(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024168322
(43)【公開日】2024-12-05
(54)【発明の名称】支保組み立て用台車,支保設置装置及び支保の設置方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20241128BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20241128BHJP
B62B 3/10 20060101ALI20241128BHJP
B62B 3/04 20060101ALI20241128BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20241128BHJP
F16L 55/40 20060101ALI20241128BHJP
E03F 3/06 20060101ALI20241128BHJP
F16L 101/10 20060101ALN20241128BHJP
【FI】
E03F7/00
B62B3/00 Z
B62B3/10 Z
B62B3/04 D
F16L1/00 H
F16L55/40
E03F3/06
F16L101:10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023084883
(22)【出願日】2023-05-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】508100055
【氏名又は名称】日本ノーディッグテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】多賀井 健
(72)【発明者】
【氏名】山根 歩
【テーマコード(参考)】
2D063
3D050
【Fターム(参考)】
2D063CA43
2D063CA45
2D063EA07
3D050AA11
3D050BB02
3D050DD03
3D050EE09
3D050EE11
3D050KK12
(57)【要約】
【課題】支保の構成要素の搬入及び組み立て及び設置を容易かつ非常に効率的にする支保組み立て用台車,支保設置装置及び支保の設置方法を提供する。
【解決手段】本発明は、既設管に設ける更生管を内部から支持する際に用いられる支保の少なくとも下部フレームを載置させる載置台Pと、載置台Pの下方に設けられたキャスター23とを備え、載置台Pは、前記更生管の軸線方向に直交する方向に延在するよう配置される前記支保の下部フレームの延在方向に間隔を空けた少なくとも2箇所で支持する一対の第1の載置枠21,21と、一対の第1の載置枠21,21を連結する第2の載置枠22,22とを有し、一対の第1の載置枠21,21の間で前記支保の設置作業が可能となっている支保組み立て用台車20に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管に設ける更生管を内部から支持する際に用いられる支保の少なくとも下部フレーム部材を載置させる載置台と、載置台の下方に設けられたキャスターとを備え、
前記載置台は、前記更生管の軸線方向に直交する方向に延在するよう配置される前記支保の下部フレーム部材の延在方向に間隔を空けた少なくとも2箇所で支持する一対の第1の載置枠と、
前記一対の第1の載置枠を連結する第2の載置枠とを有し、
前記一対の第1の載置枠の間で前記支保の設置作業が可能となっている支保組み立て用台車。
【請求項2】
前記一対の第1の載置枠は、棒状部材を互いに平行に配置して構成され、
前記一対の第1の載置枠において前記下部フレーム部材を支持する部分を載置部とし、
前記載置部以外の領域で前記一対の第1の載置枠の間を2以上の第2の載置枠で連結している請求項1に記載の支保組み立て用台車。
【請求項3】
前記載置部は、前記一対の第1の載置枠を長手方向に等分した半部側に設けられている請求項1に記載の支保組み立て用台車。
【請求項4】
前記載置台には、前記支保を固定する紐状部材を取り付ける掛止部が形成されている請求項1に記載の支保組み立て用台車。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の支保組み立て用台車に加え、ピッチゲージを有している支保設置装置。
【請求項6】
本発明の支保の設置方法は、
支保の構成部材を更生管内に運搬する搬入工程と、
腹起し材を更生管の内壁面に設置する腹起し材設置工程と、
