態から濾過状態に切り替えられるよう構成されている。
【0034】
具体的には、第3の実施形態に係る濾過部材15は、図11、12に示すように、第1部材16a及び第2部材16bを有した揺動本体部16から成る。これら第1部材16a及び第2部材16bは、側面の全周領域に亘って複数の濾過孔hが形成され、揺動軸Lを中心として揺動することにより合致すると円錐台形状となる樹脂成形部品から成る。また、第1部材16aの上端部には、凸部16aaが形成されるとともに、第2部材16bの上端部には、凹部16baが形成されており、これら凸部16aa及び凹部16baがロック部を構成している。
【0035】
そして、本実施形態においては、図11に示すように、非濾過状態のとき第1部材16a及び第2部材16bが離間して配設され、逆方向βに流れるプライミング液を離間部位Fを介して流通させるとともに、図12に示すように、順方向αに流れるプライミング液又は血液により第1部材16a及び第2部材16bが揺動軸Lを中心として揺動して合致することにより非濾過状態から濾過状態に切り替えるようになっている。
【0036】
このように、血液浄化治療時においては、濾過部材15が濾過状態に切り替えられ、血液が濾過孔hを通過して濾過されるので、血液中の血栓等の異物を捕捉することができる。さらに、本実施形態においては、濾過状態に切り替わると、図12に示すように、第1部材16a及び第2部材16bが合致して凸部16aa及び凹部16baが係止されるので、第1部材及16aび第2部材が合致した状態をロックして濾過状態を保持することができる。
【0037】
次に、本発明の第4の実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材について説明する。
第4の実施形態に係る濾過部材17は、先の実施形態と同様、静脈側血液回路2に接続されたエアトラップチャンバ7内に取り付けられ、エアトラップチャンバ7内にて順方向αに流れる血液を通過させて血栓等の血液中の異物を捕捉する濾過孔hを有するもので、プライミング時、逆方向βに流れるプライミング液が濾過孔hを通過するのを規制する非濾過状態(図15参照)と、血液浄化治療時、順方向αに流れる血液が濾過孔hを通過するのを許容する濾過状態(図16参照)とで切り替え可能とされるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液を第1本体部18の頂部Tで受ける(図13中の矢印参照)により非濾過状態から濾過状態に切り替えられるよう構成されている。
【0038】
具体的には、第4の実施形態に係る濾過部材17は、図13~16に示すように、エアトラップチャンバ7の底部において導出口7bを覆った状態で固定された第1本体部18と、第1本体部18に重ねた状態で配設(図15、16参照)された第2本体部19と、第1本体部18に形成された凹部18a及び第2本体部19に形成された凸部19aで構成されたロック部とを具備して構成されている。
【0039】
第1本体部18は、図13に示すように、側面の全周領域に亘って複数の第1の開口部H1が形成された円筒形状の樹脂成形部品から成る。第1の開口部H1は、第2本体部19の第2の開口部H2と対応する形状及び位置に形成されるとともに、後述する濾過孔hより大きな寸法の開口から成り、プライミング時に逆方向βに流れるプライミング液、及び血液浄化時に順方向αに流れるプライミング液又は血液を通過させ得るようになっている。
【0040】
第2本体部19は、図14に示すように、側面の全周領域に亘って複数の第2の開口部H2が形成された円筒形状の樹脂成形部品から成る。第2の開口部H2は、第1本体部18の開口部H1と対応する形状及び位置に形成されるとともに、開口部H1と同様、後述する濾過孔hより大きな寸法の開口から成り、プライミング時に逆方向βに流れるプライミング液、及び血液浄化時に順方向αに流れるプライミング液又は血液を通過させ得るようになっている。
【0041】
本実施形態に係る第2本体部19は、図15に示すように、第1本体部18に重ね合わせた状態で配設され、非濾過状態のとき第1の開口部H1と第2の開口部H2とが合致せず離間して逆方向βに流れるプライミング液を第1の開口部H1を介して流通させるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液により変位して、図16に示すように、第1本体部18の側面全周をほぼ覆うことにより第1の開口部H1及び第2の開口部H2が一部合致(一部重複)して濾過孔hが形成され、非濾過状態から濾過状態に切り替えるようになっている。
【0042】
すなわち、非濾過状態においては、図15に示すように、第1の開口部H1と第2の開口部H2とが合致せず濾過孔hが形成されないので、エアトラップチャンバ7の導出口7bから第1本体部18の内部に流入したプライミング液は、第1の開口部H1から流出し、濾過孔hの通過が規制されることとなる。これにより、プライミング液は、濾過孔hを介さず濾過部材17を通過することとなり、プライミング液に含有された気泡が濾過部材17内に残留してしまうのを抑制することができる。
【0043】
そして、濾過状態においては、順方向αに流れるプライミング液又は血液により第2本体部19が押圧されて下方に変位し、図16に示すように、第1本体部18をほぼ完全に覆うことにより非濾過状態から濾過状態に切り替わることとなる。この濾過状態においては、第1本体部18の第1の開口部H1と第2本体部19の第2の開口部H2とが一部合致(一部重複)重複して濾過孔hを形成するので、血液浄化治療時にエアトラップチャンバ7の導入口7aから導入された血液は、濾過孔hを通過して濾過された後、導出口7bから導出されることとなる。
【0044】
このように、血液浄化治療時においては、濾過部材17が濾過状態に切り替えられ、血液が濾過孔hを通過して濾過されるので、血液中の血栓等の異物を捕捉することができる。さらに、本実施形態においては、濾過状態に切り替わると、図16に示すように、第1本体部18の凹部18aに第2本体部19の凸部19aが係止するので、第2本体部19が第1本体部18を覆った状態をロックして濾過状態を保持することができる。
【0045】