請求項1から4のいずれか一項に記載の支保組み立て用台車上で支保を構成する変形防止枠を組み立てるフレーム部材組み立て工程と、
前記変形防止枠の一部又は組み上がった前記変形防止枠を載せて前記支保組み立て用台車を腹起し材の上方に移動させる移動工程と、
前記変形防止枠を前記腹起し材に固定する変形防止枠取付工程と、
支保組み立て用台車を変形防止枠から引き抜く台車撤去工程と、を有する支保の設置方法。
【請求項7】
既設の変形防止枠とその次に設置する変形防止枠との間を規定するピッチゲージを既設の変形防止枠に係止させるピッチゲージ配置工程を更に有する請求項6に記載の支保の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支保組み立て用台車,支保設置装置及び支保の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管を更生する方法として、既設管内に硬質塩化ビニル等の合成樹脂製の更生管を製管した後、既設管と更生管との間隙に裏込め材を注入して硬化させる方法が広く採用されている。裏込め材の注入においては、裏込め材の荷重や注入圧力によって更生管が座屈変形したり、更生管の浮力により更生管の既設管に対する位置が所定の位置からずれたりすることがある。そのため、裏込め材の注入の前に、更生管の内部に管軸方向にほぼ等間隔で支保が設置される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
支保の設置においては、支保の多角形状フレームを形成するコーナー部材及びサイド部材をそれぞれ更生管内に搬入し、組み立て、フレームを立てて更生管に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
支保は、多角形状フレームの各パーツだけでも相当の重量を有するため、台車を使って更生管内に搬入し、各パーツを組み立てて設置する。したがって、支保の搬入、組み立て、及び支保の設置位置の測定など、非常に大きな労力を要していた。また、多角形状フレームの立ち上げ時に多角形状フレームの大きさと荷重でふらつきが生じやすく非常に不安定な設置状態となる。支保の設置においては、多角形状フレームを立てた状態で保持して、更生管に固定するために1基につき3名以上の作業人員を要していた。作業者を3名以上確保したとしても、非常に大きく重い支保の保持には相当の注意力を要するため、大きな労力を要していた。
また、従来の台車で多角形状フレームの部品又はそれ自身を運搬した場合、荷重も寸法も大きいものであるため、台車から降ろす作業にも非常に労力と注意を要していた。
そこで、本発明は、支保の構成要素の搬入及び組み立て及び設置を容易かつ非常に効率的にする支保組み立て用台車,支保設置装置及び支保の設置方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明の支保組み立て用台車は、既設管に設ける更生管を内部から支持する際に用いられる支保の少なくとも下部フレームを載置させる載置台と、載置台の下方に設けられたキャスターとを備え、前記載置台は、前記更生管の軸線方向に直交する方向に延在するよう配置される前記支保の下部フレームの延在方向に間隔を空けた少なくとも2箇所で支持する一対の第1の載置枠と、前記一対の第1の載置枠を連結する第2の載置枠とを有し、前記一対の第1の載置枠の間で前記支保の設置作業が可能となっている。
この構成によれば、載置台を構成する一対の第1の載置枠の間が空間になるので、載置台上に変形防止枠を載せた状態で、変形防止枠を腹起し材に固定するなどの作業をすることができる。
(2) 本発明の支保組み立て用台車の前記一対の第1の載置枠は、棒状部材を互いに平行に配置して構成され、前記一対の第1の載置枠において前記下部フレームを支持する部分を載置部とし、前記載置部以外の領域で前記一対の第1の載置枠の間を2以上の第2の載置枠で連結していてもよい。
この構成によれば、この構成によれば、第2の載置枠によって変形防止枠の下方を塞いでしまうことなく、変形防止枠を支保組み立て用台車に載せたまま作業をすることができる。
(3) 本発明の支保組み立て用台車の前記載置部は、前記一対の第1の載置枠を長手方向に等分した半部側に設けられていてもよい。
この構成により、変形防止枠の載置部においては、変形防止枠の下方を第2の載置枠で覆ってしまうことを回避して載置台下方の作業スペースをより広く確保することができる。