以上、本実施形態に係るエアトラップチャンバの濾過部材について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば各実施形態におけるロック部について他の形態のもの(例えば凸部と凹部とが逆になったもの、他の部位に形成されたもの等)としてもよい。また、本実施形態に係る濾過部材は、静脈側血液回路2に接続されたエアトラップチャンバ7に適用されているが、他の流路(例えば動脈側血液回路1等)に接続されたエアトラップチャンバに適用してもよい。さらに、本実施形態に係るプライミング液は、生理食塩液を用いているが、例えば透析液導入ラインL1から血液回路に導入された透析液であってもよい。
【0046】
本発明の第1の実施の態様は、血液浄化治療時に患者の血液を流動させる血液回路に接続されたエアトラップチャンバ7内に取り付けられ、エアトラップチャンバ7内にて順方向αに流れる血液を通過させて血液中の異物を捕捉する濾過孔hを有するエアトラップチャンバの濾過部材であって、順方向αに対して逆方向βに流れるプライミング液が濾過孔hを通過するのを規制する非濾過状態と、順方向αに流れる血液が濾過孔hを通過するのを許容する濾過状態とで切り替え可能とされるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液により非濾過状態から濾過状態に切り替えられたものである。これにより、エアトラップチャンバ7内でプライミング液と血液との流れる方向が異なることを利用して気泡の残留を抑制することができる。
【0047】
本発明の第2の実施の態様は、エアトラップチャンバ7内に固定され、非濾過状態及び濾過状態のときプライミング液及び血液を流通させる固定部9と、濾過孔hが形成され、非濾過状態のとき固定部9と離間して逆方向βに流れるプライミング液を離間部Eを介して流通させるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液により変位して固定部9を覆うことにより非濾過状態から濾過状態に切り替える切替本体部10と、切替本体部10による固定部9を覆った状態をロックして濾過状態を保持するロック部(凹部9a及び凸部10a)とを具備したものである。これにより、固定部9及び切替本体部10により非濾過状態から濾過状態に切り替えることができるとともに、ロック部にて濾過状態を保持することができる。
【0048】
本発明の第3の実施形態は、非濾過状態は、切替本体部10と固定部9とが一部重なり合った状態とされるとともに、濾過状態は、切替本体部10と固定部9とが完全に重なり合った状態とされるものである。これにより、固定部9及び切替本体部10により非濾過状態から濾過状態により円滑に切り替えることができる
【0049】
本発明の第4の実施の態様は、上部が開口しつつ側面に濾過孔hが形成されるとともに、エアトラップチャンバ7内で固定された固定本体部13と、開口を開閉可能に取り付けられ、非濾過状態のとき開口を開放状態として逆方向βに流れるプライミング液を開口を介して流通させるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液により変位して開口を閉止状態とすることにより非濾過状態から濾過状態に切り替える切替蓋部14と、切替蓋部14による開口の閉止状態をロックして濾過状態を保持するロック部(爪部13b)とを具備したものである。これにより、固定本体部13及び切替蓋部14により非濾過状態から濾過状態に切り替えることができるとともに、ロック部にて濾過状態を保持することができる。
【0050】
本発明の第5の実施の態様は、濾過孔hが形成された第1部材16a及び第2部材16bから成り、非濾過状態のとき第1部材16a及び第2部材16bが離間して配設され、逆方向βに流れるプライミング液を離間部位Fを介して流通させるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液により第1部材16a及び第2部材16bが揺動して合致することにより非濾過状態から濾過状態に切り替える揺動本体部16と、第1部材16a及び第2部材16bが合致した状態をロックして濾過状態を保持するロック部(凸部16aa及び凹部16ba)とを具備したものである。これにより、第1部材16a及び第2部材16bを有して成る揺動本体部16により非濾過状態から濾過状態に切り替えることができるとともに、ロック部にて濾過状態を保持することができる。
【0051】
本発明の第6の実施の態様は、第1の開口部H1が形成されるともに、エアトラップチャンバ7内で固定された第1本体部18と、第2の開口部H2が形成されるとともに、第1本体部18と重ね合わせた状態で配設され、非濾過状態のとき第1の開口部H1と第2の開口部H2とが離間して逆方向βに流れるプライミング液を第1の開口部H1を介して流通させるとともに、順方向αに流れるプライミング液又は血液により変位して第1本体部18を覆うことにより第1の開口部H1及び第2の開口部H2が一部合致して濾過孔hが形成され、非濾過状態から濾過状態に切り替える第2本体部19と、第2本体部19が第1本体部18を覆った状態をロックして濾過状態を保持するロック部(凹部18a及び凸部19a)とを具備したものである。これにより、第1本体部18及び第2本体部19により非濾過状態から濾過状態に切り替えることができるとともに、ロック部にて濾過状態を保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明と同様の趣旨であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 動脈側血液回路
2 静脈側血液回路
3 ダイアライザ(血液浄化器)
4 血液ポンプ
5 透析装置本体
6 収容バッグ
7 エアトラップチャンバ
7a 導入口
7b 導出口
7c 接続口
8 濾過部材
9 固定部
9a 凹部(ロック部)
9b 開口部
9c 挿通孔
10 切替本体部
10a 凸部(ロック部)
10b 梁部
11 連結部
12 濾過部材
13 固定本体部
13a 開口
13b 爪部(ロック部)
14 切替蓋部
15 濾過部材
16 揺動本体部
16a 第1部材
16aa 凸部(ロック部)
16b 第2部材
16ba 凹部(ロック部)
17 濾過部材
18 第1本体部
18a 凹部(ロック部)
19 第2本体部
19a 凸部(ロック部)
h 濾過孔
La 供給ライン
Lb オーバーフローライン
L 揺動軸
図1
図2
図3
図4
図5
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図16