(4) 本発明の支保組み立て用台車の前記載置台には、前記支保を固定する紐状部材を取り付ける掛止部が形成されていてもよい。
この構成によれば、支保組み立て用台車上で組み立てた変形防止枠を立ち上げた状態でしっかりと保持することができる。
(5) 本発明の支保設置装置は、前記いずれかに記載の支保組み立て用台車に加え、ピッチゲージを有している。
この構成によれば、間隔を空けて設置する変形防止枠の距離を測定する手間を省くことができる。
(6) 本発明の支保の設置方法は、支保の構成部材を更生管内に運搬する搬入工程と、腹起し材を更生管の内壁面に設置する腹起し材設置工程と、請求項1から4のいずれか一項に記載の支保組み立て用台車上で支保を構成する変形防止枠を組み立てるフレーム組み立て工程と、前記変形防止枠の一部又は組み上がった前記変形防止枠を載せて前記支保組み立て用台車を腹起し材の上方に移動させる移動工程と、前記変形防止枠を前記腹起し材に固定する変形防止枠取付工程と、支保組み立て用台車を変形防止枠から引き抜く台車撤去工程とを有する。
この構成によれば、台車に載せた状態で支保を効率的に組み立てることができる。
(7) 本発明の支保の設置方法は、既設の変形防止枠とその次に設置する変形防止枠との間を規定するピッチゲージを既設の変形防止枠に係止させるピッチゲージ配置工程を更に有していてもよい。
この構成によれば、変形防止枠同士の間の寸法を測定する手間を省いて速やかに支保の設置を進めることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の支保組み立て用台車,支保設置装置及び支保の設置方法は、支保の構成要素の搬入及び組み立て及び設置を容易かつ非常に効率的という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の適用対象となる更生管内の支保を示した概略正面図である。
【
図2】(a)本発明の適用対象となる更生管内の支保を構成するフレーム部材を示した平面図である。(b)は(a)の側面図である。
【
図3】(a)本発明の一実施形態に係る支保組み立て用台車を示した平面図である。(b)は(a)の側面図である。
【
図4】(a)本発明の一実施形態に係る支保設置装置のピッチゲージを示した平面図である。(b)は(a)の正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る支保の設置方法の一工程を示した模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る支保の設置方法の一工程を示した模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る支保の設置方法の一工程を示した模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る支保の設置方法の一工程を示した模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る支保の設置方法の一工程を示した模式図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る支保の設置方法の一工程を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の支保組み立て用台車,支保設置装置及び支保の設置方法の実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図の各部分の寸法は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
【0010】
まず、本発明の適用対象である支保について説明する。
図1に示すように、支保1は、多角形のリング形状(本実施形態では8角形)の変形防止枠2と、更生管Xの内壁面に固定する複数の腹起し材3と、変形防止枠2と腹起し材3との間に突っ張らせる支持部材5とを主として有している。
変形防止枠2は、中空で薄い厚さの板状(箱型)のフレーム部材6とコーナー部材7とを、更生管Xの軸線Lを囲繞するように組み立てた部材である。
【0011】
変形防止枠2を軸線L方向に視た際に水平方向(幅)及び鉛直方向(高さ)に延びるフレーム部材6は、
図4(a)に例示するように、複数のフレーム部材6をボルト及びナットなどの固定具を用いて連結させ、一つのフレーム部材6として用いられることもある。
【0012】
図1に示すように、水平方向及び鉛直方向に設置されるフレーム部材6,6同士は、コーナー部材7を用いて連結させている。前記連結は、ボルト及びナットなどの固定具を用いて行われている。
【0013】
本実施形態で例示している変形防止枠2は、
図2(a),(b)に示すように、中空の概略板状のフレーム部材6を用いており、厚さ寸法に対して奥行き方向の寸法が10~20倍であるため比較的自立しやすい筒状に形成されている。
【0014】
フレーム部材6には、腹起し材3を押圧するために用いられるジャッキボルト(支持部材5)を厚さ方向に挿通させるための挿通孔hが形成されている。
また、フレーム部材6の長手方向に延びる側壁には、取っ手Tが長手方向の両端部付近に設けられている。
【0015】
図1に示す腹起し材3は、一般的に棒状の角筒鋼材であり、更生管Xの軸線方向に沿って、更生管Xの内壁底面、内壁上面、及び内壁左右面及びコーナー部分に固定される部材である。
支持部材5は、ジャッキボルト14等とその先端に固定され腹起し材3を嵌合させる皿部材14aとを備え、変形防止枠2を腹起し材3に対して突っ張らせる部材である。
【0016】
必須ではないが、変形防止枠2には、変形防止枠2の内側に水平フレーム部材6,6間に亘って固定される不図示の補強部材を設けられることがある。なお、変形防止枠2によっては補強部材を設けていない場合もあり、又は、垂直フレーム部材6,6間に亘って若しくは水平フレーム6,6間及び垂直フレーム6,6間の両方に補強部材を設けている場合もある。
【0017】
図3(a),(b)に示すように、一実施形態の支保組み立て用台車20(以下「台車20」という)は、互いに平行に対向させた一対の第1の載置枠21,21と、一対の第1の載置枠21,21に交差させて(本実施形態では直交させて)これら一対の第1の載置枠21,21間を連結している第2の載置枠22と、キャスター23とを有している。
【0018】
第1の載置枠21は、長尺で剛性の高い棒状部材で、少なくとも上面に偏平面を有する部材、例えば偏平な角型鋼管等により形成されている。ここで棒状とは、長尺に延びるものであれば、角型鋼管のようなものや板状のものを含む意味で用いている(以下、本明細書において同様)。
一対の第1の載置枠21,21は、2本以上の第2の載置枠22により連結されていればよく、本実施形態では、2本の第2の載置枠22に連結されている。
【0019】
第2の載置枠22は、長尺で剛性の高い棒状部材で少なくとも下面に偏平面を有する部材例えば偏平な角型鋼管等、により形成されている。第2の載置枠22のうちの1つは、第1の載置枠21の長手方向の一方の端部又は端部近傍に固定され、もう一つは、第1の載置枠21の長手方向のほぼ中央部に固定されている。また第2の載置枠22は、第1の載置枠21の上面に載せた状態で固定されている。
第1の載置枠21と第2の載置枠22とは、変形防止枠2を載置させる載置台Pを構成している。
【0020】
第1の載置枠21,21において、第2の載置枠22,22間以外の部分が変形防止枠2を載置させる載置部Yとなっている。
この構成により、載置部Yは、第1の載置枠21,21のみによって変形防止枠2をその長手方向に間隔を空けた下方2カ所で支持し、第2の変形防止枠22,22を含むそれ以外の台車20の部品に覆われないクリアな状態となる。すなわち、載置部Yの下方は、変形防止枠2の下方からの作業が必要な箇所が露出した状態となり、作業が邪魔されないようになっている。
【0021】
第1の載置枠21の下面には、長手方向の両端部とこれらの間をほぼ等間隔に分ける中央部にキャスター23が取り付けられている。
キャスター23は、設置面(すなわち更生管Xの内底面)から第1の載置枠21の下面までの高さが腹起し材3の更生管Xからの高さ寸法よりも大きくなるように取り付けられている。
第1の載置枠21の長手方向の両端部には、更に載置台Pに乗せた変形防止枠2を安定的に保持するロープ又はワイヤなどの紐状部材を通して固定するための掛止部24が形成されている。掛止部24は、ロープやワイヤなどを固定できるものであればどのようなものであってもよいが、本実施形態においては、掛止部24は、第1の載置枠21の厚さ方向に形成された貫通孔の形態で設けられている。
【0022】
図4に示すように、ピッチゲージ25は、棒状で直線状に延びた延伸部25aと、延伸部25aの両端に形成された係止部25bとを有した棒状の鋼材である。
係止部25bは、延伸部の両端において互いに同じ方向に突出し、概略U字状をなした部材である。
【0023】
次に支保設置装置20を用いて更生管X内に支保1を設ける方法について説明する。
【0024】
<支保構成部材の搬入工程及び腹起し材設置工程>
図5に示すように、更生管X内には、初めに更生管Xの内壁底部に設置する腹起し材3を搬入して設置する。
次に、台車20の載置台Pに変形防止枠2を構成するフレーム部材6、コーナー部材7、支持部材5、固定具、ピッチゲージ25、ラッシング用の紐状部材等を載せて更生管X内に搬入する。
【0025】
<フレーム部材組み立て工程及び移動工程>
台車20を所定の位置まで移動させたところで、
図6及び
図7に示すように、フレーム部材6、コーナー部材7を下方部材から組み立てていく。更生管Xの内壁側面及び内壁上面に取り付ける腹起し材3は、適宜内壁面に設置しておく。
【0026】
本発明の台車20は、
図3(a)に示す載置部Yが略一対の第1の載置枠21,21のみにより構成され、これら第1の載置枠21,21の間が他のパーツで覆われないよう開口させている。すなわち、第1の載置枠21.21が変更防止枠2の両端部付近を下方から支持し、これらの間においては変更防止枠2の下方を露出させている。
したがって、台車20の上に下部フレーム部材6を載置したまま下部フレーム部材6の下方に治具又は作業者が手を入れるなどして固定部材の緊締などの組み立て作業を行うことができるという効果を奏する。
【0027】
具体的には、台車20によれば、複数の下部フレーム部材6を接続して使用する際、台車20に載置させたままこれらを連結するボルトを下部のフレーム部材6の下面(すなわち外面)側から挿入し、フレーム部材6の上面(すなわち内面)側よりナット締めをおこなう作業を容易に行うことができる。また、台車20は、変形防止枠2の下部のフレーム部材6の上面からジャッキボルト挿入して腹起し材3と連結させる際に、変形防止枠2を台車20に載せたままジャッキボルト14の先端に設けた皿部材14aを腹起し材3に対して位置決めし保持する作業を容易に行うことが可能となる。
【0028】
また、第2の載置枠22は、第1の載置枠21,21の上面に固定されているため、載置部Yと第2の載置枠22との間で、第2の載置枠22の厚さ分の段差が生じている。したがって、載置台Pに下部フレーム部材6を載せた際に、下部フレーム6の載置台Pにおける位置決めを行いやすい。また、載置台Pにおいて、変形防止枠2の転倒防止にもなるという効果を奏する。
【0029】
変形防止枠2が組み上がったら、
図8に示すように、一方の第1の載置枠21に形成した掛止部24にワイヤ等の紐状部材30の一端側の固定金具を取り付け、上側フレームを跨いで、斜め掛けになるように紐状部材30の他端側の固定金具を他方の第1の載置枠21の掛止部24に固定する。より安定性を高めるには、先に掛けた紐状部材30にクロスするように、更に紐状部材30を一対の第1の載置枠21,21の掛止部24に取り付けてもよい。
【0030】
<変形防止枠取付工程>
このようにして変形防止枠2を台車20に固定した状態で、台車20を更生管Xの内壁底面に固定した腹起し材3の上に移動させ、支持部材5を用いて変形防止枠2を腹起し材3に固定していく。下側フレーム部材6は仮固定で、腹起し材3から僅かに浮いた状態にしておく。
【0031】
この場合においても、台車20は、一対の第1の載置枠21,21の間が十分に空けられており、載置台Pが腹起し材3の上を跨いで移動し得る高さを有しているので、台車20の運搬時及び設置時に腹起し材3と台車20との接触を防止することができる。したがって、変形防止枠2を台車20に載せたまま腹起し材3への取り付け作業を行うことができ、変形防止枠2を台車20上に安定的に載置した状態で、より安全性高くかつ効率よく作業を行うことができるという効果を奏する。
【0032】
<台車撤去工程>
支持部材5により変形防止枠2を内壁側面及び内壁上面の腹起し材3に固定し、支保の設置が完了したら、台車20を変形防止枠2から引き抜き、下側フレーム部材6とその下方の腹起し材3との固定もしっかりと行う。
以上により、1基の変形防止枠2の設置が完了する。
【0033】
このように、本発明の支保の設置方法によれば、更生管Xの入り口付近等の所定位置に支保1の構成部材を搬入し、台車20上で変形防止枠2を組み立てた上で、更生管X内に速やかに移動し奥から設置していく作業を繰り返す。このような方法を採ることにより、支保1は、極めて効率よく設置され得る。
以降の変形防止枠2の設置は、上記とおりにして行うことができるが、更生管Xの奥行き方向に間隔を空けて設置して行くにあたっては、ピッチゲージ25を用いて極めて効率的に行うことができる。
【0034】
図9は表示の都合上、奥側に向かって順に支保を設置する方向に視た図であり、
図10は、
図9と反対に手前側に向かって支保を設置して行く方向に視た模式図であり、ピッチゲージ25により間隔を測った後ピッチゲージ25を撤去した状態を示している。
【0035】
すなわち、
図9に示すように、1つの変形防止枠2を設置後、次の変形防止枠2を設置する際には、変形防止枠2の互いに離れた4カ所(本実施形態では、上側フレーム及び下側フレームのそれぞれの取っ手T)と、次に設置する変形防止枠2における前記4箇所に相対応する取っ手Tの4カ所をピッチゲージ25で測ることで、変形防止枠2,2間の寸法を正確に設定することができる。
【0036】
具体的には、下部フレーム部材6の取っ手T,Tのそれぞれにピッチゲージ25の一端側の係止部25bを掛け、このピッチゲージ25の他端側を、
図10に示す次の変形防止枠2の下側のフレーム部材6の対向する取っ手T,Tに設置して行く。ピッチゲージ25は、一旦フレーム部材6,6間の距離を設定できればすぐに取り外しておくとよい。
【0037】
図10において、手前側の下部フレーム部材6及び両サイドのフレーム部材6,6を固定した後、上側のフレーム部材6を固定する際に、再びピッチゲージ25を用いて、上述した手順と同様に、上部フレーム部材6,6同士の間の寸法を設定する。
【0038】
このように、変形防止枠2の相対応する4箇所においてピッチゲージ25を用いて寸法を測ることにより、更生管Xの形状が多少湾曲等している場合であっても、変形防止枠2,2間の寸法を非常に正確に設定することができる。
【0039】
すなわち、本発明の台車20及びピッチゲージ25を用いて支保を組み立てていくことにより、ピッチゲージ25を掛けるだけで変形防止枠2,2間の距離を測る作業を省いて次々と効率よく所定の位置に変形防止枠2を設置して行くことができるという効果を奏する。
【0040】
なお、上記実施形態では、第1の載置枠21及び第2の載置枠22が格子状に連結した載置台Pを例示したが、本発明は、上記の実施形態の例示に限定されるものではない。即ち本発明は、下側フレーム部材6を間隔を空けた少なくとも2箇所で支持することで、台車20に載せたまま下側フレーム部材6の上方及び下方において組み立て作業を可能とし且つ台車20が腹起し材3を跨ぐことができ、腹起し材3の上方で作業可能としていればどのような構成であってもよい。
【0041】
具体的には、第1の載置枠21は、変形防止枠2の構成を考慮して組み立ての邪魔にならないようにさえしていれば、3つ以上の用いられていてもよい。また、3本以上の第2の載置枠22によって、第1の載置枠21を連結させていてもよい。
また、台車20上での変形防止枠2の組み立ては、台車20を腹起し材3の所定の位置に移動させた上で行ってもよい。
また、本発明の適用対象となる変形防止枠2は、角鋼材で構成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 支保
2 変形防止枠
3 腹起し材
20 台車
21 第1の載置枠
22 第2の載置枠
23 キャスター
24 掛止部
P 載置台
Y 載置部
【手続補正書】
【提出日】2024-04-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
既設管に設ける更生管を内部から支持する際に用いられる支保を構成する自立可能な変形防止枠の組み立てに用いられ、板状ないし箱状で中空の複数のフレーム部材のうちの少なくとも下部フレーム部材を載置させる載置台と、載置台の下方に設けられたキャスターとを備え、
前記載置台は、前記更生管の軸線方向に直交する方向に延在するよう配置される前記支保の下部フレーム部材の延在方向に間隔を空けた少なくとも2箇所で支持する一対の第1の載置枠と、
前記一対の第1の載置枠を連結する第2の載置枠とを有し、
前記一対の第1の載置枠において前記下部フレーム部材を支持する部分を載置部とし、
少なくとも、前記載置部以外の位置で前記一対の第1の載置枠の間を前記第2の載置枠で連結し、
前記載置部において前記第1の載置枠間で前記下部フレームを露出させ、
前記一対の第1の載置枠の間で前記支保の設置作業が可能となっている支保組み立て用台車。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の支保組み立て用台車に加え、前記更生管の軸線方向に隣り合って設置する複数の変形防止枠間を測るピッチゲージを有している支保設置装置。